(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383208
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、接合材および接合材の形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20180820BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20180820BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20180820BHJP
B23K 20/24 20060101ALI20180820BHJP
C22C 5/02 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
H01L21/52 C
B23K35/30 310A
B23K20/00 310L
B23K20/00 310M
B23K20/24
!C22C5/02
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-156961(P2014-156961)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33992(P2016-33992A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年5月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第20回「エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術」シンポジウム 平成26年2月4日、5日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト高耐熱部品統合パワーモジュール化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 善則
(72)【発明者】
【氏名】安在 岳士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸二
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 秀和
(72)【発明者】
【氏名】樋山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史樹
【審査官】
鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−138096(JP,A)
【文献】
特開2013−157423(JP,A)
【文献】
特開2007−190562(JP,A)
【文献】
特開2014−104480(JP,A)
【文献】
特開2014−097521(JP,A)
【文献】
特開昭59−188996(JP,A)
【文献】
特開2008−311371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
B23K 20/00
B23K 20/24
B23K 35/30
C22C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属材と、接合層を介して前記第1金属材に接合された第2金属材とを備えた半導体装置の製造方法であって、
第1金属からなる多孔質層を、前記第1金属材の表面に形成する第1工程と、
前記第1金属と全率固溶系合金をなす第2金属と、前記第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなす第3金属と、からなる、前記第1共晶点よりも低い第2共晶点をもつ第2共晶系合金の金属薄板を、前記多孔質層の表面に載せる第2工程と、
前記金属薄板の上に、前記第2金属材を載せる第3工程と、
前記第2共晶点よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第1温度の熱処理により前記金属薄板を溶融させ、前記金属薄板の溶融物を前記多孔質層に浸透させる第4工程と、
前記第1温度よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第2温度の熱処理により前記多孔質層を溶融させ、前記金属薄板の溶融物に前記第1金属を拡散させることにより、前記第1金属材と前記第2金属材との間に、固相線温度が前記第2温度となる前記接合層を形成する第5工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記接合層の中に前記第5工程の前の状態で前記多孔質層の一部が残存するように、前記多孔質層を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程は、
前記第1金属材の表面に前記第1金属の粒子を含むペーストを塗布してペースト層を形成する塗布工程と、
前記ペースト層を焼結させて前記多孔質層に変化させる焼結工程と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程は、
前記塗布工程の後、前記焼結工程の前に、前記第1金属材を振動させて、前記ペースト層の表面を平坦化させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1工程では、前記多孔質層として、前記第1金属の金属繊維を絡みあわせてなるシート状の金属繊維層を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1金属は、銀または銅であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2金属は、金であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3金属は、ゲルマニウムまたはシリコンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
第1金属からなる多孔質層を作業板の表面に形成する第1工程と、
前記第1金属と全率固溶系合金をなす第2金属と、前記第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなす第3金属と、からなる、前記第1共晶点よりも低い第2共晶点をもつ第2共晶系合金の金属薄板を、前記多孔質層の表面に載せる第2工程と、
前記第2共晶点よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第1温度の熱処理により前記金属薄板を溶融させ、前記金属薄板の溶融物を前記多孔質層に浸透させることにより、前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属からなる板状接合材を形成する第3工程と、
前記板状接合材を前記作業板の表面から剥がす第4工程と、
を含むことを特徴とする接合材の形成方法。
【請求項10】
前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属との反応を抑制可能な材料からなる前記作業板を用いることを特徴とする請求項9に記載の接合材の形成方法。
【請求項11】
前記第1工程では、前記第1温度よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第2温度の熱処理後に前記板状接合材の中に前記第2温度の熱処理前の状態で前記多孔質層の一部が残存するように、前記多孔質層を形成することを特徴とする請求項9または10に記載の接合材の形成方法。
【請求項12】
前記第1工程は、
前記作業板の表面に前記第1金属の粒子を含むペーストを塗布してペースト層を形成する塗布工程と、
前記ペースト層を焼結させて前記多孔質層に変化させる焼結工程と、を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の接合材の形成方法。
【請求項13】
前記第1工程では、前記多孔質層として、前記第1金属の金属繊維を絡みあわせてなるシート状の金属繊維層を形成することを特徴とする請求項9または10に記載の接合材の形成方法。
【請求項14】
前記第4工程の後、前記板状接合材の表面に、前記第1金属、前記第2金属または前記第3金属の薄膜を形成する第5工程をさらに含むことを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の接合材の形成方法。
【請求項15】
前記第1金属は、銀または銅であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の接合材の形成方法。
【請求項16】
前記第2金属は、金であることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一つに記載の接合材の形成方法。
【請求項17】
前記第3金属は、ゲルマニウムまたはシリコンであることを特徴とする請求項9〜16のいずれか一つに記載の接合材の形成方法。
【請求項18】
第1金属の粒子を、前記第1金属と全率固溶系合金をなす第2金属と、前記第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなす第3金属と、からなる、前記第1共晶点よりも低い第2共晶点をもつ第2共晶系合金の溶融物に混ぜて固化し、所定の形状に成形した、前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属の混合物であることを特徴とする接合材。
【請求項19】
前記第2共晶系合金の溶融物は、前記第2共晶点よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い温度の熱処理によって溶融され液相をなすことを特徴とする請求項18に記載の接合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法、接合材および接合材の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁基板に設けられた回路パターン上に半導体チップを接合したパッケージ構造の半導体装置が公知である。回路パターンを構成する金属材を半導体チップの裏面電極に接合させる方法として、はんだ合金などの接合材による接合方法がある。具体的には、まず、平面部を有する2つの金属材の平面部間に、例えば板状またはペースト状のはんだ合金からなる接合材を挟む。そして、はんだ合金の固相線温度以上の温度の熱処理によって接合材の周囲または全体を加熱して接合材を溶融した後に室温まで冷却することで、接合材を介して2つの金属材同士が接合される。
【0003】
金属材の接合箇所が複数箇所あることで2回以上の接合工程を行う必要がある場合、例えば、1回目の接合工程において最も固相線温度の高い接合材を用い、2回目以降の接合工程では、1つ前の接合工程よりも固相線温度の低い接合材を用いる。このように各接合工程で用いる接合材を選択することにより、1つ前の接合工程によって形成された接合層を溶融させることなく、2回以上の接合工程を行うことができる。
【0004】
金属材同士の接合に用いる接合材として、Au−Ge(金−ゲルマニウム)共晶合金に、Pd(パラジウム)およびPt(白金)の一種もしくは二種を50ppm〜300ppm添加した低融点Au−Ge系ろう材が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3150743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、はんだ合金などの接合材の固相線温度は材料として用いる金属ごとに決まっており、実装される半導体チップやパッケージ構造に応じて所望の固相線温度をもつ接合材を選択することは難しい。所望の固相線温度をもつ接合材とは、例えば、上述したように2回以上の接合工程を行う際に、各接合工程に最適な熱処理温度を固相線温度とする接合材である。また、所望の固相線温度をもつ接合材とは、例えば、半導体チップに形成される半導体素子の定格温度(ジャンクション(接合)温度)に応じて信頼性確保の観点から必要となる耐熱温度を固相線温度とする接合材である。従来技術には、このような所望の固相線温度をもつ接合材については開示されていない。このため、例えば2回以上の接合工程を行う際にすでに形成されている接合層が溶融し、金属材の位置ずれや端子脱落などが生じ、信頼性が低下する虞がある。また、例えば炭化珪素(SiC)半導体からなる高温環境下で使用可能な高耐熱半導体素子を作製するための高温熱処理に耐え得る接合技術の開発が求められている。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、所望の固相線温度をもつ接合材を用いて金属材同士を接合することができる半導体装置の製造方法、接合材および接合材の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、第1金属材と、接合層を介して前記第1金属材に接合された第2金属材とを備えた半導体装置の製造方法であって、次の特徴を有する。まず、第1金属からなる多孔質層を、前記第1金属材の表面に形成する第1工程を行う。次に、前記第1金属と全率固溶系合金をなす第2金属と、前記第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなす第3金属と、からなる、前記第1共晶点よりも低い第2共晶点をもつ第2共晶系合金の金属薄板を、前記多孔質層の表面に載せる第2工程を行う。次に、前記金属薄板の上に、前記第2金属材を載せる第3工程を行う。次に、前記第2共晶点よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第1温度の熱処理により前記金属薄板を溶融させ、前記金属薄板の溶融物を前記多孔質層に浸透させる第4工程を行う。次に、前記第1温度よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第2温度の熱処理により前記多孔質層を溶融させ、前記金属薄板の溶融物に前記第1金属を拡散させることにより、前記第1金属材と前記第2金属材との間に、固相線温度が前記第2温度となる前記接合層を形成する第5工程を行う。
【0009】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記接合層の中に前記第5工程の前の状態で前記多孔質層の一部が残存するように、前記多孔質層を形成することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、まず、前記第1金属材の表面に前記第1金属の粒子を含むペーストを塗布してペースト層を形成する塗布工程を行う。次に、前記ペースト層を焼結させて前記多孔質層に変化させる焼結工程を行うことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記塗布工程の後、前記焼結工程の前に、前記第1金属材を振動させて、前記ペースト層の表面を平坦化させる工程をさらに行うことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記多孔質層として、前記第1金属の金属繊維を絡みあわせてなるシート状の金属繊維層を形成することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1金属は、銀または銅であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2金属は、金であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第3金属は、ゲルマニウムまたはシリコンであることを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる接合材の形成方法は、次の特徴を有する。まず、第1金属からなる多孔質層を作業板の表面に形成する第1工程を行う。次に、前記第1金属と全率固溶系合金をなす第2金属と、前記第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなす第3金属と、からなる、前記第1共晶点よりも低い第2共晶点をもつ第2共晶系合金の金属薄板を、前記多孔質層の表面に載せる第2工程を行う。次に、前記第2共晶点よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第1温度の熱処理により前記金属薄板を溶融させ、前記金属薄板の溶融物を前記多孔質層に浸透させることにより、前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属からなる板状接合材を形成する第3工程を行う。次に、前記板状接合材を前記作業板の表面から剥がす第4工程を行う。
【0017】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属との反応を抑制可能な材料からなる前記作業板を用いることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記第1温度よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い第2温度の熱処理後に前記板状接合材の中に前記第2温度の熱処理前の状態で前記多孔質層の一部が残存するように、前記多孔質層を形成することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第1工程では、まず、前記作業板の表面に前記第1金属の粒子を含むペーストを塗布してペースト層を形成する塗布工程を行う。次に、前記ペースト層を焼結させて前記多孔質層に変化させる焼結工程を行うことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記多孔質層として、前記第1金属の金属繊維を絡みあわせてなるシート状の金属繊維層を形成することを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第4工程の後、前記板状接合材の表面に、前記第1金属、前記第2金属または前記第3金属の薄膜を形成する第5工程をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第1金属が銀または銅であることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第2金属が金であることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる接合材の形成方法は、上述した発明において、前記第3金属がゲルマニウムまたはシリコンであることを特徴とする。
【0025】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる接合材は、第1金属の粒子、第2金属の粒子および第3金属の粒子を含むことを特徴とする。前記第2金属の粒子は、前記第1金属と全率固溶系合金をなす。前記第3金属の粒子は、前記第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなし、かつ前記第2金属と前記第1共晶点よりも低い第2共晶点で共晶反応し第2共晶系合金をなす。
【0026】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる接合材は、第1金属の粒子を、第2金属および第3金属からなる第2共晶系合金の溶融物に混ぜて固化し、所定の形状に成形した、前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属の混合物であることを特徴とする。前記第2金属は、前記第1金属と全率固溶系合金をなす。前記第3金属は、前記第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなす。前記第2共晶系合金は、前記第1共晶点よりも低い第2共晶点をもつ。
【0027】
また、この発明にかかる接合材は、上述した発明において、前記第2共晶系合金の溶融物は、前記第2共晶点よりも高く、かつ前記第1共晶点よりも低い温度の熱処理によって溶融され液相をなすことを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる接合材は、上述した発明において、前記第1金属が銀または銅であることを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる接合材は、上述した発明において、前記第2金属が金であることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる接合材は、上述した発明において、前記第3金属がゲルマニウムまたはシリコンであることを特徴とする。
【0031】
上述した発明によれば、接合材として固相線温度および共晶点の異なる第1〜3金属を用い、第1,2温度での2段階の熱処理によって金属材同士を接合する接合層を形成することにより、接合層の固相線温度(第2温度)を任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる半導体装置の製造方法、接合材および接合材の形成方法によれば、実装される半導体チップやパッケージ構造に応じた所望の固相線温度をもつ接合材を用いて金属材同士を接合することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法によって組み立てられたパッケージ構造の半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図4】Au−Ge−Agの3元合金の平衡状態の組成を示す状態図である。
【
図5】実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法によって組み立てられたパッケージ構造の半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
【
図6】実施の形態4にかかる半導体装置の製造方法に用いる板状接合材の形成途中の状態を示す断面図である。
【
図7】実施の形態5にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図8】実施の形態5にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法、接合材および接合材の形成方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0035】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法によって組み立てられたパッケージ構造の半導体装置の構造の一例について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法によって組み立てられたパッケージ構造の半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
図1には、絶縁基板1に例えば1つの電力用の半導体チップ2を実装したパッケージ構造の完成形を示す。
図1に示すように、絶縁基板1は、絶縁層11のおもて面側に回路パターンを構成する例えば銅(Cu)箔からなるおもて面側金属層(第1金属材)12が設けられ、裏面側に裏面側金属層13が設けられている。絶縁層11は、例えばセラミックなどの絶縁体からなる。
【0036】
半導体チップ2は、おもて面におもて面金属電極(不図示)を有し、裏面に裏面金属電極(第2金属材)3を有する。半導体チップ2の裏面金属電極3は、接合層21を介して絶縁基板1のおもて面側金属層12と接合している。裏面金属電極3およびおもて面側金属層12の表面(接合面)には、それぞれ必要に応じて、表面状態を接合層21との接合を実現するための好適な条件に改質可能な図示しない金属めっきが形成されていてもよい。裏面金属電極3およびおもて面側金属層12の表面に形成する金属めっきとして、例えばニッケル(Ni)めっきおよびフラッシュ金(Au)めっき(厚さの薄い金めっき)を順に積層してなる積層めっき膜を形成してもよい。
【0037】
接合層21は、第1〜3金属の3元合金からなるはんだ層である。第2金属は、第1金属と全率固溶系合金をなす。第3金属は、第1金属と第1共晶点で共晶反応し第1共晶系合金をなし、かつ第2金属と第2共晶点で共晶反応し第2共晶系合金をなす。第2共晶点は第1共晶点よりも低い。具体的には、第1金属は、例えば銀(Ag)または銅(Cu)であってもよい。第2金属は、例えば金(Au)であってもよい。第3金属は、例えばゲルマニウム(Ge)またはシリコン(Si)であってもよい。
【0038】
接合層21の形成には、第1金属の粒子、第2金属の粒子および第3金属の粒子を含む接合材を用いる。具体的には、接合層21の形成には、後述するように、例えば、第1金属の粒子を含むペーストと、第2,3金属からなる第2共晶系合金の金属薄板と、を用いる。第1〜3金属をそれぞれ例えばAg、AuおよびGeとした場合、第1共晶系合金はAg−Geの共晶合金であり、第2共晶系合金はAu−Geの共晶合金である。第1共晶点は例えば652℃程度である。第2共晶点は例えば356℃程度である。接合層21は、第1金属の粒子と第2共晶系合金とを接合して形成されたAu−Ge−Agの3元合金からなるはんだ層である。
【0039】
図1には、絶縁基板1に1つの半導体チップ2を実装した構造を図示しているが、実装構造は設計条件に合わせて種々変更可能である。例えば、絶縁基板1に、2つ以上の半導体チップを実装してもよいし、さらに図示省略する抵抗器、コンデンサおよび金属塊などを含む電気装置を実装してもよい。半導体チップには、例えばトランジスタやダイオードなど一般的な素子構造が形成される。これら絶縁基板1に実装される各部の表面(平面部)は、上述した半導体チップ2と同様に、接合層21を介して絶縁基板1のおもて面側金属層12に接合される。
【0040】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法として、半導体チップ2の実装方法を
図2〜4を参照して説明する。
図2,3は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図2に示すように、スクリーン印刷により、絶縁基板1のおもて面側金属層12の表面に第1金属の粒子を含むペーストを塗布してペースト層22aを形成する。ペースト層22aは、第1金属の粒子と、フラックス(松やに)などの有機物とを主成分とする。ペースト層22aの形成後、ペースト層22a全体に振動を与えることにより、スクリーン印刷時に絶縁基板1からスクリーン版(孔版)が離れることによって発生するペースト層22aの表面の凹凸(厚み分布)を平坦化させてもよい。
【0041】
ペースト層22aの表面を平坦化させる工程により、ペースト層22aの最終的な固相状態である接合層21の水平方向の第1金属の濃度分布を均一化させることができる。水平方向とは、絶縁基板1のおもて面に平行な方向である。さらに、ペースト層22aの表面を平坦化させる工程により、ペースト層22aの端部にフィレット(不図示)を形成することができる。フィレットとは、ペースト層22aのぬれ性に基づいて、ペースト層22aの、おもて面側金属層12と半導体チップ2との間から外側にはみ出した部分からなり、半導体チップ2の側面の一部を覆う部分である。
【0042】
ペースト層22aに振動を与える条件によって、ペースト層22aの端部のフィレット形状が決まる。フィレットは、ペースト層22aの最終的な固相状態である接合層21の端部にも形成される。接合層21の端部のフィレットの形状は、ペースト層22aの端部のフィレットの形状とほぼ同程度となる。接合層21の端部にフィレットが形成されることにより、半導体チップ2(または半導体チップ2および絶縁基板1)と接合層21との接触面積が増えるため、接合層21の端部の応力集中を緩和することができる。
【0043】
次に、
図3に示すように、熱処理によりペースト層22aに含まれる有機物を揮発(気化)させ、ペースト層22a中の第1金属の粒子を焼結させることにより、ペースト層22aを第1金属からなる多孔質層22bに変化させる。多孔質層22bの形成においては、後述する接合層21を形成するための熱処理後に、多孔質層22bの一部が溶融されずに接合層21中に残存する程度の分量のペーストを用いて、多孔質層22bを形成してもよい。接合層21中に溶融されていない多孔質層22bが残存することで、ペースト層22aの厚みならびに後述の金属薄板23の厚みを変えずに、第2温度の高低のみで、接合層21の固相線温度を制御できるからである。また、接合層21中に溶融されていない多孔質層22bが残存することで、十分に第1金属を供給することができて、固相線温度を熱処理温度まで引き上げることができるからである。
【0044】
次に、多孔質層22bの上に、第2,3金属の第2共晶系合金(例えばAu−Geの共晶合金)からなる金属薄板23を載せる。次に、金属薄板23の上に裏面金属電極3を下側(金属薄板23側)にして半導体チップ2を載せて、半導体チップ2を載せた絶縁基板1全体を例えば真空雰囲気のリフロー炉内で熱処理する。すなわち、多孔質層22bおよび金属薄板23を接合材として用いて接合層21を形成する。具体的には、まず、リフロー炉内の温度を第1温度にて一旦保持して金属薄板23を溶融し、第2共晶系合金の溶融物を多孔質層22b全体に浸透させる。すなわち、第2共晶系合金の溶融物に第1金属が溶け出さないうちに、多孔質層22bの毛細管現象により多孔質層22bの隅々にまで第2共晶系合金の溶融物を浸透させる。
【0045】
次に、リフロー炉内の温度を第2温度に昇温して保持し多孔質層22bを溶融して、第1金属を金属薄板23(第2共晶系合金)の溶融物中に拡散させる。これにより、第2共晶系合金の溶融物のほぼ全体が第1〜3金属の3元合金(例えばAu−Ge−Ag)の固相となり、第1〜3金属の3元合金からなる接合層21が形成される。第2の温度での熱処理時に多孔質層22bの一部が金属薄板23の溶融物に溶け出さずに、溶融されていない第1金属が接合層21中にいくらか残存していても構わない(不図示)。接合層21(3元合金)の固相線温度は、接合層21が形成されたときの熱処理温度である第2温度となる。第2温度は、第2共晶系合金の溶融物中に拡散した第1金属の濃度に比例して上昇する。このため、第2共晶系合金の溶融物中に拡散される第1金属の分量を適宜設定することにより、接合層21の固相線温度を任意に制御することができる。
【0046】
第1温度は、第2共晶点(例えば356℃)よりも高く、かつ第1共晶点(例えば652℃程度)よりも低い。具体的には、金属薄板23がAu−Geの共晶合金からなる場合、第1温度は、例えば、第2共晶点よりも0℃以上10℃以下程度高い360℃程度であってもよい。第2温度は、第1温度よりも高く、かつ第1共晶点よりも低い。また、具体的には、第2温度は、例えば450℃程度であってもよい。その後、リフロー炉内を室温(例えば25℃程度)まで冷却する。このように、ここまでの工程により、
図1に示すように第1〜3金属の3元合金をなす接合層21が形成され、接合層21を介して半導体チップ2の裏面金属電極3と絶縁基板1のおもて面側金属層12とが接合される。その後、一般的な方法により配線や封止(モールド)などを行うことで、パッケージ構造の半導体装置が完成する。
【0047】
次に、第2共晶系合金(Au−Geの共晶合金)に第1金属(Ag)を加えることで接合層21の固相線温度が上昇する原理について、Au−Ge−Agの3元合金からなる接合層21が形成された場合を例に説明する。
図4は、Au−Ge−Agの3元合金の平衡状態の組成を示す状態図である。
図4の各軸は、Au−Ge−Agの3元合金の各成分のモル濃度(mol%)を示し、等高線は固相線温度を示す。第2共晶系合金の第2共晶点(eutectic point)は図中の黒点(●印)で示す箇所である。第2共晶点における第2共晶系合金の組成比は、Au:Ge=73mol%:27mol%である。
【0048】
図4に示すように、第2共晶系合金(すなわちAu:Ge:Ag=73mol%:27mol%:0mol%)の固相線温度は356℃である。この第2共晶系合金に第1金属が溶ける、すなわち図中に示す矢印に沿って第1金属のモル濃度を上昇させて、合金の成分をAu−Ge−Agの3元合金に変化させた場合、第1金属のモル濃度の上昇に伴って固相線温度が上昇することがわかる。したがって、多孔質層22bを形成するための第1金属からなるペーストの分量を適宜調整する(すなわち接合層21中の第1金属の濃度を変える)ことで、第1金属からなる多孔質層22bと第2共晶系合金からなる金属薄板23とを用いて、所望の固相線温度をもつ接合層21を形成可能であることがわかる。また、第1金属からなるペーストの分量を調整する方法の他、第1金属を十分に供給し、熱処理温度を調整することで、所望の固相線温度を持つ接合層21を形成することも可能である。
【0049】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、接合材として固相線温度および共晶点の異なる第1〜3金属を用い、第1,2温度の熱処理を順に行って第1〜3金属の3元合金からなる接合層を形成することにより、接合層中に含まれる第1金属の濃度に基づいて接合層の固相線温度(第2温度)を任意に設定することができる。このため、本発明を適用し、所望の耐熱性を有する半導体装置を作製することができる。具体的には、例えば炭化珪素(SiC)半導体からなる半導体素子など高温環境下に耐え得る高耐熱半導体装置を作製可能である。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図5は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法によって組み立てられたパッケージ構造の半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
図5には、1つの半導体チップ2を実装した絶縁基板1の裏面側金属層13を金属ベース(例えばCuベース)または金属フィン(以下、金属ベース4とする)に接合した半導体モジュールの完成形の要部を示す。実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法は、接合層を介して金属材同士を接合する接合工程を2回以上行うにあたって、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を適用した変形例である。
【0051】
図5に示すように、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法によって組み立てられたパッケージ構造の半導体装置において、半導体チップ2の裏面金属電極3は、実施の形態1と同様に、接合層(実施の形態2において、以下、第1接合層とする)21を介して絶縁基板1のおもて面側金属層12と接合している。絶縁基板1の裏面側金属層13は、第2接合層24を介して金属ベース4のおもて面と接合している。第2接合層24の固相線温度は、第1接合層21の固相線温度よりも低い。
【0052】
具体的には、まず、実施の形態1と同様に、第1温度(例えば360℃程度)および第2温度(450℃程度)の熱処理により第1〜3金属の3元合金からなる第1接合層21を形成する。すなわち、実施の形態1と同様に、第1接合層21を介して半導体チップ2の裏面金属電極3と絶縁基板1のおもて面側金属層12とを接合する。次に、第1温度よりも高く、かつ第2温度よりも低い第3の温度(例えば400℃)の熱処理により第2接合層24を形成し、第2接合層24を介して絶縁基板1の裏面側金属層13と金属ベース4とを接合する。その後、一般的な方法により配線や封止(モールド)などを行うことで、半導体モジュールが完成する。
【0053】
このように、第2接合層24は、1回目の接合工程によって形成される第1接合層21の固相線温度よりも低い温度の熱処理によって形成される。このため、1回目の接合工程によって形成された第1接合層21は、第2接合層24を形成するための2回目の接合工程において溶融されない。3回以上の接合工程を行う場合においても、1つ前の接合工程によって形成された接合層の固相線温度よりも低い温度の熱処理で接合工程を行えばよい。したがって、1つの半導体モジュールを製造(作製)するにあたって、2回以上の接合工程を行う必要がある場合においても本発明を適用可能である。
【0054】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、例えば高耐熱パワーモジュールの組み立てなど接合工程を2回以上行う必要がある場合などに、まず、本発明を適用して1回目の接合工程を比較的高温で行い、次に、同じ接合材を用いて2回目以降の接合工程を1つ前の接合工程よりも低温で行うことが可能となる。これにより、すでに形成されている接合層を再溶融させることなく、2回以上の接合工程を行うことができる。したがって、信頼性が低下することを防止することができる。
【0055】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法について、
図3を参照しながら説明する。実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法が実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法と異なる点は、第1金属の粒子を含むペーストに代えて、第1金属からなる金属繊維を接合材として用いる点である。
【0056】
具体的には、まず、微細な直径(例えば10μm程度)を有する金属繊維を絡み合わせて例えばプレス等により金属繊維の直径よりも厚くなるよう(例えば30μm程度)圧延して予めシート状に成形し、このシート状の金属繊維を、絶縁基板1のおもて面側金属層12の上に載せて金属繊維層を形成する。そして、金属繊維層の上に、第2共晶系合金からなる金属薄板23をのせ、かつ金属薄板23の上に裏面金属電極3を下側にして半導体チップ2を載せる。すなわち、実施の形態1における多孔質層(
図3の符号22bで示す層)の位置に金属繊維層を形成する。金属薄板23の構成は、実施の形態1と同様である。その後、実施の形態1と同様に、半導体チップ2を載せた絶縁基板1全体をリフロー炉内で熱処理する工程以降を順に行うことで、パッケージ構造の半導体装置が完成する。
【0057】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態3によれば、金属材の接合面に、スクリーン印刷および熱処理による多孔質層では対応することができない程度の大きい起伏がある場合に有用である。
【0058】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図6は、実施の形態4にかかる半導体装置の製造方法に用いる板状接合材の形成途中の状態を示す断面図である。実施の形態4にかかる半導体装置の製造方法は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を適用して、作業板5などの上において予め第1〜3金属の3元合金からなる板状接合材を形成する変形例である。板状接合材は、第2,3金属の第2共晶系合金を浸透させた、第1金属からなる多孔質体である。
【0059】
実施の形態4においては、例えば、2つの金属材間に板状接合材を挟み込んだ後、第2温度の熱処理により板状接合材を構成する多孔質層を溶融すればよい。これによって、板状接合材が実施の形態1と同様に第1〜3金属の3元合金からなる接合層となり、この接合層を介して金属材同士が接合される。その後、一般的な方法により配線や封止(モールド)などを行うことで、パッケージ構造の半導体装置が完成する。
【0060】
次に、板状接合材の形成方法について説明する。まず、作業板5の上に、第1金属からなる多孔質層(不図示)を形成し、多孔質層の上に第2共晶系合金の金属薄板を載せる。次に、第1温度で金属薄板を溶融し第2共晶系合金の溶融物を多孔質層全体に浸透させた後、室温まで冷却する。これにより、第1金属からなる多孔質体に、第2,3金属の第2共晶系合金を浸透させた3元合金の前駆体25が形成される。すなわち、作業板5の上において、実施の形態1と同様に、第1金属の粒子を含むペースト層の形成から第1温度の熱処理までの工程を行うことで、板状接合材となる3元合金の前駆体25を形成する。作業板5には、3元合金の前駆体25を容易に剥離可能であり、かつ、3元合金の前駆体25と反応しない材質で構成されたものを用いる。具体的には、作業板5として、例えば板ガラスを用いてもよいし、一般的な表面処理を施した金属板を用いてもよい。その後、前駆体25を作業板5から剥離し、必要に応じて3元合金の前駆体25を圧延し、所望の寸法に加工することで、板状接合材が完成する。
【0061】
また、板状接合材の表面を、第1〜3金属のいずれかの薄膜で被覆することにより、接合対象となる金属材に対するぬれ性を向上させることも可能である。また、2つの板状接合材の平坦部同士を貼り合わせて用いてもよい。また、実施の形態4に実施の形態3を適用し、多孔質層に代えて、微細な金属繊維層を用いて3元合金の前駆体25を形成してもよい。
【0062】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態4によれば、2つの金属材間に板状接合材を挟み込んだ後、第1温度よりも高く、かつ第1共晶点よりも低い第2温度の熱処理を行うことで、金属材同士を接合することができる。このため、製造プロセスを簡略化することができる。
【0063】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる半導体装置の構造について説明する。
図7,8は、実施の形態5にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。実施の形態5にかかる半導体装置の製造方法が実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法と異なる点は、第1金属の粒子を含むペースト、および、第2,3金属の第2共晶系合金からなる金属薄板に代えて、合金ペーストを接合材として用いる点である。具体的には、例えば、合金ペーストとして、第1金属の粒子と、第2,3金属の第2共晶系合金の粒子とを、好適な有機溶剤を用いて保護および混合した合金ペーストを接合材として用いる。
【0064】
具体的には、
図7に示すように、まず、スクリーン印刷により、絶縁基板1のおもて面側金属層12の表面に、合金ペースト層26aを形成する。合金ペースト層26aは、第1金属(例えばAg)の粒子と、第2,3金属の第2共晶系合金(例えばAu−Geの共晶合金)の粒子と、フラックス(松やに)などの有機物とを主成分とする。実施の形態1と同様に、合金ペースト層26aに振動を与えることにより、合金ペースト層26aの表面の凹凸を平坦化させてもよい。次に、合金ペースト層26aの上に裏面金属電極3を下側にして半導体チップ2を載せて、半導体チップ2を載せた絶縁基板1全体を例えば真空雰囲気のリフロー炉内で熱処理する。
【0065】
具体的には、熱処理時、合金ペースト層26aに含まれる有機物を気化させながら、リフロー炉内の温度を第1温度で保持して、合金ペースト層26aに含まれる第2共晶系合金の粒子を溶融する。これにより、合金ペースト層26aは、第2共晶系合金の溶融物中に第1金属の粒子を分散させた状態となる。次に、リフロー炉内の温度を第1温度よりも高い第2温度に昇温して保持し、合金ペースト層26aに含まれる第1金属の粒子を溶融する。これにより、第2,3金属の第2共晶系合金の溶融物中に第1金属の溶融物が溶け出し、実施の形態1と同様に第1〜3金属の3元合金層からなる接合層26bが形成され、
図8に示すように接合層26bを介して金属材同士が接合される。第1,2の温度は、実施の形態1と同様である。実施の形態1と同様に、接合層26b中に、合金化されていない第1金属の粒子がいくらか残存していてもよい。その後、一般的な方法により配線や封止(モールド)などを行うことで、パッケージ構造の半導体装置が完成する。
【0066】
また、実施の形態5を実施の形態2に適用して2回以上の接合工程を行ってもよい。また、実施の形態5を実施の形態4に適用して板状接合材を形成してもよい。
【0067】
以上、説明したように、実施の形態5によれば、実施の形態1,4と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(実施の形態6)
次に、実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法について説明する。実施の形態6にかかる半導体装置の製造方法が実施の形態5にかかる半導体装置の製造方法と異なる点は、ペースト状のはんだに代えて、板状はんだを接合材として用いる点である。板状はんだは、第2,3金属の第2共晶系合金中に第1金属の粒子を混合してなる。
【0069】
実施の形態6においては、2つの金属材間に板状はんだを挟み込んだ後、第2温度の熱処理により板状はんだに含まれる第1金属の粒子を溶融すればよい。これによって、板状はんだが実施の形態5と同様に第1〜3金属の3元合金からなる接合層となり、この接合層を介して金属材同士が接合される。その後、一般的な方法により配線や封止(モールド)などを行うことで、パッケージ構造の半導体装置が完成する。
【0070】
次に、板状はんだの形成方法について説明する。まず、第2共晶系合金のはんだを固相線温度(第2共晶点)より高い温度で調合する。次に、第2共晶系合金のはんだを固相線温度より僅かに高い第1温度で保持する。ここで、第2共晶系合金の溶融物内に第1金属の粒子を均一に混合した後、直ちに室温に冷却する。このようにして形成した、第1金属の粒子と、第2,3金属の第2共晶系合金との混合物を、必要に応じて圧延し、所望の寸法に加工して板状接合材が完成する。
【0071】
また、実施の形態6を実施の形態2に適用して2回以上の接合工程を行ってもよい。
【0072】
以上、説明したように、実施の形態6によれば、実施の形態1,4,5と同様の効果を得ることができる。
【0073】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施の形態では、半導体チップの裏面金属電極と絶縁基板のおもて面側金属材とを接合する場合を例に説明しているが、ある程度の平坦部を有する金属材同士であれば本発明を適用して接合可能である。また、半導体チップの半導体材料として、例えば、シリコン(Si)半導体を用いてもよいし、シリコン半導体よりもバンドギャップの広い例えば炭化珪素(SiC)半導体など様々な半導体材料を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法、接合材および接合材の形成方法は、高温環境下で使用される半導体装置を構成する金属材同士の接合に有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 絶縁基板
2 半導体チップ
3 半導体チップの裏面金属電極
4 半導体モジュールの金属ベースもしくは金属フィン
5 作業板
11 絶縁基板の絶縁層
12 絶縁基板のおもて面側金属層
13 絶縁基板の裏面側金属層
21,26b 第1〜3金属の3元合金からなる接合層(はんだ層)
22a 第1金属の粒子を含むペースト層
22b 第1金属からなる多孔質層
23 第2共晶系合金の金属薄板
24 第2接合層
25 第1金属からなる多孔質体に、第2,3金属の第2共晶系合金を浸透させた3元合金層の前駆体
26a 第1金属の粒子と、第2,3金属の第2共晶系合金の粒子とからなる合金ペースト層