(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスクが磁性体からなる部分を有するとともに、前記第2の成膜領域の反応性プラズマ蒸着手段に、成膜位置において前記搬送経路に対して前記基板の第1面側の近傍に前記マスクを吸着するマスク吸着手段が設けられている請求項2記載の成膜装置。
前記基板保持器は、前記基板の第1面側の部分に回転移動によって開閉可能な成膜用のマスクを有し、当該マスクは、基板搬入搬出室の蓋部の回転移動による開閉動作と連動するマスク開閉機構と連動して動作し、かつ、前記蓋部及び前記マスクが開いた状態において当該基板を搬入搬出可能な空間が形成されるように構成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の成膜装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る成膜装置の実施の形態の全体を示す概略構成図である。
また、
図2(a)(b)は、本実施の形態における基板保持器搬送機構及び方向転換機構の基本構成を示すもので、
図2(a)は平面図、
図2(b)は正面図である。
【0015】
さらに、
図3(a)〜(c)は、本実施の形態に用いる基板保持器の構成を示すもので、
図3(a)は平面図、
図3(b)は
図3(a)のA−A線断面図、
図3(c)は、
図3(b)の要部を示す拡大図である。
さらにまた、
図4は、本実施の形態における方向転換機構の構成を示す正面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の成膜装置1は、真空排気装置1aに接続された単一の真空雰囲気が形成される真空槽2を有している。
真空槽2の内部には、後述する基板保持器11を搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構3が設けられている。
【0017】
この基板保持器搬送機構3は、基板10を保持する複数の基板保持器11を連続して搬送するように構成されている。
ここで、基板保持器搬送機構3は、例えばスプロケット等からなり駆動機構(図示せず)から回転駆動力が伝達されて動作する同一径の円形の第1及び第2の駆動輪31、32を有し、これら第1及び第2の駆動輪31、32が、それぞれの回転軸線を平行にした状態で所定距離をおいて配置されている。
【0018】
そして、第1及び第2の駆動輪31、32には例えばチェーン等からなる一連の搬送駆動部材33が架け渡されている。
さらに、これら第1及び第2の駆動輪31、32に搬送駆動部材33が架け渡された構造体が所定の距離をおいて平行に配置され(
図2(a)参照)、これら一対の搬送駆動部材33により鉛直面に対して一連の環状となる搬送経路が形成されている。
【0019】
本実施の形態では、搬送経路を構成する搬送駆動部材33のうち上側の部分に、第1の駆動輪31から第2の駆動輪32に向って移動して基板保持器11を第1の搬送方向P1に搬送する往路側搬送部(第1の搬送部)33aが形成されるとともに、第2の駆動輪32の周囲の部分の搬送駆動部材33によって基板保持器11の搬送方向を折り返して反対方向に転換する折り返し部33bが形成され、さらに、搬送駆動部材33のうち下側の部分に、第2の駆動輪32から第1の駆動輪31に向って移動して基板保持器11を第2の搬送方向P2に搬送する復路側搬送部(第2の搬送部)33cが形成されている。
【0020】
本実施の形態の基板保持器搬送機構3は、各搬送駆動部材33の上側に位置する往路側搬送部33aと、各搬送駆動部材33の下側に位置する復路側搬送部33cとがそれぞれ対向し、鉛直方向に関して重なるように構成されている。
【0021】
また、基板保持器搬送機構3には、基板保持器11を導入する基板保持器導入部30Aと、基板保持器11を折り返して搬送する搬送折り返し部30Bと、基板保持器11を排出する基板保持器排出部30Cが設けられている。
ここで、搬送折り返し部30Bの近傍には、後述する方向転換機構40が設けられている。
【0022】
真空槽2内には、第1及び第2の成膜領域4、5が設けられている。
本実施の形態では、真空槽2内において、基板保持器搬送機構3の例えば上部に、スパッタ手段4Tを有する第1の成膜領域4が設けられ、基板保持器搬送機構3の例えば下部に、後述する反応性プラズマ蒸着手段5Rを有する第2の成膜領域5が設けられている。
【0023】
本実施の形態では、上述した搬送駆動部材33の往路側搬送部33aが、上記第1の成膜領域4を直線的に水平方向に通過するように構成され、復路側搬送部33cが、上記第2の成膜領域5を直線的に水平方向に通過するように構成されている。
【0024】
そして、搬送経路を構成するこれら搬送駆動部材33の往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cを基板保持器11が通過する場合に、基板保持器11に保持された複数の基板10(
図2(a)参照)が水平状態で搬送されるようになっている。
【0025】
真空槽2内の基板保持器搬送機構3の近傍の位置、例えば第1の駆動輪31に隣接する位置には、基板保持器搬送機構3との間で基板保持器11を受け渡し且つ受け取るための基板搬入搬出機構6が設けられている。
【0026】
本実施の形態の基板搬入搬出機構6は、昇降機構60によって例えば鉛直上下方向に駆動される駆動ロッド61の先(上)端部に設けられた支持部62を有している。
【0027】
本実施の形態では、基板搬入搬出機構6の支持部62上に搬送ロボット64が設けられ、この搬送ロボット64上に上述した基板保持器11を支持して基板保持器11を鉛直上下方向に移動させ、かつ、搬送ロボット64によって基板保持器搬送機構3との間で基板保持器11を受け渡し且つ受け取るように構成されている。
【0028】
この場合、後述するように、基板搬入搬出機構6から基板保持器搬送機構3の往路側搬送部33aの基板保持器導入部30Aに基板保持器11を受け渡し(この位置を「基板保持器受け渡し位置」という。)、かつ、基板保持器搬送機構3の復路側搬送部33cの基板保持器排出部30Cから基板保持器11を取り出す(この位置を「基板保持器取り出し位置」という。)ように構成されている。
【0029】
真空槽2の例えば上部には、真空槽2内に基板10を搬入し且つ真空槽2から基板10を搬出するための基板搬入搬出室2Aが設けられている。
この基板搬入搬出室2Aは、例えば上述した基板搬入搬出機構6の支持部62の上方の位置に連通口2Bを介して設けられており、例えば基板搬入搬出室2Aの上部には、開閉可能な蓋部2aが設けられている。
【0030】
そして、後述するように、基板搬入搬出室2A内に搬入された処理前の基板10aを基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11に受け渡して保持させ、かつ、処理済の基板10bを基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11から例えば真空槽2の外部の大気中に搬出するように構成されている。
【0031】
なお、本実施の形態の場合、基板搬入搬出機構6の支持部62の上部の縁部に、基板10を搬入及び搬出する際に基板搬入搬出室2Aと真空槽2内の雰囲気を隔離するための例えばOリング等のシール部材63が設けられている。
【0032】
この場合、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板搬入搬出室2A側に向って上昇させ、支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて連通口2Bを塞ぐことにより、真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離するように構成されている。
【0033】
図2(a)(b)に示すように、本実施の形態の基板保持器搬送機構3の一対の搬送駆動部材33には、それぞれ所定の間隔をおいて複数の第1の駆動部36が搬送駆動部材33の外方側に突出するように設けられている。
【0034】
第1の駆動部36は、例えばJフック形状(搬送方向下流側の突部の高さが搬送方向上流側の突部の高さより低くなるような溝部が形成された形状)に形成され、以下に説明する基板保持器支持機構18によって支持された基板保持器11の後述する第1の被駆動軸12と接触して当該基板保持器11を第1又は第2の搬送方向P1、P2に駆動するように構成されている。
【0035】
一対の搬送駆動部材33の内側には、搬送する基板保持器11を支持する一対の基板保持器支持機構18が設けられている。
基板保持器支持機構18は、例えば複数のローラ等の回転可能な部材からなるもので、それぞれ搬送駆動部材33の近傍に設けられている。
【0036】
本実施の形態では、搬送駆動部材33の往路側搬送部33aの上方近傍に往路側基板保持器支持機構18aが設けられるとともに、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cの下方近傍に復路側基板保持器支持機構18cが設けられ、搬送される基板保持器11の下面の両縁部を支持するように配置構成されている。
【0037】
なお、往路側基板保持器支持機構18aは、後述する方向転換機構40の第1の方向転換経路51の進入口の近傍まで設けられ、復路側基板保持器支持機構18cは、後述する方向転換機構40の第2の方向転換経路52の排出口の近傍まで設けられている。
【0038】
本実施の形態に用いる基板保持器11は、基板10の両面上に成膜を行うためのもので、開口部を有するトレイ状のものからなる。
図2(a)及び
図3(a)に示すように、本実施の形態の基板保持器11は、例えば長尺矩形の平板状に形成され、その長手方向即ち第1及び第2の搬送方向P1、P2に対して直交する方向に例えば矩形状の複数の基板10を一列に並べてそれぞれ保持する複数の保持部14が設けられている。
【0039】
ここで、各保持部14には、基板保持器11の上面側に、各基板10と同等の大きさ及び形状で各基板10の第1面(本実施の形態では上面)が例えば全面的に露出する矩形状等の開口部15が設けられるとともに、基板保持器11の下面側に、上記各開口部15とそれぞれ連通し各基板10の第2面(本実施の形態では下面)が後述のマスク19を介して露出する矩形状等の開口部16が設けられている。
【0040】
そして、各保持部14の開口部15、16の間の連続する部分に、各基板10を載置可能な矩形枠状の凹部からなる載置部17がそれぞれ設けられている。
これら各載置部17は、凹部の底面が例えば基板保持器11の上面と平行な平面状に形成され、成膜の際に各基板10を水平に保持するように構成されている。
【0041】
本発明では、特に限定されることはないが、設置面積を小さくし且つ処理能力を向上させる観点からは、一つの基板保持器11について、本実施の形態のように、搬送方向に対して直交する方向に複数の基板10を一列に並べてそれぞれ保持するように構成することが好ましい。
ただし、処理効率を向上させる観点からは、搬送方向に対して直交する方向に複数の基板10を複数列に並べることも可能である。
【0042】
図3(b)(c)に示すように、各保持部14には、成膜時に基板10の第2面(下面)にパターニングを行うためのマスク19が設けられている。
本実施の形態のマスク19は、例えば複数の直線状のマスク部材19aから構成されている。
【0043】
ここで、各マスク部材19aは、例えば平行に配置され、それぞれの両端部が各保持部14の載置部17に設けた溝部17aと嵌り合い(
図3(c)参照)、後述するように溝部17a内において載置部17に対して垂直方向に移動可能に装着されている。
【0044】
この場合、各マスク部材19aは、各保持部14に装着された場合において、その上面が載置部17の高さと面一(つらいち)となるか、あるいは載置部17の高さより若干低くなるようにその形状及び寸法が定められている(
図3(c)では各マスク部材19aの上面が載置部17の高さより若干低い場合が示されている)。
【0045】
本実施の形態のマスク19のマスク部材19aは、磁性材料を含むものからなることが好ましい。
この場合、マスク部材19aそのものが磁性材料からなるもののほか、磁性材料からなる部材と非磁性材料からなる部材とを組み合わせたものや、樹脂等の母材中に磁性材料を含有させたもの等が含まれる。さらに、マスク部材19aとしては、剛性を有するもののみならず、例えば箔体のようにそれ自体の変形によって溝部17a内において載置部17に対して垂直方向に移動可能なものも含まれる。
【0046】
一方、基板保持器11の長手方向の両端部で第1の搬送方向P1の上流側の端部に第1の被駆動軸(第1の被駆動部)12がそれぞれ設けられ、また、第1の搬送方向P1の下流側の端部に第2の被駆動軸(第2の被駆動部)13がそれぞれ設けられている。
これら第1及び第2の被駆動軸12、13は、それぞれ基板保持器11の長手方向に延びる回転軸線を中心として断面円形状に形成されている。
【0047】
本実施の形態では、第2の被駆動軸13の長さが第1の被駆動軸12の長さより長くなるようにその寸法が定められている。
具体的には、
図2(a)に示すように、基板保持器11を基板保持器搬送機構3に配置した場合に基板保持器11の両側部の第1の被駆動軸12が基板保持器搬送機構3の第1の駆動部36と接触し、かつ、基板保持器11を後述する方向転換機構40に配置した場合に第2の被駆動軸13が後述する第2の駆動部46と接触するように第1及び第2の被駆動軸12、13の寸法が定められている。
【0048】
一対の搬送駆動部材33の第1の搬送方向P1の下流側には、同一構成の一対の方向転換機構40が設けられている。
本実施の形態の場合、一対の方向転換機構40は、それぞれ第1及び第2の搬送方向P1、P2に関して一対の搬送駆動部材33の外側の位置に配置されている。
また、これら一対の方向転換機構40は、それぞれ第1の搬送方向P1の上流側の部分が各搬送駆動部材33の第1の搬送方向P1の下流側の部分と若干重なるように設けられている。
【0049】
図4に示すように、本実施の形態の方向転換機構40は、第1のガイド部材41、第2のガイド部材42、第3のガイド部材43を有し、これら第1〜第3のガイド部材41〜43は、第1の搬送方向P1の上流側からこの順で配置されている。
【0050】
本実施の形態では、第1〜第3のガイド部材41〜43は、一対の搬送駆動部材33の外側近傍の位置にそれぞれ配置され、さらに、第1〜第3のガイド部材41〜43の外側近傍の位置に、後述する搬送駆動部材45がそれぞれ配置されている。
【0051】
なお、
図2(b)では、方向転換機構40の一部を省略するとともに、部材の重なり関係を無視して搬送方向についての部材間の位置関係が明確になるように示されている。
【0052】
図2(a)及び
図4に示すように、第1〜第3のガイド部材41〜43は、例えば板状の部材からなり、それぞれ鉛直方向に向けて設けられている。
ここで、第1のガイド部材41の第1の搬送方向P1の下流側の部分は、第1の搬送方向P1の下流側に向って凸となる曲面形状に形成され、また、第2のガイド部材42の第1の搬送方向P1の上流側の部分は、第1の搬送方向P1の下流側に向って凹となる曲面形状に形成されている。
【0053】
第1及び第2のガイド部材41、42は、第1のガイド部材41の第1の搬送方向P1の下流側の部分と第2のガイド部材42の第1の搬送方向P1の上流側の部分が同等の曲面形状に形成され、これらの部分が基板保持器11の第1の被駆動軸12の直径より若干大きな隙間を設けて対向するように近接配置されている。そして、この隙間によって基板保持器11の第1の被駆動軸12を案内する第1の方向転換経路51が設けられている。
【0054】
また、第2のガイド部材42の第1の搬送方向P1の下流側の部分は、第1の搬送方向P1の下流側に向って凸となる曲面形状に形成され、また、第3のガイド部材43の第1の搬送方向P1の上流側の部分は、第1の搬送方向P1の下流側に向って凹となる曲面形状に形成されている。
【0055】
第2及び第3のガイド部材42、43は、第2のガイド部材42の第1の搬送方向P1の下流側の部分と第3のガイド部材43の第1の搬送方向P1の上流側の部分が同等の曲面形状に形成され、これらの部分が基板保持器11の第2の被駆動軸13の直径より若干大きな隙間を設けて対向するように近接配置されている。そして、この隙間によって基板保持器11の第2の被駆動軸13を案内する第2の方向転換経路52が設けられている。
【0056】
本実施の形態では、第2のガイド部材42の第1の搬送方向P1の下流側の部分が、第1のガイド部材41の第1の搬送方向P1の下流側の部分と同等の曲面形状に形成され、さらに、第3のガイド部材43の第1の搬送方向P1の上流側の部分が、第2のガイド部材42の第1の搬送方向P1の上流側の部分と同等の曲面形状に形成されている。
【0057】
そして、このような構成により、第1の方向転換経路51と第2の方向転換経路52とが同等の曲面形状に形成されている。
さらに、本実施の形態では、第1及び第2の方向転換経路51、52の各部分の水平方向についての距離が、基板保持器11の第1及び第2の被駆動軸12、13の間の距離と同等となるようにその寸法が定められている。
【0058】
また、本実施の形態では、第1の方向転換経路51の上側の開口部が基板保持器11の第1の被駆動軸12の進入口となっており、その高さ位置が、往路側基板保持器支持機構18aに支持された基板保持器11の第2の被駆動軸13の高さ位置より低い位置となるように構成されている(
図2(b)参照)。
【0059】
さらに、第1の方向転換経路51の下側の開口部が基板保持器11の第1の被駆動軸12の排出口となっており、その高さ位置が、復路側基板保持器支持機構18cに支持された基板保持器11の第2の被駆動軸13の高さ位置より高い位置となるように構成されている(
図2(b)参照)。
【0060】
また、第2の方向転換経路52については、その上側の開口部が基板保持器11の第2の被駆動軸13の進入口となっており、その高さ位置が、往路側基板保持器支持機構18aに支持された基板保持器11の第2の被駆動軸13の高さ位置と同等の位置となるように構成されている(
図2(b)参照)。
【0061】
一方、第2の方向転換経路52の下側の開口部が基板保持器11の第2の被駆動軸13の排出口となっており、その高さ位置が、復路側基板保持器支持機構18cに支持された基板保持器11の第2の被駆動軸13の高さ位置と同等の位置となるように構成されている(
図2(b)参照)。
【0062】
本実施の形態の方向転換機構40は、例えば一対のスプロケットと、これら一対のスプロケットに架け渡されたチェーンからなる搬送駆動部材45を有し、この搬送駆動部材45は鉛直面に対して一連の環状となるように構成されている。
【0063】
この搬送駆動部材45は、その折り返し部分の曲率半径が、基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33の折り返し部33bの曲率半径と同等となるように構成されている。
また、搬送駆動部材45の上側の部分が第1の搬送方向P1に移動し、下側の部分が第2の搬送方向P2に移動するように駆動される。
【0064】
搬送駆動部材45には、所定の間隔をおいて複数の第2の駆動部46が搬送駆動部材45の外方側に突出するように設けられている。
第2の駆動部46は、搬送駆動部材45の外方側の部分に凹部が形成され、この凹部の縁部が基板保持器11の第2の被駆動軸13と接触して当該基板保持器11を第2の方向転換経路52に沿って支持駆動するように構成されている。
【0065】
また、本実施の形態の第2の駆動部46は、後述するように、第2の方向転換経路52の進入口及び排出口の位置に到達した場合にその凹部側の端部が第2の方向転換経路52から退避するように搬送駆動部材45の経路及び第2の駆動部46の寸法が設定されている(
図2(b)参照)。
【0066】
本実施の形態では、後述するように、第2の駆動部46が基板保持器搬送機構3の第1の駆動部36と同期して動作するように基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33と方向転換機構40の搬送駆動部材45の動作を制御する。
【0067】
そして、本実施の形態では、基板保持器搬送機構3の第1の駆動部36によって基板保持器11を第1の搬送方向P1に駆動して第1及び第2の被駆動軸12、13を第1及び第2の方向転換経路51、52内に進入させた場合に、基板保持器11が水平状態を保持しつつ第1及び第2の駆動部36、46によって第1及び第2の被駆動軸12、13が支持されて移動し、円滑に第1及び第2の方向転換経路51、52から排出されるように、第1及び第2の駆動部36、46、並びに、第1及び第2の方向転換経路51、52の形状及び寸法がそれぞれ設定されている。
【0068】
一方、第1のガイド部材41と第2のガイド部材42の下方で第1の方向転換経路51の排出口の近傍には、基板保持器11を方向転換機構40から基板保持器支持機構18の復路側基板保持器支持機構18cへ円滑に受け渡すための受け渡し部材47が設けられている。
【0069】
この受け渡し部材47は、例えば水平方向に延びる細長の部材からなり、その第2の搬送方向P2側の端部で復路側基板保持器支持機構18cの下方の位置に設けられた回転軸48を中心として上下方向に回転移動するように構成されている。そして、受け渡し部材47は、第1の搬送方向P1側の部分が図示しない弾性部材によって上方に付勢されている。
【0070】
受け渡し部材47の上部には、第1の方向転換経路51の排出口の第2の搬送方向P2側の近傍の部分に、第1の方向転換経路51と連続し、かつ、基板保持器支持機構18の復路側基板保持器支持機構18cと連続するように曲面形状に形成された受け渡し部47aが設けられている(
図2(b)参照)。
【0071】
また、受け渡し部材47の上部には、第1の搬送方向P1側の部分に、第1の搬送方向P1に向って下側に傾斜する傾斜面47bが設けられている。この傾斜面47bは、第2の方向転換経路52の排出口と対向する高さ位置に設けられている。
【0072】
図5は、本実施の形態の第2の成膜領域に配置される反応性プラズマ蒸着手段の構成を示す概略図である。
また、
図6(a)(b)は、マスク吸着手段の作用を示す説明図である。
【0073】
図5に示すように、本実施の形態の反応性プラズマ蒸着手段5Rは、基板の第2面に成膜を行う成膜室20を有している。
この成膜室20は、必要に応じて図示しない真空排気装置に接続されるとともに、例えば酸素ガスのような反応ガスが導入されるように構成されている(図示せず)。
【0074】
成膜室20の上部には、基板を保持した基板保持器11の搬入口20aと搬出口20bが設けられており、上述した第1の駆動部36により搬送経路に沿って搬送される基板保持器11が、搬入口20aを介して成膜室20内に搬入され、成膜後に搬出口20bから搬出されるように構成されている。
【0075】
本実施の形態では、成膜室20内の成膜位置において搬送経路に対して基板10の第1面側の上方近傍にマスク吸着手段7が設けられ、搬送経路に沿って第2の搬送方向P2に移動する基板保持器11がマスク吸着手段7の下方近傍を通過するようになっている。
このマスク吸着手段7は、上述した基板保持器11のマスク19(マスク部材19a)を吸着する磁石を有し、例えば搬送経路と平行に設けられている。
【0076】
成膜室20内の下部で例えばマスク吸着手段7の下方には、成膜材料21を収容するハース22がプラズマ引き込み用の磁石23と共に設けられている。
このハース22は、基板10の第2面上に第2の透明導電酸化物層を形成するためのもので、接地されている。
【0077】
一方、成膜室20の外部には、プラズマガン24が設けられている。
このプラズマガン24は、成膜室20の側部に設けたプラズマ導入口20cの近傍に設けられ、例えばアルゴン(Ar)ガスを電離して成膜室20内に導入するものである。
【0078】
プラズマガン24は、プラズマ発生電極25に対して負の電圧を印加し、かつ、成膜室20内のハース22に対して正の電圧を印加する放電電源26に接続されている。
【0079】
プラズマ発生電極25と成膜室20との間には、第1及び第2の空心コイル27、28が設けられ、これら第1及び第2の空心コイル27、28に対してハース22より低い正電圧が印加されるように構成されている。
さらに、第2の空心コイル28と成膜室20との間には、プラズマ収束用のマグネットコイル29が設けられている。
【0080】
このような構成において、プラズマガン24に導入されたアルゴンガスに対し、プラズマ発生電極25とハース22との間に電圧を印加することによって電離させると、発生したアルゴンのプラズマ50が、第1及び第2の空心コイル27、28並びにマグネットコイル29の作用によってビーム状態で成膜室20内に導入され、磁石23の磁力によってハース22に導かれる。
【0081】
そして、このアルゴンのプラズマ50によって、ハース22に収容された成膜材料21が加熱され、昇華してイオン化する。
さらに、イオン化した成膜材料21aがアルゴンのプラズマ50を通過する際に加速され、ハース22の上方でマスク吸着手段7の下方近傍を通過する基板保持器11に向って直線的に飛翔し、その結果、基板10の第2面に成膜材料21の膜が形成される。
【0082】
本実施の形態では、上述したように基板保持器11のマスク19を吸着する磁石を有するマスク吸着手段7が、成膜位置において搬送経路に対して基板10の第1面側の上方近傍に設けられているから、
図6(a)(b)に示すように、成膜の際に各マスク部材19aがマスク吸着手段7の磁石の磁力によって引き寄せられて基板10の第1面側に移動し、その上面が基板10の第2面に密着する。
その結果、本実施の形態によれば、マスク19を介して基板10の第2面上に形成される膜の平坦性を向上させることができる。
【0083】
以下、本実施の形態の成膜装置1の動作及び成膜方法の例を
図7〜
図17を参照して説明する。
図7(a)〜(c)は、本実施の形態における透明導電酸化物層の形成方法を示す断面工程図である。
【0084】
本実施の形態に用いる成膜前の基板10aは、
図7(a)に示すように、n型結晶シリコン基板10Aの第1面(上面)上に、i型アモルファスシリコン層10B及び例えばp型アモルファスシリコン層10Dが順次設けられるとともに、このn型結晶シリコン基板10Aの第2面(下面)上に、i型アモルファスシリコン層10C及び例えばn型アモルファスシリコン層10Eが順次設けられているものである。
【0085】
本実施の形態では、まず、
図8に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離した状態で、大気圧までベントした後、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを開ける。
その後、図示しない搬送ロボットを用いて処理前の基板10aを基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11に装着して保持させる。
【0086】
そして、
図9に示すように、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを閉じて所定の圧力となるまで真空排気した後、基板搬入搬出機構6の支持部62を上述した基板保持器受け渡し位置まで下降させ、基板保持器11の高さが搬送駆動部材33の往路側搬送部33aと同等の高さ位置となるようにする。
【0087】
さらに、
図10に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62に設けた搬送ロボット64によって基板保持器11を基板保持器搬送機構3の基板保持器導入部30Aに配置する。
【0088】
この場合、
図11(a)に示すように、基板保持器11の第1の被駆動軸12を第1の駆動部36の溝部内に配置されるように位置決めして往路側基板保持器支持機構18a上に載置する。
この状態で、
図11(b)に示すように、基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33の往路側搬送部33aを第1の搬送方向P1に移動させる。
【0089】
これにより、搬送駆動部材33の往路側搬送部33a上の第1の駆動部36によって基板保持器11の第1の被駆動軸12が第1の搬送方向P1に駆動され、基板保持器11が搬送駆動部材33の往路側搬送部33a上を搬送折り返し部30Bに向って搬送される。
【0090】
この動作の際、基板保持器11に保持された成膜前の基板10aの第1面(上面)に対し、第1の成膜領域4を通過する際に、基板保持器11の上方に位置するスパッタ手段4Tによってスパッタリングによる成膜を行う。
【0091】
具体的には、
図7(b)に示すように、成膜前の基板10aのp型アモルファスシリコン層10Dの表面に、スパッタリングによって第1の透明導電酸化物層10Fを全面的に形成する。
【0092】
この場合、第1の透明導電酸化物層10Fの材料としては特に限定されることはないが、低抵抗で光透過性の材料である酸化インジウム系のものが好ましく、より好ましくは、酸化インジウムに、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化セリウムを微量添加したものである。
【0093】
図12(a)〜(c)並びに
図13(a)〜(c)は、本実施の形態における基板保持器搬送機構及び方向転換機構の動作を示す説明図である。
本実施の形態では、上述した成膜工程の後、基板保持器搬送機構3の第1の駆動部36を第1の搬送方向P1に移動させることにより、
図12(a)に示すように、基板保持器搬送機構3の搬送折り返し部30Bに到達した基板保持器11を更に第1の搬送方向P1に移動させ、基板保持器11の第2の被駆動軸13を方向転換機構40の第2の方向転換経路52の進入口の位置に配置する。
【0094】
この場合、方向転換機構40の第2の駆動部46が基板保持器11の第2の被駆動軸13の下方に位置するように搬送駆動部材45の動作を制御する。
そして、基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33を駆動して第1の駆動部36を第1の搬送方向P1に移動させるとともに、方向転換機構40の搬送駆動部材45を駆動して第2の駆動部46を第1の搬送方向P1に移動させる。この場合、第1の駆動部36と第2の駆動部46の動作が同期するように制御する。
【0095】
これにより、
図12(b)に示すように、基板保持器11の第1及び第2の被駆動軸12、13が第1及び第2の駆動部36、46によってそれぞれ支持駆動され、第1及び第2の方向転換経路51、52内を下方に向ってそれぞれ移動する。
【0096】
なお、この過程においては、基板保持器11の第1の被駆動軸12は第1の方向転換経路51内において同時に接触することはないが第1のガイド部材41と第2のガイド部材42の縁部にも接触し、また第2の被駆動軸13は第2の方向転換経路52内において同時に接触することはないが第2のガイド部材42と第3のガイド部材43の縁部にも接触するが、基板保持器11は上下関係を維持している。
【0097】
そして、第1及び第2の被駆動軸12、13が第1及び第2の方向転換経路51、52の中腹部分をそれぞれ通過した付近から、第1及び第2の被駆動軸12、13の搬送方向が、基板保持器11の上下関係を維持した状態で第1の搬送方向P1と反対方向の第2の搬送方向P2にそれぞれ転換される。
【0098】
なお、この過程においては、基板保持器11の第1の被駆動軸12は第1の方向転換経路51内において同時に接触することはないが第1のガイド部材41と第2のガイド部材42の縁部にも接触し、また第2の被駆動軸13は第2の方向転換経路52内において同時に接触することはないが第2のガイド部材42と第3のガイド部材43の縁部にも接触する。
【0099】
さらに、基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33と方向転換機構40の搬送駆動部材45の駆動を継続すると、
図12(c)に示すように、基板保持器11の第1の被駆動軸12が第1の方向転換経路51の排出口並びに受け渡し部材47の受け渡し部47aを経由して受け渡し部材47の上方の位置に配置されるとともに、基板保持器11の第2の被駆動軸13が第2の方向転換経路52の排出口の位置に配置され、その後、
図13(a)に示すように、基板保持器11は、基板保持器支持機構18の復路側基板保持器支持機構18cに受け渡される。
【0100】
なお、
図12(c)に示す時点で方向転換機構40の第2の駆動部46と基板保持器11の第2の被駆動軸13は接触しておらず、基板保持器11は、基板保持器搬送機構3の第1の駆動部36と第1の被駆動軸12との接触による駆動によって第2の搬送方向P2へ移動する。
【0101】
そして、更なる基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33の駆動により、
図13(b)に示すように、基板保持器11の第2の被駆動軸13が受け渡し部材47の傾斜面47bに接触して受け渡し部材47が下方に回転移動し、
図13(c)に示すように、基板保持器11の第2の被駆動軸13が受け渡し部材47の上方を通過して基板保持器11が第2の搬送方向P2へ移動する。
なお、受け渡し部材47は、この過程の後に図示しない弾性部材の付勢力によって元の位置に戻る。
【0102】
その後、
図14(a)に示すように、基板保持器搬送機構3の搬送駆動部材33の復路側搬送部33cを第2の搬送方向P2に移動させ、第1の駆動部36を同方向に駆動することにより、基板保持器11を基板保持器排出部30Cに向って搬送する。
【0103】
この動作の際、基板保持器11に保持された成膜前の基板10aの第2面(下面)に対し、
図10に示す第2の成膜領域5を通過する際に、基板保持器11の下方に位置する反応性プラズマ蒸着手段5Rによって反応性プラズマ蒸着による成膜を行う。
【0104】
具体的には、
図7(b)に示すn型アモルファスシリコン層10Eの表面に、上記マスク19を介して反応性プラズマ蒸着手段5Rによってパターン成膜を行い、
図7(c)に示す第2の透明導電酸化物層10Gを形成する。これにより、成膜後の基板10bを得る。
【0105】
この場合、第2の透明導電酸化物層10Gの材料としては特に限定されることはないが、低抵抗で光透過性の材料である酸化インジウム系のものが好ましく、より好ましくは、酸化インジウムに、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化セリウムを微量添加したものである。
【0106】
そして、第2の搬送方向P2に移動する基板保持器11が基板保持器排出部30Cに到達した後、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cを第2の搬送方向P2に移動させ、第1の駆動部36を同方向に駆動すると、復路側搬送部33cの移動に伴って第1の駆動部36が鉛直方向から傾斜した状態になるに従い、
図14(b)に示すように、第1の駆動部36と、第1の被駆動軸12との接触が外れ、これにより基板保持器11は推進力を失うから、
図15に示す基板搬入搬出機構6の搬送ロボット64によって基板保持器11を第2の搬送方向P2に移動させて第1の駆動部36に対して離間させる。
【0107】
さらに、基板搬入搬出機構6の搬送ロボット64を用いて基板保持器11の取り出し動作を行い、
図15に示すように、基板保持器11を搬送ロボット64と共に支持部62上に配置する。
【0108】
その後、
図16に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62を上昇させ、支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離した状態で、大気圧までベントを行う。
【0109】
そして、
図17に示すように、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを開け、図示しない搬送ロボットを用い、成膜後の基板10bを基板保持器11から大気中に取り出す。
その後、
図8に示す状態に戻り、上述した動作を繰り返すことにより、複数の成膜前の基板10aに対してそれぞれ両面上に上述した成膜を行う。
【0110】
なお、ヘテロ接合型太陽電池の表面電極については、上述した第1及び第2の透明導電酸化物層10F、10G上に例えば銀ペーストをスクリーン印刷によって塗布し、焼成により形成することができる。
【0111】
以上述べた本実施の形態にあっては、単一の真空雰囲気が形成される真空槽2内において、搬送経路が鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成されるとともに、複数の基板保持器11を搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構3を備えていることから、従来技術と比較して搬送経路が占有するスペースを大幅に削減することができ、これにより装置の大幅な省スペース化を達成することができるので、小型且つ簡素な構成の成膜装置を提供することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、導入された基板保持器11を水平にした状態で搬送経路に沿って第1の搬送方向P1に搬送する搬送駆動部材33の往路側搬送部33aが第1の成膜領域4を通過し、かつ、基板保持器11を水平にした状態で搬送経路に沿って第1の搬送方向P1と反対方向の第2の搬送方向P2に搬送して排出する搬送駆動部材33の復路側搬送部33cが第2の成膜領域5を通過するように構成されている。また、基板保持器搬送機構3の第1の駆動部36と方向転換機構40の第2の駆動部46とを同期して動作させ、基板保持器11の第1及び第2の被駆動軸12、13を方向転換機構40の第1及び第2の方向転換経路51、52に沿ってそれぞれ案内して搬送することにより、基板保持器11を上下関係を維持した状態で搬送駆動部材33の往路側搬送部33aから復路側搬送部33cに受け渡すように構成されている。このような構成を有する本実施の形態によれば、基板10の両面に効率良く処理が可能な通過型の成膜装置を提供することができる。
【0113】
さらに、本実施の形態においては、反応性プラズマ蒸着手段5Rによって基板10の第2面上に例えば第2の透明導電酸化物層の成膜を行うようにしたことから、粒子の飛翔距離の小さいスパッタ膜と比較してマスクを用いたパターン成膜時の平坦性に優れ、しかも反応性プラズマ蒸着は印加電圧がスパッタリングと比較して低いため、下地層に対してダメージの少ない良質な透明導電酸化物層を形成可能な成膜装置、特にヘテロ接合型太陽電池製造装置を提供することができる。
【0114】
一方、本実施の形態においては、基板保持器11が、磁性体からなる部分を有するマスク19を介して基板10の第2面上に成膜を行うように構成され、第2の成膜領域5の反応性プラズマ蒸着手段5Rに、成膜位置において搬送経路に対して基板10の第1面側の上方近傍にマスク吸着手段7が設けられていることから、成膜の際にマスク19がマスク吸着手段7の磁石の磁力によって引き寄せられて基板10の第1面側に移動し、基板10の第2面に密着するため、マスク19を介して基板10の第2面上に形成される膜の平坦性を向上させることができる。
【0115】
また、本実施の形態においては、基板保持器11が当該搬送方向に対して直交する方向に複数の基板10を並べて保持するように構成されていることから、従来技術のような基板の搬送方向に複数の基板を並べて保持する基板保持器を搬送して成膜を行う場合と比較して、基板保持器の長さ及びこれに伴う余剰スペースを削減することができるので、成膜装置のより省スペース化を達成することができる。
図19〜
図23は、本実施の形態の変形例を示すもので、以下、上記実施の形態と対応する部分には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図19に示す本変形例の成膜装置1Aは、後述するように、開閉可能なマスク8を有する基板保持器11Aを用いるもので、このマスク8が基板搬入搬出室2Aの蓋部2aの動作と連動して開閉可能に構成されている。
図20(a)〜(c)は、本変形例に用いる基板保持器の構成を示すもので、
図20(a)は平面図、
図20(b)は
図20(a)のB−B線断面図、
図20(c)は正面図である。
さらに、
図21(a)(b)〜
図23は、本変形例の動作を示す説明図である。
【0116】
図20(a)(b)に示すように、本変形例に用いる基板保持器11Aは、その本体部11aに、上記実施の形態と同等の基本構成の保持部14が設けられている。
すなわち、本変形例に用いる基板保持器11Aの保持部14は、基板保持器11Aの上面側に、各基板10と同等の大きさ及び形状で各基板10の第1面(本変形例では上面)に対して成膜を行うための矩形状等の開口部15が設けられるとともに、基板保持器11Aの下面側に、上記各開口部15とそれぞれ連通し各基板10の第2面(本変形例では下面)に成膜を行うための矩形状等の開口部16が設けられている。
そして、各保持部14の開口部15、16の間の連続する部分に、各基板10を載置可能な矩形枠状の凹部からなる載置部17がそれぞれ設けられている。
これら各載置部17は、凹部の底面が例えば基板保持器11Aの上面と平行な平面状に形成され、成膜の際に各基板10を水平に保持するように構成されている。
【0117】
この載置部17は、3点以上で基板10を支持する構成にすることが好ましい。しかし、バランスを確実に保つことができれば、2点で基板10を支持する構成を採用することもできる。
本変形例では、基板保持器11Aの上部、すなわち、基板10の第1面側に成膜用のマスク8が設けられている。
このマスク8は、保持部14の上部側に設けられた二つの開口部15を覆う大きさで例えば矩形状に形成され、各開口部15に対応する位置に、保持部14の下部側に設けられた一対の開口部16より若干小さな例えば矩形状の一対の開口部8aが設けられている。
【0118】
なお、これら一対の開口部8aには、所定のパターンのマスク部材(図示せず)を設けることもできる。
本変形例のマスク8は、搬送方向外方側の両側の側部で且つ第1の搬送方向P1側の端部に、マスク8を開閉するための開閉機構80がそれぞれ設けられている。
これら開閉機構80は、搬送方向に対して直交する方向に延びる支軸8cがマスク8に固定され、各支軸8cが、基板保持器11Aの上面に固定された支持部材8dに、搬送方向に対して直交する方向に延びる回転軸を中心として回転可能に支持されている。
【0119】
一方、マスク8の搬送方向外方側の両側の側部で且つ第2の搬送方向P2側の端部には、マスク8を上方に引き上げるための引き上げピン8bがそれぞれ固定されている。
これら引き上げピン8bは、搬送方向に対して直交する方向に延びる直線を通るように設けられ、それぞれの搬送方向外方側の端部が基板保持器11Aの本体部11aの搬送方向外方側の端縁部から搬送方向外方側にはみ出すように設けられている。
そして、後述する一対のマスク開閉部材9によって各引き上げピン8bを引き上げると、マスク8が開閉機構80の支軸8cの回転軸を中心として回転移動し、その第2の搬送方向P2側の端部が上昇して開き、基板保持器11Aの各開口部15、16並びに載置部17が露出するようになっている。
【0120】
一方、
図19に示すように、本変形例では、上述したマスク8を開閉させるためのマスク開閉機構90が、真空槽2の基板搬入搬出室2A内に設けられている。
このマスク開閉機構90は、後述するように、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aと連動するように構成され、マスク8の第2の搬送方向P2側の端部を引き上げ且つ下降させて開閉させる一対の同一構成を有するマスク開閉部材9を備えている。
これら一対のマスク開閉部材9は、図示しない連結部材によって連結され、同期して動作するように構成されている。
【0121】
そして、一対のマスク開閉部材9は、
図20(c)に示すように、上述した一対の引き上げピン8bの端部間の間隔より若干短い距離をおいて配置されている。以下、適宜一つのマスク開閉部材9を例にとってマスク開閉部材9の構成及び動作を説明する。
【0122】
図19及び
図21(a)に示すように、マスク開閉部材9は、細長形状のフック状の部材からなる。すなわち、マスク開閉部材9は、直線状の本体部9aと、その一方の端部に設けられた例えば釣り針状の引っ掛け部9bを有し、後述するように、マスク8に設けられ引き上げピン8bと連結可能に構成されている。
そして、マスク開閉部材9の引っ掛け部9bと反対側の端部が、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aの下面の第2の搬送方向P2側の部分に設けられた支軸9dに取り付けられ、この支軸9dを中心として回転可能になっている。
【0123】
この場合、マスク開閉部材9は、引っ掛け部9bの先端部を第2の搬送方向P2側に向けて配置され、搬送方向に向けられた鉛直面と平行な平面内を回転するように構成されている。
なお、本変形例の蓋部2aは、その第1の搬送方向P1側の端部に設けられた支軸2bを中心として、搬送方向に向けられた鉛直面と平行な平面内を回転するように構成されている。
【0124】
マスク開閉部材9の中腹部で第2の搬送方向P2側の部分には、マスク開閉部材9の鉛直方向に対する角度を規制する角度規制部9cが設けられ、この角度規制部9cは、マスク開閉部材9の本体部9aから第2の搬送方向P2側に凸となる曲線状に突出形成されている。
一方、基板搬入搬出室2A内の第2の搬送方向P2側の壁部には、上述したマスク開閉部材9の角度規制部9cと共にマスク開閉部材9の鉛直方向に対する角度を規制する角度規制部材9eが設けられている。
【0125】
この角度規制部材9eは、基板搬入搬出室2A内の第2の搬送方向P2側の壁部から第1の搬送方向P1側に突出するように形成され、マスク開閉部材9の角度規制部9cと当接可能な位置に設けられている。
このような構成を有する本変形例では、蓋部2aが閉じている状態において、マスク開閉部材9の角度規制部9cが真空槽2内の壁部に設けられた角度規制部材9eに当接し、その本体部9aが第1の搬送方向P1側に若干傾斜した状態になっている。
【0126】
ここで、本変形例では、
図21(a)に示すように、マスク開閉部材9の引っ掛け部9bは、その引っ掛け部9bの先端部が、マスク開閉部材9の下方に位置し基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上に載置された基板保持器11A上のマスク8の引き上げピン8bに対し、第1の搬送方向P1側に位置し、基板搬入搬出機構6の支持部62を上昇させてマスク8が基板搬入搬出室2A内に配置された場合であっても、マスク8の引き上げピン8bと干渉(接触)しないように各部材の形状及び寸法が設定されている。
【0127】
このような構成を有する本変形例においては、
図21(a)に示す状態から、基板搬入搬出機構6の支持部62を上昇させ、
図21(b)に示すように、基板保持器11A及びマスク8を基板搬入搬出室2A内に搬入する。
これにより、マスク8の引き上げピン8bが、マスク開閉部材9の引っ掛け部9bに接触することなくその上方に配置される。
【0128】
次に、基板搬入搬出機構6の支持部62を上昇させ、基板搬入搬出室2A内の雰囲気を真空槽2内の雰囲気と隔離し、大気圧までベントした後、
図22(a)に示すように、蓋部2aを支軸2bを中心として第2の搬送方向P2側の部分を上昇させ、基板搬入搬出室2Aの開放動作を開始する。
これによりマスク開閉部材9の角度規制部9cの角度規制部材9eに対する当接が外れ、マスク開閉部材9の引っ掛け部9bが第2の搬送方向P2に移動するようにマスク開閉部材9が回転し、その引っ掛け部9bがマスク8の引き上げピン8bの下方に位置する。
【0129】
そして、蓋部2aの上方への回転移動を継続すると、マスク開閉機構90の一対のマスク開閉部材9の引っ掛け部9bがマスク8の引き上げピン8bの下側部分に接触し(
図20(c)参照)、
図22(b)に示すように、マスク開閉部材9の引っ掛け部9bがマスク8の引き上げピン8bを引っ掛けた連結状態で上昇し、これにより引き上げピン8bに連結されたマスク8が支軸8cを中心として第2の搬送方向P2側の部分が上方する方向に回転してマスク8が開き、上述した保持部14が露出する(
図20(a)(b)参照)。
【0130】
さらに、蓋部2aの上方への回転移動を継続すると、
図23に示すように、マスク8が直立に近い状態まで起立し、これによりマスク8と基板搬入搬出室2Aの壁部との距離が離れ、基板保持器11Aの上方に基板10を搬入及び搬出できる空間が形成される。
その結果、
図23に示すように、図示しない搬送ロボットを用い、この空間を介して、処理前の基板10aを基板搬入搬出室2A内の基板保持器11Aに保持させ、また処理済の基板10bを基板保持器11Aから基板搬入搬出室2Aの外部へ排出することができる。
【0131】
なお、マスク8を閉じる動作は、上述した機構の説明から明らかなように、基板保持器11Aの蓋部2aを閉じることで容易に行うことができる。
以上述べた本変形例においては、基板保持器11Aが、基板10の第1面側であるその上部に成膜用のマスク8を有していることから、基板10の第1面に対してマスク成膜を行うことができる。
この場合、基板保持器11Aに上記実施の形態のマスク19を設ければ、基板10の両面にマスク成膜を行うことができる。
【0132】
また、本変形例のマスク8は、回転移動によって開閉可能に構成されるとともに、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aと連動するマスク開閉機構90と連動して動作し、かつ、蓋部2a及びマスク8が開いた状態において基板10を搬入搬出可能な空間が形成されるように構成されていることから、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを開けるだけで基板保持器11Aの露出した保持部14に対して基板10(10a、10b)の搬出入を行うことができ、その結果、基板10の搬出入工程の簡素化を図ることができる。
【0133】
さらに、本変形例のマスク8は、基板保持器11Aの上部(基板10の第1面側)に設けられるとともに、基板10の第2面側の開口部16より若干小さな開口部8aが設けられていることから、基板保持器11Aの載置部17の面積をより小さくして基板10の第2面側の開口部16をできるだけ大きくすることができ、これにより基板10の第2面側の成膜面積の最大化を図ることができるとともに、成膜材料の回り込み付着に起因する基板10の第1面及び第2面間の短絡を防止することができる。
【0134】
以上の本変形例では、カム機構(角度規制部9c及び角度規制部材9e)によってマスク開閉部材9を動作させるように構成したが、本発明はこれに限られず、例えば光センサによってマスク開閉部材9の位置を検出し、その結果に基づきアクチュエータを駆動してマスク開閉部材9を動作させるように構成することもできる。
【0135】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。
例えば上記実施の形態においては、搬送駆動部材33のうち上側の部分を第1の搬送部である往路側搬送部33aとするとともに、搬送駆動部材33のうち下側の部分を第2の搬送部である復路側搬送部33cとするようにしたが、本発明はこれに限られず、これらの上下関係を逆にすることもできる。
【0136】
さらに、上記実施の形態では、基板の上面を第1面とし、下面を第2面としたが、基板の下面を第1面とし、上面を第2面とすることもできる。
さらにまた、上記実施の形態では、ヘテロ接合型太陽電池用の基板の両面上に透明導電酸化物層を形成する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、種々の基板の両面上に種々の膜を形成する場合に適用することができる。
【0137】
ただし、本発明は、ヘテロ接合型太陽電池用の基板の両面上に透明導電酸化物層を形成する場合に特に有効となるものである。
【0138】
また、上記実施の形態では、基板保持器搬送機構3及び方向転換機構40について、一対のスプロケットと、これら一対のスプロケットに架け渡されたチェーンから構成するようにしたが、例えばベルトやレールを用いた環状形状の搬送駆動機構を用いることもできる。
さらに、基板保持器支持機構18については、ローラではなくベルトやレールを用いて構成することもできる。
【0139】
一方、方向転換機構40については、上述した第1〜第3のガイド部材41〜43によって構成する上記実施の形態のものには限られず、以下のように変形することもできる。
【0140】
例えば、
図18に示す変形例では、上記第2のガイド部材42に対応するガイド部材44と、上記第3のガイド部材43に対応するガイド部材43Aとを有し、これら一対のガイド部材44、43Aによって第1及び第2の方向転換経路が形成されるように構成されている。
【0141】
ここで、ガイド部材44は、例えば平仮名の「て」(Tに類似する形状)字状に形成され、その第1の搬送方向P1の上流側の部分44aが上記第2のガイド部材42の第1の搬送方向P1の上流側の部分と同等の曲面形状に形成されている。
【0142】
そして、上述した第1の駆動部36によって駆動される基板保持器11の第1の被駆動軸12を、ガイド部材44の第1の搬送方向P1の上流側の部分44aに接触させて当該部分44aに沿って上方から下方に案内するように構成されている。
【0143】
一方、ガイド部材43Aは、その第1の搬送方向P1の上流側の部分43aが上記第3のガイド部材43の第1の搬送方向P1の上流側の部分と同等の曲面形状に形成されている。
【0144】
そして、上述した第2の駆動部46によって駆動される基板保持器11の第2の被駆動軸13を、ガイド部材43Aの第1の搬送方向P1の上流側の部分43aと接触させて当該部分43aに沿って上方から下方に案内するように構成されている。
【0145】
このような構成を有する本例によれば、上述した第1のガイド部材41が不要になるとともに、上記第2のガイド部材42に対応するガイド部材44の材料を少なくすることができるので、方向転換機構40の構成の簡素化ひいては装置構成簡素化及びコストダウンを図ることができる。
【0146】
また、第1及び第2の駆動部36、46の形状については、上記実施の形態に限られず、基板保持器11の第1及び第2の被駆動軸12、13と確実に接触して支持駆動することができる限り、種々の形状のものを採用することができる。
【0147】
さらに、本発明は、上記実施の形態のように、成膜前の基板10aを真空槽2内に搬入し、成膜済の基板10bを真空槽2から搬出する場合のみならず、成膜前の基板10aを基板保持器11と共に真空槽2内に搬入し、成膜済の基板10bを基板保持器11と共に真空槽2から搬出する場合にも適用することができる。
【課題】複数の基板保持器を用いる通過型の成膜装置において、基板の両面に良質な透明導電酸化物層を効率良く形成するとともに、装置の小型化及び構成の簡素化を達成しうるヘテロ接合型太陽電池の製造技術を提供する。
【解決手段】単一の真空雰囲気が形成される真空槽2内に、基板保持器11に保持された基板10の第1面上に第1の透明導電酸化物層の成膜を行うスパッタ手段4Tを有する第1の成膜領域4と、基板保持器11に保持された基板10の第2面上に第2の透明導電酸化物層の成膜を行う反応性プラズマ蒸着手段5Rを有する第2の成膜領域5とを設ける。鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成された搬送経路に沿って複数の基板保持器11を搬送して第1及び第2の成膜領域4、5を通過させ、基板10の両面上に透明導電酸化物層を形成する。