(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383698
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】湿度管理システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
F24F7/007 B
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-72536(P2015-72536)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191524(P2016-191524A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】飯島 孝
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】小原 孝信
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−037523(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0041970(US,A1)
【文献】
特開平10−154287(JP,A)
【文献】
特開2000−320031(JP,A)
【文献】
特開昭64−041740(JP,A)
【文献】
米国特許第06646560(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0184775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気ファンが設置された建物の屋内湿度を調節するための湿度管理システムであって、
前記換気ファンは、前記建物の外に検知部が設置された雨センサーと電気的に接続されており、
前記建物の外で雨が降り始めたことを前記検知部が検知した後、前記換気ファンの運転が停止され、前記建物の外で雨が降り止んだことを前記検知部が検知した後、所定時間経過後に前記換気ファンの運転が開始されることを特徴とする湿度管理システム。
【請求項2】
前記換気ファンと前記雨センサーは、前記換気ファンの運転の停止及び開始を制御する制御部を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の湿度管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記建物の外に検知部が設置された湿度センサーと電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載に記載の湿度管理システム。
【請求項4】
前記所定時間は、10分〜6時間であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿度管理システム。
【請求項5】
前記建物は、密閉性を備えた構造を有する建物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿度管理システム。
【請求項6】
前記建物は、鉄筋コンクリート製であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の湿度管理システム。
【請求項7】
前記換気ファンは、前記建物の外から中へ外気を吸入するタイプのファンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の湿度管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋内湿度を調節するための湿度管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物、例えば、製造した製品を保管しておく倉庫において、屋内湿度が高い状態が続くと、製品にカビが発生する。そのため、ファンで常時換気することが行われている。
【0003】
一般住宅においても、湿度が高いと、結露によるカビ、ダニの発生が問題となる。そこで、特許文献1では、屋内に滞留する湿度を排出するため、自動開閉を調整する機能をもたせた換気窓を設けることが提案されている。特許文献1には、屋外に雨センサーを設置し、雨センサーによる雨天情報による換気窓の開閉制御の設定も可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−11281号公報(段落〔0033〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ファンで常時換気していると、降雨時に外気の湿度上昇とともに、倉庫内の湿度も上昇してしまい、カビ発生のリスクが高まるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の換気窓の開閉制御は、屋内に滞留する湿度を排出するためのものであるため、降雨時に外気の湿度が上昇した際には、窓を開けても湿度を排出できない。また、雨センサーによる雨天情報による換気窓の開閉制御の設定についての具体的な開示が無く、制御方法が不明である。
【0007】
従って、本発明の目的は、換気ファンが設置された建物内の湿度が降雨時に上昇することを抑制することが可能な湿度管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の湿度管理システムを提供する。
[1]換気ファンが設置された建物の屋内湿度を調節するための湿度管理システムであって、前記換気ファンは、前記建物の外に検知部が設置された雨センサーと電気的に接続されており、前記建物の外で雨が降り始めたことを前記検知部が検知した後、前記換気ファンの運転が停止され、前記建物の外で雨が降り止んだことを前記検知部が検知した後、
所定時間経過後に前記換気ファンの運転が開始されることを特徴とする湿度管理システム。
[2]前記換気ファンと前記雨センサーは、前記換気ファンの運転の停止及び開始を制御する制御部を介して電気的に接続されていることを特徴とする前記[1]に記載の湿度管理システム。
[3]前記制御部は、前記建物の外に検知部が設置された湿度センサーと電気的に接続されていることを特徴とする前記[2]に記載に記載の湿度管理システム。
[
4]前記所定時間は、10分〜6時間であることを特徴とする前記
[1]〜[3]のいずれか1つに記載の湿度管理システム。
[
5]前記建物は、密閉性を備えた構造を有する建物であることを特徴とする前記[1]〜[
4]のいずれか1つに記載の湿度管理システム。
[
6]前記建物は、鉄筋コンクリート製であることを特徴とする前記[1]〜[
5]のいずれか1つに記載の湿度管理システム。
[
7]前記換気ファンは、前記建物の外から中へ外気を吸入するタイプのファンであることを特徴とする前記[1]〜[
6]のいずれか1つに記載の湿度管理システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、換気ファンが設置された建物内の湿度が降雨時に上昇することを抑制することが可能な湿度管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】鉄筋コンクリート製倉庫における換気ファンの有無による倉庫内湿度と外気湿度の関係を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施の形態に係る湿度管理システムを実施した場合の倉庫内湿度と外気湿度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る湿度管理システムは、換気ファンが設置された建物の屋内湿度を調節するための湿度管理システムであって、前記換気ファンは、前記建物の外に検知部が設置された雨センサーと電気的に接続されており、前記建物の外で雨が降り始めたことを前記検知部が検知した後、前記換気ファンの運転が停止され、前記建物の外で雨が降り止んだことを前記検知部が検知した後、前記換気ファンの運転が開始されることを特徴とする。以下、当該湿度管理システムを詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施の形態において、建物とは、特に限定されるものではないが、高湿度環境下でカビ等の発生が問題となる製造品を保管するための倉庫、サイロ、タンク等が好適な適用例として挙げられる。
【0013】
製造品としては、特に限定されるものではないが、例えば、飼料や食品(特に紙袋等の水分透過性の高い包装袋で包装された飼料や食品)が挙げられる。製造品には、完成品のみならず、中間製品、加熱処理済み材料等も含まれる。飼料としては、例えば、油糧種子から得られた油粕が挙げられる。
【0014】
建物は、密閉性を備えた構造を有する建物であることが好ましく、密閉性が高いほど、本発明により得られる効果が高い。ここで、密閉性が高いとは、換気ファン等の換気機構が無い或いは運転停止中に、屋内湿度が建物の外の湿度に連動して上下しにくい(影響を受けにくい)ことを言う。
【0015】
密閉性を備えた構造を有する建物としては、例えば、鉄筋コンクリート製の建物がある。
【0016】
本発明の実施の形態における建物には、換気ファンが設置されている。設置位置は特に限定されるものではないが、例えば、建物の天井や壁に設置される。天井又は壁の上方に設置されることが好ましい。換気ファンの設置数は、1つ以上であれば本願発明の効果は得られるが、建物の広さや密閉性の度合いによって適宜、最適数を設定することができる。
【0017】
換気ファンは、建物の外で雨が降り始め、雨センサーの検知部が雨を検知して換気ファンの運転が停止され、その後、運転が再開されるまでの間以外の時間は、原則として運転状態(ON)にあることが好ましい。
【0018】
換気ファンは、建物の外から中へ外気を吸入する(取り込む)タイプのファンであることが好ましいが、建物の中から外へ屋内の空気を排出するタイプのファンであってもよい。換気ファンから、屋内へ虫等を吸い込まないようにファンの吸気部には防虫網(例えば16メッシュ)が取りつけられていることが好ましい。
【0019】
換気ファンは、建物の外に検知部が設置された雨センサーと電気的に接続されている。ここで、電気的に接続とは、換気ファンの運転を直接的に又は制御部を介して停止/再開(OFF/ON)させることが可能なように接続されていることを意味する。
【0020】
雨センサーは、雨を検知する検知部が建物の外に設置されてさえいれば、その他の部位は、建物の外に設置されていても屋内に設置されていても構わない。
【0021】
換気ファンは、建物の外で雨が降り始めたことを雨センサーの検知部が検知した後、その運転が停止され、建物の外で雨が降り止んだことを雨センサーの検知部が検知した後、その運転が開始される。
【0022】
雨が降り止んだ後に換気ファンの運転が開始されるタイミングとしては、雨が降り止んだ直後に換気ファンの運転が開始されることが、湿度管理システムの構成が簡素化される点では好ましい。
【0023】
一方、屋内が高湿度にならないように管理する観点からは、雨が降り止んだ直後ではなく、所定条件を満たした後(例えば外気の湿度が所定湿度以下となった後)又は所定時間経過後に換気ファンの運転が開始されることが好ましい。
【0024】
具体的には、建物の外で雨が降り止んだことを雨センサーの検知部が検知した後、建物の外に検知部が設置された湿度センサーにより建物の外の相対湿度が65%以下に下がったことが検知された後に換気ファンの運転を開始させることが好ましく、建物の外の相対湿度が60%以下に下がったことが検知された後に換気ファンの運転を開始させることがより好ましい。
【0025】
また、建物の外で雨が降り止んだ後、10分〜6時間経過後に換気ファンの運転が開始されるようにしてもよい。より好ましくは、雨が降り止んだ後、30分〜5.5時間経過後に換気ファンの運転が開始されるようにする。
【0026】
また、雨が降らなくても、湿った風が吹き出す等により外気の湿度が急に上昇することがあるため、降雨が検知されなくても、建物の外の相対湿度が65%以上に上がったことを湿度センサーの検知部が検知した後に換気ファンの運転が停止されるように制御することが好ましく、相対湿度が70%以上に上がったことを湿度センサーの検知部が検知した後に換気ファンの運転が停止されるようにすることがより好ましい。運転停止後、相対湿度が上記基準以下に下がった後に再度換気ファンの運転が開始されるように制御することが好ましい。
【0027】
雨センサーとしては、雨を検知できるものであれば使用でき、市販のものを使用できる。特に、雨が降り止んだことを素早く検知するために、ヒータで検知部を乾燥できるものが好ましい。ON/OFFのスイッチとして機能するオープンコレクタ出力形式の雨センサーを用いれば、降雨の有無による換気ファンの停止/再開の切り替えが可能である。市販のものとしては、例えば、ヒータ付雨センサー(水分検知センサー)(アスザック(株)製、商品名:AKI−1805)を使用できる。
【0028】
湿度センサーとしては、相対湿度を測定できるものであれば使用でき、市販の温・湿度計等を使用できる。市販のものとしては、例えば、温湿度変換器((株)佐藤計量器製作所製、商品名:SK−RHC−I)を使用できる。なお、湿度センサーは、検知する検知部が外気に触れるように建物の外に設置されるが、雨等で濡れないことが好ましい。湿度センサーのその他の部位は、建物の外に設置されていても屋内に設置されていても構わない。
【0029】
雨センサーや換気ファンにON/OFFをスイッチないし制御する機能が内蔵され、雨が降り止んだ直後に換気ファンの運転を開始させる場合は、換気ファンの運転を開始させるための制御部を別途、設ける必要は特に無いが、雨センサーや換気ファンに当該機能がない場合や、所定条件を満たした後又は所定時間経過後に換気ファンの運転を開始させる場合には、これを制御するための制御部を設ける必要がある。制御部は、雨センサーと一体化されていても別体として設けられてもよい。この場合、制御部を介して換気ファンと雨センサーが電気的に接続していることが好ましく、特に湿度センサーを組み合わせて用いる場合は、さらに湿度センサーが制御部に接続していることが好ましい。制御部は、上記制御が可能であればその構成は特に限定されない。例えば、パーソナルコンピュータを用いることができる。
【0030】
換気ファンと雨センサーは、換気ファンの運転の停止及び開始を制御する制御部を介して電気的に接続されていることが種々の制御が可能となる点で望ましい。湿度センサーを設置する場合には、制御部は、湿度センサーとも電気的に接続される。
【0031】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
(実態調査)
日清オイリオグループ株式会社の水島工場敷地内にある鉄筋コンクリート製倉庫(紙包装ミール製品等の保管に使用)の屋内湿度と、倉庫の外の外気湿度とを温湿度記録計((株)佐藤計量器製作所製、商品名:SK−L200THIIα)でモニタリングした結果を
図1に示す。屋内湿度のモニタリングは、換気ファンが設置された倉庫と換気ファンが設置されていない倉庫のそれぞれについて行なった。換気ファンは、建物の外から中へ外気を吸入するタイプのファンが倉庫の天井に1つ設置されている。
【0033】
図1は、鉄筋コンクリート製倉庫における換気ファンの有無による倉庫内湿度と外気湿度の関係を示すグラフである。
【0034】
図1より分かるように、換気ファンが設置されていない倉庫では、外気湿度の変化の影響を受けにくく、外気湿度の上下に連動して倉庫内湿度が上下していない。しかし、湿度が高めの状態が維持されてしまっている。一方、換気ファンが設置された倉庫では、換気ファン運転後、外気湿度の変化の影響により倉庫内の湿度を下げることができたが、降雨時には、外気湿度の上昇とともに、高湿度となってしまっている(すなわち、カビ発生のリスクが高まっている)ことが確認された。
【0035】
(実施例)
上記実態調査と同様のモニタリングを行なった。但し、換気ファンには、雨センサー(アスザック(株)製、商品名:AKI−1805)を接続し、雨が降り始めると換気ファンの運転を停止させ、雨が降り止んだら換気ファンの運転を開始させるようにした。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に係る湿度管理システムを実施した場合の倉庫内湿度と外気湿度の関係を示すグラフである。換気ファンが設置されていない倉庫のグラフは参考である。
【0037】
図2より分かるように、降雨時に換気ファンの運転を停止させたことにより、降雨時には、外気湿度の上昇とともに、倉庫内が高湿度となることを防ぐことができた。しかし、雨が降り止んだ直後に換気ファンの運転を開始させると、外気湿度がまだ高いため、これに連動して、倉庫内湿度が一時期、上昇してしまうことが確認できた。これより、雨が降り止んだ直後ではなく、外気湿度が下がった後に換気ファンの運転を開始させると良いであろうことが分かった。
【0038】
そこで、換気ファンの制御回路に温湿度変換器((株)佐藤計量器製作所製、商品名:SK−RHC−I)を組み込み、雨が降り止んだ直後ではなく、外気の相対湿度が60%に下がった後(雨が降り止んだ後、約1.5時間経過後)に換気ファンの運転を開始させるようにしてモニタリングを行なったところ、
図2に見られるような換気ファン再運転後の湿度上昇は見られなかった。
【0039】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。