(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Fe、Pt以外の前記1種以上の元素は、Cu、Ag、Rh、Au、Mn、Ni、Co、Pd、Cr、V、Bのうちの1種以上であることを特徴とする請求項2に記載のFePt−C系スパッタリングターゲット。
前記C相に含まれるCのターゲット全体に対する含有割合が10mol%以上60mol%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のFePt−C系スパッタリングターゲット。
Fe、Pt以外の前記1種以上の元素は、Cu、Ag、Rh、Au、Mn、Ni、Co、Pd、Cr、V、Bのうちの1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のFePt−C系スパッタリングターゲット。
前記C相に含まれるCおよび前記酸化物相に含まれる酸化物の合計のターゲット全体に対する含有割合が10mol%以上60mol%以下であって、かつ、前記C相に含まれるCのターゲット全体に対する含有割合が5mol%以上50mol以下、前記酸化物相に含まれる酸化物の合計のターゲット全体に対する含有割合が1mol%以上25mol%以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のFePt−C系スパッタリングターゲット。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0029】
1.第1実施形態
1−1.スパッタリングターゲットの構成成分および構造
本発明の第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットは、Fe、PtおよびCを含有するFePt−C系スパッタリングターゲットであって、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなるFePt系合金相中に、実質的にCからなるC相が分散した構造を有し、当該FePt−C系スパッタリングターゲットの厚さ方向の断面を121μm×97μmの範囲の視野について1000倍の倍率で10箇所撮影して得た10個の画像それぞれにおいて、C相の内接円の直径が大きい方から5番目までのその5つの直径の平均値をC相の大きさ指数aとするとともに、直径が大きい方から5番目までのC相の内接円の中心からそのC相の界面までを結ぶ直線の最大長さLを当該内接円の半径Rで除した値L/Rを、直径が大きい方から5番目までのC相それぞれについて求め、求めた5つの値の平均値をC相の非球形指数bとするとき、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、かつ、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上であることを特徴とする。なお、本明細書では、数値範囲を表す際に「α以上β以下」のことを「α〜β」と記すことがある。
【0030】
1−1−1.FePt系合金について
FePt系合金は高温(例えば600℃以上)で熱処理をすることにより、高い結晶磁気異方性を持ったfct構造を備えることができるため、磁気記録媒体の記録層となる役割を有し、本発明の実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおいて主成分となる。
【0031】
FePt系合金相におけるPtの含有量を33〜60mol%と規定した理由は、FePt系合金相におけるPtの含有量が33〜60mol%から外れると、fct(面心直方)構造が発現しなくなるおそれがあるからである。FePt系合金相においてfct(面心直方)構造が確実に発現するようにするという観点から、FePt系合金相におけるPtの含有量は45〜55mol%であることが好ましく、49〜51mol%であることがさらに好ましく、50mol%とすることが特に好ましい。
【0032】
1−1−2.C(炭素)について
C(炭素)は、スパッタリングにより得られるFePtC系層中において、磁性粒子であるFePt系合金粒子同士を仕切る隔壁となり、FePtC系層中におけるFePt系合金粒子を小さく均一にする役割を有し、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおいて主成分の1つとなる。
【0033】
C(炭素)相に含まれるCのターゲット全体に対する含有割合は10〜60mol%とすることが好ましく、C(炭素)相に含まれるCのターゲット全体に対する含有割合を10〜60mol%とすることにより、スパッタリングにより得られるFePtC系層中において、C(炭素)が磁性粒子であるFePt系合金粒子同士を仕切る隔壁となって、FePt系合金粒子を小さく均一にする効果を発現させる確実性を高めることができる。C(炭素)相に含まれるCの含有割合が10mol%未満ではこの効果が十分に発現しないおそれがある。一方、C(炭素)相に含まれるCの含有割合が60mol%を超えると、スパッタリングにより得られるFePtC系層中において、FePtC系層における単位体積当たりのFePt系合金粒子の数が少なくなり、記憶容量の点で不利となる。FePtC系層中においてFePt系合金粒子を小さく均一にする効果を発現させる確実性を高める観点および形成するFePtC系層の記憶容量の観点から、C(炭素)相に含まれるCのターゲット全体に対する含有割合は20〜55mol%であることがより好ましく、30〜55mol%であることがさらに好ましく、35〜50mol%であることが特に好ましい。
【0034】
なお、ターゲット中において、C(炭素)相の特定はEPMAを用いて行うことができる。
【0035】
1−1−3.ターゲットの構造について
本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの構造は、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなるFePt系合金相中に、実質的にCからなるC相が分散した構造である。そして、当該FePt−C系スパッタリングターゲットの厚さ方向の断面を121μm×97μmの範囲の視野について1000倍の倍率で10箇所撮影して得た10個の画像それぞれにおいて、C相の内接円の直径が大きい方から5番目までのその5つの直径の平均値をC相の大きさ指数aとするとともに、直径が大きい方から5番目までのC相の内接円の中心からそのC相の界面までを結ぶ直線の最大長さLを当該内接円の半径Rで除した値L/Rを、直径が大きい方から5番目までのC相それぞれについて求め、求めた5つの値の平均値をC相の非球形指数bとするとき、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、かつ、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上である。
【0036】
なお、通常得られるターゲットにおいては、前記C相の非球形指数bの前記平均値は通常10.0以下であり、15.0以下となる場合がほとんどであり、最大でも20.0である。
【0037】
本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおいては、前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、該C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金によって覆われやすい適度な大きさになっている。また、前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上であるので、ターゲット中のC相は球形と比べて細長い形状になっており、単位体積当たりの表面積が球形よりも大きくなっている。このため、ターゲット中のC相はマトリックス金属であるFePt系合金との接着が良好になりやすくなっている。
【0038】
このため、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットを用いてのスパッタリング時には、発生するパーティクルの数が少なくなる。このことは、後述する実施例でも実証している。
【0039】
また、ターゲットの相対密度については、その値が大きいほどターゲット中の空隙が減るので、良好にスパッタリングを行う上で好ましい。具体的には、ターゲットの相対密度は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0040】
なお、C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金によってより覆われやすくする観点から、C相の大きさ指数aの平均値は5.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。また、C相の単位体積当たりの表面積をより大きくする観点から、C相の非球形指数bの平均値は5.0以上であることが好ましい。
【0041】
1−1−4.FeおよびPt以外の元素
本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットは、金属元素としてFeおよびPtのみ含んでいるが、FePt系合金相にFeおよびPt以外の元素を含ませてもよい(本第1実施形態の変形例)。
【0042】
この場合、FePt系合金相においてfct(面心直方)構造が確実に発現するようにするという観点から、FePt系合金相は、Ptを33mol%以上60mol%未満、Fe、Pt以外の1種以上の元素を0mol%よりも多く20mol%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の元素の合計が60mol%以下であり、残部が実質的にFeからなるFePt系合金相とすればよい。
【0043】
さらに、この変形例(FePt系合金相にFe、Pt以外の元素を含む例)の場合、FePt系合金相においてfct(面心直方)構造がより確実に発現するようにするという観点から、FePt系合金相におけるPtの含有量は、45〜55mol%であることが好ましく、49〜51mol%であることがさらに好ましい。ただし、FeとPtの合計の含有量が100mol%未満であること、Fe、Pt以外の前記1種以上の元素の合計の含有量が0mol%よりも多く20mol%以下であること、およびFe、Pt以外の前記1種以上の元素の合計とPtとの合計が60mol%以下であることを前提とする。
【0044】
本第1実施形態の変形例において、FePt系合金相に含ませることが可能なFe、Pt以外の元素としては、例えばCu、Ag、Rh、Au、Mn、Ni、Co、Pd、Cr、V、Bを挙げることができ、これらの金属元素のうちの1種だけでなく、2種以上をターゲット中に含ませてもよい。
【0045】
例えばCuを含有させた場合、FePt系合金の結晶構造をfct構造にするための熱処理温度(例えば、600℃)を低下させることができ、スパッタリングをして得られるFePtC系層に対する熱処理のコストを低減させることができる。Cuを含有させることにより、さらには、得られたFePtC系層の結晶構造を、別途の熱処理なしでスパッタリング時に発生する熱によってfct構造にできる可能性もある。
【0046】
1−2.製造方法について
本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットは、例えば、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末、および、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形することにより製造することができる。
【0047】
FePt系合金粉末の平均粒径が60μmを超えると、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくならず、C粒子の周囲をFePt系合金が十分に覆えないおそれがあり、得られるスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行った際に、発生するパーティクル数が多くなるおそれがある。得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲がFePt系合金で十分に覆われるようにする観点から、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるFePt系合金粉末の平均粒径は55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0048】
また、用いるC粉末は、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末である。このようなC粉末を用いることにより、得られるターゲット中のC相の大きさおよび形状が適切なものとなり、後述する実施例で実証しているように、スパッタリング時に発生するパーティクル数が少なくなる。得られるターゲット中のC相の大きさおよび形状を適切なものにして、スパッタリング時に発生するパーティクル数をより少なくする観点から、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるC粉末の平均粒径は10μm以上55μm以下であることが好ましく、12μm以上52μm以下であることがより好ましい。このことは後述する他の製造方法の例においても同様である。
【0049】
ここで、本願では、粉末の平均粒径とは、当該粉末をレーザー回析・散乱法で測定して得た当該粉末に含まれる粒子の体積分布を、粒子の形状を球形と仮定して粒径分布に変換し、その変換して得た粒径分布におけるメディアン径(粒度分布の頻度累積カーブが50%となる粒径)のことである。
【0050】
また、本願では、粒子の平均粒径とは、当該粒子の集団(即ち粉末)をレーザー回析・散乱法で測定して得た当該粒子の集団(即ち粉末)に含まれる粒子の体積分布を、粒子の形状を球形と仮定して粒径分布に変換し、その変換して得た粒径分布におけるメディアン径(粒度分布の頻度累積カーブが50%となる粒径)のことである。
【0051】
また、本願では、「C粒子の形状が非球形」とは、C粒子の表面が滑らかな球面のみから形成されておらず、局部的に凹凸や突起等があり、それらによってマトリックス金属とのアンカー効果が期待できるような形状であることを意味する。
【0052】
FePt系合金粉末とC粉末とを混合して加圧焼結用混合粉末を作製する際の雰囲気は特に限定されず、大気中で混合してもよい。
【0053】
また、FePt系合金粉末に替えて、平均粒径20μm以下のFe単体粉末および平均粒径5μm以下のPt単体粉末を用いてもよい。この場合、FeとPtの合計に対するPtの割合が33mol%以上60mol%以下となるようにFe単体粉末およびPt単体粉末を秤量する。そして、秤量したFe単体粉末、秤量したPt単体粉末、および含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する。
【0054】
得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲がFeおよびPtで十分に覆われるようにする観点から、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるFe単体粉末の平均粒径は15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるPt単体粉末の平均粒径は4μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
【0055】
ただし、Fe単体粉末は活性が高く、大気中で発火するおそれがあるので、取り扱いに際しては十分な注意が必要となる。FeをPtと合金化させてFePt系合金粉末とすることにより、粉末状態であっても活性を低くすることができるので、この点ではFePt系合金粉末を用いる方が好ましい。
【0056】
前記のようにして作製した加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する方法は特に限定されず、例えば、ホットプレス法、熱間等方圧プレス法(HIP法)、放電プラズマ焼結法(SPS法)等を用いることができる。これらの成形方法は本発明の実施に際し、真空中や不活性雰囲気中で実施することが好ましい。これにより、前記加圧焼結用混合粉末中に酸素がある程度含まれていても、得られる焼結体中の酸素量は少なくなる。
【0057】
なお、本第1実施形態の変形例のように、FePt系合金相にFeおよびPt以外の元素を含ませる場合は、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末を用いることに替えて、Ptを33mol%以上60mol%未満、Fe、Pt以外の1種以上の元素を0mol%よりも多く20mol%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の元素の合計が60mol%以下であり、残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末を用いればよく、以降の工程はFePt系合金相にFeおよびPt以外の元素を含ませない場合(本第1実施形態の場合)と同様である。
【0058】
本第1実施形態の変形例のターゲットの製造に際しても、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲がFePt系合金で十分に覆われるようにする観点から、用いる前記FePt系合金粉末の平均粒径は55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0059】
また、本第1実施形態の変形例のターゲットの製造に際し、Ptを含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末と、不可避的不純物を含みFe、Pt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を用いてもよい。
【0060】
この場合、Ptを含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末と、不可避的不純物を含みFe、Pt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を、前記Pt、前記Fe、前記1種以上の元素の総合計に対する前記Ptの割合が33mol%以上60mol%未満、前記総合計に対する前記1種以上の元素の割合が0mol%よりも多く20mol%以下、前記総合計に対する前記Ptと前記1種以上の元素の合計の割合が60mol%以下となるように秤量する。そして、秤量した前記FePt系合金粉末、秤量した前記1種以上の元素からなる粉末、および、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する。
【0061】
この場合においても、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲が前記FePt系合金および前記Fe、Pt以外の1種以上の元素からなる粉末で十分に覆われるようにする観点から、用いる前記FePt系合金粉末の平均粒径は55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、また、前記Fe、Pt以外の1種以上の元素からなる粉末の平均粒径は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0062】
また、本第1実施形態の変形例のターゲットの製造に際し、不可避的不純物を含む平均粒径5μm以下のPt単体粉末、不可避的不純物を含む平均粒径20μm以下のFe単体粉末、ならびに不可避的不純物を含みFeおよびPt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を用いてもよい。
【0063】
この場合、平均粒径5μm以下のPt単体粉末と、平均粒径20μm以下のFe単体粉末と、FeおよびPt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を、前記Pt、前記Fe、前記1種以上の元素の総合計に対する前記Ptの割合が33mol%以上60mol%未満、前記総合計に対する前記1種以上の元素の割合が0mol%よりも多く20mol%以下、前記総合計に対する前記Ptと前記1種以上の元素の合計の割合が60mol%以下となるように秤量する。そして、秤量した前記Pt単体粉末、秤量した前記Fe単体粉末、秤量した前記1種以上の元素からなる粉末、および、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する。
【0064】
この場合においても、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲が前記Pt単体粉末、前記Fe単体粉末、ならびに前記FeおよびPt以外の1種以上の元素からなる粉末で十分に覆われるようにする観点から、用いる前記Pt単体粉末の平均粒径は4μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、また、前記Fe単体粉末の平均粒径は15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、また、前記FeおよびPt以外の1種以上の元素からなる粉末の平均粒径は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0065】
1−3.効果について
本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの構造は、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなるFePt系合金相中に、実質的にCからなるC相が分散した構造である。そして、当該FePt−C系スパッタリングターゲットの厚さ方向の断面を121μm×97μmの範囲の視野について1000倍の倍率で10箇所撮影して得た10個の画像それぞれにおいて、C相の内接円の直径が大きい方から5番目までのその5つの直径の平均値をC相の大きさ指数aとするとともに、直径が大きい方から5番目までのC相の内接円の中心からそのC相の界面までを結ぶ直線の最大長さLを当該内接円の半径Rで除した値L/Rを、直径が大きい方から5番目までのC相それぞれについて求め、求めた5つの値の平均値をC相の非球形指数bとするとき、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、かつ、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上である。
【0066】
本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおいては、前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、該C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金によって覆われやすい適度な大きさになっている。また、前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上であるので、ターゲット中のC相は球形と比べて細長い形状になっており、単位体積当たりの表面積が球形よりも大きくなっている。このため、ターゲット中のC相はマトリックス金属であるFePt系合金との接着が良好になりやすくなっている。
【0067】
したがって、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットを用いてのスパッタリング時には、発生するパーティクルの数が少なくなる。このことは、後述する実施例でも実証している。
【0068】
また、本第1実施形態の製造方法では鋳造法ではなく焼結法を用いているため、ターゲット全体に対するCの含有量を多くすることができ、Cのターゲット全体に対する含有割合が10mol%以上60mol%以下であるFePt−C系スパッタリングターゲットを作製することができる。このため、本第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、単独で、即ち複数のターゲットを用いることなく当該ターゲット1枚で、磁気記録媒体として使用可能な程度にCを多く含有する、FePt系合金を含む薄膜を形成することができる。
【0069】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットについて説明するが、第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットと同様の内容については適宜説明を省略する。
【0070】
2−1.スパッタリングターゲットの構成成分および構造
第1実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットでは、合金成分(Fe、Pt)以外の含有物はC(炭素)であったが、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットでは、合金成分(Fe、Pt)以外の含有物はC(炭素)と金属酸化物である。
【0071】
即ち、本発明の第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットは、Fe、Pt、Cおよび酸化物を含有するFePt−C系スパッタリングターゲットであって、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなるFePt系合金相中に、実質的にCからなるC相および実質的に酸化物からなる酸化物相が分散した構造を有し、当該FePt−C系スパッタリングターゲットの厚さ方向の断面を121μm×97μmの範囲の視野について1000倍の倍率で10箇所撮影して得た10個の画像それぞれにおいて、C相の内接円の直径が大きい方から5番目までのその5つの直径の平均値をC相の大きさ指数aとするとともに、直径が大きい方から5番目までのC相の内接円の中心からそのC相の界面までを結ぶ直線の最大長さLを当該内接円の半径Rで除した値L/Rを、直径が大きい方から5番目までのC相それぞれについて求め、求めた5つの値の平均値をC相の非球形指数bとするとき、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、かつ、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上であることを特徴とする。
【0072】
2−1−1.FePt系合金について
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおけるFePt系合金について説明すべき内容は、第1実施形態の「1−1−1.FePt系合金について」で説明した内容と同様であるので、説明は省略する。
【0073】
2−1−2.Cおよび酸化物について
C(炭素)および酸化物は、スパッタリングにより得られるFePtC系層中において、磁性粒子であるFePt系合金粒子同士を仕切る隔壁となり、FePtC系層中におけるFePt系合金粒子を小さく均一にする役割を有し、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおいて主成分の1つとなる。
【0074】
C(炭素)相に含まれるCおよび酸化物相に含まれる酸化物の合計のターゲット全体に対する含有割合は10〜60mol%とすることが好ましく、C(炭素)相に含まれるCおよび酸化物相に含まれる酸化物の合計のターゲット全体に対する含有割合を10〜60mol%とすることにより、スパッタリングにより得られるFePtC系層中において、C(炭素)および酸化物が磁性粒子であるFePt系合金粒子同士を仕切る隔壁となって、FePt系合金粒子を小さく均一にする効果を発現させる確実性を高めることができる。C(炭素)相に含まれるCおよび酸化物相に含まれる酸化物の合計の含有割合が10mol%未満ではこの効果が十分に発現しないおそれがある。一方、C(炭素)相に含まれるCおよび酸化物相に含まれる酸化物の合計の含有割合が60mol%を超えると、スパッタリングにより得られるFePtC系層中において、FePtC系層における単位体積当たりのFePt系合金粒子の数が少なくなり、記憶容量の点で不利となる。FePtC系層中においてFePt系合金粒子を小さく均一にする効果を発現させる確実性を高める観点および形成するFePtC系層の記憶容量の観点から、C(炭素)相に含まれるCおよび酸化物相に含まれる酸化物の合計のターゲット全体に対する含有割合は15〜55mol%であることがより好ましく、20〜50mol%であることがさらに好ましく、25〜45mol%であることが特に好ましい。
【0075】
ただし、ターゲットに含まれるCと酸化物とのバランスの観点から、Cのターゲット全体に対する含有割合は、5〜50mol%であることが好ましく、10〜45mol%であることがより好ましく、15〜40mol%であることがさらに好ましく、20〜35mol%であることが特に好ましく、酸化物のターゲット全体に対する含有割合は、1〜25mol%であることが好ましく、3〜22mol%であることがより好ましく、5〜19mol%であることがさらに好ましく、7〜16mol%であることが特に好ましい。
【0076】
本第2実施形態において、酸化物としては、例えば、SiO
2、TiO
2、Ti
2O
3、Ta
2O
5、Cr
2O
3、CoO、Co
3O
4、B
2O
3、Fe
2O
3、Fe
3O
4、CuO、Cu
2O、Y
2O
3、MgO、Al
2O
3、ZrO
2、Nb
2O
5、MoO
3、CeO
2、Sm
2O
3、Gd
2O
3、WO
2、WO
3、HfO
2、NiO
2のうちの少なくとも1種を含む酸化物を用いることができる。
【0077】
なお、ターゲット中において、C(炭素)相および酸化物相の特定はEPMAを用いて行うことができる。
【0078】
2−1−3.ターゲットの構造について
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの構造は、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなるFePt系合金相中に、実質的にCからなるC相および実質的に酸化物からなる酸化物相が分散した構造である。そして、当該FePt−C系スパッタリングターゲットの厚さ方向の断面を121μm×97μmの範囲の視野について1000倍の倍率で10箇所撮影して得た10個の画像それぞれにおいて、C相の内接円の直径が大きい方から5番目までのその5つの直径の平均値をC相の大きさ指数aとするとともに、直径が大きい方から5番目までのC相の内接円の中心からそのC相の界面までを結ぶ直線の最大長さLを当該内接円の半径Rで除した値L/Rを、直径が大きい方から5番目までのC相それぞれについて求め、求めた5つの値の平均値をC相の非球形指数bとするとき、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、かつ、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上である。
【0079】
なお、通常得られるターゲットにおいては、前記C相の非球形指数bの前記平均値は通常10.0以下であり、15.0以下となる場合がほとんどであり、最大でも20.0である。
【0080】
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおいては、前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、該C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金によって覆われやすい適度な大きさになっている。また、前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上であるので、ターゲット中のC相は球形と比べて細長い形状になっており、単位体積当たりの表面積が球形よりも大きくなっている。このため、ターゲット中のC相と酸化物相とを合わせた相はマトリックス金属であるFePt系合金との接着が良好になりやすくなっている。
【0081】
このため、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットを用いてのスパッタリング時には、発生するパーティクルの数が少なくなる。このことは、後述する実施例でも実証している。
【0082】
なお、酸化物相はFePt系合金相中に1μm程度以下の大きさで微細分散しており、パーティクルの発生原因とはほとんどならない。
【0083】
また、ターゲットの相対密度については、その値が大きいほどターゲット中の空隙が減るので、良好にスパッタリングを行う上で好ましい。具体的には、ターゲットの相対密度は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0084】
なお、C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金によってより覆われやすくする観点から、C相の大きさ指数aの平均値は5.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。また、C相の単位体積当たりの表面積をより大きくする観点から、C相の非球形指数bの平均値は5.0以上であることが好ましい。
【0085】
2−1−4.FeおよびPt以外の元素
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットは、金属元素としてFeおよびPtのみ含んでいるが、FePt系合金相にFeおよびPt以外の元素を含ませてもよい(本第2実施形態の変形例)。
【0086】
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおけるFePt系合金相に含ませるFeおよびPt以外の元素について説明すべき内容は、第1実施形態の「1−1−4.FeおよびPt以外の元素」で説明した内容と同様であるので、説明は省略する。
【0087】
2−2.製造方法について
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットは、例えば、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末、および、酸化物粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形することにより製造することができる。
【0088】
FePt系合金粉末の平均粒径が60μmを超えると、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくならず、C粒子の周囲をFePt系合金が十分に覆えないおそれがあり、得られるスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行った際に、発生するパーティクル数が多くなるおそれがある。得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲がFePt系合金で十分に覆われるようにする観点から、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるFePt系合金粉末の平均粒径は55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0089】
また、用いるC粉末は、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末である。酸化物粉末は、例えば、平均粒径0.01〜20μmのものを用いることができる。このようなC粉末および酸化物粉末を用いることにより、得られるターゲット中のC相の大きさおよび形状が適切なものとなり、後述する実施例で実証しているように、スパッタリング時に発生するパーティクル数が少なくなる。得られるターゲット中のC相の大きさおよび形状を適切なものにして、スパッタリング時に発生するパーティクル数をより少なくする観点から、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるC粉末の平均粒径は10μm以上55μm以下であることがより好ましく、12μm以上52μm以下であることが特に好ましい。このことは後述する他の製造方法の例においても同様である。
【0090】
FePt系合金粉末とC粉末および酸化物粉末とを混合して加圧焼結用混合粉末を作製する際の雰囲気は特に限定されず、大気中で混合してもよい。
【0091】
また、加圧焼結用混合粉末作製時の雰囲気に酸素を含ませた場合には、混合中に酸化物粉末が還元されることを抑制できるので、混合中に酸化物粉末由来の金属がFePt系合金粉末中に混入されることを抑制することができ、得られたFePt−C系スパッタリングターゲットを用いて作製したFePtC系薄膜は安定した磁気記録特性を発揮しやすくなる。
【0092】
また、FePt系合金粉末に替えて、平均粒径20μm以下のFe単体粉末および平均粒径5μm以下のPt単体粉末を用いてもよい。この場合、FeとPtの合計に対するPtの割合が33mol%以上60mol%以下となるようにFe単体粉末およびPt単体粉末を秤量する。そして、秤量したFe単体粉末、秤量したPt単体粉末、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末、および、酸化物粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する。
【0093】
得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲がFeおよびPtで十分に覆われるようにする観点から、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるFe単体粉末の平均粒径は15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの製造に用いるPt単体粉末の平均粒径は4μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
【0094】
ただし、Fe単体粉末は活性が高く、大気中で発火するおそれがあるので、取り扱いに際しては十分な注意が必要となる。FeをPtと合金化させてFePt系合金粉末とすることにより、粉末状態であっても活性を低くすることができるので、この点ではFePt系合金粉末を用いる方が好ましい。
【0095】
本第2実施形態において、酸化物粉末としては、例えば、SiO
2、TiO
2、Ti
2O
3、Ta
2O
5、Cr
2O
3、CoO、Co
3O
4、B
2O
3、Fe
2O
3、Fe
3O
4、CuO、Cu
2O、Y
2O
3、MgO、Al
2O
3、ZrO
2、Nb
2O
5、MoO
3、CeO
2、Sm
2O
3、Gd
2O
3、WO
2、WO
3、HfO
2、NiO
2のうちの少なくとも1種を含む酸化物粉末を用いることができる。
【0096】
前記のようにして作製した加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する方法は特に限定されず、例えば、ホットプレス法、熱間等方圧プレス法(HIP法)、放電プラズマ焼結法(SPS法)等を用いることができる。これらの成形方法は本発明の実施に際し、真空中や不活性雰囲気中で実施することが好ましい。これにより、前記加圧焼結用混合粉末中に酸素がある程度含まれていても、得られる焼結体中の酸素量は少なくなる。
【0097】
なお、本第2実施形態の変形例のように、FePt系合金相にFeおよびPt以外の元素を含ませる場合は、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末を用いることに替えて、Ptを33mol%以上60mol%未満、Fe、Pt以外の1種以上の元素を0mol%よりも多く20mol%以下含有し、かつ、Ptと前記1種以上の元素の合計が60mol%以下であり、残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末を用いればよく、以降の工程はFePt系合金相にFeおよびPt以外の元素を含ませない場合(本第2実施形態の場合)と同様である。
【0098】
本第2実施形態の変形例のターゲットの製造に際しても、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲がFePt系合金で十分に覆われるようにする観点から、用いる前記FePt系合金粉末の平均粒径は55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0099】
また、本第2実施形態の変形例のターゲットの製造に際し、Ptを含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末と、不可避的不純物を含みFe、Pt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を用いてもよい。
【0100】
この場合、Ptを含有して残部が実質的にFeからなる平均粒径60μm以下のFePt系合金粉末と、不可避的不純物を含みFe、Pt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を、前記Pt、前記Fe、前記1種以上の元素の総合計に対する前記Ptの割合が33mol%以上60mol%未満、前記総合計に対する前記1種以上の元素の割合が0mol%よりも多く20mol%以下、前記総合計に対する前記Ptと前記1種以上の元素の合計の割合が60mol%以下となるように秤量する。そして、秤量した前記FePt系合金粉末、秤量した前記1種以上の元素からなる粉末、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末、および、酸化物粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する。
【0101】
この場合においても、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲が前記FePt系合金および前記Fe、Pt以外の1種以上の元素からなる粉末で十分に覆われるようにする観点から、用いる前記FePt系合金粉末の平均粒径は55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、また、前記Fe、Pt以外の1種以上の元素からなる粉末の平均粒径は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0102】
また、本第2実施形態の変形例のターゲットの製造に際し、不可避的不純物を含む平均粒径5μm以下のPt単体粉末、不可避的不純物を含む平均粒径20μm以下のFe単体粉末、ならびに不可避的不純物を含みFeおよびPt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を用いてもよい。
【0103】
この場合、平均粒径5μm以下のPt単体粉末と、平均粒径20μm以下のFe単体粉末と、FeおよびPt以外の1種以上の元素からなる平均粒径30μm以下の粉末を、前記Pt、前記Fe、前記1種以上の元素の総合計に対する前記Ptの割合が33mol%以上60mol%未満、前記総合計に対する前記1種以上の元素の割合が0mol%よりも多く20mol%以下、前記総合計に対する前記Ptと前記1種以上の元素の合計の割合が60mol%以下となるように秤量する。そして、秤量した前記Pt単体粉末、秤量した前記Fe単体粉末、秤量した前記1種以上の元素からなる粉末、含まれるC粒子の平均粒径が8μm以上60μm以下で、かつ、含まれるC粒子の形状が非球形であるC粉末、および、酸化物粉末を混合して、加圧焼結用混合粉末を作製した後、作製した該加圧焼結用混合粉末を加圧下で加熱して成形する。
【0104】
この場合においても、得られるターゲットの相対密度が十分に大きくなるようにして、C粒子の周囲が前記Pt単体粉末、前記Fe単体粉末、ならびに前記FeおよびPt以外の1種以上の元素からなる粉末で十分に覆われるようにする観点から、用いる前記Pt単体粉末の平均粒径は4μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、また、前記Fe単体粉末の平均粒径は15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、また、前記FeおよびPt以外の1種以上の元素からなる粉末の平均粒径は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0105】
2−3.効果について
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットの構造は、Ptを33mol%以上60mol%以下含有して残部が実質的にFeからなるFePt系合金相中に、実質的にCからなるC相および実質的に酸化物からなる酸化物相が分散した構造である。そして、当該FePt−C系スパッタリングターゲットの厚さ方向の断面を121μm×97μmの範囲の視野について1000倍の倍率で10箇所撮影して得た10個の画像それぞれにおいて、C相の内接円の直径が大きい方から5番目までのその5つの直径の平均値をC相の大きさ指数aとするとともに、直径が大きい方から5番目までのC相の内接円の中心からそのC相の界面までを結ぶ直線の最大長さLを当該内接円の半径Rで除した値L/Rを、直径が大きい方から5番目までのC相それぞれについて求め、求めた5つの値の平均値をC相の非球形指数bとするとき、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、かつ、前記10個の画像それぞれにおいて求めた前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上である。
【0106】
本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットにおいては、前記C相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、該C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金によって覆われやすい適度な大きさになっている。また、前記C相の非球形指数bの平均値が3.0以上であるので、ターゲット中のC相は球形と比べて細長い形状になっており、単位体積当たりの表面積が球形よりも大きくなっている。このため、ターゲット中のC相はマトリックス金属であるFePt系合金との接着が良好になりやすくなっている。
【0107】
したがって、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットを用いてのスパッタリング時には、発生するパーティクルの数が少なくなる。このことは、後述する実施例でも実証している。
【0108】
また、本第2実施形態の製造方法では鋳造法ではなく焼結法を用いているため、ターゲット全体に対するCおよび酸化物の合計の含有量を多くすることができ、Cおよび酸化物の合計のターゲット全体に対する含有割合が10mol%以上60mol%以下であるFePt−C系スパッタリングターゲットを作製することができる。このため、本第2実施形態に係るFePt−C系スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、単独で、即ち複数のターゲットを用いることなく当該ターゲット1枚で、磁気記録媒体として使用可能な程度にCおよび酸化物を多く含有する、FePt系合金を含む薄膜を形成することができる。
【実施例】
【0109】
(実施例1)
本実施例1における混合粉末、焼結体およびターゲットの組成の目標は60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cである。即ち、金属成分の組成の目標は50mol%Fe−50mol%Ptであり、FePt合金とC(炭素)の組成比の目標は、FePt合金が60.5mol%、Cが39.5mol%である。
【0110】
平均粒径6.75μmのFe粉129.32gに、平均粒径1.17μmのPt粉451.73gと、平均粒径12.17μmの非球形C粉末36.31gとを添加して、ボールを用いた混合機で300rpmで30分間混合して、加圧焼結用混合粉末を得た。
【0111】
得られた加圧焼結用混合粉末を、温度:1150℃、圧力:30.6MPa、時間:60min、雰囲気:5×10
-2Pa以下の真空中の条件でホットプレスを行い、焼結体を作製した。
【0112】
作製した焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、その測定値を理論密度で除して相対密度を求めたところ、95.82%であった。
【0113】
また、作製した焼結体中の炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で、酸素および窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定したところ、炭素の含有量は5.98質量%、酸素の含有量は298質量ppm、窒素の含有量は8質量ppmであった。
【0114】
なお、加圧焼結用混合粉末を加圧焼結してターゲットを作製する際にC(炭素)の一部が酸素と反応して、得られるターゲットにおいてFePt合金とC(炭素)の組成比は目標値から少しずれる。このため、本実施例1では、このC(炭素)の変動分を考慮して(HORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した炭素の含有量に基づいて)、得られた焼結体の相対密度を算出しており、前記した相対密度95.82%もそのようにして計算した値である。本明細書における他の実施例および比較例においても、相対密度はC(炭素)の変動分を考慮して(HORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した炭素の含有量に基づいて)算出した値である。
【0115】
得られた本実施例1の焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。具体的には、本実施例1の焼結体の厚さ方向の断面(ホットプレス時の加圧方向の焼結体断面)における10箇所について、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、10枚のSEM写真を得た。撮影した10枚のSEM写真は、いずれも、121μm×97μmの視野を1000倍の倍率で撮影したSEM写真である。撮影して得た10枚のSEM写真のうちの1枚を、
図1に示す。
図1に示す写真中の縮尺目盛りは10μmである。
【0116】
図1において、灰色の相がFePt合金相であり、黒色の相がC(炭素)相である。
【0117】
C(炭素)相の大きさおよび形状の評価を行いやすくするために、撮影した10枚のSEM写真それぞれについて、2値化処理を行い、10枚の2値化処理画像を得た。
図2は、
図1に示すSEM写真の2値化処理を行った後の画像であり、白色の相がFePt合金相であり、黒色の相がC(炭素)相である。
【0118】
焼結体断面における10箇所についての2値化処理画像10枚を用いて、C(炭素)相の大きさおよび形状の評価を行った。その評価をする際の手順(1)〜(6)を以下説明する。
【0119】
(1)まず、得られた焼結体の厚さ方向の断面(ホットプレス時の加圧方向の焼結体断面)における10箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影して、10個の走査型電子顕微鏡像(10枚のSEM写真)を取得する。これらの10枚のSEM写真は、いずれも121μm×97μmの視野を1000倍の倍率で撮影したSEM写真とする。
【0120】
(2)得られた10枚のSEM写真を2値化処理して、C相の界面を判別しやすいようにした10個の2値化処理画像を得る。より詳細には、画像処理ソフトImageJ 1.44oを用いて2値化処理を行うが、その際、2値化条件(Threshold)をDefaultとしMake Binaryで2値化を行う。また、C相の中のノイズ輝点を除去(Remove Outliers(Radius:3.0pixels, Threshold:50))する。これらの処理を行って、10個の2値化処理画像を得る。
【0121】
(3)10個の2値化処理画像それぞれにおいて、FePt合金相を内側に含まずC(炭素)相のみを内側に含み、かつ、C(炭素)相の界面に内接する「C相の内接円」を、直径の大きい方から5つ選び出す。そして、10個の2値化処理画像それぞれにおいて、選び出した5つの内接円の直径の平均値を求め、C相の大きさ指数aとする。
図2は、2値化処理画像に、直径の大きい方から5つだけ、C(炭素)相の界面に内接する内接円を記載している一例であり、当該内接円には斜線を引いている。また、
図2に記載の内接円の1つを含む領域を拡大して示す2値化処理画像を
図3に示す。
【0122】
ここで、本願でいう「C相の内接円」について定義しておく。
図4は、本願でいう「C相の内接円」の定義について説明するための図である。本願でいう「C相の内接円」とは、前記2値化処理画像におけるC相の界面に外接する内接円のことである。ここで、1つのC相に複数の内接円を描いてもよいが、その場合、1つのC相に描く内接円同士は、接触しないように描くか、あるいはお互いに外接(
図4(A)参照)するように描く必要があり、お互いに内接(
図4(B)参照)するように描くことはできず、また、お互いに交差(
図4(C)参照)するように描くことはできず、また、一方が他方を内包(
図4(D)参照)するように描くことはできない。
【0123】
(4)10個の2値化処理画像それぞれにおいて、直径が大きい方から5番目までのC相の内接円の中心からそのC相の界面までを結ぶ直線の最大長さLを求める。
図2は、それぞれの内接円の中心から、C(炭素)相の界面に向かって伸ばした最大長さLの直線を記載している一例である。
【0124】
(5)10個の2値化処理画像それぞれにおいて、前記最大長さLを当該内接円の半径Rで除した値L/Rを、直径が大きい方から5番目までのC相それぞれについて求め、求めた5つの値の平均値をC相の非球形指数bとする。
【0125】
(6)10個の2値化処理画像それぞれについて前記(3)で求めたC相の大きさ指数aを平均して、その平均値を求めるとともに、10個の2値化処理画像それぞれについて前記(5)で求めたC相の非球形指数bを平均して、その平均値を求める。
【0126】
本実施例1の焼結体において、前記手順(1)〜(6)によって求めたC相の大きさ指数aの平均値は5.3μmであった。また、前記手順(1)〜(6)によって求めたC相の非球形指数bの平均値は4.5であった。
【0127】
次に、得られた焼結体を用いて、直径153mm、厚さ2mmのスパッタリングターゲットを作製し、直径161mm、厚さ4mmのCu製バッキングプレートと接合した。接合後のスパッタリングターゲットをスパッタリング装置にセットし、出力500W、チャンバー内Arガス圧1Paにてスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。具体的には、スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でスパッタリングをいったん止め、各時点で直径2.5インチの円形のガラス基板をスパッタリング装置にセットし、20秒間スパッタリングを行った。ここで、スパッタリング累積継続時間とは、スパッタリングを行った累計の時間のことである。
【0128】
そして、前記の各時点で20秒間スパッタリングを行った直径2.5インチの円形のガラス基板をスパッタリング装置から取り出し、光学的表面分析装置(オプティカルサーフェスアナライザー)にセットして、パーティクル発生数を計測した。各時点でのスパッタリング後のパーティクル数から予めカウントしてあるスパッタリング前のパーティクル数を差し引いて得られた数を10分の1にして、各時点でのパーティクル発生数とした。即ち、20秒間スパッタリングを行って発生したパーティクル数の10分の1を各時点でのパーティクル発生数とした。これは、ハードディスクの磁性相を形成する際のスパッタリング時間が2秒間程度であることに合わせたものである。
【0129】
スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ33、49、62、80であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
図5、
図6の横軸はスパッタリング累積継続時間(h)であり、縦軸がパーティクル発生数(個)である。
図5と
図6は縦軸の目盛りの刻みが異なっており、
図5は縦軸の目盛りの刻みが大きく、
図6は縦軸の目盛りの刻みが小さくなっている。
【0130】
なお、焼結体の厚さ方向の断面(ホットプレス時の加圧方向の焼結体断面)は、スパッタリングターゲットについて言えば、スパッタリングターゲットの厚さ方向の断面のことである。このことは以下に記載する実施例2〜4、比較例1〜3においても同様である。
【0131】
(実施例2)
本実施例2では、実施例1で用いた平均粒径12.17μmの非球形C粉末36.31gに替えて、平均粒径19.93μmの非球形C粉末36.31gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、焼結体およびスパッタリングターゲットを作製した。目標とする焼結体およびスパッタリングターゲットの組成は、実施例1と同様に、60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cである。
【0132】
作製した焼結体の相対密度を実施例1と同様に測定したところ、95.20%であった。
【0133】
また、作製した焼結体中の炭素、酸素および窒素の含有量を実施例1と同様に測定したところ、炭素の含有量は6.01質量%、酸素の含有量は199質量ppm、窒素の含有量は14質量ppmであった。
【0134】
本実施例2の焼結体において、実施例1と同様にして求めたC相の大きさ指数aの平均値は6.3μmであった。また、実施例1と同様にして求めたC相の非球形指数bの平均値は5.2であった。
【0135】
また、本実施例2においても実施例1と同様に、得られた焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製してスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ152、62、48、48であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
【0136】
(実施例3)
本実施例3では、実施例1で用いた平均粒径12.17μmの非球形C粉末36.31gに替えて、平均粒径51.01μmの非球形C粉末36.31gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、焼結体およびスパッタリングターゲットを作製した。目標とする焼結体およびスパッタリングターゲットの組成は、実施例1と同様に、60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cである。
【0137】
作製した焼結体の相対密度を実施例1と同様に測定したところ、96.54%であった。
【0138】
また、作製した焼結体中の炭素、酸素および窒素の含有量を実施例1と同様に測定したところ、炭素の含有量は5.99質量%、酸素の含有量は264質量ppm、窒素の含有量は10質量ppmであった。
【0139】
本実施例3の焼結体において、実施例1と同様にして求めたC相の大きさ指数aの平均値は7.6μmであった。また、実施例1と同様にして求めたC相の非球形指数bの平均値は6.0であった。
【0140】
また、本実施例3においても実施例1と同様に、得られた焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製してスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ68、67、52、55であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
【0141】
(実施例4)
本実施例4における混合粉末、焼結体およびターゲットの組成の目標は60(50Fe−50Pt)−30C−10SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50mol%Fe−50mol%Ptであり、FePt合金とC(炭素)とSiO
2の組成比の目標は、FePt合金が60mol%、Cが30mol%、SiO
2が10mol%である。
【0142】
本実施例4で用いたC粉末は、実施例2で用いたC粉末と同様であり、平均粒径19.93μmの非球形C粉末である。本実施例4においてはそのC粉末を17.46g用いた。
【0143】
また、本実施例4では、平均粒径0.7μmのSiO
2粉末を用いた。
【0144】
本実施例4に係る焼結体およびスパッタリングターゲットの作製に際し、まず、ガスアトマイズ法を用いてFePt合金粉を作製した。
【0145】
作製したFePt合金粉740.00gにSiO
2粉末59.07gを添加し、ボールを用いた混合機で462rpmで57時間混合し、第1の混合粉末を得た。
【0146】
得られた第1の混合粉末394.00gにC粉末17.46gを添加し、ボールを用いた混合機で300rpmで30分間混合して、加圧焼結用混合粉末を得た。
【0147】
得られた加圧焼結用混合粉末を、温度:1100℃、圧力:30.6MPa、時間:60min、雰囲気:5×10
-2Pa以下の真空中の条件でホットプレスを行い、焼結体を作製した。
【0148】
作製した焼結体の相対密度を実施例1と同様に測定したところ、94.37%であった。
【0149】
また、作製した焼結体中の炭素、酸素および窒素の含有量を実施例1と同様に測定したところ、炭素の含有量は3.88質量%、酸素の含有量は3.68質量%、窒素の含有量は8質量ppmであった。
【0150】
本実施例4の焼結体において、C相の大きさ指数aの平均値は5.4μmであった。また、C相の非球形指数bの平均値は5.6であった。
【0151】
また、本実施例4においても実施例1と同様に、得られた焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製してスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ13、13、18、17であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
【0152】
(比較例1)
本比較例1では、実施例1で用いた平均粒径12.17μmの非球形C粉末36.31gに替えて、平均粒径6.63μmの球形C粉末36.31gを用いたこと、および、得られた加圧焼結用混合粉末を1100℃でホットプレスしたこと以外は実施例1と同様にして、焼結体およびスパッタリングターゲットを作製した。目標とする焼結体およびスパッタリングターゲットの組成は、実施例1と同様に、60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cである。
【0153】
作製した焼結体の相対密度を実施例1と同様に測定したところ、96.07%であった。
【0154】
また、作製した焼結体中の炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で、酸素および窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定したところ、炭素の含有量は6.07質量%、酸素の含有量は377質量ppm、窒素の含有量は14質量ppmであった。
【0155】
得られた本実施例1の焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。具体的には、本比較例1の焼結体の厚さ方向の断面(ホットプレス時の加圧方向の焼結体断面)における10箇所について、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、10枚のSEM写真を得た。撮影した10枚のSEM写真は、いずれも、121μm×97μmの視野を1000倍の倍率で撮影したSEM写真である。撮影して得た10枚のSEM写真のうちの1枚を、
図7に示す。
図7に示す写真中の縮尺目盛りは10μmである。
【0156】
図7において、灰色の相がFePt合金相であり、黒色の相がC(炭素)相である。
【0157】
C(炭素)相の大きさおよび形状の評価を行いやすくするために、撮影した10枚のSEM写真それぞれについて、2値化処理を行い、10個の2値化処理画像得た。
図8は、
図7に示すSEM写真の2値化処理を行った後の画像であり、白色の相がFePt合金相であり、黒色の相がC(炭素)相である。
図8において、直径の大きい方から5つだけ、C(炭素)相の界面に内接する内接円を記載しており、当該内接円には斜線を引いている。また、
図8に記載の内接円の1つを含む領域を拡大して示す2値化処理画像を
図9に示す。
【0158】
本比較例1の焼結体において、実施例1と同様にして求めたC相の大きさ指数aの平均値は6.6μmであった。また、実施例1と同様にして求めたC相の非球形指数bの平均値は2.0であった。
【0159】
また、本比較例1においても実施例1と同様に、得られた焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製してスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ340、156、320、186であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
【0160】
(比較例2)
本比較例2では、実施例1で用いた平均粒径12.17μmの非球形C粉末36.31gに替えて、平均粒径22.55μmの球形C粉末36.31gを用いたこと、および、得られた加圧焼結用混合粉末を1050℃でホットプレスしたこと以外は実施例1と同様にして、焼結体およびスパッタリングターゲットを作製した。目標とする焼結体およびスパッタリングターゲットの組成は、実施例1と同様に、60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cである。
【0161】
作製した焼結体の相対密度を実施例1と同様に測定したところ、97.11%であった。
【0162】
また、作製した焼結体中の炭素、酸素および窒素の含有量を実施例1と同様に測定したところ、炭素の含有量は5.90質量%、酸素の含有量は264質量ppm、窒素の含有量は28質量ppmであった。
【0163】
本比較例2の焼結体において、実施例1と同様にして求めたC相の大きさ指数aの平均値は9.7μmであった。また、実施例1と同様にして求めたC相の非球形指数bの平均値は2.5であった。
【0164】
また、本比較例2においても実施例1と同様に、得られた焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製してスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ842、265、108、110であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
【0165】
(比較例3)
本比較例3では、実施例1で用いた平均粒径12.17μmの非球形C粉末36.31gに替えて、平均粒径5.09μmの非球形C粉末36.31gを用いたこと、および、得られた加圧焼結用混合粉末を1300℃でホットプレスしたこと以外は実施例1と同様にして、焼結体およびスパッタリングターゲットを作製した。目標とする焼結体およびスパッタリングターゲットの組成は、実施例1と同様に、60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cである。
【0166】
作製した焼結体の相対密度を実施例1と同様に測定したところ、94.37%であった。
【0167】
また、作製した焼結体中の炭素、酸素および窒素の含有量を実施例1と同様に測定したところ、炭素の含有量は5.91質量%、酸素の含有量は211質量ppm、窒素の含有量は18質量ppmであった。
【0168】
本比較例3の焼結体において、実施例1と同様にして求めたC相の大きさ指数aの平均値は3.7μmであった。また、実施例1と同様にして求めたC相の非球形指数bの平均値は3.9であった。
【0169】
また、本比較例3においても実施例1と同様に、得られた焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製してスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ165、236、305、360であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
【0170】
(比較例4)
本比較例4において、目標とする焼結体およびスパッタリングターゲットの組成は、実施例1と同様に、60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cである。
【0171】
本比較例4で用いたC粉末は、1次粒子の平均粒径(メディアン径)が30nm(カタログ値)で2次粒子が形成されているカーボンブラックであり、個々のC粒子の形状は非球形である。本比較例4においてはそのC粉末を62.50g用いた。
【0172】
本比較例4に係る焼結体およびスパッタリングターゲットの作製に際し、まず、ガスアトマイズ法を用いてFePt合金粉を作製した。得られたFePt合金粉の平均粒径は45μmであった。
【0173】
作製したFePt合金粉1000.00gにC粉末62.50gを添加し、ボールを用いた混合機で462rpmで24時間混合して、加圧焼結用混合粉末を得た。
【0174】
得られた加圧焼結用混合粉末を、温度:1460℃、圧力:26.2MPa、時間:60min、雰囲気:5×10
-2Pa以下の真空中の条件でホットプレスを行い、焼結体を作製した。
【0175】
作製した焼結体の相対密度を実施例1と同様に測定したところ、96.12%であった。
【0176】
また、作製した焼結体中の炭素、酸素および窒素の含有量を実施例1と同様に測定したところ、炭素の含有量は5.72質量%、酸素の含有量は23質量ppm、窒素の含有量は10質量ppmであった。
【0177】
本比較例4の焼結体において、実施例1と同様にして求めたC相の大きさ指数aの平均値は0.8μmであった。また、実施例1と同様にして求めたC相の非球形指数bの平均値は3.5であった。
【0178】
また、本比較例4においても実施例1と同様に、得られた焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製してスパッタリングを行い、発生するパーティクル数の評価を行った。スパッタリング累積継続時間15分、30分、1時間、2時間の各時点でのパーティクル発生数は、それぞれ3019、3587、5803、4807であった。それらの値をプロットしたグラフを他の実施例および比較例における結果とともに
図5、
図6に示す。
【0179】
図5および
図6に示すように、本比較例4のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行ったときに発生するパーティクルの数は実施例1〜4および比較例1〜3と比べて非常に多くなっている。本比較例4においては、用いたC粉末は1次粒子の平均粒径(メディアン径)が20〜50nm程度(カタログ値30nm)と極めて小さいカーボンブラックであり、2次粒子を形成しており、FePt合金相中においても2次粒子を形成していると考えられる。2次粒子のCは1次粒子のCが圧粉された状態であり、2次粒子の内部の1次粒子のCは周囲をFePt合金に覆われていないため、スパッタリングの最中に塊の状態でターゲットから抜け落ちやすく、パーティクルになりやすいと考えられる。このため、本比較例4のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行ったときに発生するパーティクルの数は実施例1〜4および比較例1〜3と比べて非常に多くなったものと考えられる。
【0180】
(考察)
実施例1〜4、比較例1〜4についての主要なデータを次の表1にまとめて示す。ターゲットの組成は、実施例1〜3、比較例1〜4については、60.5(50Fe−50Pt)−39.5Cであり、実施例4のみ、60(50Fe−50Pt)−30C−10SiO
2である。
【0181】
【表1】
【0182】
本発明の範囲に含まれる実施例1〜4では、焼結体中のC相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であり、かつ、焼結体中のC相の非球形指数bの平均値が3.0以上である。
【0183】
実施例1〜4においては、焼結体中のC相の大きさ指数aの平均値が4.0μm以上9.0μm以下であるので、該C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金によって覆われやすい適度な大きさになっている。また、焼結体中のC相の非球形指数bの平均値が3.0以上であるので、ターゲット中のC相は球形と比べて細長い形状になっており、単位体積当たりの表面積が球形よりも大きくなっている。このため、ターゲット中のC相はマトリックス金属であるFePt系合金との接着が良好になりやすくなっている。
【0184】
このため、実施例1〜4においては、発生するパーティクルの数が少なくなったものと考えられる。
【0185】
一方、比較例1および2では、焼結体中のC相の非球形指数bの平均値がそれぞれ2.0および2.5であり、どちらも3.0を下回っており、焼結体中のC相の形状は球形に近い形状である。このため、比較例1および2では、単位体積当たりの焼結体中のC相の表面積が小さくなっており、C相はマトリックス金属であるFePt系合金との接着が弱くなり、このため、発生するパーティクルの数が実施例1〜4と比べて多くなったものと考えられる。
【0186】
また、比較例3および4では、焼結体中のC相の大きさ指数aの平均値がそれぞれ3.7μmおよび0.8μmであり、どちらも4.0μmを下回っていてC相の大きさが小さ過ぎ、そのため、C相の周囲がマトリックス金属であるFePt系合金に十分に覆われず、このため、発生するパーティクルの数が実施例1〜4と比べて多くなったものと考えられる。
【0187】
また、比較例4では、前述したように、1次粒子のカーボンは焼結体中で2次粒子を形成している。2次粒子のCは1次粒子のCが圧粉された状態であり、2次粒子の内部のCの1次粒子は周囲をFePt合金に覆われていないため、スパッタリングの最中に塊の状態でターゲットから抜け落ちやすく、パーティクルになりやすいと考えられる。このため、比較例4のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行ったときに発生するパーティクルの数は、実施例1〜4および比較例1〜3と比べて非常に多くなったものと考えられる。