特許第6379322号(P6379322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6379322
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20180813BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20180813BHJP
   C23C 16/54 20060101ALI20180813BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20180813BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   C23C14/56 G
   C23C16/44 F
   C23C16/54
   H01L21/68 A
   B65G49/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-504296(P2018-504296)
(86)(22)【出願日】2017年11月6日
(86)【国際出願番号】JP2017039940
【審査請求日】2018年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-216343(P2016-216343)
(32)【優先日】2016年11月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(72)【発明者】
【氏名】松崎 淳介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明久
(72)【発明者】
【氏名】水島 優
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−054569(JP,A)
【文献】 特開2007−031821(JP,A)
【文献】 特開2013−207140(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/104826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/56
B65G 49/06
C23C 16/44
C23C 16/54
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の真空雰囲気が形成される真空槽と、
前記真空槽内に設けられ、基板保持器に保持された基板に第1の膜を形成する第1の成膜領域と、
前記真空槽内の前記第1の成膜領域の下方または上方のいずれか一方に設けられ、前記基板保持器に保持された前記基板に第2の膜を形成する第2の成膜領域と、
複数の前記基板保持器に第1の成膜領域と前記第2の成膜領域とを通過させる基板保持器搬送機構と、を備え、
前記基板保持器搬送機構は、
鉛直面に投影された形状が環状の形状になるように形成された搬送経路と、
前記複数の基板保持器に設けられた被駆動部と接触し、前記基板保持器の水平状態を維持しながら前記被駆動部を押して前記基板保持器を前記搬送経路に沿って移動させる駆動部と、
を有し、
前記搬送機構は、
前記第1の成膜領域の一端から他端に亘って配置され、前記駆動部によって前記基板保持器に前記第1の成膜領域を通過させる第1の搬送部と、
前記第2の成膜領域の一端から他端に亘って配置され、前記駆動部によって前記基板保持器に前記第2の成膜領域を通過させる第2の搬送部と、
を有し、
前記基板保持器搬送機構には、前記基板保持器の水平状態を維持しながら前記基板保持器を前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に移動させる搬送折り返し部が設けられ、
前記搬送機構には、前記第2の搬送部から前記第1の搬送部に前記駆動部を移動させる駆動部折り返し部が設けられた成膜装置。
【請求項2】
前記基板保持器の移動方向の下流側の端部と移動方向の上流側の端部とに、成膜材料を遮蔽する突状の遮蔽部が設けられた請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
隣り合って移動する2個の前記基板保持器の前記遮蔽部のうち、先行して移動する前記基板保持器の前記移動方向の下流側の前記遮蔽部と、後行して移動する前記基板保持器の前記移動方向の上流側の前記遮蔽部とは、前記基板保持器の底面からの高さが異なって形成され、移動の際に重なり合って配置される請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記基板保持器搬送機構は、回転軸線を中心に回転する二個の駆動輪に架け渡された搬送駆動部材を有し、
前記駆動部は、前記搬送駆動部材にそれぞれ設けられた第2の駆動部第1の駆動部とを含み、
各前記基板保持器の前記被駆動部には、前記基板保持器の移動方向の上流側に設けられた上流側被駆動部と下流側に設けられた下流側被駆動部とが含まれ、
前記第2の駆動部は、前記下流側被駆動部と接触して前記下流側被駆動部を押圧して前記基板保持器を直線移動させ、
前記第1の駆動部は、前記第2の駆動部よりも移動方向の後方側に配置され、前記第2の駆動部によって直線移動される前記基板保持器の移動方向上流側に位置する前記駆動輪の側面に位置して回転中に、前記上流側被駆動部に接触して押圧し、前記基板保持器を前記第2の駆動部の移動速度よりも高速に移動させる請求項1記載の成膜装置。
【請求項5】
前記基板保持器は、当該移動方向に対して直交する方向に沿って複数の成膜対象基板が並べられるように構成された請求項1記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で基板保持器に保持された基板の両面に通過成膜を行う成膜装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の被成膜基板をそれぞれトレイ等の基板保持器に載置して通過成膜する成膜装置が知られている。
このような成膜装置としては、成膜対象である基板を真空槽内に導入(ローディング)して基板保持器に保持させ、成膜が終了した基板を基板保持器から取り外して真空槽の外へ排出(アンローディング)している。
【0003】
従来技術の構成では、基板は、ローディング位置からアンローディング位置まで、その成膜面が水平に保たれていて、水平面内に構成された環状の搬送経路を移動しながら、各プロセスを行うようになっている。
【0004】
その結果、このような従来技術では、成膜装置の大型化及び複雑化が避けられないという問題がある。
また、各基板を保持した複数の基板保持器を搬送して通過成膜を行う場合、成膜の効率をできるだけ大きくすることが好ましい。
【0005】
しかし、このような通過成膜を行う装置にあっては、効率良く成膜を行うことが困難であるという問題がある。
特に、基板の両面に成膜を行う装置においては、上述した課題がより深刻になるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−031821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、複数の基板保持器を用い、基板の両面に効率良く成膜が可能で、しかも小型且つ簡素な構成の通過型の成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明は、単一の真空雰囲気が形成される真空槽と、前記真空槽内に設けられ、基板保持器に保持された基板に第1の膜を形成する第1の成膜領域と、前記真空槽内の前記第1の成膜領域の下方または上方のいずれか一方に設けられ、前記基板保持器に保持された前記基板に第2の膜を形成する第2の成膜領域と、複数の前記基板保持器に第1の成膜領域と前記第2の成膜領域とを通過させる基板保持器搬送機構と、を備え、前記基板保持器搬送機構は、鉛直面に投影された形状が環状の形状になるように形成された搬送経路と、前記複数の基板保持器に設けられた被駆動部と接触し、前記基板保持器の水平状態を維持しながら前記被駆動部を押して前記基板保持器を前記搬送経路に沿って移動させる駆動部とを有し、前記搬送機構は、前記第1の成膜領域の一端から他端に亘って配置され、前記駆動部によって前記基板保持器に前記第1の成膜領域を通過させる第1の搬送部と、前記第2の成膜領域の一端から他端に亘って配置され、前記駆動部によって前記基板保持器に前記第2の成膜領域を通過させる第2の搬送部と、を有し、前記基板保持器搬送機構には、前記基板保持器の水平状態を維持しながら前記基板保持器を前記第1の搬送部から前記第2の搬送部に移動させる搬送折り返し部が設けられ、前記搬送機構には、前記第2の搬送部から前記第1の搬送部に前記駆動部を移動させる駆動部折り返し部が設けられた成膜装置である。
また、本発明は、前記基板保持器の移動方向の下流側の端部と移動方向の上流側の端部とに、成膜材料を遮蔽する突状の遮蔽部が設けられた成膜装置である。
本発明は、隣り合って移動する2個の前記基板保持器の前記遮蔽部のうち、先行して移動する前記基板保持器の前記移動方向の下流側の前記遮蔽部と、後行して移動する前記基板保持器の前記移動方向の上流側の前記遮蔽部とは、前記基板保持器の底面からの高さが異なって形成され、移動の際に重なり合って配置される成膜装置である。
本発明は、前記基板保持器搬送機構は、回転軸線を中心に回転する二個の駆動輪に架け渡された搬送駆動部材を有し、前記駆動部は、前記搬送駆動部材にそれぞれ設けられた第2の駆動部第1の駆動部とを含み、各前記基板保持器の前記被駆動部には、前記基板保持器の移動方向の上流側に設けられた上流側被駆動部と下流側に設けられた下流側被駆動部とが含まれ、前記第2の駆動部は、前記下流側被駆動部と接触して前記下流側被駆動部を押圧して前記基板保持器を直線移動させ、前記第1の駆動部は、前記第2の駆動部よりも移動方向の後方側に配置され、前記第2の駆動部によって直線移動される前記基板保持器の移動方向上流側に位置する前記駆動輪の側面に位置して回転中に、前記上流側被駆動部に接触して押圧し、前記基板保持器を前記第2の駆動部の移動速度よりも高速に移動させる成膜装置である。
さらに、本発明は、前記基板保持器は、当該移動方向に対して直交する方向に沿って複数の成膜対象基板が並べられるように構成された成膜装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、単一の真空雰囲気が形成される真空槽内において、搬送経路が鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成されるとともに、複数の基板保持器を水平にした状態で搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構を備えていることから、小型の成膜装置を提供することができる。
【0010】
また、本発明では、基板保持器搬送機構が、複数の基板保持器にそれぞれ設けられた被駆動部と接触して当該基板保持器を移動方向に押圧して移動させる複数の駆動部を有し、当該駆動部は、隣り合う二個の基板保持器について、移動方向下流側の基板保持器の移動方向上流側の端部と、移動方向上流側の基板保持器の移動方向下流側の端部とが近接した状態で成膜領域を搬送するように構成されていることから、複雑な制御を行うことなく搬送経路にできるだけ多くの基板保持器を配置することができ、これにより構成が簡素で且つ効率良く成膜を行う成膜装置を提供することができる。
【0011】
また、複数の基板保持器の間の間隔を従来技術に比べて狭くすることができるので、成膜材料の無駄を省き効率良く使用することができるとともに、基板保持器の間を通過する成膜材料の量を少なくすることができるので、成膜材料の真空槽内への付着量を減らすことができ、また真空槽内における成膜材料のコンタミネーションを防止することができる。
【0012】
また、基板の両面に効率良く成膜が可能で、しかも小型且つ簡素な構成の通過型の成膜装置を提供することができる。
【0013】
また、遮蔽部により、真空槽内における成膜材料のコンタミネーションを防止することができる。
【0014】
また、駆動部間の距離を適切に設定することで、複数の基板保持器を自動的に接近させて移動させることができる。
【0015】
また、第1及び第2の搬送部を一定の速度で搬送させた状態で、第1の回転駆動手段側から基板保持器を排出する際においても、搬送駆動部材の加速用駆動部によって基板保持器を加速することができ、これにより排出する基板保持器を後続の基板保持器に対して自動的に離間させて円滑に排出することができる。
【0016】
第1の回転駆動手段側から基板保持器を導入する場合において第1の回転駆動手段を通過する際に、また第1の回転駆動手段側から基板保持器を排出する際に、搬送駆動部材の加速用駆動部によって容易に基板保持器を加速することができる。
【0017】
また、本発明において、基板保持器が当該移動方向に対して直交する方向に複数の成膜対象基板を並べて保持するように構成されている場合には、従来技術のような基板の移動方向に複数の基板を並べて保持する基板保持器を搬送して成膜を行う場合と比較して、基板保持器の長さ及びこれに伴う余剰スペースを削減することができるので、成膜装置のより省スペース化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る成膜装置の実施の形態の全体を示す概略構成図
図2】本実施の形態における基板保持器搬送機構の基本構成を示す平面図
図3】同基板保持器搬送機構の要部構成を示す正面図
図4】(a)〜(c):本実施の形態に用いる基板保持器の構成を示すもので、図4(a)は平面図、図4(b)は正面図、図4(c)は遮蔽部の近傍を示す拡大図
図5】(a)(b):基板保持器搬送機構における第1及び第2の駆動部の寸法と、基板保持器の寸法との関係を示す説明図
図6】真空槽内への基板の導入動作を示す説明図(その1)
図7】真空槽内への基板の導入動作を示す説明図(その2)
図8】真空槽内への基板の導入動作を示す説明図(その3)
図9】(a)(b):本実施の形態において、基板保持器が基板保持器搬送機構へ渡される動作の説明図(その1)
図10】(a)(b):本実施の形態において、基板保持器が基板保持器搬送機構へ渡される動作の説明図(その2)
図11】(a)(b):本実施の形態において、基板保持器が基板保持器搬送機構へ渡される動作の説明図(その3)
図12】(a)(b):本実施の形態において、基板保持器が基板保持器搬送機構へ渡される動作の説明図(その4)
図13】(a)(b):本実施の形態において、基板保持器が基板搬入搬出機構へ渡される動作の説明図(その1)
図14】(a)(b):本実施の形態において、基板保持器が基板搬入搬出機構へ渡される動作の説明図(その2)
図15】(a)(b):本実施の形態において、基板保持器が基板搬入搬出機構へ渡される動作の説明図(その3)
図16】真空槽内から基板を排出する動作を示す説明図(その1)
図17】真空槽内から基板を排出する動作を示す説明図(その2)
図18】真空槽内から基板を排出する動作を示す説明図(その3)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る成膜装置の実施の形態の全体を示す概略構成図である。
また、図2は、本実施の形態における基板保持器搬送機構の基本構成を示す平面図、図3は、同基板保持器搬送機構の要部構成を示す正面図である。
さらに、図4(a)〜(c)は、本実施の形態に用いる基板保持器の構成を示すもので、図4(a)は平面図、図4(b)は正面図、図4(c)は遮蔽部の近傍を示す拡大図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態の成膜装置1は、真空排気装置1aに接続された単一の真空雰囲気が形成される真空槽2を有している。
【0021】
真空槽2の内部には、後述する搬送経路を有し、基板保持器11を搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構3が設けられている。
【0022】
この基板保持器搬送機構3は、基板10を保持する複数の基板保持器11を、近接した状態で連続して搬送するように構成されている。
【0023】
ここで、基板保持器搬送機構3は、例えばスプロケット等からなり駆動機構(図示せず)から回転駆動力が伝達されて動作する同一径の円形の第1及び第2の駆動輪(第1及び第2の回転駆動手段)31、32を有し、これら第1及び第2の駆動輪31、32が、それぞれの回転軸線Q1、Q2を平行にした状態で所定距離をおいて配置されている。
【0024】
そして、第1及び第2の駆動輪31、32には例えばチェーン等からなる二本の搬送駆動部材33が離間して架け渡されている。
【0025】
さらに、図2に示すように、これら第1及び第2の駆動輪31、32に二本の搬送駆動部材33が架け渡された構造体が所定の距離をおいて平行に配置され、これにより鉛直に配置された平面(この平面は水平面に対して垂直に配置された平面であって鉛直面と称する。)に対して環状となる搬送経路が形成されている。
【0026】
本実施の形態では、搬送経路を構成する搬送駆動部材33のうち上側の部分に、第1の駆動輪31から第2の駆動輪32に向って移動して基板保持器11を第1の移動方向に搬送する往路側搬送部(第1の搬送部とも称する)33aが形成されるとともに、第2の駆動輪32の周囲の部分の搬送駆動部材33によって基板保持器11の移動方向を折り返して反対方向に転換する折り返し部33bが形成され、さらに、二本の搬送駆動部材33のうち下側の部分に、第2の駆動輪32から第1の駆動輪31に向って移動して基板保持器11を第2の移動方向に搬送する復路側搬送部(第2の搬送部とも称する)33cが形成されている。
【0027】
本実施の形態の基板保持器搬送機構3は、各搬送駆動部材33の上側に位置する往路側搬送部33aと、各搬送駆動部材33の下側に位置する復路側搬送部33cとがそれぞれ対向し、鉛直方向に関して重なるように構成されている(図1図2参照)。
【0028】
また、基板保持器搬送機構3には、基板保持器11を導入する基板保持器導入部30Aと、基板保持器11を折り返して搬送する搬送折り返し部30Bと、基板保持器11を排出する基板保持器排出部30Cが設けられている。
【0029】
ここで、搬送折り返し部30Bは、例えば一連の環状に形成された反転部34を有し、この反転部34に設けられた複数の支持部(図示せず)と、上記搬送駆動部材33の折り返し部33bに設けられた複数の支持部(図示せず)とによって各基板保持器11を支持し、往路側搬送部33a上での所定方向への移動が終了された基板保持器11は復路側搬送部33cに移動されて往路側搬送部33a上を移動したときの方向とは逆方向への移動を開始する。
基板保持器11は、往路側搬送部33aを移動するときに鉛直上方を向けられた面は、往路側搬送部33aから復路側搬送部33cに移動されるときと復路側搬送部33c上で移動するときとの両方とも、鉛直上方を向けられた状態が維持される。
【0030】
また、本実施の形態では、第1、第2の駆動輪31、32は、モーター等の回転装置によって両方の側面が同速度で移動するように、回転軸線Q1、Q2を中心にして同じ回転方向に一定の速度で回転される。
各搬送駆動部材33は第1、第2の駆動輪31、32の側面に接触されており、搬送駆動部材33の第1の駆動輪31に接触した部分と第2の駆動輪32に接触した部分とは、第1、第2の駆動輪31、32と一緒に滑ることなく回転移動し移動方向後方側から移動方向前方側へ回転移動する。他方、第1の駆動輪31と第2の駆動輪32との間では移動方向後方側(移動方向上流側)から移動方向前方側(移動方向下流側)に直線移動する。
各搬送駆動部材33は伸縮しない材料で構成されており、また、弛まないように第1、第2の駆動輪31、32の間に掛け渡され、往路側搬送部33aの中と復路側搬送部33cの中とでは、各搬送駆動部材33は水平な平面形状に配置されている。従って、第1、第2の駆動輪31、32の間の各搬送駆動部材33も、第1及び第2の駆動輪31、32の側面の移動速度と同じ速度で移動するように構成されている。
【0031】
本実施の形態では、真空槽2内において、基板保持器搬送機構3の上部に配置されたスパッタ源4Tと対面する空間である第1の成膜領域4が設けられ、基板保持器搬送機構3の下部に配置されたスパッタ源5Tと対面する空間である第2の成膜領域5が設けられている。
【0032】
なお、第1及び第2の成膜領域4、5には、所定のスパッタガスを導入するガス導入機構(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0033】
本実施の形態では、上述した搬送駆動部材33を有する往路側搬送部33aは、上記第1の成膜領域4の一端から他端に亘って直線的に配置されており、後述するように、往路側搬送部33a内の搬送経路に沿って移動する基板保持器11は、第1の成膜領域4の一端と他端との間を水平方向に移動して通過するように構成されている。
また搬送駆動部材33を有する復路側搬送部33cは、同様に、上記第2の成膜領域5の一端から他端の間に亘って直線的に配置されており、後述するように、復路側搬送部33c内の搬送経路に沿って移動する基板保持器11は、上記第2の成膜領域5の一端と他端との間を水平方向に移動して通過するように構成されている。
【0034】
そして、搬送経路を構成するこれら搬送駆動部材33を有する往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cの中を基板保持器11が通過する場合に、基板保持器11に保持された複数の基板10(図2参照)は水平状態で移動されるようになっている。
【0035】
真空槽2内の基板保持器搬送機構3の近傍の位置、例えば第1の駆動輪31に隣接する位置には、基板保持器搬送機構3に基板保持器11を渡し、また、基板保持器搬送機構3から基板保持器11を受け取るための基板搬入搬出機構6が設けられている。
【0036】
本実施の形態の基板搬入搬出機構6は、昇降機構60によって例えば鉛直上方向又は鉛直下方向に駆動される駆動ロッド61の先(上)端部に設けられた支持部62を有している。
【0037】
本実施の形態では、基板搬入搬出機構6の支持部62上に搬送ロボット64が設けられ、この搬送ロボット64上に上述した基板保持器11を支持して基板保持器11を鉛直上下方向に移動させ、かつ、搬送ロボット64によって基板保持器搬送機構3との間で基板保持器11を渡し且つ受け取るように構成されている。
【0038】
この場合、後述するように、基板搬入搬出機構6は基板保持器搬送機構3の往路側搬送部33aの基板保持器導入部30Aに基板保持器11を渡し(この位置を「基板保持器受け渡し位置」という。)、また、基板搬入搬出機構6は基板保持器搬送機構3の復路側搬送部33cの基板保持器排出部30Cから基板保持器11を受け取る(この位置を「基板保持器取り出し位置」という。)ように構成されている。
【0039】
真空槽2の例えば上部には、真空槽2内に基板10を搬入し且つ真空槽2から基板10を搬出するための基板搬入搬出室2Aが設けられている。
【0040】
この基板搬入搬出室2Aは、例えば上述した基板搬入搬出機構6の支持部62の上方の位置に連通口2Bを介して設けられており、例えば基板搬入搬出室2Aの上部には、開閉可能な蓋部2aが設けられている。
【0041】
そして、後述するように、基板搬入搬出室2A内に搬入された基板10を基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11に渡して保持させ、かつ、成膜済の基板10Aを基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11から例えば真空槽2の外部の大気中に搬出するように構成されている。
【0042】
なお、本実施の形態の場合、基板搬入搬出機構6の支持部62の上部の縁部に、基板10を搬入及び搬出する際に基板搬入搬出室2Aと真空槽2内の雰囲気を隔離するための例えばOリング等のシール部材63が設けられている。
【0043】
この場合、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板搬入搬出室2A側に向って上昇させ、支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて連通口2Bを塞ぐことにより、真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離するように構成されている。
【0044】
二本の搬送駆動部材33には、それぞれ所定の間隔をおいて複数の対となる駆動部が搬送駆動部材33の外方側に突出するように設けられている。
【0045】
図3に示すように、本実施の形態では、対となる駆動部であって、加速用駆動部として用いられる第1の駆動部21と、加速用には用いられない他の駆動部としての第2の駆動部22が二本の搬送駆動部材33にそれぞれ設けられている。
【0046】
ここで、第1の駆動部21と第2の駆動部22とは両方とも棒形状であり、第1の駆動部21と第2の駆動部22とは、搬送駆動部材33の表面に対して垂直になるようにして搬送駆動部材33に固定されている。要するに、棒形状の第1、第2の駆動部21、22が各搬送駆動部材33の表面に垂直に立設されている。後述するように、第1、第2の駆動部21、22が基板保持器11の第1、第2の被駆動部12、13と接触して当該基板保持器11を移動方向に押圧して移動させるように設けられている。
【0047】
また、一対の搬送駆動部材33(図2参照)の内側の位置で、第1及び第2の駆動輪31、32の間には、搬送する基板保持器11を支持する一対の基板保持器支持機構18が設けられている。
搬送駆動部材33は環状にされており、一部が上方に位置し、他の一部が下方に位置するように配置されている。搬送駆動部材33は金属で形成されたベルト等である。
搬送駆動部材33のうちの上方に位置する部分では、基板保持器11は基板保持器支持機構18によって搬送駆動部材33よりも上方に位置するように支持されており、搬送駆動部材33の下方に位置する部分では、基板保持器11は基板保持器支持機構18によって搬送駆動部材33よりも下方に位置するように支持されている。
【0048】
基板保持器支持機構18は、例えば複数のローラ等の回転可能な部材からなるもので、それぞれ搬送駆動部材33の近傍に設けられている。
【0049】
本実施の形態では、図3に示すように、搬送駆動部材33の往路側搬送部33aの近傍に往路側基板保持器支持機構18aが設けられるとともに、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cの近傍に復路側基板保持器支持機構18cが設けられ、往路側基板保持器支持機構18aと復路側基板保持器支持機構18cとは、搬送される基板保持器11の下面の両縁部を支持するように配置構成されている。
【0050】
本実施の形態に用いる基板保持器11は、基板10の両面上に成膜を行うものであり、基板保持器11は保持器本体9を有しており、後述するように、第1、第2の被駆動部12,13は、保持器保体9の二側面に設けられている。保持器本体9には開口部が形成され、トレイ状にされている。
【0051】
図2及び図4(a)〜(c)に示すように、本実施の形態の基板保持器11は、例えば長尺矩形の平板状に形成され、その長手方向即ち移動方向に対して直交する方向に例えば矩形状の複数の基板10を一列に並べてそれぞれ保持するように構成されている。
【0052】
ここで、複数の基板10を保持する部分には、各基板10と同じ形状で各基板10の両面の全部が露出する大きさの開口部17が設けられている。基板を保持する部分には、図示しない保持部材によって両面が露出された状態で、基板を開口部17上に保持するように構成されている。基板10が矩形の場合は開口部17の形状も矩形である。
【0053】
本発明では、特に限定されることはないが、設置面積を小さくし且つ処理能力を向上させる観点からは、基板保持器11について、本実施の形態のように、移動方向に対して直交する方向に複数の基板10を一列に並べてそれぞれ保持するように構成することが好ましい。
【0054】
ただし、成膜効率を向上させる観点からは、移動方向に対して直交する方向に複数の基板10を複数列に並べることも可能である。
【0055】
この場合、基板10が円形形状であれば、例えば千鳥配列を採用することにより、成膜されない部分の面積を小さくすることができる。
【0056】
また、基板10と後述する第1及び第2の遮蔽部15、16との寸法比により複数列に並べた方が成膜効率が向上する場合には、基板10を複数列に並べることもできる。
【0057】
各基板保持器11の保持器本体9は、移動方向とは垂直方向が長手方向にされた矩形形状であり、保持器本体9の四側面には、基板保持器11が移動する移動方向の下流側に向けられた側面と上流側に向けられた側面と、側方に向けられた二側面とがあり、側方に向けられた二側面には、それぞれ第1、第2の被駆動部12,13が設けられている。
側方に向けられた二側面のうち一側面の中では、第1の被駆動部12が第2の被駆動部13よりも移動方向の下流側に設けられており、従って、二側面の中では、第1の被駆動部12は保持器本体9の先頭側に設けられ、第2の被駆動部12は保持器本体9の後尾側に設けられている。
第1、第2の被駆動部12,13は棒形状であり、水平方向に伸びるように保持器本体9の側面に垂直に設けられている。
二本の搬送駆動部材33間には隙間が設けられており、保持器本体9は二本の搬送駆動部材33の間に位置しており、第1、第2の被駆動部12,13はそれぞれ二本の搬送駆動部材33上に配置されている。ここでは第1、第2の被駆動部12,13は二本の搬送駆動部材33とは非接触にされており、第1、第2の被駆動部12,13が第1の駆動部21又は第2の駆動部22と非接触の状態では、基板保持器11は移動する搬送駆動部材33によっては移動されないようになっている。
【0058】
これら第1及び第2の被駆動部12、13の断面形状は、それぞれ基板保持器11の長手方向に延びる中心軸線を中心とした円形形状であり、後述するように、搬送駆動部材33に設けられた第1、第2の駆動部21、22と接触して第1及び第2の被駆動部12、13は第1又は第2の駆動部21、22によって押圧され、押圧される力により、基板保持器11が移動方向に向けて移動されるように構成されている。
二本の搬送駆動部材33は同一速度で移動するようになっており、二本の搬送駆動部材33にそれぞれ設けられた第2の駆動部22は、一個の基板保持器11の二側面にそれぞれ設けられた第1の被駆動部12に同時に接触し、また、二本の搬送駆動部材33にそれぞれ設けられた第1の駆動部21は一個の基板保持器11の二側面にそれぞれ設けられた第2の被駆動部13に同時に接触する。
【0059】
基板保持器11を搬送駆動部材33によって移動させる際に、基板保持器11の移動方向の上流側の端部と下流側の端部とには遮蔽部がそれぞれ設けられている。ここで上流側と下流側のいずれか一方の端部の遮蔽部を第1の遮蔽部(遮蔽部)15とし、他方の側の遮蔽部を第2の遮蔽部(遮蔽部)16とする。
【0060】
これら第1及び第2の遮蔽部15、16は、飛翔する成膜材料(スパッタ粒子)を遮蔽するためのもので、それぞれ基板保持器11の長手方向の全域にわたって移動方向側両端部から移動方向に突出するように設けられている。
【0061】
本実施の形態では、図4(c)に示すように、基板保持器11の第1の被駆動部12側の端部に設けられた第1の遮蔽部15が、基板保持器11の下面側において例えば移動方向下流側に突出するように設けられ、基板保持器11の第2の被駆動部13側の端部に設けられた第2の遮蔽部16が、基板保持器11の上面側において例えば移動方向上流側に突出するように設けられている。
【0062】
そして、複数の基板保持器11が近接した状態で搬送される場合において、例えば図4(c)に示すように、隣り合う二個の基板保持器11のうち、一方の基板保持器11の第1の遮蔽部15が下方、他方の基板保持器11の第2の遮蔽部16が上方となって、(または一方の基板保持器11の第1の遮蔽部15が上方、他方の基板保持器11の第2の遮蔽部16が下方となって)第1、第2の遮蔽部15、16が重ねられるようになっている。
重ねられた第1、第2の遮蔽部15、16の間には隙間が設けられていると良い。
ここで、「隣り合う二個の基板保持器11」とは、これら二個の基板保持器11の間には他の基板保持器11が位置しないことを意味しており、他の部材が隣り合う場合も同様とする。
【0063】
図5(a)(b)は、基板保持器搬送機構3における第1及び第2の駆動部21、22の寸法と、基板保持器11の寸法との関係を示す説明図である。
【0064】
本実施の形態の場合、各部分の寸法関係は往路側搬送部33aにおける場合を例にとって説明するが、第1の搬送部である往路側搬送部33aと、第2の搬送部である復路側搬送部33cとにおいて、各部分の寸法関係は同一であることから、往路側搬送部33aにおける寸法関係は復路側搬送部33cでも成立する。
【0065】
図5(a)(b)に示すように、往路側搬送部33aに位置する複数の第1の駆動部21は、その高さ(往路側搬送部33a内に位置する搬送駆動部材33表面から上端までの距離。「高さ」については以下同じ。)H1が、搬送される基板保持器11の第1及び第2の被駆動部12、13の高さhより高くされている。
一本の搬送駆動部材33の中で隣り合う第1の駆動部21、21間の、搬送駆動部材33が平面形状に配置されているときの中心間距離である第1ピッチPは全て同一の大きさに設定されている。中心間距離は、下流側に向いた面間の距離と上流側に向いた面間の距離と等しくされている。以下も同じである。
【0066】
本実施の形態の場合、第1ピッチPは、図5(b)に示すように、1個の基板保持器11の第1及び第2の被駆動部12、13間の距離である被駆動部ピッチpより大きくなるように設定されている。
【0067】
そして、一本の搬送駆動部33の中で隣り合う第1の駆動部21、21を、隣り合って位置する基板保持器11の第2の被駆動部13、13の移動方向上流側の面にそれぞれ接触させ、第1の駆動部21、21を移動させて第2の被駆動部13,13を押圧することで、往路側搬送部33aの中で基板保持器11を移動方向下流側に移動させると、隣り合う基板保持器11、11が、近接した状態で整列して搬送されるように構成されている。
【0068】
ここでは、移動方向下流側に位置する基板保持器11の移動方向上流側の端部と、移動方向上流側に位置する基板保持器11の移動方向下流側の端部とが近接し、隣り合う移動方向上流側の基板保持器11の第1の遮蔽部15と、移動方向下流側の基板保持器11の第2の遮蔽部16とが、一方が下方、他方が上方に位置して隙間を間に配置して重ねられるように(図4(c)参照)、第1ピッチPと、被駆動部ピッチpと、各基板保持器11の寸法(第1及び第2の遮蔽部15、16の寸法)とが設定されている。
【0069】
一方、往路側搬送部33aに位置する複数の第2の駆動部22は、その高さ(往路側搬送部33aに対する頂部の距離)H2が、基板保持器11の第1及び第2の被駆動部12、13の高さhより高く、かつ、上記第1の駆動部21の高さH1より低くなるように設定されている。
【0070】
一本の搬送駆動部材33の中では、第1の駆動部21と第2の駆動部22とは交互に配置されており、隣り合う第2の駆動部22、22間の、搬送駆動部材33が平面形状に配置されているときの距離である第2ピッチP0は、上記第1ピッチPと同一の大きさに設定されている。
【0071】
そして、1本の搬送駆動材料33の中では、第2の駆動部22の移動方向上流側と下流側にはそれぞれ第1の駆動部21が第2の駆動部22に対して隣り合って配置されており、第2の駆動部22と、その第2の駆動部22に対して移動方向上流側で隣り合った第1の駆動部21との間の、搬送駆動部材33が平面形状に配置されているときの距離である上流側ピッチP1は、第2の駆動部22と、その第2の駆動部22に対して移動方向下流側で隣り合った第1の駆動部21との間の、搬送駆動部材33が平面形状に配置されているときの距離である下流側ピッチP2よりも大きくなるようにされている(図5(a)参照)。
【0072】
より詳細には、第2ピッチP0は第1,第2の駆動部21、22の進行方向の下流に向く面間の距離であり、被駆動部ピッチpは、第1、第2の被駆動部12,13の進行方向の上流に向く面間の距離であるものとする。上流側ピッチP1は、被駆動部ピッチpより小さくされている(図5(b)参照)。
【0073】
以下、本実施の形態の成膜装置1の動作、並びに、この成膜装置1を用いた成膜方法を、図6図18を参照して説明する。
【0074】
本実施の形態では、まず、図6に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離した状態で、大気圧までベントした後、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを開ける。
【0075】
その後、図示しない搬送ロボットを用いて基板10を基板搬入搬出機構6の支持部62の搬送ロボット64上の基板保持器11に装着して保持させる。
【0076】
そして、図7に示すように、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを閉じて所定の圧力となるまで真空排気をした後、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板保持器受け渡し位置まで下降させ、基板保持器11の高さが搬送駆動部材33の往路側搬送部33aと同等の高さ位置となるようにする。
【0077】
さらに、図8に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62に設けた搬送ロボット64によって基板保持器11を基板保持器搬送機構3の基板保持器導入部30Aに配置する。
【0078】
本実施の形態において基板保持器11を基板保持器搬送機構3へ渡す動作について、図9(a)(b)〜図12(a)(b)を参照して説明する。
【0079】
なお、実際上は、この渡す動作の際、基板保持器11を基板搬入搬出機構6へ渡す動作も同時に行われるが、本明細書では、理解を容易にするため、基板保持器11が基板搬入搬出機構6へ渡される動作については後述する。
【0080】
以下、往路側搬送部33a中に位置する搬送駆動部材33に位置する基板保持器11Aと隣り合って後続する基板保持器11Bが基板搬入搬出機構6から第1の搬送部33aに移動される工程について説明する。
【0081】
まず、基板搬入搬出機構6の搬送ロボット64を用い、後続する基板保持器11Bを図9(a)に示すように、基板保持器搬送機構3の基板保持器導入部30Aに配置する。
【0082】
基板保持器導入部30Aに配置された基板保持器11Bは、往路側搬送部33aを上流側に延長した場所に静止していることになり、その基板保持器11Bの第1の被駆動部12は、第2の被駆動部13よりも移動方向下流側に位置している。
【0083】
このとき、基板保持器11Aと基板保持器導入部30Aに位置する後続の基板保持器11Bとは離間しており、遮蔽部15,16は重なり合っていない。
基板保持器導入部30Aに位置する後続の基板保持器11Bの下方では第1の駆動輪31が回転軸線Q1を中心に回転しており、第1の駆動輪31と接触した搬送駆動部材33の部分は、第1の駆動輪31の回転速度と同じ大きさの回転速度で回転移動されている。回転移動する搬送駆動部材33に設けられた第2の駆動部22Bも回転移動し、その回転移動によって、第2の駆動部22Bは図9(b)に示すように上方に移動される。
【0084】
第1の駆動輪31が更に回転し、第2の駆動部22Bが設けられた部分の搬送駆動部材33が第1の駆動輪31から離間すると、第2の駆動部22Bは、往路側搬送部33aの搬送経路に沿った直線移動を開始する。
回転移動中の第2の駆動部22Bは、回転の外方向に向けて突き出されており、直線移動中は、上方に向けて突き出されている。
【0085】
基板保持器導入部30Aに位置する基板保持器11Bの第1の被駆動部12が回転軸線Q1の真上よりも上流側に位置するときは、回転中の第2の駆動部22Bが第1の被駆動部12に接触し、回転軸線Q1の真上よりも下流側に位置するときは、回転移動から直線移動に変更された第2の駆動部22Bが第1の被駆動部12に接触する。回転軸線Q1の真上に位置しているときは、回転移動から直線移動に切り替わるときの第2の駆動部22Bが第1の被駆動部12に接触する(図10(a))。
いずれの場合も第2の駆動部22Bの移動方向下流側を向く面が第1の被駆動部12の移動方向上流側を向く面に接触する。
【0086】
第2の駆動部22Bが第1の被駆動部12に接触した状態で回転移動または直線移動をすると、第1の被駆動部12は第2の駆動部22Bによって移動方向下流側に向けて押圧され、基板保持部11Bは移動方向下流側へ移動する。
【0087】
直線移動を継続すると、図10(b)に示すように、基板保持部11Bの先頭は、往路側搬送部33aの内部に進入し、往路側搬送部33aの内部を直線移動する。先行する基板保持器11Aも一緒に移動しており、その第2の被駆動部13と、後続する基板保持器11Bの第1の被駆動部12とは下流側ピッチP2の距離だけ離間した状態で直線移動されている。
【0088】
このとき、基板保持部11Bを移動させる第2の駆動部22Bよりも移動方向上流側では、第1の駆動輪31の回転によって、第2の駆動部22Bと隣り合った第1の駆動部21Bが回転移動によって上方に移動しており、図11(a)に示されたように、第1の駆動部21Bは第2の被駆動部13に近づいている。
【0089】
第1の駆動部21Bは、回転移動中でも搬送駆動部材33に対して垂直になっており、第1の駆動輪31が回転軸線Q1を中心として回転すると、第1の駆動部21Bの上端は、第1の駆動輪31よりも直径が大きな同心円に沿って回転する。
【0090】
従って、第1の駆動部21Bの上端の回転移動速度は、第1の駆動部21に接触した搬送駆動部材33の回転移動速度よりも高速である。
【0091】
第2の駆動部22Bが直線移動しているときには、第1の駆動部21Bの上端が第1の搬送部33aの移動方向の上流側に向きながら回転して上方に移動しており、斜め上方を向きながら上方に移動する第1の駆動部21Bの上端の割合と第2の駆動部22Bが第1の被駆動部12に接触している部分との間の距離は、上流側ピッチP1よりも大きくなっている。
【0092】
第1,第2の被駆動部12,13は同一の水平面である基準面内に位置している。第1の駆動部21Bが回転により上昇してその上端の部分が基準面と交叉するときには、基板保持器11Bは第2の被駆動部13が第1の駆動輪31の中心軸線Q1の真上位置よりも上流側に位置した状態で、第2の駆動部22Bの押圧によって移動中であり、第2の被駆動部13は、第1の被駆動部12の上端部分と第1の駆動部21Bとの間に位置している。
【0093】
第1の駆動部21Bの水平方向の移動速度は第2の被駆動部13の移動速度よりも早いため、第1の駆動部21Bは第2の被駆動部13に追いつき、第1の駆動部21Bの上端部分の下流側の面は第2の被駆動部13の上流側の面に接触する(図11(b))。
【0094】
更に、第1の駆動部21Bが更に回転しながら上昇すると、第2の被駆動部13は第2の駆動部22Bの移動速度よりも早い速度で第1の駆動部21Bによって水平方向に押圧され、基板保持部11Bの第1の被駆動部12は、接触していた第2の駆動部22Bから離間する(図12(a))。
第1の駆動部21Bが第1の駆動輪31中心軸線Q1の真上位置を通過する前は第1の駆動部21Bと第2の被駆動部13とが接触する部分は、第2の駆動部22Bの移動速度よりも速い速度で水平方向に移動し、後続する基板保持部11Bは先行する基板保持部11Aに近づく。第1の駆動部21Bと第2の被駆動部13との接触部分は、第1の駆動部21Bが回転移動する間、上端側から根本側へ移動する(図12(b))。
【0095】
第1の駆動部21Bが、第1の駆動輪31の中心軸線Q1の真上位置に到達すると、第1の駆動部21Bの回転移動は終了し、直線移動になる。第1の駆動部21Bの移動速度は第2の駆動部22Bの移動速度と等しくなる。
第1の駆動部21Bが第1の駆動輪31の中心線Q1の真上位置よりも上流側の時には、先行する第2の駆動部22Bと後行する第1の駆動部21Bとの間の距離は、第1の駆動輪31の回転によって短縮されるが、第1の駆動部21Bが第1の駆動輪31の中心線Q1の真上位置に到達すると、先行する第2の駆動部22Bと後行する第1の駆動部21Bとの間の距離は上流側ピッチP1の大きさになり、第2の駆動部22Bと第1の駆動部21Bとが直線移動する間は、上流側ピッチP1の距離が維持される。
以上の工程により、後続する基板保持器11Bの導入動作が終了する。
【0096】
搬送駆動部材33の往路側搬送部33aに設けられた複数の第1の駆動部21が、各基板保持器11の第2の被駆動部13にそれぞれ接触しており、この往路側搬送部33aを第2の駆動輪32(図8参照)に向う移動方向下流側(第1の移動方向)に移動させることにより、各基板保持器11が、それぞれ第1の駆動部21からの駆動力によって近接した状態で搬送されるようになっている。
【0097】
各基板保持器11は、基板保持器搬送機構3の動作により、搬送駆動部材33の往路側搬送部33aの中を、移動経路に沿って移動し、第1の成膜領域4を通過する(図1参照)。
往路側搬送部33aの中を移動する際に、各基板保持器11は第2の駆動輪32に近づく。
【0098】
これにより、往路側基板保持器支持機構18aによって支持された複数の基板保持器11の第2の被駆動部13に、上述した第1の駆動部21が接触して押圧され、一定の間隔で近接した状態で、搬送駆動部材33の往路側搬送部33a上を搬送折り返し部30Bに向って移動される(図3参照)。
【0099】
そして、基板保持器11が第1の成膜領域4の位置を通過する際に、基板保持器11に保持された基板10の表面上に、基板保持器11の上方に位置する第1のスパッタ源4Tによってスパッタリングによる成膜を行う(図1図2参照)。
【0100】
その後、搬送折り返し部30Bにおいて、第1の搬送部33aの中を移動中に、各基板保持器11の上方に向いた面を上方に向け、下方に向いた面を下方に向けた状態を維持しながら、各基板保持器11を往路側搬送部33aから搬送折り返し部30Bに移動させ、搬送折り返し部30Bから復路側搬送部33cに移動させる(図1参照)。
搬送折り返し部30Bの中を移動中の基板保持器11は、復路側搬送部33cでの搬送移動方向である第2の移動方向の上流側に第1の被駆動部12が位置しており、下流側に第2の被駆動部13が位置している。
【0101】
搬送折り返し部30Bから復路側搬送部33cに移動させる際には、搬送折り返し部30Bに位置する基板保持器11の第2の被駆動部13に第1の駆動部21を接触させ、基板保持器11を第1の駆動部21によって直線移動させる。
第1の駆動部21が後続する基板保持器11の第2の被駆動部13に接触しながら回転移動して基板保持器11を移動させる際に、その基板保持器11は先行する基板保持器11よりも高速に移動することは、上述の往路側搬送部33aの場合と同じである。
各基板保持器11は、一定の間隔で近接した状態で、搬送駆動部材33の復路側搬送部33c上を基板保持器排出部30Cに向って移動される(図3参照)。
各基板保持器11は、基板保持器排出部30Cに到達するまでに、第2の成膜領域5を通過する。
【0102】
この場合、本実施の形態の基板保持器搬送機構3では、上述したように、搬送折り返し部30Bを経由して往路側搬送部33aから復路側搬送部33cに移動された基板保持器11は、往路側搬送部33a内で上方に向けられていた面は上方に向けられ、下方に向けられた面は下方に向けられている。
このように、搬送折り返し部30Bを通過する際には、基板保持器11の上下に対する向きは変更されないため、第2の成膜領域5の位置を通過するときは、基板保持器11に保持された基板10の、第1のスパッタ源4Tで膜が形成されていない面が第2のスパッタ源5Tに面することになる。
【0103】
従って、基板保持器11の下方に位置する第2のスパッタ源5Tをスパッタリングしながら基板保持器11を通過させると、基板保持器11に保持された基板10の裏面へ膜が形成される(図1参照)。
【0104】
基板保持器11が基板保持器排出部30Cに到達した後、基板保持器11を基板搬入搬出機構6へ渡す動作を行う。
この場合、基板搬入搬出機構6の支持部62を基板保持器取り出し位置に配置しておく(図16参照)。
【0105】
以下、本実施の形態において、基板保持器11が基板搬入搬出機構6へ渡される動作について、図13(a)(b)〜図15(a)(b)を参照して説明する。
【0106】
なお、実際上は、この渡し動作の際、基板保持器11を基板保持器搬送機構3へ渡す動作も行われるが、当該動作は上述した通りであるので、以下、理解を容易にするため、基板保持器11を基板搬入搬出機構6へ渡す動作のみについて説明する。
【0107】
図13(a)は、基板搬入搬出機構6へ渡すべき基板保持器11Cが基板保持器搬送機構3の基板保持器排出部30Cに配置された状態を示すものである。
【0108】
以下、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cに配置された先行する基板保持器11C(以下、「先行側基板保持器11C」という。)が、後続の基板保持器11D(以下、「後続側基板保持器11D」という。)から切り離されて基板搬入搬出機構6へ渡される場合を例にとって説明する。
【0109】
図13(a)に示す状態では、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cに設けられた二つの第1の駆動部21C、21Dが、先行側基板保持器11Cと後続側基板保持器11Dの第2の被駆動部13の移動方向上流側の部分にそれぞれ接触しており、この復路側搬送部33cを第1の駆動輪31に向って第2の移動方向に移動させることにより、先行側基板保持器11Cと後続側基板保持器11Dが、それぞれ先行側第1の駆動部21Cと後続側第1の駆動部21Dからの駆動力によって第2の移動方向に搬送されるようになっている。
【0110】
この場合、先行側基板保持器11Cの第2の被駆動部13に接触している加速用駆動部である先行側第1の駆動部21Cは、第1の駆動輪31の下部において鉛直方向に向いて位置しており、先行側基板保持器11Cと後続側基板保持器11Dは、近接した状態となっている。
【0111】
この状態から、基板保持器搬送機構3を動作させて第1の駆動輪31を回転させ、図13(b)に示すように、搬送駆動部材33の復路側搬送部33cに設けられた先行側第1の駆動部21C及び後続側第1の駆動部21Dを第1の駆動輪31の円弧に沿って第2の移動方向に移動させると、先行側基板保持器11C及び後続側基板保持器11Dは、それぞれの駆動力によって第2の移動方向に搬送される。
【0112】
この場合、先行側第1の駆動部21Cは第1の駆動輪31より直径の大きい同心円上において先行側基板保持器11Cの第2の被駆動部13と接触しつつ回転移動することから、先行側第1の駆動部21Cが先行側基板保持器11Cの第2の被駆動部13を第2の移動方向に移動させる速度は、後続側第1の駆動部21Dが後続側基板保持器11Dの第2の被駆動部13を第2の移動方向に移動させる速度より大きくなり、その結果、先行側基板保持器11Cの移動方向上流側の端部が、後続側基板保持器11Dの移動方向下流側の端部に対して離れる。
【0113】
その後、第1の駆動輪31の回転に伴って先行側第1の駆動部21Cが鉛直方向から傾斜した状態になるに従い、図13(b)に示すように、先行側第1の駆動部21Cと、先行側基板保持器11Cの第2の被駆動部13との接触が外れ、これにより先行側基板保持器11Cは推進力を失うから、基板搬入搬出機構6の搬送ロボット64によって先行側基板保持器11Cを第2の移動方向に移動させて後続側基板保持器11Dに対して離間させる。
【0114】
そして、これ以降は基板搬入搬出機構6の搬送ロボット64を用いて先行側基板保持器11Cの取り出し動作を行う。
【0115】
さらに、搬送駆動部材33の動作を継続すると、先行側第1の駆動部21Cが搬送駆動部材33と共に第1の駆動輪31の円弧に沿って上方に移動するから、図14(a)に示すように、先行側第1の駆動部21Cの先端部が先行側基板保持器11Cの第2の被駆動部13と接触しないように、上述した搬送ロボット64を用いて先行側基板保持器11Cを第2の移動方向に移動させる。
符号33dは、復路側搬送部33cによって第2の成膜領域5を通過した第1、第2の駆動部21,22を、第1、第2の駆動部21,22が設けられた搬送駆動部材33の部分と共に、復路側搬送部33cから往路側搬送部33aに移動させる駆動部折り返し部であり、第1、第2の駆動部21,22は第1の駆動輪31の円弧に沿って上方に移動する。
【0116】
搬送駆動部材33の動作を継続すると、図14(b)に示すように、第2の駆動部22Cが搬送駆動部材33と共に第1の駆動輪31の円弧に沿って上方に移動するが、その際、後続の第2の駆動部22Cが先行する基板保持器11Cの第1の被駆動部12に接近する(図15(a)参照)から、図15(b)に示すように、先行する第2の駆動部22Cの先端部が先行側基板保持器11Cの第1の被駆動部12と接触しないように、上述した搬送ロボット64を用いて先行側基板保持器11Cを第2の移動方向に移動させる。
以上の工程により、先行側基板保持器11Cの取り出し動作が終了する。
【0117】
そして、上述した工程により取り出し動作を行った基板保持器11については、図16に示すように、搬送ロボット64と共に支持部62上に配置する。
【0118】
その後、図17に示すように、基板搬入搬出機構6の支持部62を上昇させ、支持部62上のシール部材63を真空槽2の内壁に密着させて真空槽2内の雰囲気に対して基板搬入搬出室2A内の雰囲気を隔離した状態で、大気圧までベントを行う。
【0119】
そして、図18に示すように、基板搬入搬出室2Aの蓋部2aを開け、図示しない搬送ロボットを用い、成膜済の基板10Aを基板保持器11から大気中に取り出す。
【0120】
その後、図6に示す状態に戻り、上述した動作を繰り返すことにより、複数の基板10に対してそれぞれ両面に成膜を行う。
【0121】
以上述べた本実施の形態にあっては、単一の真空雰囲気が形成される真空槽2内において、搬送経路が鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成されるとともに、複数の基板保持器11を水平にした状態で搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構3を備えていることから、小型の成膜装置1を提供することができる。
【0122】
また、本実施の形態では、基板保持器搬送機構3が、複数の基板保持器11にそれぞれ設けられた第1及び第2の被駆動部12、13と接触して当該基板保持器11を移動方向に押圧して移動させる複数の第1及び第2の駆動部21、22を有し、当該第1及び第2の駆動部21、22は、隣り合う基板保持器11について、移動方向下流側の基板保持器11の移動方向上流側の端部と、移動方向上流側の基板保持器11の移動方向下流側の端部とが近接した状態で第1及び第2の成膜領域4、5を搬送するように構成されていることから、複雑な制御を行うことなく搬送経路にできるだけ多くの基板保持器11を配置することができ、これにより構成が簡素で且つ効率良く成膜を行う成膜装置1を提供することができる。
【0123】
さらに、複数の基板保持器11の間の間隔を従来技術に比べて狭くすることができるので、成膜材料の無駄を省き効率良く使用することができるとともに、基板保持器11の間を通過する成膜材料の量を少なくすることができるので、成膜材料の真空槽2内への付着量を減らすことができ、また真空槽2内における成膜材料のコンタミネーションを防止することができる。
【0124】
さらにまた、本実施の形態の基板保持器搬送機構3は、基板保持器11を搬送経路に沿って第1の移動方向に搬送する往路側搬送部33aと、基板保持器11を搬送経路に沿って第1の移動方向と反対方向である第2の移動方向に搬送する復路側搬送部33cと、基板保持器11を上下関係を維持した状態で往路側搬送部33aから復路側搬送部33cに向って折り返して搬送する搬送折り返し部30Bとを有し、往路側搬送部33aが、第1の成膜領域4を通過し、かつ、復路側搬送部33cが、第2の成膜領域5を通過するように構成されていることから、基板10の両面に効率良く成膜が可能で、しかも小型且つ簡素な構成の通過型の成膜装置1を提供することができる。
【0125】
加えて、本実施の形態においては、基板保持器11の移動方向下流側端部及び移動方向上流側端部に、成膜材料を遮蔽する突状の第1及び第2の遮蔽部15、16が設けられており、これら第1及び第2の遮蔽部15、16が、隣り合う基板保持器11が搬送時に近接した状態で重なり合うように設けられていることから、成膜材料の真空槽2内への付着量をより減らすことができるとともに、真空槽2内における成膜材料のコンタミネーションを確実に防止することができる。
【0126】
一方、本実施の形態では、基板保持器搬送機構3が、円形の第1及び第2の駆動輪31、32に架け渡された一連の搬送駆動部材33にその外方側に突出するように第1及び第2の駆動部21、22を有し、このうち第1の駆動部21が、複数の基板保持器11を導入し且つ排出する側の第1の駆動輪31をその円弧に沿って通過する際に、第1の駆動部21が基板保持器11の第2の被駆動部13と接触して往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cの移動方向についての搬送速度より大きな速度で第2の被駆動部13を押圧して移動させるように構成されていることから、往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cを一定の速度で搬送させた状態で、第1の駆動輪31側から基板保持器11を導入する場合において第1の駆動輪31を通過する際に搬送駆動部材33の第1の駆動部21によって基板保持器11を加速することができ、これにより導入した基板保持器11を先行する基板保持器11に対して自動的に接近させて配置することができる。
【0127】
また、往路側搬送部33a及び復路側搬送部33cを一定の速度で搬送させた状態で、第1の駆動輪31側から基板保持器11を排出する際においても、搬送駆動部材33の第1の駆動部21によって基板保持器11を加速することができ、これにより排出する基板保持器11を後続の基板保持器11に対して自動的に離間させて円滑に排出することができる。
【0128】
特に、加速用駆動部である第1の駆動部21の搬送駆動部材33に対する高さH1が、他の駆動部である第2の駆動部22の搬送駆動部材33に対する高さH2よりも大きくなるように形成されている(H1>H2)。
第1の駆動部21が基板保持器11の第2の被駆動部13と接触する際に第1の駆動輪31の直径より直径が大きい同心円上において基板保持器11の第2の被駆動部13と接触しつつ回転移動するように構成されていることから、きわめて簡素な構成で、第1の駆動輪31側から基板保持器11を導入する場合において第1の駆動輪31を通過する際に、また第1の駆動輪31側から基板保持器11を排出する際に、搬送駆動部材33の第1の駆動部21によって容易に基板保持器11を加速することができる。
【0129】
また、本実施の形態においては、基板保持器11が当該移動方向に対して直交する方向に複数の基板10を並べて保持するように構成されていることから、従来技術のような基板の移動方向に複数の基板を並べて保持する基板保持器を搬送して成膜を行う場合と比較して、基板保持器の長さ及びこれに伴う余剰スペースを削減することができるので、成膜装置のより省スペース化を達成することができる。
【0130】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。
例えば上記実施の形態においては、搬送駆動部材33のうち上側の部分を第1の搬送部である往路側搬送部33aとするとともに、搬送駆動部材33のうち下側の部分を第2の搬送部である復路側搬送部33cとするようにしたが、本発明はこれに限られず、これらの上下関係を逆にすることもできる。
【0131】
また、第1及び第2の駆動部21、22の形状については、上記実施の形態に限られず、第1及び第2の被駆動部12、13と確実に接触して押圧して移動させることができる限り、種々の形状のものを採用することができる。
【0132】
さらに、本発明は、上記実施の形態のように、成膜前の基板10を真空槽2内に搬入し、成膜済の基板10Aを真空槽2から搬出する場合のみならず、成膜前の基板10を基板保持器11と共に真空槽2内に搬入し、成膜済の基板10Aを基板保持器11と共に真空槽2から搬出する場合にも適用することができる。
なお、上記例では、上方の往路側搬送部を第1の搬送部とし、下方の復路側搬送部を第2の搬送部としたが、上方の往路側搬送部を第2の搬送部とし、下方の復路側搬送部を第1の搬送部として第2の搬送部によって成膜した後、第1の搬送部で成膜しても良い。また、往路側搬送部を下方に配置し、復路側搬送部を上方に配置してもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…成膜装置
2…真空槽
3…基板保持器搬送機構
4…第1の成膜領域
4T…スパッタ源
5…第2の成膜領域
5T…スパッタ源
6…基板搬入搬出機構
10…基板
11…基板保持器
11A…先行側基板保持器
11B…後続側基板保持器
12…第1の被駆動部(被駆動部)
13…第2の被駆動部(被駆動部)
15…第1の遮蔽部(遮蔽部)
16…第2の遮蔽部(遮蔽部)
21…第1の駆動部(駆動部、加速用駆動部)
22…第2の駆動部(駆動部)
30A…基板保持器導入部
30B…搬送折り返し部
30C…基板保持器排出部
31…第1の駆動輪(第1の回転駆動手段)
32…第2の駆動輪(第2の回転駆動手段)
33…搬送駆動部材
33a…往路側搬送部(第1の搬送部)
33b…折り返し部
33c…復路側搬送部(第2の搬送部)
【要約】
複数の基板保持器を用い、基板の両面に効率良く成膜が可能で、しかも小型且つ簡素な構成の通過型の成膜装置を提供する。真空槽2内に、基板保持器11に保持された基板10上に成膜を行う第1及び第2の成膜領域4、5と、鉛直面に対する投影形状が一連の環状となるように形成され、第1及び第2の成膜領域4、5を通過するように設けられた搬送経路と、複数の基板保持器11を水平にした状態で搬送経路に沿って搬送する基板保持器搬送機構3とを備える。基板保持器搬送機構3は、各基板保持器11に設けられた被駆動部と接触して基板保持器11を移動方向に押圧して移動させる複数の駆動部を有し、当該駆動部は、隣り合う基板保持器11について、移動方向下流側の基板保持器11の移動方向上流側の端部と、移動方向上流側の基板保持器11の移動方向下流側の端部とが近接した状態で第1及び第2の成膜領域4、5を搬送させる。
図1
図2
図3
図4
図5
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