特許第6379697号(P6379697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6379697-硬化性樹脂組成物、硬化物および硬化剤 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6379697
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物および硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20180820BHJP
   C07D 207/452 20060101ALI20180820BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C08G59/42
   C07D207/452
   H05K3/28 B
   H05K3/28 F
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-116820(P2014-116820)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-229734(P2015-229734A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】迫 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−109817(JP,A)
【文献】 特開2012−166515(JP,A)
【文献】 特開2007−302843(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/152427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
H05K 3/28
C07D 207/452
C09D 101/00、163/00
C09J 101/00、163/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3)で表される多価カルボキシ基含有化合物。
【化1】
(式中、Rは芳香環または脂肪族炭化水素を有する二価の有機基であり、Rは下記一般式(4)
【化2】
(ただし、*は結合手であり、Rは芳香環を有する一価の有機基であり、Rはカルボキシ基及び環状構造を有する一価の有機基である。)であらわされる二価の有機基であり、Rは一般式(4)又は下記一般式(5)
【化3】
で表される二価の有機基である。)
【請求項2】
前記多価カルボキシ基含有化合物のカルボキシ基当量が200〜1200〔g/eq〕の範囲である請求項1記載の多価カルボキシ基含有化合物
【請求項3】
前記多価カルボキシ基含有化合物の分子量が300〜10000の範囲である請求項1又は2記載の多価カルボキシ基含有化合物
【請求項4】
下記一般式(1)で表されるビスマレイミド(A1)と、
下記一般式(2)で表されるモノアミン(A2)を反応させた後、
酸無水物(A3)を反応させる多価カルボキシ基含有化合物の製造方法
【化4】
(式中、Rは芳香環または脂肪族炭化水素を有する二価の有機基である)
【化5】
(式中、Rは芳香環を有する一価の有機基である)
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項記載の多価カルボキシ基含有化合物とエポキシ樹脂とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、光重合開始剤(C)を含む請求項記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、希釈剤(D)を含む請求項5又は6記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか一項記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項9】
請求項5〜7の何れか一項記載の硬化性樹脂組成物を含むソルダーレジスト形成用硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項5〜7の何れか一項記載の硬化性樹脂組成物を含む硬化性樹脂層を有するドライフィルム。
【請求項11】
請求項5〜7の何れか一項記載の硬化性樹脂組成物を含む硬化性樹脂層を、熱硬化してなる樹脂絶縁層を有するプリント配線板。
【請求項12】
基材と、該基材上に形成された複数の樹脂絶縁層とを有する積層構造体であって、前記複数の樹脂絶縁層のうちの少なくとも一層が、請求項5〜7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された層であることを特徴とする積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化剤、当該硬化剤を含む硬化性樹脂組成物、特に、プリント配線板に用いられるソルダーレジストを形成するための硬化性樹脂組成物、並びにそれを用いたドライフィルムおよびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器(エレクトロニクス機器)の軽薄短小化に伴うプリント配線板の高密度化に対応して、ソルダーレジスト等の樹脂絶縁層用の硬化性樹脂組成物にも高性能化および作業性の向上が要求されている。特に、自動車、中でも駆動部の電気制御化が進んでおり、エンジンルームおよびその周辺等の、環境温度が高い場所にプリント配線板が搭載されることが多くなっている。車載用のプリント配線板は、搭載箇所によっては80℃から150℃の高温下に長期に亘って曝されることになるため、車載用プリント配線板に用いられる高性能ソルダーレジストには、優れた耐熱性が求められている。
【0003】
このようなソルダーレジストに適した材料としてビスマレイミド化合物が挙げられる。ビスマレイミド化合物は耐熱性、難燃性、誘電特性などに優れる樹脂であるものの、エポキシ樹脂との硬化反応性を示さない公知のビスマレイミド化合物は、エポキシ硬化系の硬化性樹脂と併用した場合、耐熱性が不足する問題があった。そこで、アミノフェノール等のモノアミン化合物のアミノ基を、ビスマレイミド化合物の不飽和N−置換マレイミド基と反応させることによって得られたアミン変性ビスマレイミド化合物をエポキシ硬化系の硬化性樹脂と併用することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、当該当該化合物はアルカリ現像性が十分でないため、ソルダーレジスト材料、特に、近年の微細化された回路を有するプリント配線板に求められるソルダーレジスト材料としては不十分であった。
【0004】
また、アミノ安息香酸等のカルボキシ基を有するアミン化合物で変性したビスマレイミド化合物をエポキシ硬化系の硬化性樹脂と併用することも提案されている(特許文献2)。しかしながら、当該化合物は熱分解温度が低く、近年要求される鉛フリーはんだへの耐熱性が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−166515号公報
【特許文献2】特開2007−302843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アルカリ現像性および耐熱性に優れた硬化物を得ることが可能な多価カルボキシ基含有化合物および当該化合物を含む硬化性樹脂組成物、ソルダーレジスト形成用組成物、並びに上記硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルムおよびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは種々の検討を行った結果、ビスマレイミドのモノアミン付加物に、酸無水物を反応させて得られる多価カルボキシ基含有化合物を硬化剤として用いることで、優れた耐熱性およびアルカリ現像性を発現する硬化物が得られることを見出し、上記課題を解決するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、ビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)を反応させた後、酸無水物(A3)を反応させて得られる多価カルボキシ基含有化合物(A)と、硬化性樹脂(B)を含む硬化性樹脂組成物、に関する。
【0009】
さらに本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、に関する。
【0010】
さらに本発明は、前記硬化性樹脂組成物を含むソルダーレジスト形成用硬化性樹脂組成物、に関する。
【0011】
さらに本発明は、前記硬化性樹脂組成物を含む硬化性樹脂層を有するドライフィルム、に関する。
【0012】
さらに本発明は、前記硬化性樹脂組成物を含む硬化性樹脂層を、熱硬化してなる樹脂絶縁層を有するプリント配線板、に関する。
【0013】
さらに本発明は、基材と、該基材上に形成された複数の樹脂絶縁層とを有する積層構造体であって、前記複数の樹脂絶縁層のうち、基材に接する樹脂絶縁層が、前記硬化性樹脂組成物から形成された層であることを特徴とする積層構造体、に関する。
【0014】
さらに本発明は、下記一般式(3)
【0015】
【化1】
(式中、Rは芳香環または脂肪族炭化水素を有する二価の有機基であり、Rは下記一般式(4)
【0016】
【化2】
(ただし、*は結合手であり、Rは芳香環を有する一価の有機基であり、Rはカルボキシ基及び環状構造を有する一価の有機基である。)であらわされる二価の有機基であり、Rは一般式(4)又は下記一般式(5)
【0017】
【化3】
で表される二価の有機基である。)で表される多価カルボキシ基含有化合物、および該多価カルボキシ基含有化合物からなる硬化剤に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐熱性およびアルカリ現像性に優れた硬化物を得ることが可能な多価カルボキシ基含有化合物および当該化合物を含む硬化性樹脂組成物、ソルダーレジスト形成用組成物、並びに上記硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルムおよびプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1で得られた多価カルボキシ基含有化合物のFT−IRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)を反応させた後、酸無水物(A3)を反応させて得られる多価カルボキシ基含有化合物(A)と、硬化性樹脂(B)を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の多価カルボキシ基含有化合物(A)は、ビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)を反応させた後、酸無水物(A3)を反応させて得られる。
【0022】
前記ビスマレイミド(A1)としては、分子構造中に少なくとも2個の不飽和N−置換マレイミド基を有する化合物であれば任意のものを使用することができ、たとえば、下記一般式(1)
【0023】
【化4】
(式中、Rは芳香環または脂肪族炭化水素を有する二価の有機基である)で表されるビスマレイミド化合物を好ましいものとして例示することができる。当該Rは、耐熱性に優れる点から芳香環を有する二価の有機基であることがより好ましい。ここでRの芳香環または脂肪族炭化水素を有する二価の有機基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、単環式または多環式のアリーレン基、またはそれらの基が2価の原子団(たとえばアルキレン基やシクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホン基、スルフィニル基、ジスルフィド基、カルボニル基など)によって結合された2価の基が好ましい構造として挙げれる。
【0024】
本発明で用いるビスマレイミド化合物として、具体的には、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−〔1,3−(2−メチルフェニレン)〕ビスマレイミド、N,N’−〔1,3−(4−メチルフェニレン)〕ビスマレイミド、N,N’−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ケトン、2,2’−ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,4−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,4−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,4−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミドなどが挙げられ、これらのマレイミド化合物は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、およびビス(4−マレイミドフェニル)スルホンが好ましい。なお、反応率が高く、より高耐熱性化できる点からは、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル〕スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、安価である点からビス(4−マレイミドフェニル)メタン、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミドがより好ましく、溶剤への溶解性の点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0025】
本発明で用いるモノアミン(A2)としては、分子構造中に1個の一級アミノ基を有する化合物であれば任意のものを使用することができるが、例えば下記一般式(2)
【0026】
【化5】
(式中、Rは芳香環を有する一価の有機基である)で表されるアミン化合物を好ましいものとして例示することができる。ここで、Rとしては、水酸基、カルボキシ基、スルホン基、ハロゲン原子および炭素原子数1〜5の範囲のアルキル基から成る群から選ばれる1以上の置換基を有していても良い、単環式または多環式のアリール基が挙げられ、さらに具体的には、以下の一般式(2.1)
【0027】
【化6】
(式中、Rは水素原子、水酸基、カルボキシ基またはスルホン基を示し、Rは水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基またはスルホン基を示し、n及びmは2〜4の整数である)で表されるアミン化合物を例示することができる。
【0028】
本発明で用いるモノアミンとして、具体的には、例えばアニリン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられ、これらの中で、溶解性や合成の収率の点からm−アミノフェノール、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点からm−アミノフェノール、p−アミノフェノールがより好ましく、低毒性である点からm−アミノフェノールが特に好ましい。
【0029】
本発明で用いる酸無水物(A3)としては、分子構造中に少なくとも2個のカルボキシ基を有し、かつ当該カルボキシ基が分子内脱水して酸無水物を形成した化合物であれば任意のものを使用することができ、たとえば、芳香族ジカルボン酸無水物、脂環式ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸無水物、脂環式トリカルボン酸無水物、芳香族テトラカルボン酸無水物、脂環式テトラカルボンサン無水物等を好ましいものとして挙げることができ、さらに溶剤溶解性と乾燥時の保存安定性に優れる点から脂環式構造を有する脂環式ジカルボン酸無水物、脂環式トリカルボン酸無水物、脂環式テトラカルボンサン無水物がより好ましいものとして挙げられる。
【0030】
本発明で用いる酸無水物として、具体的には、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エチルヘキサヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸無水物、ビフェニル−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ぺリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレンレングリコールビスアンヒドロトリメリテートやその他アルキレングリコールビスアンヒドロキシトリメリテート等を例示することができる。
【0031】
本発明の多価カルボキシ基含有化合物(A)は、有機溶媒の存在下または不存在下で、ビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)を反応させ(工程1)、その後、得られたビスマレイミドとモノアミンの反応物に、酸無水物(A3)を反応させ(工程2)、得られる。
【0032】
まず、有機溶媒の存在下で、ビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)とを反応させる(工程1)。
【0033】
ここで有機溶媒としては、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルスルホキシド等のS原子含有溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のN原子含有溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;低分子のエチレン−プロピレン共重合体等の共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;および共重合ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類等が挙げられる。これら有機溶剤は1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中で、副反応を抑制する観点から、アルコール性水酸基を含有しない溶剤が好ましい。更に溶解性の点からアセテート類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが好ましく、低毒性である点からアセテート類がより好ましい。有機溶剤の使用量としては、特に制限はないが、原料のビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)を合わせた総質量100質量部に対して、通常0.5〜100質量部であり、好ましくは0.5〜70質量部、より好ましくは0.5〜50質量部である。
【0034】
さらに工程1では、必要により任意に反応触媒を使用することができ、特に限定されない。反応触媒の例としては、無水酢酸、酢酸等の酸性化合物類、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。触媒の使用量には、特に制限はないが、原料のビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)を合わせた総質量100質量部に対して、通常0.001〜5質量部を、必要により使用するのが好ましい。
【0035】
工程1において、原料として反応系に添加するビスマレイミド(A1)とモノアミン(A2)の使用割合は、マレイミド基1当量に対し、アミノ基が0.3〜1.0当量の範囲が好ましく、さらに0.5〜1.0当量の範囲がより好ましい。
【0036】
工程1において、反応は50〜250℃の範囲で行うことが可能であり、反応速度と副反応防止の観点から70〜180℃の範囲で行うことが好ましい。その際、ビスマレイミド(A1)を含む反応系に、モノアミン(A2)を一度にまたは数回に分けて添加するかまたは少量ずつ連続して添加し、撹拌しながら反応させればよい。特に脂肪族モノアミンを使用する場合、副反応抑制の観点から、後者が好ましい。
【0037】
さらに工程2は、工程1で得られたビスマレイミドとモノアミンの反応物を含む反応系に、必要に応じて前記有機溶媒を加えた後、酸無水物(A3)を一度にまたは数回に分けて添加するかまたは少量ずつ連続して反応系に添加し、撹拌しながら反応させればよい。工程2における反応温度は50〜250℃の範囲で行うことが可能であり、反応速度と副反応防止の観点から70〜180℃の範囲で行うことが好ましい。工程2において、酸無水物(A3)の使用割合は、ビスマレイミドとモノアミンの反応物で生成した2級アミノ基1当量に対し、酸無水物基が0.1〜1.0当量の範囲が好ましく、さらに0.5〜1.0当量の範囲がより好ましい。
【0038】
反応終了後、触媒を用いた場合は、必要に応じてそれぞれ中和、水洗、吸着などによって触媒の除去を行うこともできる。溶剤を用いた場合は、溶剤を留去することもできる。
【0039】
このようにして得られる本発明の多価カルボキシ基含有化合物(A)は、通常、無色〜褐色の固形の樹脂状または液状を示し、場合によっては結晶化する。
本発明の多価カルボキシ基含有化合物の色相が悪い場合は、水素化触媒存在下で水素化することで色相改善を行っても良い。その際に用いる水素化触媒としては、ニッケルなどの鉄族元素またはパラジウム、ロジウム、白金などの白金族元素を活性成分として含むものが好ましく、活性成分を担体に保持させた形態のものがより好ましい。
また本発明の多価カルボキシ基含有化合物のカルボキシ基当量は特に制限されるものではないが、後述する硬化剤として用いる際、耐熱性の観点から200〜1200〔g/eq〕の範囲であることが好ましく、さらに配合物のアルカリ現像性の観点から350〜750〔g/eq〕の範囲であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の多価カルボキシ基含有化合物は必須ではないものの、モノアミン化合物に由来して、化合物中に水酸基を有していても良い。本発明の多価カルボキシ基含有化合物が分子内に水酸基を有する場合、その水酸基当量は特に制限されるものではないが、後述する硬化剤として用いる際、配合物の耐熱性とアルカリ現像性がより良好となる観点から200〜1200〔g/eq〕の範囲であることが好ましく、さらに350〜750〔g/eq〕の範囲であることが好ましい。
【0041】
また本発明の多価カルボキシ基含有化合物の溶融粘度は、特に制限されるものではないが、後述する硬化剤として用いる際、硬化物の成形時間の短縮と、任意の形状を付与させることができる観点から、分子量が、300〜10000であることが好ましく、さらに330〜5000であることがより好ましい。
このようにして得られた本発明の多価カルボキシ基含有化合物は、例えば、下記一般式(3)
【0042】
【化7】
(式中、Rは芳香環または脂肪族炭化水素を有する二価の有機基であり、Rは下記一般式(4)
【0043】
【化8】
(ただし、*は結合手であり、Rは芳香環を有する一価の有機基であり、Rはカルボキシ基及び環状構造を有する一価の有機基である。)であらわされる二価の有機基であり、Rは一般式(4)又は下記一般式(5)
【0044】
【化9】
で表される二価の有機基である。)で表される構造を有するものが得られ、さらに、このうち、硬化性樹脂に優れた硬化性を付与することができる点で下記一般式(3.1)
【0045】
【化10】
(式中、R、RおよびRは前記と同様の定義である)で表される構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。
当該多価カルボキシ基含有化合物は、硬化性樹脂の硬化剤として使用することができ、例えば、以下の成分とともに使用することができる。
【0046】
次に、硬化性樹脂(B)としては加熱または活性エネルギー線により硬化性を示す樹脂であれば特に制限されることなく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂、シアネート樹脂等の公知の硬化性樹脂を好ましいものとして例示することができ、このうちエポキシ樹脂が好ましいものとして挙げられる。
【0047】
さらに具体的にエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物において、多価カルボキシ基含有化合物(A)と硬化性樹脂(B)との組成比率は特に限定されるものではないが、耐熱性、耐湿熱性に優れる点から、多価カルボキシ基含有化合物(A)のカルボキシル基1当量に対して、硬化性樹脂(B)のエポキシ基が1.0〜2.0当量となる範囲であることが好ましく、さらにアルカリ現像性の観点から1.0〜1.5当量の範囲であることがより好ましい。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて公知の光重合開始剤(C)を適宜添加することができる。光重合開始剤としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を好適に使用することができる。
このようなオキシムエステル系光重合開始剤を用いる場合の配合量は、光硬化性および解像性に優れ、密着性やPCT耐性も向上し、さらには無電解金めっき耐性などの耐薬品性にも優れるソルダーレジストを得ることができる点から、組成物全体の0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.25〜3質量%とすることがより好ましい。
0.01〜5質量%とすることにより、。
アルキルフェノン系光重合開始剤を用いる場合の配合量は、同様の点から、組成物全体の0.2〜30質量%とすることが好ましく、2〜20質量%とすることがより好ましい。
【0050】
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤またはアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いる場合の配合量は、同様の点から、組成物全体の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
【0051】
また光重合開始剤としてはBASFジャパン製のイルガキュア389も好適に用いることができる。イルガキュア389の好適な配合量は、組成物全体の0.1〜20質量%であり、さらに1〜15質量%が好適である。
【0052】
そして、イルガキュア784等のチタノセン系光重合開始剤も好適に用いることができる。チタノセン系光重合開始剤の好適な配合量は、組成物全体の0.01〜5質量%であり、さらに、0.01〜3質量%が好適である。
【0053】
これらの光重合開始剤を好適な配合量とすることにより、光硬化性および解像性に優れ、密着性やPCT耐性も向上し、さらには無電解金めっき耐性などの耐薬品性にも優れたソルダーレジストとすることができる。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物には、光重合開始剤の他に、さらに必要に応じて光開始助剤、増感剤を用いることができる。硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光開始助剤および増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。
【0055】
これらの光開始助剤および増感剤は、単独でまたは2種類以上の混合物として使用することができる。このような光開始助剤、および増感剤の総量は、組成物全体の30質量%以下であることが好ましい。30質量%を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0056】
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて希釈剤(D)を適宜添加することができる。希釈剤(D)として、分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物を配合することが好ましい。分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物は、活性エネルギー線の照射により光硬化して、本発明の感光性樹脂組成物をアルカリ水溶液に不溶化し、または不溶化を助けることができる。このような化合物としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが使用でき、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加体、プロピレンオキサイド付加体、もしくはε−カプロラクトン付加体などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加体もしくはプロピレンオキサイド付加体などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくとも何れか1種などを挙げることができる。
【0057】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物等を挙げることができる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0058】
上記のような分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に1分子内に4個から6個のエチレン性不飽和基を有する化合物が光反応性と解像性の観点から好ましく、さらに1分子内に2個のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いると、硬化物の線熱膨張係数が低下し、PCT時における剥がれの発生が低減されることから好ましい。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物に希釈剤を用いる場合の配合量は、光硬化性が向上し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が良好となり、かつ、希アルカリ水溶液に対する溶解性が向上して、塗膜の耐衝撃性が向上する傾向にあることから、組成物全体の2〜50質量%が好ましい。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を適宜添加することができる。硬化促進剤としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の三級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウム o,o−ジエチルホスホロジチオネート、テトラブチルホスホニウム ベンゾトリアゾラート等のホスホニウム塩、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属塩、アセチルアセトン亜鉛、ベンゾイルアセトン亜鉛等の金属錯体などが挙げられる。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を用いる場合の配合量は、0.01〜8質量%とするのが好ましく、0.1〜5質量%とするのがより好ましい。硬化促進剤の配合量が0.01質量%以上であると、十分な効果が得られるため好ましい。また、硬化促進剤の配合量が8質量%以下であれば、得られる硬化物の、透明度や耐熱性を維持することができるため好ましい。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて無機フィラーを適宜添加することができる。無機フィラーは、硬化性樹脂組成物の硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるために使用される。無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、等を挙げることができる。
上記無機フィラーの平均粒子径は5μm以下であることが好ましい。配合割合は、組成物全体の75質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1〜60質量%である。無機フィラーの配合割合が75質量%を超えると、組成物の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、硬化性樹脂組成物の硬化物が脆くなることがある。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに、任意成分として、有機溶剤、エラストマー、メルカプト化合物、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、密着促進剤、重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくとも何れか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、ホスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤、ブロック共重合体といった公知の添加剤類を配合してもよい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記樹脂組成物の調製のため、または基材やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。このような上記樹脂組成物の調製のための、または基材やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のための有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。より詳細には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などを挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いてもよい。
【0065】
本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥して形成される硬化性樹脂層を有する。本発明のドライフィルムは、硬化性樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用することができる。
【0066】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルムに硬化性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、前記した硬化性樹脂層を形成し、好ましくはその上にカバーフィルムを積層することにより、製造することができる。カバーフィルムとキャリアフィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
【0067】
本発明のドライフィルムにおいてキャリアフィルム、カバーフィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
【0068】
キャリアフィルムとしては、例えば2〜150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムなどの熱可塑性フィルムが用いられる。
【0069】
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、硬化性樹脂層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0070】
本発明のキャリアフィルム上の硬化性樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5〜50μmの範囲がより好ましい。
【0071】
本発明のプリント配線板は、本発明のドライフィルムを構成する本発明の硬化性樹脂層を用いて作製されることが好ましい。例えば、硬化性樹脂層を含むドライフィルムをラミネートし、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、樹脂絶縁層を形成することが好ましい。
【0072】
なお、本発明のプリント配線板は、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により、基材に硬化性樹脂組成物を直接塗布・乾燥して樹脂絶縁層を形成することにより得ることができる。
【0073】
本発明のプリント配線板の樹脂絶縁層は、COレーザーやUV−YAGレーザー等の半導体レーザーを照射することによりパターニングが可能である。また、COレーザーやUV−YAGレーザー、またはドリルにより、穴を開けることができる。樹脂絶縁層が複数からなる場合、穴は樹脂絶縁層の任意の層と導通が可能な貫通穴(スルーホール)でも内層の回路と樹脂絶縁層表面の導通を目的とする部分穴(コンフォーマルビア)のどちらもあけることができる。
【0074】
穴あけ加工後、穴の内壁や底部に存在する残渣(スミヤ)を除去することと、導体層(その後に形成する金属めっき層)とのアンカー効果を発現させるために表面に微細な凹凸状の粗化面を形成することを目的として、市販のデスミヤ液(粗化剤)または過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤を含有する液で処理を行う。
【0075】
次に、デスミヤ液で残渣を除去した穴や、微細な凹凸状に粗化した皮膜表面にサブトラクティブ法やセミアディティブ法により、回路を形成する。いずれの方法においても、無電解めっき、または電解めっき後、或いは両方のめっきを施した後に、金属のストレス除去、強度向上の目的で約80℃〜180℃で10分〜60分程度の熱処理(アニール処理)を施しても良い。
【0076】
ここで用いる金属めっきとしては、銅、錫、はんだ、ニッケル等特に制限は無く、複数組み合わせて使用することもできる。また、ここで用いるめっきの代わりに金属のスパッタリング等で代用することも可能である。
【0077】
また、樹脂絶縁層を、感光性の硬化性樹脂層や硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥した乾燥塗膜により形成する場合、基材(基板)上に形成された硬化性樹脂層や乾燥塗膜を、接触式(または非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して、選択的に活性エネルギー線により露光もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光する。硬化性樹脂層や乾燥塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0078】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)、メタルハライドランプを搭載した露光機、(超)高圧水銀ランプを搭載した露光機、LEDを搭載した露光機、水銀ショートアークランプを搭載した露光装置を用いることができる。
【0079】
活性エネルギー線としては、最大波長が350〜410nmの範囲にある光を用いることが好ましい。最大波長をこの範囲とすることにより、光重合開始剤から効率よくラジカルを生成することができる。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、一般には5〜500mJ/cm、好ましくは10〜300mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0080】
直接描画装置としては、例えば、日本オルボテック株式会社製、ペンタックス株式会社製、オーク株式会社製、大日本スクリーン株式会社製等のものを使用することができ、最大波長が350〜410nmの活性エネルギー線を照射する装置であればいずれの装置を用いてもよい。
【0081】
そして、このようにして硬化性樹脂層や乾燥塗膜を露光することにより、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)を硬化させた後、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像して、硬化性樹脂層や乾燥塗膜にパターンが形成される。
【0082】
このとき、現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を用いることができる。
【0083】
さらに、硬化性樹脂層を、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、多価カルボキシ基含有化合物(A)のカルボキシ基と、硬化性樹脂(B)が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、絶縁信頼性等の諸特性に優れた樹脂絶縁層(パターン)を形成することができる。
【0084】
本発明のプリント配線板中の樹脂絶縁層の全膜厚は、100μm以下が好ましく、5〜50μmの範囲がより好ましい。
【0085】
前記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0086】
本発明のプリント配線板が有する樹脂絶縁層は、永久被膜として好適であり、中でもソルダーレジストや層間絶縁材料として好適である。
【0087】
本発明の積層構造体は、基材と、該基材上に形成された複数の樹脂絶縁層を有し、複数の樹脂絶縁層のうちの少なくとも一層が、本発明の硬化性樹脂組成物から形成された絶縁樹脂層であればよい。
【0088】
本発明の積層構造体の基本構成としては、一般なものであればよく、例えば、基材(S)に接して設けられた絶縁樹脂層(L1)と、表面層、即ち最外層との2層を有する物が挙げられる。絶縁樹脂層(L1)と、表面層の間に、さらに他の層を設けても良い。他の層を設けなくても、例えば絶縁樹脂層(L1)と樹脂絶縁層(L2)との交互層としても良い。例えば、絶縁樹脂層(L1)/樹脂絶縁層(L2)/絶縁樹脂層(L1)/樹脂絶縁層(L2)とすることもできる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0090】
(合成例1)
温度計、撹拌機、窒素導入口を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAc)295質量部、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)197質量部、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、「BMI−1000」)400質量部、p−アミノフェノール243質量部を入れ、液中窒素流通下にて120℃まで150分間かけて昇温し、90分間反応を行った。この反応容器に、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社、「リカシッドTH」)339質量部を加え、120℃で4.5時間、反応を継続した。その後、樹脂のFT−IRスペクトルを測定し、該スペクトルに変化が無くなったことを確認した後、EDGAcを710質量部加え、140℃に加熱して減圧操作を行い、DMAcを留去した。留去が終了した後、EDGAc197質量部を加え冷却し、不揮発分45%の樹脂溶液(A−1)を得た。以下に、得られた化合物のFT−IRスペクトルを図1に示す。
【0091】
(合成例2)
温度計、撹拌機、窒素導入口を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAc)279質量部、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)186質量部、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、「BMI−1000」)400質量部、アニリン208質量部を入れ、液中窒素流通下にて120℃まで150分間かけて昇温し、5時間反応を行った。この反応容器に、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社、「リカシッドTH」)339質量部を加え、120℃で4.5時間、反応を継続した。その後、樹脂のFT−IRスペクトルを測定し、該スペクトルに変化が無くなったことを確認した後、EDGAcを668質量部加え、140℃に加熱して減圧操作を行い、DMAcを留去した。留去が終了した後、EDGAc186質量部を加え冷却し、不揮発分45%の樹脂溶液(A−2)を得た。
【0092】
(合成例3)
温度計、撹拌機、窒素導入口を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAc)295質量部、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)197質量部、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、「BMI−1000」)400質量部、m−アミノフェノール243質量部を入れ、液中窒素流通下にて120℃まで150分間かけて昇温し、3時間反応を行った。この反応容器に、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社、「リカシッドTH」)339質量部を加え、120℃で4.5時間、反応を継続した。その後、樹脂のFT−IRスペクトルを測定し、該スペクトルに変化が無くなったことを確認した後、EDGAcを710質量部加え、140℃に加熱して減圧操作を行い、DMAcを留去した。留去が終了した後、EDGAc197質量部を加え冷却し、不揮発分45%の樹脂溶液(A−3)を得た。
【0093】
(比較合成例1)
温度計、撹拌機、窒素導入口を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAc)563質量部、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、「BMI−1000」)400質量部、p−アミノフェノール60.9質量部を入れ、液中窒素流通下にて120℃まで150分間かけて昇温し、3時間反応を行い、不揮発分45%の樹脂溶液(a−1)を得た。
【0094】
(比較合成例2)
温度計、撹拌機、窒素導入口を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAc)563質量部、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社、「BMI−1000」)400質量部、p−アミノ安息香酸76.5質量部を入れ、液中窒素流通下にて120℃まで150分間かけて昇温し、3時間反応を行い、不揮発分45%の樹脂溶液(a−2)を得た。
【0095】
(エポキシ硬化性置換基当量の算出)
合成例1〜4で得られたカルボキシ基含有化合物(A−1)〜(A−3)、および、比較合成例1,2で得られた化合物(a−1)、(a−2)のエポキシ硬化性置換基当量を理論構造より算出した。
【0096】
【表1】
【0097】
(樹脂組成物の調製)
表2に示す組成割合で、最終的に不揮発分(N.V)が50質量%となるように、EDGAcを配合して、硬化性樹脂組成物1〜6を調製した。
【0098】
(フィルムのガラス転移温度の測定)
測定用試料の作成
硬化性樹脂組成物1〜6を硬化後の膜厚が50〜70μmになるように、ブリキ基板上に塗装した。次いでこの塗装板を80℃の乾燥機で30分乾燥した後、170℃で1時間硬化させ硬化塗膜を作製した、室温まで冷却した後、硬化塗膜を縦22mm×横6mmに切り出し、基板から単離して測定用試料とした。
測定方法
【0099】
下記条件で、測定用試料の動的粘弾性を測定し、得られたスペクトルのTanδの最大値の温度をガラス転移温度(Tg)とした。得られた結果を表2に「フィルムのTg(℃)」として示した。
測定機器:レオバイブロンRSA−II(レオメトリック社製)
治具:引っ張り
チャック間:20mm
測定温度:25℃〜400℃
測定周波数:1Hz
昇温速度:3℃/min
【0100】
(アルカリ現像性)
硬化性樹脂組成物1〜6を乾燥後の膜厚が25〜35μmになるように、ブリキ基板上に塗装した。次いでこの塗装板を80℃の乾燥機で所定の時間乾燥して試験片を作成した。これを、30℃の1%炭酸カリウム水溶液に3分間浸積振とうした後、水道水で洗浄し、塗膜の残存状況を目視観察してアルカリ現像性を評価した。塗膜が全て溶解した場合「○」、一部残存した場合「△」、全て残存した場合「×」とした。より長い乾燥時間でも塗膜が溶解するものがアルカリ現像性に優れる。
【0101】
【表2】
*表中の値は全て固形分あたり
【0102】
なお、表中の語は以下の通り
N−680・・・DIC株式会社、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量212グラム/当量
2E4MZ・・・2−エチル−4メチルイミダゾール
図1