特許第6381547号(P6381547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6381547
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/32 20060101AFI20180820BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G01N30/32 A
   G01N30/26 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-551560(P2015-551560)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】JP2014082126
(87)【国際公開番号】WO2015083793
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-252547(P2013-252547)
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智啓
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−26616(JP,A)
【文献】 特開平10−300737(JP,A)
【文献】 Takuro WATANABE, Kenji KATO, Nobuhiro MATSUMOTO, Tsuneaki MAEDA,Simplification of determination method for standard materials using post-column reaction GC/FID,Talanta,2007年 3月24日,Vol.72,p.1655-1658
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスを通過させて該試料に含まれる各種測定対象成分を分離するカラムを有し、該試料ガスが流れる試料ガスラインと、
前記カラムを通過した試料ガスに含まれる前記測定対象成分を酸化する酸化触媒と、
前記測定対象成分を酸化させる酸化用ガスが流れ、当該酸化用ガスを、前記カラムから前記酸化触媒までの間で前記試料ガスに混合する酸化用ガスラインと、
前記酸化触媒を通過したガスを測定して、前記試料ガスに含まれる前記測定対象成分を分析する分析計とを具備するガスクロマトグラフであって、
前記酸化用ガスライン内の圧力を測定する圧力計と、
前記圧力計により得られる測定圧力に基づいて、前記試料ガスラインにおける前記カラムより上流の圧力である上流圧力を制御する圧力制御機構とを具備することを特徴とするガスクロマトグラフ。
【請求項2】
前記酸化用ガスラインの一部を加熱する加熱機構をさらに具備し、
前記圧力計が前記加熱機構の外部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ。
【請求項3】
前記圧力制御機構が、前記測定圧力と前記上流圧力との差が一定になるように制御することを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ。
【請求項4】
前記酸化触媒と前記分析計との間に設けられた還元触媒をさらに具備することを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ。
【請求項5】
試料ガスを通過させて該試料に含まれる各種測定対象成分を分離するカラムを有し、該試料ガスが流れる試料ガスラインと、
前記カラムを通過した試料ガスに含まれる前記測定対象成分を還元する還元触媒と、
前記測定対象成分を還元させる還元用ガスが流れ、当該還元用ガスを、前記カラムから前記還元触媒までの間で前記試料ガスに混合する還元用ガスラインと、
前記還元触媒を通過したガスを測定して、前記試料ガスに含まれる前記測定対象成分を分析する分析計とを具備するガスクロマトグラフであって、
前記還元用ガスライン内の圧力を測定する圧力計と、
前記圧力計により得られる測定圧力に基づいて、前記試料ガスラインにおける前記カラムより上流の圧力である上流圧力を制御する圧力制御機構とを具備することを特徴とするガスクロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ガスに含まれる、例えば炭化水素化合物等の成分を分析するガスクロマトグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のガスクロマトグラフとしては、例えば特許文献1に示すように、試料ガスを通過させて該試料ガスに含まれる各種測定対象成分を分離するカラムを有する試料ガスラインと、カラムを通過した試料ガスに含まれる測定対象成分を分析する分析部とを具備するものがある。
このガスクロマトグラフは、試料ガスラインの下流を大気開放するとともに、試料ガスラインにおけるカラムより上流を一定の圧力に制御することより、試料ガスがカラムを通過する速度を担保するように構成されている。
【0003】
一方、カラムを通過した試料ガスに酸化用ガスや還元用ガスを混合して触媒を通過させ、当該試料ガスに含まれる測定対象成分を酸化還元することにより、組成が既知である例えばメタンに変換し、当該メタンの濃度に基づいて試料ガスに含まれる測定対象成分を分析するように構成された、いわゆるポストカラム反応ガスクロマトグラフが知られている。
【0004】
上述のように構成された反応ガスクロマトグラフでは、試料ガスが触媒を通過する際に、当該触媒が抵抗となってしまい、試料ガスラインに試料ガスが流れにくく、試料ガスがカラムを通過する速度が遅くなってしまう。試料ガスがカラムを通過する速度が遅いと、カラムで試料ガスを測定対象成分毎に分離することが難しく、これにより、分析部の分解能が低下して、検出されたメタン等が試料ガスに含まれるどの成分に由来するものであるかを精度良く分析することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−43219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであって、この種のガスクロマトグラフにおいて、試料ガスの流速を担保して分析精度を向上させることを、無理のない構成で実現すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るガスクロマトグラフは、試料ガスを通過させて該試料に含まれる各種測定対象成分を分離するカラムを有し、試料ガスが流れる試料ガスラインと、前記カラムを通過した試料ガスに含まれる前記測定対象成分を酸化する酸化触媒と、前記試料ガスを酸化させる酸化用ガスが流れ、当該酸化用ガスを、前記カラムから前記酸化触媒までの間で前記試料ガスに混合する酸化用ガスラインと、前記酸化触媒を通過したガスを測定して、前記試料ガスに含まれる前記測定対象成分を分析する分析計とを具備するガスクロマトグラフであって、前記酸化用ガスライン内の圧力を測定する圧力計と、前記圧力計により得られる測定圧力に基づいて、前記試料ガスラインにおける前記カラムより上流の圧力である上流圧力を制御する圧力制御機構とを具備することを特徴とするものである。
【0008】
かかるガスクロマトグラフは、酸化用ガスライン内の圧力が、試料ガスラインにおけるカラムより下流の圧力(下流圧力)とほぼ等しくなることに着目してなされたものである。
したがって、上記本発明の構成によれば、圧力制御機構が、圧力計により得られる酸化用ガスライン内の圧力(測定圧力)をカラムの下流圧力とみなし、この測定圧力に基づいてカラムの上流圧力を制御するので、カラムの上流圧力とカラムの下流圧力との差を一定以上に担保することができ、これにより試料ガスがカラムを流れる際の流速を担保して分析精度を向上させることができる。
さらに、カラムの下流圧力を測定すべく、圧力計を試料ガスラインにおけるカラムの下流に設けようとすると、試料ガスラインが加熱されたり非常に細かったりする場合に非常に困難であるが、上記本発明の着目点及び構成によれば、圧力計を酸化用ガスラインに設ければよいので、上述した困難を避けることができ、無理のない構成で分析精度の向上を実現することができる。
【0009】
熱により圧力計が故障することをより確実に防ぐためには、前記酸化用ガスラインの一部を加熱する加熱機構をさらに具備し、前記圧力計が前記加熱機構の外部に設けられているものが好ましい。
【0010】
前記圧力制御機構が、前記測定圧力と前記上流圧力との差が一定になるように制御するものが好ましい。
これならば、試料ガスがカラムを通過する速度を一定に制御することができ、試料ガスに含まれる測定対象成分を安定的に分離することができ、分析精度をより向上させることができる。
【0011】
分析計として水素炎イオン化検出器(FID)を用いたときの実施態様としては、前記酸化触媒と前記分析計との間に設けられた還元触媒をさらに具備するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、試料ガスの流速を担保して分析精度を向上させることを、無理のない構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態におけるガスクロマトグラフの概略構成図。
図2】同実施形態における継手の概略構成図。
図3】同実施形態における圧力制御装置の機能ブロック図。
図4】変形実施形態におけるガスクロマトグラフの概略構成図。
図5】変形実施形態におけるガスクロマトグラフの概略構成図。
【符号の説明】
【0014】
100・・・反応ガスクロマトグラフ
L1 ・・・試料ガスライン
10 ・・・カラム
L2 ・・・酸化用ガスライン
L3 ・・・還元用ガスライン
21 ・・・酸化触媒
31 ・・・還元触媒
40 ・・・分析計
60 ・・・加熱機構
P ・・・圧力計
70 ・・・圧力制御機構
71 ・・・圧力制御装置
72 ・・・圧力調整弁
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係るガスクロマトグラフの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係るガスクロマトグラフ(以下、反応ガスクロマトグラフと言う。)100は、試料ガスに含まれる、例えば炭化水素化合物等の測定対象成分を分析するものであり、測定対象成分を酸化及び還元させることにより、各成分を組成が既知である例えばメタン等に変換し、このメタンの濃度を測定することで、試料ガスに含まれる測定対象成分を分析するように構成されたものである。
【0017】
具体的にこの反応ガスクロマトグラフ100は、図1に示すように、カラム10を有する試料ガスライン(以下、試料ガス供給管と言う。)L1と、酸化触媒21を有する酸化反応部20と、酸化用ガスが流れる酸化用ガスライン(以下、酸化用ガス供給管と言う。)L2と、還元触媒31を有する還元反応部30と、還元用ガスが流れる還元用ガスライン(以下、還元用ガス供給管と言う。)L3と、酸化反応部20及び還元反応部30を通過したガスである最終ガスを測定して、試料ガスに含まれる測定対象成分を分析する分析計40とを具備するものである。
【0018】
試料ガス供給管L1は、導入された試料ガスが、カラム10を通過することにより、測定対象成分毎に分離されるように構成されており、本実施形態では、試料ガスとともにキャリアガスが流れるように構成されている。
【0019】
カラム10は、その内壁に固定相を塗布したキャピラリーカラム10であり、この固定相としては、適宜公知のものを使用することができる。
【0020】
上述した試料ガス供給管L1には、図1及び図2に示すように、カラム10より下流に、該試料ガス供給管L1と後述する酸化用ガス供給管L2とを結束する結束部材たる三方継手50が設けられている。本実施形態の三方継手50は、試料ガス供給管L1と酸化用ガス供給管L2とを束ねて、これら供給管L1、L2の管軸を略平行にするものであって、略T字形状をなし、第1開口51と、第1開口51に対向する第2開口52と、第1開口51及び第2開口52に垂直な方向に開口する第3開口53とを有している。この三方継手50は、本実施形態では試料ガス供給管L1が第1開口51及び第2開口52を通るように配置されている。
なお、各開口は、ボルト54が螺合して閉塞されている。
【0021】
酸化反応部20は、その内部に例えばパラジウム等の酸化触媒21を有した酸化反応室22と、酸化反応室22を加熱する図示しないヒータ等の加熱手段とを備えるものである。
【0022】
酸化用ガス供給管L2は、酸素を含む例えば空気等の酸化用ガスが流れるものであり、当該酸化用ガスをカラム10から酸化触媒21までの間で試料ガスに混合するように構成されている。
【0023】
具体的にこの酸化用ガス供給管L2は、上述したように三方継手50によって試料ガス供給管L1と束ねられており、本実施形態では、図1及び図2に示すように、三方継手50の第3開口53及び第2開口52を通り酸化反応室22に連通し、酸化用ガスを酸化反応室22に供給するように構成されている。
【0024】
本実施形態では、試料ガス供給管L1は酸化用ガス供給管L2よりも細く、特に図2に示すように、酸化用ガス供給管L2の内部に試料供給管L1が配設されている。この構成により、試料ガス及び酸化用ガスは、それぞれ酸化反応室22に供給されるとともに、当該酸化反応室22で互いに混ざり合って酸化触媒21へ流れる。つまり、酸化用ガス供給管L2と試料ガス供給管L1は酸化反応室22を介して空間的に接続されている。
【0025】
なお、この酸化用ガス供給管L2には、図1に示すように、酸化用ガスの流量を調整する流体制御機構たるマスフローコントローラMFCが設けられており、本実施形態のマスフローコントローラMFCは差圧式のものである。
【0026】
ここで、本実施形態では、図1に示すように、試料ガス及び酸化用ガスを加熱する加熱機構60が設けられており、具体的にこの加熱機構60は、試料ガス供給管L1におけるカラム10より下流の一部を加熱するとともに、酸化用ガス供給管L2の一部を加熱するものである。
より詳細には、この加熱機構60は、試料ガス供給管L1におけるカラム10から酸化反応部20までの一部と、酸化用ガス供給管L2におけるマスフローコントローラMFCから酸化反応部20までの一部とを加熱するように構成されている。
これにより、試料ガス及び酸化用ガスは加熱機構60により加熱されて酸化反応室22に供給され、酸化触媒21に流れることになる。
【0027】
還元反応部30は、その内部に例えばニッケル等の還元触媒31を有する還元反応室32と、還元反応室32を加熱する図示しないヒータ等の加熱手段とを備えるものである。
なお、還元反応部30と酸化反応部20とは連結ライン(以下、連結管と言う。)L4を介して連通している。
【0028】
還元用ガス供給管L3は、例えば水素等の還元用ガスが流れるものであり、本実施形態では、図1に示すように、上述した連結管L4に接続されており、酸化反応部20を通過したガスに還元用ガスを混合するように構成されている。
なお、この還元用ガス供給管L3には、図1に示すように、還元用ガスの流量を調整する流体制御機構たるマスフローコントローラMFCが設けられており、本実施形態のマスフローコントローラMFCは差圧式のものである。
【0029】
上述した構成により、試料ガスは、酸化反応部20及び還元反応部30を通過することにより、当該試料ガスに含まれる測定対象成分が、組成の既知である例えばメタンに変換される。
【0030】
分析計40は、例えば、燃焼炎である水素炎中に酸化反応部20及び還元反応部30を通過した最終ガスを流し、水素炎でイオン化されたイオン化電流を測定することにより所定の化合物を検出する水素炎イオン化検出器(FID)等を有するものである。本実施形態の分析計40は、最終ガスに含まれるメタンの濃度を測定することにより、試料ガスに含まれる測定対象成分を分析するように構成されている。
【0031】
そして、本実施形態の反応ガスクロマトグラフ100は、図1に示すように、酸化用ガス供給管L2に当該酸化用ガス供給管L2内の圧力を測定する圧力計Pが設けられており、この圧力計Pにより得られる測定圧力に基づいて、試料ガス供給管L1におけるカラム10より上流の圧力である上流圧力を制御する圧力制御機構70を具備する。
【0032】
圧力計Pは、酸化用ガス供給管L2における加熱機構60の外部、すなわち加熱機構60により加熱されない部分に設けられており、より詳細には、酸化用ガス供給管L2における流体制御機構たるマスフローコントローラMFCと結束部材たる三方継手50との間(三方継手50より上流)に設けられている。
【0033】
圧力制御機構70は、図1に示すように、試料ガス供給管L1におけるカラム10より上流に設けられ、上流圧力を調整する上流圧力調整部たる圧力調整弁72と、前記圧力計Pにより得られる測定圧力に基づいて、前記圧力調整弁72を制御する圧力制御装置71とを有している。
より詳細には、この圧力制御機構70は、測定圧力をカラム10より下流の圧力とみなし、カラム10の下流の圧力と上流の圧力との差が一定になるように圧力調整弁72を制御する。即ち、試料ガス供給管L1におけるカラム10より上流で前記圧力調整弁72より下流に設けられた上流圧力計P’の測定値が、測定圧力に上述した差分を加算した目標値となるように圧力調整弁72を制御している。
【0034】
圧力制御装置71は、物理的には、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えたものであり、機能的には、図3に示すように、測定圧力受信部711と、上流圧力算出部712と、上流圧力制御部713とを有するものである。
これら各部は、前記メモリに記憶されたプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することによって実現される。
【0035】
測定圧力受信部711は、圧力計Pからの強度信号を受信して、圧力計Pにより得られた測定圧力を上流圧力算出部712に送信する。
【0036】
上流圧力算出部712は、測定圧力受信部711から受信した測定圧力を試料ガス供給管L1におけるカラム10より下流の圧力を下流圧力とみなし、上流圧力と下流圧力との差が所定の値以上になるように上流圧力を算出して、その値を上流圧力制御部713に送信する。
本実施形態の上流圧力算出部712は、上流圧力と下流圧力との差が分析中は一定の値になるように上流圧力を算出しており、この値は自由に変更できるように構成されている。
【0037】
上流圧力制御部713は、上流圧力計P’の測定値が上流圧力算出部712により算出された値になるように、圧力調整弁72を制御する。
【0038】
かかる反応ガスクロマトグラフ100は、酸化用ガス供給管L2内の圧力が、試料ガス供給管L1におけるカラム10より下流の圧力とほぼ等しくなることに着目してなされたものである。
したがって、上記本発明の構成によれば、圧力制御機構70が、圧力計Pにより得られる測定圧力に基づいて、上流圧力を制御するので、上流圧力と測定圧力にほぼ等しい下流圧力との差を一定に制御することができる。これにより、試料ガスに含まれる測定対象成分をカラム10で安定的に分離することができ、精度良く分析することが可能になる。
【0039】
また、圧力計Pを酸化用ガス供給管L2において加熱機構60により加熱されない部分に設けているので、当該圧力計Pが熱により故障することを防ぐことができる。さらに、酸化用ガス供給管L2は試料ガス供給管L1よりも太いので、圧力計Pの取り付けも比較的容易である。したがって、本実施形態に係る反応ガスクロマトグラフ100によれば、無理のない構成で分析精度の向上を実現することができる。
【0040】
加えて、試料ガス及び酸化用ガスを加熱する加熱機構60が設けられているので、試料ガス及び酸化用ガスを加熱して酸化触媒21に供給することができ、酸化反応部20での酸化反応を促進させることができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
例えば、前記実施形態では、圧力制御機構70は、酸化用ガス供給管L2に設けられた圧力計Pの測定圧力に基づいて上流圧力を制御していたが、図4に示すように、酸化用ガス供給管L2に設けられたマスフローコントローラMFCの圧力計P2の値に基づいて上流圧力を制御するように構成しても良い。
ここで、前記実施形態で述べたようにマスフローコントローラMFCは差圧式のものであり、酸化用ガス供給管L2の前段に設けられた第1圧力計P1と後段に設けられた第2圧力計P2とを具備している。この第2圧力計P2により得られる圧力と、前記実施形態の圧力計Pにより得られる測定圧力とは等しいので、上述したように、圧力制御機構70が、第2圧力計P2により得られる値に基づいて上流圧力を制御するように構成しても、試料ガスの流速を担保して、精度良く分析することができる。
また、既存の機器を用いることができ、装置全体の製造コストを削減することが可能になる。
【0043】
また、前記実施形態の反応ガスクロマトグラフ100は、酸化反応部と還元反応部とを具備するものであったが、酸化反応部又は還元反応部のいずれか一方のみを具備するものであっても良い。
図5には、酸化反応部を具備せず、還元反応部30を具備する反応ガスクロマトグラフ100を示している。具体的にこの反応ガスクロマトグラフ100は、試料ガスに含まれる、例えばCO、CO、ホルムアルデヒド等の測定対象成分を分析するものであって、測定対象成分を還元させることにより、各成分を組成が既知である例えばメタン等に変換し、このメタンの濃度を測定することで、試料ガスに含まれる測定対象成分を分析するように構成されたものである。
【0044】
そして、この反応ガスクロマトグラフ100は、図5に示すように、還元用ガス供給ライン(以下、還元ガス供給管と言う。)L3に当該還元用ガス供給管L3内の圧力を測定する圧力計Pが設けられており、この圧力計Pにより得られる測定圧力に基づいて、試料ガス供給管L1におけるカラム10より上流の圧力である上流圧力を制御する圧力制御機構70を具備するものである。
さらに、図5に示すように、還元用ガス供給管L3の一部を加熱する加熱機構60を具備しており、圧力計Pは、該加熱機構60の外部に設けられている。
なお、圧力制御機構70は、前記実施形態と同様に、圧力計Pにより測定される測定圧力と試料ガス供給管L1におけるカラムより上流の上流圧力との差が一定になるように制御するように構成されている。
【0045】
上述のように構成された反応ガスクロマトグラフ100によれば、試料ガスの流速を担保して分析精度を向上させることを、無理のない構成で実現することができる。
【0046】
また、前記実施形態では、圧力計が、酸化用ガス供給管において、マスフローコントローラと三方継手との間(三方継手より上流)に設けられていたが、三方継手より下流であっても良い。ただし、圧力計の設けられている位置が酸化反応部に近いほど、熱影響を受けやすくなる。
さらに、この圧力計を三方継手の第1開口より下流部分に設けて該三方継手内の圧力を測定するように構成しても良い。
【0047】
圧力計が熱影響を受けて故障することを防ぐべく、該圧力計は加熱機構の外部に設ける方が好ましいが、加熱機構の内部に設けられていても構わない。
【0048】
さらに、前記実施形態では、圧力制御機構は、圧力調整弁を制御するように構成されていたが、試料ガス供給管におけるカラムより上流の流量を調整する流量調整機構を設け、この流量調整機構を制御するように構成しても良い。
【0049】
酸化用ガス供給管は、試料ガス供給管から分岐して、分岐箇所において、試料ガスと酸化用ガスとを混合するように構成しても良い。
【0050】
測定対象が液体の場合は、カラムより上流に気化装置を設け、この気化装置によって当該測定対象を気化させて試料ガスにするように構成しても良い。
【0051】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、試料ガスの流速を担保して分析精度を向上させることを、無理のない構成で実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5