特許第6384011号(P6384011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384011
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】液晶素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20180827BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20180827BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G02F1/1333
   G02F1/1334
   G02F1/1337 520
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-557011(P2016-557011)
(86)(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公表番号】特表2017-513051(P2017-513051A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】KR2015003409
(87)【国際公開番号】WO2015152694
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0040644
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0048241
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウーン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユウ、ジュン スン
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−276003(JP,A)
【文献】 特開2008−180886(JP,A)
【文献】 特開2010−039120(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/115118(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/133445(WO,A1)
【文献】 特開2008−281752(JP,A)
【文献】 特表2009−544060(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030926(WO,A1)
【文献】 特開平06−095090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/1333
G02F1/1337
G02F1/1335−1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に凸部と凹部が形成されているモールド層が存在する第1基板;上部に表面エネルギーが30mN/m以下であり、AFM Zスケール表面粗さが2nm以下である樹脂層が形成されており、前記樹脂層が前記モールド層の凸部と接触するように配置されている第2基板;および前記モールド層の凹部に存在する液晶化合物を含み、
前記樹脂層と前記モールド層の前記凸部は、前記樹脂層の減圧性の粘着力によって接触されているかまたは前記樹脂層と前記モールド層の前記凸部とが架橋された状態で接触し、
前記液晶化合物は、前記モールド層の凹部と前記樹脂層の表面とにより形成された隔壁によって分離される、
初期状態において透明である液晶素子。
【請求項2】
モールド層または樹脂層は下記の一般式1を満足する、請求項1に記載の液晶素子:
[一般式1]
0≦|Y−{1×10−4−1.2×10−3+3.1×10−3X−1.6×10−3}|≦0.05
前記一般式1で、Xは前記モールド層または樹脂層のAFM Zスケール表面粗さ(nm)を表わし、Yは前記モールド層または樹脂層の表面極性度を表わす(ただし、モールド層の表面粗さおよび表面極性度は凸部および凹部が形成されていない状態のモールド層の表面に対して測定した値である)。
【請求項3】
モールド層または樹脂層は重合性または架橋性化合物または硬化性化合物を含む、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項4】
重合性または架橋性化合物はアクリレート化合物である、請求項3に記載の液晶素子。
【請求項5】
硬化性化合物は硬化性シリコン化合物である、請求項3に記載の液晶素子。
【請求項6】
モールド層または樹脂層は垂直配向を誘導できる添加剤をさらに含む、請求項3に記載の液晶素子。
【請求項7】
添加剤は塩素(Cl)、フッ素(F)またはケイ素(Si)を含む垂直配向ポリマーを含む、請求項6に記載の液晶素子。
【請求項8】
初期状態で液晶化合物は垂直配向された状態で凹部に存在する、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項9】
初期状態で液晶素子は面相位相差が30nm以下で、厚さ方向位相差は500nm以上である、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項10】
初期状態で400nm〜700nmの波長の光に対する透過率が45%以上であり、ヘイズが10%以下である、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項11】
外部エネルギーの印加によって400nm〜700nmの波長の光に対する透過率が45%未満であり、ヘイズが10%超過である散乱モードにスイッチングされる、請求項10に記載の液晶素子。
【請求項12】
上部に凸部と凹部が形成されているモールド層が存在する第1基板の凹部に液晶化合物を含ませた後、上部に表面エネルギーが30mN/m以下であり、AFM Zスケール表面粗さが2nm以下である樹脂層が形成されている第2基板を前記樹脂層が前記モールド層の凸部と接触するように第1基板上部に積層することを含み、
前記樹脂層と前記モールド層の前記凸部は、前記樹脂層の減圧性の粘着力によって接触されているかまたは前記樹脂層と前記モールド層の前記凸部とが架橋された状態で接触し、
前記液晶化合物は、前記モールド層の凹部と前記樹脂層の表面とにより形成された隔壁によって分離される、
初期状態において透明である液晶素子の製造方法。
【請求項13】
モールド層の凸部と凹部をインプリンティング方式で形成する、請求項12に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の液晶素子を含む、光変調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は液晶素子および液晶素子の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LCD(Liquid Crystal Display)は、液晶化合物を一定方向に配向させ、電圧の印加を通じて配向をスイッチングさせて画像を具現する。LCD製造工程は複雑な工程が要求される高費用の工程であり、大型の生産ラインおよび設備が必要である。
【0003】
高分子マトリックス内に液晶を分散させて具現されるいわゆるPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal、本明細書で用語PDLCは、いわゆるPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)やPSLC(Polymer Stabilized Liquid Crystal)などを含む上位概念である。)素子が知られている。PDLCは、液晶溶液のコーティングを通じて製造が可能であるため、既存のLCDと比べて簡単な工程で製造することができる。
【0004】
特許文献1(韓国公開特許第1993−0013794号公報)などに記載された通り、PDLC内で通常液晶化合物は配向されていない状態で存在する。したがって、PDLCは電圧が印加されていない状態ではぼうっとした不透明状態であり、このような状態はいわゆる散乱モードと呼称される。PDLCに電圧が印加されると、液晶化合物がそれにより整列されて透明な状態となるが、これを利用して透過モードと散乱モードとのスイッチングが可能である。
【0005】
しかし、このような初期に散乱状態を示しているPDCLモードは電圧印加前の初期が散乱状態を示すため、透明状態を維持するためにはセルに電圧を常に印加しなければならならず、電力消耗が大きいという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は液晶素子および液晶素子の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の例示的な液晶素子(liquid crystal element)は、上部にモールド層が形成されている第1基板、上部に樹脂層が形成されている第2基板を含む。前記モールド層には凸部と凹部が形成され得る。また、前記第2基板は樹脂層がモールド層の凸部と接触するように配置され得る。一つの例示において、樹脂層は液晶化合物に対して垂直配向を誘導できる表面特性を有することができる。液晶素子はまた、モールド層の凹部に存在する液晶化合物を含むことができる。
【0008】
図1は本出願の例示的な液晶素子の模式図である。図1の液晶素子1は上部に凸部1011と凹部1012が形成されているモールド層101が存在する第1基板102、上部に樹脂層103が形成されており、前記樹脂層が前記モールド層の凸部1011と接触するように配置されている第2基板104および前記モールド層の凹部1012に存在する液晶化合物105を含んでいる。図1に示した通り、液晶化合物はモールド層の凹部と樹脂層の一面で形成された隔壁によって分離された状態で液晶素子に含まれ得る。
【0009】
一つの例示において、モールド層は架橋性または重合性化合物を含むことができる。本明細書で重合性または架橋性化合物は、重合性または架橋性官能基を有する化合物を意味し得る。モールド層は例えば、架橋性または重合性化合物を架橋または重合された状態で含むことができる。本明細書で重合性または架橋性官能基は例えば、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基などが例示されるが、これに制限されるものではない。モールド層が架橋性または重合性材料を含む場合、樹脂層に対して優秀な接着力を示すことができる。
【0010】
一つの例示において、架橋性または重合性化合物としてはアクリレート化合物を使うことができる。本明細書でアクリレート化合物は官能基であって、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含む化合物を意味し、前記官能基を一つ含む化合物は単官能性アクリレート化合物であり、二つ以上含む化合物は多官能性アクリレート化合物で呼称することができる。区別の便宜のために、以下において、前記官能基を2つ含む化合物は二官能性アクリレート化合物と呼称し、3官能以上、すなわち前記官能基を3つ以上含むアクリレート化合物は、単に多官能性アクリレート化合物と呼ぶ。多官能性アクリレート化合物は、前記官能基を例えば、3つ〜8個、3つ〜7個、3つ〜6個、3つ〜5個または3つ〜4個含むことができる。
【0011】
例えば、単官能性アクリレート化合物としては、下記の化学式1で表示される化合物を使うことができる。
【0012】
【化1】
化学式1でRは水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0013】
また、二官能性アクリレート化合物としては、下記の化学式2で表示される化合物を使うことができる。
【0014】
【化2】
化学式2でRはそれぞれ独立的に水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは炭素数1〜20のアルキレン基またはアルキリデン基である。
【0015】
また、多官能性アクリレート化合物としては、下記の化学式3で表示される化合物を使うことができる。
【0016】
【化3】
化学式3でnは3以上の数であり、mは0〜5の数であり、Rはそれぞれ独立的に水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは(m+n)価のラジカルであり、Yは水素またはアルキル基である。
【0017】
化学式1〜3でRまたはYに存在できるアルキル基の例としてはメチル基またはエチル基が挙げられる。
【0018】
化学式1でXのアルキル基は、例えば、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数4〜12、炭素数6〜12の直鎖または分枝鎖アルキル基であり得る。
【0019】
化学式2でXのアルキレン基またはアルキリデン基は、例えば、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜10、炭素数1〜8、炭素数2〜8または炭素数4〜8のアルキレン基またはアルキリデン基であり得る。前記アルキレン基またはアルキリデン基は、例えば、直鎖、分枝鎖または環状であり得る。
【0020】
一方、化学式3でnは、3以上、3〜8、3〜7、3〜6、3〜5または3〜4の範囲内のいずれか一つの数であり得る。また、化学式2でmは0〜5、0〜4、0〜3、0〜2または0〜1の範囲内のいずれか一つの数であり得る。
【0021】
化学式3でXは(m+n)価のラジカルであり、例えば、炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜6のハイドロカーボン、例えば、直鎖または分枝鎖のアルカンから誘導された(m+n)価ラジカルであり得る。
【0022】
化学式1〜3で定義された置換基、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキリデン基または(m+n)価ラジカルなどは、必要であれば一つ以上の置換基によって置換され得、このとき置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヨウ素基、オキセタニル基、チオール基、シアノ基、カルボキシル基またはアリル基などが例示されるが、これに制限されるものではない。
【0023】
他の一つの例示において、モールド層は硬化性化合物を含むことができる。本明細書で硬化性化合物は硬化性官能基を有する化合物を意味し得る。モールド層は例えば、硬化性化合物を硬化した状態で含むことができる。硬化性化合物の種類は特に制限されず、本出願の目的を損傷させない範囲内で適切に選択することができ、例えば、加熱硬化性化合物または光硬化性化合物を使うことができる。一つの具体的な例として、モールド層は凹部に存在する液晶化合物に対する垂直配向を効果的に誘導するという側面で硬化性シリコン化合物を含むことができる。硬化性シリコン化合物に対する具体的な事項は以下樹脂層の項目で記述した内容を同一に適用することができる。
【0024】
モールド層の表面特性は本出願の目的を損傷させない範囲内で適切に調節することができる。一つの例示において、モールド層は凹部に存在する液晶化合物の垂直配向を効果的に誘導するという側面で下記の表面特性を示すことができる。モールド層の表面特性は例えば、モールド層の凹部および凸部の形状により変更され得、後述するモールド層の表面特性はモールド層に凹部および凸部を形成する前の平たい状態のモールド層に対する表面特性であり得る。
【0025】
モールド層は例えば、下記の一般式1の条件を満足することができる。
【0026】
[一般式1]
0≦|Y−{1×10−4−1.2×10−3+3.1×10−3X−1.6×10−3}|≦0.05
一般式1で、Xはモールド層のAFM Zスケール表面粗さを表わし、Yはモールド層の表面極性度を表わす。モールド層の表面エネルギー(γsurface)は無極性分子間の分散力と極性分子間の相互作用力が考慮されて(γsurface=γispersion+γpolar)計算され得るが、表面エネルギーγsurfaceでpolar term(γpolar)の比率をその表面の極性度(polarity)で定義することができる。モールド層は表面粗さおよび極性度の相互関係を一般式1のように考慮することによって、液晶素子に外部配向力が印加されていない状態で液晶化合物に対してより優秀な垂直配向を誘導することができる。
【0027】
モールド層の表面エネルギーは、例えば、5mN/m〜100mN/m、8mN/m〜80mN/m、10mN/m〜50mN/mまたは12mN/m〜30mN/mであり得る。また、モールド層の極性度は例えば、0〜0.5または0〜0.4の範囲内にあり得る。また、モールド層のAFM Zスケール表面粗さは例えば、0.1nm〜50nm、0.2nm〜30nm、0.3nm〜10nmまたは0.4nm〜8nmの範囲内であり得る。前記表面エネルギー、極性度または表面粗さ範囲内でモールド層は凹部に存在する液晶化合物の垂直配向を効果的に誘導することができる。しかし、モールド層の表面特性は前記に制限されるものではなく、目的とする液晶の垂直配向程度により適切に設計変更され得る。
【0028】
本明細書で「表面エネルギー」とは、公知の表面エネルギー測定方式によって測定された値であって、例えば、Static contact angle measurementを通したOwens−Wendt方式で測定された値であり得る。具体的な例として、表面エネルギー(γsurface、mN/m)はγsurface=γdispersion+γpolarで計算することができ、水滴型分析器(Drop Shape Analyzer、KRUSS社のDSA100製品)を使って測定することができる。表面エネルギーは測定しようとする対象試料をフルオロベンゼン(flourobenzene)に約2重量%の固形分濃度に希釈させたコート液を基板に約50nmの厚さと4cmのコート面積(横:2cm、縦:2cm)で常温で約1時間ぐらい乾燥させた後、160℃で約1時間の間熱的熟成(thermal annealing)させた膜に対して測定することができる。熱的熟成を経た前記膜に表面張力(surface tension)が公知されている脱イオン化水を落としてその接触角を求める過程を5回繰り返し、得られた5個の接触角数値の平均値を求め、同一に、表面張力が公知されているジヨードメタン(diiodomethane)を落としてその接触角を求める過程を5回繰り返し、得られた5個の接触角数値の平均値を求める。その後、求めた脱イオン化水とジヨードメタンに対する接触角の平均値を利用してOwens−Wendt−Rabel−Kaelble方法によって溶媒の表面張力に関する数値(Strom値)を代入して表面エネルギーを求めることができる。また、本明細書で「表面粗さ」とは、公知の平均表面粗さ測定方式によって測定された値であって、例えばBruker社のMultimode AFM機器を使って測定された値であり得る。
【0029】
モールド層の表面特性を前記の通りに調節する方法は特に制限されない。例えば、モールド層の材料として前記表面特性を表わすことができる物質を選択したり、モールド層に前記表面特性を表わすことができる添加剤を添加したり、またはモールド層が前記表面特性を表わすように製造工程を制御することもできる。一つの例示において、モールド層の材料に硬化性シリコン化合物を選択したり、あるいはモールド層に垂直配向を誘導できる添加剤を添加したり、あるいはモールド層にコロナ処理などを遂行できる。コロナ処理条件および方法は特に制限されず、目的とするモールド層の表面特性を考慮して適切に調節することができる。
【0030】
一つの具体的な例として、モールド層は垂直配向を誘導できる添加剤として垂直配向ポリマーを含むことができる。垂直配向ポリマーとしては例えば、末端に炭素数4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上または10以上の直鎖型炭化水素基を含む重合単位のポリマーを使うことができる。本明細書で「炭化水素基」とは、炭素と水素からなる有機化合物を意味し、特に言及されない限りアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリル基などを意味し得る。また、本明細書で「直鎖型炭化水素基」とは、いくつかの原子が一列に長く繋がれた構造を有する炭化水素基を意味し得る。前記において、直鎖型炭化水素基の炭素数の上限は特に制限されないが、例えば24以下、22以下、20以下、18以下または16以下の炭素数を有する直鎖炭化水素基を意味し得る。あるいは垂直配向ポリマーとしては例えば、塩素(Cl)フッ素(F)またはケイ素(Si)を含むポリマーを、より具体的には、塩素(Cl)、フッ素(F)またはケイ素(Si)置換された炭化水素基を含む重合単位のポリマーを使うことができる。前記で炭化水素基は例えば、炭素数1のアルキル基、炭素数2以上のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、炭素数3以上のシクロアルキル基または炭素数6以上のアリール基を挙げることができる。
【0031】
一つの具体的な例として、垂直配向ポリマーとしてポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、変成ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシルメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリカーボネ−トなどを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0032】
一つの具体的な例として、モールド層は下記の化学式4の化合物から誘導された重合単位を含む垂直配向ポリマーを含むことができる。
【0033】
【化4】
前記化学式4で、R〜Rはそれぞれ独立的に、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基であり、Aは単一結合、アルキレン基またはアルキルリデン基を表わす。前記において、R〜Rがハロゲン元素である場合を除外することができ、ハロゲンで置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基も除外することができる。
【0034】
本明細書で用語「単一結合」とは、Aで表示される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。例えば、化学式1でAが単一結合である場合、Aの両側にベンゼンと酸素が直接連結されている構造を形成することができる。
【0035】
また、垂直配向ポリマーは下記の化学式5の化合物から誘導された重合単位を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0036】
【化5】
前記化学式5で、R10は水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基を表わすことができる。
【0037】
また、垂直配向ポリマーは下記の化学式6の化合物から誘導された重合単位を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0038】
【化6】
前記化学式6で、R11〜R16はそれぞれ独立的に水素、アルキル基アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基または−O−Q−Pであるが、R11〜R16中の少なくとも一つは−O−Q−PであるかあるいはR11〜R16中の少なくとも一つはハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アルケニル基、ハロゲン置換アルキニル基またはハロゲン置換アルコキシ基である。前記において、Qはアルキレン基またはアルキリデン基であり、Pはアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である。
【0039】
モールド層が垂直配向ポリマーを含有する場合、モールド層内の垂直配向ポリマーの含量は本出願の目的を損傷させない範囲内で適切に選択され得る。例えば、モールド層内の垂直配向ポリマーの固形分含量は0.5重量%〜4.5重量%、1重量%〜4重量%、1.5重量%〜3.5重量%または2重量%〜3.2重量%の範囲内にあり得る。本明細書で前記固形分含量は前記ポリマーがコート液などの形態で製造されてモールド層製造過程に適用される時点での固形分含量を意味する。垂直配向ポリマーの含量が前記範囲内である場合、モールド層は前述した垂直配向特性を効果的に具現することができる。
【0040】
モールド層は、前記言及した化合物に追加で必要な場合に溶媒、前記架橋性または重合性化合物の架橋または重合を誘導できるラジカルまたは陽イオン開始剤、塩基性物質、架橋または重合を形成できるその他の反応性化合物または界面活性剤などの添加剤をさらに含む前駆体から形成され得る。
【0041】
モールド層は、液晶性化合物、例えば、反応性液晶化合物を含むことができる。このような場合にも前記液晶性化合物の比率は少量に調節されることが適切である。一つの例示において、前記モールド層の複屈折の絶対値は30nm以下または20nm以下であり得る。すなわち、前記モールド層は等方性モールド層であるか、複屈折が前記範囲内にあるモールド層であり得る。したがって、液晶化合物が含まれる場合にもモールド層が前記言及した複屈折を表わすことができる範囲で含まれた方がよい。前記複屈折は、例えば、下記の数式1で計算される面相位相差または下記の数式2で計算される厚さ方向の位相差を意味し得る。
【0042】
[数式1]
Rin=d×(nx−ny)
[数式2]
Rth=d×(nz−ny)
数式1および2でRinは面相位相差であり、Rthは厚さ方向位相差であり、dはモールド層の厚さ、nxはモールド層の面相で遅相軸方向の屈折率であり、nyはモールド層の面相で進相軸方向の屈折率であり、nzはモールド層の厚さ方向の屈折率である。
【0043】
モールド層の凹部の間隙、幅および厚さは本出願の目的を損傷させない範囲内で、液晶化合物が含まれる領域を考慮して適切に調節することができる。例えば、凹部の間隔は100〜400μmまたは100〜300μmの範囲内にあり得、幅は10〜40μmまたは10〜30μmの範囲内にあり得、高さは10〜30μmまたは10〜20μmの範囲内にあり得るが、これに制限されるものではない。
【0044】
液晶化合物はモールド層の凹部内に存在することができる。液晶化合物としては、配向がスイッチング可能であって、液晶素子の光変調特性を調節できるものであれば特に制限なく多様な種類を使用可能である。本明細書で配向がスイッチング可能であるとは、液晶化合物の整列方向が電圧の印加のような外部作用によって変更できることを意味し得る。液晶化合物としては、例えば、該配向が所定方向に規則的に整列した場合には該配向方向により透過モードまたは適切な位相差を表わすモードとして作用することができ、該配向が所定方向に規則的に整列しておらずランダムに配置された場合にはモールド層との作用を通じて光の散乱を誘導できる化合物を使うことができる。
【0045】
液晶化合物としては、例えば、スメクチック(smectic)液晶化合物、ネマチック(nematic)液晶化合物またはコレステリク(cholesteric)液晶化合物などを使うことができる。液晶化合物は、モールド層とは結合されておらず、外部で電圧のような外部作用下で配向が変更され得る形態であり得る。このために、例えば、液晶化合物は、重合性基または架橋性基を有さない化合物であり得る。必要な場合、液晶化合物は樹脂層との適切な接着力のために少量の架橋性または重合性化合物とともに凹部内に存在することができる。架橋性または重合性化合物の種類はモールド層の項目で記述した内容を同一に適用することができる。この場合、架橋性または重合性化合物の含量比率は本出願の目的を損傷させない範囲内で適切に選択され得る。架橋性または重合性化合物は、例えば、液晶化合物100重量部対比10重量部〜15重量部の割合で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0046】
一つの例示において、モールド層の凹部に存在する液晶化合物は外部作用非印加状態で配向された状態で存在することができる。このように配向された状態で存在する液晶化合物は外部作用によって該配向方向が変換され得る。本明細書で「外部作用」は、液晶化合物の配向または整列を変更させることができるように遂行されるすべての種類の作用を意味し、代表的な例としては電圧の印加がある。また、本明細書で「初期配向」とは、前記外部作用のない状態での前記液晶化合物の配向または整列方向や前記液晶化合物に形成される光軸を意味し得る。液晶素子で液晶化合物は前記初期配向状態の液晶化合物の整列方向が外部作用によって変換されることもでき、外部作用が消えると再び初期配向状態に液晶化合物が復帰することができる。
【0047】
一つの例示において、モールド層の凹部に存在する液晶化合物は初期状態で垂直配向された状態で存在することができる。本明細書で垂直配向された状態は液晶化合物を含む液晶層の光軸が液晶層の平面に対して約90度〜約65度、約90度〜約75度、約90度〜約80度、約90度〜約85度、約90度の傾斜角を有する場合を意味し得る。本明細書で「光軸」とは、液晶化合物が棒(rod)の形状である場合、液晶化合物の長軸方向の軸を意味し得、液晶化合物が円板(discotic)状である場合、平面の法線方向の軸を意味し得る。
【0048】
液晶化合物の初期垂直配向状態は外部作用、例えば外部電圧の印加によって変化することができる。これに伴い、液晶素子は初期状態では透過モード(transparent mode)を維持し、外部作用によって透過モード以外の多様なモードに転換され得る。一つの例示において、液晶素子は透過モード(transparent mode)と散乱モード(scattering mode)間の相互転換が可能な素子で具現され得る。例えば、本出願の液晶素子は外部作用がない状態(すなわち、初期状態または通常状態)では液晶化合物が垂直に配列されるので透過モードが具現され、外部作用下に液晶化合物が無秩序な方向に配列されながら散乱モードに転換され、外部作用が除去されると再び透過モードに転換される素子(このような素子を便宜上通常透過モードの素子と呼ぶことができる)であり得る。
【0049】
液晶素子の位相差(Rc)は、具現しようとするモードまたは構造により適切に決定することができる。例えば、液晶化合物の領域は初期状態で面相位相差が30nm以下であり、厚さ方向位相差が500nm以上の範囲を表わすことができる。このような範囲の位相差は、例えば、通常透過モード素子の具現に適切である。前記位相差値は550nmの波長の光に対して測定された値であり得る。
【0050】
第2基板上部の樹脂層は、例えば液晶の垂直配向を誘導できる表面特性を有することができる。一つの例示において、樹脂層は45mN/m以下、42.5mN/m以下、40mN/m以下、37.5mN/m以下、35mN/m以下、32.5mN/m以下または30mN/m以下の表面エネルギーを有することができる。樹脂層の表面エネルギーが前記範囲を表わす場合、モールド層の凹部に存在する液晶化合物に対する垂直配向を効果的に誘導することができる。樹脂層の表面エネルギーの下限は特に制限されないが、例えば0mN/m超過、1mN/m以上、2mN/m以上、3mN/m以上、4mN/m以上または5mN/m以上であり得る。
【0051】
樹脂層はさらに、例えば2nm以下、1.9nm以下、1.8nm以下、1.7nm以下、1.6nm以下または1.5nm以下の範囲内のAFM Zスケール表面粗さを表わすことができる。樹脂層の表面粗さが前記範囲を表わす場合、モールド層の凹部に存在する液晶化合物に対する垂直配向を効果的に誘導することができる。樹脂層のAFM Zスケール表面粗さの下限は特に制限されないが、例えば0nm超過、0.1nm以上、0.2nm以上、0.3nm以上または0.4nm以上であり得る。
【0052】
また、必要な場合、樹脂層も下記の一般式2の条件を満足することができるが、これに制限されるものではない
【0053】
[一般式2]
0=|Y−{1×10−4−1.2×10−3+3.1×10−3X−1.6×10−3}|=0.05
前記一般式2で、Xは前記樹脂層のAFM Zスケール表面粗さを表わし、Yは前記樹脂層の表面極性度を表わす。この場合、樹脂層の表面極性度は例えば、0〜0.5または0〜0.4の範囲内にあり得るがこれに制限されるものではない。また、樹脂層の表面エネルギー、表面粗さおよび表面極性度を測定する方法はモールド層の項目で記述した測定方法の内容を同一に適用することができる。
【0054】
樹脂層の表面特性を前記の通りに調節する方法は特に制限されない。例えば、樹脂層の材料として前記表面特性を表わすことができる物質を選択したり、樹脂層に前記表面特性を表わすことができる添加剤を添加したり、または樹脂層が前記表面特性を表わすように製造工程を制御することもできる。一つの例示において、樹脂層の材料で硬化性シリコン化合物を選択したり、あるいは樹脂層に垂直配向を誘導できる添加剤を添加したり、あるいはモールド層にコロナ処理などを遂行できる。コロナ処理条件および方法は特に制限されず、目的とする樹脂層の表面特性を考慮して適切に調節することができる。また、垂直配向を誘導できる添加剤に対してはモールド層の項目で記述した内容を同一に適用することができる。
【0055】
一つの例示において、樹脂層は硬化性化合物を含むことができる。樹脂層は例えば、硬化性化合物を硬化した状態で含むことができる。硬化性化合物としては、例えば、一つの具体的な例として、樹脂層は液晶の垂直配向を効果的に誘導するという側面で硬化性シリコン化合物を含むことができる。樹脂層は硬化性シリコン化合物を単独で含むかまたはモールド層の項目で記述した架橋性または重合性化合物をさらに含むことができる。樹脂層は例えば、加熱硬化性シリコン化合物または紫外線硬化型シリコン化合物を使うことができる。以下、硬化性シリコン化合物に対して具体的に説明する。
【0056】
本出願の一態様において、前記硬化性シリコン化合物は付加硬化型シリコン化合物として、(1)分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンおよび(2)分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンを含むことができる。前記のようなシリコン化合物は、例えば、後述する触媒の存在下で、付加反応によって硬化物を形成することができる。
【0057】
前記において、(1)オルガノポリシロキサンは、シリコン硬化物を構成する主成分であって、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含む。このとき、アルケニル基の具体的な例には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などが含まれ、このうちビニル基が好ましいが、これに制限されるものではない。前記(1)オルガノポリシロキサンで、前述したアルケニル基の結合位置は特に限定されない。例えば、前記アルケニル基は分子鎖の末端および/または分子鎖の測鎖に結合されていることもある。また、前記(1)オルガノポリシロキサンで、前述したアルケニルの他に含まれ得る置換基の種類としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基または3、3、3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうちメチル基またはフェニル基が好ましいが、これに制限されるものではない。
【0058】
前記のような、(1)オルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分枝状、環状、網状または一部が分枝状をなす直鎖状などのように、いずれの形状であってもよい。本発明では前記のような分子構造のうち特に直鎖状の分子構造を有することが好ましいが、これに制限されるものではない。一方、本発明では、硬化物の硬度(hardness)および屈折率の観点で、前記(1)オルガノポリシロキサンとして、分子構造の中にアリール基またはアラルキル基のような芳香族基を含有するオルガノポリシロキサンを使うことが好ましいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0059】
本発明で使用できる前記(1)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、RSiO1/2で表示されるシロキサン単位とRSiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、RSiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、RSiO2/2で表示されるシロキサン単位とRSiO3/2で表示されるシロキサン単位またはRSiO3/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記中の2以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記において、Rはアルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基または3、3、3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであり得る。また、前記でRはアルケニル基であり、具体的にはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などであり得る。
【0060】
本発明の一態様において、前記(1)オルガノポリシロキサンは25℃での粘度が50〜500,000CP(centipoise)、好ましくは、400〜100,000CPであり得る。前記粘度が50CP未満であると、シリコン化合物の硬化物の機械的強度が低下する恐れがあり,500,000CPを超過すると、取り扱い性または作業性が低下する恐れがある。
【0061】
前記付加硬化型シリコン化合物で、(2)オルガノポリシロキサンは前記(1)オルガノポリシロキサンを架橋させる役割を遂行することができる。前記(2)オルガノポリシロキサンで、水素原子の結合位置は特に限定されず、例えば、分子鎖の末端および/または測鎖に結合されていることもある。また、前記(2)オルガノポリシロキサンで、前記ケイ素結合水素原子の他に含まれ得る置換基の種類は特に限定されず、例えば、(1)オルガノポリシロキサンで言及したような、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうちメチル基またはフェニル基が好ましいが、これに制限されるものではない。
【0062】
一方、(2)オルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分枝状、環状、網状または一部が分枝状をなす直鎖状などのように、いずれの形状であってもよい。本発明では前記のような分子構造のうち特に直鎖状の分子構造を有することが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0063】
本発明で使用できる前記(2)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、RSiO1/2で表示されるシロキサン単位とRHSiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、RHSiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、RHSiO2/2で表示されるシロキサン単位とRSiO3/2で表示されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記中の2以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記において、Rはアルケニル基以外の炭化水素基であって、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基または3、3、3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであり得る。
【0064】
本発明の一態様において、前記(2)オルガノポリシロキサンは25℃での粘度が1〜500,000CP(centipoise)、好ましくは、5〜100,000CPであり得る。前記粘度が1CP未満であると、シリコン化合物の硬化物の機械的強度が低下する恐れがあり,500,000CPを超過すると、取り扱い性または作業性が低下する恐れがある。
【0065】
本発明の一態様において、前記(2)オルガノポリシロキサンの含量は、適切な硬化がなされ得るほどに含まれるのであれば特に限定されない。例えば、前記(2)オルガノポリシロキサンは、前述した(1)オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基一つに対して、ケイ素結合水素原子が0.5〜10となる量で含まれ得る。前記ケイ素原子結合水素原子の個数が0.5個未満であると、硬化性シリコン化合物の硬化が不充分になされる恐れがあり、10個を超過すると、硬化物の耐熱性が低下する恐れがある。一方、本発明では、硬化物の硬度(hardness)および屈折率の観点で、前記(2)オルガノポリシロキサンとして、分子構造の中にアリール基またはアラルキル基のような芳香族基を含有する(2)オルガノポリシロキサンを使うことが好ましいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0066】
本発明の一態様において、前記付加硬化型シリコン化合物は、硬化のための触媒であり、白金または白金化合物をさらに含むことができる。このような、白金または白金化合物の具体的な例としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどのアルケニルシロキサンとの錯体、これら白金または白金化合物を含有する粒子径が10μm未満である熱可塑性樹脂微粉末(ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂など)が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0067】
本発明の付加硬化型シリコン化合物内に前述した触媒の含量は特に制限されず、例えば、全体化合物のうち重量単位で0.1〜500ppm、好ましくは、1〜50ppmの量で含まれ得る。前記触媒の含量が0.1ppm未満であると、組成物の硬化性が低下する恐れがあり,500ppmを超過すると、経済性が落ちる恐れがある。
【0068】
本発明の一態様において、前記付加硬化型シリコン化合物は、その貯蔵安定性、取り扱い性および作業性向上の観点で、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3、5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチンオールなどのアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどのエニン(enyne)化合物;1,2,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾールなどの硬化抑制剤をさらに含むことができる。前記硬化抑制剤の含量は、発明の目的を害しない範囲で適切に選択することができ、例えば、重量基準として10ppm〜50,000ppmの範囲で含まれ得る。
【0069】
本発明の他の態様では、前記シリコン化合物は、縮合硬化型シリコン化合物として、例えば(a)アルコキシ基含有シロキサンポリマー;および(b)水酸基含有シロキサンポリマーを含むことができる。
【0070】
本発明で使用され得る前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、下記の化学式7で表示される化合物であり得る。
【0071】
【化7】
前記式でRおよびR2は、それぞれ独立的に、水素原子または置換または非置換された1価の炭化水素基を表わし、Rはアルキル基を表わし、R、RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合には互いに同一であるか異なり得、aおよびbはそれぞれ独立的に0以上、1未満の数を表わし、a+bは0超過、2未満の数を表わし、cは0超過、2未満の数を表わし、dは0超過、4未満の数を表わし、a+b+c×2+dは4である。
【0072】
本発明ではまた、前記化学式7で表示されるシロキサンポリマーがゲル透過クロマトグラフィーで測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは、1,000〜80,000、より好ましくは、1,500〜70,000であり得る。(a)シロキサンポリマーの重量平均分子量が前記範囲内にあることによって、シリコン硬化物の形成時にクラックなどの不良を起こすことなく、良好な硬化物を得ることができる。
【0073】
前記化学式7の定義で、1価の炭化水素基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基などであり得、このとき炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基などであり得る。また、前記化学式7の定義で、1価の炭化水素基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基またはウレイド基などの公知の置換基で置換することができる。
【0074】
また、前記化学式7の定義で、Rのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などが挙げられる。このようなアルキル基の中で、メチル基またはエチル基などが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0075】
本発明では、前記化学式7のポリマー中の分枝状または3次架橋されたシロキサンポリマーを使うことが好ましい。また、この(a)シロキサンポリマーには、本発明の目的を損傷させない範囲内で、具体的には脱アルコール反応を阻害しない範囲内で水酸基が残存していることがある。
【0076】
前記のような(a)シロキサンポリマーは、例えば、多官能のアルコキシシランまたは多官能クロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野の平均的技術者は、目的とする(a)シロキサンポリマーにより適切な多官能アルコキシシランまたはクロロシランを容易に選択することができ、それを使った加水分解および縮合反応の条件も容易に制御することができる。一方、前記(a)シロキサンポリマーの製造時には、目的にしたがって、適切な1官能のアルコキシシランを併用して使用することもできる。
【0077】
前記のような(a)シロキサンポリマーとしては、例えば、信越シリコン社のX40−9220またはX40−9225、GE東レシリコン社のXR31−B1410、XR31−B0270またはXR31−B2733などのような、市販されているオルガノシロキサンポリマーを使うことができる。一方、本発明では、硬化物の硬度(hardness)および屈折率の観点で、前記(a)オルガノポリシロキサンとして、分子構造の中にアリール基またはアラルキル基のような芳香族基を含有する(a)オルガノポリシロキサンを使うことが好ましいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0078】
一方、前記縮合硬化型シリコン化合物に含まれる、(b)水酸基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、下記の化学式8で表現される化合物を使うことができる。
【0079】
【化8】
前記化学式8で、RおよびRはそれぞれ独立的に、水素原子または置換または非置換された1価の炭化水素基を表わし、RおよびRがそれぞれ複数存在する場合には、前記は互いに同一であるか異なり得、nは5〜2,000の整数を表わす。
【0080】
前記化学式8の定義で、1価炭化水素基の具体的な種類としては、例えば、前述した化学式7の場合のような炭化水素基を挙げることができる。
【0081】
本発明で、前記化学式8のシロキサンポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が500〜100,000、好ましくは、1,000〜80,000、より好ましくは、1,500〜70,000であり得る。(b)シロキサンポリマーの重量平均分子量が前記範囲内にあることによって、シリコン硬化物の形成時にクラックなどの不良を起こすことなく、良好な硬化物を得ることができる。
【0082】
前記のような(b)シロキサンポリマーは、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはジクロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野の平均的技術者は、目的とする(b)シロキサンポリマーにより適切なジアルコキシシランまたはジクロロシランを容易に選択することができ、それを使った加水分解および縮合反応の条件も容易に制御することができる。前記のような(b)シロキサンポリマーとしては、例えば、GE東レシリコン社のXC96−723、YF−3800、YF−3804などのような、市販されている2官能オルガノシロキサンポリマーを使うことができる。一方、本発明では、硬化物の硬度(hardness)および屈折率の観点で、前記(1)オルガノポリシロキサンとして、分子構造の中にアリール基またはアラルキル基のような芳香族基を含有する(1)オルガノポリシロキサンを使うことが好ましいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0083】
一つの例示において、樹脂層とモールド層の凸部は接着力によって接触されているかまたは樹脂層とモールド層の凸部が架橋された状態で接触されていることもある。樹脂層とモールド層の凸部は例えば、前述した硬化性化合物を含むことによって粘着力を表わすことができる。または樹脂層とモールド層は、例えばモールド層および樹脂層内に残存する重合性、架橋性または硬化性官能基間の架橋を通じて架橋された状態で接触していることができる。
【0084】
一つの具体的な例として、第2基板の上部に存在する樹脂層が隣接するモールド層の凸部および液晶化合物に対して優秀な接着力を示すことができる。一つの例示において、樹脂層およびモールド層の凹部間の90度剥離力は例えば、0.2N/cm以上、0.25N/cm以上または0.3N/cm以上であり得るが、これに制限されるものではない。このような樹脂層の接着タイプは特に制限されず、目的とする用途により適切に選択することができ、例えば固形状接着剤、半固形状接着剤、弾性接着剤または液状接着剤のタイプを適切に適用して使うことができる。固形状接着剤、半固形状接着剤または弾性接着剤はいわゆる減圧性接着剤(PSA;Pressure Sensitive Adhesive)と呼称され得、接着対象が合着される前に硬化され得る。液状接着剤はいわゆる光学透明レジン(OCR;Optical Clear Resin)で呼称され得、接着対象が合着された後で硬化され得る。本出願の一実施例によれば、垂直配向力を有するPSAタイプの接着剤としてポリジメチルシロキサン接着剤(Polydimethyl siloxane adhesive)またはポリメチルビニルシロキサン接着剤(Polymethylvinyl siloxane adhesive)を使用することができ、垂直配向力を有するOCRタイプの接着剤としてアルコキシシリコン接着剤(Alkoxy silicone adhesive)を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0085】
液晶素子を形成している第1基板と第2基板は液晶セル形成に要求される適切な接着力によって付着されている。従来、高分子の重合によって相分離される液晶領域を含む液晶素子は、通常透過モードを具現するためには高分子の含量を低くしなければならないが、この場合、液晶セルの形成に要求される接着力が発生しないため、液晶が漏洩する問題点があった。反面、本出願の液晶素子はモールド層に形成された凹部と樹脂層で形成された隔壁によって液晶化合物が分離されて第1基板と第2基板が適切な接着力によって付着されているため、液晶が漏洩せず、これによって高いコントラスト比率を示すことができる。
【0086】
第1基板または第2基板としては特に制限なく公知の素材を使うことができる。例えば、ガラスフィルム、結晶性または非結晶性シリコンフィルム、石英またはITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機系フィルムやプラスチックフィルムなどを使うことができる。基材層としては、光学的に等方性である基材層や、位相差層のように光学的に異方性である基材層を使うことができる。プラスチック基材層としては、TAC(triacetyl cellulose);ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer);PMMA(poly(methyl methacrylate);PC(polycarbonate);PE(polyethylene);PP(polypropylene);PVA(polyvinyl alcohol);DAC(diacetyl cellulose);Pac(Polyacrylate);PES(poly ether sulfone);PEEK(polyetheretherketon);PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide);PEN(polyethylenenaphthalate);PET(polyethyleneterephtalate);PI(polyimide);PSF(polysulfone);PAR(polyarylate)またはアモルファスフッ素樹脂などを含む基材層を使用することができるが、これに制限されるものではない。基材層には、必要に応じて金、銀、二酸化ケイ素または一酸化ケイ素などのケイ素化合物のコート層や、反射防止層などのコート層が存在することもある。
【0087】
液晶素子はまた、電極層をさらに含むことができる。電極層は例えば、第1基板または第2基板の表面、例えばモールド層または樹脂層の側面の表面に形成され得る。電極層は、例えば、伝導性高分子、伝導性金属、伝導性ナノワイヤーまたはITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物などを蒸着して形成することができる。電極層は、透明性を有するように形成することができる。この分野で、透明電極層を形成できる多様な素材および形成方法が公知されており、このような方法をすべて適用することができる。必要な場合に、基材層の表面に形成される電極層は、適切にパターン化されていることもある。
【0088】
液晶素子は通常透過モードを具現することができる。このような液晶素子は、例えば、初期状態でヘイズが10%以下、8%以下、6%以下、または5%以下である。前記ヘイズは測定対象を透過する全体透過光の透過率に対する拡散光の透過率の百分率であり得る。前記ヘイズは、ヘイズメータ(hazemeter、NDH−5000SP)を使って評価することができる。ヘイズは前記ヘイズメータを使って次の方式で評価することができる。すなわち、光を測定対象に透過させて積分球内に入射させる。この過程で光は測定対象によって拡散光(DT)と平行光(PT)に分離されるが、この光は積分球内で反射されて受光素子に集光され、集光される光を通じて前記ヘイズの測定が可能である。すなわち、前記過程による全透過光(TT)は前記拡散光(DT)と平行光(PT)の総合(DT+PT)であり、ヘイズは前記全透過光に対する拡散光の百分率(Haze(%)=100×DT/TT)に規定され得る。また、このような液晶素子は外部作用非印加状態で優秀な透明性を表わすことができる。例えば、液晶素子は初期状態で45%以上、50%以上、55%以上または60%以上の光透過率を表わすことができる。前記光透過率は、可視光領域、例えば、約400nm〜700nm範囲内のいずれか一つの波長に対する光透過率であり得る。
【0089】
液晶素子はまた、低いエネルギー消費を通じて、例えば、低い駆動電圧を通じて駆動が可能である。通常透過モード(normally transparent mode)の素子の場合、電圧の印加によって液晶化合物の整列方向を変化させて散乱モードを具現することができるが、本出願の液晶素子はこのような過程で要求される駆動電圧を下げることができる効果がある。一般的に通常透過モード素子を具現する場合、RM(反応性メソゲン)と液晶を共に使うことになるが、この場合、RMが硬化するシステムによって液晶とのアンカリング(anchoring)が高くなり、駆動電圧が上昇してしまう問題点がある。反面、本出願の液晶素子はRMを使わずにモールド層の凹部に液晶または液晶と少量の架橋性化合物を注入するため、素子の駆動において外部から印加される電場にのみ影響を受けて駆動電圧が顕著に低くなる長所がある。
【0090】
液晶素子はまた、優秀なコントラスト比を表わすことができる。本明細書で用語コントラスト比は、前記透過モードでの輝度(T)と散乱モードでの輝度(S)の比率(T/S)を意味し得る。コントラスト比率が高いほど素子の性能が優秀であることを意味するので、前記コントラスト比率の上限は特に制限されない。本出願の液晶素子は前述した通り、モールド層の凹部と樹脂層で形成された隔壁によって分離された液晶化合物が高い垂直配向状態を維持しているため、光漏れ現象が減少し、これによって前記のような高いコントラスト比率を表わすことができる。
【0091】
本出願はまた、前記液晶素子の製造方法に関するものである。例示的な液晶素子の製造方法は、上部に凸部と凹部が形成されているモールド層が存在する第1基板の凹部に液晶化合物を含ませた後、上部に表面エネルギーが45mN/m以下であり、AFM Zスケール表面粗さが2nm以下である樹脂層が形成されている第2基板を、前記樹脂層が前記モールド層の凸部と接触するように第1基板に積層することを含む。図2は例示的な液晶素子の製造方法の工程模式図である。前記製造方法でモールド層、樹脂層および液晶化合物に対する具体的な事項は前記液晶素子の項目で記述した内容を同一に適用することができる。
【0092】
液晶素子の製造方法は、第1基板の上部にモールド層を形成した後、モールド層に凸部と凹部を形成することを含む。前記モールド層は、例えば、第1基板の上部に重合性または架橋性化合物、硬化性化合物および/または垂直配向ポリマーを含むモールド層組成物をコーティングして形成された層を重合または架橋および/または硬化させて形成することができる。前記重合または架橋は、重合または架橋を誘導できる適切なエネルギー、例えば光を照射して遂行できる。また、架橋または重合のためのエネルギーの照射は樹脂層組成物を適切に加熱乾燥する工程とともに遂行され得る。加熱乾燥は70℃〜250℃、80℃〜240℃または90℃〜230℃で行うことができる。乾燥時間は1分〜60分の間遂行できる。前記乾燥温度 および乾燥時間を前記範囲で制御することによって、本出願は目的とするモールド層の表面特性を効果的に具現することができる。
【0093】
第1基板上部に樹脂層組成物を形成する方法は特に制限されず、例えば、ロールコート、印刷法、インクジェットコート、スリットノズル法、バーコート、コンマコート、スピンコートまたはグラビアコートなどのような公知のコート方式を通したコーティングによって形成され得る。
【0094】
モールド層に凸部と凹部は、例えば、インプリンティング方式で形成され得る。この場合に前記インプリンティング工程は前記モールド層を形成する組成物が溶媒などを含む場合には、組成物のコート層を適切な条件で乾燥して溶媒を揮発させた後で遂行できる。インプリンティング工程は、公知の方式によって遂行され得、例えば、前記モールド層組成物のコート層に目的とする凸部と凹部を転写させることができるパターンを有するスタンプまたはローラを使って遂行され得る。この場合に、前記モールド層の架橋または重合のためのエネルギーの印加はインプリンティング工程の前、後または同時に遂行され得る。重合または架橋のためのエネルギーの印加、例えば、光の照射条件は、モールド層が適切に硬化して凹部と凸部を形成することができるように遂行される限り特に制限されない。必要な場合に重合を促進するために前記光の照射工程の前または後、またはそれと同時に適切な熱の印加または露光工程を遂行できる。
【0095】
液晶素子の製造方法はまた、前記モールド層の凹部に液晶化合物を含ませる段階を含む。液晶化合物は凹部と凸部と形成されたモールド層の上部に液晶化合物を含む液晶組成物をコートすることによって凹部に含まれ得る。液晶化合物を含む組成物の層は、例えば、バーコート、コンマコート、インクジェットコートまたはスピンコートなどの通常のコート方式でコーティングして形成することができる。
【0096】
液晶素子の製造方法はまた、第2基板の上部に樹脂層を形成した後、前記第2基板を樹脂層が前記モールド層の凸部と接触するように第1基板に積層することを含むことができる。前記樹脂層は、例えば、第2基板の上部に重合性または架橋性化合物、硬化性化合物および/または垂直配向ポリマーを含む樹脂層組成物をコーティングして形成され得る。樹脂層組成物をコーティングする方法は特に制限されず、例えば、ロールコート、印刷法、インクジェットコート、スリットノズル法、バーコート、コンマコート、スピンコートまたはグラビアコートなどのような公知のコート方式を通したコーティングによって形成することができる。この場合に樹脂層は、樹脂層組成物が溶媒などを含む場合には適切な条件で乾燥して溶媒を揮発させた乾燥状態や架橋または重合を誘導できる適切なエネルギーを照射して部分硬化した状態で製造することができる。
【0097】
液晶素子の製造方法はまた、第2基板を第1基板に積層した後で架橋、重合または硬化を誘導できる適切なエネルギー、例えば光を照射する段階を含むことができる。前記で架橋または重合はモールド層に含まれる架橋性または重合性化合物間の架橋または重合と樹脂層に含まれる架橋性または重合性化合物間の架橋または重合を含む意味であり得る。これによって、樹脂層とモールド層はそれぞれ完全架橋または重合された状態になることができる。
【0098】
また、前記架橋または重合は樹脂層に存在する架橋性または重合性化合物とモールド層の凸部または液晶領域内に存在する架橋性化合物間の架橋または重合を含む意味であり得る。この場合に樹脂層とモールド層の凸部は架橋によって接触した状態を維持することができるので、第1基板と第2基板は液晶セルの形成に要求される適切な接着力を示すことができ、モールド層の凹部と樹脂層は液晶化合物を分離させるための隔壁を適切に形成することができる。したがって、本出願の液晶素子は通常透過モードや液晶化合物が垂れ落ちることなく初期配向状態を適切に維持することができるため、製造後にロールツーロール工程が可能であるだけでなく低い駆動電圧でも高いコントラスト比率を表わすことができる。
【0099】
本出願はまた、前記液晶素子の用途に関するものである。液晶素子は、通常透過モードを具現することができ、優秀なコントラスト比率を表わし、低い電圧で駆動が可能である長所がある。このような液晶素子は例えば、光変調装置に適用されて使用され得る。光変調装置としては、スマートウインドウ、ウインドウ保護膜、フレキシブルディスプレイ素子、3D映像表示用アクティブリターダー(active retarder)または視野角調節フィルムなどが例示されるが、これに制限されるものではない。前記のような光変調装置を構成する方式は特に制限されず、前記液晶素子が使われる限り通常の方式を適用することができる。
【発明の効果】
【0100】
本出願の液晶素子は、例えば、通常透過モードを具現することができる素子であって、高いコントラスト比率を表わし、低い駆動電圧で駆動することができる。このような液晶素子はスマートウインドウ、ウインドウ保護膜、フレキシブルディスプレイ素子、3D映像表示用アクティブリターダー(active retarder)または視野角調節フィルムなどのような多様な光変調装置に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1】例示的な液晶素子の模式図である。
図2】例示的な液晶素子の製造方法を表わす。
図3】参照例1〜6の基材フィルムの表面特性による液晶に対する垂直配向の可否を表わす。
図4】実施例1および比較例1の垂直配向の可否が分かるOMイメージである。
図5】実施例1および比較例1の剥離力評価結果を表わす。
図6】実施例1および比較例1の視野角による直進透過度評価結果を表わす。
図7】実施例1および比較例1の駆動電圧による全体透過度評価結果を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下、実施例および比較例を通じて前記記述した内容をより具体的に説明するが、本出願の範囲は下記提示された内容によって制限されるものではない。
【0103】
測定例1.表面エネルギー測定
表面エネルギーは水滴型分析器(Drop Shape Analyzer、KRUSS社のDSA100製品)を使って測定した。測定しようとするサンプルに表面張力(surface tension)が公知されている脱イオン化水を落としてその接触角を求める過程を5回繰り返し、得られた5個の接触角数値の平均値を求め、同様に、表面張力が公知されているジヨードメタン(diiodomethane)を落とし、その接触角を求める過程を5回繰り返し、得られた5個の接触角数値の平均値を求める。その後、求められた脱イオン化水とジヨードメタンに対する接触角の平均値を利用してOwens−Wendt−Rabel−Kaelble方法によって溶媒の表面張力に関する数値(Strom値)を代入して表面エネルギーを求めた。サンプルの表面エネルギー(γsurface)は無極性分子間の分散力と極性分子間の相互作用力が考慮されて(γsurface= γdispersion+γpolar)計算され得るが、前記表面エネルギーγsurfaceでpolar term(γpolar)の比率をその表面の極性度(polarity)で定義することができる。
【0104】
測定例2.表面粗さ測定
表面粗さはBruker社のMultimode AFM機器を使ってAFM Zスケール表面粗さ(算術平均粗さ、Ra)を測定することによって測定され得る(測定条件:パラメーター− Mode:ScanAsyst in air、Samples/line:512×512、Scan rate:0.7Hz、AFM probe:Silicon tip on nitride lever w/ Al coating(Bruker)、Material:Silicon Nitride、Resonance Frequency:50〜90kHz、Force Constant:0.4N/m、Thickness:0.65μm、Length:115±10μm、Width:25μm、Tip height:5μm、Software−Nanoscope 8.15)
【0105】
参照例1
PC(ポリカーボネート)フィルム上にITO(Indium Tin Oxide)層を蒸着した2枚の基材フィルムをITO層が内側に位置されるように対向配置した後、その間に液晶組成物(7306、HCCH社製)を約3μm〜30μmの厚さとなるように注入して液晶セルを製造した。
【0106】
参照例2
PC(ポリカーボネート)フィルム上にITO(Indium Tin Oxide)層を蒸着した後コロナ処理を遂行した基材フィルム2枚をITO層が内側に位置するように対向配置した後、その間に液晶組成物(7306、HCCH社製)を約3μm〜30μmの厚さとなるように注入して液晶セルを製造した。
【0107】
参照例3
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上にITO(Indium Tin Oxide)層を蒸着した後、ITO層にDaipo Paper社のSi−Ahesvieを約7μm〜50μmの厚さで転写した基材フィルム2枚を接着剤層が内側に位置するように対向配置した後、その間に液晶組成物(7306、HCCH社製)を約3μm〜30μmの厚さとなるように注入して液晶セルを製造した。
【0108】
参照例4
PC(ポリカーボネート)フィルム上にITO(Indium Tin Oxide)層を蒸着した後、ITO層の上部にSiOx系バリアー層を形成した基材フィルム2枚をバリアー層が内側に位置するように対向配置した後、その間に液晶組成物(7306、HCCH社製)を約3μm〜30μmの厚さとなるように注入して液晶セルを製造した。
【0109】
参照例5
PC(ポリカーボネート)フィルム上にハードコート層を形成した基材フィルム2枚をハードコート層が内側に位置するように対向配置した後、その間に液晶組成物(7306、HCCH社製)を約3μm〜30μmの厚さとなるように注入して液晶セルを製造した。
【0110】
参照例6
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上にITO(Indium Tin Oxide)層を蒸着した後、ITO層にHenkel社の3193H Adhesvieを約1μm〜5μmの厚さで転写した基材フィルム2枚を接着剤層が内側に位置するように対向配置した後、その間に液晶組成物(7306、HCCH社製)を約3μm〜30μmの厚さとなるように注入して液晶セルを製造した。
【0111】
評価例1.表面特性による垂直配向可否の評価
参照例1〜6で製造された基材フィルムに対して前述した方法で表面エネルギーおよび表面粗さを測定して図3および表1に表わし、参照例1〜6で製造された液晶セルに対して垂直配向の可否を評価してその結果を表1に表わした。具体的には、表面エネルギーおよび表面粗さは測定例1および2の方法で測定することができ、また、液晶セルを正面(入射角0°)で観察した時、直進透過率が55%以上である場合を垂直配向になったと評価した。図3および表1に表わした通り、基材フィルムの表面エネルギーが45mN/m以下であり、表面粗さが2nm以下である場合、これを上下部基材フィルムにする液晶セルは液晶に対して垂直配向を効果的に誘導できることを確認することができる。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1
ITO透明電極層が蒸着されたPETフィルム(100mm×100mm)(以下、第1基板)のITO層上にアクリル基板のモールド層組成物(商品名:KAD−03、メーカー:ミニュータテック社製)をコーティングした後、インプリンティング方式でHoneycombo typeのパターンを形成した(パターン凸部の幅:10μm〜50μm、凸部の高さ:3μm〜20μm、凹部の幅:300μm〜750μm)。引き続き、インプリンティングされたモールド層の上部に液晶化合物(7306、HCCH社製)2gおよび異方性染料(X12、BASF社製)20mgを含む液晶組成物をコーティングした。次いで、ITO透明電極層が蒸着されたPETフィルム(100mm×100mm)(以下、第2基板)上に樹脂層としてDaipo Paper社のSi−Ahesvieを約10um厚さで転写した。引き続き、樹脂層がモールド層の凹部に接触するように第1基板上部に第2基板を積層した後、条件でFusion UV 70% 3m/min条件で光を照射することによって液晶素子を製造した。
【0114】
比較例1
第2基板上に樹脂層としてDaipo Paper社のSi−Ahesvieの代わりにHenkel社の3193H Adhesvieを約3um厚さで転写したことを除いては実施例1のような方法を遂行して比較例1の液晶素子を製造した。
【0115】
評価例2.実施例および比較例液晶素子の垂直配向可否の評価
実施例1および比較例1で製造された液晶素子を顕微鏡(OM)で観察したイメージを図4に示した。図4に示されたように、比較例1の場合、液晶および染料が垂直配向状態ではないため、ドメインを形成しており、明るさが暗いことを確認することができる。反面、実施例1の場合、液晶と染料が垂直配向状態であるため、ドメインも観察されず、色も明るさが明るいことを確認することができる。
【0116】
評価例3.接着力評価
実施例1および比較例1で製造された液晶素子に対してTexture Analyzerを利用して樹脂層とモールド層の90度剥離力を測定することによって接着力を評価し、その結果を図5および表1に示した。図5に示した通り、実施例1は比較例1に比べて優秀な接着力を示していることが分かる。
【0117】
評価例4.透過度評価
実施例1および比較例1で製造された液晶素子に対し、電圧非印加状態で視野角による直進透過度を評価してその結果を図6に示し、正面での駆動電圧による全体透過度を評価してその結果を図7に示した。視野角による直進透過率は、LCMS−200装備を利用して液晶素子に入射される光の角度による直進透過率変化を測定し、電圧の印加による透過率は上下ITO−PETフィルムのITO層にAC電源を連結して駆動させて印加された電圧による全体透過率をヘイズメータ(NDH−5000SP)を利用して測定した。図7に示した通り、実施例1の液晶素子は電圧非印加状態では高い透過率を表わし、電圧印加状態では低い透過率を表わしていることを確認することができ、これを通じて通常透過モードを具現することが分かる。また、図6に示した通り、実施例1の液晶素子は比較例1の液晶素子に比べて電圧非印加状態で正面および視野角で高い透過率を、すなわち優秀な垂直配向状態を示していることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7