(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び前記第2コイル部は、前記第1部材の前記第2面に沿って配置された少なくとも1つの平面コイルを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載のリニアモータ。
前記第1及び第2コイル部に含まれるコイルを所定のベース部材に締結するための締結部材が前記コイルの空芯部を通過する請求項1〜11のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0015】
図1には、一実施形態に係る露光装置10の構成が概略的に示されている。露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系16bが設けられており、以下においては、投影光学系16bの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルRとウエハWとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0016】
露光装置10は、照明系12、レチクルステージ14、投影ユニット16、ウエハステージ24を含むステージ装置20、及びこれらの制御系を備えている。ウエハステージ24上には、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハWが載置されている。
【0017】
照明系12は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系12は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明光ILとしては、例えばArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0018】
レチクルステージ14は、パターン面(
図1における−Z側の面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRを、例えば真空吸着により保持している。レチクルステージ14は、例えばXY2自由度リニアモータ(不図示)を含むレチクルステージ駆動系42(
図1では不図示。
図5参照)によって、走査方向(Y軸方向)に所定のストロークで駆動可能、且つX軸、及びθz方向に微小駆動可能となっている。レチクルステージ14のXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報を含む)は、例えばレーザ干渉計システム(あるいはエンコーダシステム)を含むレチクル位置計測系44を用いて、主制御装置40(
図1では不図示。
図5参照)によって求められる。主制御装置40は、上記レチクル位置計測系44の出力に基づいて、レチクルステージ駆動系42が有するXY2自由度リニアモータを制御することによって、レチクルステージ14のXY平面内の位置(θz方向の回転量を含む)を制御する。
【0019】
投影ユニット16は、レチクルステージ14の下方(−Z側)に配置されている。投影ユニット16は、鏡筒16aと、鏡筒16a内に保持された投影光学系16bと、を含む。投影光学系16bとしては、例えば光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系16bは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。
【0020】
このため、照明系12からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系16bの第1面(物体面)とパターン面とがほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系16bを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系16bの第2面(像面)側に配置されるウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージ14とウエハステージ24との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRが走査方向に相対移動するとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWが走査方向に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では、照明系12、及び投影光学系16bによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0021】
ステージ装置20は、ウエハステージ24、及び定盤30を含む。
【0022】
ウエハステージ24は、箱形(直方体状)の部材から成り、上面に載置されたウエハWを、例えば真空吸着により保持する。
【0023】
定盤30は、平面視(+Z方向から見て)でY軸方向を長手方向とする矩形の板状部材(
図2参照)であって、上面がXY平面(水平面)にほぼ平行となるように、クリーンルームの床100上で複数の支持装置28により下方から支持されている。支持装置28は、定盤30の4隅部近傍を支持可能なように、例えば4つ設けられている。支持装置28は、不図示の空気ばねなどを有し、定盤30及び床100(
図1参照)相互間での振動の伝達を抑制する。
【0024】
定盤30は、複数のコイルユニット50を有している。コイルユニット50は、平面視ほぼ正方形の箱形の部材から成る。本実施形態において、複数のコイルユニット50には、ウエハステージ24をX軸(及びZ軸)方向に駆動するのに用いられるXコイルユニットと、ウエハステージ24をY軸(及びZ軸)方向に駆動するのに用いられるYコイルユニットと、が含まれる(ただし、特に説明する場合を除き、本明細書及び図面では、XコイルユニットとYコイルユニットとを特に区別せずに説明する)。複数のコイルユニット50それぞれは、個別に定盤本体部32に対して、例えばボルト(
図1では不図示)により着脱可能に固定されている。
【0025】
本実施形態において、複数のコイルユニット50は、
図2(A)及び
図2(B)から分かるように、XコイルユニットとYコイルユニットとが、X軸、及びY軸方向に互いに隣接するように(マトリクス状に)規則的に(定盤本体部32(
図1参照)上に複数のコイルユニット50を敷き詰めたように)配置されている。本実施形態において、コイルユニット50は、X軸方向に配列された、例えば9台のコイルユニット50から成るコイルユニット列が、Y軸方向に、例えば17列配置されることにより、合計で、例えば153台(9×17)設けられている。なお、コイルユニット50の数は、特に限定されず、例えば定盤30の広さなどに応じて適宜変更が可能である。
【0026】
図1に戻り、上述したウエハステージ24の内部であって、底面(定盤30の上面に対向する面)側の領域には、複数の磁石ユニット26が収納されている。ウエハステージ24は、複数の磁石ユニット26と、該磁石ユニット26に対応するコイルユニット50との間に電磁力(ローレンツ力)を発生させるムービングマグネットタイプの平面モータを含むウエハステージ駆動系46(
図1では不図示。
図5参照)により、複数のコイルユニット50それぞれの表面より形成されるXY平面に平行なガイド面に沿って定盤30(
図1参照)上を移動する。
【0027】
平面モータとしては、例えば米国特許出願公開第2013/0164687号明細書などに開示されるような、上記ローレンツ力によりウエハステージ24を定盤30に対して6自由度方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向)に適宜駆動することが可能な、いわゆる6DOF(degrees of freedom)駆動タイプの平面モータが用いられている。これにより、主制御装置40(
図1では不図示。
図5参照)は、ウエハステージ駆動系46を用いて、ウエハステージ24を定盤30上でX軸方向、及び/又はY軸方向に(XY平面に沿って)所定の長ストロークで駆動すること、ウエハステージ24を定盤30上に所定のクリアランスを介して浮上(磁気浮上)させること、並びに、XY平面に沿って移動するウエハステージ24をピッチング、ヨーイング、及びローリング方向に適宜微少駆動することができる。
【0028】
ウエハステージ24の6自由度方向の位置情報は、例えば2次元(あるいは3次元)エンコーダシステム、又は光干渉計システム(あるいはエンコーダシステムと光干渉計システムとを組み合わせたシステム)を含むウエハ位置計測系48を用いて、主制御装置40(
図5参照)によって求められる。なお、ウエハ位置計測系48の構成は、所望の分解能でウエハステージ24の6DOF方向の位置情報を求めることができれば、その構成は特に限定されない。
【0029】
次に、定盤30が有するコイルユニット50の構造について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3には、複数のコイルユニット50のうちのひとつが代表的に示されている。コイルユニット50は、回路基板52、ベースプレート54、複数のコイル56を含む下コイル部58、冷却プレート60、複数のコイル62を含む上コイル部64、恒温プレート66などを有している。
図3には、ウエハステージ24(
図1及び
図2参照)をY軸(及びZ軸)方向に駆動するのに用いられるYコイルユニットが一例として示されている。該Yコイルユニットにおいて、下コイル部58及び上コイル部64が有する複数のコイル56、62は、Y軸方向に平行に所定間隔で配列されている。なお、本実施形態のコイルユニット50において、下コイル部58及び上コイル部64は、コイル56、62を、例えば3つ有しているが、下コイル部58及び上コイル部64が有するコイルの数は、特に限定されず、適宜変更が可能である。
【0030】
回路基板52は、平面視ほぼ正方形の、いわゆるリジッドタイプのプリント回路板である。回路基板52上には、例えば複数のコイル56、62それぞれに対する電力供給、信号伝達などに用いられる配線回路が形成されるとともに、スイッチ素子などの電気素子が実装されている。
【0031】
ベースプレート54は、平面視ほぼ正方形の板状(あるいは箱形)の部材から成る。ベースプレート54は、回路基板52の上方(+Z側)に、該回路基板52に対して所定の隙間(クリアランス、ギャップ)を介してほぼ平行に配置されている。ベースプレート54の長さ方向(X軸方向)及び幅方向(Y軸方向)の寸法それぞれは、上記回路基板52とほぼ同じに設定されている。ベースプレート54と回路基板52とは、互いの四隅部近傍において、ネジ53を介して相互に締結されている。ベースプレート54は、例えばアルミナ(AL
2O
3)などの金属酸化物を原料とするセラミックスにより形成されている。
【0032】
ベースプレート54の上面には、
図4に示されるように、突起68が形成されている。本実施形態において、突起68は、下コイル部58が有する、例えば3つのコイル56、及び上コイル部64が有する、例えば3つのコイル62に対応して、Y軸方向に所定間隔で、例えば3つ形成されている(
図4では、ひとつのみ図示)。
【0033】
図3に戻り、複数(本実施形態では、例えば3つ)のコイル56を含み、下コイル部58は、ベースプレート54の上面上に載置(ベースプレート54と冷却プレート60との間に配置)されている。コイル56は、平面視でほぼ長方形(長円形)状の、いわゆる平面コイル(扁平コイル)である(
図2(B)参照)。本実施形態のコイル56は、
図4に示されるように、例えば銅により形成された細長い帯状の導線線56aがZ軸に平行な巻線軸(不図示)周りに数百回(例えば500回程度)巻かれることにより形成される。導線線56aの内側を向いた面と外側を向いた面との間には、例えば合成樹脂材料により形成された絶縁層56bが配置されている。なお、導線線56aを形成する材料は、銅に限られず、その他の導電性材料(例えばアルミニウムなど)を用いても良い。
【0034】
また、コイル56の上面、及び下面それぞれには、コーティング膜56cが形成されており、コイル56の上面、及び下面それぞれが平坦になっている。コーティング膜56cは、例えばアルミナなどの金属酸化物を原料とするセラミックスの溶射により形成される。これにより、コイル56の上面と冷却プレート60の下面との間に隙間が形成される(空気が介在する)ことが抑制され、コイル56と冷却プレート60との間で効率よく熱交換を行うことができる。これに対し、コイル56は、断熱材55(例えば発泡合成樹脂材により形成されたシート材)を介してベースプレート54の上面に接着されており、コイル56の発生する熱がベースプレート54に伝達し難くなっている。また、コイル56の外周面は、断熱材57により被覆されており、コイル56の発生する熱がコイルユニット50の外部に放出されることが抑制される。
【0035】
コイル56の空芯部内には、ベースプレート54の突起68が挿入されている。突起68のXY平面に平行な断面の形状は、コイル56の空芯部内に突起68が挿入された状態で、コイル56の空芯部を形成する壁面と突起68の外周面との間にほぼ一定な微小な隙間が形成されるように設定されている。また、コイル56の空芯部を形成する壁面と突起68の外周面との間には、接着剤69が充填され、ウエハステージ24(
図1参照)を駆動する際にコイル56に作用する駆動反力により、該コイル56がコイルユニット50内で移動する(ガタつく)ことが抑制される。
【0036】
図3に戻り、冷却プレート60は、平面視ほぼ正方形の厚さの薄い板状の部材(薄肉プレート)から成る。冷却プレート60の長さ方向及び幅方向の寸法それぞれは、ベースプレート54とほぼ同じに設定されている。冷却プレート60は、ベースプレート54の上方(+Z側)に、該ベースプレート54に対して所定の隙間を介してほぼ平行に配置され、下コイル部58が有する複数のコイル56上に載置されている。上述したように、複数のコイル56の上面と冷却プレート60の下面とは、実質的に密着している(
図4参照)。
【0037】
冷却プレート60は、例えばアルミナ(AL
2O
3)などの金属酸化物を原料とするセラミックスにより形成されている。冷却プレート60には、
図4に示されるように、突起68に対応して貫通孔60aが形成されている。本実施形態において、貫通孔60aは、例えば3つの突起68に対応して、例えば3つ形成されている(
図4ではひとつのみ図示)。貫通孔60aには、対応する突起68が挿通されている。突起68の外周面と貫通孔60aを形成する壁面との間の間には、ほぼ一定間隔の微小な隙間が形成され、該隙間には、接着剤69が充填されている。
【0038】
図3に戻り、複数(本実施形態では、例えば3つ)のコイル62を含み、上コイル部64は、冷却プレート60の上面上に載置(冷却プレート60と恒温プレート66の間に配置)されている。コイル62の構成は、上記コイル56と実質的に同じである。すなわち、コイル62は、
図4に示されるように、絶縁層62bを介して所定の巻線軸(不図示)周りに数百回巻かれた導線線62aにより形成され、上面及び下面それぞれにコーティング膜62cが形成されている。コイル62の下面は、コーティング膜62cを介して冷却プレート60の上面に実質的に密着している。また、コイル62の空芯部には、突起68が微小な隙間を介して挿通され、該隙間には、接着剤69が充填されている。また、コイル62の外周面は、断熱材63により被覆されている。
【0039】
ここで、冷却プレート60を用いた複数のコイル56、62の冷却系の構造について説明する。冷却プレート60には、複数のコイル56、62を冷却するための冷媒(以下、「冷却用冷媒」と称して説明する)が供給される。冷却用冷媒としては、例えば水、フロリナート(登録商標)などを用いることができる。冷却用冷媒は、
図1に示されるように、定盤30の下方に配置された冷媒循環装置18から定盤30に供給され、該定盤30内に配置された不図示の分岐管(マニホールド)を介して複数のコイルユニット50それぞれに分配される。コイルユニット50に供給された冷却用冷媒は、
図4に示されるように、ベースプレート54(突起68)内に形成された供給用管路70aを介して冷却プレート60に供給(案内)される。冷却プレート60内には、該冷却プレート60内のほぼ全体に渡って冷却用冷媒が行き渡るように、冷却プレート60内のほぼ全体にわたって管路72(いわゆるマイクロチャンネル)が形成されている。管路72は、冷却プレート60を形成する際に、例えばロールコンパクション法などの公知の製法により形成することができる。
【0040】
また、突起68の内部には、冷却プレート60から冷却用冷媒を回収するための回収用管路70bが形成されている。また、それぞれ不図示であるが、突起68の外周面には、上記供給用管路70aから冷却用冷媒を冷却プレート60に吐出するための開口部を含む吐出ポート部、及び回収用管路70bを介して冷却用冷媒を冷却プレート60から回収するための開口部を含む回収ポート部が設けられるとともに、冷却プレート60の上記貫通孔60aを形成する壁面には、吐出ポート部から吐出された冷却用冷媒を冷却プレート60内に導入するための開口部を含む導入ポート部、及び冷却プレート60内から冷却用冷媒を突起68(ベースプレート54)に戻すための開口部を含むリターンポート部が設けられている。突起68の外周面と冷却プレート60の貫通孔60aを形成する壁面との間には、例えばOリングなどのシール材(不図示)が複数配置され、冷却プレート60の貫通孔60a内に突起68が挿入された状態で、上記吐出ポート部と導入ポート部とがシール材を介して連通し、且つ上記リターンポート部と回収ポート部とが別のシール材を介して連通する。
【0041】
コイルユニット50は、コイル56、62の近傍の温度を計測するためのコイル温度センサ群80a(
図4では不図示。
図5参照)を有している。主制御装置40(
図5参照)は、該コイル温度センサ群80aの出力に基づいて、通電に伴い発熱するコイル56の温度が所望の範囲内となるように、冷媒循環装置18(
図5参照)から冷却プレート60に供給される冷却用冷媒の流量を制御する。なお、冷却プレート60内に形成される冷却用冷媒を通過させるための管路72は、1系統であっても良いし、複数系統が並列的に形成されていても良い。
【0042】
図3に戻り、恒温プレート66は、平面視ほぼ正方形の板状の部材から成る。恒温プレート66の長さ方向及び幅方向の寸法それぞれは、上記冷却プレート60とほぼ同じに設定されているが、厚みは、上記冷却プレート60よりも薄い。恒温プレート66は、冷却プレート60の上方(+Z側)に、該冷却プレート60に対して所定の隙間を介してほぼ平行に配置されている。恒温プレート66は、
図4に示されるように、前述したベースプレート54の突起68上に載置されている。
【0043】
恒温プレート66には段付きの貫通孔66a、突起68には、貫通孔68aがそれぞれ形成されており、該貫通孔66a、68aには、通しボルト74が挿通されている。通しボルト74の先端は、
図4では不図示であるが、回路基板52(
図3参照)に形成された貫通孔(不図示)を通過して定盤30の定盤本体部32(それぞれ
図1参照)に螺合している。これにより、コイルユニット50全体が定盤本体部32に一体的に(且つ着脱可能に)固定される。なお、
図4では、通しボルト74は、1本のみ図示されているが、実際には、
図3に示されるように、複数本用いられ、恒温プレート66、ベースプレート54、及び回路基板52には、複数の通しボルト74に対応して該貫通孔66a、68a(
図4参照)が複数形成されている。
【0044】
恒温プレート66には、該恒温プレート66の上面の温度を制御するための冷媒(以下、「温度制御用冷媒」と称する)が供給される。冷媒としては、例えば水、フロリナート(登録商標)などを用いることができる。温度制御用冷媒は、
図1に示されるように、冷媒循環装置18から上記冷却用冷媒とは別に定盤30に供給され、該定盤30内に配置された不図示の分岐管(マニホールド)を介して複数のコイルユニット50それぞれに分配される。コイルユニット50に供給された温度制御用冷媒は、
図4に示されるように、ベースプレート54(突起68)内に形成された供給用管路76aを介して恒温プレート66に案内される。恒温プレート66内には、該恒温プレート66内のほぼ全体に渡って温度制御用冷媒が行き渡るように、恒温プレート66内のほぼ全体にわたって管路78(いわゆるマイクロチャンネル)が形成されている。管路78は、恒温プレート66を形成する際に、例えばロールコンパクション法などの公知の製法により形成することができる。
【0045】
また、突起68の内部には、恒温プレート66から温度制御用冷媒を回収するための回収用管路76bが形成されている。また、
図4ではそれぞれ不図示であるが、突起68の上面には、上記供給用管路76aから温度制御用冷媒を恒温プレート66に吐出するための開口部を含む吐出ポート部、及び回収用管路76bを介して温度制御用冷媒を恒温プレート66から回収するための開口部を含む回収ポート部が設けられるとともに、恒温プレート66の下面には、吐出ポート部から吐出された温度制御用冷媒を恒温プレート66内に導入するための開口部を含む導入ポート部、及び恒温プレート66内から温度制御用冷媒を突起68(ベースプレート54)に戻すための開口部を含むリターンポート部が設けられている。突起68の上面と恒温プレート66の下面との間には、例えばOリングなどのシール材(不図示)が複数配置され、突起68上に恒温プレート66が載置された状態で、上記吐出ポート部と導入ポート部とがシール材を介して連通し、且つ上記リターンポート部と回収ポート部とが別のシール材を介して連通する。
【0046】
コイルユニット50は、恒温プレート66の表面近傍の温度を計測するための表面温度センサ群80b(
図4では不図示。
図5参照)を有している。主制御装置40(
図5参照)は、該表面温度センサ群80bの出力に基づいて、恒温プレート66の表面近傍の温度が一定(恒温状態)となるように、冷媒循環装置18(
図5参照)から恒温プレート66に供給される温度制御用冷媒の流量を制御する。なお、恒温プレート66内に形成される温度制御用冷媒を通過させるための管路78は、1系統であっても良いし、複数系統が並列的に形成されていても良い。
【0047】
ここで、上コイル部64が有する複数のコイル62それぞれの上面と、恒温プレート66の下面との間には隙間82(以下、空気層82とも称する)が形成されている。これにより、上コイル部64から発生する熱が恒温プレート66に伝達することが阻害され、恒温プレート66の温度上昇が抑制される。
【0048】
図5には、露光装置10(
図1参照)の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置40の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置40は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置10の構成各部を統括制御する。
【0049】
上記のように構成された露光装置10(
図1参照)では、まず、レチクルR及びウエハWが、それぞれレチクルステージ14及びウエハステージ24上にロードされ、レチクルアライメント及びベースライン計測、並びにウエハアライメント(例えばEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等)などの所定の準備作業が行われる。その後、主制御装置40の管理の下、ウエハWの第1番目のショット領域に対する露光のための加速開始位置にウエハステージ24が駆動されるとともに、レチクルRの位置が加速開始位置となるように、レチクルステージ14が駆動される。そして、レチクルステージ14と、ウエハステージ24とがY軸方向に沿って同期駆動されることで、ウエハW上の第1番目のショット領域に対する露光が行われる。以後、レチクル上のすべてのショット領域に対する露光が行われることで、ウエハWの露光が完了する。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、上コイル部64の有する複数のコイル62それぞれと、恒温プレート66との間に空気層82が形成されているので、コイル62が発生する熱が恒温プレート66に伝達し難い。従って、恒温プレート66を用いた定盤30の表面の温度制御を容易に行うことができる。また、上コイル部64の有する複数のコイル62それぞれと、恒温プレート66との間に空気層82を形成した簡単な構成であるので、コイルユニット50と磁石ユニット26とが過度に離間することが抑制される。
【0051】
また、コイル56、62それぞれの上面及び下面にコーティング膜56c、62cが形成されているので、コイル56、62の厚みを均一化することができ、コイル56、62の冷却プレート60に対する密着度を向上させるとことができる。また、コイル56、62の上下面の電気的な絶縁性を確保することができる。また、コイル56、62の機械的な剛性(例えば、捻れ剛性)が向上する。
【0052】
また、下コイル部58と上コイル部64との間に冷却プレート60が配置されているので、簡単な構成でコイル56、62を効率良く冷却することができる。また、冷却プレート60は、熱伝導性に優れるアルミナセラミックスにより形成されているので、冷却用冷媒とコイル56、62との熱交換を効率良く行うことができる。また、冷却プレート60は、非導電体であるアルミナセラミックスにより形成されているので、コイル56、62に対し電気的に絶縁されている。従って、コイル56、62と冷却プレート60とを密着させることができる。さらに、冷却プレート60、及び恒温プレート66は、非磁性体であるアルミナセラミックスにより形成されているので、コイル56、62に通電にしても、磁気吸引力が作用しない。また、コイル56、62が発生する磁場の減衰が抑制される。
【0053】
また、冷却プレート60自体が冷却用冷媒の流路を構成しているので、コイルユニット50を薄型化できる。同様に、恒温プレート66自体が温度制御用冷媒の流路を構成しているので、コイルユニット50を薄型化できる。
【0054】
また、冷却用冷媒を通過させる供給用管路70a(及び回収用管路70b)、並びに温度制御用冷媒を通過させる供給用管路76a(及び回収用管路76b)それぞれが、突起68内(すなわち、コイル56、62の空芯部内のスペース)に形成されているので、冷却用冷媒、及び温度制御用冷媒が、コイル56、62の熱の影響を受け難い。また、冷却用冷媒、及び温度制御用冷媒を通過させるための流路を、仮に隣接するコイル間に配置する場合に比べ、コイルユニット50を小型化すること(あるいは、コイルユニット50のサイズが同じである場合により大型のコイルを用いること)ができる。
【0055】
また、コイルユニット50を定盤本体部32(
図1参照)に固定するための通しボルト74が、突起68(ベースプレート54)内に挿通されるので、スペース効率が良く、仮に隣接するコイル間に通しボルト74を通過させる場合に比べ、コイルユニット50を小型化すること(あるいは、コイルユニット50のサイズが同じである場合により大型のコイルを用いること)ができる。
【0056】
なお、上記実施形態の露光装置10の構成は、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態において、上コイル部64と恒温プレート66との間には、空気層82(隙間)が形成され、該空気層82の作用により、上コイル部64と恒温プレート66との相互間の熱伝導が阻害されたが、これに限られず、該熱伝導を阻害することができれば、上コイル部64と恒温プレート66との間に、例えば発泡合成樹脂材(いわゆる断熱材)を介在させても良い。また、上コイル部64と恒温プレート66との間に真空層を形成しても良い。
【0057】
また、上記実施形態において、ベースプレート54、冷却プレート60、及び恒温プレート66は、アルミナを原料とするセラミックスにより形成されたが、これらの各部材を形成する材料の種類は、特に限定されず、例えばジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムなど(あるいはこれらの複合物)を原料とするセラミックスにより形成されても良い。また、ベースプレート54、冷却プレート60、及び恒温プレート66は、セラミックスに限られず、チタン合金、アルミニウム合金などの金属材料、あるいは合成樹脂材料により形成されても良い。ただし、ベースプレート54、冷却プレート60、及び恒温プレート66は、熱伝導性に優れ、非導体であり、かつ非磁性体である材料を用いて形成することが好ましい。
【0058】
また、冷却プレート60、及び恒温プレート66内の管路72、76は、例えば焼成前の板状部材に機械的加工、レーザ加工などにより形成しても良い。また、少なくとも一方に溝が形成された2枚のセラミックス板を貼り合わせて形成しても良い。
【0059】
また、上記実施形態のコイルユニット50は、上コイル部64と下コイル部58との2段構造であったが、これに限られず3段以上の構造であっても良い。この場合、冷却プレート60を上下に重なるコイル部間に追加的に挿入すると良い。
【0060】
また、平面モータを構成するコイルユニットとしては、国際公開第2013/070568号に開示されるように、互いに直交する方向に延びるコイル(Xコイル及びYコイル)を含んでいても良い。また、コイルは、平面視でほぼ正方形であっても良い。また、上記実施形態のコイル56、62は、帯状の導電線(ストリップ)により構成されたが、これに限られず、断面円形の導電線が用いられても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、ウエハステージ24を水平面に沿って駆動する平面モータのコイルユニット50について説明したが、これに限られず、例えばXY平面内の1軸方向にのみに推力を発生する1軸リニアモータのコイルユニットに上記実施形態のコイルユニット50の構成を適用しても良い。また、リニアモータとしては、ムービングマグネットタイプに限られず、ムービングコイルタイプであっても良い。
【0062】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F
2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、照明光ILの波長は、100nm以上の光に限られず、波長100nm未満の光を用いても良く、例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置にも上記実施形態を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0063】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系16bは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0064】
また、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、定盤30上にひとつのウエハステージ24が配置されたステージ装置20について説明したが、定盤30上に配置される移動体の数、種類は、適宜変更が可能であり、例えば米国特許出願公開第2010/0066992号明細書に開示されるような、ウエハステージを2つ備えたステージ装置、あるいは米国特許出願公開第2009/0268178号明細書に開示されるようなウエハステージと、計測ステージとを備えるステージ装置にも、上記実施形態は適用できる。
【0066】
また、例えば米国特許第8,004,650号明細書に開示されるような、投影光学系と露光対象物体(例えばウエハ)との間に液体(例えば純水)を満たした状態で露光動作を行う、いわゆる液浸露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
【0067】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
【0068】
また、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
【0069】
また、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0070】
また、露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0071】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態に係る露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。