(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記離型フィルムの短手方向における前記支持部材の幅の合計をsD、前記接着剤層の直径をaφ、前記離型フィルムの短手方向の長さをLとしたとき、0mm < [(sD+aφ)−L]<20mmであることを特徴とする請求項1に記載のウェハ加工用テープ。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体ウェハを個々のチップに切断分離(ダイシング)する際に半導体ウェハを固定するためのダイシングテープと、切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するため、又は、スタックドパッケージにおいては、半導体チップ同士を積層、接着するためのダイボンディングフィルム(ダイアタッチフィルムともいう)との2つの機能を併せ持つダイシング・ダイボンディングテープが開発されている。
【0003】
このようなダイシング・ダイボンディングテープとしては、ウェハへの貼り付けや、ダイシングの際のリングフレームへの取り付け等の作業性を考慮して、プリカット加工が施されたものがある。
【0004】
プリカット加工されたダイシング・ダイボンディングテープの例を、
図4及び
図5に示す。
図4は、ダイシング・ダイボンディングテープをロール状に巻き取った状態を示す図であり、
図5(a)は、ダイシング・ダイボンディングテープの平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の線B−Bによる断面図である。ダイシング・ダイボンディングテープ50は、離型フィルム51と、接着剤層52と、粘着フィルム53とからなる。接着剤層52は、ウェハの形状に対応する円形に加工されたものであり、円形ラベル形状を有する。粘着フィルム53は、ダイシング用のリングフレームの形状に対応する円形部分の周辺領域が除去されたものであり、図示のように、円形ラベル部53aと、その外側を囲むような周辺部53bとを有する。接着剤層52と粘着フィルム53の円形ラベル部53aとは、その中心を揃えて積層され、また、粘着フィルム53の円形ラベル部53aは、接着剤層52を覆い、且つ、その周囲で離型フィルム51に接触している。
【0005】
ウェハをダイシングする際には、積層状態の接着剤層52及び粘着フィルム53から離型フィルム51を剥離し、
図6に示すように、接着剤層52上に半導体ウェハWの裏面を貼り付け、粘着フィルム53の円形ラベル部53aの外周部にダイシング用リングフレームRを粘着固定する。この状態で半導体ウェハWをダイシングし、その後、粘着フィルム53に紫外線照射等の硬化処理を施して半導体チップをピックアップする。このとき、粘着フィルム53は、硬化処理によって粘着力が低下しているので、接着剤層52から容易に剥離し、半導体チップは裏面に接着剤層52が付着した状態でピックアップされる。半導体チップの裏面に付着した接着剤層52は、その後、半導体チップをリードフレームやパッケージ基板、あるいは他の半導体チップに接着する際に、ダイボンディングフィルムとして機能する。
【0006】
ところで、上記のようなダイシング・ダイボンディングテープ50は、接着剤層52と粘着フィルム53の円形ラベル部53aとが積層した部分は、粘着フィルム53の周辺部53bよりも厚い。このため、製品としてロール状に巻かれた際に、接着剤層52と粘着フィルム53の円形ラベル部53aの積層部分と、粘着フィルム53の周辺部53aとの段差が重なりあい、柔軟な接着剤層52表面に段差が転写される現象、すなわち
図7に示すような転写痕(ラベル痕、シワ、又は、巻き跡ともいう)が発生する。このような転写痕の発生は、特に、接着剤層52が柔らかい樹脂で形成される場合や厚みがある場合、及びテープ50の巻き数が多い場合などに顕著である。そして、転写痕が発生すると、接着剤層と半導体ウェハとの接着不良により、ウェハの加工時に不具合が生じるおそれがある。
【0007】
このような問題を解決するために、離型フィルムの、接着剤層及び粘着フィルムが設けられた第1の面とは反対の第2の面上であって、且つ、離型フィルムの短手方向両端部に支持部材を設けたウェハ加工用テープが開発されている(例えば、特許文献1参照)。このようなウェハ加工用テープは、支持部材が設けられているため、ウェハ加工用テープをロール状に巻き取った際に、テープに加わる巻き取り圧を分散する、或いは、支持部材に集めることができるので、接着剤層への転写跡の形成を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係るウェハ加工用テープ(ダイシング・ダイボンディングテープ)の平面図、
図1(b)は、
図1(a)の線A−Aによる断面図である。
【0028】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、ウェハ加工用テープ10は、長尺の離型フィルム11と、接着剤層12と、粘着フィルム13と、支持部材14とを有する。
【0029】
接着剤層12は、離型フィルムの第1の面上に設けられ、ウェハの形状に対応した円形ラベル形状を有している。粘着フィルム13は、接着剤層12を覆い、且つ、接着剤層12の周囲で離型フィルムに接触するように設けられた円形ラベル部13aと、この円形ラベル部13aの外側を囲むような周辺部13bとを有する。周辺部13bは、円形ラベル部13aの外側を完全に囲む形態と、図示のような完全には囲まない形態とを含む。円形ラベル部13aは、ダイシング用のリングフレームに対応する形状を有する。そして、支持部材14は、離型フィルム11の、接着剤12及び粘着フィルム13が設けられた第1の面11aとは反対の第2の面11bであって、且つ、離型フィルム11の短手方向両端部であって、離型フィルム11の短手方向における接着剤層12の端部に対応する領域にかかるように設けられている。
【0030】
以下、本実施形態のウェハ加工用テープ10の各構成要素について詳細に説明する。
【0031】
(離型フィルム)
本発明のウェハ加工用テープ10に用いられる離型フィルム11としては、ポリエステル(PET、PBT、PEN、PBN、PTT)系、ポリオレフィン(PP、PE)系、共重合体(EVA、EEA、EBA)系、またこれらの材料を一部置換して、更に接着性や機械的強度を向上したフィルム使用することができる。また、これらのフィルムの積層体であってもよい。
【0032】
離型フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、25〜50μmが好ましい。
【0033】
(接着剤層)
本発明の接着剤層12は、上述のように、離型フィルム11の第1の面11a上に形成され、ウェハの形状に対応する円形ラベル形状を有する。
【0034】
接着剤層12は、半導体ウェハ等が貼合されダイシングされた後、チップをピックアップする際に、チップ裏面に付着しており、チップを基板やリードフレームに固定する際の接着剤として使用されるものである。接着剤層12としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂から選択される少なくとも1種を含む粘接着剤等を好ましく使用することができる。この他、ポリイミド系樹脂やシリコーン系樹脂を使用することもできる。その厚さは適宜設定してよいが、5〜100μm程度が好ましい。
【0035】
(粘着フィルム)
本発明の粘着フィルム13は、上述のように、ダイシング用のリングフレームの形状に対応する円形ラベル部13aと、その外側を囲むような周辺部13bとを有する。このような粘着フィルムは、プリカット加工により、フィルム状粘着剤から円形ラベル部13aの周辺領域を除去することで形成することができる。
【0036】
粘着フィルム13としては、特に制限はなく、ウェハをダイシングする際にはウェハが剥離しないように十分な粘着力を有し、ダイシング後にチップをピックアップする際には容易に接着剤層から剥離できるよう低い粘着力を示すものであればよい。例えば、基材フィルムに粘着剤層を設けたものを好適に使用できる。
【0037】
粘着フィルム13の基材フィルムとしては、従来公知のものであれば特に制限することなく使用することができるが、後述の粘着剤層として放射線硬化性の材料を使用する場合には、放射線透過性を有するものを使用することが好ましい。
【0038】
例えば、その材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。また、基材フィルムはこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。
基材フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、50〜200μmが好ましい。
【0039】
粘着フィルム13の粘着剤層に使用される樹脂としては、特に限定されるものではなく、粘着剤に使用される公知の塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。
粘着剤層13の樹脂には、アクリル系粘着剤、放射線重合性化合物、光重合開始剤、硬化剤等を適宜配合して粘着剤を調製することが好ましい。粘着剤層13の厚さは特に限定されるものではなく適宜に設定してよいが、5〜30μmが好ましい。
【0040】
放射線重合性化合物を粘着剤層に配合して放射線硬化により接着剤層から剥離しやすくすることができる。その放射線重合性化合物は、例えば光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分量化合物が用いられる。
【0041】
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等が適用可能である。
【0042】
また、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
粘着剤層には、上記の樹脂から選ばれる2種以上が混合されたものでもよい。
【0043】
光重合開始剤を使用する場合、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。これら光重合開始剤の配合量はアクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0044】
(支持部材)
支持部材14は、離型フィルム11の、接着剤12及び粘着フィルム13が設けられた第1の面11aとは反対の第2の面11bであって、且つ、離型フィルム11の短手方向両端部であって、離型フィルム11の短手方向における接着剤層12の端部に対応する領域にかかるように設けられている。このように、支持部材14を設けることで、ウェハ加工用テープ10をロール状に巻き取った際に、テープに加わる巻き取り圧を分散する、或いは、支持部材14に集めることができるので、接着剤層12への転写跡の形成を抑制することが可能となる。
【0045】
また、支持部材14が離型フィルム11の短手方向における接着剤層12の端部に対応する領域にかかるように設けられているため、接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aとの間に空気(エア)を巻き込むのを低減することができる。すなわち、ウェハ加工用テープ10はロール状に巻き取られるため、エアは、離型フィルム11の短手方向における接着剤層12の端部周縁の離型フィルム11と円形ラベル部13aの間に集中しやすい。本願発明では、ウェハ加工用テープ10がロール状に巻き取られたとき、ラベル部13aを介して、離型フィルム11の短手方向における接着剤層12の端部に支持部材14がかかっているため、離型フィルム11の短手方向における接着剤層12の端部の対応するウェハ加工用テープ10全体の厚みが、接着剤層12の外側の部分に対応するウェハ加工用テープ10全体の厚みよりも、接着剤層12の厚み分だけ厚くなっている。したがって、エアが接着剤層12の内側の領域であって接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aとの間に侵入するのを防止することができる。
【0046】
また、支持部材を接着剤12及び粘着フィルム13が設けられた第1の面11aに形成する場合には、支持層の幅に制限があるのに対し、本実施形態の構成では、支持部材14の幅を広く確保することができ、より効果的に転写痕の発生を抑制できる。
さらに、支持部材14を離型フィルム11の第2の面11bに設けることで、支持部材14の位置ズレに対する許容度が大きくなるという効果が得られる。
【0047】
なお、支持部材14を離型フィルム11の短手方向における接着剤層12の端部に対応する領域にかかるように設けることにより、接着剤層12の端部に支持部材14による転写痕が発生する可能性があるが、接着剤層12は一般的にウェハWへの貼合マージンを考慮して、ウェハWより大きくなっており、接着剤層12の端部にはウェハWが貼合されないため、問題とならない。また、支持部材14による転写痕が発生する場合は、離型フィルム11の長手方向に沿って発生するが、離型フィルム11の長手方向は、ウェハWに貼合される際の進行方向となるため、接着剤層12の端部にウェハWが貼合される場合であっても、支持部材14による転写痕に起因するエアは貼合時に抜けやすく、ウェハWとの界面にボイドとして残りにくい。
【0048】
離型フィルム11の短手方向いおける支持部材14の幅や本数は、特に限定されるものではないが、支持部材14の幅の合計をsD、接着剤層12の直径をaφ、離型フィルム11の短手方向の長さをLとしたとき、0mm < [(sD+aφ)−L]<20mmであることが好ましく、上限値が15mm以内であることがより好ましく、さらには上限値が10mm以内であることがより好ましい。[(sD+aφ)−L]<20mmとすることにより、ウェハ加工用テープ10がロール状に巻き取られたときに、接着剤層12においてラベル部13aを介して支持部材14が巻き付けられていた領域には、一般的にはウェハWが貼合されないことになる。支持部材14の幅の合計sDは各支持部材の幅D1、d2、d3・・・の合計値である。また、各支持部材の幅Dは5mm以上45mm以内であることが好ましい。
【0049】
支持部材14の厚さとしては、離型フィルム11上における、接着剤層12と粘着フィルム13の円形ラベル部13aとの積層部分と、粘着フィルム13の周辺部13bとの段差に相当する厚さ、すなわち接着剤層12と同じか、又は、それ以上であることが好ましく、接着剤層12の1.0倍以上4.0倍以下であることがより好ましい。支持部材14が接着剤層12の1.0倍以上の厚さを有することで、テープ10を巻き取ったときに、粘着フィルム13とその表面に重なる離型フィルム11の第2の面11bとが接触するか、又は、接触せずにこれらの間に空間が形成されるので、粘着フィルム13を介して柔軟な接着剤層12に離型フィルム11の第2の面11bが強く押し付けられることがない。よって、転写痕の発生をいっそう効果的に抑制することができる。一方、支持部材が接着剤層の4.0倍以下の厚さを有することで、上記空間の大きさを制御し、空間が大きくなりすぎることで、接着剤層12、粘着フィルム13、離型フィルム11の各層間に対し、空気の侵入を招きやすくなる状態を防止することができる。
図2は、接着剤剤層12よりも厚い支持部材14’の例を示す断面図である。
【0050】
支持部材14は、離型フィルム11の長手方向に沿って、断続的又は連続的に設けることができるが、転写痕の発生をより効果的に抑制する観点からは、基材フィルム11の長手方向に沿って連続的に設けることが好ましい。
【0051】
本発明の支持部材14は、300ppm/℃以下の線膨張係数を有することが好ましい。ウェハ加工用テープは、例えば、保管時や運送時には、−20℃〜5℃程度で低温状態が保たれ、また、ウェハ加工用テープの接着剤層をウェハに貼り合わせる際には、接着剤を加熱軟化させて接着性を高めるために、ヒーターテーブルにて70〜80℃程度の加熱貼合が行われるなど、ウェハ加工用テープは温度変化の大きい環境下におかれる。温度変化により支持部材14の寸法が変化すると、離型フィルム11と粘着フィルム13との間、及び、接着剤層12と粘着フィルム13との間に空気が浸入してボイドが発生し、ウェハに対する貼合不良が生じ、その後のウェハのダイシング工程やテープのエキスパンド工程、さらにはチップのピックアップ工程やマウント工程での歩留まりの低下をもたらす虞がある。本発明においては、300ppm/℃以下の線膨張係数の低い支持部材を使用することで、接着剤層12への転写痕の発生を充分に抑制するとともに、温度変化の大きい使用環境下においても支持部材13の寸法変化が少なく、ボイドの発生を抑制することができる。
転写痕の発生及びボイドの発生をより効果的に抑制するためには、支持部材14の線膨張係数は、150ppm/℃以下であることが好ましく、70ppm/℃以下であることがより好ましい。線膨張係数の下限は特に制限はなく、通常0.1ppm/℃である。
【0052】
また、支持部材14の線膨張係数と離型フィルム11の線膨張係数の差は、250ppm/℃以下であることが好ましい。線膨張係数の差が250ppm/℃より大きい場合には、保管時及び運送時の低温状態と使用時の常温状態の温度変化によって、支持部材14と離型フィルム11との寸法差が生じることから、以下のような種々の不具合がある。
(1)温度変化によって寸法差が生じると、上述のような、離型フィルム11と粘着フィルム13との間、及び、接着剤層12と粘着フィルム13との間にボイドが発生する虞がある。
(2)ユーザーがロール状でハンドリングする際に、巻きが崩れる可能性が増す。より詳細には、例え製造、出荷時に正常に巻かれていても、ユーザー側での冷蔵保管から常温使用の際、及び、常温使用から冷蔵保管の際に寸法差が生じ、巻きが崩れる可能性が増す。
(3)寸法差によってロール状に巻かれたシート間に隙間が生じ、ロール側面からの異物混入の可能性が増す。
(4)ウェハ加工用テープの巻き数が多い場合や製品幅が広い場合には、常温から冷蔵保管する際に、ロール芯側とロール外周側では冷却速度が異なる。このため、ロール芯側とロール外周側とで線膨張差に起因する支持部材14と離型フィルム11の寸法差が異なり、ロール全体での形状が変化する可能性が高い。
【0053】
本発明において、線膨張係数とは、定圧下で温度を変えたときに物体の空間的広がりの増加する割合をいう。温度をT、その固体の長さをLとすると、その線膨張係数αは以下の式で与えられる。
α=(1/L)・(∂L/∂T)
また、本発明における線膨張係数の測定は、例えば、JIS K7197、プラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法に準拠し、熱機械的分析装置(TMA)を用いて、長さ15mm、幅5mm、チャック間距離10mmに切断した試料を取付け、引張荷重10g、昇温速度5℃/min、N
2ガス雰囲気下、測定温度範囲−20℃〜50℃の条件で測定することができる。
【0054】
また、支持部材14は、ウェハ加工用テープ10の巻きズレを防止する観点から、粘着フィルム13に対してある程度の摩擦係数を有する材質のものが好ましい。これにより、ウェハ加工用テープ10の巻きズレを防止でき、高速巻取りや巻取り数を増大させることができるといった効果が得られる。
【0055】
支持部材14と粘着フィルム13の基材フィルムとの間の静摩擦係数は、0.2〜2.0であることが好ましく、0.6〜1.6であることがより好ましい。ウェハ加工用テープをロール状に巻き取ると、離型フィルム11の第1の面11a側に設けられた粘着フィルム13の周辺部13aと、離型フィルム11の第2の面11b側に設けられた支持部材14とが接触することから、支持部材14と粘着フィルム13の基材フィルムとの間の静摩擦係数が0.2未満と小さい場合には、製造時や使用時に巻きズレが発生し易くなりハンドリング性が悪化する。一方、2.0より大きい場合には、粘着フィルム13の基材フィルムと支持部材14との間の抵抗が大きすぎて、製造工程でのハンドリング性が悪化したり、高速巻き取り時等に蛇行したりする原因となる。したがって、両者間の静摩擦係数を上記範囲に設定することで、ウェハ加工用テープ10の巻きズレを防止でき、高速巻取りを可能とし、巻取り数を増大させることができるといった効果が得られる。
【0056】
本発明において、支持部材14と粘着フィルム13の基材フィルムとの間の静摩擦係数は、JIS K7125に準拠し、以下のような測定方法により得ることができる。
25mm(幅)×100mm(長さ)にそれぞれカットされた粘着フィルム13の基材フィルムと支持部材14の両フィルムサンプルを重ね合わせ、下側のフィルムを固定する。次いで、積層されたフィルムの上に重量200gのおもりを荷重Wとして乗せ、上側のフィルムを200mm/minの速度で引張り、滑り出す際の力Fd(g)を測定し、以下の式から静摩擦係数(μd)を求める。
μd=Fd/W
【0057】
支持部材14としては、例えば、樹脂フィルム基材に粘接着剤を塗布した粘接着テープを好適に使用することができる。このような粘接着テープを、離型フィルム11の第2の面11bの両端部分の所定位置に貼り付けることで、本実施形態のウェハ加工用テープ10を形成することができる。
【0058】
粘接着テープの基材樹脂としては、上記線膨張係数の範囲を満たし、且つ、巻き圧に耐え得るものであれば特に限定はないが、耐熱性、平滑性、及び、入手し易さの点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、及び高密度ポリエチレンから選択されることが好ましい。
粘接着テープの粘着剤の組成及び物性については、特に限定はなく、テープ10の巻き取り工程及び保管工程において、離型フィルム11から剥離しないものであればよい。
【0059】
また、支持部材14としては、着色された支持部材を用いてもよい。このような着色支持部材を用いることで、ウェハ加工用テープをロール状に巻き取った際に、テープの種類を明確に識別することができる。例えば、着色支持部材14の色を、ウェハ加工用テープの種類や厚さによって異ならせることで、容易にテープの種類や厚さを識別することができ、人為的なミスの発生を抑制、防止することができる。
【0060】
また、ウェハ加工用テープ10は、23℃における粘着フィルム13の引張貯蔵弾性率Ebと、23℃における離型フィルム11の引張貯蔵弾性率Eaとの比Eb/Eaが0.001〜100の範囲内であることが好ましい。
【0061】
前記Eb/Eaは、値が大きいほど相対的に粘着フィルム13が硬く、離型フィルム11が柔らかい。一方、前記Eb/Eaは、値が小さいほど相対的に粘着フィルム13が軟らかく、離型フィルム11が硬い。前記構成によれば、Eb/Eaが0.001以上であるため、粘着フィルムの硬さ(引張貯蔵弾性率Eb)は、一定以上となる。従って、ウェハ加工用テープ10構成する接着剤層12に転写痕が発生することを抑制することができる。また、前記Eb/Eaが0.001以上であり、粘着フィルム13の硬さ(引張貯蔵弾性率Eb)は、一定以上となるため、半導体ウェハWへの貼り合わせの際に、粘着フィルム13と離型フィルム11とを好適に剥離する(ベロ出しする)ことができる。
【0062】
また、前記Eb/Eaが100以下であるため、離型フィルム11の硬さ(引張貯蔵弾性率Ea)は、一定以上となる一方、粘着フィルム13の硬さ(引張貯蔵弾性率Eb)は、一定以下となる。従って、接着剤層12の離型フィルム11への貼り合わせの際に離型フィルム11に折れが発生することを抑制することができ、接着剤層12表面を傷つけたり、フィルム間に気泡が混入することを防止することができる。その結果、離型フィルム11のフィルム浮きや半導体ウェハWのマウントの際に接着剤層12と半導体ウェハWとの間でボイドが発生することを抑制することができる。
【0063】
このように、前記構成によれば、ロール状に巻き取った際に、転写痕が接着剤層12に発生することを抑制することができる。また、離型フィルム11のフィルム浮きや、半導体ウェハWのマウントの際に接着剤層12と半導体ウェハWとの間でボイドが発生することを抑制することができる。
【0064】
前記構成において、離型フィルム11の厚みは、10〜100μmであることが好ましく、粘着フィルム13の厚みは、25〜180μmであることが好ましい。
【0065】
また、前記構成において、23℃における粘着フィルム13の引張貯蔵弾性率Ebは、1〜500MPaであることが好ましく、23℃における離型フィルム11の引張貯蔵弾性率Eaは、1〜5000MPaであることが好ましい。
【0066】
また、前記構成において、接着剤層12は、ガラス転移温度が0〜100℃の範囲内であり、かつ、硬化前23℃における引張貯蔵弾性率が50MPa〜5000MPaの範囲であることが好ましい。接着剤層12のガラス転移温度を0℃以上にすることにより、Bステージ状態での接着剤層12のタック性が大きくなるのを抑制し、良好な取り扱い性を維持することができる。また、ダイシングの際に、接着剤層12の一部が溶融して粘着剤が半導体チップに付着するのを防止することができる。その結果、半導体チップの良好なピックアップ性を維持することができる。その一方、ガラス転移温度を100℃以下にすることにより、接着剤層12の流動性の低下を防止できる。また、半導体ウェハWとの良好な接着性も維持することができる。なお、接着剤層12が熱硬化型の場合、接着剤層12のガラス転移温度とは、熱硬化前のことをいう。また、接着剤層12の硬化前23℃における引張貯蔵弾性率を50MPa以上にすることにより、ダイシングの際に、接着剤層12の一部が溶融して粘着剤が半導体チップに付着するのを防止することができる。その一方、引張貯蔵弾性率を5000MPa以下にすることにより、半導体ウェハWや基板との良好な接着性も維持することができる。
【0067】
さらに、ウェハ加工用テープ10は、離型フィルム11の厚みをTaとし、粘着フィルム13の厚みをTbとしたとき、Ta/Tbが0.07〜2.5の範囲内であることが好ましい。
【0068】
前記Ta/Tbは、例えば、離型フィルム11の厚みTaを一定とすると、値が小さいほど、粘着フィルム13が厚くなる。前記構成によれば、Ta/Tbが0.07以上であるため、粘着フィルム13が積層されている部分と、積層されていない部分との段差は一定以下である。従って、転写痕の発生を抑制することができる。また、前記Ta/Tbが0.07以上であり、離型フィルム11に比して粘着フィルム13の厚みが厚いため、離型フィルム11の厚みにより応力を吸収することができ、転写痕の発生を抑制することができる。また、前記Ta/Tbが0.07以上であり、離型フィルム11に比して粘着フィルム13の厚みが厚いため、半導体ウェハWへの貼り合わせの際に、粘着フィルム13と離型フィルム11とを好適に剥離する(ベロ出しする)ことができる。また、前記Ta/Tbは、例えば、粘着フィルム13の厚みTbを一定とすると、値が小さいほど、離型フィルム11の厚みは薄くなる。前記Ta/Tbが2.5以下であるため、離型フィルム11の厚さは一定以下である。従って、粘着フィルム13が積層されている部分と、積層されていない部分との段差への追従性が良好である。また、前記Ta/Tbが2.5以下であり、離型フィルム11の厚さは一定以下であるため、粘着フィルム13を離型フィルムにラミネートする際の圧力を均一とすることができ、気泡の混入を防止することができる。このように、前記構成によれば、粘着フィルム13上に接着剤層12及び離型フィルム11が順次積層されたウェハ加工用テープ10をロール状に巻き取った際に、転写痕が接着剤層12に発生することを抑制することが可能となる。
【0069】
前記構成においては、温度23±2℃、剥離速度300mm/minの条件下でのT型剥離試験における、接着剤層12と離型フィルム11の間の剥離力F1は0.025〜0.075N/100mmの範囲内であり、接着剤層12と粘着フィルム13の間の剥離力F2は0.08〜10N/100mmの範囲内であり、前記F1と前記F2はF1<F2の関係を満たすことが好ましい。
【0070】
ウェハ加工用テープ10は、弛みや巻ズレ、位置ズレ、ボイド(気泡)等の発生防止の観点から、粘着フィルム13や接着剤層12、離型フィルム11に引張張力を加えながら製造される。その結果、ウェハ加工用テープ10は、それを構成するフィルムの何れかに引張残留歪みが存在した状態で製造される。この引張残留歪みは、例えば、−30〜10℃の低温状態で輸送したり長時間保管した場合に、各フィルムで収縮を引き起こす。更に、各フィルムは物性が相違することから収縮の程度も相違する。例えば、粘着フィルム13は各フィルムの中で最も収縮の程度が大きく、離型フィルム11は最も収縮の程度が小さい。その結果、粘着フィルム13と接着剤層12の間で界面剥離を生じさせたり、離型フィルム11のフィルム浮き現象を引き起こす。
【0071】
前記構成は、接着剤層12と離型フィルム11の間の剥離力F1を0.025〜0.075N/100mmの範囲とし、かつ、接着剤層12と粘着フィルム13の間の剥離力F2を0.08〜10N/100mmの範囲内とした上で、F1<F2の関係を満たす構成とするものである。前述の通り、各フィルムにおける収縮は粘着フィルムが最も大きいことから、接着剤層12と離型フィルム11の間の剥離力F1よりも、接着剤層12と粘着フィルム13の間の剥離力F2を大きくすることで、最も収縮率の大きい粘着フィルム13の収縮を抑制し、粘着フィルム13と接着剤層12の間の界面剥離や、離型フィルム11のフィルム浮き現象を防止するものである。更に、接着剤層12の一部又は全部が離型フィルム11に転写することも防止できる。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0073】
(1)離型フィルム
以下に示す離型フィルムを用意した。
離型フィルムA1:厚さ25μm、幅390mmのシリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(引張貯蔵弾性率は4070MPa、線膨張係数は60ppm)
離型フィルムA2:厚さ100μm、幅390mmのシリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(引張貯蔵弾性率は3910MPa、線膨張係数は60ppm)
離型フィルムA3:厚さ12μm、幅390mmのシリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(引張貯蔵弾性率は4020MPa、線膨張係数は60ppm)
離型フィルムA4:厚さ38μm、幅390mmのシリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(張貯蔵弾性率は4020MPa、線膨張係数は60ppm)
離型フィルムA5:厚さ25μm、幅390mmのシリコーン離型処理した低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(引張貯蔵弾性率は105MPa、線膨張係数は230ppm)
【0074】
(2)粘着フィルムの作製
<粘着フィルムB1>
官能基を有するアクリル系共重合体として、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびメタクリル酸からなり、2−エチルヘキシルアクリレートの比率が60モル%、質量平均分子量70万の共重合体を調製した。次に、ヨウ素価が20となるように、2−イソシアナトエチルメタクリレートを添加して、ガラス転移温度−50℃、水酸基価10mgKOH/g、酸価5mgKOH/gのアクリル系共重合体(b−1)を調製した。
【0075】
アクリル系共重合体(b−1)100質量部に対して、ポリイソシアネートとしてコロネートL(日本ポリウレタン製)を5質量部加え、光重合開始剤としてEsacureKIP150(Lamberti社製)を3質量部加えた混合物を、酢酸エチルに溶解させ、攪拌して粘着剤組成物を調製した。
次に、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーにこの粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、エチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソ一製、ウルトラセン636)よりなる基材フィルム(厚さ50μm)と貼り合わせ、厚さ60μmの粘着フィルムB1を作製した。引張貯蔵弾性率は40MPaであった。
【0076】
<粘着フィルムB2>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが5μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、低密度ポリエチレン(LDPE、離型処理なし)よりなる基材フィルム(厚さ40μm)と貼り合わせ、厚さ45μmの粘着フィルムB2を作製した。引張貯蔵弾性率は105MPaであった。
【0077】
<粘着フィルムB3>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー(三井・デュポンポリケミカル製、ハイミラン1554)よりなる基材フィルム(厚さ150μm)と貼り合わせ、厚さ160μmの粘着フィルムB3を作製した。引張貯蔵弾性率は301MPaであった。
【0078】
<粘着フィルムB4>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー(三井・デュポンポリケミカル製、ハイミラン1554)よりなる基材フィルム(厚さ110μm)と貼り合わせ、厚さ120μmの粘着フィルムB4を作製した。引張貯蔵弾性率は289MPaであった。
【0079】
<粘着フィルムB5>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、エチレン・プ口ピレンブロック共重合体(プライムポリマ一製、プライムポリプ口F707W)よりなる基材フィルム(厚さ110μm)と貼り合わせ、厚さ120μmの粘着フィルムB5を作製した。引張貯蔵弾性率は980MPaであった。
【0080】
(3)接着剤層の形成
<接着剤層C1>
エポキシ樹脂「YX4000」(三菱化学製、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量185)15.0質量部、フェノール樹脂「LF−6161」(DIC製、ノボラックフェノール樹脂、水酸基当量118)40.0質量部、エポキシ樹脂「エピコート828」(三菱化学製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)45.0重量部、シリカフィラーである「アエロジルR972」(日本アエロジル製、一次粒径の平均粒径0.016μm)5質量部からなる組成物にMEKを加え、攪拌混合し、均一な組成物とした。
これに、官能基を含む重合体としてグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートに由来するモノマー単位を含むアクリル共重合体(重量平均分子量85万、Tg20℃)66.7質量部、カップリング剤として「KBM−802」(信越シリコーン製、メルカプトプロピルトリメトキシシラン)0.6質量部、並びに、硬化促進剤としての「キュアゾール2PHZ−PW」(四国化成製、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、分解温度230℃)0.1質量部を加え、均一になるまで攪拌混合した。更にこれを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡することにより、接着剤組成物のワニス(c−1)を得た。
【0081】
このワニス(c−1)を、離型フィルムA1上にコーターで乾燥膜厚が30μmになるように塗工し、120℃で5分間乾燥し、厚さ30μmの接着剤層C1を作製した。
【0082】
<接着剤層C2>
ワニス(c−1)を、離型フィルムA2上にコーターで乾燥膜厚が30μmになるように塗工し、120℃で5分間乾燥し、厚さ30μmの接着剤層C2を作製した。
【0083】
<接着剤層C3>
ワニス(c−1)を、離型フィルムA1上にコーターで乾燥膜厚が60μmになるように塗工し、120℃で8分間乾燥し、厚さ60μmの接着剤層C3を作製した。その後、接着剤層C3を離型フィルムA1から離型フィルムA3へ転写した。
【0084】
<接着剤層C4>
ワニス(c−1)を、離型フィルムA4上にコーターで乾燥膜厚が60μmになるように塗工し、120℃で8分間乾燥したものを2枚用意し、それらを70℃にて積層することで、厚さ120μmの接着剤層C4を作製し、一方の離型フィルムA4は剥離した。
【0085】
<接着剤層C5>
ワニス(c−1)を、離型フィルムA4上にコーターで乾燥膜厚が60μmになるように塗工し、120℃で8分間乾燥し、厚さ60μmの接着剤層C5を作製した。
【0086】
<接着剤層C6>
ワニス(c−1)を、離型フィルムA4上にコーターで乾燥膜厚が60μmになるように塗工し、120℃で8分間乾燥し、厚さ60μmの接着剤層C6を作製した。その後、離型フィルムA4から転写して、離型フィルムA5と接着剤層C6の組合せを得た。
【0087】
<接着剤層C7>
ワニス(c−1)を、離型基材A1上にコーターで乾燥膜厚が30μmになるように塗工し、120℃で5分間乾燥し、厚さ20μmの接着剤層C7を作製した。
【0088】
<接着剤層C8>
エポキシ樹脂「1002」(三菱化学製、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量600)40質量部、エポキシ樹脂「806」(三菱化学製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160、比重1.20)100質量部、硬化剤「Dyhard100SF」(デグサ製、ジシアンジアミド)5質量部、シリカフィラー「SO−C2」(アドマファイン製、平均粒径0.5μm)200質量部、及び、シリカフィラーである「アエロジルR972」(日本アエロジル製、一次粒径の平均粒径0.016μm)3質量部からなる組成物にMEKを加え、攪拌混合し、均一な組成物とした。
これに、フェノキシ樹脂「PKHC」(INCHEM製、質量平均分子量43,000、ガラス転移温度89℃)100質量部、カップリング剤として「KBM−802」(信越シリコーン製、メルカプトプロピルトリメトキシシラン)0.6質量部、並びに、硬化促進剤としての「キュアゾール2PHZ−PW」(四国化成製、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、分解温度230℃)0.5質量部を加え、均一になるまで攪拌混合した。更にこれを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡することにより、接着剤組成物のワニス(c−2)を得た。
【0089】
このワニス(c−2)を、離型フィルムA4上にコーターで乾燥膜厚が60μmになるように塗工し、120℃で8分間乾燥し、厚さ60μmの接着剤層C8を作製した。
【0090】
(4)支持部材の作製
<支持部材D1>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが5μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、ポリエチレンテレフタレート(離型処理なし)よりなる樹脂フィルム基材(厚さ25μm)と貼り合わせて転写し、厚さ30μm幅36mmの支持部材D1を作製した。線膨張係数は60ppmであった。
【0091】
<支持部材D2>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、ポリプロピレン(OPP、離型処理なし)よりなる樹脂フィルム基材(厚さ50μm)と貼り合わせて転写し、厚さ75μm幅36mmの支持部材D2を作製した。線膨張係数は120ppmであった。
【0092】
<支持部材D3>
クリーンルーム用の市販のクリーンラインテープであるTW−PLT(タニムラ製)を幅36mmにスリットし支持部材D3として用いた。厚さ75μmのポリ塩化ビニル層と厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート層が積層されてなる樹脂フィルム基材を有し、総厚142μm、線膨張係数は80ppmであった。
【0093】
<支持部材D4>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、低密度ポリエチレン(LDPE、離型処理なし)よりなる樹脂フィルム基材(厚さ50μm)と貼り合わせて転写し、厚さ75μm幅36mmの支持部材D4を作製した。線膨張係数は230ppmであった。
【0094】
<支持部材D5>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、ポリエチレンテレフタレート(離型処理なし)よりなる樹脂フィルム基材(厚さ50μm)と貼り合わせて転写し、厚さ75μm幅44mmの支持部材D5を作製した。線膨張係数は60ppmであった。
【0095】
<支持部材D6>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、ポリエチレンテレフタレート(離型処理なし)よりなる樹脂フィルム基材(厚さ50μm)と貼り合わせて転写し、厚さ75μm幅40mmの支持部材D6を作製した。線膨張係数は60ppmであった。
【0096】
<支持部材D7>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、ポリエチレンテレフタレート(離型処理なし)よりなる樹脂フィルム基材(厚さ75μm)と貼り合わせて転写し、厚さ100μm幅40mmの支持部材D7を作製した。線膨張係数は60ppmであった。
【0097】
<支持部材D8>
離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに前記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、ポリエチレンテレフタレート(離型処理なし)よりなる樹脂フィルム基材(厚さ75μm)と貼り合わせて転写し、厚さ100μm幅35mmの支持部材D8を作製した。線膨張係数は60ppmであった。
【0098】
(実施例1)
冷蔵保管していた離型フィルムA1上に形成された接着剤層C1を常温に戻し、接着剤層C1に対して、離型フィルムA1の厚さの1/2以下の切り込み深さになるように調整して直径320mmの円形プリカット加工を行った。その後、接着剤層C1の不要部分を除去し、粘着フィルムB1をその粘着剤層が接着剤層C1と接するように、離型フィルムA1に室温でラミネートした。そして、粘着フィルムB1に対して、離型フィルムA1の厚さの1/2以下の切り込み深さになるように調節して接着剤層C1と同心円状に直径370mmの円形プリカット加工を行い、15Nの張力で300枚を巻き取った。次に離型フィルムA1上の接着剤層C1及び粘着フィルムB1が設けられた面とは反対の面であって、かつ、離型フィルムA1の短手方向両端部に支持部材D1を貼合して、実施例1のウェハ加工用テープを作製した。離型フィルムの短手方向における支持部材の幅の合計をsD、接着剤層の直径をaφ、離型フィルムの短手方向の長さをLとしたとき、[(sD+aφ)−L]=2mmであり、支持部材が、離型フィルムの短手方向における接着剤層の端部に対応する領域に2mmかかるように設けた。
【0099】
(実施例2〜8、比較例1)
実施例1と同様の方法で、表1の組合せにて、実施例2〜8および比較例1のウェハ加工用テープを作製した。なお、離型フィルムの短手方向における接着剤層の端部に対応する領域に支持部材がかかる量は、重なりA(mm)として表2に記載した。
【0100】
【表1】
【0101】
[空気の侵入と転写痕の有無の評価]
実施例及び比較例のウェハ加工用テープをポリエチレン製の袋に収納し、脱気後、ヒートシールしてポリプロピレン製の側板を両端部に取り付けた。さらに、PPバンド2本が十字になるように掛けて融着して接合した。その後、各梱包体を1ヶ月間冷蔵庫内(5℃)で保管後、冷蔵庫から取り出して、板状のドライアイスと共に梱包箱に収納し、輸送用トラックに載せて平塚〜秋田間を往復した(約1000km)。このとき、梱包箱の最低温度は−43℃、最高温度は7℃であった。その後、各梱包体を開梱し、ロールを常温に戻してから包装袋を開封してロールを解き、目視にて接着剤層と粘着フィルムの間への空気の侵入およびMD、TD各方向への転写痕の有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0102】
[マウント後のボイドの抑制性評価]
実施例及び比較例のウェハ加工用テープをポリエチレン製の袋に収納し、脱気後、ヒートシールしてポリプロピレン製の側板を両端部に取り付けた。さらに、PPバンド2本が十字になるように掛けて融着して接合した。その後、各梱包体を1ヶ月間冷蔵庫内(5℃)で保管後、冷蔵庫から取り出して、板状のドライアイスと共に梱包箱に収納し、輸送用トラックに載せて平塚〜秋田間を往復した(約1000km)。このとき、梱包箱の最低温度は−43℃、最高温度は7℃であった。その後、各梱包体を開梱し、ロールを常温に戻してから包装袋を開封して、半導体ウェハへのマウントを行った。半導体ウェハとしては大きさが12インチ、厚さ50μmのものを使用した。半導体ウェハのマウント条件は、下記の通りとした。
【0103】
<貼り合わせ条件>
貼り付け装置:ウェーハマウンターDAM−812M(株式会社タカトリ製)
貼り付け速度計:50mm/sec
貼り付け圧力:0.1MPa
貼り付け温度:60℃、90℃
【0104】
続いて、ウェハ加工用テープと半導体ウェハとの貼合せ面のボイド(気泡)の有無を、顕微鏡により確認した。その結果を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示すように、実施例に係るウェハ加工用テープは、支持部材が、離型フィルムの短手方向両端部であって離型フィルムの短手方向における接着剤層の端部に対応する領域にかかるように設けられているため、接着剤層の内側への空気の侵入は見られなかった。また、TD方向に支持部材に起因する転写痕は見られたものの、MD方向、TD方向にランダムに発生するラベル痕は見られなかった。また、TD方向に支持部材に起因する転写痕は発生したが、ウェハ貼合領域の外側であったため、ウェハ貼合時にボイドが発生することはなかった。
【0107】
これに対して、比較例に係るウェハ加工用テープは、支持部材が、離型フィルムの短手方向両端部であって離型フィルムの短手方向における接着剤層の端部に対応する領域にかからないように設けられているため、MD方向、TD方向とも転写痕は見られなかったが、接着剤層の内側への空気の侵入してしまい、ウェハ貼合時に一部にボイドが発生した。