(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記動径方向において互いに等しい位置にある複数の温度センサにより検出された温度の平均値を当該位置の質量とみなして前記第二の重心位置を算出する、請求項1記載の基板熱処理装置。
前記制御部は、前記基板と同心で前記動径方向に並ぶ複数の領域のそれぞれにおいて前記温度センサにより検出された温度の平均値を、当該領域の質量とみなして前記第二の重心位置を算出する、請求項1記載の基板熱処理装置。
前記制御部は、前記基板が正常に熱処理された場合における前記温度重心の位置に基づいて定められた基準位置を用い、前記温度重心の位置と前記基準位置との差分に基づいて、前記基板の熱処理状態を検知するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の基板熱処理装置。
前記基板と同心で前記動径方向に並ぶ複数の領域のそれぞれにおいて前記温度センサにより検出された温度の平均値を、当該領域の質量とみなして前記第二の重心位置を算出する、請求項10記載の基板熱処理方法。
前記基板が正常に熱処理された場合における前記温度重心の位置に基づいて定められた基準位置を用い、前記温度重心の位置と前記基準位置との差分に基づいて、前記基板の熱処理状態を検知する、請求項10〜12のいずれか一項記載の基板熱処理方法。
載置部上において熱処理を施される基板の複数箇所にそれぞれ対応するように配置された複数の温度センサにより検出された温度を取得すること、前記温度を質量とみなした場合の重心に相当する温度重心の位置を算出すること、前記温度重心の位置に基づいて、前記基板の熱処理状態を検知すること、を実行するように構成され、
前記基板に平行な面内における前記温度重心の位置を第一の重心位置として算出し、前記基板の中心に直交する動径方向における前記温度重心の位置を第二の重心位置として算出し、前記第一及び第二の重心位置に基づいて前記基板の熱処理状態を検知する熱処理状態検知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記熱処理装置では、部分的に生じた異常を検知できない可能性がある。本開示は、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる装置、方法及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る基板熱処理装置は、基板を載置するための載置部と、載置部上の基板を加熱又は冷却するための熱処理部と、載置部上の基板の複数箇所にそれぞれ対応するように配置された複数の温度センサと、複数の温度センサにより検出された温度に基づいて熱処理部を制御すること、複数の温度センサにより検出された温度を質量とみなした場合の重心に相当する温度重心の位置を算出すること、温度重心の位置に基づいて、基板の熱処理状態を検知すること、を実行するように構成された制御部と、を備える。
【0006】
この基板熱処理装置によれば、温度重心の位置に基づいて基板の熱処理状態が検知される。温度重心の位置は、熱処理状態の部分的な異常に応じて感度良く変動する。このため、温度重心の位置に基づくことで、熱処理状態の部分的な異常を感度良く検知することができる。従って、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる。
【0007】
制御部は、基板に平行な面内における温度重心の位置を第一の重心位置として算出し、基板の中心に直交する動径方向における温度重心の位置を第二の重心位置として算出し、第一及び第二の重心位置に基づいて基板の熱処理状態を検知してもよい。第一の重心位置は、熱処理状態の部分的な異常に応じて感度良く変動するものの、温度分布が基板の中心に対して点対称となるような異常に対しては変動し難い。このような異常の具体例としては、基板の中心部が載置部から浮き上がっている場合、基板の周縁部分全体が載置部から均一に浮き上がっている場合等が挙げられる。これに対し、第二の重心位置は、基板の動径方向に沿った温度分布に応じて変動するので、温度分布が基板の中心に対して点対称となる場合においても感度良く変動する。従って、第一及び第二の重心位置の両方に基づいて基板の熱処理状態を検知することにより、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる。
【0008】
制御部は、動径方向において互いに等しい位置にある複数の温度センサにより検出された温度の平均値を当該位置の質量とみなして第二の重心位置を算出してもよい。制御部は、基板と同心で動径方向に並ぶ複数の領域のそれぞれにおいて温度センサにより検出された温度の平均値を、当該領域の質量とみなして第二の重心位置を算出してもよい。これらの場合、第二の重心位置をより高精度に算出できる。
【0009】
制御部は、基板が正常に熱処理された場合における温度重心の位置に基づいて定められた基準位置を用い、温度重心の位置と基準位置との差分に基づいて、基板の熱処理状態を検知するように構成されていてもよい。この場合、温度重心の位置のうち、基準位置から乖離した成分に基づいて基板の熱処理状態が検知される。基準位置から乖離した成分に基づくことにより、熱処理状態が正常であるか異常であるかの判断基準を単純化することができる。
【0010】
制御部は、複数回の正常な熱処理において算出された温度重心の位置の平均値を基準位置として用い、複数回の正常な熱処理において算出された温度重心の位置の標準偏差に基づいて定まる許容範囲を更に用い、温度重心の位置と基準位置との差分が許容範囲外にある場合に、基板の熱処理状態が異常であることを検知するように構成されていてもよい。この場合、温度重心の位置が許容範囲内に位置するか否かという単純な基準により、熱処理状態の異常を検知することができる。また、上記平均値を基準位置として用い、上記標準偏差に基づいて定まる許容範囲を用いることで、適正なばらつきを許容し、不必要な異常検知を削減することができる。
【0011】
制御部は、温度重心の位置に関する情報を出力することを更に実行するように構成されていてもよい。温度重心の位置に基づけば、熱処理状態の異常がいずれの方向において生じたかを把握することも可能である。このため、温度重心の位置に関する情報を出力することで、熱処理状態の異常の要因となった位置を特定するのに有益な情報を提供することができる。
【0012】
制御部は、温度重心の位置と基準位置との差分の軌跡情報を出力することを更に実行するように構成されていてもよい。この場合、温度重心の位置のうち、基準位置から乖離した成分の軌跡情報が出力される。基準位置から乖離した成分の軌跡情報によれば、温度の異常がいずれの方向において生じたかを更に容易に把握することができる。従って、熱処理状態の異常の要因となった位置を特定するのに更に有益な情報を提供することができる。
【0013】
熱処理部は、基板に沿って並ぶ複数の処理領域ごとに制御可能となっており、制御部は、温度重心の位置に基づいて熱処理が不十分な処理領域を特定すること、当該処理領域の熱処理を促進するように熱処理部を制御すること、を更に実行するように構成されていてもよい。この場合、温度重心の位置情報に応じた熱処理を行うことにより、熱処理の信頼性を高めることができる。
【0014】
制御部は、式(1)及び(2)により温度重心の位置を算出するように構成されていてもよい。
【数1】
【数2】
X,Y:直交座標系における温度重心の位置
xi,yi:直交座標系における温度センサの位置
Ti:温度センサにより検出された温度
n:温度センサの数
【0015】
載置部上に基板を載置すること、載置部上の基板を熱処理部により加熱又は冷却すること、載置部上の基板の複数箇所にそれぞれ対応するように配置された複数の温度センサにより温度を検出すること、複数の温度センサにより検出した温度に基づいて熱処理部を制御すること、複数の温度センサにより検出された温度を質量とみなした場合の重心に相当する温度重心の位置を算出すること、温度重心の位置に基づいて、基板の熱処理状態を検知すること、を含む。
【0016】
この基板熱処理方法によれば、温度重心の位置に基づいて基板の熱処理状態が検知される。温度重心の位置は、熱処理状態の部分的な異常に応じて感度良く変動する。このため、温度重心の位置に基づくことで、熱処理状態の部分的な異常を感度良く検知することができる。従って、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる。
【0017】
基板に平行な面内における温度重心の位置を第一の重心位置として算出し、基板の中心に直交する動径方向における温度重心の位置を第二の重心位置として算出し、第一及び第二の重心位置に基づいて基板の熱処理状態を検知してもよい。第一の重心位置は、熱処理状態の部分的な異常に応じて感度良く変動するものの、温度分布が基板の中心に対して点対称となるような異常に対しては変動し難い。このような異常の具体例としては、基板の中心部が載置部から浮き上がっている場合、基板の周縁部分全体が載置部から均一に浮き上がっている場合等が挙げられる。これに対し、第二の重心位置は、基板の動径方向に沿った温度分布に応じて変動するので、温度分布が基板の中心に対して点対称となる場合においても感度良く変動する。従って、第一及び第二の重心位置の両方に基づいて基板の熱処理状態を検知することにより、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる。
【0018】
動径方向において互いに等しい位置にある複数の温度センサにより検出された温度の平均値を当該位置の質量とみなして第二の重心位置を算出してもよい。基板と同心で動径方向に並ぶ複数の領域のそれぞれにおいて温度センサにより検出された温度の平均値を、当該領域の質量とみなして第二の重心位置を算出してもよい。これらの場合、第二の重心位置をより高精度に算出できる。
【0019】
基板が正常に熱処理された場合における温度重心の位置に基づいて定められた基準位置を用い、温度重心の位置と基準位置との差分に基づいて、基板の熱処理状態を検知してもよい。この場合、温度重心の位置のうち、基準位置から乖離した成分に基づいて基板の熱処理状態が検知される。基準位置から乖離した成分に基づくことにより、熱処理状態が正常であるか異常であるかの判断基準を単純化することができる。
【0020】
複数回の正常な熱処理において算出された温度重心の位置の平均値を基準位置として用い、複数回の正常な熱処理において算出された温度重心の位置の標準偏差に基づいて定まる許容範囲を更に用い、温度重心の位置と基準位置との差分が許容範囲外にある場合に、基板の熱処理状態が異常であることを検知してもよい。この場合、温度重心の位置が許容範囲内に位置するか否かという単純な基準により、熱処理状態の異常を検知することができる。また、上記平均値を基準位置として用い、上記標準偏差に基づいて定まる許容範囲を用いることで、適正なばらつきを許容し、不必要な異常検知を削減することができる。
【0021】
温度重心の位置に関する情報を出力することを更に含んでもよい。温度重心の位置に基づけば、熱処理状態の異常がいずれの方向において生じたかを把握することも可能である。このため、温度重心の位置に関する情報を出力することで、熱処理状態の異常の要因となった位置を特定するのに有益な情報を提供することができる。
【0022】
温度重心の位置と基準位置との差分の軌跡情報を出力することを更に含んでもよい。この場合、温度重心の位置のうち、基準位置から乖離した成分の軌跡情報が出力される。基準位置から乖離した成分の軌跡情報によれば、温度の異常がいずれの方向において生じたかを更に容易に把握することができる。従って、熱処理状態の異常の要因となった位置を特定するのに更に有益な情報を提供することができる。
【0023】
温度重心の位置に基づいて熱処理が不十分な処理領域を特定すること、当該処理領域の熱処理を促進することを更に含んでもよい。この場合、温度重心の位置情報に応じた熱処理を行うことにより、熱処理の信頼性を高めることができる。
【0024】
上記式(1)及び(2)により温度重心の位置を算出してもよい。
【0025】
本開示に係る記録媒体は、上記基板熱処理方法を装置に実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0026】
本開示に係る熱処理状態検知装置は、載置部上において熱処理を施される基板の複数箇所にそれぞれ対応するように配置された複数の温度センサにより検出された温度を取得すること、前記温度を質量とみなした場合の重心に相当する温度重心の位置を算出すること、前記温度重心の位置に基づいて、前記基板の熱処理状態を検知すること、を実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
〔基板処理システム〕
まず、本実施形態に係る基板処理システム1の概要を説明する。基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、レジスト膜(感光性被膜)の露光処理を行う。具体的には、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウェハW(基板)の表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
【0031】
図1及び
図2に示すように、塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インターフェースブロック6とを備える。キャリアブロック4、処理ブロック5及びインターフェースブロック6は、水平方向に並んでいる。
【0032】
キャリアブロック4は、キャリアステーション12と搬入・搬出部13とを有する。搬入・搬出部13はキャリアステーション12と処理ブロック5との間に介在する。キャリアステーション12は、複数のキャリア11を支持する。キャリア11は、例えば円形の複数枚のウェハWを密封状態で収容し、ウェハWを出し入れするための開閉扉を一側面11a側に有する。キャリア11は、側面11aが搬入・搬出部13側に面するように、キャリアステーション12上に着脱自在に設置される。
【0033】
搬入・搬出部13は、キャリアステーション12上の複数のキャリア11にそれぞれ対応する複数の開閉扉13aを有する。側面11aの開閉扉と開閉扉13aとを同時に開放することで、キャリア11内と搬入・搬出部13内とが連通する。搬入・搬出部13は受け渡しアームA1を内蔵している。受け渡しアームA1は、キャリア11からウェハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウェハWを受け取ってキャリア11内に戻す。
【0034】
処理ブロック5は、複数の処理モジュール14,15,16,17を有する。
図2及び
図3に示すように、処理モジュール14,15,16,17は、複数の液処理ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。処理モジュール17は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を経ずにウェハWを搬送する直接搬送アームA6を更に内蔵している。液処理ユニットU1は、液体をウェハWの表面に塗布する。熱処理ユニットU2は、例えば熱板によりウェハWを加熱し、加熱後のウェハWを例えば冷却板により冷却して熱処理を行う。
【0035】
処理モジュール14は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウェハWの表面上に下層膜を形成するBCTモジュールである。処理モジュール14の液処理ユニットU1は、下層膜形成用の液体をウェハW上に塗布する。処理モジュール14の熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、下層膜形成用の液体を硬化させるための加熱処理が挙げられる。
【0036】
処理モジュール15は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成するCOTモジュールである。処理モジュール15の液処理ユニットU1は、レジスト膜形成用の液体を下層膜の上に塗布する。処理モジュール15の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、レジスト膜形成用の液体を硬化させるための加熱処理等が挙げられる。
【0037】
処理モジュール16は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に下層膜を形成するTCTモジュールである。処理モジュール16の液処理ユニットU1は、上層膜形成用の液体をレジスト膜の上に塗布する。処理モジュール16の熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、上層膜形成用の液体を硬化させるための加熱処理等が挙げられる。
【0038】
処理モジュール17は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により、露光後のレジスト膜の現像処理を行うDEVモジュールである。処理モジュール17の液処理ユニットU1は、露光済みのウェハWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。処理モジュール17の熱処理ユニットU2は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
【0039】
処理ブロック5内において、キャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられており、インターフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU10は、床面から処理モジュール16に亘るように設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウェハWを昇降させる。棚ユニットU11は床面から処理モジュール17の上部に亘るように設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0040】
インターフェースブロック6は、受け渡しアームA8を内蔵しており、露光装置3に接続される。受け渡しアームA8は、棚ユニットU11に配置されたウェハWを露光装置3に渡し、露光装置3からウェハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0041】
基板処理システム1は、次に示す手順で塗布・現像処理を実行する。まず、受け渡しアームA1がキャリア11内のウェハWを棚ユニットU10に搬送する。このウェハWを、昇降アームA7が処理モジュール14用のセルに配置し、搬送アームA3が処理モジュール14内の各ユニットに搬送する。処理モジュール14の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3により搬送されたウェハWの表面上に下層膜を形成する。下層膜の形成が完了すると、搬送アームA3がウェハWを棚ユニットU10に戻す。
【0042】
次に、棚ユニットU10に戻されたウェハWを、昇降アームA7が処理モジュール15用のセルに配置し、搬送アームA3が処理モジュール15内の各ユニットに搬送する。処理モジュール15の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3により搬送されたウェハWの下層膜上にレジスト膜を形成する。レジスト膜の形成が完了すると、搬送アームA3がウェハWを棚ユニットU10に戻す。
【0043】
次に、棚ユニットU10に戻されたウェハWを、昇降アームA7が処理モジュール16用のセルに配置し、搬送アームA3が処理モジュール16内の各ユニットに搬送する。処理モジュール16の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3により搬送されたウェハWのレジスト膜上に上層膜を形成する。上層膜の形成が完了すると、搬送アームA3がウェハWを棚ユニットU10に戻す。
【0044】
次に、棚ユニットU10に戻されたウェハWを、昇降アームA7が処理モジュール17用のセルに配置し、直接搬送アームA6が棚ユニットU11に搬送する。このウェハWを受け渡しアームA8が露光装置3に送り出す。露光装置3における露光処理が完了すると、受け渡しアームA8がウェハWを露光装置3から受け入れ、棚ユニットU11に戻す。
【0045】
次に、棚ユニットU11に戻されたウェハWを、処理モジュール17の搬送アームA3が処理モジュール17内の各ユニットに搬送する。処理モジュール17の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3により搬送されたウェハWのレジスト膜の現像処理及びこれに伴う熱処理を行う。レジスト膜の現像が完了すると、搬送アームA3はウェハWを棚ユニットU10に搬送する。
【0046】
次に、棚ユニットU10に搬送されたウェハWを、昇降アームA7が受け渡し用のセルに配置し、受け渡しアームA1がキャリア11内に戻す。以上で、塗布・現像処理が完了する。
【0047】
〔基板熱処理装置〕
続いて、基板熱処理装置の一例として、熱処理ユニットU2について詳細に説明する。
図4に示すように、熱処理ユニットU2は、熱板20と、支持台30と、複数の温度センサ40と、昇降機構50と、制御部100とを有する。
【0048】
熱板20は円板状を呈し、複数のヒータ21を内蔵している。熱板20はウェハWを載置するための載置部として機能し、ヒータ21は、載置部上のウェハWを加熱するための熱処理部として機能する。熱板20は、平面視において複数の領域に分かれており、ヒータ21は領域ごとに配置されている。
図5は、ヒータ21の配置の一例を示す平面図である。
図5に示される熱板20は、中央の領域20aと、領域20aを取り囲む2つの領域20bと、領域20bを更に取り囲む四つの領域20cと、の合計7つの領域に分かれており、領域20a,20b,20cごとに合計7つのヒータ21を内蔵している。
【0049】
熱板20上には、熱板20の上面に沿って点在した複数のプロキシミティピン22が設けられている。複数のプロキシミティピン22は、熱板20上に載置されるウェハWを支持し、熱板20とウェハWとの間に空隙を確保する。
【0050】
支持台30は、底板31と、周壁32とを有する。底板31は熱板20に対向する。周壁32は底板31の周縁に沿って設けられ、熱板20の外周部分を支持する。周壁32が熱板20を支持した状態において、支持台30内には空洞33が構成される。
【0051】
複数の温度センサ40は、熱板20上のウェハWの複数箇所にそれぞれ対応するように配置されている。すなわち温度センサ40は、熱板20上のウェハWに対向する平面に沿って点在している。一例として、複数の温度センサ40は空洞33内において熱板20の下面に取り付けられている。
図5に示す例においては、7つの温度センサ40が領域20a,20b,20cごとに設けられており、それぞれの温度センサ40はヒータ21の下に配置されている。
【0052】
なお、複数の温度センサ40は、ウェハWの複数箇所にそれぞれ対応するように配置されていればよいので、必ずしも上述のように配置されていなくてよい。例えば、温度センサ40は熱板20の下面に取り付けられていなくてもよく、温度センサ40はヒータ21と共に熱板20に内蔵されていてもよい。複数の温度センサ40は必ずしも領域20a,20b,20cごとに配置されていなくてよい。
【0053】
昇降機構50は、複数本(例えば3本)の昇降ピン51と駆動部52とを有する。昇降ピン51は、周壁32及び熱板20を貫通して昇降する。昇降ピン51の上部は、昇降ピン51の上昇に伴って熱板20上に突出し、昇降ピン51の下降に伴って熱板20内に収容される。駆動部52はモータやエアシリンダ等の駆動源を内蔵し、昇降ピン51を昇降させる。昇降機構50は、昇降ピン51を昇降させることで、熱板20上のウェハWを昇降させる。
【0054】
制御部100は、複数の温度センサ40により検出された温度に基づいてヒータ21を制御すること、複数の温度センサ40により検出された温度を質量とみなした場合の重心に相当する温度重心の位置を算出すること、温度重心の位置に基づいてウェハWの熱処理状態を検知すること、を実行するように構成されている。制御部100は、複数の温度センサ40により検出された温度を取得すること、温度を質量とみなした場合の重心に相当する温度重心の位置を算出すること、温度重心の位置に基づいて、ウェハWの熱処理状態を検知すること、を実行する熱処理状態検知装置を構成する。
【0055】
一例として、制御部100は、温度取得部111と、ヒータ制御部112と、ウェハ搬送制御部113と、重心算出部114と、差分算出部115と、熱処理状態検知部116と、異常報知部117と、位置情報出力部118と、データ格納部121と、表示部122とを有する。
【0056】
温度取得部111は、複数の温度センサ40により検出された温度を取得し、データ格納部121に格納する。ヒータ制御部112は、温度取得部111によりデータ格納部121に格納された温度に基づいて複数のヒータ21を制御する。ウェハ搬送制御部113は、熱板20上へのウェハWの搬送及び載置と、熱板20上からのウェハWの搬送とを行うように、搬送アームA3及び昇降機構50を制御する。
【0057】
重心算出部114は、データ格納部121に格納された温度に基づいて上記温度重心の位置を算出し、算出結果をデータ格納部121に格納する。差分算出部115は、データ格納部121に格納された温度重心の位置を取得し、温度重心の位置と基準位置との差分を算出し、算出結果をデータ格納部121に格納する。基準位置は、例えば、ウェハWが正常に熱処理された場合における温度重心の位置に基づいて定められる。熱処理状態検知部116は、上記温度重心の位置と基準位置との差分に基づいて、ウェハWの熱処理状態を検知する。
【0058】
異常報知部117は、熱処理状態の異常を報知する情報を表示部122に出力する。位置情報出力部118は、温度重心の位置に関する情報を表示部122に出力する。表示部122は、異常報知部117及び位置情報出力部118から出力された情報を表示画像として出力する。
【0059】
このような制御部100は、例えば一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。この場合、制御部100の各要素は、制御用コンピュータのプロセッサ、メモリ及びモニタ等の協働により構成される。制御用コンピュータを制御部100として機能させるためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。この場合、記録媒体は、後述の基板熱処理方法を装置に実行させるためのプログラムを記録する。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、メモリーカード等が挙げられる。
【0060】
なお、制御部100の各要素を構成するハードウェアは、必ずしもプロセッサ、メモリ及びモニタに限られない。例えば、制御部100の各要素は、その機能に特化した電気回路により構成されていてもよいし、当該電気回路を集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0061】
制御部100は複数のハードウェアに分かれていてもよい。例えば制御部100は、熱処理ユニットU2を制御するハードウェアと、熱処理状態検知装置を構成するハードウェアとに分かれていてもよい。これらのハードウェアは、有線及び無線のいずれで接続されていてもよいし、互いに離れた場所に配置され、ネットワーク回線を介して接続されていてもよい。
【0062】
〔基板熱処理方法〕
続いて、基板熱処理方法の一例として、熱処理ユニットU2によるウェハWの熱処理手順について説明する。
【0063】
図6に示すように、まず制御部100がステップS01を実行する。ステップS01では、温度取得部111が、複数の温度センサ40により検出された温度を取得し、温度取得部111により取得された温度に基づいてヒータ制御部112が複数のヒータ21を制御する。具体的に、ヒータ制御部112は、複数の温度センサ40により検出される温度を目標値に近付けるように、複数のヒータ21への供給電力を調整する。
【0064】
次に、制御部100はステップS02を実行する。ステップS02では、ウェハ搬送制御部113による制御に応じ、搬送アームA3及び昇降機構50がウェハWを熱板20上に載置する。熱板20上に載置されたウェハWは、ヒータ21からの伝熱によって加熱される。すなわちステップS02は、熱板20上のウェハWをヒータ21により加熱することを含んでいる。
【0065】
次に、制御部100はステップS03,S04を実行する。ステップS03では、複数の温度センサ40により検出された温度を温度取得部111が取得し、データ格納部121に格納する。ステップS04では、温度取得部111により取得された温度に基づいて、ヒータ制御部112がヒータ21を制御する。具体的に、温度取得部111は、複数の温度センサ40により検出される温度を目標値に近付けるように、複数のヒータ21への供給電力を調整する。
【0066】
次に、制御部100はステップS05,S06を実行する。ステップS05では、重心算出部114が温度重心の位置を算出し、算出結果をデータ格納部121に格納する。温度重心の位置は、温度を重みとした場合の座標の加重平均値として算出可能である。例えば重心算出部114は、ウェハWに平行な面内における温度重心の位置を第一の重心位置として算出する。第一の重心位置は次式により算出可能である。
【数3】
【数4】
X,Y:直交座標系における温度重心の位置
xi,yi:直交座標系における前記温度センサの位置
Ti:前記温度センサにより検出された温度
n:前記温度センサの数
【0067】
ステップS06では、差分算出部115がデータ格納部121に格納された温度重心の位置を取得し、温度重心の位置と基準位置との差分を算出し、算出結果をデータ格納部121に格納する。上述したように、基準位置は、例えば、ウェハWが正常に熱処理された場合における温度重心の位置に基づいて定められる。
【0068】
基準位置の具体例として、過去の複数回の正常な熱処理において算出された温度重心の位置の平均値が挙げられる。基準位置は、例えばデータ格納部121に予め記録されている。基準位置は、ステップS06に先立って差分算出部115等により算出されてもよい。すなわち制御部100は、基準位置を算出することを更に実行するように構成されていてもよい。基板熱処理方法は、基準位置を算出することを更に含んでいてもよい。
【0069】
次に、制御部100はステップS07を実行する。ステップS07では、熱処理状態検知部116が、温度重心の位置に基づいて、ウェハWの熱処理状態を検知する。熱処理状態の検知の一例として、熱処理状態が正常であるか異常であるかを検知することが挙げられる。例えば熱処理状態検知部116は、温度重心の位置と基準位置との差分が許容範囲以内にある場合に、ウェハWの熱処理状態が正常であることを検知し、温度重心の位置と基準位置との差分が許容範囲外にある場合に、ウェハWの熱処理状態が異常であることを検知する。
【0070】
許容範囲の具体例として、過去の複数回の正常な熱処理において算出された温度重心の位置の標準偏差が挙げられる。許容範囲は、標準偏差に所定の倍率(例えば3倍)を乗じたものであってもよい。許容範囲は、例えばデータ格納部121予め記録されている。許容範囲は、ステップS07に先立って熱処理状態検知部116等により算出されてもよい。すなわち制御部100は、許容範囲を算出することを更に実行するように構成されていてもよい。基板熱処理方法は、許容範囲を算出することを更に含んでいてもよい。
【0071】
ステップS07において熱処理状態が正常であることが検知された場合、制御部100はステップS08を実行する。ステップS08では、ウェハ搬送制御部113が、ウェハWの加熱開始から設定時間が経過したか否かを検知する。ステップS08において、設定時間が未だ経過していないことが検知された場合、制御部100は処理をステップS03に戻す。ステップS08において、設定時間が経過したことが検知された場合、制御部100はステップS09を実行する。ステップS09では、ウェハ搬送制御部113による制御に応じ、搬送アームA3及び昇降機構50がウェハWを熱板20上から搬送する。以上でウェハWの正常な熱処理が完了する。
【0072】
ステップS07において熱処理状態が異常であることが検知された場合、制御部100はステップS10,S11を実行する。ステップS10では、異常報知部117が、熱処理状態の異常を報知する情報を表示部122に出力し、表示部122が当該情報を表示画像として出力する。ステップS11では、位置情報出力部118が温度重心の位置に関する情報を表示部122に出力し、表示部122が当該情報を表示画像として出力する。
【0073】
一例として、位置情報出力部118は、ステップS03〜S08の繰り返しによりデータ格納部121に蓄積されたデータに基づいて、温度重心の位置と基準位置との差分の軌跡情報を出力し、表示部122は当該情報をグラフとして出力する。なお、軌跡情報は、位置(位置の差分を含む。)の時間的な変化を意味する。ステップS03〜S08の繰り返しによりデータ格納部121に蓄積された位置情報を時系列で並べたものも軌跡情報に相当する。
【0074】
ステップS10,S11を実行した後、制御部100は熱処理を終了する。
【0075】
以上に説明した熱処理ユニットU2は、ウェハWを載置するための熱板20と、載置部上のウェハWを加熱するためのヒータ21と、熱板20上のウェハWの複数箇所にそれぞれ対応するように配置された複数の温度センサ40と、制御部100とを備える。制御部100は、複数の温度センサ40により検出された温度に基づいてヒータ21を制御すること、複数の温度センサ40により検出された温度を質量とみなした場合の重心に相当する温度重心の位置を算出すること、温度重心の位置に基づいて、ウェハWの熱処理状態を検知すること、を実行するように構成されている。
【0076】
この熱処理ユニットU2によれば、温度重心の位置に基づいてウェハWの熱処理状態が検知される。ウェハWの熱処理状態は、ウェハWの全体において異常となるばかりでなく、ウェハWの一部分において限定的に異常となる場合がある(以下、これを「熱処理状態の部分的な異常」という)。熱処理状態の部分的な異常を生じさせる要因としては、正常な載置状態に比べてウェハWの一部が熱板20から離れた状態になること(以下、これを「ウェハWの浮き上がり」という。)が挙げられる。ウェハWの浮き上がりは、例えば微少なパーティクルへの乗り上げ又はウェハWの反り等に起因して生じ得る。温度重心の位置は、以下に例示するように、熱処理状態の部分的な異常に応じて感度良く変動する。
【0077】
図7(a)は、
図5の例示する熱板20によりウェハWの加熱が正常に実行された場合に、温度センサ40により検出された温度の経時的な変化を示すグラフである。
図7(b)は、
図5に例示する熱板20の図示上側においてウェハWの浮き上がりが生じた状態で加熱を実行した場合に、温度センサ40により検出された温度の経時的な変化を示すグラフである。
図7(a)及び(b)のいずれにおいても、各温度センサ40による検出値は、加熱開始後に温度が低下した後、緩やかに設定温度に近付くように変化している。加熱開始後の温度低下は、ヒータ21の熱がウェハW側に吸収されることに伴うものである。低下した温度が設定温度側に回復するのは、温度センサ40による検出値に基づいてヒータ21が制御されるためである。
【0078】
図8(a)は、
図7(a)に示される温度を用いて算出された温度重心の位置の軌跡を示すグラフである。
図8(b)は、
図7(b)に示される温度を用いて算出された温度重心の位置の軌跡を示すグラフである。
図8(a)及び(b)の上下左右は、
図5の上下左右に一致している。
図8(b)では、
図8(a)に比べ、温度重心の位置が上方に大きく変動している。これは、図示上側においてウェハWの浮き上がりが生じているために、ウェハWの載置に伴う温度低下が図示上側において小さくなったことに起因しているものと考えられる。
【0079】
図8に例示されるように、温度重心の位置は、熱処理状態の部分的な異常に応じて感度良く変動する。このため、温度重心の位置に基づくことで、熱処理状態の部分的な異常を感度良く検知することができる。従って、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる。
【0080】
制御部100は、ウェハWに平行な面内における温度重心の位置を第一の重心位置として算出するのに加え、ウェハWの中心に直交する動径方向における温度重心の位置を第二の重心位置として更に算出し、第一及び第二の重心位置に基づいてウェハWの熱処理状態を検知してもよい。
【0081】
図5に示す熱板20は、ウェハWと同心で動径方向に並ぶ三つの領域20a,20b,20cに分かれている。領域20bは偏角方向(周方向)に並ぶ二つの領域に分かれているので、領域20bには二つの温度センサ40が配置されている。領域20cは偏角方向に並ぶ四つの領域に分かれているので、領域20cには四つの温度センサ40が配置されている。このような場合、領域20aの温度センサ40により検出された温度Taを領域20aの質量とみなし、領域20bの二つの温度センサ40により検出された温度の平均値Tbを領域20bの質量とみなし、領域20cの四つの温度センサ40により検出された温度の平均値Tcを領域20cの質量とみなし、次式により第二の重心位置を算出可能である。
R=(ra・Ta+rb・Tb+rc・Tc)/(Ta+Tb+Tc)
R:第二の重心位置
ra:動径方向における領域20aの位置(ウェハWの中心から領域20aまでの距離)
rb:動径方向における領域20bの位置(ウェハWの中心から領域20bまでの距離)
rc:動径方向における領域20cの位置(ウェハWの中心から領域20cまでの距離)
Ta:領域20aの温度センサ40により検出された温度
Tb:領域20bの二つの温度センサ40により検出された温度の平均値
Tb:領域20cの四つの温度センサ40により検出された温度の平均値
【0082】
第一の重心位置は、熱処理状態の部分的な異常に応じて感度良く変動するものの、温度分布がウェハWの中心に対して点対称となるような異常に対しては変動し難い。このような異常の具体例としては、パーティクルに乗り上げてウェハWの中心部が浮き上がっている場合、ウェハWの反りに起因してウェハWの周縁部分全体が均一に浮き上がっている場合等が挙げられる。
【0083】
これに対し、第二の重心位置は、ウェハWの動径方向に沿った温度分布に応じて変動する。
図9は、熱処理中における第二の重心位置の軌跡を例示するグラフである。図中のr軸はウェハWを中心とする極座標系の動径であり、FPは第二の重心位置の軌跡であり、O1はウェハWの中心及び周縁の中間位置である。
図9(a)は、ウェハWの中心部が浮き上がっている場合を例示している。この場合、軌跡FPは、中間位置O1に対してウェハWの中心側に大きく振れる。
図9(b)は、ウェハWの周縁部が浮き上がっている場合を例示している。この場合、軌跡FPは、中間位置O1に対してウェハWの周縁側に大きく振れる。このように、第二の重心位置は、温度分布がウェハWの中心に対して点対称となる場合においても感度良く変動する。従って、第一及び第二の重心位置の両方に基づいて基板の熱処理状態を検知することにより、熱処理状態の異常をより確実に検知することができる。
【0084】
上述したように、制御部100は、動径方向において互いに等しい位置にある複数の温度センサ40により検出された温度の平均値を当該位置の質量とみなして第二の重心位置を算出してもよい。制御部100は、ウェハWと同心で動径方向に並ぶ複数の領域20a,20b,20cのそれぞれにおいて温度センサにより検出された温度の平均値を、当該領域の質量とみなして第二の重心位置を算出してもよい。これらの場合、第二の重心位置をより高精度に算出できる。
【0085】
制御部100は、ウェハWが正常に加熱された場合における温度重心の位置に基づいて定められた基準位置を用い、温度重心の位置と基準位置との差分に基づいて、ウェハWの熱処理状態を検知するように構成されている。このため、温度重心の位置のうち、基準位置から乖離した成分に基づいてウェハWの熱処理状態が検知される。基準位置から乖離した成分に基づくことにより、熱処理状態が正常であるか異常であるかの判断基準を単純化することができる。
【0086】
なお、制御部100は、温度重心の位置に基づいて熱処理状態を検知するように構成されていればよいので、基準位置を用いるように構成されることは必須ではない。
【0087】
制御部100は、複数回の正常な加熱において算出された温度重心の位置の平均値を基準位置として用い、複数回の正常な加熱において算出された温度重心の位置の標準偏差に基づいて定まる許容範囲を更に用い、温度重心の位置と基準位置との差分が許容範囲外にある場合に、ウェハWの熱処理状態が異常であることを検知するように構成されている。
【0088】
図10は、
図8(b)に示された温度重心の位置と基準位置との差分の軌跡を示すグラフである。
図9中の一点鎖線は許容範囲を示している。
図9の軌跡が一点鎖線外に出た時点で、ウェハWの熱処理状態が異常であることが検知される。このように、温度重心の位置が許容範囲内に位置するか否かという単純な基準により、熱処理状態の異常を検知することができる。また、上記平均値を基準位置として用い、上記標準偏差に基づいて定まる許容範囲を用いることで、適正なばらつきを許容し、不必要な異常検知を削減することができる。
【0089】
第二の重心位置についても、基準位置との差分が許容範囲外にある場合に、ウェハWの熱処理状態が異常であることを検知してもよい。
図9の一点鎖線LL1〜LL2は、第二の基準位置の許容範囲を例示している。
【0090】
なお、制御部100は、温度重心の位置に基づいて熱処理状態を検知するように構成されていればよいので、温度重心の位置に基づいて熱処理状態を検知する具体的手法は上述したものに限定されない。
【0091】
制御部100は、温度重心の位置に関する情報を出力することを更に実行するように構成されている。温度重心の位置に基づけば、熱処理状態の異常がいずれの方向において生じたかを把握することも可能である。このため、温度重心の位置に関する情報を出力することで、熱処理状態の異常の要因となった位置を特定するのに有益な情報を提供することができる。
【0092】
なお、制御部100は、熱処理状態を検知するように構成されていればよいので、温度重心の位置に関する情報を出力するように構成されることは必須ではない。
【0093】
制御部100は、温度重心の位置に関する情報の一例として、温度重心の位置と基準位置との差分の軌跡情報を出力するように構成されている。このため、温度重心の位置のうち、基準位置から乖離した成分の軌跡情報が出力される。基準位置から乖離した成分の軌跡情報によれば、熱処理状態の異常がいずれの方向において生じたかを更に容易に把握することができる。従って、熱処理状態の異常の要因となった位置を特定するのに更に有益な情報を提供することができる。例えば、
図9に基づけば、
図5中の図示上側においてウェハWの浮き上がりが生じていることを推定できる。
【0094】
なお、制御部100は、温度重心の位置に関する情報として、温度重心の位置の軌跡情報と基準位置の軌跡情報とを重ねて出力するように構成されていてもよいし、異常が生じていると推定される方位を示す情報を出力するように構成されていてもよい。制御部100は、温度重心の位置に関する情報として、温度重心の位置自体の軌跡情報のみを出力するように構成されていてもよい。
【0095】
ヒータ21は、ウェハWに沿って並ぶ複数の処理領域(領域20a,20b,20c)ごとに制御可能となっていてもよく、制御部100は、温度重心の位置に基づいて熱処理が不十分な処理領域を特定すること、当該処理領域の熱処理を促進するように熱処理部を制御すること、を更に実行するように構成されていてもよい。この場合、温度重心の位置情報に応じた熱処理を行うことにより、熱処理の信頼性を高めることができる。
図11を参照し、熱処理が不十分な処理領域の熱処理を促進することを含む熱処理手順の具体例を説明する。
【0096】
図11に示す熱処理手順では、上記ステップS07において熱処理状態が異常であることが検知された場合、制御部100はステップS20を実行する。ステップS20では、熱処理状態の異常は調整可能な範囲内にあるか否かをヒータ制御部112が確認する。例えば、熱処理が不十分な処理領域における温度が調整可能な範囲内にあるか否かをヒータ制御部112が確認する。調整可能な範囲は、ヒータ21の出力調整によって許容範囲内に戻し得る範囲であり、実験に基づいて予め設定可能である。
【0097】
ステップS20において、熱処理状態の異常が調整可能な範囲内であると判定された場合、制御部100はステップS21を実行する。ステップS21では、熱処理が不十分な処理領域の熱処理を促進するように、ヒータ制御部112がヒータ21を制御する。例えばヒータ制御部112は、熱処理が不十分な処理領域においてヒータ21の出力を高める。その後、制御部100は処理をステップS08に進める。
【0098】
ステップS20において、熱処理状態の異常が調整可能な範囲内ではないと判定された場合、制御部100は、ステップS10,S11と同様にステップS22,S23を実行した後、処理を終了する。
【0099】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、載置部上のウェハWを加熱するための熱処理部は、上述したヒータ21に限られず、ウェハWを輻射加熱するように構成された赤外光源等であってもよい。熱処理部は、加熱を目的としたものに限られない。例えば熱処理部は、ウェハWを冷却するクーラであってもよい。熱処理の対象は半導体ウェハに限られず、例えばガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)であってもよい。