(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(3)において、Qが、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、アルキレン結合、アリーレン結合、ジオルガノシリレン結合、及びシロキサン結合の1種又は2種以上を含む2価の基であることを特徴とする請求項4又は5に記載の物品。
式(3)において、Qが、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、アルキレン結合、アリーレン結合、ジオルガノシリレン結合、及びシロキサン結合の1種又は2種以上を含む2価の基であることを特徴とする請求項13又は14に記載の表面処理剤。
式(1)で示されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの部分加水分解物を、該フルオロオキシアルキル基含有ポリマー100質量部に対し、0.1〜99質量部含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の表面処理剤。
溶剤が、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メトキシパーフルオロエプテン、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、及びヘキサフルオロメタキシレンから選ばれるものである請求項17に記載の表面処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の表面処理された物品は、表面に10nm以下のフッ素層を形成することにより表面処理された物品であって、該フッ素層が末端に繰り返し単位数10〜200のパーフルオロオキシアルキル基を2個以上有するポリマーを含む表面処理剤の硬化被膜によって構成され、かつ該表面のオレイン酸に対する接触角が70°以上であることを特徴とする。
【0014】
ここで、末端に繰り返し単位数10〜200のパーフルオロオキシアルキル基を2個以上有するポリマーとしては、下記一般式(1)で示されるフルオロオキシアルキル基を有するポリマー、その部分加水分解物あるいはその部分加水分解縮合物であることが好ましい。
【化14】
(式中、Rfはそれぞれ異なってよい末端にパーフルオロオキシアルキル基を含む1価の基で、末端のパーフルオロオキシアルキル基の繰り返し単位数が10〜200であり、Wは加水分解性基を少なくとも1個有するn価の基であり、nは2〜5の整数、好ましくは2〜3である。)
【0015】
上記式(1)において、Rfは、独立にそれぞれ異なってよい、末端に繰り返し単位数が10〜200であるパーフルオロオキシアルキル基を含む基である。該基が直鎖型であるか分岐型であるかは問わないが、表面滑り性の観点から直鎖型が好ましい。
【0016】
該パーフルオロオキシアルキル基を含む1価の基(Rf)の構造としては、例えば、下記一般式(3)で示されるものが挙げられる。
CF
3−(CF
2)
d−(OCF
2)
p(OCF
2CF
2)
q(OCF
2CF
2CF
2)
r(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
s(OCF(CF
3)CF
2)
t−O(CF
2)
d−Q− (3)
(式中、dは独立に0〜5の整数であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s+t=10〜200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Qは単結合又は2価の有機基である。)
【0017】
上記式(3)において、dはそれぞれ独立に0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、更に好ましくは1又は2であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0〜200の整数、好ましくはpは5〜150の整数、qは5〜150の整数、rは0〜20の整数、sは0〜20の整数、tは0〜20の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10〜200の整数、好ましくは15〜100の整数、より好ましくは20〜80の整数であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。p、q、r、s、tが200を超えるとパーフルオロオキシアルキル基の分子量が大きすぎるため加水分解性シリル基の官能基当量が小さくなってしまうので、基材への密着性が低下したり、合成時に反応性が悪くなったりする場合がある。また、p+q+r+s+tが上記上限値より大きいと耐摩耗性が悪くなり、上記下限値より小さいとパーフルオロオキシアルキル基の特徴である撥水撥油性、離型性、低動摩擦性を十分に発揮できないおそれがある。
【0018】
また、Qは、単結合又は2価の有機基であり、2価の有機基としては、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、アルキレン結合、アリーレン結合、ジオルガノシリレン結合、シロキサン結合の1種又は2種以上を含む2価の基が例示でき、このような基として、具体的には、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジメチルシリレン基等のジオルガノシリレン基、ケイ素原子数3〜21のジメチルシロキサン基等のジオルガノシロキサン結合からなる群より選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数1〜50の2価の炭化水素基が好ましい。
【0019】
ここで、非置換又は置換の炭素数1〜50の2価の炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)であってよく、更に、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換したものなどが挙げられ、中でも非置換又は置換の炭素数2〜4のアルキレン基、フェニレン基が好ましい。
【0020】
このようなQの例としては、下記のものが挙げられる。なお、Meはメチル基を示す。
【化15】
【0022】
【化17】
(式中、eはそれぞれ独立に2〜50の整数であり、fは1〜20の整数であり、gは2〜20の整数であり、Meはメチル基であり、各基中の炭素数の合計は1〜50である。)
【0023】
Rfとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化18】
(式中、Qは上記と同じであり、d’は上記dと同じであり、p’、q’、r’、s’、t’はそれぞれ1以上の整数であり、その上限は上記p、q、r、s、tの上限と同じであり、p’、q’、r’、s’、t’の合計は10〜200の整数である。)
【0024】
上記式(1)において、Wは加水分解性基を少なくとも1個有するn価の基であり、nは2〜5の整数である。Wの例としては、下記式(2a)〜(2о)から選ばれる基が挙げられる。
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
(式中、Xはそれぞれ独立して加水分解性基を少なくとも1個有する1価の基であり、Aはそれぞれ独立して水酸基、シリルエーテル基又は1価炭化水素基である。)
【0025】
上記式(2a)〜(2о)において、Xの加水分解性基を少なくとも1個、好ましくは1〜3個有する1価の基としては、下記に示すものが挙げられるが、これらに限るものではない。
【化23】
(式中、X’は加水分解性基であり、R
1、R
2はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、j、lはそれぞれ2〜20の整数であり、k、mはそれぞれ2又は3である。)
【0026】
上記式において、R
1、R
2の例としては、メチル基、エチル基、フェニル基が挙げられ、中でもメチル基が好適である。k、mは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から、3が好ましい。j、lは2〜20の整数であり、基材への密着性と表面特性との両立から2〜10の整数が好ましい。
【0027】
また、X’の加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基等の炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基等の炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基、シラザン基などが挙げられる。また、加水分解性基の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0028】
上記式(2a)〜(2о)において、Aはそれぞれ独立して水酸基、シリルエーテル基又は1価炭化水素基である。シリルエーテル基としては、K
3SiO−(Kは独立に水素原子、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基等のアリール基)で示される基が好ましい。また、1価炭化水素基としては、炭素数1〜50、特に1〜20の非置換又は置換1価炭化水素基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換されたもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。Aとしては、これらの中でもメチル基、エチル基、フェニル基、フェニルプロピル基が好ましい。
【0029】
式(1)で示されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーとしては、下記に示すものが例示できる。
【化24】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【化25】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【化26】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【化27】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【0030】
上記式(1)で示されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーは、例えば、下記一般式(4)
W−D
n (4)
(式中、Dは反応性基又はRfで、少なくとも1つは反応性基である。W、n、Rfは上記の通りである。)
で示される、末端に反応性の基、例えばSiH基、不飽和基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を有する化合物(i)と、下記一般式(5)
E−Rf’ (5)
(式中、Eは反応性基であり、Rf’は繰り返し単位数10〜200のパーフルオロオキシアルキル基である。)
で示される、フルオロオキシアルキル基の片末端に反応性の基、例えば不飽和基、SiH基、酸フロライド基、酸クロライド基、カルボキシル基、エステル基を有するフッ素化合物(ii)とを反応させることで製造することができる。
【0031】
上記式(4)において、Dの反応性基としては、ビニル基、アリル基等の炭素数2〜50のアルケニル基、カルボキシル基、エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、SiH基等が挙げられる。
上記式(5)において、Eの反応性基としては、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、アルキレン結合、アリーレン結合、ジメチルシリレン基等のジオルガノシリレン基、シロキサン結合からなる群より選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでいてもよい、末端がビニル基、アリル基等の炭素数2〜50のアルケニル基、ヒドロキシル基、酸フロライド基、酸クロライド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、SiH基である1価の基等が挙げられる。
また、Rf’は、繰り返し単位数10〜200のフルオロオキシアルキル基であり、該フルオロオキシアルキル基としては、下記一般式(6)
CF
3−(CF
2)
d−(OCF
2)
p(OCF
2CF
2)
q(OCF
2CF
2CF
2)
r(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
s(OCF(CF
3)CF
2)
t−O(CF
2)
d− (6)
(式中、d、p、q、r、s、tは上記の通りである。)
で示されるパーフルオロオキシアルキル基であることが好ましい。
【0032】
上記式(4)で示される化合物(i)としては、例えば、下記に示すものが例示できる。
【化28】
【化29】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【化30】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【0033】
上記式(4)で示される化合物(i)の例示において、DとしてRf基を有する化合物の製造方法としては、例えば、DとしてRf基を1つ及びOH基を1つ有し、加水分解性基を有する基を2つ有し、これらが炭素原子に結合するポリマーは、分子鎖片末端に酸フロライド基(−C(=O)−F)を有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと、求核剤としてグリニャール試薬、溶剤として例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、テトラヒドロフランを混合し、0〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは約60℃で、1〜6時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間熟成することで、分子鎖片末端にアリル基を2つ及び水酸基を1つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを得ることができる。ここで、上記分子鎖片末端に酸フロライド基を有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーは、分子鎖片末端に有する基として、上述した酸フロライドの代わりに、酸ハライド、酸無水物、エステル、カルボン酸、アミドなども用いることができる。
更に、上記で得られた分子鎖片末端にアリル基を2つ及び水酸基を1つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリメトキシシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物を、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃で、1〜72時間、好ましくは36〜60時間、より好ましくは約48時間熟成させることで、上記DとしてRf基を1つ及びOH基を1つ有し、加水分解性基を有する基を2つ有し、これらが炭素原子に結合するポリマーを得ることができる。
【0034】
また、DとしてRf基を1つ及びアリル基を2つ有し、加水分解性基を有する基を1つ有し、これらが炭素原子に結合するポリマーは、分子鎖片末端に酸フロライド基(−C(=O)−F)を有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと、求核剤としてグリニャール試薬、溶剤として例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、テトラヒドロフランを混合し、0〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは約60℃で、1〜6時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間熟成することで、分子鎖片末端にアリル基を2つ及び水酸基を1つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを得ることができる。
上記で得られた分子鎖片末端にアリル基を2つ及び水酸基を1つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを、臭化アリル、硫酸水素テトラブチルアンモニウム及びアルカリ存在下、50〜70℃、より好ましくは約60℃で、1〜24時間、好ましくは3〜5時間熟成した後、塩酸で処理することで、分子鎖片末端にアリル基を3つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを得ることができる。
更に、上記で得られた分子鎖片末端にアリル基を3つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリメトキシシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物をアリル基の0.33モル当量加え、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃で、1〜72時間、好ましくは36〜60時間、より好ましくは約48時間熟成させることで、上記DとしてRf基を1つ及びアリル基を2つ有し、加水分解性基を有する基を1つ有し、これらが炭素原子に結合するポリマーを得ることができる。
【0035】
更に、DとしてRf基を1つ及びアリル基を2つ有し、加水分解性基を有する基を1つ有し、これらがケイ素原子に結合するポリマーは、分子鎖片末端にアリル基を有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーと、トリクロロシラン等の分子中にSiH基を1つ及びハロゲン基を3つ有するシランとを、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃で、1〜72時間、好ましくは約24時間熟成させることで、分子鎖片末端にケイ素原子に結合したハロゲン基を3つ有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを得ることができる。
上記で得られた分子鎖片末端にケイ素原子に結合したハロゲン基を3つ有するパーフルオロオキシアルキル基含有ポリマーに、求核剤としてグリニャール試薬、溶剤として例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、テトラヒドロフランを混合し、0〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは約60℃で、1〜6時間、好ましくは3〜5時間、より好ましくは約4時間熟成することで、分子鎖片末端のケイ素原子にアリル基を3つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを得ることができる。
更に、上記で得られた分子鎖片末端のケイ素原子にアリル基を3つ有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーを、溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤に溶解させ、トリメトキシシラン等の分子中にSiH基及び加水分解性末端基を有する有機ケイ素化合物をアリル基の0.33モル当量加え、ヒドロシリル化反応触媒、例えば塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは約80℃で、1〜72時間、好ましくは36〜60時間、より好ましくは約48時間熟成させることで、上記DとしてRf基を1つ及びアリル基を2つ有し、加水分解性基を有する基を1つ有し、これらがケイ素原子に結合するポリマーを得ることができる。
【0036】
上記式(5)で示されるフッ素化合物(ii)としては、例えば、下記に示すものが例示できる。
【化31】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【化32】
(式中、p’、q’は上記と同じであり、p’+q’は10〜200の整数である。)
【0037】
上記式(4)で示される化合物(i)と上記式(5)で示されるフッ素化合物(ii)の反応割合は、化合物(i)中の反応性基とフッ素化合物(ii)中の反応性基とのモル比で1.0:0.5〜1.0:5.0、特に1.0:0.8〜1.0:1.2であることが好ましい。フッ素化合物(ii)中の反応性基量が少なすぎると化合物(i)中の反応性末端基が残存してしまう場合があり、多すぎると反応後の精製が難しくなる場合がある。
【0038】
上記式(4)で示される化合物(i)として、末端にSiH基又は不飽和基を有する化合物と、上記式(5)で示されるフッ素化合物(ii)として、末端に不飽和基又はSiH基を有する化合物とを混合し、定法に従い付加反応触媒、例えば白金族金属系触媒の存在下で付加反応させる場合、この反応に用いる付加反応触媒としては、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等との錯体等、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属系触媒が挙げられる。付加反応触媒の使用量は、上記化合物(i)とフッ素化合物(ii)の合計質量に対して、遷移金属換算(質量)で0.1〜10ppm、特に0.5〜5ppmとなる量が好ましい。
上記化合物(i)とフッ素化合物(ii)とを付加反応触媒の存在下に付加反応させる際の反応条件としては、60〜150℃、特に70〜100℃にて、0.5〜240時間、特に1〜72時間とすることが好ましい。
【0039】
例えば、上記式(1)で示されるフルオロオキシアルキル基含有ポリマーの製造方法として、上記化合物(i)として、反応性の基がSiH基である下記式(7)
【化33】
で示されるオルガノシロキサンを用い、上記フッ素化合物(ii)として、反応性の基がアリル基である下記一般式(8)
Rf’−CH
2CH=CH
2 (8)
(式中、Rf’は上記と同じである。)
で示される化合物を用い、下記式(9)
【化34】
(式中、Rf’は上記と同じである。)
で示される化合物を得る場合の調製方法を更に詳細に説明する。
【0040】
先ず、(i)成分である上記式(7)で示されるオルガノシロキサンの合成方法を説明する。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1モルとビニルトリメトキシシラン0.35モルを適量のトルエンに溶解させ、85℃に昇温した後、触媒として、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体を白金として0.01〜5ppmを投入し、85℃で30分〜24時間熟成する。得られた反応混合物には、トルエン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにビニルトリメトキシシランが1つ付加した化合物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにビニルトリメトキシシランが2つ付加した化合物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにビニルトリメトキシシランが3つ付加した化合物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにビニルトリメトキシシランが4つ付加した化合物が含まれるが、これらは精留により分取することが可能である。例えば、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにビニルトリメトキシシランが1つ付加した化合物の純度を高めたい場合、トルエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを予め留去した後に、精留を実施すると効率よく純度を高めることが可能である。
【0041】
次に、(ii)成分である上記式(8)で示されるフッ素化合物の合成方法を説明する。該化合物は、片方の末端に、酸フロライド基、酸クロライド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エステル基等の官能基を有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマーから常法で誘導できる。例えば、ヒドロキシル基を片末端に有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマー1モルと、アリルブロマイド1モルを反応させることで調製できる。
【0042】
式(7)で示されオルガノシロキサンの反応性基であるSiH基は、触媒存在下、式(8)で示されるフッ素化合物の反応性基であるアリル基と付加反応させることができる。
付加反応は、上記で準備した1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにビニルトリメトキシシランが1つ付加した化合物(式(7)で示されるオルガノシロキサン)1モルとアリル基を末端に有するフルオロオキシアルキル基含有ポリマー(式(8)で示される化合物)3モルを適量の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンに溶解させ、90℃まで昇温した後、触媒として、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体を白金として0.01〜5ppm投入し、90℃で30分〜24時間熟成する。その後、溶媒を留去することで、目的の化合物(式(9)で示される化合物)を得ることができる。
【0043】
なお、上記製造方法の他に、上記式(4)で示される化合物(i)と上記式(5)で示されるフッ素化合物(ii)とを反応させる方法としては、酸フロライド基、酸クロライド基、カルボキシル基とヒドロキシル基との反応を利用したエステル化や、カルボキシル基とアミノ基とを縮合させるアミド化が挙げられ、これらは常法に従って反応させることができる。
【0044】
本発明の表面処理剤は、上記フルオロオキシアルキル基含有ポリマー、その部分加水分解物あるいはその部分加水分解縮合物を主成分とするものである。
ここで、フルオロオキシアルキル基含有ポリマーの部分加水分解物と部分加水分解縮合物は、上記フルオロオキシアルキル基含有ポリマー100質量部に対し、部分加水分解物は0.1〜99質量部含むことが好ましく、部分加水分解縮合物は0.1〜30質量部含むことが好ましい。部分加水分解縮合物が多すぎると、基材と反応する官能基の割合が少なくなるため、密着性が悪くなる。
【0045】
該表面処理剤には、必要に応じて、本発明を損なわない範囲で他の添加剤を配合することができる。具体的には、加水分解縮合触媒、例えば、有機チタン化合物(テトラn−ブチルチタネートなど)、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸、カルボン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよく、フッ素で置換されていると溶解性の点でなお好ましい。これらの中では、特に酢酸、テトラn−ブチルチタネート、パーフロロカルボン酸、ジラウリン酸ジブチル錫などが望ましい。
加水分解縮合触媒の添加量は触媒量であり、通常、上記フルオロオキシアルキル基含有ポリマー、その部分加水分解物あるいはその部分加水分解縮合物の合計100質量部に対して0.01〜5質量部、特に0.1〜1質量部であることが好ましい。
【0046】
該表面処理剤は、適当な溶剤に溶解させてから塗工することが好ましい。このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ1,3−ジメチルシクロヘキサンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(m−キシレンヘキサフルオライド(1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)、ベンゾトリフルオライドなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチルなど)、アルコール系溶剤(イソプロピルアルコールなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メトキシパーフルオロエプテン、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロメタキシレンがより好ましく、特にはエチルパーフルオロブチルエーテルやデカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサンが好ましい。上記溶剤は、1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよく、フルオロオキシアルキル基含有ポリマー、その部分加水分解物及びその部分加水分解縮合物を均一に溶解させるものであることが好ましい。
【0047】
なお、溶剤に溶解させるフルオロオキシアルキル基含有ポリマー、その部分加水分解物あるいはその部分加水分解縮合物の最適濃度は、処理方法により異なるが0.01〜50質量%、特に0.03〜20質量%であることが好ましい。
【0048】
表面処理剤は、ウェット塗工法(刷毛塗り、ディッピング、スプレー、インクジェット)、蒸着法など公知の方法で基材に施与することができる。また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、室温(20℃)から200℃の範囲が望ましい。硬化湿度としては、加湿下で行うことが反応を促進する上で望ましい。
また、硬化被膜(フッ素層)の膜厚は、10nm以下であり、好ましくは3〜10nmであり、より好ましくは4〜8nmである。上記範囲内の膜厚であると光学特性に影響を与えない。従来の表面処理剤は、10nm以下では耐久性が悪く、厚く塗ることで耐久性を向上していたが、コストが高くなるという問題点があり、また、光学特性への影響も懸念されるものであった。
【0049】
上記表面処理剤で処理される基材は、特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、樹脂(プラスチック)、セラミック、石英、サファイヤなど各種材質のものであってよく、ガラス、樹脂であることが好ましく、これらに撥水撥油性、耐薬品性、離型性、低動摩擦性、防汚性を付与することができる。
基板の表面がハードコート処理や反射防止処理されていてもよい。密着性が悪い場合には、プライマー層として、SiO
2層、加水分解性基やSiH基を有するシランカップリング剤層を設けるか、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、アルカリ処理、酸処理等の公知の処理方法で密着性を向上することができる。表面処理剤が加水分解性基を有することから、基板にSiO
2層をプライマーとして設け、その上に該表面処理剤を塗工することが好ましい。なお、ガラス基板等の加水分解性基が基板と直接密着できるような場合には、SiO
2層を設ける必要はないが、SiO
2層を設けた場合に比べて耐久性は劣る。
【0050】
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、カーオーディオ、タブレットPC、スマートフォン、ウェラブル端末、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、ゲーム機器、各種操作パネル、電子公告等に使用される液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイや、メガネレンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、保護フイルム、反射防止フイルム等の光学物品が挙げられる。本発明の表面処理剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、更に傷付き防止性を付与することができるため、特にメガネレンズやタッチパネルディスプレイの撥水撥油層として、またインプリント等の金型離型剤として有用である。
【0051】
本発明の表面処理剤の硬化被膜(フッ素層)が膜厚10nm以下で形成された物品は、該表面のオレイン酸に対する接触角が70°以上、好ましくは72°以上である。該接触角が70°未満では皮脂の汚れが付着し易くなる。接触角は、市販の接触角計を用いて、4μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、1秒後に測定することにより測定できる。更に、本発明の表面処理剤の硬化被膜(フッ素層)が膜厚10nm以下で形成された物品は、布等で摩耗して薄膜になっても、低い動摩擦係数を保つことができる。本発明の表面処理剤は、1分子中にフルオロオキシアルキル基を2個以上有するため、この硬化被膜が単分子膜程度の膜厚でも、滑り性と優れた撥水撥油性を維持することができる。
【実施例】
【0052】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0053】
実施例及び比較例において使用した試験方法は、以下の通りである。
[撥水撥油性の評価方法]
接触角計(協和界面科学社製DropMaster)を用いて、硬化被膜の水接触角及びオレイン酸に対する接触角を25℃、湿度40%で測定した。なお、水接触角は、2μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、1秒後に測定した。オレイン酸接触角は、4μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、1秒後に測定した。
【0054】
[動摩擦係数]
ベンコット(旭化成社製)に対する動摩擦係数を、表面性試験機(新東科学社製HEIDON 14FW)を用いて下記条件で、測定した。
接触面積:10mm×30mm
荷重:100g
【0055】
[離型性の評価]
オートグラフ(島津製作所製AG−IS)を用いて下記条件で剥離力を測定した。
粘着剤処理:ニットーNo.31B(幅19mm;日東電工製)
圧着条件:20g/cm
2荷重
エージング:25℃/24時間
剥離速度:300mm/分、180度方向
【0056】
[耐摩耗試験]
往復摩耗試験機(新東科学社製HEIDON 30S)を用いて、以下の条件で硬化被膜の耐摩耗試験を実施した。
評価環境条件:25℃、湿度40%
擦り材:試料と接触するテスターの先端部(20mm×30mm)に不織布を8枚重ねて包み、輪ゴムで固定した。
荷重:1kg
擦り距離(片道):40mm
擦り速度:4,800mm/min
往復回数:10,000往復
【0057】
[合成例1]
下記式
【化35】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=42)
で示される片末端に不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル1,000gと、下記式
【化36】
で示される両末端にSiH基を有するシロキサン53gと、m−キシレンヘキサフルオライド1,300gと、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.47g(Pt単体として1.2×10
-5モルを含有)を入れて90℃に加熱し、5時間撹拌した。その後、溶剤を減圧溜去し、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル(化合物1)975gを得た。
【0058】
1H−NMRスペクトルから、不飽和基とSiH基のピークが消失し、新たに−Si−CH
2CH
2CH
2−結合が発現したことが確認された。以上の結果から、得られた化合物1の主成分の構造は、下記式で表されるものであることがわかった。
【化37】
【化38】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=42)
【0059】
[合成例2]
下記式
【化39】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=42)
で示される片末端に不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル1,000gと、下記式
【化40】
で示される末端にSiH基を有するシロキサン33gと、m−キシレンヘキサフルオライド1,500gと、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.47g(Pt単体として1.2×10
-5モルを含有)を入れて90℃に加熱し、5時間撹拌した。その後、溶剤を減圧溜去し、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル(化合物2)1,005gを得た。
【0060】
1H−NMRスペクトルから、不飽和基とSiH基のピークが消失し、新たに−Si−CH
2CH
2CH
2−結合が発現したことが確認された。以上の結果から、得られた化合物2の主成分の構造は、下記式で表されるものであることがわかった。
【化41】
【化42】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=42)
【0061】
[合成例3]
合成例2で得られた化合物2を10gとm−キシレンヘキサフルオライド1,000gと水0.21gを24時間撹拌した後、溶剤を減圧留去したところ、微白濁のパーフルオロポリエーテル(化合物3)987gを得た。
【0062】
1H−NMRスペクトルから、SiOCH
3基のピークの25%が消失したことが確認された。以上の結果から、得られた化合物3の主成分の構造は、下記式で表されるものであることがわかった。
【化43】
【化44】
【化45】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=42)
【0063】
[合成例4]
下記式
【化46】
(p1/q1=0.9、p1+q1の合計の平均=45)
で示される両末端に不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル1,100gと、下記式
【化47】
で示される両末端にSiH基を有するシロキサン56gと、m−キシレンヘキサフルオライド1,320gと、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.47g(Pt単体として1.2×10
-5モルを含有)を入れて90℃に加熱し、3時間撹拌した。その後、溶剤を減圧溜去し、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル(化合物4)1,100gを得た。
【0064】
1H−NMRスペクトルから、不飽和基とSiH基のピークが消失し、新たに−Si−CH
2CH
2CH
2−結合が発現したことが確認された。以上の結果から、得られた化合物4の主成分の構造は、下記式で表されるものであることがわかった。
【化48】
【化49】
(p1/q1=0.9、p1+q1の合計の平均=45)
【0065】
[合成例5]
合成例4で得られた化合物4を50gと、下記式
【化50】
で示されるフッ素含有シロキサン8.3gと、m−キシレンヘキサフルオライド100gを混合撹拌し、90℃に加熱後、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.03g(Pt単体として8.1×10
-7モルを含有)を入れて90℃で、3時間撹拌した。その後、溶剤と未反応シロキサンを減圧溜去し、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル(化合物5)52gを得た。
【0066】
1H−NMRスペクトルから、不飽和基とSiH基のピークが消失し、新たに−Si−CH
2CH
2CH
2−結合が発現したことが確認された。以上の結果から、得られた化合物5の主成分の構造は、下記式で表されるものであることがわかった。
【化51】
【化52】
【化53】
(p1/q1=0.9、p1+q1の合計の平均=45)
【0067】
[合成例6]
下記式
【化54】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=45)
で示される片末端に不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル1,000gと、トリメトキシシラン35gと、m−キシレンヘキサフルオライド500gと、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.47g(Pt単体として1.2×10
-5モルを含有)を入れて90℃に加熱し、5時間撹拌した。その後、溶剤を減圧溜去し、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル(化合物6)985gを得た。
【0068】
1H−NMRスペクトルから、不飽和基のピークが消失し、新たに−Si−CH
2CH
2CH
2−結合が発現したことが確認された。以上の結果から、得られた化合物6の主成分の構造は、下記式で表されるものであることがわかった。
【化55】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=45)
【0069】
[合成例7]
下記式
【化56】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=45)
で示される両末端に不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル1,000gと、トリメトキシシラン70gと、m−キシレンヘキサフルオライド500gと、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.47g(Pt単体として1.2×10
-5モルを含有)を入れて90℃に加熱し、5時間撹拌した。その後、溶剤を減圧溜去し、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル(化合物7)1,001gを得た。
【0070】
1H−NMRスペクトルから、不飽和基のピークが消失し、−Si−CH
2CH
2CH
2−結合が発現したことが確認された。以上の結果から、得られた化合物7の主成分の構造は、下記式で表されるものであることがわかった。
【化57】
(p1/q1=1.0、p1+q1の合計の平均=45)
【0071】
[実施例1]
20gの化合物1をフッ素系溶剤Novec7200(エチルパーフルオロブチルエーテル、3M社製)80gに溶解させた溶液1mgを、直径5mm、高さ3mmの銅製の皿に秤量し、抵抗加熱体であるモリブデンボード上に乗せ、真空蒸着機(アルバック機工社製VPC−250F)に装着した。別途、最表面にSiO
2を10nm蒸着処理したガラス(50mm×100mm)(コーニング社製Gorilla2)を前記真空蒸着機内に装着した。真空蒸着機内の圧力が3×10
-3Torr以下の真空になるように排気した後、前記モリブデンボードを300℃以上に加熱し、前記ガラス上に化合物1を真空蒸着した。得られた塗工ガラスを、80℃、湿度80%の雰囲気下で1時間放置した直後及び上記摩耗試験を行った後に、上記各評価を行った。更に、摩耗試験前後のフッ素層(硬化被膜)の平均膜厚を蛍光X線装置(リガク社製ZSXminiII)で測定した。
【0072】
[実施例2]
合成された化合物2を用いて、実施例1と同様の方法で評価した。
【0073】
[実施例3]
合成された化合物3を用いて、実施例1と同様の方法で評価した。
【0074】
[比較例1]
合成された化合物4を用いて、実施例1と同様の方法で評価した。
【0075】
[比較例2]
合成された化合物5を用いて、実施例1と同様の方法で評価した。
【0076】
[比較例3]
合成された化合物6を用いて、実施例1と同様の方法で評価した。
【0077】
[比較例4]
合成された化合物7を用いて、実施例1と同様の方法で評価した。
【0078】
被膜を調製した直後の評価結果を表1に、摩耗試験に付した後の評価結果を表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1、2に示すように、実施例1〜3(化合物1〜3)の硬化被膜は、摩耗試験後においても、水接触角が110°以上、オレイン酸接触角が70°以上で、動摩擦係数が0.10以下で、離型性が0.05N/19mm以下と優れていた。
比較例1(化合物4)の硬化被膜は、動摩擦係数は摩耗後においても0.10以下であったが、末端が非フッ素基のため、初期の水接触角が110°未満、初期のオレイン酸接触角が70°未満であった。
比較例2(化合物5)の硬化被膜は、末端はフッ素基で置換されているもののフッ素基が短いために、比較例1と同様に初期の水接触角及びオレイン酸接触角が低かった。
比較例3(化合物6)の硬化被膜は、初期の特性は優れていたが、摩耗後には、動摩擦係数が0.10以上に上昇してしまった。初期の低い動摩擦係数は、基材に結合した成分のフルオロオキシアルキル鎖と結合していない成分との境界潤滑により発揮されるが、摩耗により基材と結合していない成分が取り除かれると、動摩擦係数が上昇すると考えられる。本発明のポリマーは、同一分子内に2つ以上のフルオロオキシアルキル鎖を有することから、分子内で潤滑を引き起こすことができるため、薄膜でも低い動摩擦係数を維持できるものと考えられる。
比較例4(化合物7)の硬化被膜は、両末端に加水分解性基を有する化合物であるため、初期及び摩耗後のいずれにおいても接触角が低く、動摩擦係数が高く、離型性が高かった。