特許第6383210号(P6383210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383210粘着剤組成物、光学部材および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383210
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、光学部材および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20180820BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20180820BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180820BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20180820BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180820BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180820BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09J7/30
   B32B27/30 A
   B32B27/00 M
   G02B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-157784(P2014-157784)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-35006(P2016-35006A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073900(WO,A1)
【文献】 特表2013−543524(JP,A)
【文献】 特開2013−210445(JP,A)
【文献】 特開2009−242633(JP,A)
【文献】 特開2009−019077(JP,A)
【文献】 特開2008−111105(JP,A)
【文献】 特開2008−257199(JP,A)
【文献】 特開2014−101516(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0161995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00
B32B 27/30
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量100万以上200万以下の(メタ)アクリル酸系重合体 100質量部;
(B)カチオン重合性単量体 1〜20質量部;
(C)カチオン系光重合開始剤 0.05〜4質量部;
(D)シランカップリング剤 0.05〜0.5質量部;および
(E)光増感剤 0.05〜2質量部
を含み、イソシアネート系架橋剤およびイソシアヌレートを有する活性エネルギー線硬化性成分を実質的に含有しない、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸系重合体(A)が、90〜99.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、0.5〜10質量部のカルボキシル基含有モノマー(a−2)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の少なくとも一方と、からなる(ただし、該(メタ)アクリル酸エステルモノマー、該カルボキシル基含有モノマーおよび該ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの合計量は100質量部である)、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
さらに(F)帯電防止剤を含む、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材。
【請求項5】
前記粘着剤層が偏光板上に形成されてなる、請求項に記載の光学部材。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、光学部材および粘着シートに関する。さらに詳細には、所定の組成比で(メタ)アクリル酸系重合体、カチオン重合性単量体、カチオン系光重合開始剤、シランカップリング剤、および光増感剤を含む粘着剤組成物に関する。また、かかる粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL装置などのフラットパネルディスプレイ(FPD)の使用が拡大している。これに伴い、FPDに使用される粘着剤の作業性、生産性の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、アクリル系共重合体と、多官能(メタ)アクリレート系モノマーを含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる偏光板用粘着剤が開示されている。かかる構成によって、光学フィルム用粘着剤組成物は、高温、高温高湿条件下でも耐久性、光漏れに優れることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、重量平均分子量が60万〜200万であり、重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子を有するモノマーを含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、活性エネルギー線硬化性成分(B)とを含有することを特徴とする粘着性組成物が開示されている。かかる構成によって、光学フィルム用粘着剤組成物は、高温、高温高湿条件下でも耐久性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−235568号公報
【特許文献2】特開2013−203899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、活性エネルギー線を照射した後、実用粘着性能に達するまで10日の長い熟成時間を必要とし(特許文献1 段落「0035」)、生産性が低いという問題があった。また、ポットライフが短いことから、作業性の点においても課題を残していた。
【0007】
上記特許文献2に記載の粘着剤組成物は、特許文献1に記載のイソシアネート系架橋剤を併用せず、イソシアネートの3量体であるイソシアヌレートを含む構造(イソシアヌレート構造)を有する活性エネルギー線硬化型化合物を用いている。イソシアヌレート構造を有する活性エネルギー線硬化型化合物は(メタ)アクリル酸系重合体との反応性が低いため、活性エネルギー線を照射した後、実用粘着性能に達するまで半日程度を依然として必要としていた(特許文献2 段落「0124」)。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の一目的は、ポットライフが長く作業性に優れ、より短い熟成時間で実用粘着性能に達することにより生産性に優れる粘着剤組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、硬化後の粘着層の耐久性および基材への密着性に優れる粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、所定の組成比で(メタ)アクリル酸系重合体、カチオン重合性単量体、カチオン系光重合開始剤、シランカップリング剤、および光増感剤を含む粘着剤組成物によって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明の一側面は、(A)重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリル酸系重合体 100質量部;(B)カチオン重合性単量体 1〜20質量部;(C)カチオン系光重合開始剤 0.05〜4質量部;(D)シランカップリング剤 0.05〜0.5質量部;および(E)光増感剤 0.05〜2質量部を含む、粘着剤組成物である。本発明の別の側面は、かかる粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材および粘着シートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポットライフが長く作業性に優れ、短い熟成時間で実用粘着性能に達することにより生産性に優れる粘着剤組成物が提供できる。また、本発明によれば、硬化後の粘着層の耐久性および基材への密着性に優れる粘着剤組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル酸」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0013】
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
【0014】
[粘着剤組成物]
本発明の一側面は、(A)重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリル酸系重合体 100質量部;(B)カチオン重合性単量体 1〜20質量部;(C)カチオン系光重合開始剤 0.05〜4質量部;(D)シランカップリング剤 0.05〜0.5質量部;および(E)光増感剤 0.05〜2質量部を含む、粘着剤組成物である。
【0015】
偏光板用粘着剤は、液晶セルのガラス基板に偏光板を貼合するために用いられる。特に高温高湿環境下では、偏光板の収縮が大きく、かような偏光板の収縮に起因して、TN液晶セルではいわゆる光漏れが発生する。
【0016】
特許文献1では、かような高温高湿条件下での光漏れを抑制するため、アクリル系共重合体および多官能(メタ)アクリレート系モノマーを含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる偏光板用粘着剤が開示されている。ここで、特許文献1の実施例を参酌すると、全ての実施例においてイソシアネート系架橋剤が用いられている(段落「0032」)表1)。ラジカル重合系では、紫外線によって短時間で粘着剤が硬化するため、架橋ひずみが大きく、ガラス基材への密着性が低下する。このため、密着性向上を目的としてイソシアネート系架橋剤を配合しているものと推定される。イソシアネート系架橋剤は、偏光板用粘着剤では汎用の架橋剤であるが、熱硬化型であるため、長期の熟成時間を要し、実際、特許文献1の実施例では、10日間もの養生(エージング処理)を要している(段落「0035」)。また、熱硬化性成分であるイソシアネート系架橋剤を含有するため、室温放置でも徐々に架橋が進行し、ポットライフが短くなる。
【0017】
このような長時間のエージング処理を不要として、特許文献2では、アクリル系共重合体に、活性エネルギー性硬化成分として、多官能(メタ)アクリレートモノマー/オリゴマーが好適であることが記載され、実施例ではトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートが用いられている。特許文献2の粘着剤組成物は、ポットライフは比較的長いものの、イソシアヌレート系硬化型化合物を用いているために、半日程度の熟成時間を要する(特許文献2 段落「0124」)。これは、イソシアヌレート系硬化型化合物は活性エネルギー線による活性化が速いものの、橋架け構造に至るまでに時間を要するため、ある程度の熟成時間を要するものと考えられる。
【0018】
エージング処理に時間を要すると、粘着剤組成物を例えば偏光板に処理した後にすぐに打ち抜き加工などの加工処理を行うことができず、生産性が低下するという問題がある。
【0019】
一方、本発明の粘着剤組成物は、紫外線を照射しない限り、架橋は進行しないため、ポットライフが長く作業性に優れる。また、従来の粘着剤組成物では、実用粘着性能に達するまで半日程度の熟成を必要としていたが、本発明によれば、1時間以内の熟成でも実用粘着性能を得られるため、生産性に優れる。特に、ロールツーロールでの生産ラインで粘着加工した場合、1時間以内の熟成でも実用粘着性能を得られるため、すぐに打ち抜き加工を行えることができ、生産性が格段に向上する。
【0020】
また、カチオン重合系は、ラジカル重合系よりも架橋スピードが比較的緩やかであるため、架橋ひずみが小さく、特に、イソシアネート系の硬化剤を用いることなく、基材密着性やリワーク性(貼合時に貼り直しが必要となったときにはがした後に粘着剤が残りにくい性能)を確保することできる。したがって、本発明の粘着剤組成物は、粘着剤として適度な粘着力や基材への密着性を有し、さらには、リワーク性に優れる。また、本発明の粘着剤組成物は、架橋密度が適切であるため、粘着層を形成した際の耐久性に優れる。さらに、本発明の粘着剤組成物は、被着体汚染防止性にも優れる。
【0021】
したがって、本発明の粘着剤組成物は、各種被着体の接着に有効であり、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、特に光学部材や粘着シートの粘着剤層として好適に使用できる。特に、本発明の粘着剤組成物は、高温高湿保存下で発生する偏光板の収縮に起因する光漏れが発生しにくい。このため、本発明の粘着剤組成物は、偏光板用粘着剤組成物として好適である。
【0022】
以下、粘着剤組成物を構成する各成分について説明する。
【0023】
なお、粘着剤とは、感圧性接着剤ともいい、常温で粘着性(タック性とも呼称される)を有する接着剤の一種であり、JIS K 6800−2006においては「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着体に接着する物質」と定義されている。タック性は、JIS Z0237−2009で規定される傾斜式ボールタック試験によって観察することができる。
【0024】
<(メタ)アクリル酸系重合体(A)>
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸系重合体(本明細書においては、「(メタ)アクリル酸系重合体(A)」、または単に「成分(A)」とも称する。)を含む。
【0025】
成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、100万以上である。共重合体の重量平均分子量が100万以上であることで、例えば、高温、または高温高湿条件下での偏光板の収縮により発生する応力に耐えうる。このため、粘着剤組成物を適用後の貼合対象物の耐久性が高い。成分(A)の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、通常200万以下である。重量平均分子量が200万以下であると、貼合性が向上する。なお、本発明において、重量平均分子量は、実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
【0026】
本発明における(メタ)アクリル酸系重合体としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基などの架橋点を有するものが用いられる。かような(メタ)アクリル酸系重合体としては特に制限されるものではなく、従来粘着剤組成物に用いられてきたものから適宜選択して用いることができる。特に、下記の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、カルボキシル基含有モノマー(a−2)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の少なくとも一方と、からなる(メタ)アクリル酸系重合体が好ましく用いられる。
【0027】
((メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1))
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(本明細書においては、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)」、または単に「成分(a−1)」とも称する。)は、分子中にヒドロキシ基を有さない(メタ)アクリル酸のエステルである。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、以下に制限されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、メチル−3−メトキシ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸系重合体(A)の重量平均分子量を上げることができるので、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。ただし、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートは、共重合性がやや他の単量体より低いため、含有する場合には、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、カルボキシル基含有モノマーおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの合計量100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0029】
成分(a−1)は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0030】
(カルボキシル基含有モノマー(a−2))
カルボキシル基含有モノマー(本明細書においては、「カルボキシル基含有モノマー(a−2)」、または単に「成分(a−2)」とも称する。)は、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和モノマーである。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、以下に制限されないが、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。
【0031】
これらのうち、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
【0032】
成分(a−2)は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
(ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3))
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(本明細書においては、「ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)」、または単に「成分(a−3)」とも称する。)は、分子中にヒドロキシ基を有するアクリルモノマーである。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、以下に制限されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0035】
成分(a−3)は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0036】
(その他のモノマー)
本発明の(メタ)アクリル酸系重合体(A)には、上記成分(a−1)〜(a−3)以外にも、これらと共重合可能なその他のモノマーをさらに用いることもできる。具体的な例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアクリルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するアクリルモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するアクリルモノマー;2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスファート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するアクリルモノマー;スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基を有するアクリルモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有するアクリルモノマー;p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等のフェニル基を有するアクリルビニルモノマー;2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;スチレン、クロロスチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。これらその他のモノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0037】
ただし、粘着性を考慮すると、その他のモノマーは(メタ)アクリル酸系重合体(A)に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい(下限は0質量%)。
【0038】
(メタ)アクリル酸系重合体(A)は、90〜99.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、0.5〜10質量部のカルボキシル基含有モノマー(a−2)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の少なくとも一方と、からなる(ただし、該(メタ)アクリル酸エステルモノマー、該カルボキシル基含有モノマーおよび該ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの合計量は100質量部である)ことが好ましい。かような組成の(メタ)アクリル酸系重合体(A)を用いることにより、耐光漏れ性の低下をより抑制し、また、基材からの剥がれを抑制することができる。(メタ)アクリル酸系重合体(A)は、95〜99.5質量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、0.5〜5質量部のカルボキシル基含有モノマー(a−2)およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマー(a−3)の少なくとも一方と、からなる(ただし、該(メタ)アクリル酸エステルモノマー、該カルボキシル基含有モノマーおよび該ヒドロキシ基含有(メタ)アクリルモノマーの合計量は100質量部である)ことがより好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル酸系重合体(A)のガラス転移温度は、通常0℃以下であり、好ましくは、−10℃以下である。0℃以下であることで、粘着剤としての粘着性能を確保することができる。また、好適にはガラス転移温度は−70℃以上である。−70℃以上であることで、十分な凝集力が確保される。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。
【0040】
成分(A)の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。中でも重合開始剤を使用する溶液重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。例えば、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を用い、モノマーの合計量100質量部に対して、重合開始剤を好ましくは0.01〜0.50質量部を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度60〜90℃で、3〜10時間反応させることで得られる。前記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0041】
上記成分(A)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
<カチオン重合性単量体(B)>
本発明の粘着剤組成物は、カチオン重合性単量体(本明細書においては、「カチオン重合性単量体(B)」、または単に「成分(B)」とも称する。)を含む。
【0043】
カチオン重合性単量体は、成分(A)100質量部に対して、1〜20質量部(固形分比)である。カチオン重合性単量体が1質量部未満であると、粘着性が発現されず、粘着剤組成物に必要な各種物性(基材への密着性、耐光漏れ性、耐久性、被着体汚染防止性およびリワーク性)が得られない。また、カチオン重合性単量体が20質量部を超えると、架橋が進行しすぎるため、高温、高湿条件下での偏光板の収縮に粘着層が追従しにくくなり、発生する応力に起因する光弾性によって耐光漏れ性が低下する。また、ヒートショック試験下の過酷な条件下では耐久性も低下する。カチオン重合性単量体は、好ましくは、成分(A)100質量部に対して、架橋性向上の観点から、2〜20質量部(固形分比)である。また、コスト低減の観点からは、カチオン重合性単量体は、成分(A)100質量部に対して、10質量部以下であることがより好ましい。
【0044】
カチオン重合性単量体としては、特に制限はなく、カチオン重合を起こして硬化するものであれば従来公知のカチオン重合性単量体をいずれも使用できる。より具体的には、カチオン重合性単量体としては、グリシジル基、エポキシシクロアルキル基、ビニルエーテル基、オキセタン環、環状エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、および、環状チオエーテル基の少なくとも一つを有する化合物、スピロオルソエステル化合物等が挙げられる。このうち、反応性の点から、特にグリシジル基、エポキシシクロアルキル基、ビニルエーテル基、およびオキセタン環からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する単量体がより好ましい。また、グリシジル基、エポキシシクロアルキル基、ビニルエーテル基、およびオキセタン環を少なくとも2個有する多官能性カチオン重合性単量体であることが好ましい。
【0045】
グリシジル基を有する単量体としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、下記式のジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル
【0046】
【化1】
【0047】
、1,3−ビス(オキシラニルメトキシ)ベンゼン(レゾルシノールジグリシジルエーテル)、2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−シクロヘキサンジイルオキシメチレン)]ビスオキシランなどの水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールS型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型ジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールのグリシジルエーテル化物などが挙げられる。このうち、特に反応性の観点から、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,3−ビス(オキシラニルメトキシ)ベンゼンであることが好ましい。
【0048】
ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロン840、エピクロン840−S、エピクロン850、エピクロン850−S、エピクロン850−CRP、エピクロン850−LC(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、リカレジンBPO−20E、リカレジンBEO−60E(以上、新日本理化(株)製)等が市販されている。
【0049】
水添ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば、デナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)、SR−HBA(以上、阪元薬品工業(株)製)、エピコートYX−8000、エピコートRXE−21(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、リカレジンHBE−100(以上、新日本理化(株)製)等が市販されている。
【0050】
エポキシシクロヘキシル基を有する単量体としては、例えば、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1.2:8,9ジエポキシリモネンなどが挙げられる。このうち、特に反応性の観点から、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであることが好ましい。
【0051】
ビニルエーテル基を有する単量体としては、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。このうち、特に入手しやすさや取扱い性の点からトリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルが好ましい。
【0052】
上記のようなグリシジル基、エポキシシクロアルキル基、またはビニルエーテル基を有するカチオン重合性単量体は、市販品を使用してもよく、市販品としては、例えば、エポライト(登録商標)シリーズ(共栄社化学株式会社製)エピコート(登録商標)シリーズ(三菱化学株式会社製)、エピクロン(登録商標)シリーズ(DIC株式会社製)、エポトート(登録商標)シリーズ(東都化成株式会社製)、アデカレジン(登録商標)シリーズ(株式会社ADEKA製)、デナコール(登録商標)シリーズ(ナガセケムテックス株式会社製)、ダウエポキシシリーズ(ダウ・ケミカル日本株式会社製)、テピック(登録商標)シリーズ(日産化学工業株式会社製)、DVE−3、CHVE(BASFジャパン株式会社製)、セロキサイド(登録商標)シリーズ(株式会社ダイセル製)などが挙げられる。
【0053】
オキセタン環を有する単量体としては、2−エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ベンゼン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3,3′−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)(3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼンなどが挙げられる。このうち、特に入手しやすさや取扱い性の点から2−エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3,3′−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)が好ましい。
【0054】
上記オキセタン環を含有する化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、アロンオキセタンOXT−221、アロンオキセタンOXT−121(以上、東亞合成(株)製)、エタナコールOXBP(以上、宇部興産(株)製)等が挙げられる。
【0055】
上記成分(B)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
<カチオン系光重合開始剤(C)>
本発明の粘着剤組成物は、カチオン系光重合開始剤(本明細書においては、「カチオン系光重合開始剤(C)」、または単に「成分(C)」とも称する。)を含む。
【0057】
粘着剤組成物に含まれる光重合開始剤は、後述の粘着剤組成物に対する光照射工程においてカチオン(酸)を生じ、(メタ)アクリル酸系重合体やカチオン重合性単量体の反応性を高める。粘着剤組成物がカチオン系光重合開始剤を含むことにより、短時間の熟成で実用粘着性能を得ることができる。さらに、粘着剤としての各種性能を満たすことができる。
【0058】
カチオン系光重合開始剤は、成分(A)100質量部に対して、0.05〜4質量部(固形分比)である。カチオン系光重合開始剤が0.05質量部未満であると、粘着性が発現されず、粘着剤組成物に必要な各種物性(基材への密着性、耐光漏れ性、耐久性、耐被着体防止性およびリワーク性)が得られない。また、カチオン系光重合開始剤が4質量部を超えると、架橋が進行しすぎるため、高温、高湿条件下で偏光板の収縮に粘着層が追従しにくくなり、発生する応力に起因する光弾性によって耐光漏れ性が低下する。さらに粘着層としての耐久性も低下する。架橋性および耐久性の観点からは、カチオン系光重合開始剤は、成分(A)100質量部に対して、0.1〜3質量部(固形分比)であることが好ましい。
【0059】
カチオン系光重合開始剤としては、通常光酸発生剤として用いられる化合物を特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩、鉄−アレン錯体などが挙げられる。
【0060】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなどが挙げられる。
【0061】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリルクミルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフロオロホスフェートなどのジ(4−アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0062】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムのリン酸塩などが挙げられる。
【0063】
鉄−アレン錯体としては、例えば、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなどが挙げられる。
【0064】
中でも、カチオン系光重合開始剤は、反応性の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩であることが好ましい。
【0065】
カチオン系光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、CPI−100P、101A、200K、210S(トリアリールスルホニウム塩)(サンアプロ株式会社製)、カヤラッド(登録商標)PCI−220、PCI−620(日本化薬株式会社製)、UVI−6990、UVI−6992(ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−170(株式会社ADEKA製)、CI−5102(日本曹達株式会社製)、CIT−1370、1682、(日本曹達株式会社製)、CIP−1866S、2048S、2064S、(日本曹達株式会社製)、DPI−101、102、103、105(みどり化学株式会社製)、MPI−103、105(みどり化学株式会社製)、BBI−101、102、103、105、(みどり化学株式会社製)、TPS−101、102、103、105(みどり化学株式会社製)、MDS−103、105(みどり化学株式会社製)、DTS−102、103(みどり化学株式会社製)、PI−2074(ローディアジャパン株式会社製)、WPI―113、116(和光純薬工業株式会社製)、イルガキュア250(BASF・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0066】
上記成分(C)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
<シランカップリング剤(D)>
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤(本明細書においては、「シランカップリング剤(D)」、または単に「成分(D)」とも称する。)を含む。シランカップリング剤を使用することで、粘着剤層の機械的強度が向上し、耐久性に優れた粘着剤層を得ることができる。
【0068】
シランカップリング剤は、成分(A)100質量部に対して、0.05〜0.5質量部(固形分比)である。シランカップリング剤が0.05質量部未満であると、粘着剤層の耐久性が低下する。0.5質量部を超えると却って耐久性が低下し、光漏れ性が悪化することとなる。成分(D)の配合量は、好ましくは0.07〜0.45質量部(固形分比)であり、より好ましくは0.1〜0.3質量部(固形分比)である。
【0069】
本発明において用いることができるシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。さらには、エポキシ基(グリシドキシ基)、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤と、これらの官能基と反応性を有する官能基を含有するシランカップリング剤、他のカップリング剤などを、各官能基について任意の割合で反応させて得られる加水分解性シリル基を有する化合物も使用できる。
【0070】
なお、シランカップリング剤としてはイソシアネート基を有していないものを用いることが好ましい。
【0071】
本発明においては、シランカップリング剤としてシランカップリング剤アルコキシオリゴマー(シランカップリング剤オリゴマー)を用いても良い。シランカップリング剤アルコキシオリゴマーは、少なくともアルコキシ基を有するシラン化合物が2個以上縮合して−Si−O−Si−構造を形成し、そのケイ素原子には少なくとも1個のアルコキシ基が結合し、さらに、分子内に有機官能基を有する化合物である。シランカップリング剤オリゴマーは、アルコキシ基を有していることにより、液晶パネル等に使用される、ガラスに対する密着性が発現する。また、有機官能基を有していることにより、シランカップリング剤オリゴマーは上記(メタ)アクリル酸系重合体との相溶性および密着性に優れ、(メタ)アクリル酸系重合体へのいわゆるアンカー効果が表れる。もっとも、本発明はこのような考察によって制限されるものではない。
【0072】
シランカップリング剤アルコキシオリゴマーの有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、ポリスルフィド基等が挙げられる。このうち、得られる粘着剤層の耐久性向上および低粘着性実現を両立するためには、エポキシ基、メルカプト基および(メタ)アクリロイル基が好ましく、特にエポキシ基およびメルカプト基が好ましい。
【0073】
シランカップリング剤オリゴマーは、一分子内のケイ素原子数が2である二量体から、一分子内のケイ素原子数が100程度まで、すなわち平均重合度が2〜100のものを用いることができる。平均重合度が大きくなると、シランカップリング剤オリゴマーの粘度が高くなり、ペースト状又は固体状になる場合があるため、取扱いが難しくなる。そこで、平均重合度は2〜80が好ましく、より好ましくは3〜50である。
【0074】
シランカップリング剤オリゴマー中に含まれる有機官能基は、通常、適当な連結基を介してケイ素原子に結合している。連結基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基などのアルキレン基、メチルフェニルエチル基などの芳香族環を間に有する2価の炭化水素基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基などの酸素原子を間に有する2価の脂肪族基などがある。なお、有機官能基がエポキシ基である場合には、環を構成する隣り合う2個の炭素原子間で官能基が形成されていてもよい。
【0075】
シランカップリング剤オリゴマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、上述のシラン化合物のホモポリマーやコポリマー等が挙げられる。
【0076】
上記シランカップリング剤は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越シリコーン(登録商標)KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、X−41−1805(メルカプト基、メトキシ基およびエトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)、X−41−1810(メルカプト基、メチル基およびメトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)、X−41−1053(エポキシ基、メトキシ基およびエトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)、X−41−1058(エポキシ基、メチル基およびメトキシ基を有するシランカップリング剤オリゴマー)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0077】
これらシランカップリング剤の中でも、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBM−403、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、X−41−1805、X−41−1810が好ましく、KBM−403、X−41−1810がより好ましい。
【0078】
上記成分(D)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
<光増感剤(E)>
本発明の粘着剤組成物は、光増感剤(本明細書においては、「光増感剤(E)」、または単に「成分(E)」とも称する。)を含む。光増感剤は、エネルギー線を吸収して、カチオン系光重合開始剤からカチオンを効率よく発生させる化合物であり、また、カチオン光系光重合開始剤に加えて光増感剤を使用することで、ラジカル重合反応も進行するため、光増感剤の使用によりカチオン重合の反応性が向上し、本発明の接着剤組成物の機械的強度および接着性を向上させることができる。
【0080】
光増感剤は、成分(A)100質量部に対して、0.05〜2質量部(固形分比)である。光増感剤が0.05質量部未満であると、粘着性が発現されず、粘着剤組成物に必要な各種物性(基材への密着性、耐光漏れ性、耐久性、耐被着体防止性およびリワーク性)が得られない。また、光増感剤が2質量部を超えると、架橋が進行しすぎるため、高温、高湿条件下で偏光板の収縮に粘着層が追従しにくくなり、発生する応力に起因する光弾性によって耐光漏れ性が低下する。さらに耐久性も低下する。成分(E)の配合量は、架橋性および耐久性の観点から、好ましくは0.1〜1.5質量部(固形分比)であり、より好ましくは、0.1〜1.0質量部である。
【0081】
光増感剤は、組成物の光に対する活性を増大させる化合物であればよく、エネルギー移動、電子移動、プロトン移動等、種々の増感機構の種別は問わない。
【0082】
光増感剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンなどのベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体;アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−ヒドロキシメチルアントラセン、9−ブロモアントラセン、9−クロロアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、2−エチルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセンなどのアントラセン誘導体;アクリドン、N−ブチル−2−クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、2−メトキシアクリドン、N−エチル−2−メトキシアクリドンなどのアクリドン誘導体;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オンなどのジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;クマリン−1、クマリン−6H、クマリン−110、クマリン−102などのクマリン誘導体;2−(4−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2−(4−ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2−(4−ジメチルアミノスチリル)ナフトチアゾールなどのベーススチリル誘導体、ジスチリルベンゼン、ジ(4−メトキシスチリル)ベンゼン、ジ(3,4,5−トリメトキシスチリル)ベンゼンなどのジスチリルベンゼン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンなどのアントラキノン誘導体などが挙げられる。
【0083】
これらの増感剤の中でも、反応性の観点から、光増感剤は、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オンであることが好ましい。
【0084】
上記成分(E)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
<帯電防止剤(F)>
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤(本明細書においては、「帯電防止剤(F)」、または単に「成分(F)」とも称する。)を含むことが好ましい。粘着剤組成物が帯電防止剤を含むことにより、粘着剤組成物から形成される粘着剤層の表面抵抗値が低下する。これにより、被着体である液晶セル等に貼合した後、貼りミス等により剥離する必要が生じた際に、静電気の発生を効果的に抑制することができる。その結果、偏光板等の表面にゴミが付着し易くなったり、液晶配向に乱れが生じやすくなったり、周辺回路素子の静電破壊が生じ易くなったりすることを、安定的に防止することができる。
【0086】
本発明に用いることができる帯電防止剤としては、イオン液体等のイオン導電剤や、界面活性剤等が好適に用いられる。
【0087】
イオン導電剤としては、例えば、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、グアニジニウムイオン、アンモニウムイオン、イソウロニウムイオン、チオウロニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、スルホニウムイオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム等のカチオン成分と、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硫酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスファートイオン、蟻酸イオン、蓚酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のアニオン成分と、を有する物質が挙げられる。より具体的には、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオジド、1−エチル−3−メタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−p−トルエンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−メチルピロリジニウムブロミド、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムブロミド、1−エチルピリジニウムクロリド、1−エチルピリジニウムブロミド、1−ブチルピリジニウムクロリド、1−ブチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムクロリド、1−エチル−3−メチルピリジニウムエチルサルフェート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニムクロリド、テトラブチルアンモニムブロミド、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスホニル)イミド、テトラブチルホスホニウムブロミド等が例示できる。
【0088】
イオン導電剤としてはまた、下記式(1)で表わされるようなビス(フルオロスルホニル)イミド塩類も好適に用いられる。
【0089】
【化2】
【0090】
但し、上記式(1)において、Aはフッ素原子または炭素数1〜6のフルオロアルキル基であり;Xは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム、アルキルアンモニウムおよびアルキルホスホニウムからなる群から選択される陽イオンのいずれか一種である。好ましくは、Aはフッ素原子であり、XはH、Li、NaまたはKである。
【0091】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤等を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、フルオロ脂肪族重合体エステル(例えば、FC−4430、FC−4432、以上3M社製)等のフッ素系界面活性剤や、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、C〜C22アルキルトリメチルアンモニウムハライド等の陽イオン性界面活性剤や、アルキルサルフェート等の陰イオン性界面活性剤が例示できる。
【0092】
成分(F)の配合量は、成分(A)100質量部に対して0.2〜5質量部(固形分比)であることが好ましく、より好ましくは0.8〜2.5質量部(固形分比)である。
【0093】
上記成分(F)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
<その他の成分>
上述したように、イソシアネート系架橋剤/イソシアヌレートを有する活性エネルギー線硬化性成分は、長時間の熟成時間を要し、また、イソシアネート系架橋剤/イソシアヌレートを有する活性エネルギー線硬化性成分は、未反応のモノマーが作業者の健康に対して悪影響を与える恐れがある。
【0095】
したがって、粘着剤組成物の熟成時間が短くなること、および作業者の安全を考慮し、本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤およびイソシアヌレートを有する活性エネルギー線硬化性成分を実質的に含有しないことが好ましい。イソシアヌレート構造とは、イソシアネートの三量化反応によって生じる、下記式(2)で示される構造をいう。
【0096】
【化3】
【0097】
イソシアネート系架橋剤を実質的に有しない粘着剤組成物は、ポットライフが長く、また、熟成時間も顕著に短くなる。また、イソシアヌレート構造を有しない活性エネルギー線硬化型化合物を用いることにより、熟成時間が顕著に短くなるという効果がある。
【0098】
また、粘着剤組成物中に存在するイソシアネート基量を質量分率で表したNCO含有率(%)が、実質的に0%であることが好ましい。具体的には、JIS K1603−1(2007)に準じて測定したNCO含有率が0.5%未満(下限0%)の粘着剤組成物であることが好ましい。
【0099】
さらに、イソシアヌレート構造の有無は、例えばイソシアヌレート構造のカルボニル1690〜1700cm−1をFT−IRにより測定するなどの手段により、分析することができる。
【0100】
本発明の効果を制限しない限りで、他の架橋剤を添加することもできる。例えば、本発明の粘着剤組成物は、カルボジイミド架橋剤を含んでもよい。カルボジイミド架橋剤は、上記の(メタ)アクリル共重合体(A)中のヒドロキシ基および/またはカルボキシル基と反応・結合し、架橋構造を形成する。
【0101】
カルボジイミド架橋剤は、特に制限されない。具体的には、例えば、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
【0102】
カルボジイミド架橋剤のなかには、下記式(3)で示されるようなイソシアネート基を有するもの(例えば、カルボジライト(登録商標)V−01(日清紡ケミカル株式会社))も存在するが、上述のようにイソシアネート基を有しないカルボジイミド架橋剤を用いることが好ましい。
【0103】
【化4】
【0104】
なお、「イソシアネート基を有しないカルボジイミド架橋剤」とは、カルボジイミド系硬化剤中に存在するイソシアネート基量を質量分率で表したNCO含有率(%)が、実質的に0%であるものをいう。具体的には、JIS K1603−1(2007)に準じて測定したNCO含有率が0.5%未満のカルボジイミド架橋剤が用いられる。
【0105】
イソシアネート基を有しないカルボジイミド架橋剤の市販品としては、カルボジライト(登録商標)V−03(NCO含有率:0%)、カルボジライト(登録商標)V−09(NCO含有率:0%)(以上、日清紡ケミカル株式会社)等が例示できる。
【0106】
カルボジイミド架橋剤を配合する場合、配合量は、成分(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましい。カルボジイミド架橋剤は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0107】
本発明の粘着剤組成物は、添加剤として、硬化促進剤、リチウム塩、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂等)、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、紫外線遮断剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤および溶剤のような添加剤を含んでもよい。
【0108】
これらのうち、硬化促進剤としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、JCS−50(城北化学工業株式会社製)、フォーメート(登録商標)TK−1(三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0109】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス(登録商標)1010、イルガノックス(登録商標)1035FF、イルガノックス(登録商標)565(いずれも、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0110】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸およびロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂ならびに石油樹脂等が挙げられる。
【0111】
上記添加剤を使用する場合の、添加剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、成分(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部である。
【0112】
また、成分(A)は、重合した後にそのまま組成物に用いることができるため、粘着剤組成物は重合時に用いられた溶媒を含んでいてもよい。さらに、塗工しやすいように溶媒で希釈してもよい。すなわち、粘着剤組成物はさらに溶媒を含んでいてもよい。
【0113】
この際、粘着剤組成物に用いられる溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0114】
<製造方法>
本発明の粘着剤組成物は、上記で述べた各成分を一括に混合するか、各成分を順次混合するか、または任意の複数の成分を混合した後に残りの成分を混合するなどして、均一な混合物となるように撹拌することにより製造することができる。より具体的には、室温または必要に応じて加温し(例えば30〜40℃の温度に加温)、スターラーなどで均一になるまで、例えば5分〜5時間撹拌することにより調製することができる。また、成分(A)は重合後の溶媒を含んだ状態で用いてもよい。さらに、各成分の混合時、または各成分を混合後、溶媒によって希釈してもよい。この際に用いられる溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0115】
<性質>
本発明の粘着剤組成物の粘度は、特に制限されない。しかしながら、塗工のしやすさ、該組成物から形成される粘着剤層の膜厚の制御のしやすさなどを考慮すると、25℃における配合直後(各成分を所定時間混合してから10分以内)のB型粘度計により測定した粘度が、好ましくは300〜7000mPa・sである。例えば、光学部材の粘着剤として用いる場合、25℃における調製直後(各成分を所定時間混合してから10分以内)の粘度が、より好ましくは1000〜6000mPa・s、さらに好ましくは2500〜5000mPa・sである。
【0116】
ポットライフは、粘着物組成物を配合した直後の組成物の粘度と、調製(配合)してから12時間経過後の組成物の粘度とを比較することにより評価することができる。配合してから12時間経過後の組成物はゲル化しないことが好ましい。粘着物組成物を配合した直後の組成物の粘度を100%とした場合、配合してから12時間経過後の組成物の粘度は130%以内であることが好ましく、110%以内であることがより好ましい(下限は100%)。かような範囲であれば、優れた作業性を有する粘着剤組成物となる。本発明の粘着剤組成物は、組成物調製後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化が抑制され、優れたポットライフを有する。
【0117】
なお、本明細書において、上記の「直後」とは、10分以内を意味する。すなわち、「粘着物組成物を調製した直後の組成物の粘度」とは、粘着物組成物の調製が終了した(各成分を所定時間混合した)後10分以内に測定した粘度を意味する。
【0118】
[粘着剤層]
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上記のような粘着剤組成物の塗膜から形成されるものであり、活性エネルギー照射処理することにより粘着性が付与されるものである。
【0119】
本発明の粘着剤組成物はカチオン系光重合開始剤および光増感剤を含むため、活性エネルギー照射処理を行うことにより酸を発生させ、(メタ)アクリル酸系重合体およびカチオン重合性単量体の成長反応によって光重合する。これにより、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、粘着加工後(活性エネルギー照射処理後)の熟成時間が1時間以内という短い期間で、実用粘着性能に達する。
【0120】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、上記のような粘着剤組成物を剥離フィルムや基材上に塗布して得られるものであり、架橋前のものも架橋後のものも含む。架橋前の粘着剤組成物から成る粘着剤層が形成された光学部材や粘着シートは、使用時に活性エネルギー照射処理を行い、粘着剤層(粘着剤組成物)に粘着性を付与して使用すればよい。
【0121】
粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物を基材に塗布した後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材に転写することも可能である。また、剥離フィルム上に上記の粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて粘着剤組成物の塗膜を乾燥した後、塗膜上に基材を積層しても良い。
【0122】
また、剥離フィルム上に上記の粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて粘着剤組成物の塗膜を乾燥した後、剥離力の異なる別の剥離フィルム(第2の剥離フィルム)を塗膜上に積層させてもよい。かかる態様により、粘着剤組成物の製造と、かかる粘着剤組成物の使用とが、別の場所で行われる等の理由により、粘着剤組成物のみを輸送することができるばかりでなく、空気中の酸素の影響を受けずに光硬化を進めることができる。また、2つの剥離フィルムにおける剥離力に所定の差を設けることにより、剥離力の低い側の剥離フィルムを剥がした際に、粘着剤が部分的に追従してくることを防止することができる。
【0123】
かかる剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対し、シリコーン樹脂等の剥離剤を塗布して、剥離層を設けたものが挙げられる。剥離フィルムは、20〜150μmの範囲内の厚さのものを使用することが好ましい。
【0124】
上記基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、偏光板、偏光層保護フィルム、視野角拡大フィルム、防眩フィルム、位相差板等、液晶ディスプレイに用いられる光学フィルム等が挙げられる。特に本発明の粘着剤組成物であれば、基材を偏光板とした場合であっても、光漏れの発生を効果的に抑制できる。本発明の一実施形態では、粘着剤層が偏光板上に形成されてなる光学部材が提供される。また、本発明における粘着剤組成物は、偏光子等へも耐久性よく密着できることから、偏光板の原料であるヨウ素含有のポリビニルアルコール樹脂を延伸して作製された偏光子自体も、基材として用いることができる。偏光子の片面がトリアセチルセルロースやポリエチレンテレフタレート等の保護フィルムで覆われた偏光子等も同様である。
【0125】
基材の材質としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、液晶ポリマー、シクロオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、脂環式構造含有重合体、芳香族系重合体等が挙げられる。
【0126】
基材は、表面処理を施したものであってもよい。このような表面処理としては、例えば、プライマー処理、コロナ処理、火炎処理などが挙げられるが、特に、コロナ処理であることが好ましい。このような表面処理を施した基材を用いることにより、基材フィルムに対する粘着剤層の密着性をさらに向上させることができる。
【0127】
粘着剤組成物の塗布方法は特に制限されず、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いればよい。必要に応じ、溶剤を加えた粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成させた後、乾燥させることが好ましい。乾燥条件としては、通常50〜150℃で10秒〜10分の範囲内とすることが好ましい。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が好ましく、溶剤を加えた際の粘着剤組成物の濃度は、5〜30質量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0128】
光学部材に使用する際の粘着剤組成物の塗布厚さ(乾燥後の厚さ)は、使用する基材および用途に応じて選択すればよいが、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜30μmである。
【0129】
上記のように調製した粘着剤組成物の塗膜に対して活性エネルギー線照射処理を行い、粘着剤層を形成する。かかる活性エネルギー線としては、例えば、紫外線や電子線等が挙げられる。紫外線であれば、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を用いることができ、電子線であれば、電子線加速器等を光源として用いればよい。
【0130】
剥離フィルム上に粘着剤組成物の塗膜を形成した場合、活性エネルギー線の照射は剥離フィルム側から行うことが好ましい。これにより、偏光板等の基材を傷めることなく、効率よく照射を行うことができる。
【0131】
活性エネルギー線照射処理における活性エネルギー線の照射量は、例えば50〜1000mJ/cm2の範囲内であり、100〜700mJ/cm2の範囲内の照射量にて照射することが好ましく、120〜500mJ/cm2の照射量にて照射することがより好ましい。活性エネルギー線の照射量を50mJ/cm2以上とすることにより、環境変化に曝された場合における耐久性や、所望の粘着剤特性を得ることができる。一方、活性エネルギー線の照射量を1000mJ/cm2以下とすることにより、粘着剤層や基材を破壊することなく架橋を行うことができる。
【0132】
例えば、メタルハライドランプを用いて紫外線を粘着剤組成物に照射する場合、例えば500〜2000mW/cmで照射する。照射時間は任意に設定すればよいが、例えば1〜10秒照射を行えばよい。照射処理時の雰囲気は特に制限されず、空気中で行っても良いが、空気中の酸素の影響を受けずに光硬化を進めることができるという観点から、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、照射処理は室温で行っても良く、40〜80℃に加温したステージ上で行うこともできる。
【0133】
[光学部材、粘着シート]
本発明は、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、光学部材および粘着シートをも提供する。
【0134】
<光学部材>
光学部材としては、例えば、偏光板、位相差板、プラズマディスプレイ用光学フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどが好ましく挙げられる。このうち、本発明の粘着剤組成物は、偏光板とガラスとの接着性に優れている。もちろん、本発明は、上記の形態に限定されるものではなく、他の部材の接着に使用することも可能である。本発明の一実施形態では、上記粘着剤層が偏光板上に形成されてなる光学部材が提供される。
【0135】
本発明の粘着剤組成物は、光学部材の片面あるいは両面に直接塗布して粘着剤層を形成して使用されてもよいし、剥離フィルム上に粘着剤層を予め形成し、これを光学部材の片面あるいは両面に転写することにより使用されてもよい。
【0136】
本発明の粘着剤組成物は、優れた柔軟性を示すことから、特に偏光板に用いた場合、経時的な偏光板の収縮に追従でき、優れた耐光漏れ性を得ることができる。加えて、本発明の粘着剤組成物は優れた耐久性を有するため、加熱処理や高湿処理による粘着剤層の浮きや剥がれを防止し得る。
【0137】
本発明の粘着剤組成物を光学部材に用いる場合、粘着加工(活性エネルギー線照射処理)から1時間後の粘着剤層のゲル分率は、65〜92%であることが好ましく、70〜90%であることがより好ましい。かような範囲であれば、粘着剤層を備えた光学部材として打ち抜き加工やスリット加工を速やかに行うことができる。粘着加工後、23℃、45%RHの雰囲気下で7日間保存後の粘着剤層のゲル分率は、粘着加工から1時間後のゲル分率を100%としたとき、95〜105%であることが好ましく、97〜103%であることがより好ましい。かような粘着剤層は、長期間に亘って安定した実用粘着性能を保持し、安定性に優れる。ゲル分率を上記のように設定するには、各成分の添加量を上記の範囲に調整するなど、条件を適宜選択すればよい。
【0138】
本発明の光学部材において、光学部材に形成された粘着剤層の粘着力は、1〜6(N/25mm)程度が好ましく、2〜5(N/25mm)程度がより好ましい。かような範囲の粘着力であれば、粘着性能が確保されるとともにリワーク性に有利でありうる。なお、本明細書において、「粘着力」は、JIS Z0237(2000年)の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて測定することによって求められ、より具体的には、下記実施例に記載される方法にしたがって測定される。
【0139】
光学部材に用いられる本発明の粘着剤組成物は、ポットライフが長く作業性に優れ、粘着加工後の熟成時間が1時間以内という短時間で実用粘着性能に達し、生産性が大幅に向上する。さらに、光学部材に用いられる本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、耐光漏れ性に優れるばかりでなく、光学部材用として適度な粘着力や基材への密着性を有し、耐久性、耐被着体汚染性、リワーク性にも優れる。
【0140】
<粘着シート>
本発明の粘着剤組成物は、基材またはセパレータ上に塗工し、乾燥(架橋)処理を施して、粘着剤層を形成することにより、シート状やテープ状などの粘着シートとすることもできる。すなわち、本発明は、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える、粘着シートを提供する。
【0141】
粘着シートの基材としては、上記のものの他、ゴムの発泡体、紙、アルミニウム箔などの公知の各種の薄葉部材が用いられる。これら基材の表面には、その材質に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、易接着層の形成などの下地処理や、帯電防止層の形成などを行ってもよい。また、セパレータには、上記の基材と同様のプラスチックフィルムの表面をシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などの剥離処理剤で剥離処理したものや、このような剥離処理を施さないポリプロピレンフィルムなど、各種のものを使用できる。
【0142】
基材上に粘着剤層を形成する場合、その片面に設けて片面粘着シートとしてもよいし、両面に設けて両面粘着シートとしてもよい。両面に設ける場合、片面だけに本発明の粘着剤組成物を用いて両面で粘着剤種の異なるテープとすることもできる。セパレータ上に粘着剤層を形成する場合は、両面粘着シートとして使用することができる。
【0143】
本発明の粘着剤組成物を粘着シートに用いる場合、活性エネルギー線照射処理から1時間後の粘着剤層の粘着剤層のゲル分率は、65〜92%であることが好ましく、70〜90%であることがより好ましい。かような範囲であれば、粘着剤層を備えた粘着シートとして打ち抜き加工やスリット加工を速やかに行うことができる。粘着加工後、23℃、45%RHの雰囲気下で7日間保存後の粘着剤層のゲル分率は、粘着加工から1時間後のゲル分率を100%としたとき、95〜105%であることが好ましく、97〜103%であることがより好ましい。かような粘着剤層は、長期間に亘って安定した実用粘着性能を保持し、安定性に優れる。ゲル分率を上記のように設定するには、各成分の添加量を上記の範囲に調整するなど、条件を適宜選択すればよい。
【0144】
本発明の粘着シートにおいて、粘着シートに形成された粘着剤層の粘着力は、0.05〜20(N/25mm)程度が好ましく、0.1〜10(N/25mm)程度がより好ましい。かような範囲の粘着力であれば、様々な粘着力を要求されるシート状やテープ状などの粘着シートに対応することができる。
【実施例】
【0145】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、合成例で得られた(メタ)アクリル酸系重合体溶液の固形分および粘度、粘着剤組成物(溶液)の粘度、ならびに成分(A)の重量平均分子量の測定は、以下の方法で行った。
【0146】
<固形分>
約1gの(メタ)アクリル酸系重合体溶液を、精秤したガラス皿に精秤した。105℃で1時間乾燥した後、室温に戻し、ガラス皿と残存固形分との合計の質量を精秤した。ガラス皿の質量をX、乾燥する前のガラス皿と(メタ)アクリル酸系重合体溶液との合計の質量をY、ガラス皿と残存固形分との合計の質量Zとして、下記数式1により固形分を算出した。
【0147】
【数1】
【0148】
<粘度>
ガラス瓶に入れた(メタ)アクリル酸系重合体溶液を25℃に温調し、B型粘度計により測定した。なお、粘着剤組成物(溶液)の粘度測定は、粘着物組成物(溶液)を配合した直後および配合してから12時間経過後の2度行った。
【0149】
<重量平均分子量>
下記表1の測定方法・測定条件により測定した。
【0150】
【表1】
【0151】
(合成例1)
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、n−ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)99質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社日本触媒製)1質量部および酢酸エチル120質量部を投入した。次いで、窒素置換を行いながら65℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04質量部を加え、65℃を維持しつつ6時間重合を行った。重合反応終了後、酢酸エチル280質量部を加えて希釈を行い、(メタ)アクリル酸系重合体(サンプル名:A−1)の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル酸系重合体溶液の固形分は20質量%、粘度は4500mPa・sであった。また、得られた(メタ)アクリル酸系重合体(A−1)の重量平均分子量は160万であった。
【0152】
(合成例2〜14)
合成例1において、単量体成分の組成を、表2に示されるような組成に変更したことを除いては、合成例1と同様の操作を行なうことによって、(メタ)アクリル酸系重合体(A−2)〜(A−15)の溶液を得た。また、得られた(メタ)アクリル酸系重合体(A−2)〜(A−15)溶液の固形分および粘度、ならびに(メタ)アクリル酸系重合体(A−2)〜(A−15)の重量平均分子量を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
(実施例1)
上記合成例1で得られた(メタ)アクリル酸系重合体溶液を500質量部((メタ)アクリル酸系重合体(A)の固形分として100質量部)、カチオン重合性単量体(B)であるネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(東京化成工業社製、試料名 B−1) 4質量部、カチオン系光重合開始剤(C)であるヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)2質量部(試料名 C−1)(イルガキュア250(ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−):プロピレンカーボネート=75:25(w:w)、BASFジャパン社製、2.5質量部)、シランカップリング剤(D)である信越シリコーン(登録商標) KBM−403(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、信越化学工業株式会社製、試料名 D−1)0.1質量部、および光増感剤(E)である2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン(東京化成工業社製、試料名 E−1)1質量部に、酢酸エチルを用いて固形分濃度が17質量%となるように調整した後、室温(25℃)で10分間混合し、粘着剤組成物(溶液)を得た。
【0156】
この溶液を、剥離PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、MRF38、厚み:38μm)上に、ベーカーアプリケーターにて乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、偏光板または剥離力の異なる別の剥離フィルム(第2の剥離フィルム)を積層し、粘着剤層が形成された偏光板または粘着シートを得た。
【0157】
偏光板上または剥離フィルム間に形成された粘着剤層に対して以下の条件で活性エネルギー線照射処理を行った。なお、活性エネルギー線照射処理は、上記の積層から3分以内に行った。
使用機器:アイグランデージECS−401GX(アイグラフィックス株式会社製)
光源:メタルハライドランプ
照射量:1000mJ/cm
コンベアスピード:5m/分。
【0158】
(実施例2〜9、比較例1〜15)
下記表5および表6に示すような組成比で、上記合成例で合成した(メタ)アクリル酸系重合体、活性エネルギー線硬化型化合物、光重合開始剤、シランカップリング剤、光増感剤、帯電防止剤、およびその他の添加剤を使用したことを除いては、実施例1と同様にして、粘着剤組成物(溶液)の調製および粘着剤層付き偏光板または粘着シートの作製を行った。ここで、粘着剤組成物(溶液)は、酢酸エチルを用いて固形分濃度が17質量%となるように調整した。なお、活性エネルギー線硬化型化合物B−1〜7、B’−8〜B’−9、光重合開始剤C−1〜2、C’−3、C−4〜5、シランカップリング剤D−1〜2、光増感剤E−1、帯電防止剤F−1〜3、ならびにその他の添加剤G−1〜7の詳細は以下の通りである。また、下記表5および表6中の質量部は、各製品の添加量ではなく製品に含まれる有効成分の添加量である。例えば、C-1に用いられるイルガキュア250は、イルガキュア250の添加量ではなく、イルガキュア250中に含まれるヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート量である。
【0159】
【表4-1】
【0160】
【表4-2】
【0161】
【表4-3】
【0162】
粘着剤層の実用粘着性能を評価するため、実施例および比較例に係る粘着剤層が形成された偏光板または粘着シートについて、下記の方法に従って各性能を評価した。なお、下記の評価において、「作製後1時間以内」とは、活性エネルギー線照射処理後1時間以内に試験に供することをいう。
【0163】
1.ゲル分率
実施例1〜9、および比較例1〜15で作製した粘着シートを用いて、粘着剤組成物のゲル分率を測定した。ゲル分率は、以下の方法により行った。すなわち、活性エネルギー線照射処理後、23℃、45%RHの雰囲気下で粘着シートを保存した。活性エネルギー線照射処理から5分後、1時間後、および7日後において、粘着剤組成物約0.1gを秤量して、重量W(g)を測定した。これをサンプル瓶に採取し、酢酸エチルを約30g加えて24時間放置した。所定時間経過後のサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網(膜の重量をW(g))にてろ別し、金網および残留物を90℃で1時間乾燥させた全体の重量W(g)を測定した。ゲル分率は、これらの測定値から下記数式2により算出した。
【0164】
【数2】
【0165】
2.耐光漏れ性
粘着剤層を備えた偏光板作製直後、偏光板を120mm(偏光板MD方向)×60mm、および120mm(偏光板TD方向)×60mmに裁断し、それぞれガラス板の各面に重なり合うように貼り合わせた後、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件で20分間オートクレーブ処理を行った。その後、85℃雰囲気下で保存し、保存開始から120時間および500時間後の外観を観察した。なお、下記表3および4中、「◎」は120時間後および500時間後に光漏れが観察されなかったことを、「○」は120時間後に光漏れが観察されなかったことを、「×」は光漏れが観察されたことをそれぞれ示す。
【0166】
3.耐久性
粘着剤層を備えた偏光板作製直後、偏光板を120mm(偏光板MD方向)×60mmに裁断し、無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件で20分間オートクレーブ処理を行った。その後、85℃雰囲気下および60℃、95%RHの雰囲気下で500時間保存後の外観を観察した。また、−40℃で30分(第一ステージ)および85℃で30分(第二ステージ)の2ステージで1サイクルとし、これを200サイクル繰り返すヒートショック試験を行い、試験後の外観を観察した。なお、下記表3および4中、「○」は発泡、浮き、剥がれが観察されなかったことを、「×」は発泡、浮き、剥がれのいずれか1つ以上が観察されたことをそれぞれ示す。
【0167】
4.粘着力
粘着剤層を備えた偏光板作製直後、偏光板を25mm幅に裁断し、無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合し、50℃、0.49MPa(5kg/cm)の条件下で20分間オートクレーブ処理を行った。引っ張り試験機を用いて、23℃、45%RHの雰囲気下で剥離角180度、剥離速度0.3m/分で、JIS Z0237(2000年)に記載の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて粘着力の測定を行った。
【0168】
5.基材に対する密着性
上記4.粘着力の測定時に密着性を観察した。なお、下記表5および6中、「○」は粘着剤が基材からまったく剥がれなかったことを、「×」は粘着剤が基材から剥がれたことをそれぞれ示す。
【0169】
6.被着体汚染性
上記4.粘着力の測定前後のガラス板面の接触角を測定した。接触角の測定は、JIS R3257(1999年)に記載の基板ガラス表面のぬれ性試験方法に準じて行った。なお、下記表3および4中、「○」は粘着力測定前後のガラス板面の接触角変化が3°以下であることを、「×」は粘着力測定前後のガラス板面の接触角変化が3°を超えたことをそれぞれ示す。
【0170】
7.表面抵抗値
粘着剤層を備えた偏光板作製直後、偏光板の粘着剤層面の表面抵抗を抵抗率計ハイレスターUP(三菱化学社製)を使用して23℃、45%RHの雰囲気下で測定した。なお、印加電圧は100Vとした。
【0171】
8.リワーク性
上記4.粘着力の測定時に、剥離状態を観察した。なお、下記表5および6中、「○」は界面破壊が観察されたことを、「×」はガラス板(被着体)に粘着剤が転着および/または凝集破壊が観察されたことをそれぞれ示す。
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
上記表5および表6から明らかなように、本発明の粘着剤組成物(実施例1〜9)は、ポットライフが長く、1時間以内の短時間の熟成であっても実用粘着性能に達する。さらに、本発明(実施例1〜9)の粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、基材への密着性および耐久性に優れ、さらに耐光漏れ性に優れる。なお、比較例15の組成物は粘着性を有していなかった。