特許第6379461号(P6379461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6379461p型拡散層を有するシリコン基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子
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  • 特許6379461-p型拡散層を有するシリコン基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379461
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】p型拡散層を有するシリコン基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20180820BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01L31/04 440
   H01L31/06 300
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-181626(P2013-181626)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-50357(P2015-50357A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 明博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】野尻 剛
(72)【発明者】
【氏名】倉田 靖
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 寅之助
(72)【発明者】
【氏名】町井 洋一
(72)【発明者】
【氏名】岩室 光則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英一
(72)【発明者】
【氏名】清水 麻理
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 鉄也
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−503390(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067118(WO,A1)
【文献】 特表2012−507855(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/132779(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/067117(WO,A1)
【文献】 米国特許第07615393(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与する工程と、
前記p型拡散層形成組成物が付与されたシリコン基板をp型不純物を含まない雰囲気中で熱処理することによって、第1のp型拡散層を形成する工程と、
前記第1のp型拡散層の形成されたシリコン基板を、BBr又はBClを含む雰囲気中で熱処理して、前記p型拡散層形成組成物を付与していない部分に第2のp型拡散層を形成する工程と、を有するp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項2】
前記p型不純物は、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項3】
前記p型不純物を含むガラス粒子は、B、Al及びGaからなる群より選択される少なくとも1種のアクセプタ元素含有物質と、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V、SnO、ZrO、WO、MoO、Y、CsO、TiO、TeO、La、Nb、Ta、GeO、Lu及びMnOからなる群より選択される少なくとも1種のガラス構成成分と、を含有する請求項1又は請求項2に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記第1及び第2のp型拡散層上にパッシベーション膜を形成する工程を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項5】
前記パッシベーション膜が、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項4に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法によって得られるp型拡散層を有するシリコン基板の前記部分領域上に電極を形成する工程を有する太陽電池素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p型拡散層を有するシリコン基板の製造方法、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のpn接合を有する太陽電池の製造においては、p型シリコン基板に、n型不純物を拡散してn型拡散層を形成することにより、pn接合を形成する。しかしながら、ホウ素をドープしたp型シリコン基板を用いた太陽電池は光劣化の問題があり(例えば非特許文献1参照)、また、n型シリコン基板に比べてキャリア寿命が短いことから、HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin−layer)、裏面に電極を集めた裏面電極型等の高効率太陽電池にはn型シリコン基板が使用される。
【0003】
また、電極との接触抵抗を低くし、かつ、キャリアの再結合を抑制するために提案された選択エミッタ構造の太陽電池が開示されている(例えば非特許文献2参照)。n型シリコン基板をベースとする選択エミッタ構造の太陽電池には、受光面側のp型拡散層において、電極直下に高濃度p型拡散層(p++層)を形成し、電極直下以外の受光面に低濃度から中濃度のp型拡散層(p層)を形成する。
選択エミッタ構造を形成するためには、複数回の拡散とマスキングによる部分エッチングとを組み合わせた工程が必要であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、複数の不純物濃度の拡散剤をインクジェット法による基板に塗り分け、不純物を拡散する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、p型拡散層を形成するための組成物として、ホウ酸、無水ホウ酸、アルキルホウ酸エステル等のホウ素化合物を主成分とする拡散ペーストが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−193350号公報
【特許文献2】特開2004−221149号公報
【特許文献3】特開2010−56465号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F. Fertig et. al.、“Stability of the regeneration of the boron−oxygen complex in silicon solar cells during module integration”、EnergyMaterials and Solar Cells、 Volume 115、 2013、 Pages 18.
【非特許文献2】E. Lee et. al.、 “Exceeding 19% efficient 6 inch screen printed crystalline silicon solar cells with selective emitter”、RevewableEnergy、 42 (2012)Page 95.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法では、選択エミッタ構造を形成するためにパターン形成及びエッチングのための工程が必要となり、工程数が多くなる傾向があった。また、特許文献2に記載のインクジェット法では、複数のヘッドを有する専用の装置が必要であり、各ヘッドからの噴射の制御も複雑となる。
さらに、特許文献3に記載の拡散ペーストは、アウトディフュージョンが起きやすい。つまり、高温で拡散する際にホウ素化合物の揮発性が高いために、ペースト塗布部以外にもホウ素が拡散してしまうことがある。また、ホウ素化合物の化学的安定性が低いため、ペースト品質が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板を、複雑な装置を必要とせず簡便な方法で製造することを可能にするp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法、その方法により製造されたp型拡散層を有するシリコン基板を用いる太陽電池素子の製造方法、及び、その製造方法により製造される太陽電池素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> シリコン基板の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記p型拡散層形成組成物が付与されたシリコン基板を、BBr又はBClを含む雰囲気中で熱処理してp型拡散層を形成する工程と、を有するp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
<2> 前記p型不純物は、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む<1>に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
<3> 前記p型不純物を含むガラス粒子は、B、Al及びGaからなる群より選択される少なくとも1種のアクセプタ元素含有物質と、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V、SnO、ZrO、WO、MoO、Y、CsO、TiO、TeO、La、Nb、Ta、GeO、Lu及びMnOからなる群より選択される少なくとも1種のガラス構成成分と、を含有する<1>又は<2>に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
<4> さらに、前記p型拡散層上にパッシベーション膜を形成する工程を有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
<5> 前記パッシベーション膜が、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する<4>に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法。
<6> <1>〜<5>のいずれか1項に記載のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法によって得られるp型拡散層を有するシリコン基板の前記部分領域上に電極を形成する工程を有する太陽電池素子の製造方法。
<7> <6>に記載の太陽電池素子の製造方法によって得られる太陽電池素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板を、複雑な装置を必要とせず簡便な方法で製造することを可能にするp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法、その方法により製造されたp型拡散層を有するシリコン基板を用いる太陽電池素子の製造方法、及び、その製造方法により製造される太陽電池素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るパッシベーション層を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
【0013】
本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法は、シリコン基板の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記p型拡散層形成組成物が付与されたシリコン基板を、BBr又はBClを含む雰囲気中で熱処理してp型拡散層を形成する工程と、を有する。
【0014】
本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法によれば、選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板を、複雑な装置を必要とせず簡便な方法で製造することが可能になる。また、本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法によれば、p型拡散層を有するシリコン基板の完成までの工程を減少させることができ、単位時間あたりの生産量を向上することができる。
以下に、従来の選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法と対比しながら本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法について説明する。
従来の選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法としては、例えば、シリコン基板の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有する第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記部分領域以外の領域に、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有し、前記第1のp型拡散層形成組成物よりもp型不純物濃度の低い第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記第1のp型拡散層形成組成物及び前記第2のp型拡散層形成組成物が付与されたシリコン基板を熱処理してp型拡散層を形成する工程と、を有する方法が挙げられる。この方法によれば、第1のp型拡散層形成組成物の付与された部分に第1のp型拡散層が形成され、第2のp型拡散層形成組成物の付与された部分に第1のp型拡散層よりもp型不純物濃度の低い第2のp型拡散層が形成される。この方法では、p型拡散層形成組成物をシリコン基板上に少なくとも2回付与する必要がある。また、第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程との間及び第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程とシリコン基板を熱処理してp型拡散層を形成する工程との間には必要に応じて乾燥工程が実施される。そのため、従来の選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法では少なくとも2回の付与と必要に応じて少なくとも2回の乾燥とが実施される。
一方、本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法では、p型拡散層形成組成物が付与されたシリコン基板を、BBr又はBClを含む雰囲気中で熱処理することにより、p型拡散層形成組成物が付与された部分には第1のp型拡散層が形成され、p型拡散層形成組成物が付与されなかった部分には第1のp型拡散層よりもp型不純物濃度の低い第2のp型拡散層が形成される。本発明においてBBr又はBClを含む雰囲気中での熱処理は、従来の選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法における第2のp型拡散層を形成する工程に相当する。そのため、本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法では、第2のp型拡散層を形成するためのp型拡散層形成組成物を付与する工程を削減することが可能となる。その結果、単位時間あたりの生産量を向上することができる。また、BBr又はBClを含む雰囲気中での熱処理には特別な処理装置を必要としないため、本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法では複雑な装置を必要とせず簡便な方法で選択エミッタ構造を有するp型拡散層を有するシリコン基板を製造可能となる。
【0015】
以下に、本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法について詳細に説明する。
まず、本発明で用いられるp型拡散層形成組成物について説明し、次に、これらのp型拡散層形成組成物を用いる選択エミッタ構造の形成方法について説明する。
【0016】
−p型拡散層形成組成物−
本発明で用いられるp型拡散層形成組成物は、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有する。本発明で用いられるp型拡散層形成組成物は、更に塗布性等を考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
ここで、p型拡散層形成組成物とは、p型不純物を含有し、シリコン基板に塗布した後にこのp型不純物を熱拡散することでp型拡散層を形成することが可能な材料をいう。p型拡散層形成組成物を用いることで、所望の部位にp型拡散層が形成される。
また、ガラス粒子中のp型不純物は焼成中でも揮散しにくいため、揮散ガスの発生によってp型拡散層形成組成物を付与した部分のみでなくシリコン基板の裏面及び側面にまでp型拡散層が形成されるということが抑制される。この理由として、p型不純物がガラス粒子中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいものと考えられる。
【0017】
(ガラス粒子)
p型拡散層形成組成物に含有されるガラス粒子に含まれるp型不純物とは、シリコン基板中に拡散することによってp型拡散層を形成することが可能な元素である。p型不純物としては第13族の元素が使用でき、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、ガラス化の容易さ等の観点から、B又はGaがより好ましい。
p型不純物をガラス粒子に導入するために用いるアクセプタ元素含有物質としては、B、Al、Ga等が挙げられ、B、Al及びGaからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
また、ガラス粒子は、必要に応じて成分比率を調整することによって、溶融温度、軟化点、ガラス転移点、化学的耐久性等を制御することが可能である。ガラス粒子は、更に以下に記すガラス構成成分を含むことが好ましい。
【0018】
ガラス構成成分としては、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V、SnO、ZrO、WO、MoO、Y、CsO、TiO、TeO、La、Nb、Ta、GeO、Lu及びMnOからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V、SnO、ZrO、MoO、GeO、Y、CsO及びTiOからなる群より選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、SiO、KO、NaO、LiO、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V、SnO、ZrO及びMoOからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが、シリコン基板の熱膨張係数との差を小さくする観点から更に好ましい。
【0019】
p型不純物を含むガラス粒子の具体例としては、B−SiO系、B−ZnO系、B−PbO系、Al−SiO系、B−Al系、Ga−SiO系、Ga−B系、B単独系等のガラスが挙げられる。
上記では1成分ガラスあるいは2成分を含む複合ガラスを例示したが、B−SiO−NaO等必要に応じて3種類以上の複合ガラスでもよい。また、Al−B系等のように、2種以上のアクセプタ元素含有物質を含むガラス粒子でもよい。アクセプタ元素含有物質であるBを単独で使用するよりも、アクセプタ元素含有物質とガラス構成成分の双方を含むガラス粒子を用いると、形成されたp型拡散層のシート抵抗がより低くなり、またアウトディフュージョンをより抑制することが可能となる。
【0020】
ガラス粒子中のガラス構成成分の含有比率は、溶融温度、軟化点、ガラス転移点、化学的耐久性等を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
具体的には、B−SiO−CaO系ガラスの場合には、CaOの含有比率は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
ガラス粒子の軟化点は、拡散処理時の拡散性、液だれの観点から、200℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜900℃であることがより好ましい。
ガラス粒子の形状としては、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等が挙げられ、p型拡散層形成組成物とした場合の基板への塗布性や均一拡散性の点から、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。ガラス粒子の平均粒径は、100μm以下であることが望ましい。100μm以下の平均粒径を有するガラス粒子を用いた場合には、平滑な塗膜が得られやすい。更に、ガラス粒子の平均粒径は50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。なお、下限は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましい。
ここで、ガラス粒子の平均粒径は、体積平均粒子径を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0022】
p型不純物を含むガラス粒子は、以下の手順で作製される。
最初に原料を秤量し、るつぼに充填する。るつぼの材質としては白金、白金−ロジウム、イリジウム、アルミナ、石英、炭素等が挙げられるが、溶融温度、雰囲気、溶融物質との反応性、不純物の混入等を考慮して適宜選ばれる。
次に、電気炉でガラス組成に応じた温度で加熱し融液とする。このとき融液が均一となるよう攪拌することが望ましい。
続いて得られた融液をジルコニア基板、カーボン基板等の上に流し出して融液をガラス化する。
最後にガラスを粉砕し粒子状とする。粉砕にはジェットミル、ビーズミル、ボールミル等公知の方法が適用できる。
【0023】
p型拡散層形成組成物中のp型不純物を含むガラス粒子の含有比率は、塗布性、p型不純物の拡散性等を考慮して決定される。一般には、p型拡散層形成組成物中のガラス粒子の含有比率は、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、1質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上85質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以上80質量%以下が特に好ましい。
【0024】
(分散媒)
次に、分散媒について説明する。
分散媒とは、p型拡散層形成組成物中においてガラス粒子を分散させる媒体である。具体的に分散媒としては、バインダー、溶剤等が採用される。
【0025】
−バインダー−
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリルアミドアルキルスルホン樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、ゼラチン誘導体、澱粉、澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム類、キサンタン、グアーガム、グアーガム誘導体、スクレログルカン、スクレログルカン誘導体、トラガカント、トラガカント誘導体、デキストリン、デキストリン誘導体、(メタ)アクリル酸樹脂、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、及びこれらの共重合体を適宜選択し得る。なお、本発明において(メタ)アクリルとの用語は「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。また、本発明において(メタ)アクリレートとの用語は「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
これらの中でも、分解性、及びスクリーン印刷した際の液ダレ防止の観点から、アクリル酸樹脂、ブチラール樹脂又はセルロース誘導体を含むことが好ましく、少なくともセルロース誘導体を含むことがより好ましい。セルロース誘導体としてはエチルセルロース、セルロースエーテル、ニトロセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを例示することができ、これらの中でもエチルセルロースを用いることが好ましい。これらは一種類を単独で又は二種類以上を組み合わせて使用される。
【0026】
バインダーの分子量は特に制限されず、組成物としての所望の粘度を鑑みて適宜調整することが望ましい。なお、バインダーを含有する場合の含有率は、p型拡散層形成組成物中で、0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0027】
−溶剤−
溶剤としては、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン溶剤、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル溶剤、アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤、α−テルピネン、α−テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤、イソボルニルフェノール、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フェノール、及びp−メンテニルフェノール、が挙げられる。これらは一種類を単独で又は二種類以上を組み合わせて使用される。
【0028】
これらの中でも、シリコン基板への塗布性の観点から、分散媒としては、水、アルコール溶剤、グリコールモノエーテル溶剤、又はテルペン溶剤が好ましく、水、アルコール、セロソルブ、α−テルピネオール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、又は酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルがより好ましく、水、アルコール、α−テルピネオール又はセロソルブが更に好ましい。
【0029】
p型拡散層形成組成物中の分散媒の含有比率は、塗布性、p型不純物濃度を考慮し決定される。
p型拡散層形成組成物の粘度は、塗布性を考慮して、25℃において10mPa・s以上1000000mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以上500000mPa・s以下であることがより好ましい。
粘度は、粘弾性測定装置(Anton Paar社製レオメーターMCR301)を用いて測定することができる。
【0030】
(選択エミッタ構造の形成方法)
選択エミッタ構造の形成方法では、まず、n型シリコン基板の表面にあるダメージ層を、酸性あるいはアルカリ性の溶液を用いてエッチングして除去する。
n型シリコン基板の一方の表面には、ケイ素の酸化物膜又はケイ素の窒化物膜を含む保護膜を形成してもよい。ここで、ケイ素の酸化物膜は、たとえばシランガスと酸素を用いた常圧CVD法により形成することができる。また、ケイ素の窒化物膜は、たとえば、シランガス、アンモニアガス及び窒素ガスを用いたプラズマCVD法により形成することができる。
【0031】
n型シリコン基板の保護膜が形成されていない側の表面には、テクスチャ構造と呼ばれる微細な凹凸構造を形成してもよい。テクスチャ構造は、たとえば、保護膜が形成されたn型シリコン基板を水酸化カリウムとイソプロピルアルコール(IPA)とを含む約80℃程度の液に浸漬させることによって形成することができる。
続いて、n型シリコン基板をフッ酸に浸漬させることによって、保護膜をエッチング除去する。
【0032】
次に、n型シリコン基板上にp型拡散層を形成してpn接合を形成する。本発明においては、受光面電極が形成される電極形成領域(電極形成予定領域)に、p型拡散層形成組成物を付与することで、電極形成領域における不純物濃度を、電極形成領域以外よりも高くすることが特徴となっている。
本発明において、不純物濃度が高い電極形成領域の形状及び大きさは、構成される太陽電池素子の構造に応じて適宜選択することができる。形状としては例えば、ライン状とすることができる。
【0033】
本発明によれば、n型シリコン基板の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与し、前記p型拡散層形成組成物が付与されたシリコン基板を、p型不純物であるBBr又はBClを含む雰囲気中で熱処理してp型拡散層を形成する。
【0034】
p型拡散層形成組成物の付与方法は、特に制限されず通常用いられる方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り法、スプレーコート法、ドクターブレード法、ロールコート法、インクジェット法などを用いて行うことができる。
前記p型拡散層形成組成物の付与量としては特に制限はない。例えば、ガラス粒子量として0.01g/m〜100g/mとすることができ、0.1g/m〜10g/mであることが好ましい。
【0035】
n型シリコン基板上にp型拡散層形成組成物が付与された後には、分散媒の少なくとも一部を除去する加熱工程を設けてもよい。加熱工程においては例えば、100℃〜200℃で加熱処理することで、分散媒である溶剤の少なくとも一部を揮発させることができる。また例えば、200℃〜700℃で加熱処理することで分散媒であるバインダーの少なくとも一部を除去してもよい。
【0036】
次に、p型拡散層形成組成物が付与されたn型シリコン基板をp型不純物を含まない雰囲気中で熱処理することによって、第1のp型拡散層を形成する。この第1の熱処理工程によってp型拡散層形成組成物からp型不純物がn型シリコン基板中に拡散する。その後、p型不純物であるBBr又はBClを含む雰囲気中で熱処理(第2の熱処理工程)することで、p型拡散層形成組成物を付与していない部分に第2のp型拡散層を形成することができる。第1の熱処理工程及び第2の熱処理工程の温度を変えることで、濃度の異なる2種類のp型拡散層を形成することが出来る。例えば、第1の熱処理工程の温度を第2の熱処理工程の温度よりも高くすることで、第1のp型拡散層領域の不純物濃度を第2のp型拡散層領域の不純物濃度よりも高くすることも可能となる。第1及び第2のp型拡散層領域のそれぞれの不純物濃度の差は、p型拡散層形成組成物の種類、p型不純物であるBBr又はBClを含むガスの濃度等によって変化する。
【0037】
ここで、第1及び第2の熱処理工程における熱処理温度は800℃以上1100℃以下であることが好ましく、850℃以上1100℃以下がより好ましく、900℃以上1100℃以下が更に好ましい。
【0038】
p型不純物であるBBr又はBClを含むガスは、少なくともBBr又はBClを含有していればよく、必要に応じて窒素ガス、酸素ガス等を含有してもよい。
【0039】
前記の態様によってp型拡散層が形成されたn型シリコン基板にはガラス層が残存しているが、該ガラス層は除去されることが好ましい。ガラス層の除去は、フッ酸等の酸に浸漬する方法、苛性ソーダ等のアルカリに浸漬する方法など公知の方法が適用できる。
【0040】
次に、p型拡散層が形成された受光面上には、反射防止膜(パッシベーション膜)が形成される。ここで、反射防止膜であるパッシベーション膜は、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。反射防止膜であるパッシベーション膜には、たとえばプラズマCVD法により形成された窒化物膜を用いることができる。
【0041】
次に、n型シリコン基板の裏面及び受光面に電極が形成される。電極の形成には通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。
例えば、金属粒子及びガラス粒子を含む表面電極用金属ペーストを、電極形成領域上に所望の形状となるよう付与し、これを焼成処理することで高濃度のp型拡散層が形成された電極形成領域上に受光面電極(表面電極)を形成することができる。
前記表面電極用金属ペーストとしては、例えば、当該技術分野で常用される銀ペースト等を用いることができる。
本発明のp型拡散層を有するシリコン基板の製造方法によって得られるp型拡散層を有するシリコン基板の部分領域上に電極を形成することで、本発明の太陽電池素子が製造される。
【0042】
また裏面電極は、例えば、アルミニウム、銀、又は銅を含む裏面電極用ペーストを塗布し、乾燥させて、これを焼成処理することで形成することができる。このとき、裏面にも、モジュール工程におけるセル間の接続のために、一部に銀電極形成用銀ペーストを用いて電極を設けてもよい。
【0043】
次に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るパッシベーション層を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。但し、この工程図は本発明をなんら制限するものではない。
【0044】
シリコン基板にn型シリコン基板を用いたときの例を図1を用いて説明する。まず、n型シリコン基板10をアルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。アルカリ水溶液で洗浄することで、n型シリコン基板10の表面に存在する有機物、パーティクル等を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する。アルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄等を例示することができる。例えば、アンモニア水−過酸化水素水の混合溶液にn型シリコン基板10を浸し、60℃〜80℃で処理することで、有機物及びパーティクルを除去し洗浄することができる。洗浄時間は、10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがより好ましい。
【0045】
次いで、図1(a)に示すn型シリコン基板10は、アルカリエッチング等により受光面(表面)にテクスチャー構造(ピラミッド形状)を形成し、受光面からの太陽光の反射を抑える。その後、図1(b)に示すように、p型拡散層形成組成物11を受光面の一部に塗布し、図1(c)に示すように熱拡散して第1のp型拡散層13を形成する。p型拡散層形成組成物11としては、p型不純物を含むガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物が用いられる。熱拡散温度としては800℃〜1000℃とすることが好ましい。
【0046】
図1(d)に示すように、次いでp型不純物であるBBr又はBClを含むガスを用いてBSG(ボロンシリケートガラス)層14を形成する。BSG層14の形成をp型不純物であるBBr又はBClを含むガスで行うことで、塗布型組成物を用いてBSG層14を形成するよりも、工程数を減らすことが出来る。次いで、図1(e)に示すように第2のp型拡散層15を形成する。その後、フッ酸等のエッチング液に浸漬することでBSG層14及びp型拡散層形成組成物の焼成物12を除去する(図1(f))。
【0047】
次いで、図1(g)に示すように、n型拡散層形成組成物16を塗布する。この際、n型拡散層形成組成物16を塗布するのは、シリコン基板の裏面の一部であっても、全面であってもどちらでもよい。図1では裏面の一部に塗布した場合を図示する。また、n型拡散層形成組成物16はリン等を含む組成物を用いることができる。次いで、図1(h)に示すように、熱拡散してn型拡散層17を形成する。熱拡散する温度は800℃〜1050℃とすることが好ましい。
【0048】
次いで、図1(i)に示すように、フッ酸等のエッチング液に浸漬することでn型拡散層形成組成物の焼成物16’を除去する。
【0049】
次いで、図1(j)に示すように、受光面に反射防止膜18が形成される。反射防止膜としては、窒化ケイ素膜等が挙げられる。反射防止膜は受光面の全面又は一部の領域に形成してもよく、電極との接触部にあたる反射防止層を部分的にエッチングすることが好ましい。エッチングには、フッ化アンモニウム等の化合物を用いることができる。また、反射防止膜が窒化ケイ素膜である場合には、電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含むものを用いることで、オーミックコンタクトを取ることもできる。反射防止膜18とn型シリコン基板10との間に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の表面保護膜(図示せず)が更に存在していてもよい。
【0050】
次いで図1(k)に示すように、裏面の全面又は一部の領域に熱酸化膜、窒化ケイ素膜等の裏面パッシベーション層19を形成する。裏面パッシベーション層19をn型シリコン基板10の裏面全面に形成した場合には、電極との接触部にあたるパッシベーション層19を部分的にエッチングするか、後述するようにファイヤースルー性を有するガラス粒子を含む電極形成用ペーストを用いることが好ましい。エッチングする場合には、フッ化アンモニウム等の化合物を用いることができる。
【0051】
その後、図1(l)に示すように、受光面側及び裏面側における受光面電極20及び裏面電極21を形成する位置(図1(l)の符号20及び21で示す位置)に電極形成用ペーストを塗布した後に加熱処理して、図1(m)に示すように受光面電極20及び裏面電極21を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含むものを用いることで、図1(m)に示すように反射防止膜18を貫通して、第1のp型拡散層13の上に、受光面電極20を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。上記のようにして、太陽電池素子を得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、薬品は全て試薬を使用した。また「部」及び「%」は質量基準である。
【0053】
[実施例1]
粒子形状が略球状で、平均粒径が0.35μm、軟化温度が約800℃のガラス粒子(B、SiO、CaOを主成分とし、それぞれ30%、50%、20%)、エチルセルロース、テルピネオールをそれぞれ10g、6g、84g混合してペースト化し、p型拡散層形成組成物を調製した。
【0054】
なお、ガラス粒子の形状は、(株)日立ハイテクノロジーズTM−1000型走査型電子顕微鏡を用いて観察して判定した。ガラス粒子の平均粒径はベックマン・コールター(株)LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(測定波長:632nm)を用いて算出した。ガラスの軟化点は(株)島津製作所DTG−60H型示差熱・熱重量同時測定装置を用いて、示差熱(DTA)曲線により求めた。
【0055】
次に、n型シリコン基板の表面の一部にp型拡散層形成組成物をスクリーン印刷により、ライン状に塗布し、150℃で10分間乾燥させた。そして、650℃で5分間脱バインダー処理を行った。
【0056】
次に、O 8L/min、N 2L/minを流した拡散炉中にて、950℃で30分間熱処理した後、920℃に温度を下げて、O 0.06L/min、N 19L/min、臭化ホウ素(BBr)中をバブリングしたN 0.06L/minの雰囲気中で、20分間熱処理し、p型不純物をシリコン基板中に拡散させ、p型拡散層を形成した。
続いて、シリコン基板の表面に残存したガラス層をフッ酸によって除去した。p型拡散層形成組成物を塗布した部分(電極形成領域)のシート抵抗の平均値は41Ω/□、それ以外の部分のシート抵抗の平均値は77Ω/□であり、p型拡散層形成組成物を塗布した部分が選択的に低抵抗化しており、選択エミッタ構造を容易に形成できた。
【0057】
[実施例2]
実施例1において、BBr雰囲気中での熱処理温度を920℃から900℃に変えた以外は実施例1と同様にして、評価した。p型拡散層形成組成物を塗布した部分(電極形成領域)のシート抵抗の平均値は42Ω/□、それ以外の部分のシート抵抗の平均値は95Ω/□であった。
【符号の説明】
【0058】
10…n型シリコン基板、11…p型拡散層形成組成物、12…p型拡散層形成組成物の焼成物、13…第1のp型拡散層、14…BSG(ボロンシリケートガラス)層、15…第2のp型拡散層、16…n型拡散層形成組成物、17…n型拡散層、18…反射防止膜、19…裏面パッシベーション層、20…受光面電極、21…裏面電極
図1