(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
本発明の一実施形態において、
図1に示されるように、有機EL素子1は、支持基板3と、金属配線5と、陽極層(第1電極層)7と、正孔注入層(第1電極層)9と、正孔輸送層(有機機能層)11と、発光層(有機機能層)13と、電子輸送層(有機機能層)15と、電子注入層(有機機能層)17と、陰極層(第2電極層)19と、を備えている。
【0014】
[支持基板]
支持基板3は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する部材から構成されている。支持基板3としては、例えば、ガラス等が挙げられる。支持基板3がガラスである場合、その厚さは、例えば、0.05mm〜1.1mmである。
【0015】
支持基板3は、樹脂から構成されていてもよく、例えば、フィルム状の基板(フレキシブル基板、可撓性を有する基板)であってもよい。この場合、支持基板3の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下である。支持基板3が樹脂の場合は、その厚さは、ロールツーロール方式の連続時の基板のヨレ、シワ、及び伸びの観点からは45μm以上が好ましく、可撓性の観点から125μm以下が好ましい。
【0016】
支持基板3が樹脂である場合、その材料としては、例えば、プラスチックフィルム等が挙げられる。支持基板3の材料は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
支持基板3の材料は、上記樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が低く、かつ、製造コストが低いことから、ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンレテフタレート、又はポリエチレンナフタレートがさらに好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
支持基板3の一方の主面3a上には、ガスバリア層、或いは、水分バリア層(バリア層)が配置されていてもよい。支持基板3の他方の主面3bは、発光面である。
【0019】
[金属配線]
図1及び
図2に示されるように、金属配線5は、支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。金属配線5は、導電体であり、ネットワーク構造を構成している。金属配線5の材料は、例えば、銀、アルミニウム、銅、パラジウム、金、ニッケル、鉄、モリブデン、クロム、又は、これらの金属のうち1種以上を含む合金(例えば、MAM(モリブデン・アルミニウム・モリブデン))等が挙げられる。
【0020】
金属配線5は、複数の開口部6を有する所定のパターンを有している。所定パターンは、例えば、
図2に示されるように、格子状のパターンである。格子状のパターンの場合、複数の開口部6は、網目に対応する。網目の形状は、例えば、長方形又は正方形のような四角形、三角形、及び、六角形を含む。所定パターンは、金属配線5がネットワーク構造を有すればその形態は限定されない。
【0021】
金属配線5の厚さ、すなわち金属配線5の支持基板3の一方の主面3aからの高さは、10nm以上500nm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。金属配線5の線幅は、500μm以下であることが好ましく、0.5μm以上500μm以下であることがより好ましい。金属配線5同士の間隔は、50μm以上であることが好ましく、50μm以上1cm以下がより好ましい。
【0022】
金属配線5は、例えば、フォトリソグラフィー法を利用して形成され得る。この場合、最初に、物理蒸着(PVD)法及びスパッタリング法等により、金属配線5となるべき金属層を形成する。その後、金属層を、フォトリソグラフィー法を用いて所定のパターンにパターニングすることで、金属配線5が得られる。
【0023】
また、金属配線5は、リフトオフ法を用いて形成されてもよい。この場合、最初に、所定パターンの金属配線5が形成されるべき領域が開口されているマスクを形成する。その後、物理蒸着及びスパッタリング法等によりマスクの開口部に金属を堆積させて金属配線を形成する。続いて、マスクを除去することで、所定パターンの金属配線5が得られる。
【0024】
また、金属配線5は、インクジェット印刷法、グラビア印刷法又はスクリーン印刷法等の種々の印刷方法を用いて形成されてもよい。この場合、例えば、インクジェット印刷法等によって、ナノ構造体が分散されたインクを、金属配線5の所定のパターンで印刷する。その後、焼成することにより金属配線5が得られる。
【0025】
[陽極層]
陽極層7は、金属配線5上、及び、金属配線5の開口部6から露出する支持基板3上に配置されている。陽極層7には、光透過性を示す電極層が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、及び銅等からなる薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。陽極層7として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。
【0026】
陽極層7の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定することができる。陽極層7の厚さは、金属配線5の開口部6の中央に位置する部分において、10nm以上1μm以下であり、好ましくは10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは10nm以上300nm以下である。
【0027】
陽極層7の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法及び塗布法等を挙げることができる。塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及び、インクジェットプリント法等を挙げることができる。
【0028】
[正孔注入層]
正孔注入層9は、陽極層7の主面(支持基板3に接する面とは反対側)上に配置されている。正孔注入層9を構成する材料の例としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、及び、酸化アルミニウム等の酸化物、フェニルアミン化合物、スターバースト型アミン化合物、フタロシアニン化合物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、及び、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)のようなポリチオフェン誘導体等を挙げることができる。
【0029】
電荷輸送性を有する従来知られた有機材料は、これと電子受容性材料とを組み合わせることにより、正孔注入層9の材料として用いることができる。電子受容性材料としては、ヘテロポリ酸化合物やアリールスルホン酸を好適に用いることができる。
【0030】
ヘテロポリ酸化合物とは、Keggin型あるいはDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。ヘテロポリ酸化合物の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、及び、ケイタングステン酸等が挙げられる。
【0031】
アリールスルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p−スチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7−ジブチル−2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3−ドデシル−2−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4−ヘキシル−1−ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2−オクチル−1−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7−へキシル−1−ナフタレンスルホン酸、6−ヘキシル−2−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7−ジノニル−4−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、及び、2,7−ジノニル−4,5−ナフタレンジスルホン酸、等が挙げられる。ヘテロポリ酸化合物と、アリールスルホン酸を混合して用いてもよい。
【0032】
正孔注入層9の厚さは、5nm以上500nm以下であり、好ましくは5nm以上300nm以下である。
【0033】
正孔注入層9は、例えば、上記材料を含む塗布液を用いた塗布法によって形成される。
【0034】
塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及び、インクジェットプリント法等を挙げることができる。これら塗布法のうちの1つを用いて、陽極層7上に塗布液を塗布することによって、正孔注入層9を形成することができる。
【0035】
[正孔輸送層]
正孔輸送層11は、正孔注入層9の主面(陽極層7に接する面とは反対側の面)上に配置されている。正孔輸送層11の材料には、公知の正孔輸送材料が用いられ得る。正孔輸送層11の材料の例は、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン若しくはその誘導体、ピラゾリン若しくはその誘導体、アリールアミン若しくはその誘導体、スチルベン若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン若しくはその誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0036】
正孔輸送層11の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定される。正孔輸送層11の厚さは、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0037】
正孔輸送層11の形成方法としては、例えば、上記材料を含む塗布液を用いた塗布法等が挙げられる。塗布法としては、正孔注入層9で例示した方法が挙げられる。塗布液の溶媒としては、上記材料を溶解するものであればよく、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、及び、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒を挙げることができる。
【0038】
[発光層]
発光層13は、正孔輸送層11の主面(正孔注入層9に接する面とは反対側の面)上に配置されている。発光層13は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、或いは該有機物とこれを補助する発光層用ドーパント材料を含む。発光層用ドーパント材料は、例えば、発光効率を向上させたり、発光波長を変化させたりするために加えられる。なお、有機物は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。発光層13を構成する発光材料としては、例えば、下記の色素材料、金属錯体材料、高分子材料等の主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、発光層用ドーパント材料等を挙げることができる。
【0039】
(色素材料)
色素材料としては、例えば、シクロペンダミン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体、トリフェニルアミン及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、ピラゾロキノリン及びその誘導体、ジスチリルベンゼン及びその誘導体、ジスチリルアリーレン及びその誘導体、ピロール及びその誘導体、チオフェン化合物、ピリジン化合物、ペリノン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0040】
(金属錯体材料)
金属錯体材料としては、例えば、Tb、Eu、Dy等の希土類金属、又はAl、Zn、Be、Pt、Ir等を中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を配位子に有する金属錯体を挙げることができる。金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体等を挙げることができる。
【0041】
(高分子材料)
高分子材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、上記色素材料、又は金属錯体材料を高分子化した材料等を挙げることができる。
【0042】
(発光層用ドーパント材料)
発光層用ドーパント材料としては、例えば、ペリレン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ルブレン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、スクアリウム及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体、スチリル色素、テトラセン及びその誘導体、ピラゾロン及びその誘導体、デカシクレン及びその誘導体、フェノキサゾン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0043】
発光層13の厚さは、通常約2nm〜200nmである。発光層13は、例えば、上記のような発光材料を含む塗布液(例えばインク)を用いる塗布法により形成される。発光材料を含む塗布液の溶媒としては、発光材料を溶解するものであれば、限定されない。
【0044】
電子輸送層15は、発光層13の主面(正孔輸送層11に接する面とは反対側の面)上に配置されている。電子輸送層15の材料には、公知の電子輸送材料が用いられ、例えば、ナフタレン、アントラセンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、4,4-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、アントラキノジメタン、テトラシアノアントラキノジメタンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体、及び、インドール誘導体、トリス(8−キノリノラート)、アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、及び、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体及びフラボノール金属錯体、電子受容性窒素を有するヘテロアリール環を有する化合物などが挙げられる。
【0045】
電子輸送層15の厚さは、例えば、1〜100nmである。
【0046】
電子輸送層15の形成方法として、低分子の電子輸送材料を用いる場合は、真空蒸着法、塗布液を用いた塗布法等を挙げることができ、高分子の電子輸送材料を用いる場合は、塗布液を用いた塗布法等を挙げることができる。塗布液を用いた塗布法を実施する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。塗布法としては、正孔注入層9で例示した方法が挙げられる。
【0047】
[電子注入層]
電子注入層17は、電子輸送層15の主面(発光層13と接する面とは反対側の面)上に配置されている。電子注入層17の材料には、公知の電子注入材料が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
【0048】
従来知られた電子輸送性の有機材料と、アルカリ金属の有機金属錯体を混合した材料も、電子注入材料として利用することができる。
【0049】
電子注入層17の厚さは、例えば、1〜50nmである。
【0050】
電子注入層17の形成方法としては、真空蒸着法等が挙げられる。
【0051】
[陰極層]
陰極層19は、電子注入層17の主面(電子輸送層15に接する面の反対側)上に配置されている。陰極層19の材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表第13族金属等を用いることができる。陰極層19の材料としては、具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0052】
また、陰極層19としては、例えば、導電性金属酸化物及び導電性有機物等からなる透明導電性電極を用いることができる。導電性金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、及びIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等を挙げることができる。なお、陰極層19は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、電子注入層が陰極層19として用いられる場合もある。
【0053】
陰極層19の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極層19の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、更に好ましくは50nm〜500nmである。陰極層19の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、塗布法等を挙げることができる。
【0054】
図3に示されるように、本実施形態に係る有機EL素子1では、金属配線5は、幅方向に沿った断面が台形状を呈している。金属配線5は、上面5aと、側面5bと、側面5cと、を有している。上面5aは、平坦面であり、例えば、支持基板3と平行を成している。側面5b及び側面5cは、支持基板3に対して所定の角度θを成して傾斜している。側面5b及び側面5cのそれぞれと支持基板3とが成す角度θは、鋭角である(θ<90°)。
【0055】
有機EL素子1では、陽極層7及び正孔注入層9(第1電極層)の合計の最厚部(以下、「エッジ部」と称する)の厚さ寸法をT、金属配線5に接触する位置に配置された陽極層7及び正孔注入層9の合計の最薄部(以下、「ショルダー部」と称する)の厚さ寸法をSとした場合、エッジ部の厚さ寸法Tが250nm以下であり、Tに対するSの比(S/T比)が0.4以上1以下である。金属配線5に接触する位置に配置された陽極層7及び正孔注入層9とは、金属配線5上に位置する陽極層7及び当該陽極層7上に位置する正孔注入層9である。すなわち、金属配線5に接触する位置に配置された陽極層7は、金属配線5の上面5a、側面5b又は側面5c上に配置された陽極層7である。
【0056】
Tは、5nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上170nm以下であることがより好ましい。
【0057】
図3に示されるように、エッジ部の厚さ寸法Tは、金属配線5の側面5b(5c)の下端(支持基板3側の端)の位置において、支持基板3に対して直交する方向における厚さである。ショルダー部の厚さ寸法Sは、金属配線5の上面5aの一端(側面5b(側面5c)側の端)の位置において、支持基板3に対して直交する方向における厚さである。なお、エッジ部の厚さ寸法T及びショルダー部の厚さ寸法Sの測定位置は、±0.5μmの範囲を含み得る。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る有機EL素子1では、エッジ部の厚さ寸法T、ショルダー部の厚さ寸法Sは、エッジ部の厚さ寸法Tが250nm以下であり、Tに対するSの比(S/T比)が0.4以上1以下である。これにより、有機EL素子1では、陽極層7と陰極層19との間で短絡が生じることを抑制できる。その結果、有機EL素子1では、電流リークの発生を抑制できるため、電流効率の低下を抑制できる。
【0059】
本実施形態に係る有機EL素子1では、金属配線5は、幅方向に沿った断面が台形形状を呈している。有機EL素子1では、金属配線5の側面5b,5cと支持基板3とが成す角度θが鋭角である。このような構成を有する金属配線5において、上記関係を満たす構造は、有機EL素子1における電流効率の低下の抑制に特に有効である。
【0060】
本実施形態に係る有機EL素子では、金属配線5の厚さ寸法をK、金属配線5の開口部6の中央部における陽極層7及び正孔注入層9の中央厚さ寸法をCとした場合、Kに対するCの比(C/K比)は0.4以上3以下であることが好ましく、0.5以上2.5以下であることがより好ましい。Cは、210nm以下であることが好ましく、10nm以上160nm以下であることがより好ましい。この構成では、上記比を満たす金属配線5を備える有機EL素子1において、電流効率の低下を効果的に抑制できる。
【0061】
続いて、有機EL素子1の一実施例について、
図4を参照して説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
支持基板3として、厚さ0.7mmのガラス基板を用いた。厚さKが100nmの金属配線5を、支持基板3の一方の主面3a上に、
図1及び
図2に示すように配置した。金属配線5は、当該金属配線5の幅方向に沿った断面が台形状になるように形成した。
【0063】
続いて、陽極層7となる陽極層形成用インクを、スピンコート法によって金属配線5を覆うように塗布した。陽極層形成用インクを大気雰囲気中において80℃で2分間加熱して乾燥させた後、130℃で15分間加熱して、陽極層7を形成した。次に、正孔注入層9となる正孔注入層形成用インクを、スピンコート法によって陽極層7上に塗布した。正孔注入層形成用インクを大気雰囲気中において80℃で4分間加熱して乾燥させた後、230℃で15分間加熱して、正孔注入層9を形成した。陽極層7及び正孔注入層9を形成する際、金属配線5の開口部6の中央部における陽極層7及び正孔注入層9の合計の膜厚である中央膜厚寸法が、74nmとなるように形成した。
【0064】
次に、正孔注入層9上に、正孔輸送層11、発光層13、電子輸送層15、電子注入層17、及び陰極層19を順に形成し、封止基板を貼合して有機EL素子1を作製した。作製した有機EL素子1のC、T、及びSの値、Tに対するSの比(S/T比)、及びKに対するCの比(C/K比)を、
図4に示す。
【0065】
作製した有機EL素子1の輝度1000cd/m
2における電流効率を測定した。測定結果を
図4に示す。
【0066】
(実施例2〜6、比較例1〜3)
KとCを
図4に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にして、電流効率を測定した。Cは、陽極層7の厚みを変化させることで調整した。得られた有機EL素子のC、T、及びSの値、S/T比、C/K比、及び電流効率の測定結果を
図4に示す。なお、
図4における「−」は、1000cd/m
2以上の輝度が得られなかったことを示す。
【0067】
図4に示すとおり、Tが250nm以下であり、S/T比が0.4〜1.0である有機EL素子は、Tが250nmより大きい有機EL素子、またはS/T比が0.4〜1.0でない有機EL素子に比べて、電流効率の低下が抑制されていることが確認された。
【0068】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、陽極層7、正孔注入層9、正孔輸送層11、発光層13、電子輸送層15、電子注入層17及び陰極層19がこの順番で配置された有機EL素子1を例示した。しかし、有機EL素子1の構成はこれに限定されない。有機EL素子1は、以下の構成を有していてもよい。
(a)陽極層/発光層/陰極層
(b)陽極層/正孔注入層/発光層/陰極層
(c)陽極層/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極層
(d)陽極層/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
(e)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極層
(f)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極層
(g)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
(h)陽極層/発光層/電子注入層/陰極層
(i)陽極層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。上記(g)は、上記実施形態の構成を示している。上記(a)〜(i)において、第1電極層は、陽極層、又は、陽極層及び正孔注入層である。なお、有機EL素子1が、第1電極層として陽極層のみを有している場合、S、T、及びCは、陽極層の厚さ寸法を指す。
【0069】
有機EL素子1は、一層の有機機能層を有していてもよいし、複層(2層以上)の有機機能層を有していてもよい。上記(a)〜(i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極層7と陰極層19との間に配置された積層構造を「構造単位A」とすると、2層の有機機能層を有する有機EL素子の構成として、例えば、下記(j)に示す層構成を挙げることができる。2個ある(構造単位A)の層構成は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデン等からなる薄膜を挙げることができる。
(j)陽極層/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極層
【0070】
また、「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層13を有する有機EL素子の構成として、例えば、以下の(k)に示す層構成を挙げることができる。
(k)陽極層/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極層
【0071】
記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、(構造単位B)がx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0072】
電荷発生層を設けずに、複数の有機機能層を直接的に積層させて有機EL素子を構成してもよい。
【0073】
上記実施形態では、金属配線5が、幅方向に沿った断面が台形状である形態を一例に説明した。しかし、金属配線の幅方向に沿った断面の形状は、これに限定されない。例えば、金属配線の幅方向に沿った断面の形状は、矩形状等であってもよい。