(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のフリー層と前記第2のフリー層との間の抵抗値に基づいて前記外部磁場の変動を検出する抵抗検出回路を備える請求項2から4のいずれか一項に記載の磁気センサ。
前記第1のフリー層と前記第3のフリー層との間の抵抗値、及び前記第2のフリー層と前記第4のフリー層との間の抵抗値を検出することで、前記外部磁場の変動を検出する抵抗検出回路を備える請求項3に記載の磁気センサ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、磁気抵抗効果素子1の構成の一例を示す。磁気抵抗効果素子1は、ピンド層20、トンネル層30及びフリー層40を備える。磁気抵抗効果素子1は、ピンド層20とフリー層40との相対的な磁化の角度によって抵抗値が変化する。抵抗値の変化とは、磁気抵抗効果素子1の膜面に水平方向の抵抗値、及び膜面に垂直方向の抵抗値の少なくとも一方の変化を指す。本例の磁気抵抗効果素子1は、X軸の方向に1um、Y軸の方向に10umの矩形形状を有する。矢印は、磁化の方向を指す。
【0010】
ピンド層20は、磁化が予め定められた方向に固定されている磁性材料からなる。ピンド層20は、Co、Fe、Ni等の材料の組み合わせにより形成される。例えば、ピンド層20の磁化は、磁気抵抗効果の膜を形成した後、磁場中での熱処理(アニール処理)によりx軸方向に固定される。磁気抵抗効果の膜とは、外部磁場等により電気抵抗が変化する膜を指す。
【0011】
トンネル層30は、薄膜の絶縁体である。トンネル層30は、ピンド層20上に形成される。例えば、磁気抵抗効果素子1が、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto Resistance)素子の場合、トンネル層30は、Al
2O
3、MgO等で形成される。TMR素子とは、磁性体薄膜の間に極薄の絶縁膜を挟んだ素子を指す。TMR素子では、絶縁膜の両端の磁性体薄膜の磁化の向きによって、絶縁膜の抵抗が変化する。
【0012】
フリー層40は、外部磁場に応じて磁化の向きが変化する磁性体である。例えば、フリー層40は、Co、Fe、Ni等の材料の組み合わせにより形成される軟磁性材料である。フリー層40は、トンネル層30上に形成される。
【0013】
図2は、磁気抵抗効果素子1の状態の一例を示す。本例の磁気抵抗効果素子1は、フリー層40の磁化容易軸がピンド層20の磁化の向きと直交する方向に誘導された状態を示す。磁化容易軸とは、結晶磁気異方性を持つ磁性体において、磁化され易い結晶方位を指す。
【0014】
図3は、磁気抵抗効果素子1の状態の一例を示す。本例の磁気抵抗効果素子1は、フリー層40の磁化がy軸方向に誘導された状態を示す。つまり、フリー層40の磁化の向きは、ピンド層20の磁化の向きと直交する。フリー層40の磁化の向きは、ピンド層20に流れる電流により生じる磁場によって変化する。
【0015】
図4は、磁気抵抗効果素子1の膜面に平行方向の抵抗値と電流起因磁場との関係を示す。縦軸は磁気抵抗効果素子1の抵抗値、横軸は電流起因磁場の強度を示す。電流起因磁場とは、ピンド層20に流れる電流に起因して発生する磁場を指す。電流起因磁場の向きは、ピンド層20の固定された磁化の向きを正として示す。
【0016】
電流起因磁場無しの状態では、ピンド層20とフリー層40の磁化は直交している。正の向きに弱い電流起因磁場を印加した場合、フリー層40の磁化がピンド層20の磁化の向きに揃う方向に動く。磁化の向きが揃う場合、磁化が不規則に並んでいる場合よりも、磁化の電子に対する影響が小さくなり、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が減少する。電流起因磁場の大きさが一定以上になると、フリー層40の磁化はピンド層20の磁化の向きと揃う。磁化の向きが揃うと、磁気抵抗効果素子1の抵抗値は飽和する。
【0017】
負の向きに弱い電流起因磁場を印加した場合、フリー層40の磁化がピンド層20の磁化の向きと逆方向に動き、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が上昇する。電流起因磁場の大きさが一定以上になると、フリー層40の磁化がピンド層20の磁化の向きと逆方向に向く。磁化の向きが逆方向を向くと、磁気抵抗効果素子1の抵抗値は飽和する。しかし、さらに強い電流起因磁場を印加すると、固定されていたピンド層20の磁化が負の向きを向き始める。即ち、磁化の向きが揃う方向になるため、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が減少する。
【0018】
以上の通り、ピンド層20の磁化の向きを感度軸としてとることにより、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が線形に変化する。但し、抵抗値を線形に変化させるには、電流起因磁場の絶対値が予め定められた値よりも小さいことが必要である。
【0019】
<実施形態1>
実施形態1の磁気センサ100について
図5から
図9を用いて説明する。
図5は、磁気センサ100を上面から見た配置図である。
図6Aから
図6C及び
図7Aから
図7Cは、点線A−A'、点線B−B'、点線C−C'における磁気センサ100の断面図である。
【0020】
磁気センサ100は、導電層27、第1のトンネル層31、第1のフリー層41、トンネル接合部35及び抵抗検出回路85を備える。導電層27には、第1のピンド層21、中間層25及び配線層26が含まれる。本例の導電層27は、全てピンド層20で形成される。導電層27は、ループ状に形成されるので、外部磁場の変動に応じてコイル電流Icが流れる。磁気センサ100は、導電層27に流れるコイル電流Icを検出することにより、磁場を検出する。ループ状とは、閉じたループ状であればよく、丸形状、四角形状、多角形形状、角丸多角形形状、凹字形状、凸字形状等、どのような形状であってもよい。また、ループ状とは、巻き数が1の場合に限られず、複数の巻き数を有する場合であってよい。導電層27の形状は、本例の形状に限られずレイアウトに応じて適宜変更されてよい。磁気センサ100は、ループ状に形成された導電層27に対して、垂直方向に入力される外部磁場の変動を検出できる。
【0021】
図6Aは、
図5で示した点線A−A'における磁気センサ100の各断面図を示す。A断面は、第1のピンド層21、トンネル接合部35、中間層25、配線層26、第1のトンネル層31及び第1のフリー層41の断面に相当する。第1のトンネル層31、第1のフリー層41、第1のカバー層51及び第1の上部配線層61は、トンネル接合部35及び第2の上部配線層62と互いに離間して配置される。離間とは、各層の間に空間を有することを指す。また、空間の代わりに、絶縁膜等の非磁性体層を備えてもよい。なお、第1のピンド層21、中間層25及び配線層26は、同一の材料で形成される場合、導電層27として一体に形成されてよい。
【0022】
トンネル接合部35は、配線層26上に形成される。トンネル接合部35は、第1のピンド層21に電気的に接続される。また、トンネル接合部35は、コイル電流Icが第2の上部配線層62側に流れるのを防止する。
【0023】
図6Bは、
図5で示した点線B−B'における磁気センサ100の断面図を示す。B断面は、第1の上部配線層61及び配線層26の断面に相当する。第1の上部配線層61は、配線層26と離間して形成される。
【0024】
図6Cは、
図5で示した点線C−C'における磁気センサ100の断面図を示す。C断面は、第1のピンド層21、第1のトンネル層31、第1のフリー層41、第1のカバー層51及び第1の上部配線層61の断面図に相当する。第1のピンド層21、第1のトンネル層31、第1のフリー層41、第1のカバー層51及び第1の上部配線層61の各層は、この順に積層して形成される。なお、第1のピンド層21の幅は、第1のトンネル層31、第1のフリー層41及び第1のカバー層51の各々の幅より大きくてもよい。第1のピンド層21の幅とは、コイル電流Icの流れる方向と垂直な方向の第1のピンド層21の厚さを指す。
【0025】
図7Aは、
図5で示した点線A−A'における磁気センサ100の断面図を示す。
図7Aは、トンネル接合部35の一例を示す。本例のトンネル接合部35は、第2のピンド層22、第2のトンネル層32、第2のフリー層42及び第2のカバー層52を有する。第2のピンド層22は、第1のピンド層21と直列に設けられ、コイル電流Icが流れる。
図7Bは、
図5で示した点線B−B'における磁気センサ100の断面図を示す。
図7Cは、
図5で示した点線C−C'における磁気センサ100の断面図を示す。
図7B及び
図7Cは、
図6B及び
図6Cとそれぞれ同一である。次に、
図5に示された磁気センサ100について、
図7AからCの断面図を参照して説明する。
【0026】
第1のピンド層21は、磁化が予め定められた方向に固定される。第1のピンド層21は、配線層26と同一の材料で形成される場合、配線層26と一体に形成されてよい。この場合、第1のピンド層21は、上部に第1のトンネル層31が形成される点で配線層26と異なる。
【0027】
中間層25は、第1のピンド層21と第2のピンド層22とを接続し、コイル電流Icが流れる。本例の中間層25は、ピンド層20と同一の材料で形成される。なお、中間層25は、第1のピンド層21と第2のピンド層22とを接続可能な材料であれば、ピンド層20と同一の材料に限られない。
【0028】
第2のピンド層22は、磁化が予め定められた方向に固定される。本例の第2のピンド層22は、第1のピンド層21と同じ方向に磁化が固定される。第2のピンド層22は、配線層26と同一の材料で形成される場合、配線層26と一体に形成されてよい。この場合、第2のピンド層22は、上部に第2のトンネル層32が形成される点で配線層26と異なる。なお、第1のピンド層21、第2のピンド層22、中間層25及び配線層26は、導電層27として一体に形成されてよい。
【0029】
第1のトンネル層31は、第1のピンド層21上に形成される。第1のトンネル層31は、第1のピンド層21に流れるコイル電流Icが第1の上部配線層61側に流れるのを防止する。本例の第1のトンネル層31は、第1のピンド層21と膜面の断面形状が同一である。第1のトンネル層31は、第1のピンド層21と膜面の断面形状が異なってよい。
【0030】
第1のフリー層41は、第1のトンネル層31上に形成される。第1のフリー層41は、第1のピンド層21に流れるコイル電流Icにより生じる外部磁場の変動により、磁化の方向が変化する。本例の第1のフリー層41は、第1のトンネル層31と膜面の断面形状が同一である。
【0031】
第1のカバー層51は、第1のフリー層41の上部を保護する。第1のカバー層51は、第1のフリー層41上に連続して形成される。第1のカバー層51は、抵抗値の小さな材料で形成されるのが好ましい。
【0032】
第2のトンネル層32は、第2のピンド層22上に形成される。第2のトンネル層32は、第2のピンド層22に流れるコイル電流Icが第2の上部配線層62側に流れるのを防止する。本例の第2のトンネル層32は、第2のピンド層22と膜面の断面形状が同一である。第2のトンネル層32は、第2のピンド層22と異なる断面形状を有してよい。
【0033】
第2のフリー層42は、第2のトンネル層32上に形成される。第2のフリー層42は、第2のピンド層22に流れるコイル電流Icにより生じる外部磁場の変動により、磁化の方向が変化する。本例の第2のフリー層42は、第2のトンネル層32と膜面の断面形状が同一である。
【0034】
第2のカバー層52は、第2のフリー層42の上部を保護する。第2のカバー層52は、第2のフリー層42上に連続して形成される。第2のカバー層52は、抵抗値の小さな材料で形成されるのが好ましい。
【0035】
第1の上部配線層61は、抵抗検出回路85と接続される第1の外部接続端子71を備える。第1の上部配線層61は、第1のピンド層21と離間して形成される。
【0036】
第2の上部配線層62は、抵抗検出回路85と接続される第2の外部接続端子72を備える。第2の上部配線層62は、第2のピンド層22と離間して形成される。
【0037】
抵抗検出回路85は、電圧計VM1、電流計IM及び第1の定電流源IS1を備える。抵抗検出回路85は、第1の外部接続端子71及び第2の外部接続端子72に接続される。第1の定電流源IS1は、測定用の一定電流を流す。抵抗検出回路85は、電圧計VM1及び電流計IMを用いて抵抗値を検出する。
【0038】
図8は、実施形態1の磁気センサ100の回路概念図である。磁気センサ100の回路図は、第1のセンサ抵抗(TMR1)、第2のセンサ抵抗(TMR2)及び中間層抵抗(RPC)を用いて簡略的に表されている。TMR1は、第1のピンド層21から第1のフリー層41までの層間の第1のセンサ抵抗を示す。TMR2は、第2のピンド層22から第2のフリー層42までの層間の第2のセンサ抵抗を示す。RPCは、中間層25の抵抗を示す。TMR1及びTMR2は、RPCを挟んで接続される。
【0039】
抵抗検出回路85は、第1のフリー層41と第2のフリー層42との間の抵抗値を検出することにより、コイル電流Icを検出する。第1のフリー層41と第2のフリー層42との間の抵抗値とは、TMR1とRPCとTMR2との抵抗値の和を指す。抵抗検出回路85は、電流Imを測定用の電流として第1の外部接続端子71に入力する。測定用の電流は、直列に接続されたTMR1、RPC及びTMR2を流れる。測定用の電流は、第2の外部接続端子72から抵抗検出回路85に戻る。
【0040】
本例のTMR1及びTMR2はそれぞれ数kΩ程度であり、RPCは数Ωである。そのため、TMR1及びTMR2における電圧ドロップと比較して、中間層25のRPCにおける電圧ドロップを無視できる。よって、磁気センサ100は、
図8に示した回路概念図を用いて、コイル電流Icの電流値を測定し、外部磁場を検出できる。また、TMR1及びTMR2には、コイル電流Icが流れないので、精確に外部磁場を検出できる。なお、導電層27にコイル電流Icが流れると、右ねじの法則に従って電流起因磁場(AC磁場)が発生する。
【0041】
抵抗検出回路85の検出する抵抗値は、下記の式で求められる。
TMR1+TMR2=VM1/IM
但し、
RPC<<TMR1+TMR2
Iin*RPC<<VM
ここで、VM1は、電圧計VM1が計測した電圧値であり、IMは、電流計IMが計測した電流値である。VMは、第1の外部接続端子71と第2の外部接続端子72との間の電圧値である。本例では、VM=VM1となる。
【0042】
図9は、コイル電流Icが流れたときにフリー層40にかかる電流起因磁場Bcを示す模式図である。
図9は
図7CのC断面を示す。点線は、第1のピンド層21に流れるコイル電流Icにより生じる電流起因磁場Bcを示す。
【0043】
第1のピンド層21にコイル電流Icが流れると、右ねじの法則に従って第1のピンド層21の周りに電流起因磁場Bcが発生する。第1のピンド層21の中心点に大きさIの線電流が流れていると考える。第1のピンド層21に流れる線電流を中心とした半径rの位置に発生する電流起因磁場Bcの大きさは、下記の式(1)により表される。
Bc=(4π*μ
0*I)/(2*r)・・・式(1)
ここで、μ
0は、真空の透磁率を示す。
【0044】
本例の第1のピンド層21、第1のトンネル層31、第1のフリー層41及び第1のカバー層51は、それぞれ数十オングストローム程度の厚みである。例えば、コイル電流Icの大きさを1μA、第1のピンド層21から第1のフリー層41までの平均的な距離を50オングストローム(5nm)とする。この場合、式(1)を用いると、その地点にできる磁場Bcの大きさは、下記の通りとなる。
Bc=(4*3.14*10
−7*1μA)/(2*5nm)
=126μT
【0045】
このオーダの磁場の大きさがあれば、磁気センサ100自身のノイズや抵抗検出回路85のノイズよりも大きなセンサ信号出力が得られる。即ち、コイル電流Icにより生じる外部磁場の変動に応じて、第1のフリー層41の磁化方向が変化し、センサ抵抗値であるTMR1とTMR2が変化する。抵抗検出回路85は、TMR1とTMR2の抵抗値を検出することにより、コイル電流Icをセンシングできる。
【0046】
従来の磁気センサは、交流電流経路とセンサをそれぞれ別途の配線及び素子で構成して近接配置しているので、センサ部に発生する磁場が小さい。よって、従来の磁気センサは、mAオーダの電流を流さないと、センサ自身のノイズや検出回路のノイズにより、その交流電流値や交流電流の周波数を検知できない。一方、本例の磁気センサ100は、センサ抵抗直下のピンド層20に流れる電流を検出するので、高精度に小さな外部磁場の変動により生じる電流変化を検出できる。即ち、磁気センサ100は、非常に小さな領域の外部磁場の変動を検出できる。また、ピンド層20と電流起因磁場を検出するフリー層40が一体となっているため、経年変化による位置関係のずれがなく、小さな領域の外部磁場の変動を長期的に安定して測定できる。また、本例の磁気センサ100は、プロセス工程を新たに追加することなく、小面積で安価に製造できる。
【0047】
<実施形態2>
図10及び
図11Aから
図11Cは、実施形態2に係る磁気センサ100を示す。本例の磁気センサ100は、第1のピンド層21と第2のピンド層22との間に、中間層25の代わりに金属配線層65を有する。
図11A、
図11B及び
図11Cは、点線A−A'、点線B−B'、点線C−C'における磁気センサ100の各断面図である。なお、配線層26を金属配線層65と同一の材料で形成してもよい。
【0048】
金属配線層65は、中間層25と比較して抵抗を小さくできるので、第1のピンド層21と第2のピンド層22との間のRPCを低減できる。金属配線層65は、第1の上部配線層61及び第2の上部配線層62と同じ材料で形成されてよい。この場合、金属配線層65は、第1の上部配線層61及び第2の上部配線層62と同一の工程で形成することができる。そのため、本実施形態に係る磁気センサ100は、実施形態1に係る製造工程から、新たなプロセス工程を設けることなく製造できる。
【0049】
<実施形態3>
図12から
図14は、実施形態3に係る磁気センサ100を示す。実施形態1に係る磁気センサ100では、RPCにより電流の測定範囲が制限される領域が発生する。一方、本例の磁気センサ100は、ピンド層20から第3の外部接続端子73及び第4の外部接続端子74をそれぞれ引き出すことにより、RPCの抵抗を無くすことができる。
【0050】
図12は、磁気センサ100を上面から見た配置図である。
図13A、
図13B、
図13C及び
図13Dは、点線A−A'、点線B−B'、点線C−C'、点線D−D'における磁気センサ100の各断面図である。本例の磁気センサ100は、第3のピンド層23、第3のトンネル層33、第3のフリー層43、第3のカバー層53、第4のピンド層24、第4のトンネル層34、第4のフリー層44、第4のカバー層54、第3の上部配線層63、第4の上部配線層64、第3の外部接続端子73及び第4の外部接続端子74をさらに備える。本例の抵抗検出回路85は、電圧計VM2をさらに備える。
【0051】
第3のピンド層23は、第1のピンド層21から延出して形成される。第3のピンド層23は、第1のピンド層21と同時に形成されてもよい。第3のピンド層23の他端は、第3の外部接続端子73に接続される。
【0052】
第3のトンネル層33は、第3のピンド層23上に形成される。第3のトンネル層33は、第3のピンド層23に流れるコイル電流Icが第3の上部配線層63側に流れるのを防止する。本例の第3のトンネル層33は、第3のピンド層23上の少なくとも一部に形成される。
【0053】
第3のフリー層43は、第3のトンネル層33上に形成される。本例の第3のフリー層43は、第3のトンネル層33と膜面の断面形状が同一である。
【0054】
第3のカバー層53は、第3のフリー層43の上部を保護する。第3のカバー層53は、第3のフリー層43上に連続して形成される。
【0055】
第3の上部配線層63は、抵抗検出回路85と接続される第3の外部接続端子73を備える。第3の上部配線層63は、第3のピンド層23と離間して形成される。
【0056】
第4のピンド層24は、第2のピンド層22から延出して形成される。第4のピンド層24は、第2のピンド層22と同時に形成されてもよい。第4のピンド層24の他端は、第4の外部接続端子74に接続される。
【0057】
第4のトンネル層34は、第4のピンド層24上に形成される。第4のトンネル層34は、第4のピンド層24に流れるコイル電流Icが第4の上部配線層64側に流れるのを防止する。本例の第4のトンネル層34は、第4のピンド層24上の少なくとも一部に形成される。
【0058】
第4のフリー層44は、第4のトンネル層34上に形成される。本例の第4のフリー層44は、第4のトンネル層34と膜面の断面形状が同一である。
【0059】
第3のフリー層43及び第4のフリー層44は、磁化の方向が、電流起因磁場Bcにより変化されない。即ち、第3のピンド層23及び第4のピンド層24には、コイル電流Icが流れない。コイル電流Icが流れないとは、完全にコイル電流Icが流れない場合に加えて、第3のフリー層43及び第4のフリー層44の磁化の方向が、電流起因磁場Bcにより変化されない程度のコイル電流Icが流れる場合を含んでよい。
【0060】
第4のカバー層54は、第4のフリー層44の上部を保護する。第4のカバー層54は、第4のフリー層44上に連続して形成される。
【0061】
第4の上部配線層64は、抵抗検出回路85と接続される第4の外部接続端子74を備える。第4の上部配線層64は、第4のピンド層24と離間して形成される。
【0062】
図14は、実施形態3に係る磁気センサ100の回路概念図である。本例の磁気センサ100の回路概念図には、
図8と比較して、抵抗RS3及びRS4がさらに追加されている。RS3は、第3のピンド層23の抵抗値と第3のピンド層23から第3のフリー層43までの抵抗値との和である。RS4は、第4のピンド層24の抵抗値と第4のピンド層24から第4のフリー層44までの抵抗値との和である。RS3及びRS4は、RPCを挟んで接続される。
【0063】
抵抗検出回路85は、第1のフリー層41と第3のフリー層43との間の抵抗値、及び第2のフリー層42と第4のフリー層44との間の抵抗値を検出することにより、コイル電流Icを検出する。第1のフリー層41と第3のフリー層43との間の抵抗値とは、TMR1とRS3との抵抗値の和を指す。第2のフリー層42と第4のフリー層44との間の抵抗値とは、TMR2とRS4との抵抗値の和を指す。抵抗検出回路85は、第1の外部接続端子71から第2の外部接続端子72に検出用の電流を流す。
【0064】
電圧計VM1は、TMR1及びRS3に直列に接続され、第1のセンサ抵抗TMR1を測定する。即ち、電圧計VM1の電圧測定回路ループがRPCを組み込まない。よって、電圧計VM1は、RPCの影響を受けずに第1のセンサ抵抗TMR1を測定できる。
【0065】
電圧計VM2は、TMR2及びRS4に直列に接続され、第2のセンサ抵抗TMR2を測定する。即ち、電圧計VM2の電圧測定回路ループがRPCを組み込まない。よって、電圧計VM2は、RPCの影響を受けずに第2のセンサ抵抗TMR2を測定できる。これにより、抵抗検出回路85は、RPCの影響をなくすことができる。
【0066】
<製造方法>
図15Aから
図15Gは、磁気センサ100の製造方法の一例を示す。
図15Aは、ピンド層20が形成された基板90を示す。本例の基板90は、シリコンで形成される。本例の基板90表面は、第1の絶縁膜91により覆われている。例えば、第1の絶縁膜91は、二酸化シリコンSiO
2等の一般的な製造工程で用いられる絶縁膜である。ピンド層20は、スパッタにより形成される。ピンド層20を形成するスパッタは、磁場をかけた状態で実施されてよい。
【0067】
図15Bは、ピンド層20の磁化を固定する工程を示す。ピンド層20は、磁場中での熱処理により、磁化が固定される。例えば、磁場は、ピンド層20の磁化が固定される方向に向けられる。
【0068】
図15Cは、TMR素子を形成する工程を示す。ピンド層20上には、トンネル層30、フリー層40及びカバー層50が形成される。
【0069】
図15Dは、磁気センサ100の素子分離工程を示す。磁気センサ100は、フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等を用いて、カバー層50からピンド層20までの不要な部分を取り除く。これにより、素子分離されたTMR素子が形成される。
【0070】
図15Eは、TMR素子をパターニングする工程を示す。磁気センサ100は、フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等を用いて、不要なフリー層40及びカバー層50が除去される。なお、不要なフリー層40及びカバー層50と同様のパターンで、トンネル層30まで除去してもよい。
【0071】
また、実施形態2のように中間層25の代わりに金属配線層65を形成する場合、フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等を用いて、金属配線層65が形成される領域のピンド層20を除去する。その後、ピンド層20が除去された領域に金属配線層65を堆積させる。これにより、中間層25の代わりに金属配線層65を形成できる。
【0072】
図15Fは、第2の絶縁膜92を堆積させる工程を示す。基板90の全面には、第2の絶縁膜92が形成される。本例の第2の絶縁膜92は、二酸化シリコンSiO
2で形成される。第2の絶縁膜92は、第1の絶縁膜91と同一の材料であっても異なる材料であってもよい。
【0073】
図15Gは、上部配線層60が形成された磁気センサ100を示す。フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等により、第2の絶縁膜92上に上部配線層60のパターンで開口する。その後、金属のスパッタ、リフトオフ工程により、上部配線層60が形成される。これにより、各磁気抵抗効果素子TMRの間を接続する引き回し配線及び外部との接続配線が形成される。なお、ピンド層20は複数の巻き数のコイルに接続されてよい。この場合、磁気センサ100のチップ内に、複数の配線層26を設けることにより、コイルの巻き数を調整できる。コイルの巻き数は、測定する外部磁場の変動の大きさに応じて適宜変更される。
【0074】
以上の通り、本例の磁気センサ100は、従来と同様の製造工程を用いることにより製造される。また、磁気センサ100は、従来の磁気センサと比較して、高精度に電流を検出することにより微小で精密な外部磁場の変動を安定して測定でき、且つ小型に形成できる。
【0075】
図16は、磁気検出装置200の一例を示す。磁気検出装置200は、磁気センサ100、電圧生成回路86、増幅回路95、振幅検出回路96及び周波数検出回路97を備える。磁気検出装置200は、後段の回路を用いて、磁気センサ100で検出した信号を処理することにより、外部磁場の周波数及び振幅を検出する。
【0076】
磁気センサ100は、外部磁場の変動に応じた抵抗値(TMR1、TMR2)を検出してセンサ入力信号Vinを出力する。本例の抵抗検出回路85は、第1の定電流源IS1の一端が接地電位(GND)に接続され、抵抗値(TMR1、TMR2)に応じたセンサ入力信号Vinを電流計IMの一端から出力する。なお、抵抗検出回路85は、第1の定電流源IS1の一端を接地電位に接続するのではなく、電流計IM及び第1の定電流源IS1のそれぞれの端部の信号を差動で出力してもよい。
【0077】
電圧生成回路86は、次段の増幅回路95へ基準信号Vrefを出力する。電圧生成回路86は、第2の定電流源IS2及び参照抵抗Rrefを備える。参照抵抗Rrefは、磁気センサ100の合成抵抗値(TMR1+TMR2又はTMR1+TMR2+RPC等)と同程度の抵抗値を有する。例えば、磁気センサ100の合成抵抗値と同程度とは、コイル電流Icが流れない場合の磁気センサ100の合成抵抗値である。第2の定電流源IS2は、抵抗検出回路85の第1の定電流源IS1の出力する参照電流IS1と同程度の電流値を有する参照電流IS2を流す。これにより、電圧生成回路86は、センサ入力信号Vinと同程度の基準信号Vrefを生成し、動作点を確保できる。
【0078】
増幅回路95には、抵抗検出回路85のセンサ入力信号Vinと、電圧生成回路86の基準信号Vrefとが入力される。増幅回路95は、センサ入力信号Vinと基準信号Vrefの差分を増幅率Gainで増幅した増幅信号Vgを出力する。なお、抵抗検出回路85の出力を差動とする場合、抵抗検出回路85は、電圧生成回路86の基準信号Vrefをコモン電圧として差動増幅してよい。
【0079】
振幅検出回路96は、増幅回路95の増幅信号Vgを入力として、振幅信号Vaを出力する。振幅検出回路96は、ダイオードDr、コンデンサCr及び負荷抵抗Rrを備える。ダイオードDrに順方向バイアスが印加される場合、コンデンサCrに電荷が蓄えられる。また、ダイオードDrに逆方向バイアスが印加される場合、コンデンサCrに蓄えられた電荷が放出される。振幅検出回路96は、増幅回路95からの入力された信号を半波整流する整流器である。振幅信号Vaからは、外部磁場信号の振幅を検出することができる。なお、外部磁場信号とは、磁気検出装置200に入力された外部磁場として検出する信号を指す。
【0080】
周波数検出回路97は、増幅回路95の増幅信号Vgを入力として、周波数信号Dfを出力する。周波数検出回路97は、コンパレータ98及び周波数カウンタ99を備える。コンパレータ98は、増幅回路95の増幅信号Vgと接地電位(GND)とを比較して、コンパレータ出力信号Vcを出力する。周波数カウンタ99は、コンパレータ98のコンパレータ出力信号Vcをカウントして、周波数信号Dfを生成する。
【0081】
図17Aから
図17Dは、各信号の波形例を示す。本例では、周波数が徐々に小さくなる外部磁場信号が磁気検出装置200に入力される。また、本例の外部磁場信号は、周波数が徐々に小さくなると同時に、振幅も徐々に小さくなる。
【0082】
図17Aは、増幅回路95の出力の一例を示す。増幅信号Vgは、磁気センサ100のセンサ入力信号Vinが増幅された信号である。実線は、増幅信号Vgを示す。破線は、増幅信号Vgの極大値もしくは極小値をおおよそ結ぶ線である。本例の増幅信号Vgは、周波数及び振幅が徐々に減少する。
【0083】
図17Bは、振幅検出回路96の出力の一例を示す。実線は、振幅信号Vaを示す。破線は、増幅信号Vgの絶対値を示す。磁気検出装置200の検出する外部磁場信号が大きい振幅の外部磁場信号から小さい振幅の外部磁場信号へ変化する場合、振幅検出回路96の振幅信号Vaは、その外部磁場信号の振幅の変化に合わせて徐々に小さくなる。
【0084】
図17Cは、コンパレータ98の出力の一例を示す。実線は出力信号Vcを示し、破線は増幅信号Vgを示す。増幅回路95の増幅信号Vgが予め定められた値よりも大きくなった場合、コンパレータ出力信号Vcはハイとなる。一方、増幅回路95の増幅信号Vgが予め定められた値よりも小さい場合、コンパレータ出力信号Vcはローとなる。コンパレータ98が増幅信号Vgと比較する信号は、接地電位からの信号に限られず、任意の信号であってよい。
【0085】
図17Dは、周波数カウンタ99の周波数信号Dfの一例を示す。磁気検出装置200の検出する外部磁場信号の周波数が徐々に小さくなる場合、周波数カウンタ99の周波数信号Dfは、その外部磁場の周波数の変化に合わせて徐々に小さくなる。
【0086】
以上の通り、磁気検出装置200は、外部磁場信号の周波数及び振幅の変化を検出できる。磁気検出装置200は、磁気センサ100を備えるので、非常に小さな領域の外部磁場の変動を検出できる。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。