(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0016】
図1に、本発明における積層型視覚効果発現構造物(以下、「構造物」という。)(1)が形成された商品券(G)を示す。本実施の形態では、構造物(1)が紙基材(2)の一部に形成されている商品券(G)の例で説明するが、これに限定されるものではない。なお、この基材(2)については、構造物(1)を形成することができれば、紙、プラスチック等を用いることができ、その材質は問わない。また、基材(2)自体をカード等に使われるPETフィルムを用いて、後述する第一の画像(4)を形成しても良い。
図1に示したような、基材(2)上に構造物(1)を形成する場合には、構造物(1)は、基材(2)と異なる色彩を有している必要があるが、基材(2)と異なる色で、かつ、透明以外の色彩であれば何色でも良く、色彩の制約はない。また、基材(2)の大きさについても制限はない。
【0017】
図2に、本発明の構造物(1)の構成の概要を示す。構造物(1)は、第一の画像(4)、第二の画像(5)、第三の画像(6)が重ね合わさった印刷画像(3)から成る。また、
図3に第一の画像(4)、第二の画像(5)、第三の画像(6)の積層順序を示す。
図3(a)に示すように、第一の画像(4)、第一の画像(4)の上に第二の画像(5)、第二の画像(5)の上に第三の画像(6)が重なる層構造となっている。また、
図3(b)は、構造物(1)を基材(2)の上に形成した場合を示している。
【0018】
まず、第一の画像(4)について説明する。
図4は、第一の画像(4)を示す図である。第一の画像(4)は、第1の色の第1aの画線(7a)と第2の色の第1bの画線(7b)から成る第1の画線(7)が、第1の方向(S1)に第1のピッチ(P1)で万線状に配置された第1の画線群(8)から形成されている。したがって、第一の画像(4)は、第1の画線群(8)の輪郭により、第一の画像(4)の輪郭が形成されていることとなる。なお、本発明では、各々の画像を構成する各画線が複数規則的に配置されている状態を「万線状に配置」という。第1の色と第2の色は異なる色である。
【0019】
第1の画線(7)を基材(2)上に形成する場合には、公知のオフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等、基材(2)に形成可能な印刷方式であれば、特に限定はない。なお、第一の画像(4)上に第二の画像(5)を形成するため、余り凹凸を有さない方が良いため、オフセット印刷で形成することが好ましい。
【0020】
第1の画線群(8)は、前述のとおり、第1の色で形成された第1aの画線(7a)と、第1の色とは異なる色の第2の色を有する第1bの画線(7b)から成る第1の画線(7)が第1のピッチ(P1)で万線状に配置されているが、第1aの画線(7a)の画線幅(W1)及び第1bの画線(7b)の画線幅(W1)は、第1のピッチ(P1)の1/2の幅となっている。これは、後述する蒲鉾形状を有する第2の画線群(9)のレンズ効果を利用して、観察角度を変化させた際に第一の画像(4)を出現させるため、第1の画線(7)と第1のピッチ(P1)が等しくなることから、第1aの画線(7a)と第1bの画線(7b)の画線幅(W1)は、第1のピッチ(P1)の1/2の幅となる。
【0021】
この第1の画線(7)は、
図3(b)に示したように、基材(2)上に構造物(1)を形成する場合、第1aの画線(7a)と第1bの画線(7b)のどちらか一方の画線を、基材(2)自体で形成することも可能である。仮に、第1bの画線(7b)を、基材(2)を用いて形成することとして説明する。
【0022】
基材(2)を用いて第1bの画線(7b)を形成する場合には、第1aの画線(7a)の第1の色と基材(2)の色は異なる色とする。そうすることで、第1aの画線(7a)は前述のとおり、第1のピッチ(P1)で万線状に配置されているため、第1aの画線(7a)同士の間は、基材(2)が露出した状態となり、第1aの画線(7a)と基材(2)が異なる色であることから、自ずと、露出されたところが第1bの画線(7b)となる。
【0023】
なお、以降の説明では、
図1に示したように、構造物(1)を基材(2)の上に形成した形態として説明する。
【0024】
次に、第二の画像(5)について説明する。
図5は、第二の画像(5)を示す図である。第二の画像(5)は、明暗フリップフロップ性やカラーフリップフロップ性を有し、かつ、透明性を有する蒲鉾状の立体的な第2の画線(9)が第1の方向(S1)に第1のピッチ(P1)で万線状に配置された第2の画線群(10)から成る。なお、透明性を有する理由として、光の透過により前述した第一の画像(4)を観察するためであり、本発明では、透明又は半透明を総称して「透明性を有する」という。
【0025】
前述したとおり、第1の画線(7)と第2の画線(9)は同じ第1のピッチ(P1)となっているため、第1aの画線(7a)及び第1bの画線(7b)は、それぞれ第1のピッチ(P1)の1/2の画線幅(W1)となっている。したがって、第2の画線(9)は、1本1本が第1aの画線(7a)と第1bの画線(7b)の上にそれぞれ配置されていることとなる。その各画線の配置関係についての詳細は、後述する。
【0026】
なお、本発明における「蒲鉾状」とは、蒲鉾型だけでなく、半円形状又は半楕円形状等の半円立方体形状も含まれる。また、「明暗フリップ性フロップ性」とは、物質に光が入射した場合に、物質の明度が変化する性質を表わし、「カラーフリップフロップ性」とは、物質に光が入射した場合に、物質の色相が変化する性質を表わす。
【0027】
以上のような第2の画線(9)を、盛り上がりのあるような蒲鉾状に形成可能な方法により形成する。出現する潜像画像に一定の視認性を確保するためには、第2の画線(9)の盛り上がり高さは3μm以上が必要であるため、スクリーン印刷や凹版印刷等で形成することが望ましいが、グラビア印刷やフレキソ印刷、凸版印刷等であってもこの程度の画線の盛り上がり高さを形成することは可能である。また、光を集光するような厚みを有するレンチキュラーレンズのようなレンズを形成しても良い。盛り上がりの高さの上限に関しては、特に制限はないが、大量に積載した場合の安定性や耐摩擦性、流通適性等を考慮して1mm以下とする。
【0028】
前述のような盛り上がりを有する第2の画線(9)に明暗フリップフロップ性を付与する方法の一例としては、高光沢なインキ樹脂を用いたり、インキ中に金属顔料を混合したりすることで容易に実現することができる。カラーフリップフロップ性を付与できる機能性材料の一例としては、パール顔料やコレステリック液晶、ガラスフレーク顔料、金属粉顔料や鱗片状金属顔料等が考えられる。ただし、金属粉顔料や鱗片状金属顔料を使用する場合については、配合量により透明性を失ってしまうこととなるため、透明性を失わない程度の配合量とする必要がある。
【0029】
次に、第三の画像(6)について説明する。
図6は、第三の画像(6)を示す図である。第三の画像(6)は、第二の画像(5)よりも低光沢な画線群から成り、第二の画像(5)上での正反射光の光沢により、第三の画像(6)が発現するような画線の構成を有する。この際、正反射光の入射角により第三の画像(6)が動的に変化するものとする。また、拡散反射光下において、第一の画像(4)を視認させるため、光透過性を有する必要がある。
【0030】
第三の画像(6)は、
図6(a)に示すように、特定の有意情報を表す基画像(11)に対して分割及び圧縮の加工を施すことで形成された
図6(b)に示した第3の画線群(12)である。なお、
図6(a)の例では、第3の画線群(12)は、桜の花びらを表している。この第3の画線群(12)は、
図6(c)に示す拡大図のとおり、複数の第3の画線(13)が第1の方向(S1)に万線状に配置されて成る。この第3の画線(13)は、拡大図のとおり、前述した第2の画線(9)のピッチ(P1)と同じピッチで第2の画線幅(W2)を有して形成されている。
【0031】
この第三の画像は、
図7に示すように、基画像(11)に特定の高さ(H)と幅(W2)の大きさのフレーム(14)を当てはめることで基画像(11)を分割し、分割された基画像(11)をそれぞれ取り出して、第1の方向(図中S1方向)に、特定の圧縮率で特定の幅(W3)に圧縮した第3の画線(13)の集合から成る。また、
図3の拡大図に示すように、隣り合う第3の画線(13−1)と第3の画線(13−2)とは、基画像(11)に対して、当てはめたフレーム(14)を、互いに1ピッチだけ第1の方向(S1)にずらして取り出したものを圧縮するため、わずかながら画像が異なる。各第3の画線(13−1、13−2、・・・、13−n(nは3以上の整数))は、第2の画線(9)と等しい第1のピッチ(P2)で第1の方向(図中S1方向)に連続して配置することで、第三の画像(6)が形成されて成る。
【0032】
第3の画線群(12)を構成するそれぞれの第3の画線(13)の正反射光下における色彩は、正反射光下における第2の画線(9)の色彩と異なる色彩である必要がある。仮に、正反射光下における第2の画線(9)の色彩が淡い黄色であったとすると、第3の画線(13)の正反射光下における色彩は、淡い黄色以外の色彩である必要がある。青、赤、緑等の全く別の色相であっても良いし、濃い黄色や、より淡い黄色のように色相は同じで明度が異なる色彩であっても良い。
【0033】
これは、正反射光下で第三の画像(6)を可視化させるための必須事項である。正反射光下で出現する第三の画像(6)は、第2の画線(9)と第3の画線(13)の正反射光下における相対的な色差によってその視認性がほぼ決定されることから、この色差が大きく異なれば異なるほど正反射光下で出現する第三の画像(6)の視認性が高まるため、第2の画線(9)と第3の画線(13)の正反射光下の色彩を可能な限り異ならせることが望ましい。また、第3の画線(13)の視認性を高めるためには、前述したとおり、第2の画線(9)と比較して反射率が低いことが望ましい。このため、第3の画線群(12)を印刷によって形成する場合には、第2の画線(9)より反射率の低いマットなインキで形成することが望ましい。また、通常の観察条件において第2の画線(9)上の第3の画線(13)は不可視であることが望ましいため、物体色を有さない透明や半透明であることが望ましい。
【0034】
この第3の画線群(12)は、インテグラルフォトグラフィ方式の立体画像の形成方法を利用した動画効果を生じさせることができる。なお、このような効果が生じる原理や効果的な構成、条件等については特許第5200284号公報に記載のとおりであり、特許第5200284号公報に記載の画線、画素構成を本発明の構造物(1)の構成に応用することができる。
【0035】
以上、説明してきた第1の画線(7)、第2の画線(9)及び第3の画線(13)の積層構造について、
図8に示す。
【0036】
図8に示すように、基材(2)上に、まず、第1の画線幅(W1)の第1aの画線(7a)と同じ第1の画線幅(W1)の第1bの画線(7b)から成る第1の画線(7)を第1のピッチ(P1)で第1の方向(S1)に万線状に配置する。その第1aの画線(7a)と第1bの画線(7b)から成る第1の画線群(8)の上に、第2の画線幅(W2)で蒲鉾形状の第2の画線(9)を第1のピッチ(P1)で万線状に配置した第2の画線群(10)を形成する。さらに、その第2の画線群(10)の上に、第3の画線幅(W3)の第3の画線(12)を万線状に配置した第3の画線群(12)を形成する。
【0037】
続いて、本発明の構造物(1)の効果について、
図9を用いて説明する。
図9(a)のように、光源(15)に対して、観察者の視点(16)が強い反射光が生じない拡散反射光下にある場合、観察者には第一の画像(4)が視認される。また、
図9(b)や
図9(c)のように、光源(15)に対して、観察者の視点(16)が強い反射光が生じる正反射光下にある場合、観察者には、第三の画像(6)である桜の花びらが視認できる。なお、
図9(b)では、仮想線(Y−Y’)に対して左側に第三の画像(6)を視認でき、
図9(c)では、仮想線(Y−Y’)に対して右側に第三の画像(6)が視認できる。したがって、構造物(1)を傾けたり、入射する光の角度を連続的に変えた場合には、
図9(b)の視点から
図9(c)の視点までの正反射光領域内において、第三の画像(6)が第1の方向(S1方向)に動く様子を視認することができる。
【0038】
以上のとおり、本発明の構造物(1)は、拡散反射光下における視認画像と、その画像とは異なる画像が、正反射光下において連続的に視認角度を変化させると動的に視認できる効果を有している。
【0039】
第三の画像(6)について、基画像(11)を分割したフレーム内画像を所定の縮率で圧縮して形成した第3の画線群(12)を用いた態様を説明したところであるが、この第三の画像(6)は、これに限定されるものではない。そこで、第三の画像(6)の別の態様を以下説明する。なお、第一の画像(4)については、前述で説明した構成と同様のため、説明は省略する。あわせて、第二の画像(5)についても、同様の構成のところについては、詳細説明は省略する。
【0040】
図10は、第三の画像(6)の別の態様を説明する展開図である。第三の画像(6)は、二つの画線群から構成されており、拡散反射領域において、観察角度を変化させると、その二つの画像がチェンジして確認できる技術である。
【0041】
図10に示すように、第三の画像(6)は、複数の第3の画線(13)が万線状に配置された第3の画線群(12)から成る。第3の画線群(12)は、正反射時に出現する潜像の基となる、複数の有意情報を含んで成る。本実施の形態の例では、第一の有意情報(17)であるアルファベトの「A」の文字と、第二の有意情報(18)であるアルファベットの「B」の文字の二つの有意情報を含んでいる。
【0042】
第一の有意情報(17)は、
図11(b)に示す第3aの画線群(12a)によって表され、第二の有意情報(18)は、
図11(c)に示す第3bの画線群(12b)によって表される。すなわち、
図11(b)において、第3aの潜像画線(13a)の各々は、潜像画像の基となる基画像「A」の文字を分割した画線に対応しており、
図11(c)において、第3bの画線(13b)の各々は、潜像画像の基となる基画像「B」の文字を分割した画線に対応したものとなっている。
【0043】
第3aの画線群(12a)は、第3’の画線幅(W3’)の第3aの画線(13a)が、第2の画線群(10)と同じ第1の方向(S1方向)に、同じ第1のピッチ(P1)で、万線状に配置されて成り、第3bの画線群(12b)は、第3’’の画線幅(W3’’)の第3bの画線(13b)が、第2の画線群(10)と同じ第1の方向(S1方向)に、同じ第1のピッチ(P1)で、万線状に配置されて成る。第3aの画線(13a)の第3’の画線幅(W3’)は、すべて同じであり、第3bの画線(13b)の第3’’の画線幅(W3’’)もすべて同じである必要があるが、第3aの画線(13a)の画線幅(W3’)と第3bの画線(13b)の画線幅(W3’’)の値は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0044】
ここで、それぞれの第3aの画線(13a)と第3bの画線(13b)の位置関係について説明する。第3aの画線(13a)と第3bの画線(13b)は重なりあってはならない。具体的には第3aの画線(13a)と第3bの画線(13b)は、第1の方向(S1)に位相がずれている必要がある。
図10(a)は、その一例として、ピッチの半分にあたるP1の2分の1ずれて配置された状態を示している。仮に、第3aの画線(13a)と第3bの画線(13b)が重なり合って配置された場合には、正反射光下の特定の観察角度において、第一の有意情報(17)と第二の有意情報(18)重なり合った不明瞭な画像が出現するため、そのような構成は避けなければならない。
【0045】
以上、説明してきた第1の画線(7)、第2の画線(9)及び第3の画線(13)の積層構造について、
図12に示す。
【0046】
図12に示すように、基材(2)上に、まず、第1の画線幅(W1)の第1aの画線(7a)と同じ第1の画線幅(W1)の第1bの画線(7b)から成る第1の画線(7)を第1のピッチ(P1)で第1の方向(S1)に万線状に配置した第1の画線群(8)を形成する。その第1aの画線(7a)と第1bの画線(7b)から成る第1の画線群(8)の上に、第2の画線幅(W2)の蒲鉾形状の第2の画線(9)を第2のピッチ(P1)で万線状に配置した第2の画線群(10)を形成する。さらに、その第2の画線群(10)の上に、第3’の画線幅(W3’)の第3aの画線(13a)と第3’’の画線幅(W3’’)の第3bの画線(13b)を万線状に配置した第3の画線群(12)を形成する。
【0047】
続いて、本発明の構造物(1)の効果について、
図13を用いて説明する。
図13(a)のように、光源(15)に対して、観察者の視点(16)が強い反射光が生じない拡散反射光下にある場合、観察者には第一の画像(4)が視認される。また、また、
図13(b)や
図13(c)のように、光源(15)に対して、観察者の視点(16)が強い反射光が生じる正反射光下にある場合、観察者には、第三の画像(6)が視認されることとなるが、
図13(b)では、第一の有意情報(17)の「A」が視認でき、
図13(c)では、第二の有意情報(18)の「B」が視認できる。したがって、構造物(1)を傾けたり、入射する光の角度を変えた場合には、
図13(b)の視点から
図13(c)の視点までの正反射光領域内において、第三の画像(6)が第一の有意情報(17)の「A」から第二の有意情報(18)の「B」にチェンジして視認することができる。
【0048】
以上のとおり、本発明の構造物(1)は、拡散反射光下における視認画像と、その画像とは異なる画像が、正反射光下において視認角度を変化させると相関の無い画像にチェンジして視認できる効果を有している。
【0049】
以上のように、第2の画線(9)の画線表面に重ねられた第3の画線(13)のうち、入射した光と法線を成した画線表面に存在する第3の画線(13)のみが色彩の違いによって可視化され、それ以外の表面に存在する第3の画線(13)は可視化されない効果が生じる。これによって、入射する光の角度の変化に応じて、印刷画像(3)中に視認される画像がチェンジする効果が生じる。以上が、本発明の構造物(1)の画像のチェンジ効果が生じる原理である。なお、特許第4682283号公報や特許第4660775号公報に記載の画線、画素構成や効果に関しては、本発明の構造物(1)にすべて応用することができる。
【0050】
第三の画像(6)について、異なる画線群の構成を用いた二つの態様を説明したところであるが、さらに第三の画像(6)の別の態様を以下説明する。なお、第一の画像(4)については、前述で説明した構成と同様のため、説明は省略する。あわせて、第二の画像(5)についても、同様の構成のところについては、詳細説明は省略する。
【0051】
図14は、第三の画像(6)の別の態様を説明する展開図である。
図14に示す第三の画像(6)は、モアレ拡大現象を利用して、潜像として拡大モアレの第三の画像(6)が出現し、構造物(1)を傾けることで出現した第三の画像(6)が動いて見える、特殊な動画効果を生させることが可能な第3の画線群(12)の一形態である。
【0052】
モアレ拡大現象を利用する第3の画線群(12)は、蒲鉾形状の第2の画線群(10)の画線方向と直交する第1の方向(図中S1方向)に、基画像(11a、11b)を圧縮した第3の画線(13)を、第2の画線群(10)の第2のピッチ(P2)とわずかに異なる第2のピッチ(P2)及び第3のピッチ(P3)で万線状に配置した構成を有する。
【0053】
図14の例では、第3の画線群(12)は、二つの画線群から成り、第3aの画線群(12a)と、第3bの画線群(12b)から成る。第3aの画線群(12a)は、第1の基画像(11a)としてアルファベットの「J」の文字を第1の方向(図中S1方向)に圧縮して第3の画線幅(W3)とした第3aの画線(13a)を、第2の画線群(10)の第1のピッチ(P1)よりわずかに小さな第2のピッチ(P2)で、第1の方向(図中S1方向)に連続して配置して成る。第3bの画線群(12b)は、第2の基画像(11b)としてアルファベットの「P」の文字を第1の方向(図中S1方向)にミラー反転して圧縮して第3’の画線幅(W3’)とした第3bの画線(13b)を、第2の画線群(10)の第1のピッチ(P1)よりわずかに大きな第3のピッチ(P3)で、第1の方向(図中S1方向)に万線状に配置して成る。
【0054】
図14に示した第3の画線群(12)を用いた場合の構造物(1)の効果は、
図15に示すとおりである。
図15(a)のように、光源(15)に対する観察者の視点(16)が強い反射光が生じない拡散反射光下にある場合、観察者は、印刷画像(3)の中に何も視認できない。しかし、
図15(b)や
図15(c)のように、光源(15)に対する観察者の視点(16)が強い反射光が生じる正反射光下にある場合、観察者は、印刷画像(3)の中にアルファベットの「J」の文字を表す第一の基画像(11a)と、アルファベットの「P」の文字を表す第二の基画像(11b)を視認できる。また、
図15(b)や
図15(c)のように、構造物(1)を傾けたり、入射する光の角度を変えた場合には、それぞれの基画像(11a、11b)が、第1の方向(S1方向)か、あるいは第1の方向(S1方向)と逆方向にそれぞれ反対方向に動く様子を視認することができる。
【0055】
以上のように、本発明の構造物(1)において、第3の画線群(12)の画線構成を変えるだけで、チェンジ効果とは全く異なるモアレ拡大現象を利用した動画効果を生じさせることができる。なお、このような効果が生じる原理や効果的な構成、条件等については特許第4844894号公報や特許第5131789号公報に記載のとおりであり、特許第4844894号公報や特許第5131789号公報に記載の画線、画素構成等については本発明の構造物(1)に応用することができる。
【0056】
なお、前述した三つの態様において、すべての構造や画線に共通する第1のピッチ(P1)は、0.01mm以上5.0mm以下で形成することが望ましい。0.01mm以下のピッチで、蒲鉾形状の第2の画線(9)に2μm以上の盛り上がりを形成する場合には、一般的な印刷で再現できる蒲鉾形状の画線のピッチとしては、ほぼ限界のピッチであり、印刷物品質の安定性に欠ける上に、たとえ、0.01mm以下のピッチで画線を形成できた場合でも、ほとんどの場合、出現する画像の視認性が極端に低くなるため適当ではない。また、逆に、5.0mm以上のピッチで形成した場合には、再現できる画像の解像度が極端に低くなってしまうため、適切ではない。
【0057】
本発明の構造物(1)のように、各画線群を印刷で形成する場合には、比較的高解像度な印刷が可能なオフセット印刷方式やフレキソ印刷方式等が適しているほか、インクジェットプリンターやレーザプリンター等のデジタル印刷機を用いて形成することも可能である。これらのデジタル印刷機を用いる場合には、一枚一枚異なる情報を与える可変情報を容易に付与できるという特徴がある。
【0058】
なお、本明細書中でいう正反射とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と略等しい角度に強い反射光が生じる現象を指し、拡散反射とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と異なる角度に弱い反射光が生じる現象を指す。例えば、虹彩色パールインキを例とすると、拡散反射の状態では無色透明に見えるが、正反射した状態では特定の干渉色の強い光を発する。また、正反射光下で観察するとは、印刷物に入射した光の角度と略等しい反射角度に視点をおいて観察する状態を指し、拡散反射光下で観察するとは、印刷物に入射した光の角度と大きく異なる角度で観察する状態を指す。
【0059】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した本発明の構造物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0060】
実施の形態で用いた
図1から
図9を用いて説明する。
図1に、本発明の構造物(1)がけ正された商品券(G)を示す。構造物(1)は、基材(2)上に、印刷画像(3)を備える。基材(2)は、一般的なコピー用紙(北越紀州製紙社製 再生PPC80)を用いた。印刷画像(3)は、拡散反射光下では灰色に視認される色彩で構成した。
【0061】
図2に印刷画像(3)の構成、
図3に各画像の積層関係の概要を示す。印刷画像(3)は、第一の画像(4)、第二の画像(5)及び第三の画像(6)を重ねて構成した。
【0062】
まず、第一の画像(4)は、
図4に示すように、「5000」の文字を白抜きとした模様とし、第1の画線(7)のピッチ(P1)は、800μmとして配置するように、レーザプリンター(EPSON Offirio LP−S7100)により印刷した。なお、この第1の画線(7)は、第1の色が緑色の第1aの画線(7a)をピッチ400μm、第2の色が橙色の第1bの画線(7b)をピッチ400μmとして形成したものである。
【0063】
第一の画像(4)の上に、
図5に示す第二の画像(5)を形成した。第二の画像(5)は、
図5に示すように、それぞれ直線の複数の蒲鉾形状の第2の画線(9)によって構成した。画線幅は300μm、画線ピッチは400μmとした。
【0064】
以上のような構成の第2の画線(9)を、表1に示すUV乾燥型のスクリーンインキを用いて、スクリーン印刷によって基材(2)に印刷した。表1に示すインキは、拡散反射光下では着色顔料の色である灰色に見え、正反射光下では明度が上昇して白色に見える、優れた明暗フリップフロップ性を備えたインキである。このインキによって形成した蒲鉾状画線(6)の盛り上がり高さは約15μmであった。
【0065】
【表1】
【0066】
最後に、第二の画像(5)の上に、
図6に示す第三の画像(6)を形成した。第三の画像(6)は、
図6(a)に示すように、「桜の花」を基画像とし、分割したフレーム内画像を圧縮して、画線幅300μm、画線ピッチは400μmとし、透明なマットニス(T&K TOKA社製 UVマットOPニス3H)でオフセット印刷した。各画線の積層の位置関係は
図8に示すとおりである。
【0067】
以上の手順で作製した本発明の構造物(1)の効果について説明する。
図9に、本発明の効果を示す。印刷画像(3)に強い光が入射しない拡散反射光下においては、
図9(a)に示すように、第一の画像(4)が視認でき、基材(2)を傾け、強い光が入射する正反射光下においては、
図9(b)に示すように、印刷画像(3)全体が白色の反射光を発する中に、「桜の花」の第三の画像(6)が灰色で出現し、そのまま正反射光下において連続的に角度を異ならせたら、
図9(b)の状態から
図9(c)の状態へ動いているように視認できた。