(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の画像は、前記第二の画像の原画像の濃度に対応して、前記第2の画線の画線高さを異ならせることで階調を有していることを特徴とする請求項1記載の偽造防止形成体。
前記第二の画像は、前記第2の画線が積層されていない少なくとも一部の第1aの画線により前記階調の一部を形成していることを特徴とする請求項2記載の偽造防止形成体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
【0017】
図1(a)は、本発明における偽造防止形成体(以下、「形成体」という。)(S)を示す平面図であり、形成体(S)には、本発明の特徴点となる印刷領域(Z)が基材(1)上の少なくとも一部に形成されている。
図1(b)は、その印刷領域(Z)の拡大図である。
【0018】
本発明の形成体(S)は、例えば、紙幣、パスポート、身分証明書等の貴重印刷物及びキャッシュカード等のカード類であり、
図1(a)は、例としてカードである。形成体(S)は、紙、プラスチックカード等の表面に印刷可能な媒体である基材(1)上における少なくとも一部に印刷領域(Z)を備え、印刷領域(Z)内に、第一の画像(A)及び第二の画像(B)が重複して配置されている。基材(1)は、上質紙、コート紙、プラスティック及び金属等、材質は特に限定されない。形成体(S)は、観察角度の変化により、視認可能となる潜像画像を有している。以下、詳細に構成を説明する。
【0019】
図2(a)は、第一の画像(A)を説明する平面図である。第一の画像(A)は、基材(1)に対して正面から観察した際に視認可能となる図柄のことである。第一の画像(A)は、単位面積当たりの画線面積率を異ならせる事で、一様な模様を形成する背景部(2)と図柄を形成する模様部(3)に区分けされる。
図2(a)においては、模様部(3)は数字と花の図柄としているが、それに限らず文字、マーク、模様等、自由な図柄にすることができる。
【0020】
第一の画像(A)は、一様な模様を形成する背景部(2)により一定の濃度を持って観察される。模様部(3)の部分は、背景部(2)を形成する画線と模様部(3)を形成する画線の双方が観察できるため背景部の濃度より濃くなる。このため、模様部(3)は、一定濃度中の画像の中に濃い模様(
図2(a)においては数字と花の図柄)として観察される。また、説明は省略するが一定濃度中の画像の中に淡い模様として表示することも可能で、その場合には、模様以外の部分(ネガ画像)を図柄として模様部(3)で形成すればよい。以下に各部の詳細について説明する。
【0021】
図2(b)は、
図2(a)における一部の領域(P)の拡大図である。第一の画像(A)の背景部(2)は、第一の方向(X1)に規則的に第一のピッチ(D1)で複数配置された第1aの画線(4a)を有して成る。第一のピッチ(D1)は、印刷方法及び第1aの画線(4a)の画線幅(W1)を考慮し、100μm以上1500μm以下の範囲内で適宜設定される。
【0022】
図3は、画線の一例を示す図である。画線とは、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)及び
図3(d)に示すような、直線、サイン波、三角波、鋸波、矩形波等公知の画線のことである。また、
図3(e)、
図3(f)、
図3(g)、
図3(h)、
図3(i)及び
図3(j)に示すような、円形状、多角形状、文字形状等の画素や、点を、線状に構成したものも、本発明における画線とする。
【0023】
背景部(2)を構成する第1aの画線(4a)は複数配置されているため、
図3(a)のような線幅が一定の直線の場合には、背景部(2)は、一定濃度で観察される。また、
図3(b)や
図3(c)のような曲線の場合には、周期的に画線が密になる部分が発生するため周期的な濃度差がごくわずかであるが感じられる。さらに、
図3(i)や
図3(j)のような意匠性のある画素の場合にも、ごくわずかな濃度差が感じられ一様な模様ではなく、粒状感のある模様が観察される。本発明における一様な模様とは、これらを含め、模様部(3)を区分けして明瞭に観察可能な濃度差である場合を含む。なお、本発明については、画線を
図3(a)に示す直線状の画線として説明する。
【0024】
本発明の形成体(S)は、第一のピッチ(D1)が100μm未満である場合には、一般の印刷方式では印刷画線の再現性に影響を及ぼす恐れがあり、画像を明瞭に視認できなくなるため、好ましくない。
【0025】
反対に、第一のピッチ(D1)が、1500μmを超える場合には、第一の画像(A)及び、後述する第二の画像(B)のディテール(細部)を構成できないため、好ましくない。
【0026】
なお、
図2(b)では、第一のピッチ(D1)を一定ピッチで図示しているが、前述したピッチの範囲内であれば、一部異なるピッチとすることも可能である。
【0027】
また、第1aの画線(4a)の画線幅(W1)については、背景部(2)で表現する一様な濃度によって画線面積率は変動するため、適宜設定すればよい。背景部(2)の濃度を大きくする、つまり単位面積当たりの画線面積率を大きくすると、後述する模様部(3)の階調表現に影響し、第一の画像(A)の視認性を阻害する恐れがあるため、背景部(2)の単位面積当たりの画線面積率は、多くとも80%以下が好ましい。
【0028】
また、背景部(2)の濃度を小さくする、つまり単位面積当たりの画線面積率を小さくすると、後述する第二の画像(B)を観察する際に、所望の明度上昇が得られず、第二の画像(B)の視認性を阻害する恐れがあるため、背景部(2)の単位面積当たりの画線面積率は、少なくとも30%以上が好ましい。
【0029】
例えば、背景部(2)の単位面積当たりの画線面積率を40%としたい場合、第一のピッチ(D1)を1000μmに設定した際には、画線幅(W1)は400μmにする。また、第一のピッチ(D1)を500μmに設定した場合には、画線幅(W1)は200μmとすればよい。
【0030】
また、第1aの画線(4a)の画線高さ(h1)については印刷方式によって異なる。例えば、一般のオフセット印刷の場合には、1〜2μm程度であり、一方、インキ盛りのあるスクリーン印刷方式では20μm以上になることもある。本発明においては、後述する第二の画像(B)を観察する際に画像の視認性に影響を与えないよう、なるべく小さいほうがよく、10μm以下で形成することがさらに好ましい。
【0031】
次に、第一の画像(A)の模様部(3)について説明する。
図2(b)において、第一の画像(A)の模様部(3)は、背景部(2)を形成する第1aの画線(4a)の間に第1bの画線(4b)を複数配置することで、単位面積当たりの画線面積率に差が生じることで数字と花の図柄が視認される。本発明においては、第1bの画線(4b)の配置位置やピッチ(D2)に制約はなく、第1aの画線(4a)が形成されていない基材上に形成されていればよい。
【0032】
本発明における「画線面積率」とは、基材(1)の一定の面積の中に画線の面積が占める割合をいう。
図4(a)に示すとおり、背景部(2)を形成する第1aの画線(4a)の間に第1bの画線(4b)を複数配置することで、点線で囲んだ四角内の画線面積率を異ならせている。
【0033】
画線面積率を異ならせる方法としては、例えば、第1bの画線(4b)が、複数の第1aの画線(4a)の中間に配置されている場合(
図4(a))、第1aの画線(4a)に接して配置されている場合(
図4(b))、第1aの画線(4a)に近接して配置されている場合(
図4(c))、第1aの画線(4a)の両側に接して配置されている場合(
図4(d))、さらには、ランダムに配置されている場合(
図4(e))など、任意に配置すればよい。
【0034】
また、
図2においては、第1bの画線(4b)は、一定の長さの直線で図柄を表現しているが、直線に限らず、
図3を用いて説明したとおり、第1aの画線(4a)と同様の画線を用いて模様を表現してもよい。また、一般的な印刷で使用される網点面積率を変化させる方法を用い、景色や顔画像など、階調のある模様を表現してもよい。
【0035】
例えば、第1bの画線(4b)が図柄に応じた一定の長さの直線である場合(
図5(a)はポジ画像、
図5(b)はネガ画像を表現)、第1bの画線(4b)の画線幅を図柄に応じて変化させた場合(
図5(c))、第1bの画線(4b)の画線幅を図柄に応じて連続的に変化させた場合(
図5(d))、第1bの画線(4b)を図柄に応じて画線面積を調整した場合(
図5(e))、第1bの画線(4b)を図柄に応じて配置密度を調整した場合(
図5(f))など、任意の階調表現方法を用いればよい。
【0036】
図2(c)は、
図2(b)におけるX−X’を切断した断面図である。第1bの画線(4b)の画線幅(W2)及び画線高さ(h2)は、第一のピッチ(D1)及び他の画線の画線幅を考慮し、画線幅(W2)は30μm〜1200μm、画線高さ(h2)は10μm以下の範囲内で適宜設定される。
【0037】
第1bの画線(4b)の画線幅(W2)を30μm未満とした場合、一般の印刷方式では印刷画線の再現性に影響を及ぼす恐れがあり、画像を明瞭に視認できなくなるため、好ましくない。また、後述するが、第二の画像(B)を形成する際にも画像品質に影響を与えるため好ましくない。
【0038】
反対に、第1bの画線(4b)の画線幅(W2)が1200μmを超える場合、第一の画像(A)及び、後述する第二の画像(B)のディテール(細部)を構成できないため、好ましくない。
【0039】
また、第1bの画線(4b)の画線幅(W2)は、第1aの画線(4a)の画線幅(W1)以下の範囲で適宜設定するのが好ましい。第1bの画線(4b)の画線幅(W2)の方が大きい場合、後述する正反射光下における明暗フリップフロップ性による第一の画像(A)の消失効果が得られず、その結果、観察角度の変化による明瞭な画像のスイッチ効果が得られない可能性があり好ましくない。
【0040】
第1bの画線(4b)の画線高さ(h2)が20μmを超える場合は、後述する第二の画像(B)を観察する際に画像の視認性に影響を与えるため、好ましくない。
【0041】
第1aの画線(4a)及び第1bの画線(4b)(以下、第1の画線(4)とする)は、基材(1)に対して、公知の印刷方法、例えば、平版印刷、凹版印刷、インクジェット・プリンタ等によって、各々の印刷方法に適した版面、インキ等を用いて印刷を行うことで形成する。
【0042】
拡散反射光下における第1の画線(4)の色は、特に限定するものではないが、基材(1)の表面色と明確に区別できる色が好ましい。例えば、基材(1)の表面色が白色、クリーム色等、明度の高い色とし、第1の画線(4)をイエローのように明度の高い色材により形成した場合、基材(1)の表面色及び第1の画線(4)は区別しづらいことから、好ましくない。また、後述するように、正反射光下と拡散反射光下とで明度差が大きい方が第二の画像(B)の視認性が高くなるため、第1の画線(4)の色は、拡散反射光下の明度が高い色は好ましくない。
【0043】
第1の画線(4)は、正反射光下での明度が拡散反射光下での明度よりも高い必要がある。これは、正反射光下において、第1の画線(4)の明度が高くなることで、第一の画像(A)の背景部(2)と模様部(3)が区分けされず、一様な模様として視認されるためである。
【0044】
つまり、第1の画線(4)は、明暗フリップフロップ性を備えていることが必要である。この明暗フリップフロップ性を備えていないと、拡散反射光下において観察できる第一の画像(A)の模様部(3)が、正反射光下において背景部(2)と同様の一様な模様として観察される、という画像の消失効果が低くなるため、拡散反射光下と正反射光下において画像が明瞭に切り替わる画像のスイッチ効果が失われる可能性があり、好ましくない。
【0045】
なお、第1aの画線(4a)と第1bの画線(4b)については、色相が異なっていてもよい。これは、各画線の色相が異なる場合にも、明暗フリップフロップ性を備えていれば、明度が上昇することにより色相差が感じられ難くなり、正反射光下における画像の消失効果が得られるためである。したがって、色相を異ならせる場合は、色相差が小さい方が正反射光下における画像の消失効果が得られやすい。また、正反射光下における明度上昇が大きいほど消失効果が得られやすい。
【0046】
本発明でいう「明暗フリップフロップ性」とは、拡散反射光下と正反射光下において、色調はほとんど変化せず、明度のみが変化する特性のことをいう。また「正反射光下において明度が上昇する状態」とは、入射した光が印刷画線上で強く反射する状態を指し、画線表面の平滑性や顔料の反射特性に大きく依存する。例えば、ワニス成分が平滑に定着するようなインキを使用することで、画線表面の平滑性が高くなり大きな明度上昇を生じさせる。また、アルミ顔料などの光輝性材料を含むインキについても、正反射光下では効率よく光を反射するため大きな明度上昇が生じる。
【0047】
なお、本発明においては、第1の画線(4)は画線表面が平滑であることにより光沢を生じることで明暗フリップフロップ性を有している。本発明における「画線表面が平滑である」とは、画線が顔料の反射特性に依存せず表面の平滑性に起因する光沢を有している状態のことを指し、具体的には、JIS Z8741で規定されている鏡面光沢度の測定方法において、入射角が60度(GS(60°))で測定した場合の光沢値が10以上ある状態のことを指す。この光沢値については表1において詳細に説明する。
【0048】
【表1】
(○:消失効果あり、△:消失効果は低い、×:消失効果なし)
【0049】
図2に示す第一の画像(A)について、画線の平滑性が異なるサンプルを五種類作製した。第1aの画線(4a)は、画線幅(W1)210μmの直線状とし、第一のピッチ(D1)を460μmとして形成した。画線高さ(h1)についてはサンプルによって異なり、1〜10μmの範囲とした。第1bの画線(4b)は、画線幅60μmで第1aの画線(4a)に隣接するように配置し、数字と花の模様を形成した。また、第1の画線(4)を形成する色材は黒色の色材を使用した。
【0050】
第1aの画線(4a)及び第1bの画線(4b)で形成された第一の画像(A)の光沢を測定した結果及び画像の消失効果は表1に示すとおりである。測定には、光沢計(BYKガートナー社製マイクログロス、測定は入射角60°)を使用した。
【0051】
表1に示すように、サンプル1については光沢値が低く、第二の観察角度(E2)における画像の消失効果は得られなかった。また、サンプル2については、画像の消失効果が低く、わずかながら第一の画像(A)の濃淡が感じられたため、好ましくない。また、サンプル3、4及び5については、画像の消失効果が得られ、第二の観察角度(E2)において一様な模様として観察することができた。したがって、本発明では光沢値が10以上あると、満足のいく画像の消失効果が得られる。
【0052】
本発明における「明度」とは、色が持つ明るさ及び暗さの度合いのことで、明度が高いとは、明るい色味であることを示す。なお、正反射光下と拡散反射光下における第1の画線(4)の明度差は、10以上であることが好ましい。正反射光下と拡散反射光下での明度差の測定には、例えば、試料に対して光源及び受光器の角度を変化させることのできる変角分光光度計を用いればよい。明度差が10以下の場合には、正反射光下と拡散反射光下の色差が感じられ難くなるため、第二の画像(B)の視認性に影響し、好ましくない。
【0053】
なお、本発明でいう「正反射」とは、物質に、ある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と略等しい角度に強い反射光が生じる現象を指し、「拡散反射」とは、物質に、ある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と異なる角度に弱い反射光が生じる現象を指す。虹彩色パールインキを例とすると、拡散反射光下においては無色透明に見えるが、正反射光下では特定の干渉色を発する。
【0054】
なお、本発明でいう「拡散反射光下で観察する」とは、
図6(a)に示すように、印刷物に入射した光の角度と大きく異なる角度で観察する状態を指し、観察者は印刷物の真上から観察する状態、又は観察角度の小さい状態を指す。また、「正反射光下で観察する」とは、
図6(b)に示すように、印刷物に入射した光(光源L)の角度と略等しい反射角度に視点をおいて観察する状態を指す。なお、入射光の角度に限定はないが、明度上昇も大きく画線高さによる陰影効果も大きくなることから45°以上で観察することが、第二の画像(B)を観察する状態として適している。また、これ以降、
図6(a)の拡散反射光下で観察する状態を第一の観察角度(E1)で観察する、
図6(b)の正反射光下で観察する状態を第二の観察角度(E2)で観察すると表記する。
【0055】
次に、第一の画像(A)の上に重ねて形成する第二の画像(B)について説明する。
図7(a)は、第二の画像(B)を説明する平面図である。第二の画像(B)は、基材(1)に対して第二の観察角度(E2)で観察した際に視認可能となる画像のことである。なお、
図7(a)においては、数字の図柄としているが、それに限らず文字、図形、模様等、の図柄にすることが可能である。
【0056】
図7(b)は、
図7(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、そのX−X’線における断面図が
図7(c)である。さらに、
図7(c)のY−Y’線における断面図が
図7(d)となっている。なお、
図7(b)、
図7(c)、
図7(d)については、第2の画線(5)の積層状態を示すために、第1の画線(4)を点線で図示する。
【0057】
第二の画像(B)は、盛り上がりを有する第2の画線(5)が、第1の画線(4)を配置した方向と同じ第一の方向(X1)に第三のピッチ(D3)で規則的に複数配置されて成る。
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)に示すように、第2の画線(5)は、第1aの画線(4a)の上に積層される。第2の画線(5)を第1bの画線(4b)上に積層することも可能であるが、この場合、第二の観察角度(E2)において確認した際に、後述する第1aの画線(4a)上に配置した第2の画線(5)の陰影効果により、第1bの画線(4b)上に配置した第2の画線(5)は視認できない可能性があるため、好ましくない。
【0058】
前述のとおり、第2の画線(5)は、第1aの画線(4a)上に形成されるため、配置する第三のピッチ(D3)は、第一のピッチ(D1)の整数倍に適宜設定される。以下、第三のピッチ(D3)は、第一のピッチ(D1)と、同じピッチとして説明する。
【0059】
第2の画線(5)の画線幅(W3)は、第1aの画線(4a)の画線幅(W1)以下の範囲内で適宜設定する。第2の画線(5)の画線幅(W3)が、下に配置する第1aの画線(4a)の画線幅(W1)を超える場合、第2の画線(5)が基材上に形成されることとなり、第二の画像(B)が第一の画像(A)と混合された画像として視認されるため、好ましくない。
【0060】
盛り上がりを有する第2の画線(5)の画線高さ(h3)は、10〜150μmの範囲内で適宜設定される。
【0061】
第2の画線(5)の画線高さ(h3)が10μm未満の場合は、第二の観察角度(E2)で観察した場合に陰影効果が得られ難く、第二の画像(B)の視認性に影響し好ましくない。
【0062】
第2の画線(5)の画線高さ(h3)が150μmを超える場合は、第二の観察角度(E2)で観察した場合の視認性はよくなるが、画線ヨレや欠け等の耐久性が悪くなる恐れがあり、好ましくない。
【0063】
盛り上がりを有する第2の画線(5)は、基材(1)上に、発泡インキ等の盛り上げ材をインキとして用いて平版印刷及び凸版印刷を行うことで形成する。また、他の形成方法としては、凹版印刷及び孔版印刷、又は、盛り上がりを有する画線を印刷可能なインクジェット・プリンタにより形成する。
【0064】
本発明においては、第一の観察角度(E1)では第二の画像(B)は視認できず、第一の画像(A)のみが視認できる状態である。そこで、第1の画線(4)と第2の画線(5)を形成する色材について説明する。
【0065】
前述のとおり、第一の観察角度(E1)においては、第1aの画線(4a)上に積層された第2の画線(5)を視認できない状態にするため、これらの画線に用いる色材は色相が同じであり、第2の画線(5)を形成する色材は、第1aの画線(4a)を形成する色材よりも光透過性が高く、第一の観察角度(E1)における第2の画線(5)の明度が第1aの画線(4a)を形成する色材の明度以上であることが条件となる。
【0066】
例えば、第1aの画線(4a)が青色の色材で形成されている場合には、第2の画線(5)は、第1aの画線(4a)よりも明度が高く光透過性を有する青色の色材で形成すればよく、この場合には、第一の観察角度(E1)で観察すると、第2の画線(5)の青色は、第1aの画線(4a)の青色に透過吸収されて第2の画線(5)が視認できない状態となる。
【0067】
ただし、第1aの画線(4a)の明度が低く、光透過性が極端に低い(隠蔽作用が高いため、積層した場合にも膜厚に影響されず濃度が一定になる)場合には、第2の画線(5)の色材は第1aの画線(4a)と同じ色材を用いても、第一の観察角度(E1)では第2の画線(5)は視認できない状態となる。例えば、第1aの画線(4a)について隠蔽作用が高い黒い色材を用いた場合、第2の画線(5)には同じ黒い色材を用いても、第一の観察角度(E1)では、第2の画線(5)は視認できない。
【0068】
また、第2の画線(5)について極端に明度及び光透過性が高い色材(半透明であるため、積層した場合にも濃度が低い状態になる)の場合には、第1aの画線(4a)と色相の異なる色材(例えば、薄青や薄黄、薄赤など)を用いても、第一の観察角度(E1)で観察した場合は、第1aの画線(4a)の色材に透過吸収されて、第2の画像は観察できない状態となる。なお、色の組み合せは、第1aの画線(4a)上の第2の画線(5)が視認できない色の組み合せであれば、特に限定はない。
【0069】
なお、本発明における「光透過性」とは、照射した光(可視光)が画線を形成する色材を通過する性質のことを指し、本発明における「光透過性が高い」とは、基材上に基材と異なる色の色材を用いて印刷した際に、色材が光を透過することにより下層にある基材色が観察される性質のことをいう。また、「光透過性が低い」とは、基材上に基材と異なる色の色材を用いて印刷した際に、色材が光を吸収することにより、下層の基材ではなく色材の色が観察されることをいう。
【0070】
なお、本発明における「透過吸収」とは、光透過性の高い色材の下に、より明度の低い色材を形成し、その二つの色材が積層された部分を第一の観察角度(E1)から視認した場合に、明度の低い色材により、光透過性の高い色材が識別不可能又は困難な状態となることをいう。
【0071】
第二の観察角度(E2)においては、第2の画線(5)の明度は、第1aの画線(4a)の明度よりも低い必要がある。これは、第二の観察角度(E2)における各画線の明度差により、第二の画像(B)を視認させるためである。第二の画像(B)を視認するためには、第1aの画線(4a)と第2の画線(5)が区分けして視認できればよく、そのための明度差は10以上あればよい。さらに、第2の画線(5)は高さを有しているため、傾斜時の陰影効果により明度はさらに低く感じられる。そのため、第二の観察角度(E2)における観察時には、陰影効果と光反射特性による明度差の双方の作用により、第二の画像(B)が視認できることになる。
【0072】
なお、本発明でいう「陰影効果」について
図8を用いて説明する。
図8(a)は第一の観察角度(E1)で本発明の偽造防止形成体(S)を観察した場合を示す図である。説明の都合上、第1aの画線(4a)と第2の画線(5)は異なる色で表示しているが、実際は第一の観察角度(E1)で観察した場合は、各画線は区別して観察できない。第1aの画線(4a)上に第2の画線(5)が積層されている部分の断面図(X−X’断面図)を
図8(b)に、第1aの画線(4a)上に第2の画線(5)が積層されていない部分の断面図(Y−Y’断面図)を
図8(c)に示す。
【0073】
図示のとおり、第2の画線(5)が高さを有しているため、第二の観察角度(E2)で観察した場合には、第2の画線(5)の視認できる表面積が増え、さらに、下層にある基材及び第1bの画線(4b)を隠蔽することにより、第2の画線(5)部分が濃く観察される。この効果を本発明では「陰影効果」と呼ぶことにする。
図8(d)に第二の観察角度(E2)で観察した場合の模式図を示す。第二の観察角度(E2)で観察した場合、第2の画線(5)が積層されている部分は濃く(暗く)観察され、積層されていない部分は前述のとおり、明度が上昇することにより、明るく観察される。
【0074】
図9(a)は、基材(1)に対する第一の画像(A)及び第二の画像(B)の積層順を示す模式図である。
図9(a)に示すように、基材(1)上における印刷領域(Z)内に、第一の画像(A)が形成され、第一の画像(A)の上に第二の画像(B)が重なって形成される。
【0075】
なお、第一の画像(A)及び第二の画像(B)が重なるとは、あくまでも画像同士が重なるという意味であって、各画像を構成する画線同士が全て重なるという意味ではない。
【0076】
図9(b)は、
図9(a)における一部の領域(P)の拡大図を示す模式図であり、
図9(c)は、
図9(b)におけるX−X’を切断した断面図である。なお、
図9(b)は、基材(1)上に全ての画像(A、B)が積層された状態を示す。
【0077】
図9(b)及び
図9(c)に示すように、第二の画像(B)を形成する第2の画線(5)は、第一の画像(A)を形成する第1aの画線(4a)の画線幅以下で、第1aの画線(4a)上に積層して配置されている。
【0078】
次に、以上の構成から成る形成体(S)の視認状態について説明する。
図10(a)は、形成体(S)を、基材(1)に対して第一の観察角度(E1)において観察した際の模式図であり、
図10(b)は、
図10(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、
図10(c)は、
図10(b)におけるX−X’を切断した断面図である。
【0079】
なお、形成体(S)に対する第一の観察角度(E1)における観察角度と、基材(1)に対する第一の観察角度(E1)における観察角度は、同一であることから、以下、基材(1)は省略し、形成体(S)を第一の観察角度(E1)において観察したとし、他の観察角度も同様とする。
【0080】
第1の画線(4)を形成する色材は、積層して配置する第2の画線(5)を形成する色材よりも明度及び光透過性が低く、第1aの画線(4a)の画線幅(W1)は、第2の画線(5)の画線幅(W3)以上であるため、第一の観察角度(E1)において観察した場合、第1の画線(4)が視認可能となり第一の画像(A)が視認される。
【0081】
つまり、下層に形成した第1aの画線(4a)により、上層に形成した第2の画線(5)の色が透過吸収され、二つの画線を肉眼で区別して視認することが不可能となり、下層に配置した複数の第1の画線(4)から成る第一の画像(A)が視認される。
【0082】
以上、形成体(S)を第一の観察角度(E1)において観察した場合、
図10(a)に示すように、単位面積当たりの画線面積率の差により、第一の画像(A)が視認可能となる。
【0083】
次に、形成体(S)を第二の観察角度(E2)において観察した場合について説明する。
図11(a)は、形成体(S)を第二の観察角度(E2)において観察した際の模式図であり、
図11(b)は、
図11(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、
図11(c)は、
図11(b)におけるX−X’を切断した断面図であり、
図11(d)は、
図11(c)におけるY−Y’を切断した断面図である。
【0084】
図11(c)に示すように、形成体(S)を第二の観察角度(E2)において観察した場合、明暗フリップフロップ性を有する第1の画線(4)は、背景部(2)と模様部(3)が一様な模様として視認されるため均一化した明るい画像となる。一方、第2の画線(5)により形成された部分については、第1の画線(4)で形成された部分との明度差が生じるため、第二の観察角度(E2)においては複数の第2の画線(5)から成る第二の画像(B)が視認される。
【0085】
以上の明度差による効果に加え、第2の画線(5)は、
図7(d)に示すように、盛り上がりを有して第1aの画線(4a)上に積層して配置されることから、下層にある基材(1)及び第1bの画線(4b)の一部は、第2の画線(5)によって隠蔽されて、第2の画線(5)の色相で視認され、複数の第2の画線(5)から成る第二の画像(B)が視認される。
【0086】
よって、形成体(S)を第二の観察角度(E2)において観察した場合、
図11(a)に示すように、明度差による効果と陰影効果の二つの効果により、よりコントラストが明瞭な第二の画像(B)が視認される。
【0087】
以上、本発明の形成体(S)は、観察角度の変化による、各画線の明度差と陰影効果を利用することで、第一の画像(A)と第二の画像(B)が切り替って視認される。第一の画像(A)と第二の画像(B)は、多層構成とすることで、互いに異なる色及び形状とすることが可能となり、意匠性に優れている。よって、本発明の形成体(S)は、目視により、容易に、形成体(S)の真偽を判定することが可能となるだけではなく、従来よりも、意匠性に優れた潜像画像が付与された形成体(S)となる。
【0088】
前述したとおり、第一の画像(A)は、単位面積当たりの画線面積率を異ならせる事で階調を付与することができるが、第二の画像(B)においては、第2の画線(5)の画線高さ(h3)を異ならせることで階調を付与することができる。この第2の画線(5)のどの位置を、どの程度の高さにするかは、形成したい第二の画像(B)の原画像の濃度に対応して配置すればよい。
【0089】
さらに、第二の画像(B)の階調幅をより広くするためには、第2の画線(5)の画線高さ(h3)だけでなく、第1aの画線(4a)の明暗フリップフロップ性による明度差を利用することもできる。
【0090】
例えば、
図12(a)では第二の画像(B)を女性の画像としているが、この女性の画像について、髪の部分と鼻の影部分のように、濃度に違いがある部分は、第2の画線(5)の画線高さ(h3)を異ならせる。さらに、女性の画像の中で最も濃度が淡い肌の部分は、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)により形成する。
【0091】
この画像を第二の観察角度(E2)において観察すると、第2の画線(5)の画線高さ(h3)が異なる部分については、第2の画線(5)の陰影効果による濃度にも違いが生じ、画線高さ(h3)が高い部分の方が濃度が濃く視認される。
【0092】
また、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)により形成された部分は、第1aの画線(4a)の明暗フリップフロップ性により明度が高くなり、さらに、第2の画線(5)が積層された部分は、第2の画線(5)の陰影効果により濃度が濃く見えるため、従来よりもコントラストの高い潜像画像が視認できる。
【0093】
つまり、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)により形成される部分と、第1aの画線(4a)の上に第2の画線(5)を積層する部分及び第2の画線(5)の画線高さ(h3)については、形成したい第二の画像(B)の原画像の濃度に対応させて適宜設定することとする。
【0094】
本発明における「第二の画像(B)の原画像の濃度に対応」とは、形成する第二の画像(B)が階調を有している場合には画像内に濃度差が生じているため、その濃度差に合わせて、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)により形成する部分、第2の画線(5)により形成される部分、及び、第2の画線(5)の画線高さ(h3)を決定することをいう。つまり、第二の画像(B)の濃度が淡い位置については第1aの画線(4a)に第2の画線(5)を積層しない、又は、第2の画線(5)の画線高さ(h3)を低くし、逆に濃度が濃い位置では第2の画線(5)の画線高さ(h3)を高くする。
【0095】
形成体(S)の変形例について説明する。
図12は、変形例における第二の画像(B)を説明する平面図である。なお、
図12(a)においては、第二の画像(B)のみを示しており、コンピュータグラフィックスを用いて作成した女性の画像としているが、それに限らず風景、模様等、階調を有する画像とすることが可能である。
【0096】
図12(b)は、
図12(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、そのX−X’線における断面図が
図12(c)である。さらに、
図12(c)のY−Y’線における断面図が
図12(d)となっている。なお、
図12(b)、
図12(c)、
図12(d)については、第2の画線(5)の積層状態を示すために、第1の画線(4)を点線で図示する。また、前述した形成体(S)と重複する部分については、説明を一部省略する。
【0097】
図12(c)及び
図12(d)に示すように、第二の画像(B)の濃度に対応して、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)のみで形成される部分と、第1aの画線(4a)の上に第2の画線(5)が積層される部分が存在する。また、第二の画像(B)の濃度が濃い位置では、第2の画線(5)の画線高さ(h3)は高く、逆に第二の画像(B)の濃度が淡い位置では、第2の画線(5)の画線高さ(h3)は低くなっている。
【0098】
第二の画像(B)の階調を表現する第2の画線(5)の画線高さ(h3)については、前述した形成体(S)と同様に、150μm以下で設定することが好ましい。
【0099】
また、第2の画線(5)を複数積層させることで、画線高さ(h3)を変更することも可能である。具体的には、画像の濃度が濃い位置は、第2の画線(5)の積層数を多くして総合の画線高さ(Th)を高くし、逆に第二の画像(B)の濃度が淡い位置は、第2の画線(5)の積層数を少なくして、総合の画線高さ(Th)を低くする。
【0100】
図13を用いて詳しく説明する。
図13(a)は、形成体(S)を第二の観察角度(E2)において観察した際の模式図である。
図13(b)は、
図13(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、そのX−X’線における断面図を
図13(c)及び
図13(d)に示す。第2の画線(5)が単層の場合は、
図13(c)に示すとおりである。第二の観察角度(E2)で観察した場合、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)により形成された部分は第1aの画線(4a)の明暗フリップフロップ性により明度が高くなり、第2の画線(5)が積層された部分については、第2の画線(5)による陰影効果により濃度が濃く観察される。また、第2の画線(5)の画線高さ(h3)が異なることで、第2の画線(5)の画線高さ(h3)が高い方が濃度が濃く、第2の画線(5)の画線高さ(h3)が低い方が濃度が低く観察されるため、階調のある第二の画像(B)が観察される。
【0101】
第2の画線(5)の積層数が異なる場合は、
図13(d)に示すとおりであり、基材(1)に積層されている第1aの画線(4a)の上に第2の画線(5)が複数積層されることとなる。第1aの画線(4a)側から順に積層されている画線を、第2−1の画線(5−1)、第2−2の画線(5−2)、・・・、第2−(n−1)の画線(5−(n−1))及び第2−nの画線(5−n)という(nは3以上の整数)。なお、それぞれの第2の画線(5−1〜5−n)の画線高さについては、同じでも異なっていてもよい。
【0102】
階調を付与するために複数積層される第2の画線(5)については、最下層に配置されている第2−1の画線(5−1)が第2の画線(5)の中では最も画線幅(W2)が広く、その上に順次積層される第2−2の画線(5−2)から第2−nの画線(5−n)の画線の画線幅(W2)は、それぞれの画線の下層に配置される画線の画線幅(W2)以下となる。このように形成することで、積層して形成する画線が、下層の画線からはみ出すことなく積層可能であり、基材(1)に対して正面から観察した際に視認可能となる図柄の第一の画像(A)に影響を与えない。
【0103】
階調を付与するために複数積層される第2の画線(5−1〜5−n)のそれぞれの画線高さ(h3)は、第三のピッチ(D3)と、第1aの画線(4a)及び第2の画線(5)の画線幅及び画線高さを考慮し、第2の画線(5)と同様に、画線高さ(h3)は、1〜150μmの範囲内で適宜設定され、総合の画線高さ(Th)は、150μm以下とする。
【0104】
階調を付与するために複数積層される第2の画線(5−1〜5−n)の色材は、前述の実施形態の場合と同様であり、第一の観察角度(E1)で観察した場合に区分けして観察できない状態でなければならない。さらには、積層ごとに下層の色材より明度及び光透過性が高い色材を用いる方が区分けして観察し難くなり好ましい。また、第1aの画線(4a)の色材の明度が低く光透過性も極端に低い場合には、前述のとおり、同じ色材を用いて積層しても区分けして観察し難いため、第1aの画線(4a)と同一の色材を用いてもよい。
【0105】
このように、第2の画線(5)を複数積層させた場合にも、形成体(S)を第二の観察角度(E2)で観察すると、陰影効果により総合の画線高さ(Th)に比例して第2の画線(5)の濃度も高く観察される。
【0106】
前述したとおり、第2の画線(5)の画線高さ(h3)及び/又は総合の画線高さ(Th)の違い、また、第1aの画線(4a)の明暗フリップフロップ性による明度差を利用することで、第二の画像(B)に階調を付与することが可能であるため、観察角度の変化による画像のチェンジ効果に加えて、より高い意匠性を持たせることが可能である。
【実施例1】
【0107】
以下、実施例1を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。実施例1として、
図1に示した二層構成の形成体(S)を作製した。基材(1)は、印刷用コート紙とした。
【0108】
第1aの画線(4a)は、画線幅(W1)210μm、画線高さ(h1)5μmの直線状とし、第一のピッチ(D1)を460μmとして形成した。第1bの画線(4b)は、画線幅60μmで第1aの画線(4a)に隣接するように配置し、数字と花の模様を形成した。また、第1の画線(4)を形成する色材は黒色(東洋インキ製造株式会社製LiojetFV03Black)であり、第一の観察角度(E1)及び第二の観察角度(E2)での明度差は、120(変角分光光度計(GSP−2型:株式会社村上色彩技術研究所製)で測定、測定条件は入射角0°受光角45°及び入射角45°受光角45°)であった。
【0109】
盛り上がりを有する第2の画線(5)は、画線幅(W3)160m、画線高さ(h3)50μmの直線状とし、第三のピッチ(D3)を460μmとして形成した。また、第2の画線(5)を形成する色材も第1の画線(4)を形成した色材と同じ黒色(東洋インキ製造株式会社製LiojetFV03Black)であり、第二の観察角度(E2)における第1の画線(4)との明度差は、28(変角分光光度計(GSP−2型:株式会社村上色彩技術研究所製)で測定、測定条件は入射角0°受光角45°及び入射角45°受光角45°)であった。
【0110】
第1の画線(4)及び第2の画線(5)は、基材(1)上に、二つの色材を用いてUVインクジェット・プリンタ(トライテック社製「Patterning JET」)により印刷することで形成した。
【0111】
実施例1で作製した形成体(S)を、第一の観察角度(E1)において観察したところ、第一の画像(A)である数字「123」と花の図柄が黒色で視認できた。次に、形成体(S)を第二の観察角度(E2)において観察したところ、第二の画像(B)である数字「456」の図柄が黒色で視認できた。
【実施例2】
【0112】
実施例2として、実施例1の第二の画像(B)が、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)及び階調に応じた画線高さ(h3)を有する第2の画線(5)により構成される形成体(S)を作製した。以下、実施例1と異なる部分についてのみ記載する。
【0113】
第1の画線(4)は、実施例1と同様の構成を用いて形成し、第二の画像(B)の原画像の濃度に対応して、第2の画線(5)が積層されていない第1aの画線(4a)で形成する部分と、第1aの画線(4a)上に第2の画線(5)を積層させる部分を決定する。また、盛り上がりを有する第2の画線(5)は、第二の画像(B)の原画像の濃度に対応して第2−1の画線(5−1)を画線幅(W31)160μm、第2−2の画線(5−2)を画線幅(W32)140μm、第2−3の画線(5−3)を画線幅(W33)120μm、第2−4の画線(5−4)を画線幅(W34)100μmでそれぞれ画線高さ(h3)20μmの直線状とし、第三のピッチ(D3)を460μmとして形成した。また、第2の画線(5)を形成する色材は黒色(東洋インキ製造株式会社製LiojetFV03Black)とし、第二の観察角度(E2)における第1の画線(4)と第2−4の画線(5−4)部分との明度差は、35(変角分光光度計(GSP−2型:株式会社村上色彩技術研究所製)で測定)であった。
【0114】
実施例2で作製した形成体(S)を、第一の観察角度(E1)において観察したところ、第一の画像(A)である数字「123」と花の図柄が黒色で視認できた。次に、形成体(S)を第二の観察角度(E2)において観察したところ、第二の画像(B)である階調のある女性の図柄が黒色で観察できた。
【0115】
以上、本発明に係る実施例に基づいて実施の形態を説明したが、上記実施例に限定されることなく特許請求の範囲記載の技術思想の範囲内で、さらにいろいろな実施例があることはいうまでもない。