(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂、付加反応触媒である白金系硬化剤、及び、還元剤としてカーボンを使用した還元窒化法により得られた窒化硼素粉末を含有する。
【0017】
(各原料)
本発明において、シリコーン樹脂は、公知のものが特に制限無く使用される。具体的には、主剤であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと架橋剤であるオルガノハイドロジェンシロキサンよりなる組成が一般的である。
【0018】
上記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したアルケニル基を一分子あたり二個以上有するオルガノポリシロキサンである。該アルケニル含有オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサン単位を繰り返すのが一般的であるが、一部枝分かれした構造や環状の構造を含んだものでもよい。
【0019】
上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等が一般的であるが、中でもビニル基が好ましく、該アルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子のみに結合して存在することが好ましい。
【0020】
上記アルケニル基以外で珪素原子に結合する官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、キシリル基、ビフェニリル基等のアリル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基といった一価の炭化水素基が挙げられる。また、該一価炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基であってもよい。尚、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の官能基は全てが同一でなくともよい。
【0021】
本発明において、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、オルガノポリシロキサンの架橋剤として作用する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に2〜100個のSi−H基を有するものが好ましい。
【0022】
本発明において、白金系硬化剤としては、上述のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンのアルケニル基と、オルガノハイドロジェンシロキサンのSi−H基の付加反応(ヒドロシリル化反応)に用いられる触媒として公知の物、例えば、白金黒等の白金金属単体、塩化白金、塩化白金酸、塩化白金酸塩等が使用できる。
【0023】
本発明において、シリコーン樹脂組成物に充填剤として使用する前記窒化硼素粉末は、後述するように、還元窒化法によって得られたものであり、表面に存在するリン成分の窒化硼素粉末に対する濃度が、リン元素換算で4ppmw以下、好ましくは3ppmw以下であることが、後述するシリコーン樹脂組成物において、白金触媒に対するリン成分の比率を特定の範囲に調整するために好ましい。即ち、表面に存在するリン成分の濃度が、上記範囲より高い、従来の還元窒化法によって得られた窒化硼素粉末を使用すると、シリコーン樹脂組成物において、リン成分が増加し、白金系触媒によるシリコーン樹脂の硬化を阻害するという問題が発生し易くなる。
【0024】
尚、カーボンを還元剤として使用して還元窒化法により得られる窒化硼素粉末は、該カーボンに由来するリン成分が予想外に多く存在し、それがシリコーン樹脂の硬化に影響を与えることが、本発明者らによって確認されたが、同時に、上記リン成分の除去は、通常、工業的に行われている酸洗工程では十分ではなく、同様の還元窒化法により得られる窒化硼素粉末の表面には、10ppmwを超えるリン成分が存在していることも確認した。
【0025】
従って、前記カーボンを還元剤として使用して還元窒化法により得られる窒化硼素粉末において、表面に存在するリン成分の窒化硼素粉末に対する濃度が、リン元素換算で4ppmw以下であるものは、従来存在せず、また、シリコーン樹脂組成物用の充填剤として有用である。
【0026】
本発明において、上記窒化硼素粉末の形状は特に限定されず、一般的な鱗片状でもよいし、長軸/厚み比が小さい肉厚状のものでもよい。また、窒化硼素粉末の凝集、非凝集の状態も特に限定されず、必要に応じて造粒することで凝集体としてもよく、解砕して非凝集としてもよい。
【0027】
上記窒化硼素粉末の平均粒子径は特に制限されず、一次粒子径としては0.01〜50μm、凝集粒子としては0.05〜300μmが一般的である。
【0028】
本発明の前記粒子表面のリン成分が、前記したように、著しく少ない窒化硼素粉末の製造方法は、特に制限されるものではないが、含酸素硼素化合物を、還元剤としてカーボンを使用し、窒素と反応させて還元窒化することにより得られた窒化硼素塊を粉砕後、残存する副生成物を酸洗浄により除去する工程を含み、その際、得られる窒化硼素粉末の粒子表面に存在するリン成分が、リン元素換算で4ppmw以下となるように上記酸洗浄を行うことにより得ることができる。
【0029】
前記窒化硼素粉末の製造方法において、含酸素硼素化合物としては、硼素原子を含有する化合物であれば制限なく使用される。例えば、硼酸、無水硼酸、メタ硼酸、過硼酸、次硼酸、四硼酸ナトリウム、過硼酸ナトリウムなどが使用できるが、一般的には入手が容易な硼酸が好適に使用できる。
【0030】
使用する含酸素硼素化合物の平均粒子径は特に限定されないが、操作性及び還元反応制御の観点から、1〜1000μmが好ましく、10〜900μmがより好ましく、20〜800μmが更に好ましい。即ち、含酸素硼素化合物の平均粒子径が1μmより大きくなると取扱いが容易となり、1000μmより小さくなると含酸素硼素化合物の還元反応の制御が容易となる。
【0031】
また、前記窒化硼素粉末の製造方法において、還元剤としては公知のカーボンが特に制限無く使用される。例えば、カーボンブラック、活性炭等の反応性の高い非晶質カーボンが好ましく、更に、工業的に品質制御されている点で、カーボンブラックが特に好適に使用される。また、上記カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用することができる。上記カーボンの平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.02〜4μmがより好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。即ち、該炭素源の平均粒子径を5μm以下とすることにより、カーボンの反応性が高くなり、また、0.01μm以上とすることにより、取り扱いが容易となる。
【0032】
上記還元剤として使用するカーボンは、リン含有量が、リン元素換算で50ppmw以下、好ましくは20ppmw以下、更に好ましくは10ppmw以下であるものを使用することが好ましい。即ち、還元窒化法により窒化硼素粉末を作製するにあたり、該窒化硼素粉末に含有されるリン成分はカーボンに含まれているリン成分に由来するものが主であり、該リン含有量が50ppmwより多いカーボンを使用すると、得られる窒化硼素粉末表面に大量にリン成分が付着し、後の酸洗浄工程におけるカーボンの除去工程に多大の負荷が掛かり、工業的な実施が困難となる。
【0033】
また、前記窒化硼素粉末の製造方法において、含酸素硼素化合物とカーボンとの割合は、B/C(元素比)換算で0.4〜1.1、好ましくは0.5〜1.0、更に好ましくは0.6〜0.9である。含酸素硼素化合物とカーボンとの割合が1.1を超えると、還元されずに揮散する含酸素硼素化合物の割合が増加し、収率が低下するばかりでなく、揮散成分により、製造ラインに悪影響を及ぼす場合がある。また、含酸素硼素化合物とカーボンとの割合が0.4未満では、未反応のカーボンの存在割合が増加し、炭化硼素等の物質が副生し、やはり収率が低下する。
【0034】
更に、前記窒化硼素粉末の製造方法においては、結晶化剤を使用することが好ましく、一般的に原料にあらかじめ混合して使用される。上記結晶化剤は、通常使用されているカルシウム化合物をはじめ、公知のものが特に制限なく使用できる。例えば炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、シュウ酸カルシウム等のカルシウム化合物の他、炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、炭酸ナトリウム等のナトリウム化合物を使用することが出来るし、これら2種類以上を混合して使用することも可能である。その中でも、得られる窒化硼素粉末の結晶性が高いこと、及び多孔質バルク体の形成が容易なことから、酸化カルシウム、炭酸カルシウムを使用するのが好ましく、発泡性を有することから炭酸カルシウムが特に好ましい。上記結晶化剤の平均粒子径は、0.01〜500μmが好ましく、0.05〜400μmがより好ましく、0.1〜300μmが特に好ましい。0.01μm以上であれば取れ扱いが容易であり、300μm以下であれば反応性は十分に高い。上記結晶化剤の添加量としては、硼素化合物の硼素元素に対して結晶化剤の金属元素の元素比が、0.01〜0.3、より好ましくは0.02〜0.2、更に好ましくは0.03〜0.1である。該元素比が0.01未満では結晶性の高い窒化硼素粉末が得られず、0.3を超える場合、得られる窒化硼素粉末の不純物濃度が高くなるため、好ましくない。
【0035】
前記窒化硼素の製造方法において、還元窒化に際し、上記の各原料を含む混合物の形態は特に制限されず、粉末状のままでもよいが、多孔質バルク体を形成してもよい。尚、かかる多孔質バルク体は、例えば、前記硼素化合物、カーボン、炭酸カルシウムを含む混合粉末を容器に入れ、100〜300℃の範囲で1〜10時間程度加熱し、硼酸からメタ硼酸の生成、メタ硼酸の溶融によりバルク体を形成すると共に、メタ硼酸が溶融している状態で、炭酸カルシウムの分解により二酸化炭素ガスを生成せしめて発泡させる方法が挙げられる。
【0036】
また、上記多孔質バルク体の形状は、混合粉末の加熱に使用する容器等の形状に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、四角柱状、円柱状、球状、多角形状、不定形状、針状及び板状等の形状が挙げられるが、ハンドリング性の観点から、四角柱状、円柱状、球状等の形状であることが好ましい。また、その大きさは、径(球状以外は相当径)5〜300mm程度が一般的である。
【0037】
本発明において、含酸素硼素化合物、カーボン、含酸素カルシウム化合物の混合方法は特に制限されず、振動ミル、ビーズミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ドラムミキサー、振動攪拌機、V字混合機等の一般的な混合機が使用可能である。
【0038】
前記窒化硼素粉末の製造方法において、還元窒化は、前記原料混合物を、窒素ガスを含む雰囲気下で加熱することにより実施することができる。この場合、窒化温度、処理時間は、一般に窒化硼素粉末が得られる条件とすることができ、例えば、1500〜2000℃の温度範囲で1秒〜10時間程度保持すればよい。該窒化温度が1500℃以上であれば結晶性の高い窒化硼素粉末が得られ、2000℃以下であれば熱量を高効率で窒化反応に利用できる。
【0039】
また、窒化処理時に使用するガスとしては、上記窒化処理条件で硼素に窒素を与えることが可能なガスであればよく、窒素ガスの代わりにアンモニアガスを使用することも可能であり、窒素ガス、アンモニアガスに、水素、アルゴン、ヘリウム等の非酸化性ガスを混合したガスも使用可能である。
【0040】
上記反応は、反応雰囲気制御の可能な公知の装置を使用して行うことができる。例えば、高周波誘導加熱やヒーター加熱により加熱処理を行う雰囲気制御型高温炉が挙げられ、バッチ炉の他、プッシャー式トンネル炉、縦型反応炉等の連続炉も使用可能である。
【0041】
前記窒化硼素粉末の製造方法において、最も重要な工程は、還元窒化することにより得られた窒化硼素塊を粉砕後、残存する副生成物を酸洗浄により除去する工程である。即ち、かかる工程において、得られる窒化硼素粉末の粒子表面に存在するリン成分が、リン元素換算で4ppmw以下となるようにする。上記酸洗浄を行うことが重要である。上述の還元窒化を行った直後に得られる物質(副生成物含有窒化硼素)は、窒化硼素が主成分であるが、硼酸カルシウム等の化合物も含まれているため、酸を用いて洗浄(酸洗浄)する。酸洗浄は、具体的には、上記の副生成物含有窒化硼素を、塩酸水溶液等の酸水溶液に浸して洗浄し、次いで、必要に応じてさらに水で洗浄することにより酸を洗い流すことにより行うことができるが、前記リン成分濃度を工業的に実施するためには、超音波を照射しながら酸洗浄する方法、酸洗浄をオートクレーブ中の高温・高圧下で行うことや、これらの手段の組合せが推奨される。
【0042】
前記超音波を使用する方法は、副生成物含有窒化硼素を酸水溶液に浸漬し、例えば、50〜400Wが好ましく、特に100〜300Wで、1時間以上、好ましくは2時間以上、処理することが好ましい。
【0043】
また、前記高温・高圧下での酸洗浄は、副生成物含有窒化硼素を酸水溶液に浸漬し、例えば、オートクレーブ中で、温度100〜180℃、好ましくは、110〜150℃、圧力0.1〜0.8MPa、好ましくは、0.2〜0.5MPaで、10分以上、好ましくは、30分以上処理する条件が好ましく採用される。
【0044】
(シリコーン樹脂組成物)
本発明のシリコーン樹脂組成物において、シリコーン樹脂を構成するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンシロキサン、白金系硬化剤の混合比は特に制限されず、一般的なシリコーン樹脂組成物と同様にすることができる。かかる混合比は、主剤や架橋剤の分子量や密度、白金系硬化剤の種類によって異なるが、一般的には、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンのアルケニル基のモル数に対してオルガノハイドロジェンシロキサンのSi−H基が0.5〜5倍量となる量のオルガノハイドロジェンシロキサン、白金元素換算で0.0001〜0.01質量部となる量の白金系硬化剤となる比率で混合される。また、前記窒化硼素粉末の混合比も、特に制限されないが、充填による効果を十分発揮するためには、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して、50〜2000質量部の比率で混合することが好ましい。
【0045】
本発明において、重要な要件は、前記シリコーン樹脂組成物において、窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分のリン元素換算量が白金系硬化剤の白金元素換算量に対して、質量比で5.0以下、好ましくは、4.0以下となるように調整することにある。即ち、上記(P/Pt)質量比が5.0を超えると、白金系硬化剤の活性がリン成分の存在により低下し、シリコーン樹脂組成物が硬化しない問題が発生する。
【0046】
上記(P/Pt)質量比を上記範囲に調整する方法は、使用する窒化硼素粉末のリン含量と充填量とを勘案して行うことが好ましい。即ち、窒化硼素粉末の使用量を増大するに連れて、使用する窒化硼素粉末としてリン成分のより低いものを使用する必要がある。特に、シリコーン樹脂組成物中において、特に、40vol.%以上、更には、60vol.%以上の比率で窒化硼素粉末を使用する場合、かかる窒化硼素粉末のリン成分の濃度が、リン元素換算で4ppmw以下、更には、3ppmw以下に低減された窒化硼素粉末を使用することが好ましい。尚、上記窒化硼素粉末の比率についての上限は、シリコーン樹脂組成物が構成可能な範囲内であればよく、実用的には90vol.%程度である。
【0047】
(シリコーン樹脂組成物の製造方法)
本発明のシリコーン樹脂組成物の製造方法は、前記窒化硼素粉末のリン成分の濃度が特定の範囲に調整されている限り、公知のシリコーン樹脂組成物の製造方法と同様に、ぞれぞれの原料を混合することによって行うことができる。
【0048】
具体的には、上述のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンシロキサン、白金系硬化剤、及び、窒化硼素粉末を上記の混合比で混合することにより製造可能である。混合方法としては、乳鉢等により混合してもよいし、ゲートミキサー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー等の一般的な装置により混合してもよい。また、混合時に、系に添加する順序も、公知の添加順序が特に制限無く採用される。
【0049】
本発明のシリコーン樹脂組成物において、窒化硼素粉末は、単独で使用してもよいが、他の充填剤、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等、シリコーン樹脂組成物への充填剤として一般的に使用されているものも併用することが出来る。
【0050】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、主剤と架橋剤とにより構成されるシリコーン樹脂、付加反応触媒、充填剤以外にも、分散剤、難燃助剤、耐熱助剤等を含有してもよく、ガラス繊維クロスを骨格として含有させてもよい。
【0051】
(シリコーン樹脂組成物の硬化方法)
本発明において、シリコーン樹脂組成物を硬化させる方法は、公知のシリコーン樹脂組成物の硬化方法と同様の条件を採用することができる。例えば、上記シリコーン樹脂組成物を室温で硬化させてもよいし、加熱することで硬化を促進してもよい。
【実施例】
【0052】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例になんら限定されるものではない。
【0053】
尚、実施例において、窒化硼素粉末の粒子表面に存在するリン成分濃度は以下の方法により決定した。
【0054】
試料の窒化硼素粉末10gを100ccのポリテトラフルオロエチレン製容器に採取し、これに硝酸と硫酸の混酸水溶液(硝酸35質量%、硫酸45質量%)50ccを投入し、加圧分解容器中で、圧力0.2MPa、温度120℃で30分間処理した後、混酸水溶液を分離し、水洗を行い、分離された混酸溶液と水洗に使用した水とを混合し、これをICP分析装置にかけてリン成分量を測定し、得られた測定値と前記窒化硼素粉末の重量より、リン成分濃度を求めた。
【0055】
尚、上記処理後の窒化硼素粒子の表面には、リン成分が存在しない事を、レーザアブレーションICP質量分析により確認した。
【0056】
実施例1
平均粒子径600μmの硼酸100g、平均粒子径0.1μm、リン含有量(リン元素換算)が8ppmwのカーボンブラック24g、及び結晶化剤として平均粒子径5μmの炭酸カルシウム16gをボールミルにて混合した後、底面90mm×40mm、高さ40mmのステンレス容器に投入し、大気雰囲気において、300℃で8時間加熱することで窒化硼素製造用原料バルク体を得た。
【0057】
該原料バルク体を、黒鉛製タンマン炉を用い、窒素ガス雰囲気下で1850℃、2時間窒化処理し、副生成物含有窒化硼素を得た。
【0058】
該副生成物含有窒化硼素を解砕してガラス製容器に投入し、該副生成物含有窒化硼素の5倍量の塩酸(7重量%HCl)を加え、出力200Wの超音波洗浄機で2時間処理した。続いて、該副生成物含有窒化硼素の等量の水で5回、洗浄、ろ過を行うことで水洗浄を実施した。ろ過後、乾燥することで窒化硼素粉末を得た。
【0059】
該窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分濃度は、リン元素換算で3.4ppmwであった。
【0060】
実施例2
リン含有量(リン元素換算)が18ppmwのカーボンブラックを使用し、超音波洗浄機による処理時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にした。
【0061】
得られた窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分濃度は、リン元素換算で3.7ppmwであった。
【0062】
実施例3
リン含有量(リン元素換算)が40ppmwのカーボンブラックを使用し、超音波洗浄機による処理時間を6時間とした以外は、実施例1と同様にした。
【0063】
得られた窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分濃度は、リン元素換算で3.8ppmwであった。
【0064】
実施例4
副生成物含有窒化硼素を解砕してポリテトラフルオロエチレン製容器に投入し、該副生成物含有窒化硼素の5倍量の塩酸(7重量%HCl)を加えて蓋をし、オートクレーブにセットして、120℃、0.2MPaで1時間処理することで酸洗浄を行った以外は、実施例1と同様にした。
【0065】
得られた窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分濃度は、リン元素換算で3.0ppmwであった。
【0066】
比較例1
リン含有量(リン元素換算)が60ppmwのカーボンブラックを使用し、窒化処理後に得られた副生成物含有窒化硼素を解砕してガラス製容器に投入し、該副生成物含有窒化硼素の5倍量の塩酸(7重量%HCl)を加え、回転数800rpmで24時間撹拌して酸洗浄を行った以外は、実施例1と同様にした。
【0067】
得られた窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分濃度は、リン元素換算で7.1ppmwであった。
【0068】
比較例2
リン含有量(リン元素換算)が60ppmwのカーボンブラックを使用し、窒化処理後に得られた副生成物含有窒化硼素を解砕してガラス製容器に投入し、該副生成物含有窒化硼素の3倍量の塩酸(7重量%HCl)を加え、回転数400rpmで10時間撹拌して酸洗浄を行った以外は、実施例1と同様にした。
【0069】
得られた窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分濃度は、リン元素換算で25ppmwであった。
【0070】
比較例3
リン含有量(リン元素換算)が60ppmwのカーボンブラックを使用し、窒化処理後に得られた副生成物含有窒化硼素を解砕してガラス製容器に投入し、該副生成物含有窒化硼素の10倍量の塩酸(7重量%HCl)を加え、回転数800rpmで48時間撹拌して酸洗浄を行った以外は、実施例1と同様にした。
【0071】
得られた窒化硼素粉末の表面に存在するリン成分濃度は、リン元素換算で6.2ppmwであった。
【0072】
実施例5、6
実施例1で作製した窒化硼素粉末を用いて、シリコーン樹脂組成物を作製した。アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、一般式が(1)で示され、平均分子量が24000g/mol、オストワルド粘度計により測定した動粘度が800cStのビニル末端ポリジメチルシロキサン(A成分)を使用した。オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、一般式が(2)で示され、平均分子量が1200g/mol、オストワルド粘度計により測定した動粘度が10cStの水素末端ポリジメチルシロキサン(B成分)を使用した。白金系硬化剤としては、白金元素換算で白金濃度が200ppmwとなるように塩化白金酸をキシレンに溶解させたもの(C成分)を使用した。上記A〜C成分を石英乳鉢で混合した後、実施例1で作製した窒化硼素粉末を該A〜C成分の混合物に加え、さらに混合し、シリコーン樹脂組成物とした。各A〜C成分、窒化硼素粉末の重量、窒化硼素粉末の占める体積割合、リン成分量、白金成分量は表2に示す通りである。該シリコーン樹脂組成物を直径30mm、厚さ8mmの円盤状金型に移し、加熱が可能な熱プレス機を用いて、150℃、30分間成形し、シリコーン樹脂組成物を硬化させ、シリコーン樹脂組成物硬化体を得た。該シリコーン樹脂組成物硬化体の硬度について、テクロック社製デュロメータ GS‐719Nを用いて測定(JIS K 6253準拠)した。該シリコーン樹脂組成物硬化体硬度は表2に示す通りである。
【0073】
【化1】
【0074】
【化2】
【0075】
実施例7
実施例4で作製した窒化硼素粉末を使用した以外は、実施例5と同様にした。シリコーン樹脂組成物における窒化硼素粉末の占める体積割合、リン成分量、白金成分量、及びシリコーン樹脂組成物硬化体の硬度は表2に示す通りである。
【0076】
実施例8
実施例3で作製した窒化硼素粉末を使用した以外は、実施例5と同様にした。シリコーン樹脂組成物における窒化硼素粉末の占める体積割合、リン成分量、白金成分量、及びシリコーン樹脂組成物硬化体の硬度は表2に示す通りである。
【0077】
比較例4
比較例1で作製した窒化硼素粉末を使用した以外は、実施例5と同様にした。シリコーン樹脂組成物における窒化硼素粉末の占める体積割合、リン成分量、白金成分量は表2に示す通りである。該シリコーン樹脂組成物は加熱成形後も硬化せず、硬度の測定は不可能であった。
【0078】
比較例5
比較例3で作製した窒化硼素粉末を使用した以外は、実施例5と同様にした。シリコーン樹脂組成物における窒化硼素粉末の占める体積割合、リン成分量、白金成分量は表2に示す通りである。該シリコーン樹脂組成物は加熱成形後も硬化せず、硬度の測定は不可能であった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】