特許第6382568号(P6382568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382568
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/10 20060101AFI20180820BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180820BHJP
   B24C 1/06 20060101ALI20180820BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20180820BHJP
【FI】
   B23K26/10
   H01L21/78 B
   B24C1/06
   B23K26/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-97704(P2014-97704)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-213941(P2015-213941A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−295896(JP,A)
【文献】 特開2010−127920(JP,A)
【文献】 特開2009−229266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/10
B23K 26/00
B24C 1/06
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、保持テーブルとレーザー光線照射手段とを相対的に移動する移動手段と、該保持テーブルに保持された被加工物に検査光を照射して被加工物で反射した反射光の光量を検出する検出手段と、該検出手段からの検出信号に基づいて被加工物の有無を判定する制御手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、被加工物を加工する加工用レーザー光線を発振する加工用レーザー光線発振手段と、被加工物の有無を判定するための検査光となる検査用レーザー光線を発振する検査用レーザー光線発振手段とを備え、
該検査用レーザー光線発振手段から発振された検査用レーザー光線は、該加工用レーザー光線を集光する集光レンズによって集光されるものであり、
該保持テーブルは、被加工物を吸引保持する保持部と、該保持部を囲繞する環状の枠体とを具備し、枠体の上面は光を乱反射する乱反射処理が施されている、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該乱反射処理は、ブラスト処理である、請求項1記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハ等の分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。
【0004】
また、半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成された分割予定ラインに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。
【0005】
上述したレーザー加工を施すレーザー加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、保持テーブルとレーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に加工送りする加工送り手段と、を具備している。このようなレーザー加工装置においては、保持テーブルに保持された被加工物をオーバーランしてレーザー光線が照射されると、保持テーブルの上面を損傷させるという問題がある。
【0006】
このような問題を解消するために、保持テーブルに保持された被加工物に検出光を照射し、戻り光の強弱によって被加工物の有無を検出する検出手段を装備し、該検出手段によって保持テーブルに保持された被加工物を検出しなくなったことを検出したとき、レーザー光線の照射を停止するようにしたレーザー加工装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−127920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、保持テーブルに保持された被加工物で反射した戻り光の強度と、被加工物から外れて保持テーブルの枠体で反射した戻り光の強度に差が生じない場合は、被加工物と保持テーブルの枠体との区別がつかず、レーザー光線照射手段からレーザー光線が保持テーブルの枠体に照射されオペレータに危険が及ぶとともに保持テーブルを損傷させたり、適正にレーザー光線を照射することができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、保持テーブルに保持された被加工物で反射した反射光の光量と、被加工物から外れて保持テーブルの枠体で反射した反射光の光量の差を確実に検出することができる保持テーブルを装備したレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、保持テーブルとレーザー光線照射手段とを相対的に移動する移動手段と、該保持テーブルに保持された被加工物に検査光を照射して被加工物で反射した反射光の光量を検出する検出手段と、該検出手段からの検出信号に基づいて被加工物の有無を判定する制御手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、被加工物を加工する加工用レーザー光線を発振する加工用レーザー光線発振手段と、被加工物の有無を判定するための検査光となる検査用レーザー光線を発振する検査用レーザー光線発振手段とを備え、
該検査用レーザー光線発振手段から発振された検査用レーザー光線は、該加工用レーザー光線を集光する集光レンズによって集光されるものであり、

該保持テーブルは、被加工物を吸引保持する保持部と、該保持部を囲繞する環状の枠体とを具備し、枠体の上面は光を乱反射する乱反射処理が施されている、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0011】
上記乱反射処理は、ブラスト処理であることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、レーザー光線照射手段は、被加工物を加工する加工用レーザー光線を発振する加工用レーザー光線発振手段と、被加工物の有無を判定するための検査光となる検査用レーザー光線を発振する検査用レーザー光線発振手段とを備え、検査用レーザー光線発振手段から発振された検査用レーザー光線は、加工用レーザー光線を集光する集光レンズによって集光されるものであり、被加工物を保持する保持テーブルは、被加工物を吸引保持する保持部と、保持部を囲繞する環状の枠体とを具備し、枠体の上面は光を乱反射する乱反射処理が施されているので、照射された検査光は乱反射して検出手段が受光する反射光の受光量は減少するため、保持テーブルに保持された被加工物から検出光が外れたことを直ちに検出することができる。この結果、レーザー光線照射手段から照射されたレーザー光線が保持テーブルを構成する枠体の上面に照射されることはなく、オペレータに危険が及ぶとともに保持テーブルを損傷させるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備される被加工物を吸引保持する保持テーブルの斜視図。
図3図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段および保持テーブルに保持された被加工物に検出光を照射して被加工物で反射した反射光の強度を検出する検出手段のブロック構成図。
図4図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段を示すブロック図。
図5】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図6図5に示す半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着する保護部材貼着工程を示す説明図。
図7図1に示すレーザー加工装置によって実施する改質層形成工程の説明図。
図8図5に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着するウエーハ保持工程を示す説明図。
図9図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工溝形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設され被加工物を保持する保持テーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向と直角な矢印Yで示す割り出し方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す焦点位置調整方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0015】
上記保持テーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としての保持テーブル36を具備している。この保持テーブル36について、図2を参照して説明する。図2に示す保持テーブル36は、ポーラスセラミックス等の多孔性材料から形成された円形の保持部361と、該保持部361を囲繞して配設された環状の枠体362を具備している。枠体362はステンレス鋼等の金属材によって形成され、上面362aは光を乱反射する乱反射処理が施されている。なお、乱反射処理としては、サンドブラストやショットブラストなどのブラスト処理であることが望ましい。このように構成された保持テーブル36には、環状のフレームを固定するためのクランプ363が配設されている。また、保持テーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す方向に移動可能に構成される。図示の実施形態における保持テーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す方向に移動させるためのX軸方向移動手段37を具備している。X軸方向移動手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられる。
【0017】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す方向に移動可能に構成される。図示の実施形態における保持テーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す方向に移動させるための第1のY軸方向移動手段38を具備している。第1のY軸方向移動手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0018】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す方向に移動させるための第2のY軸方向移動手段43を具備している。第2のY軸方向移動手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられた加工用パルスレーザー光線発振手段6を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す方向に移動可能に支持される。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向に移動させるためのZ軸方向移動手段53を具備している。Z軸方向移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転または逆転駆動することにより、ユニットホルダ51および加工用パルスレーザー光線発振手段6を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においては、パルスモータ532を正転駆動することにより加工用パルスレーザー光線発振手段6を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することにより加工用パルスレーザー光線発振手段6を下方に移動するようになっている。
【0021】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。このケーシング521内には図3に示すように加工用パルスレーザー光線発振手段6が配設されており、ケーシング521の先端には加工用パルスレーザー光線発振手段6が発振する加工用パルスレーザー光線を上記保持テーブル36に保持される被加工物Wに照射せしめる集光器7が配設されている。加工用パルスレーザー光線発振手段6は、波長が1342nmまたは355nmの加工用パルスレーザー光線LB1を発振する。
【0022】
上記集光器7は、上記加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1を図3において下方に向けて方向変換する方向変換ミラー71と、該方向変換ミラー71によって方向変換された加工用パルスレーザー光線LB1を集光する集光レンズ72とを具備しており、集光レンズ72は方向変換ミラー71によって方向変換された加工用パルスレーザー光線LB1を集光して保持テーブル36に保持された被加工物Wに照射する。
【0023】
なお、図示の実施形態におけるレーザー光線照射手段52は、加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線の光軸を偏向する光軸変更手段60を備えている。この光軸変更手段60は、図示の実施形態においては加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線の光路に配設された音響光学素子61と、該音響光学素子61に印加するRF(radio frequency)を生成するRF発振器62と、該RF発振器62によって生成されたRFのパワーを増幅して音響光学素子61に印加するRFアンプ63と、RF発振器62によって生成されるRFの周波数を調整する偏向角度調整手段64を具備している。上記音響光学素子61は、印加されるRFの周波数に対応してレーザー光線の光軸を偏向する角度を調整する。なお、上記偏向角度調整手段64は、後述する制御手段によって制御される。
【0024】
また、図示の実施形態における光軸変更手段60は、上記音響光学素子61に所定周波数のRFが印加された場合に、図3において破線で示すように音響光学素子61によって偏向されたレーザー光線を吸収するためのレーザー光線吸収手段65を具備している。
【0025】
図示の実施形態における光軸変更手段60は以上のように構成されており、以下その作用について図3を参照して説明する。
光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば0Vの電圧が印加され、音響光学素子61に0Vに対応する周波数のRFが印加された場合には、加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1は、その光軸が集光器7の方向変換ミラー71に向けられる。一方、偏向角度調整手段64に例えば10Vの電圧が印加され、音響光学素子61に10Vに対応する周波数のRFが印加された場合には、加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1は、図3において破線で示すようにレーザー光線吸収手段65に導かれる。
【0026】
図3を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、保持テーブル36に保持された被加工物Wの有無を検出するための検出手段8を具備している。検出手段8は、検査光としての検査用レーザー光線を発振する検査用レーザー光線発振手段81と、上記加工用パルスレーザー光線発振手段6の光軸変更手段60と集光器7との間の経路に配設され検査用レーザー光線発振手段81から発振された検査用レーザー光線を集光器7に向けて分光せしめるダイクロックミラー82と、検査用レーザー光線発振手段81とダイクロックミラー82との間に配設され検査用レーザー光線発振手段81から発振された検査用レーザー光線をダイクロックミラー82に向ける第1の経路83aに導くビームスプリッター83を具備している。
【0027】
検査用レーザー光線発振手段81は、被加工物に対して反射性を有するSLD(Super Luminescent Diode,λ:830nm)やLD、LEDの検査用レーザー光線LB2を発振する発振器を用いることができる。なお、検査用レーザー光線発振手段81から発振される検査用レーザー光線LB2の出力は、図示の実施形態においては10mWに設定されている。ダイクロックミラー82は、加工用パルスレーザー光線LB1は通過するが検査用レーザー光線発振手段81から発振された検査用レーザー光線LB2を集光器7に向けて反射せしめる。上記ビームスプリッター83は、検査用レーザー光線発振手段81から発振された検査用レーザー光線LB2を上記ダイクロックミラー82に向けた第1の経路83aに導くとともに、ダイクロックミラー82によって分岐された後述する反射光を第2の経路83bに導く。
【0028】
図示の実施形態における検出手段8は、第2の経路83bに配設されビームスプリッター83によって反射された反射光を受光する受光素子84を具備している。この受光素子84は受光した光量に対応した電圧信号を後述する制御手段に送る。
【0029】
図3に示す実施形態における検出手段8は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
検査用レーザー光線発振手段81から発振された検査用レーザー光線LB2は、ビームスプリッター83を通過してダイクロイックミラー82に達し、該ダイクロイックミラー82によって集光器7の方向変換ミラー71に向けて反射される。方向変換ミラー71に向けて反射された検査用レーザー光線LB2は、上記加工用パルスレーザー光線LB1と同様に集光レンズ72によって集光される。このようにして集光される検査用レーザー光線LB2は、保持テーブル36に保持された被加工物の上面で反射し、その反射光が図3において破線で示すように集光レンズ72、方向変換ミラー71、ダイクロイックミラー82、ビームスプリッター83を介して受光素子84に受光される。そして、受光素子84は、受光した光量に対応した電圧信号を後述する制御手段に送る。
【0030】
ここで、受光素子84によって受光される検査用レーザー光線LB2の反射光の受光量について説明する。
保持テーブル36に保持された被加工物Wの上面に照射された検査用レーザー光線LB2は、上述したように被加工物Wの上面で正反射し、その反射光が図3において破線で示すように集光レンズ72、方向変換ミラー71、ダイクロイックミラー82、ビームスプリッター83を介して受光素子84に受光される。従って、受光素子84に受光される反射光の受光量は多い。一方、保持テーブル36に保持された被加工物の上面に照射される検査用レーザー光線LB2が被加工物Wから外れると、保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに照射される。このとき保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aは光を乱反射する乱反射処理が施されているので、照射された検査用レーザー光線LB2は乱反射して反射光の一部が集光レンズ72、方向変換ミラー71、ダイクロイックミラー82、ビームスプリッター83を介して受光素子84に受光される。従って、受光素子84に受光される反射光の受光量は、上述したように被加工物Wの上面で正反射した反射光の受光量より少なくなる。
【0031】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段9が配設されている。この撮像手段9は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0032】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図4に示す制御手段10を具備している。制御手段10はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105とを備えている。制御手段10の入力インターフェース104には、上記受光素子84および撮像手段9等からの検出信号が入力される。そして、制御手段10の出力インターフェース105からは、上記X軸方向移動手段37のパルスモータ372、第1のY軸方向移動手段38のパルスモータ382、第2のY軸方向移動手段43のパルスモータ432、Z軸方向移動手段53のパルスモータ532、加工用パルスレーザー光線発振手段6、光軸変更手段60の偏向角度調整手段64、検査用レーザー光線発振手段81等に制御信号を出力する。
【0033】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図5にはレーザー加工される被加工物として半導体ウエーハ20の斜視図が示されている。図5に示す半導体ウエーハ20は、厚みが例えば200μmのシリコンウエーハからなっており、表面20aに複数の分割予定ライン21が格子状に形成されているとともに、該複数の分割予定ライン21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。以下、この半導体ウエーハ20の内部に分割予定ライン21に沿って改質層を形成する加工方法について説明する。
【0034】
先ず、半導体ウエーハ20の表面20aに形成されたデバイス22を保護するために、半導体ウエーハ20の表面20aに保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施する。即ち、図6に示すように半導体ウエーハ20の表面20aに保護部材としての保護テープ110を貼着する。なお、保護テープ110は、図示の実施形態においては厚さが100μmのポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート状基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さ5μm程度塗布されている。
【0035】
上記保護部材貼着工程を実施したならば、図1に示すレーザー加工装置の保持テーブル36の保持部361上に半導体ウエーハ20の保護テープ110側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによって保持テーブル36上に半導体ウエーハ20を保護テープ110を介して吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、保持テーブル36上に保持された半導体ウエーハ20は、裏面20bが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ20を吸引保持した保持テーブル36は、X軸方向移動手段37を作動することによって撮像手段9の直下に位置付けられる。
【0036】
保持テーブル36が撮像手段9の直下に位置付けられると、撮像手段9および制御手段10によって半導体ウエーハ20のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段9および制御手段10は、半導体ウエーハ20の所定方向に形成されている分割予定ライン21と、分割予定ライン21に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ20に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びる分割予定ライン21に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ20の分割予定ライン21が形成されている表面20aは下側に位置しているが、撮像手段9が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面20bから透かして分割予定ライン21を撮像することができる。
【0037】
以上のようにして保持テーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に形成されている分割予定ライン21を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図7の(a)で示すように保持テーブル36をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン21の一端(図7の(a)において左端)をレーザー光線照射手段52の集光器7の直下に位置付ける。集光器7から照射される加工用パルスレーザー光線LB1の集光点Pを半導体ウエーハ20の厚み方向中間部に位置付ける。なお、加工用パルスレーザー光線LB1の波長は、半導体ウエーハ20に対して透過性を有する波長である1342nmに設定されている。そして、制御手段10は検出手段8の検査用レーザー光線発振手段81を作動して検査用レーザー光線LB2を集光器7から照射し、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)より大きい(V>V1)場合は、制御手段10は集光器7の直下に半導体ウエーハ20が存在していると判断し、加工用パルスレーザー光線発振手段6を作動するとともに、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば0Vの電圧を印加する。この結果、上述したように加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1は、その光軸が集光器7に向けられて集光器7から照射される。このように検出手段8の検査用レーザー光線発振手段81を作動して検査用レーザー光線LB2を集光器7から保持テーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に照射するとともに、加工用パルスレーザー光線発振手段6を作動して加工用パルスレーザー光線LB1を集光器7から保持テーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に照射しつつ、制御手段10は、X軸方向移動手段37を作動して保持テーブル36を矢印X1で示す方向に所定の移動速度で移動せしめる(第1の改質層形成工程)。
【0038】
このように保持テーブル36を矢印X1で示す方向に移動する際に、制御手段10は検出手段8の受光素子84から出力する受光量に対応する電圧信号を入力している。そして、制御手段10は、入力した受光素子84からの電圧信号(V)が所定値(V1)以下(V≦V1)の場合は、図7の(b)で示すように保持テーブル36に保持された半導体ウエーハ20の右端が集光器7の直下から外れ、検査用レーザー光線LB2が保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに照射されたと判断し、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば10Vの電圧を印加するとともに保持テーブル36の移動を停止する。即ち、検査用レーザー光線LB2が保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに照射されると、保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aは光を乱反射する乱反射処理が施されているので、照射された検査用レーザー光線LB2は乱反射して上述したように受光素子84に受光される反射光の受光量が減少するため、保持テーブル36に保持された半導体ウエーハ20の右端が集光器7の直下から外れたことを直ちに検出することができる。この結果、上述したように加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1は、図3において破線で示すようにレーザー光線吸収手段65に導かれる。従って、保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに加工用パルスレーザー光線LB1が照射されることはなく、オペレータに危険が及ぶとともに保持テーブル36を損傷させるという問題が解消する。
このようにして第1の改質層形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ20の内部には図7の(b)で示すように分割予定ライン21に沿って変質層201が形成される。
【0039】
上述したように所定の分割予定ライン21に沿って上記第1の改質層形成工程を実施したら、第1のY軸方向移動手段38を作動して保持テーブル36を矢印Yで示す方向に半導体ウエーハ20に形成された分割予定ライン21の間隔だけ割り出し移動し、図7の(c)で示す状態とする(割り出し工程)。次に、検出手段8の検査用レーザー光線発振手段81を作動して検査用レーザー光線LB2を集光器7から保持テーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に照射し、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)以下(V≦V1)の場合は、制御手段10は集光器7の直下に半導体ウエーハ20が存在しないと判断し、X軸方向移動手段37を作動して保持テーブル36を上記図7の(c)において矢印X2で示す方向に移動せしめる。そして、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)より大きくなった(V>V1)場合には、制御手段10は集光器7の直下に半導体ウエーハ20が存在していると判断し、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば0Vの電圧を印加して加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1を上述したように集光器7から照射せしめるとともに、X軸方向移動手段37を作動して保持テーブル36を上記図7の(c)において矢印X2で示す方向に所定の移動速度で移動せしめる(第2の改質層形成工程)。そして、制御手段10は、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)以下(V≦V1)の場合は、図7の(d)で示すように保持テーブル36に保持された半導体ウエーハ20の左端が集光器7の直下から外れ、検査用レーザー光線LB2が保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに照射されたと判断し、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば10Vの電圧を印加するとともに保持テーブル36の移動を停止する。このようにして第2の改質層形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ20の内部には図7の(d)で示すように分割予定ライン21に沿って変質層201が形成される。
【0040】
以上のようにして、半導体ウエーハ20に所定方向に形成された全ての分割予定ライン21に沿って上記第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程を実施したならば、保持テーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に形成された分割予定ライン21に対して直交する方向に延びる分割予定ライン21に沿って上記第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ20に形成された全ての分割予定ライン21に沿って上記第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程を実行したならば、半導体ウエーハ20を保持している保持テーブル36は、最初に半導体ウエーハ20を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ20の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ20は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0041】
次に、上記図6に示す半導体ウエーハ20に分割予定ライン21に沿ってレーザー加工溝を形成する加工方法について説明する。
半導体ウエーハ20に分割予定ライン21に沿ってレーザー加工溝を形成するには、図8に示すように環状のフレーム120に装着されたダイシングテープ130の表面に半導体ウエーハ20の裏面20bを貼着する(ウエーハ支持工程)。
【0042】
上記ウエーハ支持工程を実施したならば、図1に示すレーザー加工装置の保持テーブル36の保持部361上に半導体ウエーハ20のダイシングテープ130側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによって保持テーブル36上に半導体ウエーハ20を保護テープ110を介して吸着保持する(ウエーハ保持工程)。そしてダイシングテープ130が装着されている環状のフレーム120を保持テーブル36に配設されたクランプ363によって固定する。従って、保持テーブル36上に保持された半導体ウエーハ20は、表面20aが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ20を吸引保持した保持テーブル36は、X軸方向移動手段37を作動することによって撮像手段9の直下に位置付けられる。
【0043】
保持テーブル36が撮像手段9の直下に位置付けられると、撮像手段9および制御手段10によって半導体ウエーハ20のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を上述したように実行する。
次に、図9の(a)で示すように保持テーブル36をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン21の一端(図9の(a)において左端)をレーザー光線照射手段52の集光器7の直下に位置付ける。次に、集光器7から照射される加工用パルスレーザー光線LB1の集光点Pを半導体ウエーハ20の表面付近に位置付ける。なお、加工用パルスレーザー光線LB1の波長は、半導体ウエーハ20に対して吸収性を有する波長である355nmに設定されている。そして、制御手段10は検出手段8の検査用レーザー光線発振手段81を作動して検査用レーザー光線LB2を集光器7から照射し、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)より大きい(V>V1)場合は、制御手段10は集光器7の直下に半導体ウエーハ20が存在していると判断し、加工用パルスレーザー光線発振手段6を作動するとともに、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば0Vの電圧を印加する。この結果、上述したように加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1は、その光軸が集光器7に向けられて集光器7から照射される。このように検出手段8の検査用レーザー光線発振手段81を作動して検査用レーザー光線LB2を集光器7から保持テーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に照射するとともに、加工用パルスレーザー光線発振手段6を作動して加工用パルスレーザー光線LB1を集光器7から保持テーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に照射しつつ、制御手段10は、X軸方向移動手段37を作動して保持テーブル36を矢印X1で示す方向に所定の移動速度で移動せしめる(第1のレーザー加工溝形成工程)。
【0044】
このように保持テーブル36を矢印X1で示す方向に移動する際に、制御手段10は検出手段8の受光素子84から出力する受光量に対応する電圧信号を入力している。そして、制御手段10は、入力した受光素子84からの電圧信号(V)が所定値(V1)以下(V≦V1)の場合は、図9の(b)で示すように保持テーブル36に保持された半導体ウエーハ20の右端が集光器7の直下から外れ、ダイシングテープ130を通して検査用レーザー光線LB2が保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに照射されたと判断し、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば10Vの電圧を印加するとともに保持テーブル36の移動を停止する。即ち、検査用レーザー光線LB2が保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに照射されると、保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aは光を乱反射する乱反射処理が施されているので、照射された検査用レーザー光線LB2は乱反射して上述したように受光素子84に受光される反射光が減少するため、保持テーブル36に保持された半導体ウエーハ20の右端が集光器7の直下から外れたことを直ちに検出することができる。この結果、上述した第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程と同様に加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1は、図3において破線で示すようにレーザー光線吸収手段65に導かれる。従って、保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに加工用パルスレーザー光線LB1が照射されることはなく、オペレータに危険が及ぶとともに保持テーブル36を損傷させるという問題が解消する。
このようにして第1のレーザー加工溝形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ20には図9の(b)で示すように分割予定ライン21に沿ってレーザー加工溝202が形成される。
【0045】
上述したように所定の分割予定ライン21に沿って上記第1のレーザー加工溝形成工程を実施したら、第1のY軸方向移動手段38を作動して保持テーブル36を矢印Yで示す方向に半導体ウエーハ20に形成された分割予定ライン21の間隔だけ割り出し移動し、図9の(c)で示す状態とする(割り出し工程)。次に、検出手段8の検査用レーザー光線発振手段81を作動して検査用レーザー光線LB2を集光器7から保持テーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に照射し、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)以下(V≦V1)の場合は、制御手段10は集光器7の直下に半導体ウエーハ20が存在しないと判断し、X軸方向移動手段37を作動して保持テーブル36を上記図9の(c)において矢印X2で示す方向に移動せしめる。そして、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)より大きくなった(V>V1)場合には、制御手段10は集光器7の直下に半導体ウエーハ20が存在していると判断し、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば0Vの電圧を印加して加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1を上述したように集光器7から照射せしめるとともに、X軸方向移動手段37を作動して保持テーブル36を上記図9の(c)において矢印X2で示す方向に所定の移動速度で移動せしめる(第2のレーザー加工溝形成工程)。そして、制御手段10は、受光素子84から入力した電圧信号(V)が所定値(V1)以下(V≦V1)の場合は、図9の(d)で示すように保持テーブル36に保持された半導体ウエーハ20の左端が集光器7の直下から外れ、検査用レーザー光線LB2が保持テーブル36を構成する枠体362の上面362aに照射されたと判断し、光軸変更手段60を構成する偏向角度調整手段64に例えば10Vの電圧を印加するとともに保持テーブル36の移動を停止する。このようにして第2の改質層形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ20の内部には図9の(d)で示すように分割予定ライン21に沿って変質層201が形成される。
【0046】
以上のようにして、半導体ウエーハ20に所定方向に形成された全ての分割予定ライン21に沿って上記第1のレーザー加工溝形成工程および第2のレーザー加工溝形成工程を実施したならば、保持テーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に形成された分割予定ライン21に対して直交する方向に延びる分割予定ライン21に沿って上記第1のレーザー加工溝形成工程および第2のレーザー加工溝形成工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ20に形成された全ての分割予定ライン21に沿って上記第1のレーザー加工溝形成工程および第2のレーザー加工溝形成工程を実行したならば、半導体ウエーハ20を保持している保持テーブル36は、最初に半導体ウエーハ20を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ20の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ20は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【符号の説明】
【0047】
2:静止基台
3:保持テーブル機構
36:保持テーブル
37:X軸方向移動手段
38:第1のY軸方向移動手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2のY軸方向移動手段
5:レーザー光線照射ユニット
53:Z軸方向移動手段
6:加工用パルスレーザー光線発振手段
60:光軸変更手段
7:集光器
71:方向変換ミラー
72:集光レンズ
8:検出手段
81:検査用レーザー光線発振手段
82:ダイクロックミラー
83:ビームスプリッター
84:受光素子
9:撮像手段
10:制御手段
20:半導体ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9