特許第6380757号(P6380757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380757
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/915 20130101AFI20180820BHJP
【FI】
   A61F2/915
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-4380(P2015-4380)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-129566(P2016-129566A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】品川 裕希
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5354309(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0131423(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0060401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/915
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的なパターンを有する線材が環状をなす環状単位パターンを複数有し、隣り合う前記環状単位パターンが複数の接続部により軸方向に接続されて円筒形状をなすステントであって、
複数の前記接続部には、前記接続部における他の部分よりも破断しやすい第1脆弱部を有する前記接続部である脆弱接続部と、前記第1脆弱部を有しない前記接続部である通常接続部が含まれ、
軸方向に隣り合う一組の前記環状単位パターンは、1つの前記通常接続部と1つ以上の前記脆弱接続部とを含む複数の前記接続部によって互いに接続されていることを特徴とするステント。
【請求項2】
前記環状単位パターンには、当該環状単位パターンにおける他の部分よりも破断しやすい第2脆弱部が、それぞれの前記環状単位パターンに少なくとも1か所ずつ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記第2脆弱部は、1つの前記環状単位パターンに対して軸方向の一方側に接続する前記通常接続部と他方側に接続する他の前記通常接続部とを、その前記環状単位パターンに沿って時計回りに移動して結ぶルートと反時計回りに移動して結ぶルートのうち、距離が短い方のルート上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記第1脆弱部の破断荷重は、1〜15Nであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のステント。
【請求項5】
前記第2脆弱部の破断荷重は、1〜15Nであることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化器系体内管腔など、生体内の体内管腔の狭窄部等に挿入され、狭窄の改善等に供されるステントに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の胆管、食道、十二指腸、大腸等の消化器系体内管腔に、例えば癌細胞等により狭窄部分や閉塞部分が生じた場合、ステントをその狭窄部分あるいは閉塞部分に挿入して留置し、狭窄の改善、管腔の確保あるいは管腔の径の維持等を図ることが医療現場において行われている(例えば特許文献1参照)。また、このような用途に用いられるステントとしては、金属等で形成された網目状の円筒形状のステント(ベアステント)、その網目状の円筒形状のステントを樹脂等で形成された膜で覆ってなるステント(カバードステント)、樹脂等で形成された円筒チューブ状のステント(チューブステント)等がある。
【0003】
このようなステントの使用方法に関連し、ステント留置後における狭窄の改善状況などに応じて、一旦体内に留置したステントを抜去したい場合がある。しかし、従来技術に係るステントは、円筒状の外形状を有しているため、抜去時の通路となる細いカテーテルルーメンなどに引き込むことが難しく、ステントを体内で切断するなどの作業が必要になる場合があるなど、課題を有している。また、留置期間が長期間であるような場合は、留置したステントが体内組織と癒着して抜去が難しくなる場合がある。また、ステントの一部が体内組織と強固に癒着したような症例では、抜去時に、ステントが予期しない箇所で破断し、抜去に時間がかかる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−513743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円滑な抜去を可能とするステントに関する従来技術としては、たとえば、螺旋状に巻回された連続する線材の外周表面を樹脂材料で被覆したカバードステントに関する技術がある(例えば特許文献1参照)。しかし、このようなカバードステントでは、外周表面をカバーする膜が存在しなければステントを形成する円筒形状が維持されないため、その技術を、カバーする膜を設けないで用いるベアステントに適用することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、ベアステントとして用いることが可能で、しかも、留置した体内管腔から、円滑に抜去することができるステントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るステントは、
周期的なパターンを有する線材が環状をなす環状単位パターンを複数有し、隣り合う前記環状単位パターンが複数の接続部により軸方向に接続されて円筒形状をなすステントであって、
複数の前記接続部には、前記接続部における他の部分よりも破断しやすい第1脆弱部を有する前記接続部である脆弱接続部と、前記第1脆弱部を有しない前記接続部である通常接続部が含まれ、
軸方向に隣り合う一組の前記環状単位パターンは、1つの前記通常接続部と1つ以上の前記脆弱接続部とを含む複数の前記接続部によって互いに接続されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るステントは、各環状単位パターンが通常接続部及び脆弱接続部により接続されているため、抜去時にステントの一端を引っ張ることにより脆弱接続部が破断し、各環状単位パターンが1つの通常接続部で接続される状態となる。脆弱接続部が破断されると、ステントを構成する環状単位パターンは、隣接する他の環状単位パターンにあまり拘束されずに変形できるようになり、また、各環状単位パターンは通常接続部によって接続されているので、抜去時の通路となる細いカテーテルルーメンなどに、容易に引き込むことができる。また、ステントが体内組織と癒着しているような場合でも、ステントを構成する線材を、引き込み方向側から少しずつ、順次体内組織から引き剥がすことができるため、円滑な抜去が可能となる。さらに、カバーする膜を設けない場合でも、ステントとして用いるための円筒形状を維持できるので、ベアステントとして用いることが可能である。
【0009】
また、例えば、前記環状単位パターンには、当該環状単位パターンにおける他の部分よりも破断しやすい第2脆弱部が、それぞれの前記環状単位パターンに少なくとも1か所ずつ形成されていても良い。
【0010】
このようなステントは、抜去時に環状単位パターンが第2脆弱部で破断することにより、環状単位パターンを構成していた線材が環状形状に拘束されず自由に変形できるようになるため、より円滑な抜去が可能となる。
【0011】
また、例えば、前記第2脆弱部は、1つの前記環状単位パターンに対して軸方向の一方側に接続する前記通常接続部と他方側に接続する他の前記通常接続部とを、その前記環状単位パターンに沿って時計回りに移動して結ぶルートと反時計回りに移動して結ぶルートのうち、距離が短い方のルート上に形成されても良い。
【0012】
このようなステントは、引き込み方向に近い側から順次、第1脆弱部及び第2脆弱部を破断させていくことにより、紐状に変形させながら抜去することができる。したがって、このようなステントは、抜去時の通路に容易に引き込むことが可能であり、また、癒着した体内組織から容易に引き剥がすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るステントを表す概略斜視図である。
図2図2は、本発明に係るステントの使用状態を表す概略斜視図である。
図3図3は、本発明に係るステントの抜去時における形状変化を説明した概念図である。
図4図4は、第1脆弱部又は第2脆弱部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るステントを、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るステント10の概略斜視図である。ステント10は、例えば、胆管、食道、十二指腸、大腸等の消化器系体内管腔に留置され、主として管腔を確保する目的で使用される。
【0016】
ステント10は、周期的なパターンを有する線材20が環状をなす環状単位パターン22、24、26を複数有する。ステント10は、ステント10が形成する円筒形状の軸方向Zに沿って配列される3つの環状単位パターン22、24、26を有しているが、ステント10が有する環状単位パターン22、24、26の数は、複数であれば特に限定されない。
【0017】
各環状単位パターン22、24、26では、周期的な蛇行パターンを有する線材20が環状をなしている。環状単位パターン22、24、26を構成する線材20は、図示のごとく、軸方向Zの所定の幅内を、周方向に沿ってジグザグに蛇行するパターンを有している。後述するように、線材20は弾性材料によって構成されているため、環状単位パターン22、24、26は径方向に拡張・収縮することが可能である。なお、図1では、各環状単位パターン22、24、26が径方向に拡張した状態を表しているが、例えばステント10が体外からステントデリバリー装置などによって留置位置に搬送される際などは、環状単位パターン22、24、26は径方向に収縮し、ステントデリバリー装置などの細いルーメンの内部に収容される。
【0018】
環状単位パターン24において、線材20によって形成されるパターンの位相は、軸方向に隣り合う他の環状単位パターン22、26における位相に対して、逆位相となっている。その結果、図1に示すように、環状単位パターン24における蛇行パターンの屈曲部分は、隣り合う2つの環状単位パターン22、26のいずれか一方における蛇行パターンの屈曲部分に近接する配置となっている。
【0019】
図1に示す例では、ステント10の両端部に位置する環状単位パターン22、26は、ふくらみ部22b、26bを有する。ふくらみ部22b、26bは、ステント10の軸方向Zの両端部に配置されており、蛇行パターンの屈曲部分に接続する円盤状の形状を有する。ふくらみ部22b、26bの中心には、円盤状の孔が設けられており、その孔には、X線不透過性の高い金属(金、プラチナ、プラチナイリジウム合金、白金、銀、タンタル等)で形成された円盤状のX線不透過マーカー22c、26cが嵌め込まれている。X線透視により体外側からこのX線不透過マーカー22c、26cを視認することによって、体内のステント10の位置を把握することが可能である。また、ふくらみ部22b、26bは、ステント10を抜去するためのスネア等を係合させるための係合部として機能させることもできる。
【0020】
環状単位パターン22、24、26は、複数の接続部32、34により軸方向Zに接続されて円筒形状をなす。接続部32は、環状単位パターン22と環状単位パターン24とを、接続部34は、環状単位パターン24と環状単位パターン26とを、それぞれ接続している。接続部32、34は、環状単位パターン22、24、26における近接する屈曲部同士を接続しており、図1に示す例では、接続部32、34自体も2つの屈曲部を有する略S字形状を有しているが、接続部32、34の形状は特に限定されない。
【0021】
接続部32、34には、脆弱接続部32b、34bと、通常接続部32a、34aの2種類が含まれる。脆弱接続部32b、34bは、接続部32、34における他の部分よりも破断しやすい第1脆弱部32ba、34baを有する接続部32、34である。また、通常接続部32a、34aは、第1脆弱部32ba、34baを有しない接続部32、34である。
【0022】
第1脆弱部32ba、34baは、例えば接続部32、34を構成する線材の断面積が他の部分より小さい部分を形成し、その部分を第1脆弱部32ba、34baとすることにより設けられる。また、第1脆弱部32ba、34baは、接続部32、34における屈曲部分に設けられることが好ましい。図4(a)は第1脆弱部が形成されていない屈曲部分の例を表しており、図4(b)〜図4(e)は、第1脆弱部が形成された屈曲部分の例を表している。図4(b)〜図4(e)に示すように、屈曲部分に第1脆弱部を形成することにより、ステント10の抜去に伴う引張力を接続部32、34が受けた際に、変形応力が第1脆弱部に集中しやすくなり、容易に第1脆弱部を破断させてステント10を円滑に抜去することが可能となる。
【0023】
図1に示す例では、軸方向Zに隣り合う1組の環状単位パターン22、24は、1つの通常接続部32aと、2つの脆弱接続部32bとを含む3つの接続部32によって互いに接続されている。3つの接続部32は、周方向に略120度ずつ位置をずらして、互いに略等間隔に配置されている。軸方向Zに関して隣り合う1組の環状単位パターン22、24を接続する接続部32の数は特に限定されないが、その内訳は、1つの接続部32のみが通常接続部32aであり、残りの全ての接続部32が脆弱接続部32bであることが好ましい。抜去の際、異なる環状単位パターン22、24を構成していた線材20を一続きにして連続的に引き込むために、通常接続部32aは1つ以上必要だが、通常接続部32aが2つ以上あると、抜去時にステント10の円筒形状を大きく崩すことが難しくなり、円滑な抜去が妨げられるおそれがある。
【0024】
また、軸方向Zに隣り合う1組の環状単位パターン24、26についても、1つの通常接続部34aと、2つの脆弱接続部34bとを含む3つの接続部34によって互いに接続されている。3つの接続部34の内訳についても、上述した接続部32と同様のことが言える。
【0025】
ステント10には、第1脆弱部32ba、34baに加えて、第2脆弱部22a、24a、26aが形成されている。第2脆弱部22a、24a、26aは、環状単位パターン22、24、26における他の部分よりも破断しやすい部分であり、各環状単位パターン22、24、26に1か所ずつ形成されている。第2脆弱部22a、24a、26aは、第1脆弱部32ba、34baと同様の理由から、環状単位パターン22、24、26における屈曲部分に設けられることが好ましい。また、第2脆弱部22a、24a、26aは、第1脆弱部32ba、34baと同様に、環状単位パターン22、24、26を構成する線材20の断面積が、他の部分より小さい部分を設けることにより形成される。
【0026】
また、第2脆弱部22a、24a、26aは、各環状単位パターン22、24、26につき、1か所ずつ形成されていることが好ましい。ステント10を抜去する際、各環状単位パターンの環状形状を崩すために、1つの環状単位パターン22、24、26につき第2脆弱部22a、24a、26aを1か所以上形成しておくことが好ましいが、1つの環状単位パターン22、24、26につき第2脆弱部22a、24a、26aを2か所以上形成した場合、抜去時に線材20の一部分が他の線材20と切り離されてしまい、線材20を一続きにして連続的に引き込めなくなるおそれがある。
【0027】
ステント10における環状単位パターン22、24、26を構成する線材20の線径は、0.05〜1mmであることが好ましい。また、線材20が断面長方形の帯状体である場合には、例えば長辺方向の長さが0.1〜1mmであって短辺方向の長さが0.05〜0.5mmであることが好ましく、また、環状単位パターン22、24、26の表面に現れる線材20の面が断面長方形の長辺となるようにすることが好ましい。
【0028】
また、ステント10の外形寸法は、ステント10が留置される体内管腔の大きさによって異なるが、例えば、外径が2〜30mm、内径が1〜29mm、長さが5〜200mmである。また、ステント10を胆管ステントとして用いる場合には、その外形寸法は、外径が5〜20mm、内径が4〜19mm、長さが10〜100mmとすることが好ましい。また、ステント10の外径は、ステント10がステントデリバリー装置などに収容して留置部位まで搬送される際には、ステント10を弾性変形させることなどにより、上述の値の数分の1程度に縮径されて搬送される。
【0029】
本実施形態のステント10の材料は、ニッケルチタン(Ni−Ti)合金、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等の金属である。その中でも特に、Ni−Ti合金のような超弾性合金が好ましい。
【0030】
本実施形態では、ステント10の両端部に位置する環状単位パターン22、26に、ふくらみ部22b、26bを設け、そのふくらみ部22b、26bに、X線不透過マーカー22c、26cを設けたが、他の形態でステント10にX線不透過マーカーを設けてもよい。また、X線不透過マーカーを設けなくともよい。X線不透過マーカーに使用されるX線不透過性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナイリジウム合金、白金、銀、タンタル等が挙げられる。また、X線不透過マーカーは、X線不透過性材料の粉末を含有する樹脂成形物によって構成されていてもよい。X線不透過マーカーに用いられるX線不透過性材料の粉末としては、硫酸バリウム粉末、次炭酸ビスマス粉末、タングステン粉末および上述した金属の粉末等を使用できる。
【0031】
本実施形態のステント10を製造する場合、例えば、まず、ステント10を形成するための材料で形成された円筒体(パイプ)に対して、YAGレーザー、ファイバーレーザー、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、フェムト秒レーザー等を用いたレーザー加工(レーザーカット)をすることによって、図示のような線材20で形成されるパターンの成形を行う。次に、所定の熱処理を行って形状付け(形状記憶)を行う。その後、電界研磨等の研磨を行い、さらに、X線不透過マーカー22c、26cを取り付けることにより、ステント10が製造される。
【0032】
また、このようなステント10は、いわゆるステントデリバリー装置により消化器系体内管腔内の狭窄部等に留置できる。ステントデリバリー装置は、内管と、内管がスライド可能に挿通された外管とを有するカテーテル部を有し、内管の遠位端近傍に設けられたステント配置部にステントを配置して外管の遠位端近傍の内側でステントを縮径させた状態で保持し、カテーテル部の遠位端を目的とする留置部位に導く。この際、カテーテル部は、内管内に挿通され先行して管腔内に挿入されたガイドワイヤに沿って進行され、その遠位端がステントを留置する部位まで導入される。そして、ステント配置部がその留置部位に達したら、カテーテル部の近位端側において外管を内管に対して近位端側にスライドさせることにより、ステントが外管から露出し、その場で拡径され、留置される。
【0033】
さらに、所定期間留置されたステント10、110は、以下のような方法で抜去される。図2は、ステント110の抜去時における使用状態を表す概略斜視図である。また、図3は、ステント110の抜去のされ方を説明した模式展開図である。
【0034】
図2及び図3に示すステント110は、2つの環状単位パターンと隣り合うように配置された環状単位パターン24の数が異なることを除き、図1に示すステント10とほぼ同様の構造を有する。図3に示すように、ステント110は、2つの環状単位パターンと隣り合うように配置された環状単位パターン24を複数有する。ステント110において、軸方向Zに隣り合う1組の環状単位パターン24、24は、1つの通常接続部33aと、2つの脆弱接続部33bとを含む3つの接続部33によって互いに接続されている。なお、接続部33自体の構造は、接続部32、34と同様である。
【0035】
ステント110を抜去する際、図2に示すように、まずステント110の近位端部にあるふくらみ部22bをスネア50で把持し、体外へ連通するカテーテル40のルーメン42にふくらみ部22bを引き込む。この際、ステント110と体内管腔との間には摩擦抵抗が発生するため、スネア50が把持するステント110の近位端部に近い側から、順次、ステント110の第1脆弱部32ba、33ba、34ba及び第2脆弱部22a、24a、26aが破断する。したがって、ステント110は、線材120が通常接続部32a、33a、34aで連結された紐状の形状に変形しながら、図2に示すようにルーメン42内に引き込まれ、体内管腔から抜去される。
【0036】
図3の矢印は、ステント110における脆弱接続部32b、33b、34bの第1脆弱部及び環状単位パターン22、24、26の第2脆弱部22a、24a、26aが破断された状態において、ステント110を構成する線材120がどのように繋がっているかを表したものであり、矢印の先端側が、スネア50によって引き込まれる方向を示している。体内管腔に留置されていたステント110について、近位端側であって図3正面視右端のふくらみ部22bをスネア50で把持してルーメン42内に引き込んだ場合、まず、ふくらみ部22bに最も近い環状単位パターン22の第2脆弱部22aが破断する(図3(1))。
【0037】
ステント110を構成する線材120は、矢印を逆方向に辿ってルーメン42側に引っ張られ、環状単位パターン22と環状単位パターン24とを接続していた2つの脆弱接続部32bの第1脆弱部が破断する(図3(2)及び(3))。次に、環状単位パターン22と環状単位パターン24とを接続する通常接続部32aに近い環状単位パターン24の第2脆弱部24aが破断し(図3(4))、さらに、環状単位パターン24とこれと隣り合う他の環状単位パターン24とを接続していた2つの脆弱接続部33bの第1脆弱部が破断する(図3(5)及び(6))。以降、同様にして、脆弱接続部33b、34bの第1脆弱部及び環状単位パターン24、26の第2脆弱部24a、26aが破断し、ステント110は、それぞれの環状単位パターン22、24、26を構成していた線材120が通常接続部32a、33a、34aで連結された紐状の形状に変形する。
【0038】
図3に示す環状単位パターン24を例にすると、第2脆弱部24a(図3(4))は、所定の環状単位パターン24に対して軸方向の近位端側に接続する通常接続部32aと遠位端側に接続する通常接続部33aとを、その環状単位パターン24に沿って時計回りに移動して結ぶルートと反時計回りに移動して結ぶルートのうち、距離が短い方のルート上に形成されることが好ましい。図3に示す例では、近位端側からみて、通常接続部32aから通常接続部33aへ反時計回り移動するルート上に、第2脆弱部24a(図3(4))が形成されている。これにより、ステント110は、第1脆弱部及び第2脆弱部22a、24a、26aが破断した後に、紐状となった線材120から分岐して、紐状の線材120から側方に延びてしまう分岐部分を短くすることができ、分岐部分が邪魔になり難くなるので、より円滑な抜去が可能となる。なお、図3で説明した破断順序は好ましい一例であり、ステント110と体内組織との癒着状態の影響を受けて破断順序が前後しても問題ない。また、ステント110は、上述したような抜去の際、第1脆弱部及び第2脆弱部22a、24a、26aの一部が、破断されない状態でルーメン42内に引き込まれても問題はない。
【0039】
脆弱接続部32b、33b、34bにおける第1脆弱部の破断荷重は、特に限定されないが、1〜15Nであることが好ましく、2〜5Nであることがさらに好ましい。また、環状単位パターン22、24、26における第2脆弱部22a、24a、26aの破断荷重も特に限定されないが、1〜15Nであることが好ましく、2〜5Nであることがさらに好ましい。第1脆弱部及び第2脆弱部22a、24a、26aの破断荷重が上述の値より小さい場合、ステント110の抜去を望まない場合などにも不意にステント110が破断してしまうおそれがある。また、第1脆弱部及び第2脆弱部22a、24a、26aの破断荷重が上述の値より大きい場合、抜去時にスムーズに破断させることが難しくなる。
【0040】
以上のように、ステント10、110は、第1脆弱部及び第2脆弱部22a、24a、26aが破断されると、線材20、120が一続きにつながった紐状の形状に変形できるため、抜去時の通路となる細いルーメン42などに、容易に引き込むことができる。また、ステント10、110が体内組織と癒着しているような場合でも、ステント10、110を構成する線材20、120が、引き込み方向(近位端)側から一部ずつ、順次体内組織から引き剥がされる態様となるため、円滑な抜去が可能となる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されず、発明の技術的範囲には様々な変形例が含まれる。たとえば、変形例に係るステントの環状単位パターンには、第2脆弱部が形成されていなくてもよい。このようなステントは、抜去時に脆弱接続部の第1脆弱部が破断し、環状の環状単位パターンが通常接続部を介してつながった状態となる。このようなステントも、抜去時において、留置時の円筒形状から大きく変形することが可能であり、円滑な抜去が可能である。
【0042】
また、ステントを抜去する際、ステントの近位端部を把持する器具は上述したスネアに限定されず、鉗子その他の器具を用いても良い。さらに、ステントの環状単位パターンが有する周期的なパターンも、上述したジグザグの三角波状のパターンや蛇行する波型のパターンに限定されず、他の周期的なパターンであっても良い。
【符号の説明】
【0043】
10、110…ステント
20、120…線材
22、24、26…環状単位パターン
22a、24a、26a…第2脆弱部
22b、26b…ふくらみ部
32、33、34…接続部
32a、33a、34a…通常接続部
32b、33b、34b…脆弱接続部
32ba、34ba…第1脆弱部
図1
図2
図3
図4