(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381318
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 1/04 20060101AFI20180820BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
G02B1/04
C08F290/06
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-134057(P2014-134057)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12061(P2016-12061A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】松垣 一徳
(72)【発明者】
【氏名】滑川 崇平
【審査官】
井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−226040(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/074666(WO,A1)
【文献】
特開2011−008017(JP,A)
【文献】
特開2002−105168(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0197000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00−1/08、3/00−3/14
C08F 290/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】
(式中、X
1及びX
2は夫々独立して同一又は異なるアリー
レン基であり、R
1及びR
2は夫々独立して同一又は異なり、水素原子、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基であり、nは0〜4の数である)で表わされるエポキシ基含有化合物
でありエポキシ当量が280〜600g/eqであるビスアリールフルオレン骨格含有エポキシ樹脂(a)
のエポキシ基に、エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)が付加している付加物(A)
の5〜50重量部と、
下記化学式(2)
【化2】
(式中、Yは−CH
2−,−(CH(R
5)CH
2O)
m1−,−(CH(R
5)CH
2S)
m2−(但し、R
5は水素原子又はメチル基、m1及びm2は1〜4の数である)であり、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は下記構造
【化3】
で表わされる何れかの置換基である)で表わされる特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)
の10〜95重量部と、
前記付加物(A)及び前記特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)以外のエチレン性不飽和基含有化合物(C)
の0〜85重量部と、
光重合開始剤(D)
の0.1〜10重量部とを含むことを特徴とする光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)が、(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)が、o−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、m−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、及びp−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和基含有化合物(C)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させた反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)が、前記ビスアリールフルオレン骨格含有エポキシ樹脂(a)1当量に対し60〜140当量%であることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記付加物(A)が、酸価を5mg・KOH/g以下とすることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化していることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
屈折率が少なくとも1.59であることを特徴とする請求項7に記載の硬化物。
【請求項9】
光学レンズであることを特徴とする請求項7に記載の硬化物。
【請求項10】
単一の光学レンズ又は複数の光学レンズが並んで形成されている光学レンズシートであることを特徴とする請求項7に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズの形成に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズのような光学レンズを用いた光学レンズシート、拡散シート及び視野角調整フィルム等の光学部材の製造に好適な樹脂材料として、高い屈折率を有する樹脂組成物の開発が進められてきた。
【0003】
このような樹脂組成物により形成される光学部材のうち、例えば透過型スクリーン等に用いる光学レンズシートの製造工程では、一般的にシート状の透光性基材上に、活性エネルギー線で硬化する樹脂組成物とレンズ型とを用いて、光学レンズシートを形成する技術が用いられている。この製造工程では、透光性基材に対する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の密着性とレンズ型からの離型性とが、重要となる。基材に対する密着性が不十分である場合、使用可能な基材の種類が限定され、意図する光学物性を得難くなるという問題が発生する。また、レンズ金型からの離型性が不十分である場合、金型の微小な凹凸形状等の型形状を正確に転写できず品質低下を招き、さらに離型時において金型に樹脂組成物が残存することで、金型が洗浄しなければ再使用できなくなるという問題が発生する。
【0004】
従来の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物では、密着性と離型性との相反する両性能を十分に満たすことができない。即ち、密着性の良好な硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物ではレンズ金型への密着性も向上するため離型性が悪くなり易く、離型性の良好な硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物では基材への密着性が悪くなり易い欠点を有していた。この為、基材との密着性と金型からの離型性の両性能を十分に満たし、さらに金型形状の正確な転写が可能な金型再現性を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が望まれている。
【0005】
また、光学レンズシートの製造工程においてロール状に巻き取る作業や光学レンズシート同士の接触等による擦り傷や変形の発生を防止するため、密着性と離型性との性能に加え、耐擦傷性の向上も必要とされている。
【0006】
密着性及び離型性を向上させた樹脂組成物として、例えば特許文献1に、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンとアクリル酸との反応生成物である二官能(メタ)アクリレート化合物と、o−フェニルフェノキシエチルアクリレートのような単官能(メタ)アクリレート化合物とを含有する光学材料用樹脂組成物が、開示されている。この光学材料用樹脂組成物は、基材との密着性及び金型との離型性に優れ、高屈折率で透明性に優れた硬化物を形成可能なものである。
【0007】
このような密着性や離型性だけでなく、金型再現性や耐擦傷性を有し、これら全ての性能を十分に兼ね備えつつ高屈折率な硬化物を形成可能な樹脂組成物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−094987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズのような光学レンズで形成された光学レンズシート、拡散シート及び視野角調整フィルムの製造に適し、基材との密着性及び金型からの離型性の両性能に優れ、金型形状を正確に転写し再現性良く成形し、優れた光学物性を示し高屈折率で耐擦傷性を有する硬化物を形成可能な光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、及びそれからなる硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた本発明の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記化学式(1)
【化1】
(式中、X
1及びX
2は夫々独立して同一又は異なるアリー
レン基であり、R
1及びR
2は夫々独立して同一又は異なり、水素原子、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基であり、nは0〜4の数である)で表わされるエポキシ基含有化合物
でありエポキシ当量が280〜600g/eqであるビスアリールフルオレン骨格含有エポキシ樹脂(a)
のエポキシ基に、エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)が付加している付加物(A)
の5〜50重量部と、下記化学式(2)
【化2】
(式中、Yは−CH
2−,−(CH(R
5)CH
2O)
m1−,−(CH(R
5)CH
2S)
m2−(但し、R
5は水素原子又はメチル基であり、m1及びm2は1〜4の数である)であり、R
3は水素原子又はメチル基、R
4は下記構造
【化3】
で表わされる何れかの置換基である)で表わされる特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)
の10〜95重量部と、前記付加物(A)及び前記特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)以外のエチレン性不飽和基含有化合物(C)
の0〜85重量部と、光重合開始剤(D)
の0.1〜10重量部とを含むことを特徴とする
。
【0011】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)が、(メタ)アクリル酸であると好ましい。
【0012】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記した特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)が、o−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、m−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、及びp−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも何れかであると好ましい。
【0013】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記エチレン性不飽和基含有化合物(C)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させた反応生成物であると好ましい。
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば前記エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)が、前記ビスアリールフルオレン骨格含有エポキシ樹脂(a)1当量に対し60〜140当量%であるというものである。
また、光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば前記付加物(A)が、酸価を5mg・KOH/g以下とするというものである。
【0014】
同じく前記の目的を達成するためになされた本発明の硬化物は、前記光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化していることを特徴とする。
【0015】
硬化物は、屈折率が少なくとも1.59であると好ましい。
【0016】
硬化物は、光学レンズであってもよい。
【0017】
硬化物は、単一の光学レンズ又は複数の光学レンズが並んで形成されている光学レンズシートであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、密着性、離型性、金型再現性に優れ、高屈折率で耐擦傷性を有する硬化物を形成することができる。また、光学レンズシート、拡散シート及び視野角調整フィルム等の製造に適し、基材の種類を限定することなく所望の光学物性を有する硬化物を得ることができ、幅広く用いることができる。
【0019】
本発明の硬化物は、高屈折率で優れた光学物性を示し、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズのような光学レンズを提供することができる。またその光学レンズにより光学レンズシート、拡散シート及び視野角調整フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その主成分として、ビスアリールフルオレン骨格を有しエポキシ当量が280〜600g/eqのエポキシ樹脂(a)にエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)が付加している付加物(A)と、特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)と、エチレン性不飽和基含有化合物(C)と、光重合開始剤(D)とを含むものである。
【0022】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される付加物(A)は、下記化学式(1)で表わされるエポキシ基含有化合物を含み、ビスアリールフルオレン骨格を有しエポキシ当量が280〜600g/eqであるエポキシ樹脂(a)と、エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)との付加反応により生成されるものである。
【0024】
前記化学式(1)中、X
1及びX
2は夫々独立して同一又は異なるアリー
レン基である。R
1及びR
2は夫々独立して同一又は異なり、水素原子、シアノ基、炭素数1〜12で直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、アリール基である。nは0〜4の範囲にある。
【0025】
エポキシ樹脂(a)は、前記化学式(1)で表わされるエポキシ基含有化合物を一種単独で含むものであってもよく、複数種を混合して含むものであってもよい。また、前記化学式(1)中のnが夫々異なるエポキシ基含有化合物を複数含むものであってもよい。前記化学式(1)で表わされるエポキシ基含有化合物のうち、少なくともnが1,2,3,又は4であるエポキシ基含有化合物を含むことが好ましい。例えば、nが0であるエポキシ基含有化合物と、nが1〜4である少なくとも何れかのエポキシ基含有化合物とを、含むものであってもよい。エポキシ樹脂(a)に含まれるエポキシ基含有化合物のnの平均は0〜3である。
【0026】
ビスアリールフルオレン骨格を有しエポキシ当量が280〜600g/eqのエポキシ樹脂(a)に含まれるエポキシ基含有化合物は、例えばビスアリールフルオレン骨格を有する化合物とエピハロヒドリンとを反応させ、常法により得ることができる。例えば、フルオレンの酸化によって得られるフルオレノンとフェノールとから、常法によって得られる9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンに、過剰のエピクロルヒドリン存在下、苛性ソーダを添加しながら加熱還流し、生成する水を共沸除去し、適宜後処理する、いわゆる一段法により、前記化学式(1)で表わされるエポキシ基含有化合物においてn=0である9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンを得ることができる。この反応の際には、一般的にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、例えば化学式(1)におけるn=0〜4の構造の化合物の混合物を得ることになる。
【0027】
更に、別製法として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと、得られた9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンとを、任意のモル比で混合し、常法(例えば金属酸化物、有機塩基やその塩、オニウム化合物、有機リン化合物などを触媒として反応すること、いわゆる二段法)により、所望のエポキシ当量のエポキシ樹脂を得ることもできる。
【0028】
ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物としては、前記に例示した9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの他に、例えば9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−7ヒドロキシナフチル)フルオレン等が挙げられる。
【0029】
エピハロヒドリンとしては、前記に例示したエピクロロヒドリンの他に、例えばエピブロモヒドリン、1−クロロメチル−2−メチルオキシラン等が挙げられる。
【0030】
ここで、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量を表わし、JIS K 7236に記載の方法により測定されるものである。エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量は280〜600g/eqであり、エポキシ当量が280g/eq未満であると光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の密着性が低下し、一方エポキシ当量が600g/eqを超えると離型性の低下が生じる。
【0031】
エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)は、分子内にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸であって、例えばアクリル酸類や、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、又は飽和若しくは不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物を挙げることができる。アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物、飽和若しくは不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和若しくは不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等を挙げることができる。中でも感光性樹脂組成物としたときの感度の点から(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物、又は桂皮酸が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0032】
付加物(A)は、前記エポキシ樹脂(a)のエポキシ基に、求核性を有する前記エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(b)、例えば(メタ)アクリル酸が付加することで得ることができる。反応は無溶剤で行うことができるが、必要に応じてアルコール性水酸基を有さない溶媒中で行うことができる。その溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。これらは単独又は混合して用いることができる。
【0033】
具体的な原料の仕込み割合としては、分子中にエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸化合物(b)を、エポキシ樹脂(a)1当量に対し60〜140当量%、好ましくは80〜120当量%であることが好ましい。この範囲で仕込む場合、反応中にゲル化を引き起こす恐れが少なく、最終的な熱安定性も高くなる。
【0034】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、触媒を使用する場合の該触媒の使用量は、反応物に対して0.1〜10質量%である。その際の反応温度は60〜150℃であり、又、反応時間は好ましくは5〜60時間である。使用する触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等を挙げることができる。
【0035】
また、熱重合禁止剤を使用してもよく、該熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン等が挙げられ、熱重合禁止剤を使用する場合の使用量は反応物に対して0.1〜10質量%程度使用するのが好ましい。
【0036】
反応は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が5mg・KOH/g以下、好ましくは3mg・KOH/g以下となった時点を終点とする。この様にして得られた付加物(A)は、単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0037】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)は、前記化学式(2)で表わされるものであり、例えばo−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、m−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、m−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、p−フェニルフェノール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0038】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有されるエチレン性不飽和基含有化合物(C)は、前記に例示した付加物(A)及び特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)以外の化合物であって、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物である。
【0039】
エチレン性不飽和基含有化合物(C)は、特に構造に限定される訳ではなく、単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0040】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(EO変性)、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(PO変性)、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート(EO変性)、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0041】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0042】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0043】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジオール化合物(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ビスフェノールAポリプロポキシジオール等)又はこれらジオール化合物と二塩基酸若しくはその無水物(例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸若しくはこれらの無水物)との反応物であるポリエステルジオールと、有機ポリイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状飽和炭化水素イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等の環状飽和炭化水素イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート)を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを付加した反応物が挙げられる。また、前記有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物物等が挙げられる。
【0044】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物等を挙げることができる。
【0045】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記のジオール化合物と前記の二塩基酸又はその無水物との反応物であるポリエステルジオールと、(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられる。
【0046】
中でも本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物に使用することのできる分子内にエチレン性不飽和基含有化合物(C)としては、屈折率を考慮するとビスフェノールA骨格を含む構造の化合物が好ましく、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジアクリレート(EO10モル変性)(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートBP−10EA)(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルA−BPE−10)(Miwon社製、商品名:Miramer M2100)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジアクリレート(EO4モル変性)(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートBP−4EAL)(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルA−BPE−4)(Miwon社製、商品名:Miramer M240)等が挙げられ、特に好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物が挙げられる。このようなものとしては、リポキシSP−1507、SP−1509、VR−60、VR−90(昭和高分子株式会社製)、エポキシエステル3000A、エポキシエステル3011A、エポキシエステル3014A(共栄社化学株式会社製)、Miramer PE210(Miwon社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0047】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤(D)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。好ましくは、アセトフェノン類であり、さらに好ましくは2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。なお、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物においては、光重合開始剤(D)は単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0048】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記主成分以外に取り扱い時の利便性等を改善するために、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を状況に応じて併用して含有することができる。更に、必要に応じて、アクリルポリマー、ポリエステルエラストマー、ウレタンポリマー及びニトリルゴム等のポリマー類、無機又は有機の光拡散フィラー等も添加することができる。溶剤を加えることもできるが、溶剤を添加しないものが好ましい。
【0049】
光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、付加物(A)を5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部、特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)を10〜95重量部、好ましくは20〜60重量部、エチレン性不飽和基含有化合物(C)を0〜85重量部、光重合開始剤(D)を0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部含むことが好ましい。
【0050】
本発明の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、溶媒非存在下又は必要に応じて、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンのような溶媒存在下で、各成分を混合溶解することにより調製することができる。
【0051】
得られた光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、熱、赤外線、紫外線、電子線等の活性エネルギー線で照射されることにより、硬化して屈折率が1.59以上の硬化物を形成することができる。
【0052】
得られた硬化物は、屈折率(25℃)が1.59以上で光学レンズシート、拡散シート及び視野角調整フィルム等の光学部材として有用である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
本発明の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される各成分及びその原料の合成を下記合成例に示す。
【0055】
(合成例1)エポキシ樹脂(a)の合成
攪拌装置、コンデンサー、油水分離管を備えた減圧反応ができる反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下、BPFLの略す)350質量部、エピクロルヒドリン235質量部を仕込み、完全に溶解した後、系内を減圧にして20kPa、73℃にし、その後、129.2質量部の49%NaOH水溶液を3時間かけて滴下した。反応中は、還流状態で行い還流留出した水とエピクロルヒドリンとを油水分離管で分離し、エピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応させた。反応終了後、エピクロルヒドリンを留去し、トルエン600質量部に溶解した。その後生成した塩を除去し、更に水洗した後、49%NaOH溶液36.5質量部と水14.5質量部とを投入して80℃で3時間、加熱撹拌して精製した。精製後、水洗を繰り返し、塩類などの不純物を洗浄した。洗浄したトルエン溶液からトルエンを回収してエポキシ樹脂380質量部を得た(エポキシ樹脂(a-1))。得られた樹脂のエポキシ当量は325g/eqであり、透明な樹脂であった。
【0056】
合成例1と同様の装置を使用して、BPFLとエピクロルヒドリンとのモル比だけを変更して、エポキシ当量の異なるエポキシ樹脂を合成した。BPFL1モルに対しエピクロルヒドリンを1.7モル使用してエポキシ当量が400g/eqであるエポキシ樹脂(a-2)を、BPFL1モルに対しエピクロルヒドリンを1.3モル使用してエポキシ当量が529g/eqであるエポキシ樹脂(a-3)を、BPFL1モルに対しエピクロルヒドリンを6モル使用してエポキシ当量が257g/eqであるエポキシ樹脂(a-4)をそれぞれ合成した。
【0057】
(合成例2)付加物(A)の合成
攪拌装置、還流管をつけた1Lフラスコ中に、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを64.2g、前記合成例1で得られたエポキシ樹脂(a-1)を298.0g(0.92eq.)、熱重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.2g、分子内にエチレン性不飽和基が含有したモノカルボン酸(b)としてアクリル酸を66.2g(0.92eq.)、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを2.0g仕込み、100℃で30時間反応させた。酸価を測定したところ1.2mg・KOH/gであった。
【0058】
本発明を適用する光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した例を実施例に示し、本発明の適用外である樹脂組成物を調製した例を比較例に示す。
【0059】
(実施例1〜4)
下記表1に記載の通りに各成分を撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌した。含有している溶剤を70℃、減圧下(20Torr)で留去し、光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0060】
得られた光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をガラス板上に膜厚が100μmになるように塗布し、基材として未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レルミラー、100μm厚)を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後剥離して、屈折率測定用の硬化物を得た。
【0061】
プリズム形状の型の上に膜厚が50μmになるように塗布し、その上に基材として易接着PETフィルム(東洋紡コスモシャインA4300、100μm厚)を接着させ、更にその上から高圧水銀ランプで1000mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化させた後剥離して、本発明の硬化物を得た。
【0062】
(比較例1〜4)
前記実施例と同様に、下記表1に記載の通り配合し混合して樹脂組成物を調製した後、硬化物を得た。
【0063】
これらの各組成物及び硬化物の評価方法について、以下に示す。
(1)屈折率(25℃):硬化した紫外線硬化性樹脂層の屈折率(25℃)をアッベ屈折率計(DR−M2:株式会社アタゴ製)で測定した。
(2)密着性:基材上に樹脂組成物を膜厚約50μm程度に塗布し、次いで高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で1000mJ/cm
2の照射を行い硬化させたテストピースを作製し、JIS K5600−5−6に準じて密着性評価を行った。評価結果は0〜2を○とし、3〜5を×とした。
(3)離型性:硬化した樹脂を金型より離型させるときの難易度を表す。
○・・・・金型からの離型が良好である
△・・・・離型がやや困難又は離型時に剥離音がある
×・・・・離型が困難又は型残りがある
(4)耐擦傷性:硬化物の上にガラス棒を当て、横方向に引きずった時の、傷のつき方を観察した。
○・・・・傷がつかず、外観が問題ない状態
×・・・・傷がつき、外観に問題がある状態
これらの物性評価の結果を下記表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1中、(A)、(B)、(C)、及び(D)は、それぞれ付加物(A)、特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル(B)、エチレン性不飽和基含有化合物(C)、光重合開始剤(D)を示すものであり、(A’)及び(B’)はそれぞれ本発明の範囲外である付加物、(メタ)アクリル酸エステルを示すものである。また、各成分の配合量は重量部である。
【0066】
表1より明らかな通り、比較例である樹脂組成物に比べ本発明の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、高屈折率で密着性、離型性及び耐擦傷性の全ての性能を十分に満たすものであった。また、金型を正確に転写して成形することができ金型再現性にも優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズのような光学レンズによる光学レンズシート、拡散シート及び視野角調整フィルム等の光学部材の製造する樹脂材料として好適に用いることができる。また、その光学レンズ用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化して得られた硬化物は、光学レンズや光学レンズシートであって、光学部材として液晶表示装置や照明装置等に用いることができる。