(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属層の平均厚さをdとしたときに、前記金属層及び前記樹脂粒子の界面と前記パラジウム粒子との最短距離が0.1×d以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の導電粒子。
第1の回路電極を有する第1の回路部材と、第2の回路電極を有する第2の回路部材と、を前記第1の回路電極と前記第2の回路電極とが相対向するように配置し、請求項22〜24のいずれか一項に記載の異方導電性接着剤を前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との間に介在させ、加熱及び加圧して前記第1の回路電極と前記第2の回路電極とを電気的に接続させてなる、接続構造体。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0038】
<導電粒子>
本実施形態に係る導電粒子について説明する。
【0039】
図1は、第1実施形態に係る導電粒子を示す模式断面図である。
図1に示す導電粒子100aは、導電粒子のコアを構成する樹脂粒子101と、樹脂粒子101の表面に配置された金属層103と、を備える。金属層103は、パラジウムを含有するパラジウム粒子105と、ニッケルを含有するニッケル粒子107と、を含む。パラジウム粒子105は、ニッケル粒子107よりも樹脂粒子101側に配置されており、金属層103の厚さ方向においてニッケル粒子107と樹脂粒子101との間に配置されている。金属層103は、金属層103の外表面に突起109を有している。
【0040】
金属層103は、樹脂粒子101に近い順に、被覆層(第1の層)103aと、被覆層(第2の層)103bとを有している。被覆層103aは、パラジウム粒子105よりも樹脂粒子101側に配置されており、パラジウム粒子105と樹脂粒子101との間に配置されている。被覆層103bは、被覆層103a及びニッケル粒子107よりも金属層103の外表面側に配置されており、金属層103の外表面(導電粒子100aの外表面)を構成している。パラジウム粒子105及びニッケル粒子107は、被覆層103a及び被覆層103bの間に配置されている。ニッケル粒子107は、パラジウム粒子105を被覆している。パラジウム粒子105及びニッケル粒子107は、樹脂粒子101及び金属層103上において突起109の一部を構成している。
【0041】
図2は、第2実施形態に係る導電粒子を示す模式断面図である。
図2に示す導電粒子100bは、被覆層103bに代えて被覆層(第3の層)103cを金属層103が有している点を除き導電粒子100aと同様の構成を有している。
【0042】
導電粒子100bの金属層103は、樹脂粒子101に近い順に、被覆層103aと、被覆層103cとを有している。被覆層103cは、被覆層103a及びニッケル粒子107よりも金属層103の外表面側に配置されており、金属層103の外表面(導電粒子100bの外表面)を構成している。パラジウム粒子105及びニッケル粒子107は、被覆層103a及び被覆層103cの間に配置されている。
【0043】
図3は、第3実施形態に係る導電粒子を示す模式断面図である。
図3に示す導電粒子100cは、金属層103が被覆層(第3の層)103dを更に有している点を除き導電粒子100aと同様の構成を有している。
【0044】
導電粒子100cの金属層103は、樹脂粒子101に近い順に、被覆層103aと、被覆層103bと、被覆層103dとを有している。被覆層103bは、被覆層103d及びニッケル粒子107の間に配置されている。また、被覆層103bは、被覆層103aがニッケル粒子107に被覆されていない領域において被覆層103a及び被覆層103dの間に配置されている。被覆層103dは、被覆層103a、ニッケル粒子107及び被覆層103bよりも金属層103の外表面側に配置されており、金属層103の外表面(導電粒子100cの外表面)を構成している。パラジウム粒子105及びニッケル粒子107は、被覆層103a及び被覆層103bの間に配置されている。
【0045】
樹脂粒子101の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリイソブチレン樹脂;ポリブタジエン樹脂が挙げられる。樹脂粒子101として、例えば、架橋(メタ)アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子等も使用できる。樹脂粒子の材質は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
樹脂粒子101は球状であることが好ましい。樹脂粒子101の平均粒径は、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。樹脂粒子101の平均粒径が前記範囲であることにより、電極間に異方導電性接着剤が配置された状態で加熱及び加圧して、導電粒子を介して電極同士を電気的に接続する場合に、各導電粒子の変形量が充分確保されることにより、安定して接続抵抗値を下げることができる。樹脂粒子101の平均粒径は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。樹脂粒子101の平均粒径が前記範囲であることにより、粒径のばらつきが大きくなることが抑制されることにより、接続抵抗値にばらつきが生じることを抑制することができる。樹脂粒子101の平均粒径としては、走査電子顕微鏡(以下、「SEM」という)を用いた観察により任意の樹脂粒子300個の粒径の測定を行うことにより得られる平均値を採用することができる。
【0047】
金属層103は、例えば、パラジウム粒子105を複数含む。パラジウム粒子105は、導電粒子の表面に沿って(導電粒子の径方向に垂直な方向に沿って)互いに離れて配置されている。一のパラジウム粒子105は、当該一のパラジウム粒子105に隣接する他のパラジウム粒子105と離れている。複数のパラジウム粒子105は、点在的に配置されており、例えば、導電粒子の径方向(金属層103の厚さ方向)に垂直な方向に点在的に配置されている。一のパラジウム粒子105は、当該一のパラジウム粒子105に隣接する他のパラジウム粒子105と接することなく独立して配置されている。パラジウム粒子105は、頂部から底面にかけて延在する側面を有している。パラジウム粒子105は、例えば、無電解パラジウムめっきにより形成される無電解パラジウムめっき析出核(例えば、パラジウムイオン及び還元剤を含む無電解パラジウムめっき液の還元析出物)である。
【0048】
金属層103は、例えば、ニッケル粒子107を複数含む。ニッケル粒子107は、導電粒子の表面に沿って(導電粒子の径方向に垂直な方向に沿って)互いに離れて配置されている。一のニッケル粒子107は、当該一のニッケル粒子107に隣接する他のニッケル粒子107と離れている。複数のニッケル粒子107は、点在的に配置されており、例えば、導電粒子の径方向(金属層103の厚さ方向)に垂直な方向に点在的に配置されている。一のニッケル粒子107は、当該一のニッケル粒子107に隣接する他のニッケル粒子107と接することなく独立して配置されている。ニッケル粒子107は、頂部から底面にかけて延在する側面を有している。ニッケル粒子107は、例えば、無電解ニッケルめっきにより形成される無電解ニッケルめっき析出核(微小突起)である。
【0049】
被覆層103aは、ニッケル及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有している。被覆層103bは、ニッケルを含有している。被覆層103c,103dは、貴金属及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有しており、例えば、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、白金、銀、金及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有している。
【0050】
本実施形態に係る導電粒子の平均粒径は、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。本実施形態に係る導電粒子の平均粒径は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。導電粒子の平均粒径が前記範囲であることにより、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いて接続構造体を作製した場合に、電極の高さばらつきの影響を受けにくくなる。本実施形態に係る導電粒子の平均粒径としては、SEMを用いた観察により任意の導電粒子300個の粒径の測定を行うことにより得られる平均値を採用することができる。なお、本実施形態に係る導電粒子は突起109を有するため、導電粒子の粒径は、SEMの画像における導電粒子に外接する円の直径とする。また、より精度を上げて平均粒径を測定するためには、コールターカウンター等の市販の装置を用いることができる。この場合、導電粒子50000個の粒径の測定を行えば、高い精度で平均粒径を測定することができる。導電粒子の平均粒径は、例えば、50000個の導電粒子を用いて、COULER MULTISIZER II(ベックマン・コールター株式会社製)により測定することができる。
【0051】
本実施形態に係る導電粒子の単分散率は、96.0%以上が好ましく、98.0%以上がより好ましい。導電粒子の単分散率が前記範囲であることにより、配線間のスペースが狭い場合(例えば6μmである場合)であっても、吸湿試験後において高い絶縁信頼性を容易に得ることができる。導電粒子の単分散率は、例えば、50000個の導電粒子を用いて、COULER MULTISIZER II(ベックマン・コールター株式会社製)により測定することができる。
【0052】
(第1の層:被覆層103a)
被覆層103aは、ニッケル及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有している。被覆層103aは、ニッケル及び銅のうちの一方のみを含有していてもよい。被覆層103aは、例えば、無電解ニッケルめっき又は無電解銅めっきにより形成することができる。
【0053】
被覆層103aがニッケルを主成分として含有する場合、被覆層103aにおけるニッケル含有量は、被覆層103aの全量を基準として、83質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、86質量%以上が更に好ましい。被覆層103aにおけるニッケル含有量は、被覆層103aの全量を基準として、98質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。含有量が前記範囲であることで、被覆層103a上に形成されるパラジウム粒子105の形状ばらつきを更に抑えることができると共にパラジウム粒子105を容易に高密度に分布させることができる。これにより、金属層103の外表面の突起109の形状のばらつきが更に抑えられ、突起109を高密度に形成することができる。そして、突起の数を増加させることにより更に低い導通抵抗を得ることもできる。
【0054】
ニッケルを含有する被覆層103aは、例えば、無電解ニッケルめっきにより形成することができる。この場合、樹脂粒子101をパラジウム触媒化処理することが好ましい。パラジウム触媒化処理は、公知の方法で行うことができる。その方法は特に限定されないが、例えば、アルカリシーダ又は酸性シーダと呼ばれる触媒化処理液を用いた触媒化処理方法が挙げられる。
【0055】
アルカリシーダを用いた触媒化処理方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まず、2−アミノピリジンが配位したパラジウムイオンを含む溶液に樹脂粒子を浸漬させることで樹脂粒子表面にパラジウムイオンを吸着させる。水洗後、パラジウムイオンが吸着した樹脂粒子を、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルマリン等の還元剤を含む溶液中に分散させて還元処理を行う。これにより、樹脂粒子表面に吸着したパラジウムイオンを金属のパラジウムに還元する。
【0056】
酸性シーダを用いた触媒化処理方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まず、樹脂粒子を塩化第一錫溶液に分散させ、錫イオンを樹脂粒子表面に吸着させる感受性化処理を行った後、水洗する。次に、塩化パラジウムを含む溶液に分散させ、パラジウムイオンを樹脂粒子表面に捕捉させる活性化処理を行う。水洗後、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルマリン等の還元剤を含む溶液中に分散させて還元処理を行う。これにより、樹脂粒子表面に吸着したパラジウムイオンを金属のパラジウムに還元する。
【0057】
これらのパラジウム触媒化処理方法では、パラジウムイオンを表面に吸着させた後に水洗し、さらに、還元剤を含む溶液に分散させることで、表面に吸着したパラジウムイオンを還元することにより、原子レベルの大きさのパラジウム析出核を形成することができる。
【0058】
被覆層103aは、リン及びホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、リンを含有することがより好ましい。これにより、被覆層103aの硬度を高めることが可能であり、導電粒子が圧縮されたときの導通抵抗を容易に低く保つことができる。
【0059】
被覆層103aを無電解ニッケルめっきにより形成する場合、例えば、還元剤として次亜リン酸ナトリウム等のリン含有化合物を用いることで、リンを共析させることが可能であり、ニッケル−リン合金を含有する被覆層103aを形成することができる。また、還元剤として、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等のホウ素含有化合物を用いることで、ホウ素を共析させることが可能であり、ニッケル−ホウ素合金を含有する被覆層103aを形成することができる。ニッケル−リン合金の硬度はニッケル−ホウ素合金よりも低い。そのため、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても被覆層103aの割れを抑える観点から、被覆層103aはニッケル−リン合金を含有することが好ましい。
【0060】
被覆層103aが銅を主成分として含有する場合、被覆層103aにおける銅含有量は、被覆層103aの全量を基準として、97質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上が更に好ましい。含有量が前記範囲であることで、被覆層103a上に形成されるパラジウム粒子105の形状ばらつきを更に抑えることができると共にパラジウム粒子105を容易に高密度に分布させることができる。これにより、金属層103の外表面の突起109の形状のばらつきが更に抑えられ、突起109を高密度に形成することができる。
【0061】
被覆層103aにおけるニッケル含有量及び銅含有量の合計は、被覆層103aの全量を基準として、84質量%以上が好ましく、86質量%以上がより好ましく、88質量%以上が更に好ましい。被覆層103aにおけるニッケル含有量及び銅含有量の合計の上限は、100質量%である。被覆層103aにおけるニッケルに対する銅の元素比率(銅/ニッケル)は、樹脂粒子101の表面から遠ざかるに従って高くなる濃度勾配を有していることが好ましい。このような構成により、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても低い導通抵抗を容易に保つことができる。この濃度勾配は、連続的であることが好ましい。
【0062】
被覆層103aにおける元素の含有量は、例えば、ウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出した後、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」という)を用いて25万倍の倍率で観察し、TEMに付属するエネルギー分散型X線検出器(以下、「EDX」という)による成分分析により得ることができる。
【0063】
被覆層103aの厚さは、20nm以上が好ましく、60nm以上がより好ましい。被覆層103aの厚さは、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。被覆層103aの厚さが前記範囲であると、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても被覆層103aの割れを容易に抑制することができる。
【0064】
被覆層103aは、ニッケル及び銅を含有するNi−Cu層を有することが好ましい。
図4は、本実施形態に係る導電粒子におけるNi−Cu層を説明するための図であり、(a)は、Ni−Cu層を説明するための模式断面図であり、(b)は、Ni−Cu層におけるニッケル含有量及び銅含有量の一例を示す図である。
図4(a)に示す導電粒子100dは、樹脂粒子101と、樹脂粒子101の表面に配置された被覆層103aと、を備えており、被覆層103aは、ニッケル及び銅を含有するNi−Cu層である。
【0065】
導電粒子100dにおいて、被覆層103aにおけるニッケル含有量及び銅含有量の合計は、被覆層103aの全量を基準として、97質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上が更に好ましい。被覆層103aにおけるニッケル含有量及び銅含有量の合計の上限は、100質量%である。被覆層103aにおけるニッケルに対する銅の元素比率(銅/ニッケル)は、樹脂粒子101の表面から遠ざかるに従って高くなる濃度勾配を有していることが好ましい。この濃度勾配は、連続的であることが好ましい。
【0066】
被覆層103aは、
図4(b)に示すように、樹脂粒子101に近い順に、ニッケルを主成分として含有する(例えば97質量%以上のニッケルを含有する)第1の部分P1と、ニッケル及び銅を主成分として含む合金を含有する第2の部分P2と、銅を主成分として含有する(例えば97質量%以上の銅を含有する)第3の部分P3とが積層された構造からなることが好ましい。これにより、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を容易に両立することができる。第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3のそれぞれは、被覆層103aの厚さ方向の一部を構成している。第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3は、例えば層状であり、樹脂粒子101のほぼ全体又は全体を被覆するように配置された層であってもよい。
【0067】
図4(b)のグラフは、被覆層103aの厚さ方向のニッケル含有量及び銅含有量を示している。当該グラフにおいて、第1の部分P1と第2の部分P2との境界線は、Ni含有量(実線)が97質量%である点を通るように引いた線である。一方、第2の部分P2と第3の部分P3との境界線は、Cu含有量(破線)が97質量%である点を通るように引いた線である。
図4(b)に示すように、被覆層103aは、樹脂粒子101の表面から遠ざかるに従ってニッケルに対する銅の元素比率が高くなる第2の部分P2を有する。
【0068】
第1の部分P1は、ニッケルを主成分として含有する。第1の部分P1におけるニッケル含有量は、第1の部分P1の全量を基準として、97質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上が更に好ましい。ニッケル含有量が97質量%以上であると、樹脂粒子101と被覆層103aとの接着性を良好に保つことができる。これにより、導電粒子100dを高圧縮して圧着接続する場合であっても、圧縮後に樹脂粒子101と被覆層103aとが互いに剥がれることを容易に抑制できる。また、ニッケル含有量が97質量%以上であると、圧縮後に金属の割れが発生することを容易に抑制できる。さらに、ニッケル含有量が99質量%以上であると、導電粒子100dを高圧縮して圧着接続する場合であっても圧縮後の金属層103の割れを更に抑制できる。第1の部分P1におけるニッケル含有量の上限は、100質量%である。
【0069】
第1の部分P1の厚さは、めっき時に凝集することが抑制され易い観点から、20Å(2nm)以上が好ましく、30Å(3nm)以上がより好ましく、40Å(4nm)以上が更に好ましい。第1の部分P1の厚さは、導電粒子100dを高圧縮して圧着接続する場合であっても、ニッケルを含有する部分で金属割れが発生することが抑制され易い観点から、200Å(20nm)以下が好ましく、150Å(15nm)以下がより好ましく、100Å(10nm)以下が更に好ましい。
【0070】
第2の部分P2は、ニッケル及び銅を主成分として含む合金を含有する。第2の部分P2におけるニッケル含有量及び銅含有量の合計は、第2の部分P2の全量を基準として、97質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上が更に好ましい。ニッケル含有量及び銅含有量の合計が97質量%以上であると、導電粒子100dを高圧縮して圧着接続する場合であっても、圧縮後の金属層103の割れを更に抑制できる。ニッケル含有量及び銅含有量の合計の上限は、100質量%である。
【0071】
第2の部分P2におけるニッケル含有量は、第2の部分P2の全量を基準として、97質量%以下であってもよく、97質量%未満であってもよい。第2の部分P2におけるニッケル含有量は、3質量%以上であってもよく、3質量%を超えていてもよい。第2の部分P2における銅含有量は、第2の部分P2の全量を基準として、97質量%以下であってもよく、97質量%未満であってもよい。第2の部分P2における銅含有量は、3質量%以上であってもよく、3質量%を超えていてもよい。
【0072】
第2の部分P2の厚さは、めっき時に凝集することが抑制され易い観点から、20Å(2nm)以上が好ましい。第2の部分P2の厚さは、導電粒子100dを高圧縮して圧着接続する場合であっても、ニッケルを含有する部分で金属割れが発生することが抑制され易い観点から、500Å(50nm)以下が好ましく、400Å(40nm)以下がより好ましく、200Å(20nm)以下が更に好ましい。
【0073】
第3の部分P3は、銅を主成分として含有する。第3の部分P3における銅含有量は、第3の部分P3の全量を基準として、97質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上が更に好ましい。銅含有量が97質量%以上であると、導電粒子100dを高圧縮して圧着接続する場合であっても、圧縮後の金属層103の割れを更に抑制できる。第3の部分P3における銅含有量の上限は、100質量%である。
【0074】
第3の部分P3の厚さは、充分な導電性を得る観点から、100Å(10nm)以上が好ましく、200Å(20nm)以上がより好ましく、300Å(30nm)以上が更に好ましい。第3の部分P3の厚さは、めっき時に凝集することが抑制され易い観点から、2000Å(200nm)以下が好ましく、1500Å(150nm)以下がより好ましく、1000Å(100nm)以下が更に好ましい。
【0075】
第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3は、いずれもニッケル、銅及びホルムアルデヒドを含む無電解めっき液を用いて形成されることが好ましく、一つの建浴槽における無電解めっき液の中で順次形成されることがより好ましい。一つの建浴槽において第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3を順次形成することで、それぞれの間の密着性を良好に保つことができる。
【0076】
第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3を同一の無電解めっき液により連続的に作製するための無電解めっき液の組成としては、例えば、(a)硫酸銅等の水溶性銅塩(以下、「(a)成分」という)、(b)硫酸ニッケル等の水溶性ニッケル塩(以下、「(b)成分」という)、(c)ホルムアルデヒド等の還元剤(以下、「(c)成分」という)、(d)ロッシェル塩、EDTA等の錯化剤(以下、「(d)成分」という)、及び、(e)アルカリ性の水酸化物等のpH調整剤(以下、「(e)成分」という)を混合して得られる組成が好ましい。
【0077】
無電解めっきにより樹脂粒子101の表面に被覆層103aを形成するためには、例えば、樹脂粒子101の表面にパラジウム触媒を付与し、その後、無電解めっきを行うことによりめっき被膜を形成することができる。第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3を無電解めっきにより形成する具体的な方法としては、例えば、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び、(e)成分を混合して得られる建浴液に、パラジウム触媒を付与した樹脂粒子を加えることで、第1の部分P1及び第2の部分P2を形成し、その後に(a)成分、(c)成分、(d)成分、及び、(e)成分を混合して得られる補充液を補充することで、第3の部分P3を形成することができる。
【0078】
(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分を混合して得られる建浴液における(a)成分の濃度としては、0.0005mol/L以上が好ましく、0.001mol/L以上がより好ましく、0.005mol/L以上が更に好ましい。(a)成分の濃度が0.0005mol/L以上であると、第2の部分P2又は第3の部分P3を容易に均一に形成できる。前記建浴液における(a)成分の濃度としては、0.05mol/L以下が好ましく、0.03mol/L以下がより好ましく、0.02mol/L以下が更に好ましい。(a)成分の濃度が0.05mol/L以下であると、銅の濃度が過剰に高くなることが抑制されることで液の活性が過剰に高まることが抑制されるため、粒子同士が凝集することを容易に抑制できる。
【0079】
(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分を混合して得られる建浴液における(b)成分の濃度としては、0.0005mol/L以上が好ましく、0.001mol/L以上がより好ましく、0.005mol/L以上が更に好ましい。(b)成分の濃度が0.0005mol/L以上であると、樹脂粒子101の表面のパラジウム触媒がニッケルめっき被膜により覆われ易く、パラジウム触媒上に銅が析出する箇所が部分的に生じることが抑制され、粒子同士が凝集することを容易に抑制できると共に、樹脂粒子101の表面の一部に金属が未析出の箇所が発生することを容易に抑制できる。前記建浴液における(b)成分の濃度としては、0.05mol/L以下が好ましく、0.03mol/L以下がより好ましく、0.02mol/L以下が更に好ましい。(b)成分の濃度が0.05mol/L以下であると、ニッケルの濃度が過剰に高くなることが抑制されることで液の活性が過剰に高まることが抑制されるため、粒子同士が凝集することを容易に抑制できる。
【0080】
無電解めっき液に(a)成分及び(b)成分を同時に含ませることで第1の部分P1及び第2の部分P2を同一の無電解めっき液により連続的に作製することができる。この理由としては、次のように考えられる。すなわち、ホルムアルデヒド等の還元剤を用いることで、樹脂表面のパラジウム触媒上ではニッケルの方が銅よりも優先的に析出するために第1の部分P1が形成され、その後、第1の部分P1の外側に第2の部分P2が形成される。第2の部分P2のニッケルに対する銅の含有量の割合は、第2の部分P2の厚さの成長と共に高くなる傾向がある。パラジウム触媒上ではニッケルが優先的に析出し、その後にパラジウム触媒がニッケルにより被覆されると、直ちに銅の析出も起こるようになるため、ニッケル及び銅を主成分として含む合金を含有する層(第2の部分P2)が形成され始めると考えられる。そして、めっき被膜の厚さが厚くなるに従ってパラジウム触媒の影響が薄れていくために、銅の析出がニッケルの析出よりも支配的になり、結果として、樹脂粒子101側からめっき被膜中の厚さ方向において、銅の含有量の割合が高くなると考えられる。
【0081】
樹脂粒子101の表面に第1の部分P1を形成した場合、樹脂粒子101の表面に直接銅めっき層を形成した場合と比較して、樹脂粒子101同士の凝集を抑制することができる。この理由としては、以下のように考えられる。無電解銅めっきの銅イオンから銅への析出過程は、銅の価数がCu(2価)→Cu(1価)→Cu(0価)へと変化する反応であり、反応中間体として不安定な1価の銅イオンが生成する。この1価の銅イオンが不均化反応を起こすことで、例えばめっき液中にCu(0価)が発生する等して、液の安定性が非常に低くなると考えられる。一方、無電解ニッケルめっきのニッケルイオンからニッケルへの析出過程は、ニッケルの価数がNi(2価)→Ni(0価)へと変化する反応であり、反応中間体として不安定な1価のニッケルイオンの過程を経ない。したがって、パラジウム触媒表面上での無電解銅めっきと無電解ニッケルめっきとを比較すると、無電解銅めっき液の方が安定性に乏しく反応が激しいために、反応開始と同時に粒子同士の凝集が発生し易い。一方、無電解ニッケルめっきは前述したように、安定性が高く、粒子同士の凝集を抑制してめっき被膜を形成することができると考えられる。
【0082】
ニッケル及び銅を含有し且つニッケル含有量及び銅含有量の合計が97質量%以上である被覆層103aを用いた場合、97質量%以上の銅を含有するもののニッケルを含有しない場合と比較してピンホールが生じにくい。その原因としては、97質量%以上の銅を含有するもののニッケルを含有しない場合、めっき被膜形成の際に粒子同士が凝集するためであると本発明者らは推測する。すなわち、めっきの初期段階で粒子が凝集し、その後に粒子同士が離れた場合、凝集していた部位は初期段階でめっきされないため、その後にめっき被膜を成長させても当該部位がめっきされることはなく、ピンホールが形成されてしまう。
【0083】
次に、樹脂粒子101の表面におけるパラジウム触媒表面上での無電解銅めっきの反応と、第1の部分P1上における第2の部分P2の反応と、第2の部分P2上における第3の部分P3の反応と、第3の部分P3の成長と、の四者を比較して考察する。
【0084】
樹脂粒子101の表面におけるパラジウム触媒表面上での無電解銅めっきの反応では、パラジウム触媒表面上でホルムアルデヒド等の還元剤の酸化反応が進行し易いために、無電解銅めっきの反応が進み易く不安定化し、粒子同士が凝集し易い。一方、第1の部分P1上における第2の部分P2の反応では、第1の部分P1が自己触媒の表面となり、還元剤が酸化される。第2の部分P2の表面における第3の部分P3の反応では、第2の部分P2が自己触媒の表面となり、還元剤が酸化される。第3の部分P3の成長では、銅そのものが自己触媒の表面となり、銅の成長が起こる。第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3の表面におけるホルムアルデヒド等の還元剤の酸化反応と、パラジウム触媒表面上でのホルムアルデヒド等の還元剤の酸化反応を比較すると、第1の部分P1、第2の部分P2及び第3の部分P3の表面におけるホルムアルデヒド等の還元剤の酸化反応の方が、パラジウム触媒表面上と比較して進みにくい。そのため、パラジウム触媒表面上での無電解銅めっきでは粒子同士が凝集し易いが、ニッケル及び銅の合金被膜、又は、銅被膜の成長が起こっても粒子同士の凝集が起こりにくい。
【0085】
無電解めっき液の還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン等の還元剤を用いてもよく、ホルムアルデヒドを単独で使用することが最も好ましい。次亜リン酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、ジメチルアミンボラン等を用いる場合、リン又はホウ素が共析し易いため、第1の部分P1におけるニッケル含有量を97質量%以上に調整するためには、濃度を調整することが好ましい。還元剤としてホルムアルデヒドを用いることで、第1の部分P1におけるニッケル含有量が99質量%以上のめっき被膜を形成し易い。次亜リン酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン等の還元剤を用いる場合は、これらの少なくとも1種をホルムアルデヒドと併用することが好ましい。
【0086】
無電解めっき液の錯化剤としては、例えば、グリシン等のアミノ酸;エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン類;EDTA、ピロリン酸等の銅錯化剤;クエン酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸を用いてもよい。
【0087】
無電解銅めっき終了後の水洗は、短時間に効率よく行うことが好ましい。水洗時間が短いほど銅表面に酸化被膜ができにくいため、後のめっきが有利になる傾向がある。
【0088】
(パラジウム粒子)
図5、
図6及び
図7は、本実施形態に係る導電粒子を、導電粒子の中心付近を通る面で切断したときの断面の一部を示す模式図である。
図5及び
図6では、パラジウム粒子の大きさ及び存在位置を説明し易くするために、隣り合う2つの突起の頂点及びパラジウム粒子の中心付近を通る切断面が示されている。
図7では、パラジウム粒子、及び、パラジウム粒子の上に配置されたニッケル粒子(無電解ニッケルめっき析出核)の大きさ及び存在位置を説明し易くするために、隣り合う2つの突起の頂点及びパラジウム粒子の中心付近を通る切断面が示されている。
【0089】
金属層103の厚さ方向におけるパラジウム粒子105の長さ(高さ)D1は、4nm以上が好ましく、6nm以上がより好ましく、8nm以上が更に好ましい。前記範囲の長さを有するパラジウム粒子105を金属層103が含むことで、金属層103の外表面に充分な長さの突起109を容易に形成できる。パラジウム粒子105の長さD1は、パラジウム粒子105が点在的に配置され易いと共に金属層103の外表面に充分な長さの突起109が形成され易い観点から、35nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましい。
【0090】
パラジウム粒子105の長さD1を求めるためには、まず、導電粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法、収束イオンビーム加工法、クライオウルトラミクロトーム加工法等で導電粒子の断面を切り出して薄膜切片状のサンプルを作製する。続いて、TEMを用いて薄膜切片状のサンプルを25万倍の倍率で観察し、TEMに付属するEDXにより得られるパラジウムのマッピング図からD1を求める。
【0091】
本実施形態においては、導電粒子を当該導電粒子の中心付近を通る面で切断したときに、前記方法で確認されるパラジウム粒子105の平均長さ(平均高さ)は、4nm以上が好ましく、6nm以上がより好ましく、12nm以上が更に好ましい。前記範囲の長さを有するパラジウム粒子105を金属層103が含むことで、金属層103の外表面に充分な長さの突起109を容易に形成できる。パラジウム粒子105の平均長さは、パラジウム粒子105が点在的に配置され易いと共に金属層103の外表面に充分な長さの突起109が形成され易い観点から、35nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましい。パラジウム粒子105の平均長さは、パラジウム粒子10個における平均値として算出できる。
【0092】
金属層103は、金属層103の平均厚さをdとしたときに、樹脂粒子101と金属層103との界面までの最短距離が0.1×d以上であるパラジウム粒子105を含むことが好ましい。すなわち、
図5に示されるパラジウム粒子105の樹脂粒子101側の表面S1と、樹脂粒子101及び金属層103の界面S2との最短距離D2が0.1×d以上であることが好ましい。
図5の破線H1と界面S2との距離が金属層103の平均厚さを示す。
【0093】
金属層103において、パラジウム粒子105と樹脂粒子101との間に、厚さ0.1×d以上の層(例えば被覆層103a)が存在することにより、金属層103の厚さ方向におけるパラジウム粒子105の長さD1を調整し易くなり、例えば、金属層103の厚さ方向における長さD1が4nm以上のパラジウム粒子105を容易に形成することができる。すなわち、厚さ0.1×d以上の層(例えば被覆層103a)が存在していることにより、当該層に還元剤が吸着し、還元剤の酸化反応(つまり、パラジウムイオンの還元反応)が連続的に進行するため、パラジウム粒子105を成長させ易い。結果として、金属層103の厚さ方向におけるパラジウム粒子105の長さD1を調整し易くなり、例えば、金属層103の厚さ方向における長さD1が4nm以上のパラジウム粒子105を容易に成長させることができる。さらに、
図7に示すように、このようなパラジウム粒子105の上にニッケル粒子107を成長させることにより、優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を両立可能な突起109を容易に得ることができる。
【0094】
一定以上(例えば4nm以上)の長さD1を有するパラジウム粒子105を樹脂粒子101の表面に直接形成することが難しい場合がある。パラジウム粒子105は、例えばパラジウムイオン及び還元剤を含む無電解パラジウムめっき液により還元析出させて形成するが、例えば、一定以上(例えば4nm以上)の長さD1を有するパラジウム粒子を樹脂粒子101表面に直接形成しようとしても、還元剤が樹脂粒子101の表面に吸着しづらい場合がある。この場合、還元剤の酸化反応が進まないことにより、パラジウム粒子を大きくさせることが難しい。この場合に得られるパラジウムの析出核の大きさは原子レベルであると考えられ、このような析出核の上にニッケル粒子107を形成しても平滑な被膜となる。そのため、突起を有する形状を形成できないことにより、低い導通抵抗を得ることが難しい場合がある。
【0095】
一つの導電粒子の表面全体において突起の大きさをある程度の大きさに制御すると共に、導電粒子間における突起形状のばらつきを低減して導電粒子間において安定して低い導通抵抗を得る観点から、最短距離D2は、0.2×d以上がより好ましく、0.4×d以上が更に好ましい。優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立する観点から、最短距離D2は、0.7×d以下が好ましく、0.4×d以下がより好ましい。
【0096】
最短距離D2は、例えば、導電粒子の中心付近を通る断面のEDXにより得られるパラジウムのマッピング図に基づき求めることができる。金属層103及び樹脂粒子101の界面S2については、EDXにより得られるマッピング図(例えば、被覆層103aが形成されている場合には、ニッケル又は銅のマッピング図)から確認できる。
【0097】
金属層103は、最短距離D2が下記の範囲であるパラジウム粒子105を含むことが好ましい。パラジウム粒子105と樹脂粒子101との間に被覆層(例えば被覆層103a)が配置されている場合、当該被覆層がピンホール等のない連続膜であり、樹脂粒子101が被覆層(例えば被覆層103a)により完全に被覆された状態であれば、一定以上の(例えば4nm以上)の長さD1のパラジウム粒子105が導電粒子全体に形成されることにより、パラジウム粒子105上のニッケル粒子107が導電粒子全体に形成され易いため、更に低い導通抵抗を得ることができる。このような理由から、最短距離D2は、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましい。
【0098】
金属層103は、金属層103の厚さ方向に直交する方向における直径D3が下記の範囲であるパラジウム粒子105を含むことが好ましい。パラジウム粒子105の直径D3は、5nm以上が好ましく、7nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましい。パラジウム粒子105の直径D3は、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下が更に好ましい。パラジウム粒子105の直径D3が前記範囲であると、金属層103の外表面に充分な大きさの突起109を充分な密度で容易に形成することができる。
【0099】
パラジウム粒子105において、直径(外径)が20nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し50%未満であり、直径が20nm以上60nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し50〜100%であり、直径が60nm以上の粒子の割合が全粒子数に対し50%以下が好ましく、直径が20nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し20%未満であり、直径が20nm以上60nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し70〜100%であり、直径が60nm以上の粒子の割合が全粒子数に対し20%以下がより好ましい。パラジウム粒子105の直径の分布が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。
【0100】
「パラジウム粒子の直径」とは、測定対象粒子(パラジウム粒子がニッケル粒子に被覆される前段階の粒子)の正投影面において、パラジウム粒子の面積と同一の面積を有する真円の直径を意味する。具体的には、SEMにより15万倍で測定対象粒子を観察して得られるSEM画像をもとに、画像解析によりパラジウム粒子の輪郭を割り出し、各パラジウム粒子の面積を算出して、その面積からパラジウム粒子の直径を求めることができる。所定の直径を有するパラジウム粒子の割合に関する「全粒子数」とは、測定対象粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に存在するパラジウム粒子の合計である。
【0101】
直径D3が20nm以上60nm未満であるパラジウム粒子105の割合は、パラジウム粒子105(例えば長さ4nm以上のパラジウム粒子105)の総数に対し、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。
【0102】
パラジウム粒子105の直径D3に対するパラジウム粒子105の長さD1の比(D1/D3)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。前記比が前記範囲であるパラジウム粒子105が金属層103に含まれると、金属層103の外表面に形成される突起形状を容易に制御できる。
【0103】
パラジウム粒子105は、金属層103の厚さ方向における金属層103の中央(平均厚さdの中央)から平均厚さdの±45%以内の範囲に含まれていることが好ましい。
図6に示される導電粒子の断面において、破線C1は、金属層103の厚さ方向における金属層103の中央線を示し、破線C1から金属層103の厚さ方向にそれぞれd/2の距離に、金属層103の平均厚さの面(破線H1)と、樹脂粒子の表面(界面S2)とが位置する。パラジウム粒子105上にニッケル粒子107を形成した後において、突起の形状ばらつきを抑え、優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立する観点から、パラジウム粒子105は、金属層103の厚さ方向において、破線C1から±0.45×dの範囲内に存在することが好ましく、破線C1から±0.3×dの範囲内に存在することがより好ましく、破線C1から±0.2×dの範囲内に存在することが更に好ましい。
【0104】
導電粒子が有するパラジウム粒子105の数は、測定対象粒子(パラジウム粒子105がニッケル粒子107に被覆される前段階の粒子)のSEMの正投影面において、測定対象粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に20個以上が好ましく、60個以上がより好ましく、100個以上が更に好ましい。パラジウム粒子105の数が前記範囲であると、金属層103の外表面に充分な数の突起109を容易に形成できる。これにより、相対向する電極間に導電粒子を介在させて電極同士を圧着接続したときに更に低い導通抵抗を得ることができる。
【0105】
金属層103の外表面に充分な数の突起109を形成し、接続時の導通抵抗を更に下げる観点から、パラジウム粒子105は、導電粒子の径方向に垂直な方向に点在的に配置されていることが好ましい。パラジウム粒子105は、互いに接触することなく、導電粒子の径方向に垂直な方向に点在的に配置されていることがより好ましい。互いに接触するパラジウム粒子105の数は、一つの導電粒子中に15個以下が好ましく、7個以下がより好ましく、0個(すなわちパラジウム粒子105同士が接触しないですべてのパラジウム粒子105が点在的に配置されていること)が更に好ましい。
【0106】
金属層103は、金属層103の厚さ方向において突起109と樹脂粒子101との間に配置されたパラジウム粒子105を含むことが好ましい。また、金属層103は、金属層103の外表面に形成される突起109の頂点と、金属層103及び樹脂粒子101の界面とを最短で結ぶ直線が通るパラジウム粒子105を含むことが好ましい。
図6に示される導電粒子の断面においては、直線L1が、突起109の頂点T1と、樹脂粒子101及び金属層103の界面S2とを最短で結ぶ直線である。
図6に示される金属層103は、直線L1が通るパラジウム粒子105を含んでいる。このように、パラジウム粒子105に対応する位置に金属層103の突起109が形成されていることが好ましい。
【0107】
前記直線L1が通るパラジウム粒子105が金属層103に含まれていることは、例えば、導電粒子の中心付近と突起109の頂点T1とを通る切断面で導電粒子を切断し、その切断面のEDXにより得られるパラジウムのマッピング図で確認することができる。
【0108】
被覆層103aを被覆するパラジウム粒子105の面積の割合(被覆率)は、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましい。前記割合は、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。前記被覆率が前記範囲であると、金属層103の外表面に良好な突起形状を容易に形成できる。これにより、相対向する電極間に導電粒子を介在させて電極同士を圧着接続したときに更に低い導通抵抗を得ることができる。
【0109】
パラジウム粒子105の形状は、特に制限されないが、楕円体、球体、半球体、略楕円体、略球体、略半球体等であることが好ましい。これらの中でも半球体又は略半球体であることが好ましい。
【0110】
パラジウム粒子105は、例えば、パラジウムイオン及び還元剤を含む無電解パラジウムめっき液により還元析出させて形成することができる。
【0111】
無電解パラジウムめっき液に用いるパラジウムの供給源としては、特に限定されないが、例えば、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、塩化パラジウムアンモニウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、酸化パラジウム等のパラジウム化合物が挙げられる。具体的には、酸性塩化パラジウム「PdCl
2/HCl」、硝酸テトラアンミンパラジウム「Pd(NH
3)
4(NO
3)
2」、ジニトロジアンミンパラジウム「Pd(NH
3)
2(NO
2)
2」、ジシアノジアンミンパラジウム「Pd(CN)
2(NH
3)
2」、ジクロロテトラアンミンパラジウム「Pd(NH
3)
4Cl
2」、スルファミン酸パラジウム「Pd(NH
2SO
3)
2」、硫酸ジアンミンパラジウム「Pd(NH
3)
2SO
4」、シュウ酸テトラアンミンパラジウム「Pd(NH
3)
4C
2O
4」、硫酸パラジウム「PdSO
4」等を用いることができる。
【0112】
無電解パラジウムめっき液に用いる還元剤としては、特に制限はないが、得られるパラジウム粒子105におけるパラジウム含有量を充分高めると共に粒子の形状ばらつきを更に抑える観点から、ギ酸化合物(例えばギ酸ナトリウム)が好ましい。
【0113】
パラジウム粒子105は、リンを含有することができる。これにより、パラジウム粒子105の硬度が高められ、導電粒子が圧縮されたときの導通抵抗を容易に低く保つことができる。このようなパラジウム粒子105は、無電解パラジウムめっき液に用いる還元剤として、例えば、次亜リン酸、亜リン酸等のリン含有化合物;ホウ素含有化合物を用いて得ることができる。このような還元剤を用いることにより、パラジウム−リン合金又はパラジウム−ホウ素合金を含有するパラジウム粒子105を得ることができる。この場合、パラジウム粒子105におけるパラジウム含有量が所望の範囲となるように、還元剤の濃度、pH、めっき液の温度等を調整することが好ましい。
【0114】
無電解パラジウムめっき液には、必要に応じて、錯化剤、緩衝剤等を添加することができる。錯化剤としては、例えば、エチレンジアミン及び酒石酸が挙げられる。緩衝剤等の種類については、特に限定されない。
【0115】
パラジウム粒子105におけるパラジウム含有量は、パラジウム粒子105の全量を基準として、94質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。パラジウム粒子105におけるパラジウム含有量が前記範囲であると、金属層103の外表面に形成される突起109の大きさ及び数を更に良好な範囲に調整することができる。これにより、相対向する電極間に導電粒子を介在させて電極同士を圧着接続したときに更に低い導通抵抗を得ることができる。パラジウム粒子105におけるパラジウム含有量の上限は、100質量%である。
【0116】
パラジウム粒子105における元素の含有量は、例えば、ウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出した後、TEMを用いて25万倍の倍率で観察し、TEMに付属するEDXによる成分分析により得ることができる。
【0117】
パラジウム粒子105を上述の還元析出により形成する場合、後述する銅張り積層板を用いる方法で得られる無電解パラジウムめっき被膜において、EDXによる成分分析で得られるパラジウム含有量が前記範囲となるように還元析出の条件を設定することが好ましい。
【0118】
(ニッケル粒子)
図7に示すように、本実施形態に係る導電粒子において、ニッケル粒子107と、ニッケル粒子107上に配置された被覆層(金属層103におけるニッケル粒子107上に配置された層)103eによって突起109が形成される。ニッケル粒子107は、無電解ニッケルめっきにより形成することができる。
【0119】
ニッケル粒子107におけるニッケル含有量は、ニッケル粒子107の全量を基準として、92質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、94質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。ニッケル含有量は、ニッケル粒子107の全量を基準として、99質量%以下が好ましく、98.5質量%以下がより好ましい。ニッケル含有量が前記範囲であると、ニッケル粒子107を形成する場合にニッケル粒子107の凝集を容易に抑制可能であり、異常析出部の形成を容易に防止できる。これにより、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を両立することができる導電粒子を容易に得ることができる。
【0120】
ニッケル粒子107における元素の含有量は、例えば、ウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出した後、TEMを用いて25万倍の倍率で観察し、TEMに付属するEDXによる成分分析により得ることができる。
【0121】
金属層103の厚さ方向におけるニッケル粒子107及び被覆層103eの合計の平均厚さは、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましい。ニッケル粒子107及び被覆層103eの合計の平均厚さは、200nm以下が好ましく、160nm以下がより好ましく、130nm以下が更に好ましい。ニッケル粒子107及び被覆層103eの合計の厚さが前記範囲であると、良好な形状の突起109を容易に形成できると共に、圧着接続の際に導電粒子が高圧縮された場合でも金属層103の割れが発生しにくくなる。
【0122】
ニッケル粒子107及び被覆層103eの合計の平均厚さは、導電粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出し、TEMを用いて25万倍の倍率で観察して画像を得た後、得られた画像から見積もられるニッケル粒子107及び被覆層103eの断面積から算出できる。このとき、被覆層103aと、ニッケル粒子107及び被覆層103eを区別しづらい場合には、EDXによる成分分析により、被覆層103aと、ニッケル粒子107及び被覆層103eとを明確に区別することで、ニッケル粒子107及び被覆層103eの合計のみの平均厚さを算出できる。ニッケル粒子107及び被覆層103eの厚さの平均値は、導電粒子10個における平均値として算出できる。
【0123】
金属層103の外表面に充分な数の突起109を形成し、接続時の導通抵抗を更に下げる観点から、ニッケル粒子107は、導電粒子の径方向に垂直な方向に点在的に配置されていることが好ましい。ニッケル粒子107は、互いに接触することなく、導電粒子の径方向に垂直な方向に点在的に配置されていることがより好ましい。互いに接触するニッケル粒子107の数は、一つの導電粒子中に15個以下が好ましく、7個以下がより好ましく、0個(すなわちニッケル粒子107同士が接触しないですべてのニッケル粒子107が点在的に配置されていること)が更に好ましい。
【0124】
ニッケル粒子107を更に成長させて連続膜を形成した場合、突起の形成性は充分であるため良好な導通抵抗を得ることができるが、粒子同士が凝集し易くなり単分散率が低下してしまうため、絶縁信頼性が低下し易い傾向になる。そのため、ニッケル粒子107同士が接触しないで点在的に配置されているほど高い絶縁信頼性を得られ易いため、ニッケル粒子107は、点在的に配置されていることが好ましい。
【0125】
金属層103の厚さ方向におけるニッケル粒子107の平均長さ(平均高さ)は、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。ニッケル粒子107の平均長さは、100nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。ニッケル粒子107の平均長さが前記範囲であると、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を両立することができる導電粒子を容易に得ることができる。
【0126】
「ニッケル粒子の長さ」とは、
図7に示されるD5を指し、ニッケル粒子107の基端における直径方向の両端を結んだ直線(ニッケル粒子の両側の谷と谷を結んだ直線)から垂直方向におけるニッケル粒子107の頂点までの距離(高さ)のことである。ニッケル粒子107の長さD5の平均値は、ニッケル粒子10個における平均値として算出できる。
【0127】
ニッケル粒子107において、長さが30nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し80%未満であり、長さが30nm以上100nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し20〜80%であり、長さが100nm以上の粒子の割合が全粒子数に対し5%以下が好ましく、長さが30nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し60%未満であり、長さが30nm以上100nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し40〜70%であり、長さが100nm以上の粒子の割合が全粒子数に対し2%以下がより好ましい。粒子の長さの分布が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。
【0128】
ニッケル粒子107において、直径(外径)が100nm以上の粒子の割合は、全粒子数に対し、25%以上が好ましく、35%以上がより好ましい。直径が100nm以上の粒子の割合は、90%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。前記粒子の割合が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。
【0129】
ニッケル粒子107において、直径(外径)が100nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し80%未満であり、直径が100nm以上200nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し20〜80%であり、直径が200nm以上の粒子の割合が全粒子数に対し10%以下が好ましく、直径が100nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し60%未満であり、直径が100nm以上200nm未満の粒子の割合が全粒子数に対し40〜70%であり、直径が200nm以上の粒子の割合が全粒子数に対し5%以下がより好ましい。ニッケル粒子107の直径の分布が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。
【0130】
「ニッケル粒子の直径」とは、測定対象粒子(ニッケル粒子が被覆層に被覆される前段階の粒子)の正投影面において、ニッケル粒子の面積と同一の面積を有する真円の直径を意味する。具体的には、SEMにより10万倍で測定対象粒子を観察して得られるSEM画像をもとに、画像解析によりニッケル粒子の輪郭を割り出し、各ニッケル粒子の面積を算出して、その面積からニッケル粒子の直径を求めることができる。「全粒子数」とは、測定対象粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に存在するニッケル粒子の合計である。
【0131】
ニッケル粒子107は、測定対象粒子(ニッケル粒子107が被覆層に被覆される前段階の粒子)の正投影面において、測定対象粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に、下記のとおり含まれていることが好ましい。ニッケル粒子107の数は、50個以上が好ましく、70個以上がより好ましく、90個以上が更に好ましい。ニッケル粒子107の数は、200個以下が好ましく、170個以下がより好ましく、150個以下が更に好ましい。ニッケル粒子107の数が前記範囲である場合、相対向する電極間に導電粒子を介在させて電極同士を圧着接続したときに充分低い導通抵抗を容易に得ることができる。
【0132】
ニッケル粒子107は、リン及びホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。これにより、ニッケル粒子107上に形成される被覆層(例えば被覆層103b)の硬度を高めることが可能であり、導電粒子が圧縮されたときの導通抵抗を容易に低く保つことができる。ニッケル粒子107は、リン及び/又はホウ素と共に、共析する金属を含有していてもよい。金属としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、モリブデン、パラジウム、錫、タングステン及びレニウムが挙げられる。これらの金属をニッケル粒子107が含有することでニッケル粒子107の硬度を高めることが可能であり、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても突起109が押しつぶされることを抑制し、更に低い導通抵抗を得ることができる。前記金属の中でも、硬度が高いタングステンが好ましい。この場合、ニッケル粒子107におけるニッケル含有量は、ニッケル粒子107の全量を基準として85質量%以上が好ましい。
【0133】
ニッケル粒子107を無電解ニッケルめっきにより形成する場合、例えば、還元剤として次亜リン酸ナトリウム等のリン含有化合物を用いることで、リンを共析させることが可能であり、ニッケル−リン合金を含有するニッケル粒子107を形成することができる。また、還元剤として、例えば、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等のホウ素含有化合物を用いることで、ホウ素を共析させることが可能であり、ニッケル−ホウ素合金を含有するニッケル粒子107を形成することができる。ニッケル−ホウ素合金の硬度はニッケル−リン合金よりも高い。そのため、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても突起109が押しつぶされることを抑制し、更に低い導通抵抗を得る観点から、ニッケル粒子107はニッケル−ホウ素合金を含有することができる。無電解ニッケルめっきの詳細については後述する。
【0134】
(第2の層:被覆層103b)
被覆層103bは、ニッケルを含有している。導電粒子100a(
図1)において、被覆層103bは、突起109の最外層を構成している。このような被覆層103bは、無電解ニッケルめっきにより形成することができる。例えば、被覆層103a及びニッケル粒子107上に無電解ニッケルめっきを施すことにより、突起109を外表面(樹脂粒子101側とは反対側の面)に有する被覆層103bを形成することができる。また、導電粒子100c(
図3)において被覆層103a及び被覆層103dの間の中間層を構成する被覆層103bについても同様に形成することができる。
【0135】
被覆層103bにおけるニッケル含有量は、被覆層103bの全量を基準として、88質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、93質量%以上が更に好ましく、96質量%以上が特に好ましい。被覆層103bにおけるニッケル含有量は、99質量%以下が好ましく、98.5質量%以下がより好ましい。ニッケル含有量が前記範囲であると、被覆層103bを無電解ニッケルめっきにより形成する場合にニッケル粒子107の凝集を容易に抑制可能であり、異常析出部の形成を容易に防止できる。これにより、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を両立することができる導電粒子を容易に得ることができる。
【0136】
被覆層103bにおける元素の含有量は、例えば、ウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出した後、TEMを用いて25万倍の倍率で観察し、TEMに付属するEDXによる成分分析により得ることができる。
【0137】
被覆層103bの厚さ(平均厚さ)は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましい。被覆層103bの厚さ(平均厚さ)は、150nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。被覆層103bの厚さが前記範囲であると、良好な形状の突起109を容易に形成できると共に、圧着接続の際に導電粒子が高圧縮された場合でも金属層103の割れの発生を容易に抑制できる。
【0138】
被覆層103bの平均厚さは、導電粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出し、TEMを用いて25万倍の倍率で観察して画像を得た後、得られた画像から見積もられる被覆層103e(
図7)の断面積から算出できる。このとき、被覆層103a、ニッケル粒子107及び被覆層103eが区別しづらい場合には、EDXによる成分分析により、被覆層103a、ニッケル粒子107及び被覆層103eを明確に区別することで、被覆層103eのみの平均厚さを算出できる。被覆層103bの平均厚さは、導電粒子10個における平均値として算出できる。
【0139】
ニッケル粒子107及び被覆層103bを含む突起109の平均長さは、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。前記突起109の平均長さは、120nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。突起109の平均長さが前記範囲であると、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を両立することができる導電粒子を容易に得ることができる。
【0140】
「突起の長さ」とは、
図6に示されるD4を指し、突起109の基端における直径方向の両端を結んだ直線(突起の両側の谷と谷を結んだ直線)から垂直方向における突起109の頂点までの距離(高さ)のことである。突起109の長さD4の平均値は、導電粒子1個に対し10箇所の突起の長さD4を求める場合の導電粒子10個における100箇所の突起の長さD4の平均値として算出できる。
【0141】
ニッケル粒子107及び被覆層103bを含む突起109において、長さが30nm未満の突起の割合が全突起数に対し80%未満であり、長さが30nm以上120nm未満の突起の割合が全突起数に対し20〜80%であり、長さが120nm以上の突起の割合が全突起数に対し5%以下が好ましく、長さが30nm未満の突起の割合が全突起数に対し60%未満であり、長さが30nm以上120nm未満の突起の割合が全突起数に対し40〜70%であり、長さが120nm以上の突起の割合が全突起数に対し2%以下がより好ましい。突起の長さの分布が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。突起の長さに関する「全突起数」とは、例えば、導電粒子1個に対し10箇所の突起の長さを求める場合の導電粒子10個における100箇所の突起である。
【0142】
ニッケル粒子107及び被覆層103bを含む突起109は、直径(外径)が100nm未満の突起の割合が全突起数に対し80%未満であり、直径が100nm以上200nm未満の突起の割合が全突起数に対し20〜80%であり、直径が200nm以上の突起の割合が全突起数に対し10%以下が好ましく、直径が100nm未満の突起の割合が全突起数に対し60%未満であり、直径が100nm以上200nm未満の突起の割合が全突起数に対し40〜70%であり、直径が200nm以上の突起の割合が全突起数に対し5%以下がより好ましい。突起の直径の分布が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。
【0143】
「突起の直径」とは、導電粒子の正投影面において、突起の面積(突起間の谷により区切られる突起の輪郭の面積)と同一の面積を有する真円の直径を意味する。具体的には、SEMにより3万倍で導電粒子を観察して得られるSEM画像をもとに、画像解析により突起の輪郭を割り出し、各突起の面積を求めることができる。突起の直径に関する「全突起数」とは、導電粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に存在する突起の合計である。
【0144】
ニッケル粒子107及び被覆層103bを含む突起は、導電粒子の正投影面において、導電粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に、下記のとおり含まれていることが好ましい。突起の数は、50個以上が好ましく、70個以上がより好ましく、90個以上が更に好ましい。突起の数は、200個以下が好ましく、170個以下がより好ましく、150個以下が更に好ましい。突起の数が前記範囲である場合、相対向する電極間に導電粒子を介在させて電極同士を圧着接続したときに充分低い導通抵抗を容易に得ることができる。
【0145】
ニッケル粒子107及び被覆層103bを含む突起109(例えば導電粒子の外表面を構成する被覆層103bを含む突起109)の面積の割合(被覆率)は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。被覆率が前記範囲であると、導電粒子が高湿下におかれた場合であっても導通抵抗が増加しにくくなる。
【0146】
被覆層103bは、リン及びホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。これにより、被覆層103bの硬度を高めることが可能であり、導電粒子が圧縮されたときの導通抵抗を容易に低く保つことができる。被覆層103bは、リン及び/又はホウ素と共に、共析する金属を含有していてもよい。金属としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、モリブデン、パラジウム、錫、タングステン及びレニウムが挙げられる。これらの金属を被覆層103bが含有することで被覆層103bの硬度を高めることが可能であり、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても突起109が押しつぶされることを抑制し、更に低い導通抵抗を得ることができる。前記金属の中でも、硬度が高いタングステンが好ましい。この場合、被覆層103bにおけるニッケル含有量は、被覆層103bの全量を基準として85質量%以上が好ましい。被覆層103bの構成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)及びリン(P)の組み合わせ、ニッケル(Ni)及びホウ素(B)の組み合わせ、ニッケル(Ni)、タングステン(W)及びホウ素(B)の組み合わせ、並びに、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)の組み合わせが好ましい。
【0147】
被覆層103bを無電解ニッケルめっきにより形成する場合、例えば、還元剤として次亜リン酸ナトリウム等のリン含有化合物を用いることで、リンを共析させることが可能であり、ニッケル−リン合金を含有する被覆層103bを形成することができる。また、還元剤として、例えば、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等のホウ素含有化合物を用いることで、ホウ素を共析させることが可能であり、ニッケル−ホウ素合金を含有する被覆層103bを形成することができる。ニッケル−ホウ素合金の硬度はニッケル−リン合金よりも高い。そのため、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても突起109が押しつぶされることを抑制し、更に低い導通抵抗を得る観点から、被覆層103bはニッケル−ホウ素合金を含有することができる。無電解ニッケルめっきの詳細については後述する。
【0148】
本実施形態においては、被覆層103aがニッケルを含有し、被覆層103bがニッケルを含有することが好ましく、被覆層103aがニッケル−リン合金を含有し、被覆層103bがニッケル−リン合金又はニッケル−ホウ素合金を含有することがより好ましく、被覆層103aがニッケル−リン合金を含有し、被覆層103bがニッケル−リン合金を含有することが更に好ましい。この組み合わせによると、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても、突起109が押しつぶされることを抑制しつつ、金属層103の割れを抑えることが可能であり、低い導通抵抗を更に安定して得ることができる。
【0149】
本実施形態においては、被覆層103aがニッケル−リン合金を含有し、ニッケル粒子107がニッケル−リン合金又はニッケル−ホウ素合金を含有し、被覆層103bがニッケル−リン合金又はニッケル−ホウ素合金を含有することが好ましい。この組み合わせによると、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても、突起109が押しつぶされることを抑制しつつ、金属層103の割れを抑えることが可能であり、低い導通抵抗を更に安定して得ることができる。
【0150】
(無電解ニッケルめっき)
本実施形態において、被覆層103a、ニッケル粒子107及び被覆層103bは、無電解ニッケルめっきにより形成することが好ましい。無電解ニッケルめっき液は、水溶性ニッケル化合物を含むことが可能であり、安定剤(例えば硝酸ビスマス)、錯化剤、還元剤、pH調整剤及び界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を更に含むことが好ましい。
【0151】
水溶性ニッケル化合物としては、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル等の水溶性ニッケル無機塩;酢酸ニッケル、リンゴ酸ニッケル等の水溶性ニッケル有機塩を用いることができる。水溶性ニッケル化合物は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0152】
無電解ニッケルめっき液における水溶性ニッケル化合物の濃度は、0.001〜1mol/Lが好ましく、0.01〜0.3mol/Lがより好ましい。水溶性ニッケル化合物の濃度が前記範囲であることで、めっき被膜の析出速度を充分に得ることができると共に、めっき液の粘度が高くなりすぎることを抑制してニッケル析出の均一性を高めることができる。
【0153】
錯化剤としては、錯化剤として機能するものであればよく、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸;エチレンジアミンテトラ酢酸のナトリウム塩(例えば1−,2−,3−及び4−ナトリウム塩);エチレンジアミントリ酢酸;ニトロテトラ酢酸及びそのアルカリ塩;グリコン酸、酒石酸、グルコネート、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、ピロリン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸及びこれらのアルカリ塩(例えばナトリウム塩);トリエタノールアミングルコノ(γ)−ラクトンが挙げられるが、これらに限定されない。錯化剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0154】
無電解ニッケルめっき液における錯化剤の濃度は、錯化剤の種類によっても異なり、特に制限されないが、通常、0.001〜2mol/Lが好ましく、0.002〜1mol/Lがより好ましい。錯化剤の濃度が前記範囲であることで、めっき液中の水酸化ニッケルの沈殿及びめっき液の分解を抑制しつつめっき被膜の充分な析出速度を得ることができると共に、めっき液の粘度が高くなりすぎることを抑制してニッケル析出の均一性を高めることができる。
【0155】
還元剤としては、無電解ニッケルめっき液に用いられる公知の還元剤を用いることができる。還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等の次亜リン酸化合物;水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミンボラン等の水素化ホウ素化合物;ヒドラジン類が挙げられる。
【0156】
無電解ニッケルめっき液における還元剤の濃度については、還元剤の種類によっても異なり、特に制限されないが、通常、0.001〜1mol/Lが好ましく、0.002〜0.5mol/Lがより好ましい。還元剤の濃度が前記範囲であると、めっき液中でのニッケルイオンの還元速度を充分に得つつ、めっき液の分解を抑制することができる。
【0157】
pH調整剤としては、例えば、酸性のpH調整剤及びアルカリ性のpH調整剤が挙げられる。酸性のpH調整剤としては、例えば、塩酸;硫酸;硝酸;リン酸;酢酸;ギ酸;塩化第2銅;硫酸第2鉄等の鉄化合物;アルカリ金属塩化物;過硫酸アンモニウム;これらを1種以上含む水溶液;クロム酸、クロム酸−硫酸、クロム酸−フッ酸、重クロム酸、重クロム酸−ホウフッ酸等の酸性の6価クロムを含む水溶液が挙げられる。アルカリ性のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アルカリ土類金属の水酸化物;エチレンジアミン、メチルアミン、2−アミノエタノール等のアミノ基を含有する化合物;これらを1種以上含む溶液が挙げられる。
【0158】
界面活性剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、又は、これらの混合物を用いることができる。
【0159】
(第3の層:被覆層103c,103d)
被覆層103c,103dは、貴金属及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有している。導電粒子100b(
図2)において、金属層103は、被覆層103a及びニッケル粒子107上に被覆層103cを有している。導電粒子100c(
図3)において、金属層103は、被覆層103b上に被覆層103dを有している。被覆層103c,103dは、例えば、無電解めっきにより形成することができる。
【0160】
導電粒子の最外層がニッケルを含有する場合、ニッケルが異方導電性接着剤の接着剤中に溶出しマイグレーションすることで、電極間距離が狭い場合、絶縁信頼性が低下する可能性がある。これに対し、被覆層103c,103dが含有する金属としては、ニッケルのバリヤ被膜としての効果が高いと共に、導電粒子の表面の酸化を抑制することが可能であり、更に良好な絶縁信頼性を得る観点から、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、白金、銀、金及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。更に良好な絶縁信頼性を得ると共に、硬度が高く、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても突起109が押しつぶされることを抑制し、更に低い導通抵抗を得る観点から、パラジウム、ロジウム、イリジウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0161】
貴金属又はコバルトを含有する被覆層103c,103dは、ニッケルの酸化防止層として機能することができる。そのため、被覆層103c,103dは、
図2に示すように被覆層103a及びニッケル粒子107上に配置すること、又は、
図3に示すように被覆層103b上に配置することが好ましい。
【0162】
被覆層103c,103dの厚さは、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。被覆層103c,103dの厚さは、100nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。被覆層103c,103dの厚さが前記範囲であると、被覆層103c,103dをめっき等により形成する場合に層の均一性を高めることが可能であり、ニッケル粒子107等のニッケルが被覆層103c,103dとは反対側の表面へ拡散することを防止する層として有効に機能させることができる。
【0163】
被覆層103c,103dが金を含有する場合、導電粒子の表面における導通抵抗を下げ、導電粒子の特性を更に向上させることができる。金を含有する場合の被覆層103c,103dの厚さは、導電粒子の表面における導通抵抗の低減効果と製造コストとのバランスに優れる観点から、30nm以下が好ましいが、30nmを超えていても特性上は問題ない。
【0164】
被覆層103c,103dの平均厚さは、導電粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出し、TEMを用いて25万倍の倍率で観察して画像を得た後、得られた画像から見積もられる被覆層103e(
図7)の断面積から算出できる。このとき、被覆層103a、ニッケル粒子107及び被覆層103eを区別しづらい場合には、EDXによる成分分析により、被覆層103a、ニッケル粒子107及び被覆層103eを明確に区別することで、被覆層103eのみの平均厚さを算出できる。被覆層103eが被覆層103b及び被覆層103dを有している場合にも、このような手法により被覆層103b及び被覆層103dを区別すればよい。被覆層103c,103dの厚さの平均値は、導電粒子10個における平均値として算出できる。
【0165】
ニッケル粒子107及び被覆層103c,103dを含む突起109の平均長さは、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。前記突起109の平均長さは、120nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。突起109の平均長さが前記範囲であると、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を両立することができる導電粒子を容易に得ることができる。「突起の長さ」の定義は、被覆層103bを含む突起と同様である。
【0166】
ニッケル粒子107及び被覆層103c,103dを含む突起109において、長さが30nm未満の突起の割合が全突起数に対し80%未満であり、長さが30nm以上120nm未満の突起の割合が全突起数に対し20〜80%であり、長さが120nm以上の突起の割合が全突起数に対し5%以下が好ましく、長さが30nm未満の突起の割合が全突起数に対し60%未満であり、長さが30nm以上120nm未満の突起の割合が全突起数に対し40〜70%であり、長さが120nm以上の突起の割合が全突起数に対し2%以下がより好ましい。突起の長さの分布が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。
【0167】
ニッケル粒子107及び被覆層103c,103dを含む突起109は、直径(外径)が100nm未満の突起の割合が全突起数に対し80%未満であり、直径が100nm以上200nm未満の突起の割合が全突起数に対し20〜80%であり、直径が200nm以上の突起の割合が全突起数に対し10%以下が好ましく、直径が100nm未満の突起の割合が全突起数に対し60%未満であり、直径が100nm以上200nm未満の突起の割合が全突起数に対し40〜70%であり、直径が200nm以上の突起の割合が全突起数に対し5%以下がより好ましい。突起の直径の分布が前記範囲である導電粒子は、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる。突起109の直径の定義及び測定方法は、被覆層103bを含む突起と同様である。
【0168】
ニッケル粒子107及び被覆層103c,103dを含む突起は、導電粒子の正投影面において、導電粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に、下記のとおり含まれていることが好ましい。突起の数は、50個以上が好ましく、70個以上がより好ましく、90個以上が更に好ましい。突起の数は、200個以下が好ましく、170個以下がより好ましく、150個以下が更に好ましい。突起の数が前記範囲である場合、相対向する電極間に導電粒子を介在させて電極同士を圧着接続したときに充分低い導通抵抗を容易に得ることができる。
【0169】
ニッケル粒子107及び被覆層103c,103dを含む突起109(例えば導電粒子の外表面を構成する被覆層103c,103dを含む突起109)の面積の割合(被覆率)は、50%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。被覆率が前記範囲であると、導電粒子が高湿下におかれた場合であっても導通抵抗が増加しにくくなる。
【0170】
{パラジウム}
被覆層103c,103dは、例えば、パラジウムめっきによって形成することが可能であり、無電解パラジウムめっきによって形成されたパラジウム層であることが好ましい。無電解パラジウムめっきは、還元剤を用いない置換型、及び、還元剤を用いる還元型のいずれを用いてもよい。このような無電解パラジウムめっき液としては、置換型ではMCA(株式会社ワールドメタル製、商品名)等が挙げられる。還元型ではAPP(石原薬品工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。置換型と還元型とを比較した場合、ボイドが少なく、被覆面積を確保し易い観点から、還元型が好ましい。
【0171】
被覆層103c,103dがパラジウムを含有する場合、被覆層103c,103dにおけるパラジウム含有量は、被覆層103c,103dの全量を基準として、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、94質量%以上が更に好ましい。被覆層103c,103dにおけるパラジウム含有量は、被覆層103c,103dの全量を基準として、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましい。被覆層103c,103dにおけるパラジウム含有量が前記範囲であると、硬度が高く、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合であっても突起109が押しつぶされることを抑制し、更に低い導通抵抗を得られる。
【0172】
被覆層103c,103dにおけるパラジウム含有量を調整するため(例えば93〜99質量%に調整するため)に、無電解パラジウムめっき液に用いる還元剤としては、特に制限はないが、次亜リン酸、亜リン酸及びこれらのアルカリ塩等のリン含有化合物;ホウ素含有化合物を用いることができる。その場合は、得られる被覆層103c,103dがパラジウム−リン合金又はパラジウム−ホウ素合金を含むため、被覆層103c,103dにおけるパラジウム含有量が所望の範囲となるように、還元剤の濃度、pH、めっき液の温度等を調整することが好ましい。
【0173】
{ロジウム}
無電解ロジウムめっき液に用いるロジウムの供給源としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンミンロジウム、硝酸アンミンロジウム、酢酸アンミンロジウム、硫酸アンミンロジウム、亜硫酸アンミンロジウム、アンミンロジウム臭化物、及び、アンミンロジウム化合物が挙げられる。
【0174】
無電解ロジウムめっき液に用いる還元剤としては、例えば、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミン、ホウ酸ジエチルアミン及び水素化硼素ナトリウムが挙げられ、ヒドラジンが好ましい。めっき浴中に、安定剤又は錯化剤(水酸化アンモニウム、ヒドロキシルアミン塩、二塩化ヒドラジン等)を添加してもよいが、必須ではない。
【0175】
めっき液温度(浴温)は、充分なめっき速度を得る観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。めっき液温度(浴温)は、無電解ロジウムめっき液を安定に保持する観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0176】
{イリジウム}
無電解イリジウムめっき液に用いるイリジウムの供給源としては、例えば、三塩化イリジウム、四塩化イリジウム、三臭化イリジウム、四臭化イリジウム、六塩化イリジウム三カリウム、六塩化イリジウム二カリウム、六塩化イリジウム三ナトリウム、六塩化イリジウム二ナトリウム、六臭化イリジウム三カリウム、六臭化イリジウム二カリウム、六ヨウ化イリジウム三カリウム、トリス硫酸二イリジウム、及び、ビス硫酸イリジウムが挙げられる。
【0177】
無電解イリジウムめっき液に用いる還元剤としては、例えば、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミン、ホウ酸ジエチルアミン、及び、水素化硼素ナトリウムが挙げられ、ヒドラジンが好ましい。めっき浴中に、安定剤又は錯化剤を添加してもよいが、必須ではない。
【0178】
安定剤又は錯化剤としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を添加してもよい。モノカルボン酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及び、乳酸が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、及び、リンゴ酸が挙げられる。前記塩としては、例えば、前記カルボン酸に対してナトリウム、カリウム、リチウム等が対イオンとして結合している化合物が挙げられる。安定剤又は錯化剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0179】
無電解イリジウムめっき液のpHは、めっき対象物の腐食を抑制すると共に、充分なめっき速度を得る観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。無電解イリジウムめっき液のpHは、めっき反応が阻害されることが抑制され易い観点から、6以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0180】
めっき液温度(浴温)は、充分なめっき速度を得る観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。めっき液温度(浴温)は、無電解イリジウムめっき液を安定に保持する観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0181】
{ルテニウム}
無電解ルテニウムめっき液としては、例えば、市販の液を用いることが可能であり、無電解ルテニウムRu(奥野製薬工業株式会社製、商品名)を用いることができる。
【0182】
{白金}
無電解白金めっき液に用いる白金の供給源としては、特に限定されないが、例えば、Pt(NH
3)
4(NO
3)
2、Pt(NH
3)
4(OH)
2、PtCl
2(NH
3)
2、Pt(NH
3)
2(OH)
2、(NH
4)
2PtCl
6、(NH
4)
2PtCl
4、Pt(NH
3)
2Cl
4、H
2PtCl
6、及び、PtCl
2が挙げられる。
【0183】
無電解白金めっき液に用いる還元剤としては、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミン、ホウ酸ジエチルアミン、及び、水素化硼素ナトリウムが挙げられ、これらの中で、ヒドラジンが好ましい。めっき浴中に、安定剤又は錯化剤(塩化ヒドロキシルアミン、二塩化ヒドラジン、水酸化アンモニウム、EDTA等)を添加することができる。
【0184】
めっき液温度(浴温)は、充分なめっき速度を得る観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。めっき液温度(浴温)は、無電解白金めっき液を安定に保持する観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0185】
無電解白金めっき液を用いて白金めっきを行う際、無電解白金めっき液のpHは8〜12が好ましい。pHが8以上であると、充分に白金が析出し易い。pHが12以下であると、良好な作業環境を容易に確保できる。
【0186】
{銀}
無電解銀めっき液に用いる銀の供給源としては、特に限定されないが、めっき液に可溶であるものであれば特に限定されない。例えば、硝酸銀、酸化銀、硫酸銀、塩化銀、亜硫酸銀、炭酸銀、酢酸銀、乳酸銀、スルホコハク酸銀、スルホン酸銀、スルファミン酸銀、及び、シュウ酸銀を用いることができる。これら水溶性銀化合物は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0187】
無電解銀めっき液に用いる還元剤としては、めっき液中の水溶性銀化合物を金属銀に還元する能力を有するものであって水溶性の化合物であれば特に限定されない。例えば、ヒドラジン誘導体、ホルムアルデヒド化合物、ヒドロキシルアミン類、糖類、ロッセル塩、水素化ホウ素化合物、次亜リン酸塩、DMAB、及び、アスコルビン酸を用いることができる。これら還元剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0188】
無電解銀めっき液中に、安定剤又は錯化剤を添加することが可能であり、必要に応じて添加してもよい。安定剤又は錯化剤としては、特に限定されないが、亜硫酸塩、コハク酸イミド、ヒダントイン誘導体、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を用いることができる。安定剤又は錯化剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0189】
無電解銀めっき液には、上述の成分以外に、必要に応じて公知の界面活性剤、pH調整剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤等の添加剤を混合してもよい。
【0190】
無電解銀めっき液は、液温として0〜80℃の範囲で用いることができる。特に10〜60℃程度で用いることにより、めっき液の安定性をより一層良好にすることができる。めっき液の温度が0℃以上であると、銀の析出速度が充分に速く所定の銀析出量を得るための時間を短縮することができる。めっき液の温度が80℃以下であると、自己分解反応による還元剤の損失、及び、めっき液安定性の低下を容易に抑制できる。
【0191】
無電解銀めっき液(例えば還元型無電解銀めっき液)のpHは、例えば1〜14である。特に、めっき液のpHが6〜13程度であることによって、めっき液の安定性をより一層良好にすることができる。めっき液のpH調整は、通常、pHを下げる場合には、水溶性銀塩のアニオン部分と同種のアニオン部分を有する酸(例えば、水溶性銀塩として硫酸銀を用いる場合には硫酸、水溶性銀塩として硝酸銀を用いる場合には硝酸)を用いて行い、pHを上げる場合には、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等を用いて行う。
【0192】
{金}
無電解金めっき液は、例えば、HGS−100(日立化成株式会社製、商品名)等の置換型金めっき液;HGS−2000(日立化成株式会社製、商品名)等の還元型金めっき液を用いることができる。置換型と還元型とを比較した場合、ボイドが少なく、被覆面積を確保し易い観点から、還元型を用いることができる。
【0193】
{コバルト}
無電解コバルトめっき液に用いるコバルトの供給源としては、特に限定されないが、例えば、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、及び、炭酸コバルトが挙げられる。
【0194】
無電解コバルトめっき液に用いる還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸ニッケル等の次亜リン酸塩、次亜リン酸が好ましい。めっき浴中に、安定剤又は錯化剤(脂肪族カルボン酸等)を添加してもよいが、必須ではない。安定剤又は錯化剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0195】
めっき液温度(浴温)は、充分なめっき速度を得る観点から、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。めっき液温度(浴温)は、無電解コバルトめっき液を安定に保持する観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0196】
<導電粒子の製造方法>
本実施形態に係る導電粒子の製造方法では、樹脂粒子101と、樹脂粒子101の表面に配置されると共に外表面に突起109を有する金属層103と、を備える導電粒子を製造する。本実施形態に係る導電粒子の製造方法は、第1の核形成工程及び第2の核形成工程を備える。第1の核形成工程では、パラジウムイオン及び還元剤を含む無電解パラジウムめっき液の還元析出によりパラジウム粒子105を形成する。第2の核形成工程では、第1の核形成工程において形成されたパラジウム粒子105を核として用いてニッケル粒子107を形成する。
【0197】
本実施形態に係る導電粒子の製造方法は、ニッケル及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する被覆層(第1の層)103aを無電解めっきにより樹脂粒子101上(例えば樹脂粒子101の表面)に形成する工程を更に備えていることが好ましい。この場合、第1の核形成工程において、パラジウム粒子105を被覆層103a上(例えば被覆層103aの表面)に形成することが好ましい。
【0198】
本実施形態に係る導電粒子の製造方法は、下記(b1)〜(b3)のいずれかの構成を満たすことが好ましい。
(b1)ニッケルを含有する被覆層(第2の層)103bを無電解めっきによりニッケル粒子107上に形成する工程を更に備える。
(b2)貴金属及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する被覆層(第3の層)103cをニッケル粒子107上に形成する工程(例えば、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、白金、銀、金及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する被覆層103cをニッケル粒子107上に形成する工程)を更に備える。
(b3)ニッケルを含有する被覆層(第2の層)103bを無電解めっきによりニッケル粒子107上に形成する工程と、貴金属及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する被覆層(第3の層)103dを被覆層103b上に形成する工程(例えば、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、白金、銀、金及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する被覆層103dを被覆層103b上に形成する工程)と、を更に備える。
【0199】
前記(b1)及び(b3)において、被覆層103bは、例えば、ニッケル粒子107の表面に形成される。前記(b1)及び(b3)において、被覆層103bは、例えば、ニッケル粒子107上に加えて、被覆層103aにおけるニッケル粒子107に被覆されていない領域上(例えば当該領域の表面)に形成される。前記(b2)において、被覆層103cは、例えば、ニッケル粒子107の表面に形成される。前記(b2)において、被覆層103cは、例えば、ニッケル粒子107上に加えて、被覆層103aにおけるニッケル粒子107に被覆されていない領域上(例えば当該領域の表面)に形成される。前記(b3)において、被覆層103dは、例えば、被覆層103bの表面に形成される。被覆層103b,103cは、第2の核形成工程において形成されたニッケル粒子107を核として用いて形成することができる。
【0200】
前記(b1)〜(b3)のいずれかの構成を満たす製造方法によれば、被覆層103b,103c,103d形成後の突起の数、大きさ及び形状を高度に制御することが可能であり、優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を更に高度に両立することができる導電粒子を得ることができる。
【0201】
本実施形態に係る導電粒子の製造方法によって前記導電粒子が得られる理由について本発明者らは以下の通り推察する。パラジウムイオン及び還元剤を含む無電解パラジウムめっき液の還元析出により形成されたパラジウム粒子105を含む粒子を、ニッケル粒子107を形成するための無電解ニッケルめっき液に浸漬すると、めっき液に含まれる還元剤がパラジウム粒子105上で優先的に酸化されて電子を放出すると考えられる。これにより、ニッケルがパラジウム粒子105上に優先的に析出し、パラジウム粒子105上でニッケルが突起形状に析出することができると考えられる。これにより、形状ばらつきが小さいニッケル粒子107を形成することができると考えられる。このように、ニッケルの析出開始の時間差を設けることにより、形状ばらつきが小さいニッケル粒子107を形成することが可能であり、形状ばらつきが小さい突起109を形成することができると本発明者らは推察する。
【0202】
また、本実施形態に係る導電粒子の製造方法が、被覆層103aを無電解めっきにより樹脂粒子101上に形成する工程を備えていることにより、異方導電性接着剤に配合される導電粒子として用いられたときに優れた導通信頼性及び絶縁信頼性を両立することができる導電粒子を容易に得ることができる。このような導電粒子が得られる理由について本発明者らは以下の通り推察する。被覆層103a上に形成されたパラジウム粒子105を含む粒子を、ニッケル粒子107を形成するための無電解ニッケルめっき液に浸漬すると、めっき液に含まれる還元剤が被覆層103a上よりもパラジウム粒子105上で優先的に酸化されて電子を放出すると考えられる。これにより、ニッケルが被覆層103a上よりもパラジウム粒子105上に優先的に析出し、パラジウム粒子105上でニッケルが突起形状に析出することができると考えられる。このように、被覆層103a上においてニッケルの析出開始の時間差を設けることにより、形状ばらつきが小さいニッケル粒子107を被覆層103a上に容易に形成することが可能であり、形状ばらつきが小さい突起109を容易に形成することができると本発明者らは推察する。
【0203】
上述した従来のパラジウム触媒化処理では、ニッケル粒子107を形成することができない。その理由としては、パラジウム触媒核が小さいことが考えられる。すなわち、パラジウム触媒化処理は、例えば、(1)錫イオンによる感受性化処理、(2)塩化パラジウム水溶液を含む溶液中でパラジウムイオンを捕捉させる活性化処理、(3)表面に吸着したパラジウムイオンを還元剤により還元析出させる還元処理からなるが、これらの処理は単に表面に吸着したパラジウムイオンを還元させているだけであるため、パラジウム触媒核は原子レベルの大きさであると考えられる。本実施形態では、無電解パラジウムめっき液中のパラジウムイオンを還元剤により連続析出させることにより充分な大きさ(例えば、EDXによる成分分析が可能な大きさ)を有するパラジウム粒子を得ることが可能であり、これにより上述した作用によって形状ばらつきが小さいニッケル粒子107を形成することができる。
【0204】
本実施形態に係る導電粒子の製造方法において用いられる樹脂粒子101、無電解パラジウムめっき液及び無電解ニッケルめっき液については、本実施形態に係る導電粒子の説明において挙げたものを使用することができる。また、本実施形態に係る導電粒子の製造方法において、樹脂粒子101は、被覆層103a(例えば、ニッケルを含有する被覆層103a)の均一性を高める観点から、パラジウム触媒化処理されていることが好ましい。このときのパラジウム触媒化処理は、本実施形態に係る導電粒子の説明において挙げた処理を用いることができる。
【0205】
本実施形態に係る導電粒子の製造方法において、パラジウム粒子105は、金属層103の厚さ方向(被覆層103aの厚さ方向)における長さが4nm以上となるように析出させることが好ましい。パラジウム粒子105の当該長さは、被覆層103aにおけるニッケルの含有量(純度)を変化させることによって調整することができる。例えば、被覆層103aがリンを含有する場合、リンの含有量を増加させてニッケルの含有量を低くした方が、パラジウム粒子105は厚さ方向に成長し易い。
【0206】
したがって、パラジウム粒子105の長さを充分大きくする観点から、被覆層103aにおけるニッケル含有量は、下記の範囲が好ましい。すなわち、被覆層103aにおけるニッケル含有量は、被覆層103aの全量を基準として、83質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、86質量%以上が更に好ましい。被覆層103aにおけるニッケル含有量は、被覆層103aの全量を基準として、98質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。また、パラジウムを高純度化させるほどパラジウム粒子105の長さを大きくすることができるため、パラジウム粒子105におけるパラジウム含有量は、94質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。
【0207】
本実施形態に係る導電粒子の製造方法において、パラジウム粒子105は、金属層103の厚さ方向(被覆層103aの厚さ方向)に直交する方向に点在するように析出させることが好ましい。パラジウム粒子105の分布は、被覆層103aにおけるニッケルの含有量(純度)を変化させることによって調整することができる。被覆層103aがリンを含有する場合、パラジウム粒子105の厚さ方向への成長と同様に、リンの含有量を増加させてニッケルの含有量を低くした方が、パラジウム粒子105が分布し易い。したがって、パラジウム粒子105の形状ばらつきが抑えられ易い観点から、被覆層103aにおけるニッケル含有量は、下記の範囲が好ましい。すなわち、被覆層103aにおけるニッケル含有量は、被覆層103aの全量を基準として、83質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、86質量%以上が更に好ましい。被覆層103aにおけるニッケル含有量は、被覆層103aの全量を基準として、98質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。また、パラジウムを高純度化させるほど、パラジウム粒子105の形状ばらつきを抑えることができることから、パラジウム粒子105におけるパラジウム含有量は、パラジウム粒子105の全量を基準として、94質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。上述したようにパラジウムを高純度化させるほど、パラジウム粒子105の直径を大きくすることができるため、例えば、パラジウム粒子105におけるパラジウム含有量が前記範囲内であれば、直径20nm未満のパラジウム粒子105を少なくすることが可能であり、直径20nm以上60nm未満のパラジウム粒子105の形状ばらつきを容易に抑えることができる。
【0208】
本実施形態に係る導電粒子の製造方法によれば、本実施形態に係る導電粒子を得ることができる。本実施形態に係る導電粒子の製造方法においては、上述した本実施形態に係る導電粒子における条件の一以上を満たすように、前記工程を行うことが好ましい。
【0209】
<絶縁被覆導電粒子>
本実施形態に係る絶縁被覆導電粒子について説明する。
図8は、本実施形態に係る絶縁被覆導電粒子を示す模式断面図である。
図8に示される絶縁被覆導電粒子200は、導電粒子100aと、導電粒子100aの金属層103の表面の少なくとも一部を被覆する絶縁性粒子(絶縁性被覆部)210と、を備える。絶縁被覆導電粒子における導電粒子としては、導電粒子100aに代えて、例えば、導電粒子100b(
図2)及び導電粒子100c(
図3)等を用いることができる。
【0210】
近年、COG実装用の異方導電性接着剤には、10μmレベルの狭ピッチでの絶縁信頼性が求められている。絶縁信頼性を更に向上させるためには、導電粒子を絶縁被覆することが好ましい。本実施形態に係る絶縁被覆導電粒子によれば、かかる要求特性を有効に実現することができる。
【0211】
導電粒子を被覆する絶縁性粒子210としては、有機高分子化合物微粒子、無機酸化物微粒子等が挙げられる。中でも、絶縁信頼性に更に優れる観点から、無機酸化物微粒子が好ましい。有機高分子化合物微粒子を用いる場合には、導通抵抗を容易に下げることができる。
【0212】
有機高分子化合物としては、熱軟化性を有する化合物が好ましく、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、フェノキシ樹脂、及び、固形エポキシ樹脂が好適に用いられる。有機高分子化合物は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0213】
無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物が好ましい。無機酸化物は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。無機酸化物の中でも、シリカが好ましく、水分散コロイダルシリカ(SiO
2)は、表面に水酸基を有するために導電粒子との結合性に優れ、粒径を揃え易く、安価であるため特に好適である。このような無機酸化物微粒子の市販品としては、例えば、スノーテックス、スノーテックスUP(日産化学工業株式会社製、商品名)、及び、クオートロンPLシリーズ(扶桑化学工業株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0214】
無機酸化物微粒子が表面に水酸基を有する場合には、水酸基をシランカップリング剤等でアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等に変性することができる。但し、無機酸化物微粒子の平均粒径が500nm以下である場合、変性することが困難な場合がある。その場合には、変性を行わずに導電粒子を被覆することが望ましい。
【0215】
一般的に、水酸基を有することにより、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基等と結合することができる。結合形態としては、例えば、脱水縮合による共有結合、水素結合、配位結合等が挙げられる。
【0216】
導電粒子の外表面が金又はパラジウムからなる場合、これらに対して配位結合を形成するメルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基等を分子内に有する化合物を用いて表面に水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基等の官能基を形成するとよい。前記化合物としては、例えば、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、及び、システインが挙げられる。
【0217】
金、パラジウム等の貴金属及び銅などはチオールと反応し易い。ニッケル等の卑金属はチオールと反応し難い。したがって、導電粒子の最外層が貴金属又は銅などからなる場合は、導電粒子の最外層が卑金属からなる場合と比べてチオールと反応し易い。
【0218】
例えば、金表面に前記化合物を処理する方法としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール等の有機溶媒中にメルカプト酢酸等の前記化合物を10〜100mmol/L程度分散し、その中に、最外層が金である導電粒子を分散させることができる。
【0219】
絶縁性粒子の平均粒径は、20〜500nmが好ましい。絶縁性粒子の平均粒径は、例えば、BET法による比表面積換算法、又は、X線小角散乱法で測定される。平均粒径が前記範囲であると、例えば、導電粒子に吸着された絶縁性粒子が絶縁膜として有効に作用し易く、また、接続の加圧方向の導電性が良好になり易い。このような効果は、絶縁性粒子として無機酸化物微粒子を用いる場合に得られ易い。
【0220】
電気抵抗を下げ易く、電気抵抗の経時的な上昇を抑制し易い観点から、絶縁性粒子の平均粒径は、導電粒子の平均粒径に対して、1/10以下が好ましく、1/15以下がより好ましい。絶縁性粒子の平均粒径は、更に良好な絶縁信頼性を得る観点から、導電粒子の平均粒径に対して、1/20以上が好ましい。
【0221】
絶縁性粒子は、被覆率が20〜70%となるように導電粒子の表面を被覆することが好ましい。絶縁性と導電性の効果を一層確実に得る観点から、被覆率は、20〜60%がより好ましく、25〜60%が更に好ましく、28〜55%が特に好ましい。「被覆率」は、絶縁被覆導電粒子の正投影面において、絶縁被覆導電粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内における絶縁性粒子の表面積の割合を意味する。具体的には、SEMにより3万倍で絶縁被覆導電粒子を観察して得られるSEM画像をもとに、画像解析により絶縁被覆導電粒子の表面において絶縁性粒子が占める割合を算出する。
【0222】
導電粒子の表面を無機酸化物微粒子で被覆する方法としては、例えば、高分子電解質と無機酸化物微粒子とを交互に積層する方法が好ましい。より具体的には、(1)導電粒子を高分子電解質溶液に分散し、導電粒子の表面に高分子電解質を吸着させた後、リンスする工程、(2)導電粒子を無機酸化物微粒子の分散溶液に分散し、導電粒子の表面に無機微粒子を吸着させた後、リンスする工程、を備える方法によって、高分子電解質と無機酸化物微粒子とが積層された絶縁性粒子によって表面が被覆された絶縁被覆導電粒子を製造できる。このような方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films,210/211,p831(1992))。この方法によれば、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)、及び、負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液に基材(基板等)を交互に浸漬し、静電的引力によって基材上に吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層することで、複合膜(交互積層膜)が得られる。前記(1)の工程及び(2)の工程は、(1)、(2)の順でも、(2)、(1)の順でもよく、複数繰り返して交互積層することが好ましい。
【0223】
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料が引き合うことにより膜成長するため、吸着が進行して電荷の中和が起こるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することはない。Lvovらは交互積層法を微粒子に応用し、シリカ、チタニア、セリア等の各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir,Vol.13,(1997)p6195−6203)。この方法を用いると、負の表面電荷を有するシリカの微粒子と、その反対電荷を有するポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)又はポリエチレンイミン(PEI)等と、を交互に積層することで、シリカ微粒子と高分子電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することができる。
【0224】
高分子電解質としては、例えば、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖又は側鎖に有する高分子を用いることができる。具体的には、ポリカチオンを用いることが好ましい。ポリカチオンとしては、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド、又は、これらの重合体を与える1種以上の単量体を重合して得られる共重合体を用いることができる。中でも、ポリエチレンイミンは、電荷密度が高く、結合力が強いため好ましい。
【0225】
<異方導電性接着剤及び接着剤フィルム>
本実施形態に係る異方導電性接着剤及び接着剤フィルムについて説明する。第1実施形態に係る異方導電性接着剤は、本実施形態に係る導電粒子、又は、本実施形態に係る導電粒子の製造方法により得られる導電粒子と、接着剤と、を含有する。第2実施形態に係る異方導電性接着剤は、本実施形態に係る絶縁被覆導電粒子と、接着剤と、を含有する。本実施形態に係る接着剤フィルム(異方導電性接着剤フィルム)は、フィルム状の異方導電性接着剤であり、本実施形態に係る異方導電性接着剤をフィルム状に形成してなる。異方導電性接着剤及び接着剤フィルムにおいて、導電粒子又は絶縁被覆導電粒子は、接着剤中に分散している。
【0226】
接着剤としては、例えば、熱反応性樹脂と硬化剤との混合物が用いられる。接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物、及び、ラジカル重合性化合物と有機過酸化物との混合物が挙げられる。
【0227】
接着剤としては、ペースト状又はフィルム状のものが用いられる。フィルム状に成形するためには、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を接着剤に配合することが効果的である。
【0228】
<接続構造体>
本実施形態に係る接続構造体について説明する。本実施形態に係る接続構造体は、第1の回路電極を有する第1の回路部材と、第2の回路電極を有する第2の回路部材と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に配置された接続部と、を備えている。第1の回路電極と第2の回路電極とは、相対向するように配置されており、導電粒子又は絶縁被覆導電粒子を介して互いに電気的に接続されている。導電粒子又は絶縁被覆導電粒子は、例えば、圧縮により変形した状態で第1の回路電極及び第2の回路電極の間に介在している。接続部は、第1の回路電極と第2の回路電極とが相対向するように配置された状態で第1の回路部材及び第2の回路部材を互いに接続している。接続部は、本実施形態に係る異方導電性接着剤又はその硬化物である。
【0229】
第1実施形態に係る接続構造体は、第1の回路電極を有する第1の回路部材と、第2の回路電極を有する第2の回路部材と、を第1の回路電極と第2の回路電極とが相対向するように配置し、本実施形態に係る異方導電性接着剤を第1の回路部材と第2の回路部材との間に介在させ、これらの第1の回路部材及び第2の回路部材を加熱及び加圧して第1の回路電極と第2の回路電極とを電気的に接続させてなる。異方導電性接着剤は、接着剤フィルムであってもよい。第2実施形態に係る接続構造体は、第1の回路電極を有する第1の回路部材と、第2の回路電極を有する第2の回路部材と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に配置された接続部と、を備え、接続部が、第1の回路電極と第2の回路電極とが相対向するように配置された状態で第1の回路部材及び第2の回路部材を互いに接続し、相対向する第1の回路電極と第2の回路電極とが、本実施形態に係る導電粒子、又は、本実施形態に係る導電粒子の製造方法により得られる導電粒子を介して電気的に接続されている。導電粒子は、例えば、変形した状態で第1の回路電極及び第2の回路電極の間に介在している。第3実施形態に係る接続構造体は、第1の回路電極を有する第1の回路部材と、第2の回路電極を有する第2の回路部材と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に配置された接続部と、を備え、接続部が、第1の回路電極と第2の回路電極とが相対向するように配置された状態で第1の回路部材及び第2の回路部材を互いに接続し、相対向する第1の回路電極と第2の回路電極とが、本実施形態に係る絶縁被覆導電粒子を介して電気的に接続されている。絶縁被覆導電粒子は、例えば、変形した状態で第1の回路電極及び第2の回路電極の間に介在している。
【0230】
次に、
図9を参照しながら接続構造体を更に説明する。
図9は、本実施形態に係る接続構造体を示す模式断面図である。
図9に示す接続構造体300は、相対向する第1の回路部材310及び第2の回路部材320を備えており、回路部材310と回路部材320との間には、これらを接続する接続部330が配置されている。
【0231】
第1の回路部材310は、回路基板(第1の回路基板)311と、回路基板311の主面311a上に配置された回路電極(第1の回路電極)312とを備える。第2の回路部材320は、回路基板(第2の回路基板)321と、回路基板321の主面321a上に配置された回路電極(第2の回路電極)322とを備える。
【0232】
回路部材310,320のうちの一方の具体例としては、例えば、ICチップ(半導体チップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ、ドライバーIC等のチップ部品;リジット型のパッケージ基板が挙げられる。これらの回路部材は、回路電極を備えており、多数の回路電極を備えているものが一般的である。回路部材310,320のうちの他方(前記一方の回路部材が接続される回路部材)の具体例としては、例えば、金属配線を有するフレキシブルテープ基板、フレキシブルプリント配線板、インジウム錫酸化物(ITO)が蒸着されたガラス基板等の配線基板が挙げられる。フィルム状の異方導電性接着剤によれば、これらの回路部材同士を効率的且つ高い接続信頼性をもって接続することができる。本実施形態に係る異方導電性接着剤は、微細な回路電極を多数備えるチップ部品の配線基板上へのCOG実装又はCOF実装に好適である。
【0233】
接続部330は、接着剤の硬化物332と、これに分散している絶縁被覆導電粒子200とを備える。接続構造体300においては、相対向する回路電極312と回路電極322とが、絶縁被覆導電粒子200を介して電気的に接続されている。より具体的には、
図9に示すとおり、絶縁被覆導電粒子200における導電粒子100aが圧縮により変形し、回路電極312,322の双方に電気的に接続している。一方、図示横方向は導電粒子100a間に絶縁性粒子210が介在することで絶縁性が維持される。したがって、本実施形態に係る異方導電性接着剤を用いることにより、狭ピッチ(例えば10μmレベルのピッチ)での絶縁信頼性を更に向上させることができる。用途によっては絶縁被覆導電粒子の代わりに、絶縁被覆されていない導電粒子(本実施形態に係る導電粒子)を用いることもできる。
【0234】
接続構造体300は、回路電極312を有する回路部材310と、回路電極322を有する回路部材320と、を回路電極312と回路電極322とが相対向するように配置し、回路部材310と回路部材320との間に異方導電性接着剤を介在させ、これらを加熱及び加圧して回路電極312と回路電極322とを電気的に接続させることにより得られる。回路部材310及び回路部材320は、接着剤の硬化物332によって接着される。
【0235】
<接続構造体の製造方法>
本実施形態に係る接続構造体の製造方法について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、
図9に示す接続構造体の製造方法の一例を説明するための模式断面図である。本実施形態では、異方導電性接着剤を熱硬化させて接続構造体を製造する。
【0236】
まず、回路部材310と、異方導電性接着剤(本実施形態では、フィルム状に成形してなる接着剤フィルム(異方導電性接着剤フィルム))330aとを用意する。異方導電性接着剤330aは、絶縁被覆導電粒子200と、絶縁性の接着剤332aとを含有している。
【0237】
次に、異方導電性接着剤330aを回路部材310の主面311a(回路電極312が形成されている面)上に載せる。そして、異方導電性接着剤330aを、
図10(a)の方向A及び方向Bに加圧し、異方導電性接着剤330aを回路部材310に積層する(
図10(b))。
【0238】
次いで、
図10(c)に示すように、回路電極312と回路電極322とが相対向するように、回路部材320を異方導電性接着剤330a上に載せる。そして、異方導電性接着剤330aを加熱しながら、
図10(c)の方向A及び方向Bに全体を加圧する。
【0239】
異方導電性接着剤330aの硬化により接続部330が形成されて、
図9に示すような接続構造体300が得られる。また、接着剤332aが硬化して硬化物332が形成される。なお、本実施形態では、異方導電性接着剤はフィルム状であったが、ペースト状であってもよい。
【0240】
前記接続構造を有する接続構造体としては、例えば、液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の携帯製品が挙げられる。
【0241】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0242】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0243】
<実施例1>
[導電粒子の作製]
(工程a)前処理工程
平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン粒子(株式会社日本触媒製、商品名「ソリオスター」)2gを、パラジウム触媒であるアトテックネオガント834(アトテックジャパン株式会社製、商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加し、30℃で30分間攪拌した。次に、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)で濾過した後、水洗を行うことで樹脂粒子を得た。その後、pH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に樹脂粒子を添加し、表面が活性化された樹脂粒子を得た。そして、20mLの蒸留水に、表面が活性化された樹脂粒子を浸漬した後、超音波分散することで、樹脂粒子分散液を得た。
【0244】
(工程b)第1の層の形成
前記で得た樹脂粒子分散液を、80℃に加温した水1000mLで希釈した後、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を1mL添加した。次に、樹脂粒子を2g含む分散液に、下記組成(下記成分を含む水溶液。1g/Lの硝酸ビスマス水溶液をめっき液1Lあたり1mL添加した。以下同様)の第1の層形成用無電解ニッケルめっき液80mLを5mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、表1に示す80nmの膜厚のニッケル−リン合金被膜からなる第1の層を形成した。第1の層を形成することにより得た粒子Aは4gであった。
(第1の層形成用無電解ニッケルめっき液)
硫酸ニッケル・・・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・150g/L
クエン酸ナトリウム・・・・・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・1mL/L
【0245】
(工程c)パラジウム粒子の形成
下記組成の無電解パラジウムめっき液1Lに、前記第1の層を形成した粒子A4gを浸漬し、当該粒子Aの表面上にパラジウム粒子(パラジウムめっき析出核)を形成して粒子Bを得た。なお、反応時間10分、温度60℃にて処理を行った。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・0.07g/L
エチレンジアミン・・・0.05g/L
ギ酸ナトリウム・・・・0.2g/L
酒石酸・・・・・・・・0.11g/L
pH・・・・・・・・・7
【0246】
(工程d)無電解ニッケルめっき析出核の形成
工程cで得た粒子B4.05gを、水洗及び濾過した後、70℃に加温した水1000mLに分散させた。この分散液に、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を1mL添加した。次いで、下記組成の無電解ニッケルめっき析出核形成用めっき液25mLを5mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、表1に示す56nmの平均長さのニッケル−リン合金からなる無電解ニッケルめっき析出核を形成した。無電解ニッケルめっき析出核を形成することにより得た粒子Cは5.0gであった。
(無電解ニッケルめっき析出核形成用めっき液)
硫酸ニッケル・・・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・150g/L
酒石酸ナトリウム・2水和物・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・1mL/L
【0247】
(工程e)第2の層の形成
工程dで得た粒子C5.0gを、水洗及び濾過した後、70℃に加温した水1000mLに分散させた。この分散液に、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を1mL添加した。次いで、下記組成の第2の層形成用無電解ニッケルめっき液20mLを5mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、表1に示す20nmの膜厚のニッケル−リン合金被膜からなる第2の層を形成した。第2の層を形成することにより得た導電粒子は5.5gであった。
(第2の層形成用無電解ニッケルめっき液)
硫酸ニッケル・・・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・150g/L
クエン酸ナトリウム・・・・・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・1mL/L
【0248】
以上の工程a〜eによって導電粒子を得た。
【0249】
[導電粒子の評価]
下記の項目に基づき導電粒子を評価した。結果を表1に示す。
【0250】
(膜厚及び成分の評価)
得られた導電粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法で断面を切り出した。透過型電子顕微鏡装置(以下「TEM装置」と略称する、日本電子株式会社製、商品名「JEM−2100F」)を用いて25万倍の倍率で観察した。得られた画像から、第1の層、第2の層及び第3の層の断面積を見積り、その断面積から第1の層、第2の層及び第3の層の膜厚を算出した(実施例1においては、第3の層が形成されていないことから、第1の層及び第2の層の膜厚のみを測定の対象とした)。断面積に基づく各層の膜厚の算出では、幅500nmの断面における各層の断面積を画像解析により読み取り、幅500nmの長方形に換算した場合の高さを各層の膜厚として算出した。表1には、10個の導電粒子について算出した膜厚の平均値を示した。このとき、第1の層、第2の層、無電解ニッケルめっき析出核及び第3の層を区別しづらい場合には、エネルギー分散型X線検出器(以下「EDX検出器」と略称する、日本電子株式会社製、商品名「JED−2300」)による成分分析により、第1の層、第2の層、無電解ニッケルめっき析出核及び第3の層を明確に区別することで、断面積を見積もり、膜厚を計測した。また、EDXマッピングデータから、第1の層、無電解ニッケルめっき析出核、第2の層及び第3層における元素の含有量(純度)を算出した。薄膜切片状のサンプル(導電粒子の断面試料)の作製方法の詳細、EDX検出器によるマッピングの方法の詳細、及び、各層における元素の含有量の算出方法の詳細については後述する。
【0251】
(パラジウム粒子の評価)
{パラジウム粒子の数と割合}
前記工程cでパラジウム粒子を形成した後の粒子Bの正投影面において、粒子Bの直径の1/2の直径を有する同心円内に存在するパラジウム粒子の数と、所定の直径を有するパラジウム粒子の割合とを算出した。
【0252】
具体的には、パラジウム粒子の数は、粒子Bを走査電子顕微鏡(以下「SEM装置」と略称する、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により3万倍で観察して得られるSEM画像をもとに評価した。
図11に、工程cで得られたパラジウム粒子を形成した後の粒子Bを観察したSEM画像を示す。
【0253】
所定の直径を有するパラジウム粒子の割合として、粒子Bの正投影面において、粒子Bの直径の1/2の直径を有する同心円内に存在するパラジウム粒子の総数に対する、直径が20nm未満、20nm以上60nm未満、及び、60nm以上のパラジウム粒子の数の割合をそれぞれ求めた。パラジウム粒子の直径については、
図12に示すように、粒子Bの表面を15万倍で観察したSEM画像により判別した。各パラジウム粒子の面積を測定し、その面積と同一の面積を有する真円の直径をパラジウム粒子の直径として算出した。なお、
図12は、粒子Bの直径の1/2の直径を有する同心円内の一部分である。
【0254】
{平均長さ}
金属層の厚さ方向におけるパラジウム粒子の平均長さ(平均高さ)を以下の手順で求めた。まず、ウルトラミクロトーム法を用いて、前記工程eで得られた導電粒子の断面を切り出し、切り出した薄膜切片状のサンプルのうち、粒径が最大となるサンプルを、導電粒子の中心付近を通る断面で切り出されたサンプルとした。このサンプルについて、TEM装置を用い、TEM装置の測定モードの1つである走査透過型電子顕微鏡モード(STEMモード)を利用して、加速電圧200kVにて観察(25万倍)した。次に、STEMモードで観察しながら測定視野を探し、TEM装置に付属するEDX検出器により、ニッケル、リン及びパラジウムのマッピング図を得た(このようにSTEMモードで観察し、EDX検出器により分析する手法を、以下「STEM/EDX分析」と略称する)。
図13は、導電粒子の断面のSTEM像(
図13(a))、並びに、EDXにより得られたニッケル、リン及びパラジウムのマッピング図(
図13(b):ニッケル、
図13(c):リン、
図13(d):パラジウム)を示す。続いて、得られたパラジウムのマッピング図から、金属層の厚さ方向におけるパラジウム粒子の長さを求めた。
図14は、
図13のパラジウムのマッピング図からパラジウム粒子の長さを求める方法を説明するための図である。パラジウム粒子10個の長さを求め、それらの平均値をパラジウム粒子の平均長さとした。パラジウム粒子の平均長さの算出方法の詳細については後述する。
【0255】
(無電解ニッケルめっき析出核の評価)
{無電解ニッケルめっき析出核の数と割合}
前記工程dで無電解ニッケルめっき析出核を形成した後の粒子Cの正投影面において、粒子Cの直径の1/2の直径を有する同心円内に存在する無電解ニッケルめっき析出核の数と、所定の直径を有する無電解ニッケルめっき析出核の割合とを算出した。
【0256】
具体的には、無電解ニッケルめっき析出核の数は、粒子CをSEM装置により3万倍で観察して得られるSEM画像をもとに評価した。
図15に、工程dで得られた無電解ニッケルめっき析出核を形成した後の粒子Cを観察したSEM画像を示す。
【0257】
所定の直径を有する無電解ニッケルめっき析出核の割合として、粒子Cの正投影面において、粒子Cの直径の1/2の直径を有する同心円内に存在する無電解ニッケルめっき析出核の総数に対する、直径が100nm未満、及び、100nm以上の無電解ニッケルめっき析出核の数の割合をそれぞれ求めた。無電解ニッケルめっき析出核の直径については、
図16に示すように、粒子Cの表面を10万倍で観察したSEM画像により判別した。
図16において、第1の層と、点在的に分布した無電解ニッケルめっき析出核とが確認される。
【0258】
{平均長さ}
金属層の厚さ方向における無電解ニッケルめっき析出核の平均長さ(平均高さ)を以下の手順で求めた。前記パラジウム粒子の評価において得られた導電粒子の断面のSTEM像(
図13(a))から、金属層の厚さ方向における無電解ニッケルめっき析出核の長さを求めた。
図17は、導電粒子の断面のSTEM像から無電解ニッケルめっき析出核の長さを求める方法を説明するための図である。無電解ニッケルめっき析出核10個の長さを求め、それらの平均値を無電解ニッケルめっき析出核の平均長さとした。
【0259】
(導電粒子の断面試料の作製方法)
導電粒子の断面試料の作製方法の詳細について説明する。導電粒子の断面からSTEM/EDX分析するための60nm±20nmの厚さを有する断面試料(以下、「TEM測定用の薄膜切片」という)を、ウルトラミクロトーム法を用いて下記のとおり作製した。
【0260】
安定して薄膜化加工するため、導電粒子を注型樹脂に分散させた。具体的には、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、ブチルグリシジルエーテルと、その他エポキシ樹脂との混合物(リファインテック株式会社製、商品名「エポマウント主剤27−771」)10gにジエチレントリアミン(リファインテック株式会社製、商品名「エポマウント硬化剤27−772」)1.0gを混合した。スパチュラを用いて攪拌し、均一に混合されたことを目視にて確認した。この混合物3gに乾燥済みの導電粒子0.5gを加えた後、スパチュラを用いて均一になるまで攪拌した。導電粒子を含む混合物を樹脂注型用の型(D.S.K 堂阪イーエム株式会社製、商品名「シリコーン包埋板II型」)に流し込み、常温(室温)下で24時間静置した。注型樹脂が固まったことを確認し、導電粒子の樹脂注型物を得た。
【0261】
ウルトラミクロトーム(ライカ・マイクロシステムズ株式会社製、商品名「EM−UC6」)を用いて、導電粒子の樹脂注型物から、TEM測定用の薄膜切片を作製した。TEM測定用の薄膜切片を作製する際には、まず、ウルトラミクロトームの装置本体に固定したガラス製のナイフ(日新EM株式会社製のガラスナイフメーカーにて作製)を用いて、
図18(a)に示すように、TEM測定用の薄膜切片を切り出せる形状になるまで樹脂注型物の先端をトリミング加工した。
【0262】
より詳細には、
図18(b)に示すように、樹脂注型物の先端の断面形状が、縦200〜400μm及び横100〜200μmの長さを有する略直方体状となるようにトリミング加工した。断面の横の長さを100〜200μmとするのは、樹脂注型物からTEM測定用の薄膜切片を切り出す際に、ダイアモンドナイフと試料との間で発生する摩擦を低減するためである。これにより、TEM測定用の薄膜切片の皺及び折れ曲がりを防ぎ易くなり、TEM測定用の薄膜切片の作製が容易となる。
【0263】
続いて、ウルトラミクロトーム装置本体の所定の箇所に、ボート付きのダイアモンドナイフ(DIATONE社製、商品名「Cryo Wet」、刃幅2.0mm、刃角度35°)を固定した。次に、ボートをイオン交換水で満たし、ナイフの設置角度を調整して刃先をイオン交換水で濡らした。
【0264】
ここで、ナイフの設置角度の調整について
図19を用いて説明する。ナイフの設置角度の調整においては、上下方向の角度、左右方向の角度及びクリアランス角を調整することができる。「上下方向の角度の調整」とは、
図19に示すように、試料表面とナイフの進む方向とが平行になるように試料ホルダーの上下方向の角度を調整することを意味する。「左右方向の角度の調整」とは、
図19に示すように、ナイフの刃先と試料表面とが平行になるようにナイフの左右方向の角度を調整することを意味する。「クリアランス角の調整」とは、
図19に示すように、ナイフの刃先の試料側の面とナイフの進む方向とがなす最小の角度を調整することを意味する。クリアランス角は、5〜10°が好ましい。クリアランス角が前記範囲であると、ナイフの刃先と試料表面との摩擦を低減できると共に、試料から薄膜切片を切り出した後にナイフが試料表面を擦ることを防げる。
【0265】
ウルトラミクロトーム装置本体に付している光学顕微鏡を確認しながら、試料とダイアモンドナイフとの距離を近づけて、刃速度0.3mm/秒、薄膜の切り出し厚さが60nm±20nmとなるようにミクロトーム装置の設定値を設定し、樹脂注型物から薄膜切片を切り出した。次に、イオン交換水の水面にTEM測定用の薄膜切片を浮かべた。水面に浮かべたTEM測定用の薄膜切片の上面から、TEM測定用の銅メッシュ(日新EM株式会社製、商品名「マイクログリッド付き銅メッシュ」)を押し付け、TEM測定用の薄膜切片を銅メッシュに吸着させ、TEM試料とした。なお、ミクロトームで得られるTEM測定用の薄膜切片は、ミクロトームの切り出し厚さの設定値と正確には一致しないため、所望の厚さが得られる設定値を予め求めておく。
【0266】
(EDX検出器によるマッピングの方法)
EDX検出器によるマッピングの方法の詳細について説明する。TEM測定用の薄膜切片を銅メッシュごと試料ホルダー(日本電子株式会社製、商品名「ベリリウム試料2軸傾斜ホルダー、EM−31640」)に固定し、TEM装置内部へ挿入した。加速電圧200kVにて、試料への電子線照射を開始した後、電子線の照射系をSTEMモードに切り替えた。
【0267】
走査像観察装置をSTEM観察時の位置に挿入し、STEM観察用のソフトウェア「JEOL Simple Image Viewer(Version 1.3.5)」(日本電子株式会社製)を起動してから、TEM測定用の薄膜切片を観察した。その中に観察された導電粒子の断面のうち、EDX測定に適した箇所を探し、撮影した。ここでいう「測定に適した箇所」とは、導電粒子の中心付近で切断され、金属層の断面が観察できる箇所を意味し、断面が傾斜している箇所、及び、導電粒子の中心付近からずれた位置で切断されている箇所は、測定対象から外した。撮影時には、観察倍率25万倍、STEM観察像の画素数を縦512点、横512点とした。この条件で観察すると、視野角600nmの観察像が得られるが、装置が変わると同じ倍率でも視野角が変わることがあるため注意が必要である。
【0268】
STEM/EDX分析の際には、導電粒子のTEM測定用の薄膜切片に電子線を当てると、導電粒子のプラスチック核体及び注型樹脂の収縮及び熱膨張が起こり、測定中に試料が変形又は移動してしまう。このようなEDX測定中の試料変形及び試料移動を抑制するため、事前に30分間〜1時間程度、測定箇所に電子線を照射し、変形及び移動が収まったことを確認してから分析した。
【0269】
STEM/EDX分析を行うため、EDX検出器を測定位置まで移動させ、EDX測定用のソフトウェア「Analysis Station」(日本電子株式会社製)を起動させた。EDX検出器によるマッピングの際には、マッピング時に充分な分解能を得る必要があるため、電子線を目的箇所に集束させるための集束絞り装置を用いた。
【0270】
STEM/EDX分析の際には、検出される特性X線のカウント数(CPS:Counts Per Second)が10,000CPS以上になるように、電子線のスポット径を0.5〜1.0nmの範囲で調整した。測定後に、マッピング測定と同時に得られるEDXスペクトルにおいて、ニッケルのKα線に由来するピークの高さが少なくとも5,000Counts以上となることを確認した。データ取得時には、前記STEM観察時と同じ視野角で、画素数を縦256点、横256点とした。一点ごとの積算時間を20ミリ秒間とし、積算回数1回で測定を行った。
【0271】
パラジウム粒子の長さを算出するため、得られたSTEM/EDX分析データをもとに、パラジウムのマッピング像を作成した。このパラジウムのマッピング像において、
図14に示すように、得られたマッピング像を白黒に2値化することによって、パラジウムの存在する部分と存在しない部分との境界線を決定し、金属層の厚さ方向における当該境界線間の距離をパラジウム粒子の長さとした。但し、測定データにはノイズが含まれており、S/N比を向上させるためにフィルター処理を実施した。フィルター処理は、EDX測定用のソフトウェア「Analysis Station」に付属した機能であり、各測定点において、各測定点のデータに加えて、測定点に隣接する複数点のデータを積算して表示することができる。これにより、マッピング画像のS/Nが向上するため、パラジウムのマッピング像からパラジウム粒子の長さを算出することができる。本実施例では、このフィルター処理を利用して、各測定点のデータに加えて、測定点に隣接する8点(上、下、左、右、左上、左下、右上、右下)のデータを積算し、マッピング像のノイズを低減させてから、パラジウム粒子の長さを算出した。
【0272】
得られたEDXマッピングデータから、必要に応じて、第1の層、無電解ニッケルめっき析出核、第2の層におけるEDXスペクトルを抽出し、各部分における元素存在比を算出した。但し、定量値を算出する際には、貴金属、ニッケル及びリンの割合の合計を100質量%として、それぞれの元素の質量%濃度を算出した。
【0273】
前記以外の元素については、下記の理由で割合が変動し易いため、定量値を算出する際には除外した。炭素は、TEM測定用のメッシュに使用されるカーボン支持膜、又は、電子線照射時に試料表面に吸着するコンタミの影響によって割合が増減する。酸素は、TEM試料を作製してから測定までの間に空気酸化することで増加する可能性がある。銅は、TEM測定用に用いた銅メッシュから検出されてしまう。
【0274】
(パラジウム粒子におけるパラジウム含有量)
銅張り積層板を用いる下記の方法により評価用サンプルを作製した。
【0275】
銅張り積層板である「MCL−E−679F」(日立化成株式会社製、商品名)を1cm×1cmの大きさで切断し基板を得た。この基板を、脱脂液「Z−200」(株式会社ワールドメタル製、商品名)に50℃で1分間浸漬した後、1分間水洗した。次に、100g/Lの過硫酸アンモニウム溶液に1分間浸漬した後、1分間水洗した。続いて、10質量%の硫酸に1分間浸漬した後、1分間水洗した。次に、めっき活性化処理液である「SA−100」(日立化成株式会社製、商品名)に25℃で5分間浸漬処理した後、1分間水洗した。続いて、無電解ニッケルめっき液である「トップニコロンNAC」(奥野製薬工業株式会社製、商品名)に85℃で4分間浸漬することにより、11.5質量%のリンを含有した無電解ニッケルめっき被膜を0.7μmの厚さで銅箔上に形成した。続いて、これを1分間水洗した。次に、前記(工程c)の組成及び液量の無電解パラジウムめっき液に、60℃にて10分間浸漬することで、約0.1μmの厚さの無電解パラジウムめっき被膜を無電解ニッケルめっき被膜上に形成した。続いて、これを1分間水洗した後に乾燥して評価用サンプルを得た。
【0276】
次に、得られた評価用サンプルを注型樹脂(エポキシ樹脂815(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)90質量%とトリエチレンテトラミン(和光純薬工業株式会社製、商品名)10質量%を混合したもの)に埋没させた。無電解パラジウムめっき被膜の断面を観察できるようにウルトラミクロトーム法で当該断面を切り出した後、TEM装置を用いて25万倍の倍率で観察した。続いて、無電解パラジウムめっき被膜について、EDX検出器による成分分析によりパラジウム含有量を算出し、これをパラジウム粒子におけるパラジウム含有量とした。このようにして得られたパラジウム粒子におけるパラジウム含有量は100質量%であった。パラジウム粒子がパラジウム以外の成分(炭素及び酸素以外の成分)を含有する場合、その成分の含有量も、パラジウムと同様に、評価用サンプルについてのEDX検出器による成分分析によって算出した。
【0277】
(導電粒子の表面に形成された突起の評価)
{突起の被覆率}
導電粒子をSEM装置により3万倍で観察して得られるSEM画像をもとに、導電粒子表面における突起による被覆率(面積の割合)を算出した。具体的には、導電粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内において突起形成部と平坦部とを画像解析により区別し、同心円内に存在する突起形成部の面積の割合を算出し、当該割合を突起の被覆率とした。
図20に、導電粒子をSEM装置により観察した結果を示す。
【0278】
{突起の直径の分布}
導電粒子の正投影面において、導電粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に存在する突起の数と、所定の直径を有する突起の割合とを算出した。
【0279】
具体的には、導電粒子をSEM装置により3万倍で観察して得られるSEM画像をもとに、画像解析により突起の輪郭を割り出した。突起の面積(突起間の谷により区切られる突起の輪郭の面積)を測定し、その面積と同一の面積を有する真円の直径を突起の直径(外径)として算出した。
【0280】
所定の直径を有する突起の割合として、導電粒子の正投影面において、導電粒子の直径の1/2の直径を有する同心円内に存在する突起の総数に対する、直径が100nm未満、100nm以上200nm未満、及び、200nm以上の突起の数と割合をそれぞれ求めた。
【0281】
{平均長さ及び突起長さの分布}
突起長さは、
図6に示されるD4の計測結果より求めた。具体的には、導電粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法で導電粒子の断面を切り出し、TEM装置を用いて25万倍の倍率で観察して得られる画像に基づき、突起の長さを求めた。
図21は、STEM像から突起の長さを求める方法を説明するための図である。
図21に示すように、突起の長さは、突起の基端における直径方向の両端を結んだ直線(突起の両側の谷と谷を結んだ直線)から垂直方向における突起の頂点までの距離として計測した。導電粒子1個に対し、10箇所の突起の長さを求めた。そして、導電粒子10個のそれぞれにおいて10箇所の突起の長さを求め、合計100箇所の突起の長さを算出した。100箇所の突起の長さの平均値を突起の平均長さ(平均高さ)とした。また、突起長さが30nm未満、30nm以上120nm未満、及び、120nm以上500nm未満の突起の数と割合をそれぞれ求めた。
【0282】
{異常析出部の有無}
長さ500nmを超える突起(異常析出部)の有無は、
図22に模式的に示す方法により判別した。具体的には、SEM装置により3万倍で1000個の導電粒子400を観察し、異常析出部401の基端における直径方向の両端を結んだ直線(異常析出部401の両側の谷と谷とを結んだ直線)から垂直方向における異常析出部401の頂点までの距離を計測することにより、異常析出部401の長さ402を得た。そして、長さ500nmを超える異常析出部を有する導電粒子数をカウントした。
【0283】
(単分散率の測定)
導電粒子0.05gを電解水に分散させ、界面活性剤を添加し、超音波分散(アズワン株式会社製US−4R、高周波出力:160W、発振周波数:40kHz単周波)を5分間行った。導電粒子の分散液をCOULER MULTISIZER II(ベックマン・コールター株式会社製)の試料カップに注入し、導電粒子50000個についての単分散率を測定した。単分散率は下記式により算出し、その値に基づいて下記基準により水溶媒中での粒子の凝集性を判定した。
単分散率(%)={first peak粒子数(個)/全粒子数(個)}×100
【0284】
[絶縁被覆導電粒子の作製]
分子量70000のポリエチレンイミンの30質量%水溶液(和光純薬工業株式会社製)を、超純水で0.3質量%まで希釈した。この0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液300mLに、前記と同様の方法で得た導電粒子200gを加え、常温で15分間攪拌した。φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)を用いた濾過により導電粒子を取出し、取り出された導電粒子を超純水200gに入れて常温で5分間攪拌した。さらに、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)を用いた濾過により導電粒子を取出し、メンブレンフィルタ上の導電粒子を200gの超純水で2回洗浄して、吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
【0285】
次いで、φ130nmのコロイダルシリカ分散液を超純水で希釈して、0.1質量%シリカ粒子分散液を得た。そこに、前記ポリエチレンイミンによる処理済の導電粒子200gを入れて常温で15分間攪拌した。φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)を用いた濾過により導電粒子を取出し、取り出された導電粒子を超純水200gに入れて常温で5分間攪拌した。さらに、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)を用いた濾過により導電粒子を取出した。そして、メンブレンフィルタ上の導電粒子を200gの超純水で2回洗浄して、吸着していないシリカ粒子を除去し、シリカ粒子が表面に吸着した絶縁被覆導電粒子を得た。
【0286】
得られた絶縁被覆導電粒子の表面に、分子量3000のシリコーンオリゴマーであるSC6000(日立化成株式会社製、商品名)を付着させて、絶縁被覆導電粒子の表面を疎水化した。疎水化後の絶縁被覆導電粒子を80℃で30分間、120℃で1時間の順に、加熱により乾燥して、疎水化された絶縁被覆導電粒子を得た。SEM画像を画像解析することでシリカ粒子による導電粒子の平均被覆率を測定したところ、約28%であった。
【0287】
[異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製]
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名「PKHC」)100gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、分子量:85万)75gとを、酢酸エチル400gに溶解して溶液を得た。この溶液に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185、旭化成エポキシ株式会社製、商品名「ノバキュアHX−3941」)300gを加え、撹拌して接着剤溶液を得た。
【0288】
この接着剤溶液に、前記で得た絶縁被覆導電粒子を、接着剤溶液の全量を基準として9体積%となるように分散させ、分散液を得た。得られた分散液を、セパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ40μm)にロールコータを用いて塗布し、90℃で10分間加熱することにより乾燥して、厚さ25μmの異方導電性接着フィルムをセパレータ上に作製した。
【0289】
次に、作製した異方導電性接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:30μm×90μm、高さ:15μm、バンブ数362)付きチップ(1.7mm×1.7mm、厚さ:0.5μm)と、IZO回路付きガラス基板(厚さ:0.7mm)との接続を、以下に示すi)〜iii)の手順に従って行い、接続構造体を得た。金バンプとして、スペース6μm、8μm、10μmの3種類のバンプを用いた。
i)異方導電性接着フィルム(2mm×19mm)をIZO回路付きガラス基板に80℃、0.98MPa(10kgf/cm
2)で貼り付けた。
ii)セパレータを剥離し、チップのバンプとIZO回路付きガラス基板の位置合わせを行った。
iii)190℃、40gf/バンプ、10秒の条件でチップ上方から加熱及び加圧を行い、本接続を行った。
【0290】
[接続構造体の評価]
得られた接続構造体の導通抵抗試験及び絶縁抵抗試験を以下のように行った。
【0291】
(導通抵抗試験)
チップ電極(バンプ)/IZO回路間の導通抵抗として、導通抵抗の初期値と、吸湿耐熱試験(温度85℃、湿度85%の条件で100、300、500、1000、2000時間放置)後の値とを測定した。チップ電極(バンプ)/IZO回路間は、約40μm×約40μmの領域で接続し、10個の導電粒子で接続されるように接続を行った。なお、20サンプルについて測定し、それらの平均値を算出した。得られた平均値から下記基準に従って導通抵抗を評価した。結果を表2に示す。吸湿耐熱試験500時間後に下記A又はBの基準を満たす場合を導通抵抗が良好であると評価した。
A:導通抵抗の平均値が2Ω未満
B:導通抵抗の平均値が2Ω以上5Ω未満
C:導通抵抗の平均値が5Ω以上10Ω未満
D:導通抵抗の平均値が10Ω以上20Ω未満
E:導通抵抗の平均値が20Ω以上
【0292】
(絶縁抵抗試験)
チップ電極間の絶縁抵抗として、絶縁抵抗の初期値と、マイグレーション試験(温度60℃、湿度90%、20V印加の条件で100、300、1000、2000時間放置)後の値とを測定した。20サンプルについて測定し、全20サンプル中、絶縁抵抗値が10
9Ω以上となるサンプルの割合を算出した。測定は、スペース6μm、8μm、10μmの3種類のそれぞれについて行った。得られた割合から下記基準に従って絶縁抵抗を評価した。結果を表2に示す。スペース8μmにおいて、吸湿耐熱試験1000時間後に下記A又はBの基準を満たす場合を絶縁抵抗が良好であると評価した。
A:絶縁抵抗値10
9Ω以上の割合が100%
B:絶縁抵抗値10
9Ω以上の割合が90%以上100%未満
C:絶縁抵抗値10
9Ω以上の割合が80%以上90%未満
D:絶縁抵抗値10
9Ω以上の割合が50%以上80%未満
E:絶縁抵抗値10
9Ω以上の割合が50%未満
【0293】
<実施例2>
実施例1の(工程e)において、第2の層形成用無電解ニッケルめっき液を下記組成のめっき液に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電粒子、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(第2の層形成用無電解ニッケルめっき液)
硫酸ニッケル・・・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・150g/L
酢酸・・・・・・・・・・・・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・1mL/L
【0294】
<実施例3>
実施例1の(工程e)において、第2の層形成用無電解ニッケルめっき液を下記組成のめっき液に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電粒子、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(第2の層形成用無電解ニッケルめっき液)
硫酸ニッケル・・・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・150g/L
酢酸・・・・・・・・・・・・・・・・60g/L
酒石酸ナトリウム・2水和物・・・・・60g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・1mL/L
【0295】
<実施例4>
実施例1の(工程e)において、第2の層形成用無電解ニッケルめっき液を下記組成のめっき液に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電粒子、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(第2の層形成用無電解ニッケルめっき液)
硫酸ニッケル・・・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・150g/L
酒石酸ナトリウム・2水和物・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・1mL/L
【0296】
<実施例5>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、下記組成の無電解パラジウムめっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は50℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層におけるパラジウム含有量は100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・・・・0.07g/L
EDTA・2ナトリウム・・・1g/L
クエン酸・2ナトリウム・・・1g/L
ギ酸ナトリウム・・・・・・・0.2g/L
pH・・・・・・・・・・・・6
【0297】
<実施例6>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、下記組成の無電解パラジウムめっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は50℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層におけるパラジウム含有量はほぼ97質量%(パラジウム:97質量%、リン:3質量%)であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・・・0.07g/L
エチレンジアミン・・・・・1g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・0.2g/L
チオジグリコール酸・・・・10ppm
pH・・・・・・・・・・・8
【0298】
<実施例7>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、下記組成の無電解ロジウムめっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は60℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層におけるロジウム含有量はほぼ100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(無電解ロジウムめっき液)
RH−1A(奥野製薬工業株式会社製):500mL/L
RH−1B(奥野製薬工業株式会社製):150mL/L
RH−1C(奥野製薬工業株式会社製):100mL/L
【0299】
<実施例8>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、下記組成の無電解イリジウムめっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は20分間、温度は70℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層におけるイリジウム含有量はほぼ100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
(無電解イリジウムめっき液)
六塩化イリジウム三ナトリウム・・・5g/L
22%三塩化チタン溶液・・・・・・40mL/L
pH・・・・・・・・・・・・・・・3.5
【0300】
<実施例9>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、下記組成の無電解ルテニウムめっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は60℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層におけるルテニウム含有量はほぼ100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
(無電解ルテニウムめっき液)
Ru−1(奥野製薬工業株式会社製):500mL/L
Ru−2(奥野製薬工業株式会社製):50mL/L
Ru−3(奥野製薬工業株式会社製):50mL/L
【0301】
<実施例10>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、下記組成の無電解白金めっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は60℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層における白金含有量はほぼ100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
(無電解白金めっき液)
レクトロレスPt100基本液(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製):500mL/L
レクトロレスPt100還元液(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製):10mL/L
25%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製):50mL/L
【0302】
<実施例11>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、下記組成の無電解銀めっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は60℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層における銀含有量はほぼ100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
(無電解銀めっき液)
ムデンシルバーSS−1(奥野製薬工業株式会社製):50mL/L
ムデンシルバーSS−2(奥野製薬工業株式会社製):500mL/L
ムデンシルバーSS−3(奥野製薬工業株式会社製):5mL/L
【0303】
<実施例12>
実施例1の(工程a)〜(工程d)と同様に作製した粒子C5.0gを、置換金めっき液であるHGS−100(日立化成株式会社、商品名)100mL/Lの溶液1Lに、85℃で2分間浸漬し、更に2分間水洗して、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は60℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層における金含有量はほぼ100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0304】
<実施例13>
実施例3と同様に作製した導電粒子5.5gを、実施例5と同じ組成の無電解パラジウムめっき液1Lに浸漬し、第3の層を形成した。なお、反応時間は10分間、温度は50℃にて処理を行った。第3の層の平均厚さは10nm、第3の層におけるパラジウム含有量は100質量%であった。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、導電粒子及び接続構造体の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0305】
【表1】
【0306】
【表2】
【0307】
【表3】
【0308】
【表4】
【0309】
<比較例1>
実施例1と同様の(工程a)及び(工程b)を行い、樹脂粒子表面に第1の層が形成された粒子A4gを得た。
【0310】
前記粒子Aの水洗と濾過を行った後、200mLのクリーナーコンディショナー231水溶液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、濃度40mL/L)を攪拌しながら、そこに粒子A4gを投入した。60℃で超音波を与えながら30分間攪拌することで、粒子Aの表面処理を行った。続いて、水溶液をろ過し、得られた粒子を水洗した後、粒子4gを水に分散させて200mLのスラリーを得た。このスラリーに塩化第一錫水溶液200mL(濃度1.2g/L)を加え、常温で5分間攪拌し、錫イオンを第1の層上に吸着させる感受性化処理を行った。
【0311】
次いで、スラリーをろ過し、得られた粒子を水洗した後、粒子4gを水に分散させて400mLのスラリーを得た。スラリーを60℃に加温した後、超音波を併用してスラリーを攪拌しながら、19.5g/Lの塩化パラジウム水溶液を3mL添加した。そのまま5分間攪拌することで、第1の層上にパラジウムイオンを捕捉させる活性化処理を行った。その後、スラリーをろ過し、得られた粒子を水洗した後、さらに湯洗した。得られた粒子4gを水に分散させて200mLのスラリーを得た。超音波を併用しながらこのスラリーを攪拌し、そこへ、1g/Lのジメチルアミンボランと10g/Lのホウ酸との混合水溶液20mLを加えた。常温で、超音波を併用しながら2分間攪拌してパラジウムイオンの還元処理を行った。
【0312】
その後、実施例1と同様の(工程d)を行い、第2の層を形成して、導電粒子を得た。この導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、接続構造体の評価を行った。導電粒子の評価については、一部の評価を実施例1と同様に行った。結果を表5及び表6に示す。
【0313】
<比較例2>
平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン粒子(株式会社日本触媒社製、商品名「ソリオスター」)を樹脂粒子として用いた。400mLのクリーナーコンディショナー231水溶液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、濃度40mL/L)を攪拌しながら、そこに樹脂粒子30gを投入した。続いて、水溶液を60℃に加温し、超音波を与えながら30分間攪拌して、樹脂粒子の表面改質及び分散処理を行った。
【0314】
前記水溶液を濾過し、得られた粒子を1回水洗した後に、粒子30gを水に分散させて200mLのスラリーを得た。このスラリーに塩化第一錫水溶液200mL(濃度1.5g/L)を加え、常温で5分間攪拌し、錫イオンを粒子の表面に吸着させる感受性化処理を行った。続いて、水溶液を濾過し、得られた粒子を1回水洗した。次いで、粒子30gを水に分散させて400mLのスラリーを調製した後、60℃まで加温した。超音波を併用してスラリーを攪拌しながら、10g/Lの塩化パラジウム水溶液2mLを添加した。そのまま5分間攪拌することで、粒子の表面にパラジウムイオンを捕捉させる活性化処理を行った。続いて、水溶液を濾過し、得られた粒子を1回水洗した。
【0315】
次いで、20g/Lの酒石酸ナトリウム、10g/Lの硫酸ニッケル及び0.5g/Lの次亜リン酸ナトリウムを溶解した水溶液からなる無電解めっき液3リットルを60℃に昇温した。この無電解めっき液に、前記粒子10gを投入した。これを5分間攪拌し、水素の発泡が停止することを確認した。
【0316】
その後、200g/Lの硫酸ニッケル水溶液400mLと、200g/Lの次亜リン酸ナトリウム及び90g/Lの水酸化ナトリウム混合水溶液400mLとを、それぞれ同時に定量ポンプによって連続的に、粒子を含むめっき液に添加した。添加速度はいずれも3mL/分とした。次いで、この溶液を60℃に保持しながら5分間攪拌した後、溶液を濾過した。濾過物を3回洗浄した後、100℃の真空乾燥機で乾燥して、ニッケル−リン合金被膜を有する導電粒子を得た。得られた導電粒子について、粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法で断面を切り出し、TEM装置を用いて25万倍の倍率で観察した。得られた断面の画像に基づき、断面積の平均値より膜厚を算出した結果、平均膜厚は105nmであった。
【0317】
前記導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、接続構造体の評価を行った。導電粒子の評価については、一部の評価を実施例1と同様に行った。結果を表5及び表6に示す。
【0318】
<比較例3>
平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン粒子(株式会社日本触媒社製、商品名「ソリオスター」)を樹脂粒子として用いた。400mLのクリーナーコンディショナー231水溶液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、濃度40mL/L)を攪拌しながら、そこに樹脂粒子7gを投入した。続いて、水溶液を60℃に加温し、超音波を与えながら30分間攪拌して、樹脂粒子の表面改質及び分散処理を行った。
【0319】
前記水溶液を濾過し、得られた粒子を1回水洗した後に、粒子7gを純水に分散させて200mLのスラリーを得た。このスラリーに塩化第一錫水溶液200mL(濃度1.5g/L)を加え、常温で5分間攪拌し、錫イオンを粒子の表面に吸着させる感受性化処理を行った。続いて、水溶液を濾過し、得られた粒子を1回水洗した。次いで、粒子7gを水に分散させて400mLのスラリーを調製した後、60℃まで加温した。超音波を併用してスラリーを攪拌しながら、10g/Lの塩化パラジウム水溶液2mLを添加した。そのまま5分間攪拌することで、粒子の表面にパラジウムイオンを捕捉させる活性化処理を行った。続いて、水溶液を濾過し、得られた粒子を1回水洗した。
【0320】
得られた粒子7gを純水300mLに加え、3分間攪拌して分散させた。次に、その分散液に芯物質としてニッケル粒子(三井金属鉱業株式会社製、商品名「2007SUS」、平均粒径50nm)2.25gを添加し、芯物質を付着させた粒子を得た。
【0321】
前記分散液を更に水1200mLで希釈し、めっき安定剤として硝酸ビスマス水溶液(濃度1g/L)4mLを添加した。次に、この分散液に、硫酸ニッケル450g/L、次亜リン酸ナトリウム150g/L、クエン酸ナトリウム116g/L及びめっき安定剤(硝酸ビスマス水溶液(濃度1g/L))6mLの混合溶液120mLを81mL/分の添加速度で定量ポンプを通して添加した。その後、pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止することを確認した。
【0322】
次いで、硫酸ニッケル450g/L、次亜リン酸ナトリウム150g/L、クエン酸ナトリウム116g/L、めっき安定剤(硝酸ビスマス水溶液(濃度1g/L))35mLの混合溶液650mLを27mL/分の添加速度で定量ポンプを通して添加した。その後、pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止することを確認した。
【0323】
次いで、めっき液を濾過し、濾過物を水で洗浄した。その後、80℃の真空乾燥機で乾燥してニッケル−リン合金被膜を有する導電粒子を得た。得られた導電粒子について、粒子の中心付近を通るようにウルトラミクロトーム法で断面を切り出し、TEM装置を用いて25万倍の倍率で観察した。得られた断面の画像に基づき、断面積の平均値より膜厚を算出した結果、平均膜厚は101nmであった。
【0324】
前記導電粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁被覆導電粒子、異方導電性接着フィルム及び接続構造体の作製、並びに、接続構造体の評価を行った。導電粒子の評価については、一部の評価を実施例1と同様に行った。結果を表5及び表6に示す。
【0325】
比較例1では、パラジウム粒子を形成する代わりにパラジウム触媒化処理を施して導電粒子を得た。比較例2の導電粒子は特許文献1の導電粒子に対応する。比較例3の導電粒子は特許文献2の導電粒子に対応する。
【0326】
【表5】
【0327】
【表6】