(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、表示素子側基板とタッチ入力素子とを、両者の間に間隙を設けて配置し、表示素子側基板の間隙側表面及びタッチ入力素子の間隙側表面のうち少なくとも一方に、特定の表面形状を有する微細な凹凸が形成された光学フィルムを、その凹凸面が上記の間隙側となるように配置して、タッチパネルとする。
図1には、本発明が適用された抵抗膜方式のタッチパネルの実施形態が模式的な断面図で示されている。また
図2には、本発明が適用された静電容量方式のタッチパネルの実施形態が模式的な断面図で示されている。
【0020】
まず、抵抗膜方式のタッチパネルの実施形態を示す
図1を参照して、(a)、(b)及び(c)の各形態に共通する構成を説明すると、表示素子側基板10及びタッチ入力素子20が間隙50を置いて配置されており、表示素子側基板10の間隙50側最表面及びタッチ入力素子20の間隙50側最表面には、それぞれ電極となる透明導電層15,25が形成されている。透明導電層15,25は、タッチ入力素子20側を手指などで押圧したときにその位置で両者が接触し、その位置を検知するための役割を果たす。
【0021】
そして
図1の(a)に示される第一の形態では、表示素子側基板10の間隙50側に、透明支持体31とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層32とで構成される光学フィルム30が、その塗工層32側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置されている。この場合には、表示素子側の透明導電層15は、光学フィルム30の塗工層32側凹凸面に形成される。
【0022】
図1の(b)に示される第二の形態では、タッチ入力素子20の間隙50側に、透明支持体41とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層42とで構成される光学フィルム40が、その塗工層42側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置されている。この場合には、タッチ入力素子側の透明導電層25は、光学フィルム40の塗工層42側凹凸面に形成される。
【0023】
図1の(c)に示される第三の形態では、表示素子側基板10の間隙50側に、透明支持体31とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層32とで構成される光学フィルム30が、その塗工層32側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置され、タッチ入力素子20の間隙50側にも、透明支持体41とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層42とで構成される光学フィルム40が、その塗工層42側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置されている。この場合、表示素子側の透明導電層15は光学フィルム30の塗工層32側凹凸面に形成され、タッチ入力素子側の透明導電層25は光学フィルム40の塗工層42側凹凸面に形成される。
【0024】
次に、静電容量方式のタッチパネルの実施形態を示す
図2を参照して、(a)、(b)及び(c)の各形態に共通する構成を説明すると、表示素子側基板10及びタッチ入力素子20が間隙50を置いて配置されている。なお、
図2に示される静電容量方式においては、同図に示されるタッチ入力素子20だけをタッチパネルと称することもあるが、本発明では、このタッチ入力素子20及びそれと間隙を置いて配置される表示素子側基板10の組合せをもって、タッチパネルと称することとする。
【0025】
そして
図2の(a)に示される第一の形態では、表示素子側基板10の間隙50側に、透明支持体31とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層32とで構成される光学フィルム30が、その塗工層32側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置されている。
【0026】
図2の(b)に示される第二の形態では、タッチ入力素子20の間隙50側に、透明支持体41とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層42とで構成される光学フィルム40が、その塗工層42側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置されている。
【0027】
図2の(c)に示される第三の形態では、表示素子側基板10の間隙50側に、透明支持体31とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層32とで構成される光学フィルム30が、その塗工層32側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置され、タッチ入力素子20の間隙50側にも、透明支持体41とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層42とで構成される光学フィルム40が、その塗工層42側の凹凸面を上記の間隙50側にして配置されている。
【0028】
以上いずれの形態においても、表示素子側基板10のタッチ入力素子20と反対側(各図では下側)に、画像表示素子(図示せず)が配置され、タッチ入力式画像表示装置となる。以下、本発明のタッチパネルを構成する各部材について順次説明し、さらに本発明で規定する光学フィルムの好適な製造方法について説明し、その後、タッチパネルに関する補足説明及びタッチ入力式画像表示装置に関する説明へと進んでいく。
【0029】
[表示素子側基板]
表示素子側基板10は、ガラス板や各種の透明樹脂フィルムで構成することができる。特に、画像表示素子として液晶セルや有機EL表示素子を採用する場合は、その視認側に配置される偏光板を、
図1及び
図2における表示素子側基板10とすることができる。偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向して直線偏光能が付与された偏光フィルムの少なくとも片面、好ましくは両面に透明樹脂からなる保護フィルムが貼合されたもので構成することができる。偏光板の表示素子側に、さらに位相差板を配置することもある。また、偏光板の一方の保護フィルム、特に表示素子側となる保護フィルムを、位相差が付与された位相差板で構成することもできる。画像表示素子が液晶セルである場合は、その液晶セルの種類に合わせて、所定の位相差値を有する位相差板が用いられる。一方、画像表示素子が有機EL表示素子である場合は、その位相差板を1/4波長位相差板で構成し、偏光フィルムとの組合せで円偏光板としたものが、反射防止機能を兼ねて好適に用いられる。
【0030】
位相差板は、延伸などによって位相差が付与された光学フィルムであり、その光学特性は、面内遅相軸方向の屈折率をn
x 、面内で遅相軸と直交する方向(進相軸方向)の屈折率をn
y、厚み方向の屈折率をn
z、そしてフィルムの厚さをdとして、以下の式(I)で定義される面内位相差値Ro 、及び以下の式(II)で定義される厚み方向位相差値Rthによって表すことができる。
【0031】
Ro =(n
x−n
y)×d (I)
Rth=〔(n
x+n
y)/2−n
z〕×d (II)
【0032】
液晶セル又は有機EL表示素子との組み合わせで、適当な位相差値を示す位相差板を採用すればよい。なお、溶融押出法によって製膜されるフィルムは、押出方向に光学軸が形成されて面内に若干の位相差が発現し、また溶液キャスト法によって製膜されるフィルムは、厚み方向に光学軸が形成されてその方向にある程度の位相差が発現する。このような不可避的に生じる位相差をさらに小さくし、面内及び厚み方向とも位相差値をほぼゼロにしたフィルムも市販されており、このように面内及び厚み方向の位相差値をほぼゼロにしたフィルムも、位相差板と称されることがある。
【0033】
[タッチ入力素子]
タッチ入力素子20も、ガラス板や各種の透明樹脂フィルムで構成することができる。
図1に示される抵抗膜方式のタッチパネルにおいては、このタッチ入力素子20にタッチすることによりそれが撓んで、その裏面に設けられた透明導電層25が、表示素子側基板20の表面に設けられた透明導電層15に接触し、それによってタッチ位置を検知するので、このタッチ入力素子20は、ポリエチレンテレフタレートフィルムのような可撓性のある透明な樹脂フィルムで構成することが多い。一方、
図2に示される静電容量方式のタッチパネルにおいては、可撓性は特に要求されないので、ガラス板及び透明樹脂フィルムのいずれも、タッチ入力素子20とすることができる。
【0034】
[凹凸を有する光学フィルム]
本発明では、表示素子側基板10とタッチ入力素子20とを、両者の間に間隙50を保って配置し、かつ表示素子側基板10の当該間隙50側表面及びタッチ入力素子20の当該間隙50側表面の少なくとも一方に、微細な凹凸が形成され、特定の表面形状を有する光学フィルム30,40を、その凹凸面が上記の間隙側となるように配置して、ニュートンリングの発生が抑制されたタッチパネルとする。表示素子側基板10に設けられる光学フィルム30は、透明支持体31とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層32とで構成される。タッチ入力素子20に設けられる光学フィルム40も、透明支持体41とその上に形成された微細な凹凸を有する塗工層42とで構成される。
【0035】
〈透明支持体〉
透明支持体31,41は透光性のものであればよく、例えば、ガラスや透明樹脂フィルムなどを用いることができる。樹脂フィルムは、適度の透明性及び機械強度を有していればよい。透明支持体31,41を構成する樹脂として、具体的には例えば、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチエンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂などを用いることができる。透明支持体31,41の厚さは、例えば10〜500μm 程度の範囲とすることができるが、好ましくは20〜300μm の範囲である。
【0036】
〈塗工層〉
透明支持体31,41の表面には微細な凹凸を有する塗工層32,42を形成して、ニュートンリング防止機能が付与された光学フィルム30,40とする。塗工層32,42は、透光性樹脂の塗布により形成することができる。そして塗工層32,42の表面は、断面曲線のスキューネスPsk の絶対値が0.3以下となるようにする。微細な凹凸面の形成は、透光性樹脂中に微粒子を含有させる方法や、透光性樹脂の塗布層に凹凸面を有する型(エンボス型)を密着させて、その凹凸面を塗布層に転写する方法などによって行うことができる。
【0037】
塗工層32,42の形成に用いる透光性樹脂は、透光性を有するものであればよく、例えば、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂のような活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂、金属アルコキシドの硬化物などで構成することができる。これらの中でも、高い硬度及び高い耐擦傷性を付与できることから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好適である。活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は金属アルコキシドを用いる場合は、活性エネルギー線の照射又は加熱により当該樹脂を硬化させ、塗工層32,42が形成される。
【0038】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能(メタ)アクリレート;ジイソシアネートと多価アルコールの反応によって得られる末端イソシアナト基ウレタンプレポリマーにアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを反応させることにより合成されるもののような多官能のウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。これらのほか、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂なども、活性エネルギー線硬化性樹脂となりうる。
【0039】
熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂のほか、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、及びメチルセルロースのようなセルロース誘導体;酢酸ビニルの単独重合体又は共重合体、塩化ビニルの単独重合体又は共重合体、及び塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体のような、ビニル系樹脂;ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールのようなアセタール系樹脂;アクリル樹脂又はアクリル酸エステル系共重合体、及びメタクリル樹脂又はメタクリル酸エステル系共重合体のようなアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
【0041】
金属アルコキシドとしては、アルコキシシラン系の材料を使用することができ、加水分解や脱水縮合により酸化珪素系などのマトリックスを形成するものである。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどであり、加水分解や脱水縮合により無機系又は有機無機複合系マトリックスを形成し、透光性樹脂となる。
【0042】
これらのうち、活性エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂(いずれも硬化前のもの)には液体状態で用意されるものがあり、また金属アルコキシドは多くの場合液体である。このように液体状態で用意される樹脂は、そのまま塗工層32,42を形成するための塗工液として用いることができるが、必要により、溶媒などにより希釈した状態で塗工液としてもよい。一方、熱可塑性樹脂を含む固体で用意される樹脂は、適当な溶媒に溶かした状態で塗工液とされる。これらの活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、金属アルコキシド又は熱可塑性樹脂を含む塗工液は、レベリング剤や分散剤など、適宜の添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
透光性樹脂を含む塗工液、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗工液には、ギラツキの低減などを目的として内部ヘーズを付与するために、透光性微粒子を添加してもよい。また、表面凹凸の形成のために、透光性微粒子を用いることもある。添加される透光性微粒子は、この目的のために従来から防眩フィルムなどの分野で知られているものを用いることができる。例えば、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合体などからなる有機微粒子や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラスなどからなる無機微粒子が、透光性微粒子として用いられる。有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズを使用することもできる。これらの透光性微粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。透光性微粒子の形状は、球状、扁平状、板状、針状、不定形状などのいずれでもよい。
【0044】
透光性樹脂、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂に、透光性微粒子を含有させる場合、用いる透光性微粒子の粒子径や屈折率は特に制限されないが、内部ヘーズの発現を目的とする場合も表面凹凸形成を目的とする場合も、その粒子径は0.5〜20μmの範囲にあることが好ましい。粒子径がこの範囲にあれば、効果的に内部ヘーズを発現させることができる。また同様の理由から、内部ヘーズの発現を目的とする場合は、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化後の屈折率と透光性微粒子の屈折率との差は0.04〜0.15の範囲にあることが好ましい。透光性微粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、通常3〜60重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。透光性微粒子の含有量が、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して3重量部未満では、ギラツキ低減のための十分な内部ヘーズが得られにくい。一方、その含有量が活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して60重量部を超えると、得られる光学フィルム30,40の透明性が損なわれることがあり、またこの光学フィルムが組み込まれたタッチパネルを画像表示素子に適用した場合に、光散乱が強すぎるため、例えば、黒表示において画像表示装置の正面方向に対して斜めに漏れ出してくる光が塗工層32,42により正面方向へ強く散乱されてしまうなどの理由により、コントラストを低下させることもある。
【0045】
〈光学フィルムの表面形状〉
本発明では、表示素子側基板10及び/又はタッチ入力素子20の間隙50側に配置される光学フィルム30,40として、塗工層32,42が、その断面曲線のスキューネスPsk の絶対値が0.3以下の表面形状を有するものを採用する。ここで、断面曲線のスキューネスPskは、JIS B0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」(ISO 4287:1997, Amd.1:2009 に対応する)の4.2.3に規定される値であって、次式(III)で定義される。
【0047】
式中、Z(x)は任意の位置xにおける断面曲線の高さであり、Lp は断面曲線の基準長さ(評価長さに等しい)であり、Pq は断面曲線の二乗平均平方根高さであって、やはり JIS B0601:2013 の4.2.2において次式(IV)のとおり定義されている。
【0049】
これらの式からわかるように、断面曲線のスキューネスPskは、断面曲線の二乗平均平方根高さPq の三乗によって無次元化した基準長さLp におけるZ(x)の三乗平均である。なお、上記の JIS B0601:2013 において、基準長さLは、小文字斜体のエル(l)で表示されているが、本明細書では、数字のいち(1)と区別しやすくするため、大文字のエル(L)で表示している。
【0050】
断面曲線のスキューネスPskは、断面曲線を構成する山部と谷部の分布状態のゆがみ度(ひずみ度)を規定するパラメータ、すなわち、断面曲線の確率密度関数の非対称性の度合いを示すパラメータで、統計用語では「わい(歪)度」と呼ばれるものである。正規分布であれば、断面曲線のスキューネスPskはゼロ(0)になる。
【0051】
このように定義される断面曲線のスキューネスPskの絶対値が 0.3以下であれば、タッチパネルのタッチ入力素子20を手指などで押圧したときに、ニュートンリングが視認されにくくなり、逆にその値が 0.3を超えると、ニュートンリングが視認されるようになる。断面曲線のスキューネスPskの絶対値は、ゼロ(0)に近いほど好ましく、例えば0.2以下であるのが一層好ましい。
【0052】
また、光学フィルム30,40の塗工層32,42は、その断面曲線における算術平均傾斜角Δaが1°以下の表面形状を有することが好ましい。ここで、算術平均傾斜角Δaとは、断面曲線を一定間隔ΔXで横方向に区切り、各区間内における断面曲線の始点と終点を結ぶ線分の傾き(角度)の絶対値を求め、その値を平均したものをいう(インターネット〈URL : http://www.fujimfg.co.jp/benri/roughness_del-a.htm〉参照、平成25年6月17日検索)。断面曲線の算術平均傾斜角Δaの求め方を示す断面曲線の模式図である
図3を参照して説明すると、基準長さLにおける測定のための区切りをn個〔測定個所は(n−1)個〕とし、i番目の測定区間ΔXにおける断面曲線の縦方向高さをΔYi として、個々の測定区間ΔXにおける傾斜角は、tan
-1(ΔYi/ΔX)となり、算術平均傾斜角Δaは、下式(V)により求められる。
【0054】
先に説明した断面曲線のスキューネスPskの絶対値が 0.3以下であることとともに、算術平均傾斜角Δaを1°以下とすることで、ニュートンリングが一層視認されにくくなる。
【0055】
さらに塗工層32,42は、算術平均粗さRaが100nm以下の表面形状を有することも好ましい。ここでいう算術平均粗さRaも、JIS B0601:2013の4.2.1に規定される値であり、基準長さにおける高さZ(x)の絶対値の平均値を意味する。先に説明した断面曲線のスキューネスPskの絶対値が 0.3以下であることとともに、あるいはさらに算術平均傾斜角Δaが1°以下であることとともに、算術平均粗さRaを100nm以下とすることで、ニュートンリングが一層視認されにくくなる。
【0056】
表面形状のパラメータである断面曲線のスキューネスPsk又はその絶対値、算術平均傾斜角Δa及び算術平均粗さRaは、市販の三次元形状測定装置や粗さ計などを用いて測定することができる。後述する実施例では、SENSOFAR 社製の三次元顕微鏡“PLμ 2300”を用いて測定を行った。この装置は、測定サンプルについて、指定されたパラメータを自動的に計算するようになっている。
【0057】
以上説明したとおり、ニュートンリングの発生を抑制するうえで塗工層32,42は、断面曲線のスキューネスPskの絶対値がゼロ(0)に近づくようにするとともに、算術平均傾斜角Δa及び/又は算術平均粗さRaを小さくすることが好ましいが、微細な凹凸を有することは必要である。そこで、微細な表面凹凸形状を有することの目安として、算術平均傾斜角Δaは 0.3°以上であることが好ましく、また算術平均粗さRaは30nm以上であることが好ましい。
【0058】
〈表面形状の調整方法〉
本発明で採用する光学フィルム30,40は、以上説明した特定の表面形状を有するものであるが、かかる表面形状自体は、例えば、表面凹凸によって外光の写り込みやギラツキを防止するために用いられる防眩フィルムの分野において公知であり、それらに準じて塗工層32,42の表面形状を調整すればよい。表面形状調整の例を挙げると、透光性微粒子を含む塗工液を用いる場合は、塗工液の設計、すなわち、その微粒子の粒径、塗工層を構成する樹脂、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂に対する微粒子の添加量、塗工層の膜厚、溶媒、乾燥条件などを調節する方法がある。また、表面凹凸形状が付与された型を樹脂の塗布層に押し当ててその表面形状を転写する場合は、当該型として、所定の表面形状が付与されたものを採用すればよい。
【0059】
〈光学フィルムの光学特性〉
本発明で規定する光学フィルム30,40において、先述したようにギラツキの低減などを目的として内部ヘーズを付与する場合、その内部ヘーズは、例えば20%を超えることも可能であり、通常は40%以下程度となるようにすることが好ましい。一方、高い透明性が要求される場合、光学フィルム30,40の全ヘーズは、3%以下であることが好ましい。ヘーズは、フィルムの表面凹凸などに起因する外部ヘーズと、フィルム内部に存在する屈折率の異なる物質との界面などに起因する内部ヘーズに分けられる。本発明で規定する光学フィルム30,40は、その塗工層32,42側に微細な凹凸が付与されることから、ある程度の外部ヘーズを有するものとなるが、高い透明性が要求される場合はその外部ヘーズも3%以下となるようにすることが好ましい。
【0060】
フィルムのヘーズは、市販のヘーズメーターを用いて測定することができ、フィルムそのままの状態で、あるいは平滑面を透明なガラス基板に貼り付けた状態で測定されるヘーズが、全ヘーズとなる。また、表面凹凸の影響を打ち消すため、その凹凸表面に透明な粘着剤を貼った状態で、あるいは表面凹凸を有するフィルムごとほぼ同じ屈折率を有する有機液体に浸漬した状態で測定されるヘーズが、内部ヘーズとなるので、全ヘーズから内部ヘーズを差し引いた値として、外部ヘーズを求めることができる。
【0061】
[光学フィルムの製造方法]
先述のとおり、本発明で採用する光学フィルムは、透光性樹脂中に透光性微粒子が配合された塗工液を透明支持体31,41上に塗布した後、溶媒を除去する(熱可塑性樹脂を用いる場合)か、又は必要に応じて乾燥して溶媒を除去し、活性エネルギー線の照射(活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる場合)若しくは加熱(熱硬化性樹脂又は金属アルコキシドを用いる場合)により、その樹脂を硬化させて、当該透光性微粒子に基づく凹凸を塗工層32,42上に発現させる方法や、透光性樹脂を含む塗工液を透明支持体31,41上に塗布し、その塗布層に凹凸を有する型(エンボス型)を密着させて、その凹凸面を塗布層に転写する方法などによって、製造することができる。
【0062】
これらの中でも好ましいものは、後者の方法である。そこで次に、透光性樹脂の塗布層にエンボス型を用いて凹凸を転写し、本発明で規定する光学フィルムを製造する方法について説明する。エンボス型を用いて凹凸を転写する場合であっても、塗工層32,42を形成するための塗工液に透光性微粒子を配合することは差し支えない。この方法は、基本的に以下の(A)及び(B)の工程を経ることになる。
(A)透明支持体31,41上に、透光性樹脂を含む塗工液を塗布する工程、及び、
(B)上記塗工液が塗布された層の表面に、転写用型(エンボス型)の凹凸面を転写する工程。
【0063】
上記工程(A)で用いる塗工液は、透光性樹脂又はこれを形成する樹脂(例えば、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は金属アルコキシド)を含み、必要に応じて透光性微粒子、また必要に応じて溶媒等のその他の成分を含む。透光性樹脂を形成する樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、この塗工液は、さらに光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含む。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物なども、光重合開始剤として用いることができる。光重合開始剤の使用量は、塗工液に含有される紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。透光性微粒子を含む塗工液を用いる場合、得られる光学フィルム30,40の光学特性及び表面形状を均質なものとするために、塗工液中の透光性微粒子の分散は等方分散であることが好ましい。
【0064】
塗工液の透明支持体31,41上への塗布は、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などによって、行うことができる。
【0065】
塗工液の塗布性の改良又は得られる塗工層32,42との接着性の改良を目的として、透明支持体31,41の塗工表面には各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また、透明支持体31,41上に、例えばプライマー層等の他の層を形成し、その上に塗工液を塗布するようにしてもよい。
【0066】
表示素子側基板10上に配置される光学フィルム30は、偏光フィルムの保護フィルムとして機能するものであってもよい。この場合には、透明支持体31と偏光フィルムとの接着性を向上させるために、透明支持体31の表面(塗工層32とは反対側の表面)を各種表面処理によって親水化しておくことが好ましい。
【0067】
上記工程(B)においては、上で説明した塗工液を塗布して得られる層の表面に金型の凹凸面を転写する。具体的には、上記の塗工液を塗布して得られる層の表面に、凹凸面を有する型(エンボス型)の凹凸面を密着させて、その凹凸面を転写する。このようにエンボス型の凹凸面を塗布層の表面に転写することによって、所望の表面形状を有する塗工層32,42を形成することができる。
【0068】
透光性樹脂を形成する樹脂として活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は金属アルコキシドを用いる場合は、上記の塗工液から塗布層を形成し、必要により乾燥して溶媒を除去した後、その塗布層の表面にエンボス型の凹凸面を密着させた状態で、活性エネルギー線の照射(活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる場合)又は加熱(熱硬化性樹脂又は金属アルコキシドを用いる場合)により塗布層を硬化させる。活性エネルギー線は、塗工液に含まれる樹脂の種類に応じて、電子線、紫外線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができる。これらの中では、紫外線又は電子線が好ましく、とりわけ取扱いが簡便で高いエネルギーが得られることから、紫外線が好ましく用いられる。
【0069】
紫外線を採用する場合、その光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプ、シンクロトロン放射光なども用いることができる。これらの中でも、超高圧、高圧、中圧及び低圧を含む水銀灯、キセノンランプ、又はメタルハライドランプが好ましく用いられる。
【0070】
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、又は高周波型のような各種電子線加速器から放出される50〜1,000keV、好ましくは100〜300keV のエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0071】
次に、本発明で規定する光学フィルムを製造する方法の好ましい形態について、
図4を参照して説明する。この好ましい形態は、ロール状に巻かれた透明支持体31を連続的に送り出す工程、送り出された透明支持体31の表面に透光性樹脂を含む塗工液を塗布し、必要に応じて乾燥させる工程、塗工液の塗布によって形成された層を硬化させる工程、及び、得られる光学フィルム30を巻き取る工程を含む。
【0072】
図4において、実線の片矢印は、フィルムの進行方向を意味する。まず、巻き出しロール60から、透明支持体31が連続的に巻き出される。次いで、巻き出された透明支持体31上に、塗工手段61及びこれに対向するバックアップロール62を使用して、塗工液が塗布される。塗工液に溶媒が含まれる場合はその後、乾燥機63を通過させることにより乾燥される。塗工液の塗布層が設けられた透明支持体31は、エンボスロール64とニップロール65との間へ、その塗布層がエンボスロール64と密着するように巻き掛けられる。これにより、塗布層の表面にエンボスロール64の凹凸面が転写される。次に、塗布層を形成した透明支持体31がエンボスロール56に巻き掛けられた状態で、紫外線照射手段66,66から透明支持体31を介して紫外線を照射することにより、塗布層を硬化させる。紫外線照射により照射面が高温になるため、エンボスロール64は、表面温度を室温から80℃程度までの間に調節するための冷却手段を、その内部に備えることが好ましい。紫外線照射手段66は、1機だけ配置してもよいし、複数機配置してもよく、
図4には紫外線照射手段66を2機配置した例が示されている。塗工層が形成された光学フィルム30は、剥離ロール67によって、エンボスロール64から剥がされる。こうして製造された光学フィルム30は、巻き取りロール69に巻き取られる。
図4においては、剥離ロール67の後、巻き取りロール69の前に設けられたピンチロール68を破線両矢印で示す如く可動とすることで、フィルムにたるみや過大張力の付加が生じないようにしている。得られる光学フィルム30は、塗工層を保護する目的で、再剥離性を有する粘着剤層を介して、塗工層表面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどからなる保護フィルムを貼着しながら巻き取ってもよい。
【0073】
塗工層が形成された光学フィルム30を剥離ロール67によりエンボスロール64から剥がした後、追加の紫外線照射を行ってもよい。また、エンボスロール64に巻き掛けられた状態で紫外線照射を行う代わりに、未硬化の塗工液が塗布された層を有する透明支持体31をエンボスロール64から剥がした後、紫外線を照射して硬化させる方法を採用することもできる。
【0074】
[エンボス型の成型方法]
塗工層32,42に表面凹凸形状を転写するために用いる型(エンボス型)は、光学フィルム30,40に所望される形状に対応する表面形状を有している。その表面形状を、透光性樹脂を含む塗布層表面に押し当てながらその塗布層を硬化させることにより、エンボス型の表面形状を塗布層表面に転写できる。
【0075】
エンボス型における凹凸形状のパターンは、規則的なパターンであってもよいし、ランダムパターン、あるいは特定サイズの1種類以上のランダムパターンを敷き詰めた、擬似ランダムパターンであってもよい。しかし、表面形状に起因する反射光の干渉により反射像が虹色に色づくことを防止する観点からは、ランダムパターン又は擬似ランダムパターンであることが好ましい。
【0076】
エンボス型の外形形状は特に制限されるものではなく、平板状であってもよいし、円柱状又は円筒状のロールであってもよいが、連続生産性の点からは、
図4に示したような、円柱状又は円筒状の型、すなわちエンボスロールであることが好ましい。この場合、円柱状又は円筒状の鋳型の側面に所定の表面形状が形成される。
【0077】
エンボス型を構成する基材も特に制限されるものでなく、例えば、金属、ガラス、カーボン、樹脂、あるいはそれらの複合体から適宜選択できるが、加工性などの点から金属が好ましい。エンボス型に好適に用いられる金属材料は、特にコストの観点から、アルミニウム、鉄、又はアルミニウム若しくは鉄を主体とする合金である。
【0078】
エンボス型を得る方法としては、例えば、基材を研磨し、サンドブラスト加工を施した後、無電解ニッケルめっきを施す方法(特開 2006-53371 号公報);基材に銅めっき又はニッケルめっきを施した後、研磨し、次いでサンドブラスト加工を施し、さらにクロムめっきを施す方法(特開 2007-187952号公報);銅めっき又はニッケルめっきを施した後、研磨し、次いでサンドブラスト加工を施し、さらにエッチング工程又は銅めっき工程を経た後クロムめっきを施す方法(特開 2007-237541号公報);基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施した後、研磨し、研磨された面に感光性樹脂膜を形成し、その感光性樹脂膜上にパターンを露光し、次いで現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行い、感光性樹脂膜を剥離し、さらにエッチング処理して凹凸面を鈍らせた後、形成された凹凸面にクロムめっきを施す方法(特開 2010-76385 号公報や、特開 2012-68474 号公報の実施例1);旋盤等の工作機械を用いて、切削工具により鋳型となる基材を切削する方法(国際公開第 2007/077892号パンフレット)などが挙げられる。
【0079】
ランダムパターン又は擬似ランダムパターンからなるエンボス型の表面凹凸形状は、例えば、FMスクリーン法、DLDS(Dynamic Low-Discrepancy Sequence)法、ブロック共重合体のミクロ相分離パターンを利用する方法、バンドパスフィルター法などによって作成されたランダムパターンを感光性樹脂膜上に露光し、現像して、現像された感光性樹脂膜をマスクとしてエッチング処理を行う方法により、形成することができる。
【0080】
[タッチパネル]
以上のようにして得られる光学フィルム30,40は、タッチパネルにおけるニュートンリング防止フィルムとして適用される。このタッチパネルは、先に説明した
図1又は
図2のように構成される。例えば、
図1に示すように、光学フィルム30,40の凹凸面を構成する塗工層32,42上に、さらに透明導電膜15,25を形成することで、抵抗膜方式のタッチパネルの透明電極板として使用できる。透明導電膜15,25は、抵抗膜方式のタッチパネルにおいて周知のITO(酸化インジウムスズ)などで構成することができる。また
図2に示すように、静電容量方式のタッチパネルにおける表示素子側基板10とタッチ入力素子20のいずれかに対し、それぞれ対向する面に光学フィルム30,40を適用することもできる。
【0081】
いずれの場合においても、光学フィルム30,40を配置することで、タッチパネルのタッチ入力素子20を手指などで押圧してタッチ入力したときに、表示素子側基板10とタッチ入力素子20との間に存在する間隙50の長さ(距離)の変化に伴って発生しやすいニュートンリングを効果的に防止し、表示品位の低下を防ぐことができる。抵抗膜方式及び静電容量方式のいずれにおいても、
図1(c)及び
図2(c)に示すように、その間隙の両面に本発明で規定する光学フィルム30,40を備えることで、より効果的にニュートンリングの発生を防止できる。
【0082】
[タッチ入力式画像表示装置]
本発明のタッチ入力式画像表示装置は、以上説明したタッチパネルが、画像表示素子の視認側に配置されたものである。画像表示素子は、液晶セルや有機EL表示素子で構成することができる。
図5は、本発明に係るタッチ入力式画像表示装置の一例を示す断面模式図であって、この例では、
図2の(a)に示される静電容量方式のタッチパネルが、液晶セル71に適用されている。
図5においては、
図2の(a)に示されるタッチパネル全体に対し、符号70が付されている。またこの例では、表示素子側基板10が液晶表示装置における前面側(視認側)偏光板73を兼ねている。
【0083】
上述のとおりこの例では、画像表示素子として液晶セル71を採用し、その視認側に、前面側偏光板73を有するタッチパネル70が配置されている。液晶セル71は、2枚の透明基板間に液晶層を挟持し、電圧印加によって当該液晶層の配向状態を制御し、表示を可能とするもので、液晶表示の分野において周知のものを採用することができる。このように液晶セルを画像表示素子とする場合は、その背面側に背面側偏光板74が配置され、さらにその背面側に表示用の光を供給するためのバックライト76が配置される。
【0084】
図1の(a)、(b)又は(c)、また
図2の(b)又は(c)に示されるタッチパネルを、
図5におけるタッチパネル70の代わりに配置しても、同様にタッチ入力式画像表示装置とすることができる。
【0085】
一方、画像表示素子として有機EL表示素子を採用する場合、有機EL表示素子は自発光型なので、
図5における液晶セル71、背面側偏光板74及びバックライト76の代わりに、この有機EL表示素子を配置すればよい。この場合は先に述べたとおり、表示素子側基板10は、偏光板で構成することもできるし、偏光板以外の透明基板で構成することもできる。有機EL表示素子は、有機発光材料を含む発光体を1対の電極で挟持したものであり、やはりこの分野で周知のものを採用することができる。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。
【0087】
[実施例1]
(A)光学フィルムの作製
(A1)光学フィルム用金型の作製
特開 2012-68474 号公報の実施例1(B)に記載される方法に準ずるが、凹凸形成のためのエッチング量を変えることで、光学フィルムに凹凸形状を付与するための金型を作製した。すなわち、まず直径200mmのアルミニウムロール(JISによる A5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるもので、めっき層全体の厚みが約200μm のものを用いた。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面にポジ型感光性樹脂を塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。次いで、所定のパターン(同公報の
図16に示されるパターン)が繰り返されるよう、感光性樹脂膜上にレーザ光を露光し、その後現像した。レーザ光の露光及び現像は、(株)シンク・ラボラトリー製の“Laser Stream FX” を用いて行った。
【0088】
現像後、塩化第二銅水溶液で第1のエッチング処理を行った。次に第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再び塩化第二銅水溶液で第2のエッチング処理を行った。このとき、その後の処理により得られる光学フィルムの断面曲線のスキューネスPsk及び算術平均傾斜角Δaを所定の値に調整するため、第1のエッチング処理量(エッチングにより削られる厚さ)が4μm 、第2のエッチング処理量(同じくエッチングにより削られる厚さ)が12μm となるように設定した。その後、クロムめっき加工を行った。クロムめっきの厚さは4μm となるように設定した。こうして、表面に微細な凹凸を有する金型ロールを作製した。
【0089】
(A2)紫外線硬化性樹脂組成物の調製
紫外線硬化性樹脂組成物の原料として、以下のものを用意した。
・紫外線硬化性樹脂:ペンタエリスリトールトリアクリレート60部、及び多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)40部の混合物。
・光重合開始剤:BASF社から販売されている“ルシリン TPO”(化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)。
【0090】
上記の紫外線硬化性樹脂100部に対し、上記の光重合開始剤5部及び希釈溶媒として酢酸エチル150部を混合して、塗工層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0091】
(A3)光学フィルムの作製
上で調製した紫外線硬化性樹脂組成物を、トリアセチルセルロースフィルムからなる透明支持体上に乾燥後の膜厚が5μm となるようダイコーターで塗工し、透明支持体と紫外線硬化性樹脂組成物の塗布層とからなる積層体を得た。この積層体を乾燥炉で乾燥させた後、上の(A1)で作製した金型ロールに、塗布層側が金型と接するようにニップロールで押し当てて密着させた。この状態で透明支持体側から、最大照度が700mW/cm
2 、積算光量が300mJ/cm
2 となるように紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させた。その後、金型ロールから積層体を剥離することで、表面に凹凸を有する塗工層が形成された光学フィルムを作製した。
【0092】
(B)光学フィルムの表面形状の測定
SENSOFAR 社製の三次元顕微鏡“PLμ 2300”を用い、対物レンズの倍率を50倍とし、共焦点モードにて、上で得られた光学フィルムの表面形状(断面曲線のスキューネスPskの絶対値、算術平均傾斜角Δa及び算術平均粗さRa)を求めた。測定面積は255μm ×185μm とした。また、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、光学フィルムの凹凸面とは反対側の面をガラス基板に貼合して(凹凸面が表面となる)、測定を行った。その結果、断面曲線のスキューネスPskの絶対値は 0.187、算術平均傾斜角Δaは0.52°、算術平均粗さRaは65nmであった。
【0093】
(C)光学フィルムの光学特性(ヘーズ)の測定
光学的に透明な粘着剤を用いて、先に得られた光学フィルムの凹凸面とは反対側の面をガラス基板に貼合し、 JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘーズメーター“HM-150”型を用いて、ガラス基板側から光を入射し、光学フィルムの全ヘーズを求めた。また、上と同様にガラス基板に貼合したフィルムの凹凸面に、透明粘着剤層が形成されたトリアセチルセルロースフィルムの透明粘着剤層側を貼合し、凹凸面による透過光の散乱(外部ヘーズ)をなくした状態のフィルムについて、上と同じヘーズメーターで内部散乱によるヘーズ(内部ヘーズ)を測定し、全ヘーズから内部ヘーズの値を差し引くことにより、光学フィルムの外部ヘーズを求めた。その結果、全ヘーズは0.7%、外部ヘーズは0.5%であった。
【0094】
(D)偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100 の水溶液に30℃で浸漬して染色した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に 56.5℃で浸漬して架橋処理を行った。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムを得た。延伸は、ヨウ素染色及びホウ酸架橋処理の工程で主に行い、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0095】
(E)偏光フィルム用接着剤の調製
別途、水100部に対して、(株)クラレから販売されているカルボキシル基変性ポリビニルアルコール“クラレポバール KL318”(変性度2モル%)を 1.8部溶解し、さらにそこに、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂である住化ケムテックス(株)から販売されている“スミレーズレジン 650」(固形分30%の水溶液)を 1.5部加えて溶解し、ポリビニルアルコール系接着剤を調製した。
【0096】
(F)偏光板(光学フィルムが設けられた表示素子側基板)の作製
上の(A3)で作製した光学フィルムの凹凸を有する塗工層が形成された面とは反対側のトリアセチルセルロースフィルム面にケン化処理を施した後、上の(E)で調製したポリビニルアルコール系接着剤を10μm バーコータで塗工し、その上に、上の(D)で作製したポリビニルアルコール−ヨウ素偏光フィルムを貼合した。また、ポリビニルアルコール−ヨウ素偏光フィルムの他面に貼合する透明保護フィルムとして、厚さ40μm のトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)から販売されている“KC4UE”、厚さ40μm、Ro=0.7nm、Rth=−0.1nm) を用意した。この保護フィルムにケン化処理を施した後、そのケン化処理面に上の(C)で調製したポリビニルアルコール系接着剤を10μm バーコータで塗工し、その塗工面を、上の偏光フィルムの光学フィルムが貼合された面とは反対側の面に貼合した。その後80℃で5分間乾燥し、さらに常温で1日間養生した。こうして、(凹凸面)光学フィルム/ポリビニルアルコール−ヨウ素偏光フィルム/トリアセチルセルロースフィルムの層構成からなる偏光板を作製した。
【0097】
(G)ニュートンリングの評価
(G1)単層構成
上の(F)で作製した偏光板の光学フィルム凹凸面側に、静電容量方式のタッチパネルを備えたガラス基板を、そのガラス基板と偏光板との間の間隙が0.3mm となるように調節して配置した。タッチパネルを手指で押して、ニュートンリングが発生するかどうかを観察した。このタッチパネルは、
図2の(a)に示される構成となる。
(G2)二層構成
静電容量方式のタッチパネルを備えたガラス基板の片面に、上の(A3)で作製した光学フィルムを、その凹凸面が外側となるようにアクリル系透明粘着剤を用いて貼合した。次に、上の(F)で作製した偏光板の凹凸面と、上記ガラス基板の光学フィルム貼合面とが向かい合わせになるように、かつそのガラス基板と偏光板との間の間隙が0.3mm となるように調節して配置した。タッチパネルを指で押して、ニュートンリングが発生するかどうかを観察した。このタッチパネルは、
図2の(c)に示される構成となる。
【0098】
(G3)評価基準
それぞれの結果は、以下の3段階で評価した。
○: ニュートンリングが観察されない。
△: ニュートンリングがわずかに観察されるが、視認に問題ないレベルである。
×: ニュートンリングが顕著に観察される。
【0099】
[比較例1]
この例では、日本製紙ケミカル(株)から販売されている防眩フィルム“NC-1”を光学フィルムとした。このフィルムの表面形状を実施例1と同じ方法で測定したところ、断面曲線のスキューネスPskの絶対値は0.759、算術平均傾斜角Δaは0.57°、算術平均粗さRaは61nmであった。また、このフィルムのヘーズを実施例1と同じ方法で測定したところ、全ヘーズは0.8%、外部ヘーズは0.5%であった。このフィルムを用いる以外は実施例1と同様にして、偏光板を作製した。ニュートンリングの評価は、実施例1と同様にして単層構成及び二層構成それぞれで行った。
【0100】
実施例1及び比較例1で行ったニュートンリングの評価結果を、用いた光学フィルムの物性値とともに表1に示した。
【0101】
【表1】