特許第6382055号(P6382055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382055
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】被処理体を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20180820BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20180820BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20180820BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20180820BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
   H01L21/316 X
   H01L21/302 105A
   H01L21/31 C
   C23C16/42
   !H05H1/46 M
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-206614(P2014-206614)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-76621(P2016-76621A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】久松 亨
(72)【発明者】
【氏名】本田 昌伸
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−228707(JP,A)
【文献】 特開2011−109076(JP,A)
【文献】 特開平04−137725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 16/42
H01L 21/3065
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを有する被処理体を処理する方法であって、
被処理体を収容したプラズマ処理装置の処理容器内で、ハロゲン化ケイ素ガスを含む第1のガスのプラズマを生成して反応前駆体を形成する第1工程と、
前記処理容器内の空間をパージする第2工程と、
前記処理容器内で酸素ガスを含む第2のガスのプラズマを生成してシリコン酸化膜を形成する第3工程と、
前記処理容器内の空間をパージする第4工程と、
を含むシーケンスを繰り返してシリコン酸化膜を成膜し、
前記被処理体は、被エッチング層、該被エッチング層上に設けられた有機膜、及び、該有機膜上に設けられたシリコン含有反射防止膜を更に有し、
前記マスクは、前記反射防止膜上に設けられたレジストマスクであり、
該方法は、
前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、及び前記第4工程を含むシーケンスの実行の後、前記処理容器内で発生させたプラズマにより、前記反射防止膜の表面上の酸化シリコン製の領域を除去する工程と、
前記処理容器内で発生させたプラズマにより、前記反射防止膜をエッチングする工程と、
前記処理容器内で発生させたプラズマにより、前記有機膜をエッチングする工程と、
を更に含む、
方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であり、
前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、及び前記第4工程を含むシーケンスの実行の前に、前記処理容器内でプラズマを発生させて前記プラズマ処理装置の上部電極に負の直流電圧を印加することにより、前記マスクに二次電子を照射する工程を更に含む、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
マスクを有する被処理体を処理する方法であって、
被処理体を収容したプラズマ処理装置の処理容器内で、ハロゲン化ケイ素ガスを含む第1のガスのプラズマを生成して反応前駆体を形成する第1工程と、
前記処理容器内の空間をパージする第2工程と、
前記処理容器内で酸素ガスを含む第2のガスのプラズマを生成してシリコン酸化膜を形成する第3工程と、
前記処理容器内の空間をパージする第4工程と、
を含むシーケンスを繰り返してシリコン酸化膜を成膜し、
前記被処理体は、被エッチング層、及び、該被エッチング層上に設けられた有機膜を更に有し、
該方法は、
前記有機膜上に設けられた反射防止膜から前記マスクを形成するために、前記処理容器内で発生させたプラズマにより、その上にレジストマスクを有する反射防止膜をエッチングする工程と、
前記処理容器内で発生させたプラズマにより、前記有機膜をエッチングする工程と、
を更に含み、
前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、及び前記第4工程を含むシーケンスは、前記反射防止膜をエッチングする前記工程と前記有機膜をエッチングする前記工程との間に実行され、
該方法は、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、及び前記第4工程を含むシーケンスの実行の後、前記処理容器内で発生させたプラズマにより、前記有機膜の表面上の酸化シリコン製の領域を除去する工程を更に含む、方法。
【請求項4】
前記プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であり、
前記反射防止膜をエッチングする前記工程の前に、前記処理容器内でプラズマを発生させて前記プラズマ処理装置の上部電極に負の直流電圧を印加することにより、前記レジストマスクに二次電子を照射する工程を更に含む、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記反射防止膜をエッチングする前記工程の実行後、且つ、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、及び前記第4工程を含むシーケンスの実行前に、前記被処理体上に酸化シリコン製の保護膜を形成する工程を更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であり、
前記酸化シリコン製の保護膜を形成する前記工程では、前記処理容器内でプラズマが生成され、且つ、前記プラズマ処理装置のシリコン製の上部電極に、負の直流電圧が印加される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化シリコン製の保護膜を形成する前記工程では、前記処理容器内で、ハロゲン化ケイ素ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマが生成される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であり、
前記酸化シリコン製の保護膜を形成する前記工程では、前記プラズマ処理装置の酸化シリコン製の上部電極にプラズマ生成用の高周波電力が供給されることにより、水素ガス及び希ガスを含む混合ガスのプラズマが生成される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
マスクを有する被処理体を処理する方法であって、
被処理体を収容したプラズマ処理装置の処理容器内で、ハロゲン化ケイ素ガスを含む第1のガスのプラズマを生成して反応前駆体を形成する第1工程と、
前記処理容器内の空間をパージする第2工程と、
前記処理容器内で酸素ガスを含む第2のガスのプラズマを生成してシリコン酸化膜を形成する第3工程と、
前記処理容器内の空間をパージする第4工程と、
を含むシーケンスを繰り返してシリコン酸化膜を成膜し、
前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程、及び前記第4工程を含むシーケンスの実行の後、前記処理容器内で発生させたプラズマにより、前記シリコン酸化膜の、前記マスクの側面に沿って延在する領域が残されるように、該シリコン酸化膜をエッチングする工程を更に含む、方法。
【請求項10】
前記第1工程では、前記処理容器内の圧力が13.33Pa以上の圧力であり、プラズマ生成用の高周波電源の電力が100W以下である高圧低電力の条件に設定される、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1工程では、イオンを引き込み用のバイアス電力が前記被処理体を支持する載置台に印加されない、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化ケイ素ガスは、SiClガスである請求項1〜11の何れか一項の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被処理体を処理する方法に関するものであり、特にマスクの作成を含む方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスといった電子デバイスの製造プロセスでは、被エッチング層上にマスクを形成し、当該マスクのパターンを被エッチング層に転写するためにエッチングが行われる。マスクとしては、一般的に、レジストマスクが用いられる。レジストマスクは、フォトリソグラフィ技術によって形成される。したがって、被エッチング層に形成されるパターンの限界寸法は、フォトリソグラフィ技術によって形成されるレジストマスクの解像限界の影響を受ける。
【0003】
しかしながら、近年の電子デバイスの高集積化に伴い、レジストマスクの解像限界よりも小さい寸法のパターンを形成することが要求されるようになっている。このため、特許文献1に記載されているように、レジストマスク上にシリコン酸化膜を堆積させることにより、当該レジストマスクによって画成される開口の幅を縮小する技術が提案されている。
【0004】
具体的に、特許文献1に記載された技術では、原子層堆積法(ALD法)によってレジストマスク上にシリコン酸化膜が形成される。より具体的には、被処理体を収容した処理容器内に、有機シリコンを含むソースガスと活性化された酸素種とが交互に供給される。ソースガスとしては、アミノシランガスが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−82560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アミノシランは常温では液体であるので、特許文献1に記載されたALD法を利用するためには、アミノシランを気化させる装置が必要となる。このため、専用の成膜装置が必要となる。さらに、アミノシランガスを用いた成膜では、被処理体の温度が高温に維持される必要がある。これにより、被処理体に損傷がもたらされることがあり、また、製造される電子デバイスの特性、例えば電気特性が劣化することがある。
【0007】
したがって、マスクの開口幅の調整のために、専用の成膜装置を用いることなく、低温でシリコン酸化膜を形成することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様においては、マスクを有する被処理体を処理する方法が提供される。この方法は、(a)被処理体を収容したプラズマ処理装置の処理容器内で、ハロゲン化ケイ素ガスを含む第1のガスのプラズマを生成して反応前駆体を形成する第1工程と、(b)処理容器内の空間をパージする第2工程と、(c)処理容器内で酸素ガスを含む第2のガスのプラズマを生成してシリコン酸化膜を形成する第3工程と、(d)処理容器内の空間をパージする第4工程と、を含むシーケンス繰り返してシリコン酸化膜を形成する。
【0009】
ハロゲン化ケイ素ガス、例えば、SiClガス、SiBrガス、SiFガス、又はSiHClガスは、常温で気化状態にある。したがって、一態様に係る方法によれば、気化器を有する専用の成膜装置を用いずに、シリコンを含む前駆体を、低温でマスク上に堆積させることが可能である。また、この方法では、第2工程においてパージが行われ、続く第3工程において前駆体中のハロゲン元素が酸素に置換されシリコン酸化膜が形成される。その後、第4工程においてパージが行われる。なお、第2工程及び第4工程におけるパージは、ハロゲン化ケイ素ガスと酸素ガスとが同時に処理容器内に存在することを防止するために処理容器内のガスを置換する目的で行われるのであり、不活性ガスを処理容器内に流すガスパージ又は真空引きによるパージの何れであってもよい。したがって、ALD法と同様に、第1〜第4工程を含む1回のシーケンスの実行により、薄い膜厚を有するシリコン酸化膜をマスク上に比較的均一な膜厚で形成することができる。即ち、1回のシーケンスの実行により、薄い膜厚を有するシリコン酸化膜をコンフォーマルに形成することができる。故に、この方法は、マスクの開口幅の調整の制御性に優れている。さらに、マスクがシリコン酸化膜によって覆われるので、当該マスクのLER(Line Edge Roughness)も向上され得る。
【0010】
また、本方法では、シーケンスの繰り返し回数により、形成されるシリコン酸化膜の膜厚を調整することができる。したがって、マスクの開口幅を所望の開口幅に調整することができる。
【0011】
一実施形態では、第1工程において、処理容器内の圧力が13.33Pa以上の圧力であり、プラズマ生成用の高周波電源の電力が100W以下である高圧低電力の条件に設定されてもよい。このような高圧且つ低パワーの条件でプラズマを生成することにより、過剰なハロゲン元素の活性種の発生を抑制することができる。これにより、マスクの損傷、及び/又は、既に形成されているシリコン酸化膜の損傷を抑制することが可能となる。また、マスク上の各領域におけるシリコン酸化膜の膜厚の差異を低減することが可能となる。さらに、マスクが密に設けられている領域及び粗に設けられている領域が存在する場合に、即ち、マスクのパターンに粗密が存在する場合に、双方の領域に形成されるシリコン酸化膜の膜厚の差異を低減することが可能である。
【0012】
また、一実施形態では、イオン引き込み用のバイアス電力が被処理体を支持する載置台に印加されない。この実施形態によれば、凹凸部のマスク形状に対してマスクの上面及び側面、及び当該マスクの下地の表面のそれぞれに形成されるシリコン酸化膜の膜厚の均一性がより向上する。
【0013】
一実施形態では、被処理体は、被エッチング層、該被エッチング層上に設けられた有機膜、及び、該有機膜上に設けられたシリコン含有反射防止膜を更に有し、マスクは、反射防止膜上に設けられたレジストマスクである。この実施形態の方法は、(e)第1〜第4工程を含むシーケンスの実行の後、同一処理容器内で発生させたプラズマにより、反射防止膜の表面上の酸化シリコン製の領域を除去する工程と、(f)処理容器内で発生させたプラズマにより、反射防止膜をエッチングする工程と、(g)処理容器内で発生させたプラズマにより、有機膜をエッチングする工程と、を含む。この実施形態によれば、レジストマスク上にシリコン酸化膜が形成され、当該レジストマスクの開口の幅が調整され、しかる後に反射防止膜上の酸化シリコン製の領域が除去される。そして、反射防止膜及び有機膜がエッチングされることにより、被エッチング層のエッチング用のマスクが形成される。
【0014】
一実施形態では、プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置でもよく、当該実施形態の方法は、第1〜第4工程を含むシーケンスの実行の前に、処理容器内でプラズマを発生させて前記プラズマ処理装置の上部電極に負の直流電圧を印加することにより、マスクに二次電子を照射する工程を更に含んでいてもよい。この実施形態によれば、レジストマスクを改質し、後続の工程によるレジストマスクの損傷を抑制することが可能である。
【0015】
別の実施形態では、被処理体は、被エッチング層、及び、該被エッチング層上に設けられた有機膜を更に有し、マスクは、有機膜上に設けられており、当該実施形態の方法は、(h)処理容器内で発生させたプラズマにより、その上にレジストマスクを有する反射防止膜をエッチングする工程であり、該反射防止膜から前記マスクが形成される工程と、(i)処理容器内で発生させたプラズマにより、有機膜をエッチングする工程と、を更に含む。この実施形態の方法では、第1〜第4工程を含むシーケンスは、反射防止膜をエッチングする工程と有機膜をエッチングする工程との間に実行される。また、この実施形態の方法は、第1〜第4工程を含むシーケンスの実行の後、同一処理容器内で発生させたプラズマにより、有機膜の表面上の酸化シリコン製の領域を除去する工程を更に含む。この実施形態の方法では、反射防止膜から形成されるマスク上にシリコン酸化膜が形成され、当該マスクの開口の幅が調整される、しかる後に有機膜上の酸化シリコン膜の領域が除去される。そして、有機膜がエッチングされることにより、被エッチング層のエッチング用のマスクが形成される。
【0016】
一実施形態では、プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であり、当該実施形態の方法は、反射防止膜をエッチングする工程の前に、処理容器内でプラズマを発生させてプラズマ処理装置の上部電極に負の直流電圧を印加することにより、レジストマスクに二次電子を照射する工程を更に含んでいてもよい。この実施形態によれば、レジストマスクを改質し、後続の工程によるレジストマスクの損傷を抑制することが可能である。
【0017】
また、一実施形態の方法は、反射防止膜をエッチングする工程の実行後、且つ、第1〜第4工程を含むシーケンスの実行前に、被処理体上に酸化シリコン製の保護膜を形成する工程を更に含み得る。この実施形態によれば、第3工程において生成される酸素ガスのプラズマから有機膜を保護することが可能である。
【0018】
一実施形態では、プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であり、酸化シリコン製の保護膜を形成する工程では、処理容器内でプラズマが生成され、且つ、プラズマ処理装置のシリコン製の上部電極に、負の直流電圧が印加されてもよい。この実施形態では、上部電極からシリコンが放出される。また、処理容器内においてプラズマに晒される部材から酸素が放出される。そして、放出されたシリコンと酸素とが結合することにより、酸化シリコン製の保護膜が形成される。
【0019】
一実施形態では、酸化シリコン製の保護膜を形成する工程では、処理容器内で、ハロゲン化ケイ素ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマが生成される。この実施形態によれば、プラズマCVD法によって、酸化シリコン製の保護膜が形成される。
【0020】
一実施形態では、プラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であり、酸化シリコン製の保護膜を形成する工程では、プラズマ処理装置の酸化シリコン製の上部電極にプラズマ生成用の高周波電力が供給されることにより、水素ガス及び希ガスを含む混合ガスのプラズマが生成される。この実施形態では、上部電極から放出される酸化シリコンにより保護膜が形成される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、マスクの開口幅の調整のために、専用の成膜装置を用いることなく、低温でシリコン酸化膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図2】プラズマ処理装置の一例を示す図である。
図3図1に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
図4図1に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
図5】シリコン酸化膜の形成の原理を説明するための図である。
図6】別の実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図7図6に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
図8図6に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
図9】実験結果を示すグラフである。
図10】実験に用いたマスクMK1のパターンを示す平面図である。
図11】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1は、一実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。図1に示す方法MT1は、被処理体(以下、「ウエハW」ということがある)のレジストマスクの開口幅を縮小する方法である。一実施形態の方法MT1は、更に、被エッチング層のエッチングを行う方法となっている。また、一実施形態の方法MT1では、一連の工程を単一のプラズマ処理装置を用いて実行することが可能である。
【0025】
図2は、プラズマ処理装置の一例を示す図である。図2には、被処理体を処理する方法の種々の実施形態で利用可能なプラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。図2に示すように、プラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置であり、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有している。処理容器12は、例えば、アルミニウムから構成されており、その内壁面には陽極酸化処理が施されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0026】
処理容器12の底部上には、略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部14を構成する絶縁材料は、石英のように酸素を含み得る。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。また、処理容器12内には、載置台PDが設けられている。載置台PDは、支持部14によって支持されている。
【0027】
載置台PDは、その上面においてウエハWを保持する。載置台PDは、下部電極LE及び静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状をなしている。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0028】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。この静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。
【0029】
第2プレート18bの周縁部上には、ウエハWのエッジ及び静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、石英から構成され得る。
【0030】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24には、冷媒が循環するよう、供給される。この冷媒の温度を制御することにより、静電チャックESCによって支持されたウエハWの温度が制御される。
【0031】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0032】
また、プラズマ処理装置10には、加熱素子であるヒータHTが設けられている。ヒータHTは、例えば、第2プレート18b内に埋め込まれている。ヒータHTには、ヒータ電源HPが接続されている。ヒータ電源HPからヒータHTに電力が供給されることにより、載置台PDの温度が調整され、当該載置台PD上に載置されるウエハWの温度が調整されるようになっている。なお、ヒータHTは、静電チャックESCに内蔵されていてもよい。
【0033】
また、プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、載置台PDの上方において、当該載置台PDと対向配置されている。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。これら上部電極30と下部電極LEとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための処理空間Sが提供されている。
【0034】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。絶縁性遮蔽部材32は、絶縁材料から構成されており、例えば、石英のように酸素を含み得る。上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は処理空間Sに面しており、当該電極板34には複数のガス吐出孔34aが設けられている。この電極板34は、一実施形態では、シリコンから構成されている。また、別の実施形態では、電極板34は、酸化シリコンから構成され得る。
【0035】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0036】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを有している。複数のガスソースは、ハロゲン化ケイ素ガスのソース、酸素ガスのソース、窒素ガスのソース、フルオロカーボンガスのソース、及び、希ガスのソースを含み得る。ハロゲン化ケイ素ガスとしては、例えば、SiClガスが用いられ得る。また、ハロゲン化ケイ素ガスとしては、SiBrガス、SiFガス、又はSiHCl4ガスが用いられてもよい。また、フルオロカーボンガスとしては、CFガス、Cガス、Cガスといった任意のフルオロカーボンガスが用いられ得る。また、希ガスとしては、Heガス、Arガスといった任意の希ガスが用いられ得る。
【0037】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラといった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。したがって、プラズマ処理装置10は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、処理容器12内に供給することが可能である。
【0038】
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。デポシールドは、Yの他、例えば、石英のように酸素を含む材料から構成され得る。
【0039】
処理容器12の底部側、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間には排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方、且つ、処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0040】
また、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波電力を発生する電源であり、27〜100MHzの周波数、一例においては40MHzの高周波電力を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されていてもよい。
【0041】
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための第2の高周波電力、即ち高周波バイアス電力を発生する電源であり、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、一例においては3.2MHzの高周波バイアス電力を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0042】
また、プラズマ処理装置10は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は、処理空間S内に存在する正イオンを電極板34に引き込むための電圧を、上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。このような電圧が電源70から上部電極30に印加されると、処理空間Sに存在する正イオンが、電極板34に衝突する。これにより、電極板34から二次電子及び/又はシリコンが放出される。
【0043】
また、一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。具体的に、制御部Cntは、バルブ群42、流量制御器群44、排気装置50、第1の高周波電源62、整合器66、第2の高周波電源64、整合器68、電源70、ヒータ電源HP、及びチラーユニットに接続されている。
【0044】
制御部Cntは、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。制御部Cntからの制御信号により、ガスソース群から供給されるガスの選択及び流量、排気装置50の排気、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64からの電力供給、電源70からの電圧印加、ヒータ電源HPの電力供給、チラーユニットからの冷媒流量及び冷媒温度を制御することが可能である。なお、本明細書において開示される被処理体を処理する方法の各工程は、制御部Cntによる制御によってプラズマ処理装置10の各部を動作させることにより、実行され得る。
【0045】
再び図1を参照し、方法MT1について詳細に説明する。以下では、方法MT1の実施にプラズマ処理装置10が用いられる例について説明を行う。また、以下の説明においては、図3図4、及び図5を参照する。図3及び図4は、図1に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。図5は、シリコン酸化膜の形成の原理を説明するための図である。
【0046】
図1に示す方法MT1では、まず、工程ST1においてウエハWが準備される。工程ST1において準備されるウエハWは、図3の(a)に示すように、基板SB、被エッチング層EL、有機膜OL、反射防止膜AL、及びマスクMK1を有している。被エッチング層ELは、基板SB上に設けられている。被エッチング層ELは、有機膜OLに対して選択的にエッチングされる材料から構成される層であり絶縁膜が用いられる。例えば、被エッチング層ELは、酸化シリコン(SiO)から構成され得る。なお、被エッチング層ELは、多結晶シリコンといった他の材料から構成されていてもよい。有機膜OLは、被エッチング層EL上に設けられている。有機膜OLは、炭素を含む層であり、例えば、SOH(スピンオンハードマスク)層である。反射防止膜ALは、シリコン含有反射防止膜であり、有機膜OL上に設けられている。
【0047】
マスクMK1は、反射防止膜AL上に設けられている。マスクMK1は、レジスト材料から構成されたレジストマスクであり、フォトリソグラフィ技術によってレジスト層がパターニングされることにより作成される。マスクMK1は、反射防止膜ALを部分的に覆っている。また、マスクMK1は、反射防止膜ALを部分的に露出させる開口OP1を画成している。マスクMK1のパターンは、例えば、ライン・アンド・スペースパターンである。なお、マスクMK1は、平面視において円形の開口を提供するパターンを有していてもよい。或いは、マスクMK1は、平面視において楕円形状の開口を提供するパターンを有していてもよい。
【0048】
工程ST1では、図3の(a)に示すウエハWが準備され、当該ウエハWがプラズマ処理装置10の処理容器12内に収容され、載置台PD上に載置される。
【0049】
一実施形態の方法MT1では、次いで、工程ST2が実行される。工程ST2では、ウエハWに二次電子が照射される。具体的には、処理容器12内に水素ガス及び希ガスが供給され、第1の高周波電源62から高周波電力が供給されることにより、プラズマが生成される。また、電源70によって、上部電極30に負の直流電圧が印加される。これにより、処理空間S中の正イオンが上部電極30に引き込まれて、当該正イオンが上部電極30に衝突する。正イオンが上部電極30に衝突することにより、上部電極30からは二次電子が放出される。放出された二次電子がウエハWに照射されることにより、マスクMK1が改質される。なお、上部電極30に印加される負の直流電圧の絶対値のレベルが高い場合には、電極板34に正イオンが衝突することにより、当該電極板34の構成材料であるシリコンが、二次電子と共に放出される。放出されたシリコンは、プラズマに晒されたプラズマ処理装置10の構成部品から放出される酸素と結合する。当該酸素は、例えば、支持部14、絶縁性遮蔽部材32、及びデポシールド46といった部材から放出される。このようなシリコンと酸素の結合により、酸化シリコン化合物が生成され、当該酸化シリコン化合物がウエハW上に堆積してマスクMK1を覆い保護する。これら改質と保護の効果により、後続の工程によるマスクMK1の損傷が抑制される。なお、工程ST2では二次電子の照射による改質や保護膜の形成のため、第2の高周波電源64のバイアス電力を最小限にして、シリコンの放出を抑制してもよい。
【0050】
次いで、方法MT1では、シーケンスSQが一回以上実行される。シーケンスSQは、工程ST3、工程ST4、工程ST5、及び工程ST6を含んでいる。工程ST3では、処理容器12内においてハロゲン化ケイ素ガスを含む第1のガスのプラズマが生成される。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、ハロゲン化ケイ素ガス及び希ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、第1のガスのプラズマが生成される。第1のガスは、ハロゲン化ケイ素ガスとして、例えば、SiClガスを含む。また、第1のガスは、Arガス又はHeガスといった希ガスを更に含み得る。なお、第1のガスは、ハロゲン化ケイ素ガスとして、SiBrガス、SiFガス、又はSiHClガスを含んでいてもよい。
【0051】
図5の(a)に示すように、第1のガスのプラズマP1が生成されると、第1のガスに含まれるハロゲン化ケイ素の解離種といった反応前駆体が生成される。生成された前駆体はウエハWに付着する。なお、図5の(a)では、ハロゲン化ケイ素ガスとして、SiClガスが用いられる例が示されており、同図中、プラズマP1中のSiとClの結合は、前駆体を示している。
【0052】
続く工程ST4では、処理容器12内の空間がパージされる。具体的には、工程ST3において供給された第1のガスが排気される。工程ST4では、パージガスとして窒素ガスといった不活性ガスがプラズマ処理装置の処理容器に供給されてもよい。即ち、工程ST4のパージは、不活性ガスを処理容器内に流すガスパージ又は真空引きによるパージの何れであってもよい。この工程ST4では、ウエハW上に過剰に付着した前駆体も除去される。これにより、前駆体は極めて薄い膜をウエハW上に形成する。
【0053】
続く工程ST5では、処理容器12内において酸素ガスを含む第2のガスのプラズマが生成される。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、酸素ガスを含む第2のガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。
【0054】
上述したように工程ST3の実行によってウエハWに付着した前駆体はシリコンとハロゲン元素、例えば塩素との結合を含む。シリコンとハロゲン元素との結合エネルギーは、シリコンと酸素との結合エネルギーよりも低い。したがって、図5の(b)に示すように、第2のガスのプラズマP2が生成され、酸素の活性種、例えば、酸素ラジカルが生成されると、前駆体のハロゲン元素が酸素に置換される。これにより、ウエハW上にシリコン酸化膜が形成される。なお、図5の(b)において、「O」は酸素を示している。
【0055】
図1に戻り、続く工程ST6では、処理容器12内の空間がパージされる。具体的には、工程ST5において供給された第2のガスが排気される。工程ST6では、パージガスとして窒素ガスといった不活性ガスがプラズマ処理装置の処理容器に供給されてもよい。即ち、工程ST6のパージは、不活性ガスを処理容器内に流すガスパージ又は真空引きによるパージの何れであってもよい。
【0056】
かかるシーケンスSQの工程ST3では、前駆体用のガスとしてハロゲン化ケイ素ガスが用いられている。ハロゲン化ケイ素ガス、例えば、SiClガス、SiBrガス、SiFガス、又はSiHClガスは、常温で気化状態にある。したがって、工程ST3では、気化器を有する専用の成膜装置を用いずに、シリコンを含む前駆体を、低温でウエハW上に堆積させることが可能である。
【0057】
また、シーケンスSQでは、工程ST4においてパージが行われ、続く工程ST5において前駆体中のハロゲン元素が酸素に置換される。したがって、ALD法と同様に、1回のシーケンスSQの実行により、薄い膜厚を有するシリコン酸化膜をウエハWの表面上に均一な膜厚で形成することができる。即ち、1回のシーケンスの実行により、薄い膜厚を有するシリコン酸化膜をコンフォーマルに形成することができる。故に、シーケンスSQを含む方法MT1は、マスクMK1によって構成される開口の幅の調整の制御性に優れている。さらに、マスクMK1がシリコン酸化膜によって覆われるので、当該マスクMK1とシリコン酸化膜によって形成されるマスクのLER(Line Edge Roughness)が向上され得る。
【0058】
方法MT1では、続く工程ST7において、シーケンスSQの実行を終了するか否かが判定される。具体的には、工程ST7では、シーケンスSQの実行回数が所定回数に達したか否かが判定される。シーケンスSQの実行回数は、ウエハW上に形成されるシリコン酸化膜の膜厚を決定する。即ち、1回のシーケンスSQの実行によって形成されるシリコン酸化膜の膜厚とシーケンスSQの実行回数との積により、最終的にウエハW上に形成されるシリコン酸化膜の膜厚が実質的に決定される。したがって、ウエハW上に形成されるシリコン酸化膜の所望の膜厚に応じて、シーケンスSQの実行回数が設定される。
【0059】
方法MT1では、工程ST7においてシーケンスSQの実行回数が所定回数に達していないと判定される場合には、シーケンスSQの実行が再び繰り返される。一方、工程ST7においてシーケンスSQの実行回数が所定回数に達していると判定される場合には、シーケンスSQの実行が終了する。これにより、図3の(b)に示すように、ウエハWの表面上にシリコン酸化膜SXが形成される。シリコン酸化膜SXは、領域R1、領域R2及び領域R3を含んでいる。領域R3は、マスクMK1の側面上で当該側面に沿って延在する領域である。領域R3は、反射防止膜ALの表面から領域R1の下側まで延在している。領域R1は、マスクMK1の上面の上及び領域R3上で延在している。また、領域R2は、隣接する領域R3の間、且つ、反射防止膜ALの表面上で延在している。上述したように、シーケンスSQは、ALD法と同様にシリコン酸化膜を形成するので、領域R1、領域R2、及び領域R3のそれぞれの膜厚は、互いに略等しい膜厚となる。また、方法MT1によれば、緻密なシリコン酸化膜SX、例えば、膜密度2.28g/cmの膜が得られる。
【0060】
一実施形態においては、工程ST3の実行時の処理容器12内の圧力は、13.33Pa(100mTorr)以上の圧力に設定される。また、工程ST3の実行時の第1の高周波電源62の高周波電力は、100W以下の電力に設定される。このような高圧且つ低パワーの条件でプラズマを生成することにより、ハロゲン化ケイ素ガスの過剰な解離を抑制することができる。即ち、ハロゲン元素の活性種の過剰な発生を抑制することができる。なお、過剰解離を抑制した同様なプラズマ状態を生成する手法として第2の高周波電源64を用いてもよい。これにより、マスクMK1の損傷、及び/又は、既に形成されているシリコン酸化膜の損傷を抑制することが可能となる。また、領域R1、領域R2、及び領域R3の膜厚の差異を低減することが可能となる。さらに、マスクMK1が密に設けられている領域及び粗に設けられている領域が存在する場合に、即ち、マスクMK1のパターンに粗密が存在する場合に、双方の領域に形成されるシリコン酸化膜の膜厚の差異を低減することが可能である。
【0061】
また、一実施形態では、工程ST3の実行時に、第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力は下部電極LEに殆ど供給されない。これは、バイアス電力を印加すると異方性成分が生じることによる。このようにバイアス電力を最小限にすることにより、前駆体を等方的にウエハWに付着させることができる。その結果、マスクMK1の上面及び側面、並びに当該マスクMK1の下地の表面のそれぞれに形成されるシリコン酸化膜の膜厚の均一性が更に向上される。なお、第2の高周波電源64を用いてプラズマを生成する場合は、前駆体を等方的に付着させるためにイオンエネルギーを最小限にする条件の選択が必要となる。また、工程ST5の実行は工程ST3で付着した前駆体をシリコン酸化膜に置換するため、前述の工程ST3と同様な等方的な反応が必要となる。そのため工程ST5においても第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力は下部電極LEに殆ど供給されない。
【0062】
上述したシーケンスSQの実行が終了すると、方法MT1では、工程ST8が実行される。工程ST8では、領域R1及び領域R2を除去するように、シリコン酸化膜SXがエッチングされる。これら領域R1及び領域R2の除去のためには、異方性のエッチング条件が必要である。このため、工程ST8では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給されてプラズマが生成される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、高周波バイアス電力による鉛直方向への引き込みにより、領域R1及び領域R2を優先的にエッチングする。その結果、図3の(c)に示すように、領域R1及び領域R2が除去され、残された領域R3からマスクMSが形成される。マスクMSはマスクMK1と共に、マスクMK1の開口OP1の幅を縮小させるように構成されたマスクMK2を形成する。このマスクMK2によって、開口OP1の幅よりも小さい幅の開口OP2が提供される。
【0063】
続く工程ST9では、反射防止膜ALがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、反射防止膜ALの全領域のうちマスクMK2から露出した領域をエッチングする。これにより、図4の(a)に示すように、反射防止膜ALからマスクALMが形成される。この後、マスクMK2は除去されてもよい。
【0064】
続く工程ST10では、有機膜OLがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、酸素ガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、酸素ガスを含む処理ガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中の酸素の活性種は、有機膜OLの全領域のうちマスクALMから露出した領域をエッチングする。これにより、図4の(b)に示すように、有機膜OLからマスクOLMが形成される。このマスクOLMが提供する開口OP3の幅は、開口OP2(図3の(c)を参照)の幅と略同一となる。なお、有機膜OLをエッチングするガスとしては、窒素ガスと水素ガスを含む処理ガスを用いてもよい。
【0065】
続く、工程ST11では、被エッチング層ELがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、処理ガスが処理容器12内に供給される。処理ガスは、被エッチング層ELを構成する材料に応じて適宜選択され得る。例えば、被エッチング層ELが酸化シリコンから構成されている場合には、処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み得る。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、プラズマが生成される。生成されたプラズマ中の活性種は、被エッチング層ELの全領域のうち、マスクOLMから露出した領域をエッチングする。これにより、図4の(c)に示すように、マスクOLMのパターンが被エッチング層ELに転写される。かかる方法MT1によれば、工程ST2〜工程ST11、即ち、レジストマスクに基づくマスクの作成から被エッチング層のエッチングまでの全工程を、単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能である。
【0066】
以下、別の実施形態の被処理体を処理する方法について説明する。図6は別の実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。以下では、図6に示す方法MT2においてプラズマ処理装置10が用いられる例について説明を行う。また、以下の説明においては、図7及び図8を参照する。図7及び図8は、図6に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
【0067】
方法MT2では、まず、工程ST21が実行される。工程ST21は、方法MT1の工程ST1と同様の工程である。したがって、工程ST21では、図7の(a)に示すウエハWが準備され、当該ウエハWが処理容器12内に収容されて、載置台PD上に載置される。
【0068】
次いで、方法MT2では、方法MT1の工程ST2と同様の工程ST22が実行される。即ち、ウエハWに二次電子が照射されマスクMK1が改質される。また、上部電極30に印加される負の直流電圧の絶対値のレベルが高い場合には、工程ST2に関して上述したように、電極板34のスパッタリングにより当該電極板34から放出されるシリコンとプラズマに晒されたプラズマ処理装置10の構成部品から放出される酸素との結合により酸化シリコン化合物が生成され、当該酸化シリコン化合物がウエハW上に堆積してマスクMK1を保護してもよい。
【0069】
続く工程ST23では、反射防止膜ALがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、反射防止膜ALの全領域のうちマスクMK1から露出した領域をエッチングする。これにより、図7の(b)に示すように、反射防止膜ALからマスクALM2が形成される。
【0070】
続く工程ST24では、図7の(b)に示すウエハWの表面上に保護膜PFが形成される。この保護膜PFは、後のシーケンスSQ2の実行時に生成される酸素の活性種から有機膜OLを保護するために形成される。
【0071】
一実施形態では、上部電極30の電極板34はシリコンから構成される。この実施形態の工程ST24では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、例えば、水素ガス及び希ガスを含む混合ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、処理容器12内においてプラズマが生成される。さらに、電源70から上部電極30に負の直流電圧が印加される。これにより、プラズマ中の正イオンが電極板34に衝突し、当該電極板34からシリコンが放出される。また、プラズマに晒されたプラズマ処理装置10の部品から酸素が放出される。このように放出された酸素と電極板34から放出されたシリコンとが結合し、酸化シリコンが生成され、当該酸化シリコンがウエハW上に堆積して、図7の(c)に示すように、保護膜PFが形成される。
【0072】
別の実施形態の工程ST24では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、ハロゲン化ケイ素ガス、及び酸素ガスを含む混合ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、酸化シリコンが生成され、当該酸化シリコンがウエハW上に堆積して、図7の(c)に示すように、保護膜PFが形成される。
【0073】
更に別の実施形態では、上部電極30の電極板34は酸化シリコンから構成される。この実施形態の工程ST24では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、例えば、水素ガス及び希ガスを含む混合ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から上部電極30に高周波電力が供給される。また、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、処理容器12内においてプラズマが生成される。また、上部電極30の近傍で生成されるシース電圧により、プラズマ中の荷電粒子が電極板34に衝突する。これにより、酸化シリコンが電極板34から放出され、当該酸化シリコンがウエハW上に堆積して、図7の(c)に示すように、保護膜PFが形成される。なお、この工程ST24では酸化シリコンを堆積させて保護膜を形成するため、第2の高周波電源64のバイアス電力は最小限にする必要がある。
【0074】
方法MT2では、次いで、工程ST25、工程ST26、工程ST27、及び工程ST28を含むシーケンスSQ2が所定回数実行される。シーケンスSQ2はシーケンスSQと同様のシーケンスである。したがって、工程ST25、工程ST26工程ST27、及び工程ST28はそれぞれ、工程ST3、工程ST4、工程ST5、工程ST6と同様の工程である。
【0075】
かかるシーケンスSQ2が所定回数実行されることにより、図7の(d)に示すように、ウエハW上には、シリコン酸化膜SX2が形成される。シリコン酸化膜SX2は、領域R1、領域R2及び領域R3を含んでいる。領域R3は、マスクMK1及びマスクALM2の側面上で当該側面に沿って延在する領域である。領域R3は、有機膜OL上に形成された保護膜PFの表面から領域R1の下側まで延在している。領域R1は、マスクMK1の上面の上及び領域R3上で延在している。また、領域R2は、隣接する領域R3の間、且つ、有機膜OLの表面上(即ち、有機膜OL上の保護膜PF上)で延在している。シーケンスSQ2は、ALD法と同様にシリコン酸化膜を形成するので、領域R1、領域R2、及び領域R3のそれぞれの膜厚は、互いに略等しい膜厚となる。
【0076】
工程ST29は、方法MT1の工程ST7と同様の工程であり、当該工程ST29においてシーケンスSQ2の実行回数が所定回数に達していると判定されると、次いで、工程ST30が実行される。工程ST30では、領域R1及び領域R2を除去するように、シリコン酸化膜SX2がエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、高周波バイアス電力による鉛直方向への引き込みにより、領域R1及び領域R2を優先的にエッチングする。その結果、図8の(a)に示すように、領域R1及び領域R2が除去され、残された領域R3からマスクMS2が形成される。マスクMS2はマスクALM2と共に、MK1の開口OP1の幅を縮小させるように構成されたマスクMK22を形成する。このマスクMK22によって、開口OP1の幅よりも小さい幅の開口OP2が提供される。
【0077】
続く工程ST31では、有機膜OLがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、酸素ガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、酸素ガスを含む処理ガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中の酸素の活性種は、有機膜OLの全領域のうちマスクMK22から露出した領域をエッチングする。これにより、図8の(b)に示すように、有機膜OLからマスクOLMが形成される。このマスクOLMが提供する開口OP3の幅は、開口OP2(図8の(a)を参照)の幅と略同一となる。
【0078】
続く、工程ST32では、被エッチング層ELがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、処理ガスが処理容器12内に供給される。処理ガスは、被エッチング層ELを構成する材料に応じて適宜選択され得る。例えば、被エッチング層ELが酸化シリコンから構成されている場合には、処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み得る。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、プラズマが生成される。生成されたプラズマ中の活性種は、被エッチング層ELの全領域のうち、マスクOLMから露出した領域をエッチングする。これにより、図8の(c)に示すように、マスクOLMのパターンが被エッチング層ELに転写される。
【0079】
かかる方法MT2によれば、気化器を有する専用の成膜装置を用いずにシリコンを含む前駆体を、低温でウエハW上に堆積させることが可能である。また、ALD法と同様のシーケンスSQ2によってシリコン酸化膜が形成されるので、方法MT2は、マスクMK1によって画成される開口の幅の調整の制御性に優れている。また、方法MT2によれば、マスクALM2がシリコン酸化膜によって覆われるので、当該マスクALM2とシリコン酸化膜によって形成されるマスクのLER(Line Edge Roughness)が向上され得る。さらに、かかる方法MT2によれば、工程ST22〜工程ST32、即ち、レジストマスクに基づくマスクの作成から被エッチング層のエッチングまでの全工程を、単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能である。
【0080】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態では、容量結合型のプラズマ処理装置10が用いられているが、方法MT1及び方法MT2のそれぞれから、二次電子、シリコン、又は酸化シリコンを上部電極から放出させる工程を省略した方法であれば、任意のプラズマ源を有するプラズマ処理装置を用いて実施することが可能である。そのようなプラズマ処理装置としては、例えば、誘導結合型のプラズマ処理装置、マイクロ波といった表面波を用いるプラズマ処理装置が例示される。
【0081】
以下、方法MT1及び方法MT2の評価のために行った種々の実験について説明する。
【0082】
(実験例1〜3)
【0083】
実験例1〜3では、図3の(a)に示したウエハに対して、プラズマ処理装置10を用いて工程ST2、及びシーケンスSQを実行した。また、実験例1〜3では、工程ST3の実行時の処理容器12内の圧力及び第1の高周波電源62の高周波電力をパラメータとして変更した。具体的には、実験例1では、工程ST3の処理容器12内の圧力及び第1の高周波電源62の高周波電力を、200mTorr(26.66Pa)、500Wに設定し、実験例2では、工程ST3の処理容器12内の圧力及び第1の高周波電源62の高周波電力を、200mTorr(26.66Pa)、500Wに設定し、実験例3では、工程ST3の処理容器12内の圧力及び第1の高周波電源62の高周波電力を、200mTorr(26.66Pa)、100Wに設定した。実験例1〜3において実行した工程ST2、及びシーケンスSQの他の条件を以下に示す。なお、シーケンスSQの実行回数は72回であった。
【0084】
<工程ST2の条件>
・処理容器内圧力:50mTorr(6.66Pa)
・水素ガス流量:100sccm
・Arガス流量:800sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、300W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・電源70の印加電圧:−1000V
・処理時間:60秒
<工程ST3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiClガス流量:20sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程ST5の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・酸素ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・処理時間:5秒
【0085】
そして、マスクMK1の上面上に形成されたシリコン酸化膜の膜厚(図3の(b)に示す領域R1の膜厚T1)、及びマスクMK1の側面上に形成されたシリコン酸化膜の膜厚(図3の(b)に示す領域R3の膜厚W3)を、マスクMK1のラインパターンが粗に設けられている領域(以下、「粗領域」という)と密に設けられている領域(以下、「密領域」という)のそれぞれにおいて測定した。そして、膜厚比、即ち、密領域の領域R1の膜厚に対する粗領域の領域R1の膜厚の比、及び、密領域の領域R3の膜厚に対する粗領域の領域R3の膜厚の比を求めた。その結果を、図9に示す。なお、図9において、凡例「R1」は、領域R1の膜厚から求めた膜厚比を示しており、凡例「R3」は、領域R3の膜厚から求めた膜厚比を示している。
【0086】
図9に示すように、第1の高周波電源62の高周波電力が小さくなるほど、膜厚比は1により近くなっていた。即ち、密領域及び粗領域に形成されるシリコン酸化膜の膜厚の差異が少なくなっていた。より詳細には、第1の高周波電源62の高周波電力が500Wであるときよりも、100Wであるときに、膜厚比が1に近くなっていた。したがって、第1の高周波電源62の高周波電力が100W以下であることにより、密領域に形成されるシリコン酸化膜と粗領域に形成されるシリコン酸化膜の膜厚の差異を小さくすることが可能であることが確認された。また、図9に示すように、処理容器12内の圧力が高い条件、即ち、高圧条件下で工程ST3を実行することにより、領域R1の膜厚比と領域R3の膜厚比との差異が小さくなることが確認された。即ち、高圧条件下で工程ST3を実行することにより、領域R1の膜厚T1と領域R3の膜厚W3との差異が小さくなることが確認された。
【0087】
(実験例4)
【0088】
実験例4では、図10に示すように、二次元的に配列された楕円形状の複数の開口OPを提供するマスクMK1を有するサンプル1〜4のウエハWを準備した。各サンプルの開口OPの短軸方向の幅CD1及び長軸方向の幅CD2は、他のサンプルのCD1及びCD2とは異ならせた。そして、これらのサンプル1〜4に対して、プラズマ処理装置10を用いて、工程ST2及びシーケンスSQを実行した。また、実験例4では、シーケンスSQの実行回数をパラメータとして変更した。以下、実験例4において実行した工程ST2及びシーケンスSQの条件を示す。
【0089】
<工程ST2の条件>
・処理容器内圧力:50mTorr(6.66Pa)
・水素ガス流量:100sccm
・Arガス流量:800sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、300W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・電源70の印加電圧:−1000V
・処理時間:60秒
<工程ST3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiClガス流量:20sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程ST5の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・酸素ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・処理時間:5秒
【0090】
そして、サンプル1〜4のそれぞれについて、シーケンスSQの実行回数と開口OPの短軸方向の幅CD1の変化量、開口OPの長軸方向の幅CD2の変化量の関係を求めた。図11にその結果を示す。図11においては、横軸はシーケンスSQの実行回数を示しており、縦軸はCD1及びCD2の変化量を示している。図11に示すように、実験例4の結果、開口OPの短軸方向の幅CD1の変化量及び長軸方向の幅CD2の変化量は、シーケンスSQの実行回数につれて同様に増加していた。このことから、シーケンスSQの実行回数に応じて、楕円形状の開口の幅を任意の方向において均等に縮小させることが可能であることが確認された。
【0091】
(実験例5〜6、比較実験例1〜2)
【0092】
実験例5では、図3の(a)に示したウエハWに対して、プラズマ処理装置10を用いて、工程ST3〜工程ST10を実行した。実験例5におけるシーケンスSQの実行回数は72回であった。また、実験例6では、図3の(a)に示したウエハWに対して、プラズマ処理装置10を用いて、工程ST2〜工程ST10を実行した。実験例6におけるシーケンスSQの実行回数は72回であった。また、比較実験例1では、図3の(a)に示したウエハWに対して、プラズマ処理装置10を用いて、反射防止膜ALのエッチング工程、有機膜OLのエッチング工程を順に行った。比較実験例2では、図3の(a)に示したウエハWに対して、プラズマ処理装置10を用いて、二次電子の照射によるマスクMK1の改質工程、反射防止膜ALのエッチング工程、有機膜OLのエッチング工程を順に行った。なお、比較実験例1及び比較実験例2では、最終的に有機膜OLから作成されるマスクの開口の幅が実験例5及び6において有機膜OLから作成されるマスクの開口の幅と同等となるように、各工程の条件を設定した。以下、実験例5及び6における工程ST2及びシーケンスSQの条件を示す。
【0093】
<工程ST2の条件>
・処理容器内圧力:50mTorr(6.66Pa)
・水素ガス流量:100sccm
・Arガス流量:800sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、300W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・電源70の印加電圧:−1000V
・処理時間:60秒
<工程ST3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiClガス流量:20sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程ST5の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・酸素ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13MHz、0W
・処理時間:5秒
【0094】
そして、実験例5、実験例6、比較実験例1、及び比較実験例2のそれぞれの実行後に有機膜OLから形成されたマスクのLER(Line Edge Roughness)、LWR(Line Width Roughness)、及びSWR(Sidewall Roughness)の合計値を求めた。その結果、実験例5、実験例6、比較実験例1、及び比較実験例2のそれぞれのLER、LWR、及びSWRの合計値は、7.0nm、6.7nm、8.5nm、及び7.5nmであった。したがって、シーケンスSQを含む方法によれば、マスクのLERを向上させること、即ち、LERを小さくすることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0095】
10…プラズマ処理装置、12…処理容器、PD…載置台、ESC…静電チャック、LE…下部電極、30…上部電極、34…電極板、40…ガスソース群、50…排気装置、62…第1の高周波電源、64…第2の高周波電源、70…電源、Cnt…制御部、W…ウエハ、SB…基板、EL…被エッチング層、OL…有機膜、AL…反射防止膜、MK1…マスク、SX,SX2…シリコン酸化膜。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11