(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2に記載の放射状共役ジエン系ゴム、または、請求項3に記載の変性放射状共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10〜200重量部を含有してなるゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<放射状共役ジエン系ゴムの製造方法>
本発明の放射状共役ジエン系ゴムの製造方法は、後述する一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物の存在下で、該アルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属1モルに対して、イソプレン65〜500モルを重合させることで、活性末端を有する放射状イソプレン重合体を得る第1工程と、前記放射状イソプレン重合体の活性末端に、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体を重合させる第2工程と、を備える。
【0013】
<第1工程>
まず、本発明の製造方法における、第1工程について説明する。本発明の製造方法における、第1工程は、下記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物の存在下で、該アルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属1モルに対して、イソプレン65〜500モルを反応させることで、活性末端を有する放射状イソプレン重合体を得る工程である。
【化2】
【0014】
上記一般式(1)中、R
1〜R
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、およびアルカリ金属原子がα位(一般式(1)中に示される芳香環のα位)に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基から選択される基を表し、R
1〜R
8の3個以上が、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基である。また、mは0〜5の整数であり、mが2以上である場合には、上記一般式(1)で表される構造にかかわらず、3個以上存在するベンゼン環は互いに任意の位置で縮合したものであってもよい。なお、上記「それぞれ独立して」とは、例えば、mが2以上である場合、R
5およびR
8はそれぞれ複数存在するが、複数あるR
5およびR
8も、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよいとの意味である。
【0015】
上記一般式(1)においては、mは0で、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、およびR
7のうち3個が、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基であり、かつ、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、およびR
7のうち残りが水素原子であることが好ましい。また、アルカリ金属原子としては、特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであることが好ましく、これらのなかでも、リチウムが特に好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物は、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基が、1つの芳香環に対して3個以上結合してなるアルカリ金属化芳香族化合物であり、該アルカリ金属化芳香族化合物においては、前記アルカリ金属原子は、アルカリ金属化芳香族化合物内において、通常、カチオンの状態で存在しており、また、該アルカリ金属原子と直接結合するα位の炭素原子は、このようなカチオンの状態のアルカリ金属原子と結合するために、通常、アニオンの状態で存在している。そして、本発明で用いるアルカリ金属化芳香族化合物中においては、このようにカチオンの状態で存在するアルカリ金属原子と、アニオンの状態で存在する炭素原子とがイオン結合を形成し、これにより互いに直接結合した状態となっている。
【0017】
本発明の製造方法の第1工程においては、重合開始剤として、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物、すなわち、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基が、1つの芳香環に対して3個以上結合してなるアルカリ金属化芳香族化合物を用い、これをイソプレンと反応させることにより、該アルカリ金属化芳香族化合物に含まれる3個以上のアルカリ金属原子が直接結合したα位の炭素原子のそれぞれを重合開始点として、イソプレン鎖がリビング重合性を伴って成長することとなる。そのため、重合により得られるイソプレン重合体を放射状の構造を有するものとすることができる。
【0018】
本発明において重合開始剤として用いられるアルカリ金属化芳香族化合物の合成方法は特に限定されないが、下記一般式(2)で表される芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させて得られたものが好適に用いられる。
【化3】
上記一般式(2)中、R
9〜R
16は、それぞれ独立して水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基であり、R
9〜R
16のうち3個以上が炭素数1〜10のアルキル基である。mは、0〜5の整数であり、mが2以上である場合には、上記一般式(2)で表される構造にかかわらず、3個以上存在するベンゼン環は互いに任意の位置で縮合したものであってもよい。なお、上記「それぞれ独立して」とは、例えば、mが2以上である場合、R
13およびR
16はそれぞれ複数存在するが、複数あるR
13またはR
16も、同一であってもよいし、異なっていてもよいとの意味である。
【0019】
上記一般式(2)において、mは0で、R
9、R
10、R
11、R
12、R
14、およびR
15のうち3個が炭素数1〜10のアルキル基であり、かつ、R
9、R
10、R
11、R
12、R
14、およびR
15のうち残りが水素原子であることが好ましい。
【0020】
上記一般式(2)で表される芳香族化合物の具体例としては、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1,2,3−トリエチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,2,3−トリプロピルベンゼン、1,2,4−トリプロピルベンゼン、1,3,5−トリプロピルベンゼン、1,3,5−トリブチルベンゼン、1,3,5−トリペンチルベンゼン、などの3個以上のアルキル基を有するベンゼン類;2,3,5−トリメチルナフタレン、1,4,5−トリメチルナフタレンなどの3個以上のアルキル基を有するナフタレン類;などを挙げることができる。これらのなかでも、3個以上のアルキル基を有するベンゼン類が好ましく、1,3,5−トリメチルベンゼンがより好ましい。
【0021】
本発明で用いるアルカリ金属化芳香族化合物を合成するために用いられる有機アルカリ金属化合物としては、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基を有するアルカリ金属化合物が好適に用いられ、その具体例としては、メチルリチウム、メチルナトリウム、メチルカリウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、エチルカリウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルカリウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ブチルナトリウム、n−ブチルカリウム、n−ペンチルリチウム、n−アミルリチウム、n−オクチルリチウム、フェニルリチウム、ナフチルリチウム、フェニルナトリウム、ナフチルナトリウムなどが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基を有するアルカリ金属化合物が好ましく、アルキル基を有するリチウム化合物がより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。
【0022】
上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を合成するために、アルキル(またはアリール)カリウムやアルキル(またはアリール)ナトリウムを用いる場合は、アルキル基またはアリール基を有するリチウム化合物と、アルコキシル基を有するカリウムまたはナトリウム化合物とを混合することにより、目的とするカリウムまたはナトリウム化合物を得てもよい。このとき用いられるアルコキシル基を有するカリウムまたはナトリウム化合物としては、t−ブトキシカリウムやt−ブトキシナトリウムが例示される。アルコキシル基を有するカリウムまたはナトリウム化合物の使用量は、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基を有するリチウム化合物1モルに対して、例えば、0.1〜5.0モル、好ましくは0.2〜3.0モル、より好ましくは0.3〜2.0モルである。
【0023】
上記一般式(2)で表される芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させる方法は特に限定されるものではないが、不活性雰囲気下、不活性溶媒中で反応させる方法が好ましく用いられる。用いられる不活性溶媒は、反応させる化合物を溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などが挙げられる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記一般式(2)で表される芳香族化合物に対する、有機アルカリ金属化合物の使用量も特に限定されるものではないが、芳香族化合物中の芳香環に直接結合した炭素原子1モルに対して、通常0.1〜100モル、好ましくは0.2〜50モル、より好ましくは0.3〜10モル、特に好ましくは0.3〜1.1モルである。この反応の反応時間、反応温度も特に限定されないが、反応時間は、通常1分〜10日、好ましくは1分〜5日の範囲であり、反応温度は、通常−50℃〜100℃の範囲である。
【0024】
また、上記一般式(2)で表される芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させるにあたり、反応を促進させる目的で、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させてもよい。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物としては、ヘテロ原子を含有するルイス塩基化合物が好適に用いられ、これらのなかでも、窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物が特に好適に用いられる。窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物の具体例としては、ジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジメトキシベンゼン、ジメトキシエタン、ジグライム、エチレングリコールジブチルエーテルなどの鎖状エーテル化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物;ピリジン、ルチジン、1−メチルイミダゾールなどの含窒素複素環化合物;ビステトラヒドロフリルプロパンなどの分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、(−)−スパルテイン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンなどの分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物;ヘキサメチルホスホアミドなどの分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物;などが挙げられる。
【0025】
アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、特に限定されず、その配位能の強さに応じて決定すればよい。例えば、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が弱い化合物である、鎖状エーテル化合物や分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物を用いる場合、その使用量は、上記一般式(2)で表される芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは5〜50モル、より好ましくは10〜25モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、配位能が中程度である化合物である、分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物や含窒素複素環化合物を用いる場合、その使用量は、上記一般式(2)で表される芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは1〜20モル、より好ましくは2〜10モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が強い化合物である、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物や分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物や分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物を用いる場合、その使用量は、上記一般式(2)で表される芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.01〜2モル、より好ましくは0.01〜1.5モルの範囲である。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、反応が進行しなくなるおそれがある。なお、これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物の生成効率を特に良好とし、イソプレンと反応させた際に、得られるイソプレン重合体中における放射状のイソプレン重合体の割合を高める観点からは、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物を用い、その使用量を、上記一般式(2)で表される芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、0.02〜0.4モルの範囲とすることが特に好ましい。
【0027】
上記一般式(2)で表される芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させるにあたり、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させる場合において、それぞれの添加順序は特に限定されない。ただし、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物の生成効率を特に良好とする観点からは、上記一般式(2)で表される芳香族化合物および有機アルカリ金属化合物を共存させた後、その系にアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を添加する順序、または芳香族化合物およびアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させた後、その系に有機アルカリ金属化合物を添加する順序が好適である。このような順序で添加を行うことにより、有機アルカリ金属化合物とアルカリ金属原子への配位能を有する化合物との錯体形成による不溶化が防止され、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物の生成効率が特に良好となる。
【0028】
本発明の製造方法の第1工程においては、たとえば、以上のようにして得られる、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を重合開始剤として用いて、該アルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属1モルに対して、イソプレン65〜500モルを重合させることで、活性末端を有する放射状イソプレン重合体を得るものである。本発明においては、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物に、イソプレンを重合させることにより、溶媒に対する相溶性を向上させることができるものである。すなわち、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物の形態では、重合に用いる不活性溶媒に対する相溶性が低いものである一方で、本発明によれば、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物に、イソプレンを重合させ、これにより、イソプレン重合体鎖を導入することで、イソプレン重合体鎖の作用により、溶媒に対する相溶性を向上させるものである。特に、本発明によれば、このようにして得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体は、重合に用いる不活性溶媒に溶解させることができる。
【0029】
なお、本発明の製造方法の第1工程における、イソプレンの使用量は、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属1モルに対して、65〜500モルであり、好ましくは65〜400モル、より好ましくは70〜300モルである。イソプレンの使用量が少なすぎると、重合に用いる不活性溶媒に対する相溶性向上効果が得られなくなり、製造安定性が低下してしまうおそれがある。一方、イソプレンの使用量が多すぎると、得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体を溶媒に溶解した際に溶液粘度が高くなってしまい、操作性が低下してしまうおそれがある。
【0030】
なお、本発明の第1工程において、得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,500〜100,000、より好ましくは3,000〜75,000、さらに好ましくは4,500〜60,000である。数平均分子量(Mn)が小さすぎると、重合に用いる不活性溶媒に対する相溶性向上効果が得られなくなるおそれがある。一方、数平均分子量(Mn)が大きすぎると、得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体を溶媒に溶解した際に溶液粘度が高くなってしまい、操作性が低下してしまうおそれがある。なお、得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜2.0である。活性末端を有する放射状イソプレン重合体の分子量分布を上記範囲とすることにより、製造安定性を向上させることができる。
【0031】
また、イソプレンの重合反応を行うに際しては、重合速度や得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体のミクロ構造を制御する目的で、重合反応系に、上述したようなアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を添加してもよい。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常、5モル以下、好ましくは4モル以下、特に好ましくは2モル以下である。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、重合反応を阻害するおそれがある。なお、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を調製する際に、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を用いた場合は、その化合物を含有する溶液をそのまま使用することもできる。
【0032】
特に、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物を、重合開始剤として用いるアルカリ金属化合物(ここでいうアルカリ金属化合物は、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物に限られず、反応系中に存在し、重合開始剤として働くアルカリ金属化合物全てを含むものである)中のアルカリ金属原子1モルに対して、0.02〜3.0モルの範囲で存在させることが好ましい。このようにすることで、得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体の溶媒に対する相溶性を向上させることができる。
【0033】
得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体のイソプレン単位部分におけるビニル結合含有量は、通常1〜90モル%であり、好ましくは5〜80モル%である。
【0034】
また、本発明の製造方法の第1工程において用いる不活性溶媒としては、重合反応において不活性な溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。これらのなかでも、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を溶媒として用いると重合活性が高くなるので好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
重合反応に供される重合溶液中のイソプレンの濃度は、特に限定されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%の範囲で選択される。溶液中のイソプレンの濃度が低すぎると、活性末端を有する放射状イソプレン重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜+180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分〜100時間の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式を採用してもよい。
【0036】
なお、本発明において、上述した第1工程で得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体は、イソプレンのみを重合することにより得られるものであることが好ましいが、本発明の効果を本質的に損なわない範囲で、その他の単量体を共重合することを排除するものではない。
【0037】
<第2工程>
次いで、本発明の製造方法における、第2工程について説明する。
本発明の製造方法における、第2工程は、上述した第1工程で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体の活性末端に、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体を重合させて、放射状共役ジエン系ゴムを得る工程である。すなわち、本発明の製造方法の第2工程は、上述した第1工程で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体の活性末端を、重合開始末端として、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体を重合させて、放射状共役ジエン系ゴムを得る工程である。
【0038】
なお、本発明の製造方法の第2工程においては、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体の重合反応は、リビング性を伴って進行するので、これにより得られる放射状共役ジエン系ゴムも活性末端を有するものとなる。
【0039】
本発明の製造方法の第2工程においては、重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物のうち、芳香族ビニル化合物を用いず、1,3−ブタジエンのみを用いて、放射状イソプレン重合体の活性末端に、1,3−ブタジエンを含む重合体鎖を導入してもよいし、あるいは、重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物の両方を用いて、放射状イソプレン重合体の活性末端に、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む重合体鎖を導入してもよく、目的に応じて、適宜選択すればよい。なお、いずれの場合においても、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物以外の他の単量体を併用して、他の単量体との共重合体としてもよい。
【0040】
たとえば、上記一般式(1)でアルカリ金属化芳香族化合物として、m=0であり、R
2、R
4、R
7が、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基であり、R
1、R
3、R
6が水素原子であるものを用いた場合を例示すると、第2工程における重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンのみを用いた場合には、下記一般式(3)で表される放射状共役ジエン系ゴムが得られる。また、第2工程における重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物のみを用いた場合には、下記一般式(4)で表される放射状共役ジエン系ゴムが得られる。
【化4】
【化5】
なお、上記一般式(3)、(4)において、R
17〜R
19は、水素原子または炭素数1〜9のアルキル基であり、Pol
IPはイソプレン重合体鎖、Pol
Buはブタジエン重合体鎖、Pol
(Bu−Ar)は、ブタジエン−芳香族ビニル重合体鎖である。なお、Pol
Buで表されるブタジエン重合体鎖、およびPol
(Bu−Ar)で表されるブタジエン−芳香族ビニル重合体鎖は、リビング重合性を伴って成長するため、これら重合体鎖は、通常、重合体鎖末端に、アルカリ金属原子が結合してなる活性末端を有している。
【0041】
すなわち、重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンのみを用いた場合には、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を形成していた芳香族化合物を中心とし、イソプレン重合体鎖を介して、ブタジエン重合体鎖が放射状に形成されることとなる。また、重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を用いた場合には、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を形成していた芳香族化合物を中心とし、イソプレン重合体鎖を介して、ブタジエン−芳香族ビニル重合体鎖が放射状に形成されることとなる。なお、上記一般式(3)、(4)として、重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンのみを用いた場合、および、重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物のみを用いた場合を例示したが、いずれの場合においても、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物以外の他の単量体を併用して、他の単量体との共重合体としてもよい。
【0042】
重合に用いる単量体としての芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、または4−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。なお、これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。活性末端を有する共役ジエン系ゴム中のブタジエン−芳香族ビニル重合体鎖における、1,3−ブタジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは50〜100重量%であり、より好ましくは55〜90重量%である。また、芳香族ビニル化合物単位の含有割合は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは10〜45重量%である。
【0043】
本発明の製造方法の第2工程において、重合に用いる単量体として1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を用いる場合の、共重合の様式は特に限定されず、ランダム状、ブロック状、テーパー状などのいずれであってもよいが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性を向上させることができる。
【0044】
また、本発明の製造方法の第2工程においては、本発明の目的を損なわない範囲において、所望により、1,3−ブタジエン、および芳香族ビニル化合物に加えてそれら以外の他の単量体を含有する単量体を共重合してなるものであってもよい。ただし、この際における、これらの他の単量体単位の含有割合は、第2工程において導入する、活性末端を有する共役ジエン系ゴム中のブタジエン重合体鎖中、または、ブタジエン−芳香族ビニル重合体鎖中において、10重量%以下、好ましくは5重量%以下とする。このような他の単量体としては、例えば、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどの1,3−ブタジエン以外の共役ジエン化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。
【0045】
なお、活性末端を有する放射状イソプレン重合体の活性末端1モルに対する、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体の使用量は、特に限定されないが、好ましくは300〜20,000モル、より好ましくは900〜15,000モル、特に好ましくは1,200〜10,000モルである。これらの使用量が上記範囲であると、十分な長さのブタジエン重合体鎖、または、ブタジエン−芳香族ビニル重合体鎖が得られる。
【0046】
本発明の製造方法の第2工程において、活性末端を有する放射状イソプレン重合体の活性末端に、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体を重合させる際には、該重合は、不活性溶媒中において行うが、不活性溶媒としては、上述した第1工程と同様のものを用いることができ、重合の制御の観点より、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体が溶解している溶液中に、上述した第1工程において得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体を加えることが好ましい。なお、該放射状イソプレン重合体は、調製に用いた不活性溶媒に溶解させたままの状態として、そのまま用いることが好ましい。上述したように、本発明で用いる活性末端を有する放射状イソプレン重合体は、重合に用いる不活性溶媒に対する相溶性が高く、特に、重合に用いる不活性溶媒に溶解した状態とすることができるものである。そのため、本発明によれば、重合開始点として作用する、活性末端を有する放射状イソプレン重合体を不活性溶媒に溶解した状態にて、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体の重合反応を行うことができ、これにより、製造工程におけるバラツキを解消することができ、これにより製造安定性を向上させることができるものである。
【0047】
また、重合反応を行うに際しては、重合速度や得られる放射状共役ジエン系ゴムのミクロ構造を制御する目的で、重合反応系に、上述したようなアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を添加してもよい。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常、5モル以下、好ましくは4モル以下、特に好ましくは2モル以下である。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、重合反応を阻害するおそれがある。なお、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物および活性末端を有する放射状イソプレン重合体を調製する際に、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を用いた場合は、その化合物を含有する溶液をそのまま使用することもできる。
【0048】
特に、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物を、重合開始剤として用いるアルカリ金属化合物(ここでいうアルカリ金属化合物は、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物に限られず、反応系中に存在し、重合開始剤として働くアルカリ金属化合物全てを含むものである)中のアルカリ金属原子1モルに対して、0.02〜3.0モルの範囲で存在させることが好ましい。このようにすることで、得られる放射状共役ジエン系ゴムのビニル結合量を適度な範囲とすることでき、その結果として、得られるゴム架橋物は低発熱性に優れたものとなる。
【0049】
重合反応に供する重合溶液中の単量体の濃度は、特に限定されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%の範囲で選択される。溶液中の単量体の濃度が低すぎると、放射状共役ジエン系ゴムの生産性が悪くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜+180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分〜100時間の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式をも採用できるが、1,3−ブタジエンと芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、1,3−ブタジエン単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすいという点より、回分式が好ましい。
【0050】
以上のようにして、上述した第1工程で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体を用いて、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体を重合することで、放射状共役ジエン系ゴムを得ることができる。なお、本発明の製造方法においては、通常、上述した重合反応はリビング性を伴って進行するので、本発明の製造方法において得られる放射状共役ジエン系ゴムは、活性末端を有するものとなる。このようにして得られる活性末端を有する放射状共役ジエン系ゴムは、アルコールや水などの反応停止剤を反応させてもよいが、この活性末端と反応しうる任意の変性剤を反応させて、変性放射状共役ジエン系ゴムとしてもよい。このように変性放射状共役ジエン系ゴムを得ることにより、得られる放射状共役ジエン系ゴムを変性剤により改質することができ、例えば、シリカなどの充填剤に対する親和性を向上することができる。
【0051】
変性放射状共役ジエン系ゴムを得るために用いる変性剤は、該ゴムの活性末端と反応しうる変性剤であれば、特に限定されないが、好ましくは、該ゴムの活性末端と反応することができる原子または反応基を一つ有しているシラン化合物である。
【0052】
このような変性剤としては、たとえば下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
上記一般式(5)において、X
1は、前記放射状共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる原子もしくは反応基、または前記原子もしくは前記反応基のいずれか一つを含む炭化水素基であり、R
20〜R
23は、それぞれ独立して、化学的な単結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
24〜R
29は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、R
24〜R
29は、R
24とR
25との組み合わせ、R
26とR
27との組み合わせ、またはR
28とR
29との組み合わせにて互いに結合して、窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0053】
上記一般式(5)において、放射状共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる原子もしくは反応基としては、特に限定されず、該活性末端と反応可能なものであればよいが、活性末端に対する反応性の観点より、ハロゲン原子、ビニル基、アルコキシル基、アミノ基またはエポキシ基が好ましく、エポキシ基またはハロゲン原子がより好ましく、ハロゲン原子がさらに好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0054】
上記一般式(5)において、前記原子もしくは前記反応基のいずれか一つを含む炭化水素基としては、特に限定されないが、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。なお、この炭素数には、前記反応基を構成している炭素の数は含まないものとする。
【0055】
また、上記一般式(5)において、R
20〜R
23は、それぞれ独立して、化学的な単結合または炭素数1〜10のアルキレン基であり、好ましくは、化学的な単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、化学的な単結合であることが特に好ましい。
【0056】
さらに、上記一般式(5)において、R
24〜R
29は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0057】
すなわち、上記一般式(5)で表される化合物のなかでも、その添加効果が特に高いという観点より、上記一般式(5)において、X
1が塩素原子であり、R
20〜R
23が全て化学的な単結合であり、R
24〜R
29が全てメチル基である化合物が、特に好適である。
【0058】
あるいは、変性剤としては、下記一般式(6)で表される化合物を用いることもできる。
【化7】
上記一般式(6)において、R
30、R
39〜R
47のうちいずれか一つは、前記放射状共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる原子もしくは反応基または前記原子もしくは反応基のいずれか一つを含む炭化水素基であり、R
30、R
39〜R
47のうち残りは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。R
31〜R
38は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。q,r,s,tはそれぞれ独立して0〜100の整数である。なお、上記「R
31〜R
38は、それぞれ独立して」とは、例えば、q,r,s,tが、それぞれ2以上である場合、R
31〜R
38はそれぞれ複数存在するが、複数あるR
31、R
32、R
33、R
34、R
35、R
36、R
37、またはR
38も、同一であってもよいし、異なっていてもよいとの意味である。
【0059】
上記一般式(6)において、放射状共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる原子もしくは反応基としては、特に限定されず、該活性末端と反応可能なものであればよいが、活性末端に対する反応性の観点より、ハロゲン原子、ビニル基、アルコキシル基、アミノ基またはエポキシ基が好ましく、エポキシ基またはハロゲン原子がより好ましく、ハロゲン原子がさらに好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0060】
上記一般式(6)において、前記原子もしくは反応基のいずれか一つを含む炭化水素基としては、特に限定されないが、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。なお、この炭素数には、前記反応基を構成している炭素の数は含まないものとする。
【0061】
また、上記一般式(6)においては、R
30、R
39〜R
47のうちいずれか一つが、放射状共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる原子もしくは反応基または前記原子もしくは反応基のいずれか一つを含む炭化水素基であればよいが、R
30が、放射状共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる原子もしくは反応基または前記原子もしくは反応基のいずれか一つを含む炭化水素基であり、残りのR
39〜R
47が、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましい。また、R
39〜R
47としては、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0062】
また、上記一般式(6)において、q,r,s,tはそれぞれ独立して0〜100の整数であり、変性効果をより高めることができるという点より、q,r,s,tは0〜10の整数であることが好ましく、q,r,s,tは全て0であることが特に好ましい。
【0063】
すなわち、上記一般式(6)で表される化合物のなかでも、R
30が塩素であり、R
39〜R
47が全てメチル基であり、q,r,s,tが全て0である化合物が、好適に使用することができる。
【0064】
変性剤の使用量は、特に限定されないが、重合開始剤として使用した上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たりの、放射状共役ジエン系ゴムの活性末端と反応することができる原子または反応基の量が、0.05〜5モルの範囲となる量とすることが好ましく、0.1〜3モルとなる量とすることがより好ましく、0.5〜1.5モルとなる量とすることが特に好ましい。変性剤の使用量を上記範囲とすることにより、その添加効果をより顕著なものとすることができる。なお、変性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上述した第2工程で得られた放射状共役ジエン系ゴムの活性末端に、変性剤を反応させる方法としては、特に限定されないが、放射状共役ジエン系ゴムと、変性剤とを、これらを溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した第1工程および第2工程に用いる不活性溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第2工程で得られた放射状共役ジエン系ゴムを、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここに変性剤を添加する方法が簡便であり、好ましい。変性反応における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
【0066】
放射状共役ジエン系ゴムに、変性剤等を反応させずに未反応の活性末端が残存している場合、または放射状共役ジエン系ゴムに、変性剤を反応させた後に、未反応の活性末端が残存している場合、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール又は水等の、重合停止剤を重合溶液に添加して、未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0067】
以上のようにして得られる放射状共役ジエン系ゴムの溶液には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合して、油展ゴムとしてもよい。伸展油としては、例えば、パラフィン系、芳香族系、およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸等が挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、放射状共役ジエン系ゴム100重量部に対して、通常5〜100重量部である。また、重合反応後または変性反応後の放射状共役ジエン系ゴムは、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)等の、ゴムを溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離し、固形状の放射状共役ジエン系ゴムを取得することができる。
【0068】
以上のような本発明の放射状共役ジエン系ゴムの製造方法によれば、重合開始剤として用いる上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物が、3個以上のアルカリ金属原子が直接結合したα位の炭素原子のそれぞれを重合開始点として、共役ジエン重合体鎖(イソプレン重合体鎖、ブタジエン重合体鎖、ブタジエン−芳香族ビニル重合体鎖)がリビング重合性を伴って成長するので、制御良く放射状の構造を有する共役ジエン系ゴムを得ることが可能となる。ただし、本発明の放射状共役ジエン系ゴムの製造方法では、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物のアルカリ金属化の度合いを制御することにより、放射状共役ジエン重合体と直鎖状共役ジエン重合体とが混在する重合体混合物を得ることも可能である。
【0069】
なお、本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴム中における、3分岐以上の共役ジエン系ゴムの割合は、特に限定されないが、通常、10〜100重量%であり、好ましくは、20〜100重量%である。このような割合で3分岐以上の共役ジエン系ゴム含有することにより、放射状共役ジエン系ゴムの加工性をより向上させることができ、しかも、シリカなどの充填剤などとの親和性をより高めることができる。
【0070】
本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、例えば、10,000〜3,000,000、好ましくは50,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,500,000の範囲である。放射状共役ジエン系ゴムの数平均分子量を上記範囲とすることにより、放射状共役ジエン系ゴムへのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物の加工性が優れたものとなる。
【0071】
また、本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.1〜5.0、特に好ましくは1.2〜3.0である。放射状共役ジエン系ゴムの分子量分布を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性が優れたものとなる。
【0072】
また、本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)も、特に限定されないが、通常、20〜150、好ましくは30〜120の範囲である。放射状共役ジエン系ゴムのムーニー粘度を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなる。なお、放射状共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0073】
また、本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴムの共役ジエン単位部分におけるビニル結合含有量は、通常1〜90モル%であり、好ましくは5〜80モル%である。ビニル結合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性に優れたものとなる。
【0074】
このようにして得られる本発明の放射状共役ジエン系ゴムは、上述したように、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体を重合する際に、重合開始点として、活性末端を有する放射状イソプレン重合体を用いるものであり、該放射状イソプレン重合体は、重合に用いる不活性溶媒に対する相溶性が高いものである。そのため、重合開始点として作用する活性末端を有する放射状イソプレン重合体を、重合に用いる不活性溶媒に良好に溶解させた状態にて、1,3−ブタジエン、または、1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有する単量体の重合を進行させることができ、これにより、製造工程におけるバラツキの発生を防止することができ、結果として、製造安定性の向上が可能となる。
【0075】
加えて、このようにして得られる本発明の放射状共役ジエン系ゴムは、その製造工程上、イソプレン重合体鎖を含有するものであり、本発明の放射状共役ジエン系ゴムに、シリカなどの配合剤を配合し混練した際に、イソプレン重合体鎖のうち一部において切断が起こり、配合物粘度(コンパウンド・ムーニー粘度)が低下し、これにより優れた加工性を実現するものである。さらには、このように切断したイソプレン重合体鎖の末端が、シリカなどの配合剤と相互作用することで、シリカなどの配合剤に対する親和性が向上するという効果を奏することもできる。
【0076】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴム(変性放射状共役ジエン系ゴム)を含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10〜200重量部を含有してなる組成物である。
【0077】
本発明で用いるシリカとしては、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m
2/g、より好ましくは80〜220m
2/g、特に好ましくは100〜170m
2/gである。また、シリカのpHは、pH5〜10であることが好ましい。
【0078】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10〜200重量部であり、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜100重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなり、得られるゴム架橋物のウェットグリップ性が優れたものとなる。
【0079】
本発明のゴム組成物には、低発熱性を向上させるという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0080】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
【0081】
なお、本発明の放射状共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や放射状共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0082】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0083】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0084】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0085】
架橋活性化剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
【0086】
また、本発明のゴム組成物には、上述した本発明の製造方法によって得られる放射状共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス−BR、低シスBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのうち、上述した本発明の製造方法によって得られる放射状共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の放射状共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、ウェットグリップ性が向上されたゴム架橋物を得ることができる。
【0088】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、例えば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と放射状共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と放射状共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0089】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
【0090】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0091】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0092】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる放射状共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、ウェットグリップ性に優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、例えば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、ウェットグリップ性に優れることから、タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0094】
〔ゴムの分子量〕
ゴムの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8320」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結したものを用いた。
検出器:示差屈折計(東ソー社製、商品名「RI−8320」)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0095】
〔ゴムの分岐度〕
ゴムの分岐度は、多角度光散乱光度計により測定した。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
ポンプ:Waters社製、商品名「MODEL515」
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−M」を三本直列に連結したものを用いた。
検出器:示差屈折計(Waters社製、商品名「RI−2414」)
検出器:多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製、商品名「DAWN EOS」)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:23℃
【0096】
〔ゴムのミクロ構造〕
1H−NMRにより測定した。
測定器:JEOL社製、商品名「JNM−ECA−400WB」
測定溶媒:重クロロホルム
【0097】
〔重合開始剤のリチオ化率〕
GC−MSにより測定した。
GC:アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent GC 6890NGC」
MS:アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent MS 5973MSD」
カラム:アジレント・テクノロジー社製、商品名「DB1701」
【0098】
〔重合開始剤、活性末端を有する放射状イソプレン重合体のシクロヘキサンに対する溶解性〕
各製造例で製造した重合開始剤、および活性末端を有する放射状イソプレン重合体について、これらを作製した後、得られた重合開始剤または活性末端を有する放射状イソプレン重合体のシクロヘキサン溶液を、1日静置し、重合開始剤または活性末端を有する放射状イソプレン重合体の沈殿が発生するか否かを目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○:沈殿物が確認できなかった。
×:沈殿物が発生していた。
【0099】
〔配合物粘度(コンパウンド・ムーニー)〕
ゴム組成物の配合物粘度(ML
1+4,100℃)(コンパウンド・ムーニー)は、JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定した。この特性については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム組成物の配合物粘度が低く、加工性に優れる。
【0100】
〔ウェットグリップ性〕
ウェットグリップ性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片について、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、製品名「ARES」)を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。この特性については、比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際のウェットグリップ性に優れる。
【0101】
〔製造例1〕
〔リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼンの製造〕
窒素雰囲気下、ガラス反応容器に、シクロヘキサン16部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.841部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.813部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム1.345部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン0.3モルとなる量)を加え、反応温度60℃にて2日間攪拌しながら反応させ、リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼンの溶液18.999部を得た。次に、反応により得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化率を測定する目的で、得られた反応液をトリメチルシリルクロライドを過剰量加えたガラス容器に数滴加え、30分間反応させた。水道水にて触媒残渣を抽出洗浄した後に溶媒を留去することで、黄色いオイル状の液体を得た。
【0102】
そして、この黄色いオイル状の液体につき、ガスクロマトグラフ質量分析測定(GC−MS)を行った。結果は以下の通りであった。
EI−MS,m/z=120(M+)(3%),m/z=192(M+)(3%),m/z=264(M+)(24%),m/z=336(M+)(70%)。Mw=120(3%)、Mw=192(3%)、Mw=264(24%)、Mw=336(70%)。
【0103】
次に、この黄色いオイル状の液体につき
1H−NMR測定を行った。結果は以下の通りであった。
1H-NMR(CDCl
3) 6.83(s,3H,Ph−H),6.73(s,1H,Ph−H),6.64(s,2H,Ph−H),6.55(s,2H,Ph−H),6.47(s,1H,Ph−H),6.39(s,3H,Ph−H),2.30(s,9H,Ph−CH
3),2.28(s,6H,Ph−CH
3),2.02(s,2H,Ph−CH
2−SiMe
3),2.26(s,3H,Ph−CH
3),2.00(s,4H,Ph−CH
2−SiMe
3),1.98(s,6H,Ph−CH
2−SiMe
3)。
【0104】
さらに、
1H−detected multi−bond heteronuclear multiple quantum coherence spectrum−NMR(HMBC−NMR)測定により、
1H-NMRにおけるそれぞれのシグナルについて帰属を行った。結果は以下の通りであった。
無置換体(1,3,5−トリメチルベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3) 6.83(s,3H,Ph−H),2.30(s,9H,Ph−CH
3)、1置換体(1−トリメチルシリルメチル−3,5−ジメチルベンゼン)(
1H-NMR(CDCl
3) 6.73(s,1H,Ph−H),6.64(s,2H,Ph−H),2.28(s,6H,Ph−CH
3),2.02(s,2H,Ph−CH
2−SiMe
3)、2置換体(1,3−ビス(トリメチルシリルメチル)−5−メチルベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3) 6.55(s,2H,Ph−H),6.47(s,1H,Ph−H),2.26(s,3H,Ph−CH
3),2.00(s,4H,Ph−CH
2−SiMe
3)、3置換体(1,3,5−トリス(トリメチルシリルメチル)ベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3) 6.39(s,3H,Ph−H),1.98(s,6H,Ph−CH
2−SiMe
3)。
【0105】
以上の
1H−,HMBC−NMR測定による帰属に基づいて、GC−MSで得られた分子イオンピークを以下のように帰属した。EI−MS,m/z=120(M+)は無置換体(1,3,5−トリメチルベンゼン)),m/z=192(M+)は1置換体(1−トリメチルシリルメチル−3,5−ジメチルベンゼン),m/z=264(M+)は2置換体(1,3−ビス(トリメチルシリルメチル)−5−メチルベンゼン),m/z=336(M+)は3置換体(1,3,5−トリス(トリメチルシリルメチル)ベンゼン)。以上より、無置換体:1置換体:2置換体:3置換体の割合(モル比)は、3:3:24:70と求められ、1,3,5−トリメチルベンゼンのメチル基のリチオ化率は87%であり、1,3,5−トリメチルベンゼン1分子に導入された平均リチウム原子数は2.40である。
【0106】
〔製造例2〕
〔活性末端を有する放射状イソプレン重合体1の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン25部、イソプレン10.900部を仕込んだ後、製造例1にて得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン
の溶液2.163部(リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン(全置換体)中のリチウム1モルに対する、イソプレンの使用量が、
66.9モルとなる量、また、3置換体中のリチウム1モルに対しては、イソプレンの使用量が、
95.6モルとなる量)を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認して、活性末端を有する放射状イソプレン重合体1を含有する溶液を得た。
そして、得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体1について、GPC測定において、Mnが34,100、分子量分布(Mw/Mn)が1.63であった。また、この活性末端を有する放射状イソプレン重合体1のイソプレン重合体鎖中の1,2結合および3,4結合の含有量(ビニル結合含有量)は46.6モル%であった。
【0107】
〔製造例3〕
〔活性末端を有する放射状イソプレン重合体2の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン25部、イソプレン10.900部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.500部を仕込んだ後、製造例1にて得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン
の溶液2.163部(リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン(全置換体)中のリチウム1モルに対する、イソプレンの使用量が、
66.9モルとなる量、また、3置換体中のリチウム1モルに対しては、イソプレンの使用量が、
95.6モルとなる量)を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認して、活性末端を有する放射状イソプレン重合体2を含有する溶液を得た。
そして、得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体2について、GPC測定において、Mnが21,200、分子量分布(Mw/Mn)が1.60であった。また、この活性末端を有する放射状イソプレン重合体2のイソプレン重合体鎖中の1,2結合および3,4結合の含有量(ビニル結合含有量)は64.5モル%であった。
【0108】
〔製造例4〕
〔活性末端を有する放射状イソプレン重合体3の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン25部、イソプレン10.900部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.314部を仕込んだ後、製造例1にて得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン
の溶液1.370部(リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン(全置換体)中のリチウム1モルに対する、イソプレンの使用量が、
105.7モルとなる量、また、3置換体中のリチウム1モルに対しては、イソプレンの使用量が、
151.0モルとなる量)を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認して、活性末端を有する放射状イソプレン重合体3を含有する溶液を得た。
そして、得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体3について、GPC測定において、Mnが31,300、分子量分布(Mw/Mn)が1.53であった。また、この活性末端を有する放射状イソプレン重合体3のイソプレン重合体鎖中の1,2結合および3,4結合の含有量(ビニル結合含有量)は65.6モル%であった。
【0109】
〔製造例5〕
〔活性末端を有する放射状イソプレン重合体4の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン25部、イソプレン10.900部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.256部を仕込んだ後、製造例1にて得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン
の溶液1.082部(リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン(全置換体)中のリチウム1モルに対する、イソプレンの使用量が、
133.8モルとなる量、また、3置換体中のリチウム1モルに対しては、イソプレンの使用量が、
191.2モルとなる量)を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認して、活性末端を有する放射状イソプレン重合体4を含有する溶液を得た。
そして、得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体4について、GPC測定において、Mnが37,400、分子量分布(Mw/Mn)が1.50であった。また、この活性末端を有する放射状イソプレン重合体4のイソプレン重合体鎖中の1,2結合および3,4結合の含有量(ビニル結合含有量)は67.0モル%であった。
【0110】
〔製造例6〕
〔活性末端を有する放射状イソプレン重合体5の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン25部、イソプレン10.900部、およびテトラメチルエチレンジアミン2.500部を仕込んだ後、製造例1にて得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン
の溶液10.815部(リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン(全置換体)中のリチウム1モルに対する、イソプレンの使用量が、
13.4モルとなる量、また、3置換体中のリチウム1モルに対しては、イソプレンの使用量が、
19.1モルとなる量)を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認して活性末端を有する放射状イソプレン重合体5を含有する溶液を得た。
そして、得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体5について、GPC測定において、Mnが6,800、分子量分布(Mw/Mn)が1.65であった。また、この活性末端を有する放射状イソプレン重合体5のイソプレン重合体鎖中の1,2結合および3,4結合の含有量は66.9モル%であった。
【0111】
〔製造例7〕
〔活性末端を有する放射状イソプレン重合体6の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン25部、イソプレン10.900部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.837部を仕込んだ後、製造例1にて得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン
の溶液3.605部(リチオ化1,3,5−トリメチルベンゼン(全置換体)中のリチウム1モルに対する、イソプレンの使用量が、
40.2モルとなる量、また、3置換体中のリチウム1モルに対しては、イソプレンの使用量が、
57.4モルとなる量)を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認して、活性末端を有する放射状イソプレン重合体6を含有する溶液を得た。
そして、得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体6について、GPC測定において、Mnが16,300、分子量分布(Mw/Mn)が1.49であった。また、この活性末端を有する放射状イソプレン重合体6のイソプレン重合体鎖中の1,2結合および3,4結合の含有量は70.0モル%であった。
【0112】
〔実施例1〕
〔放射状共役ジエン系ゴム1の製造〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン94.8部、スチレン25.2部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.185部を仕込んだ後、製造例2で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体1を含有する溶液 13.712部を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤としてメタノール0.064部を添加して放射状共役ジエン系ゴム1を含有する溶液を得た。
【0113】
そして、得られた放射状共役ジエン系ゴム1を含有する溶液に、重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の放射状共役ジエン系ゴム1を得た。
【0114】
得られた放射状共役ジエン系ゴム1は、GPC測定において、Mnが260,000、Mwが283,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.09の溶出成分(ピーク面積比38.4%)、Mnが581,000、Mwが592,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.02の溶出成分(ピーク面積比28.9%)、およびMnが945,000、Mwが979,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比32.7%)からなるものであり、全体としてMnが43.1,000、Mwが600,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.39のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この放射状共役ジエン系ゴム1のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は21.3重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は61.6モル%であった。
【0115】
〔ゴム組成物、ゴム架橋物の調製〕
次に、容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、上記にて得られた放射状共役ジエン系ゴム1 100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」)50部、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T−DAE」)20部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si75」)6.4部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」)30部、酸化亜鉛3.0部、ステアリン酸2.0部および老化防止剤N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2.0部を添加し、さらに2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.60部および架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ−G」、(大内新興化学工業社製)1.40部とジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、(大内新興化学工業社製)1.40部)とを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。
【0116】
そして、ゴム組成物の一部を取り出し、配合物粘度(コンパウンド・ムーニー)を測定した。また、残りのゴム組成物を、160℃で25分間プレス架橋することでゴム架橋物(試験片)を作製し、この試験片を用いて、ウェットグリップ性の評価を行なった。結果を表1に示す。なお、表1中においては、配合物粘度(コンパウンド・ムーニー)およびウェットグリップ性の評価結果は、後述する比較例1の結果を、それぞれ100とした場合における比率で示した。
【0117】
〔実施例2〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン94.8部、およびスチレン25.2部を仕込んだ後、製造例3で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体2を含有する溶液 13.604部を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤としてメタノール0.064部を添加して放射状共役ジエン系ゴム2を含有する溶液を得た。
【0118】
そして、得られた放射状共役ジエン系ゴム2を含有する溶液に、重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の放射状共役ジエン系ゴム2を得た。
【0119】
得られた放射状共役ジエン系ゴム2は、GPC測定において、Mnが209,000、Mwが268,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.28の溶出成分(ピーク面積比45.7%)、Mnが589,000、Mwが599,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.02の溶出成分(ピーク面積比25.4%)、およびMnが955,000、Mwが989,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比28.9%)からなるものであり、全体としてMnが343,000、Mwが560,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.64のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この放射状共役ジエン系ゴム2のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は21.9重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は61.1モル%であった。
【0120】
そして、放射状共役ジエン系ゴム1の代わりに、上記にて得られた放射状共役ジエン系ゴム2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴム組成物の製造およびゴム架橋物(試験片)の作製を行い、同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0121】
〔実施例3〕
放射状イソプレン重合体2を含有する溶液 13.604部の代わりに、製造例4で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体3を含有する溶液 21.457部を使用した以外は、実施例2と同様にして、放射状共役ジエン系ゴム3の製造を行った。得られた放射状共役ジエン系ゴム3は、GPC測定において、Mnが203,000、Mwが254,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.25の溶出成分(ピーク面積比47.5%)、Mnが547,000、Mwが557,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.02の溶出成分(ピーク面積比24.3%)、およびMnが880,000、Mwが911,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比28.2%)からなるものであり、全体としてMnが322,000、Mwが513,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.59のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この放射状共役ジエン系ゴム3のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は21.3重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は61.8モル%であった。
【0122】
そして、放射状共役ジエン系ゴム1の代わりに、上記にて得られた放射状共役ジエン系ゴム3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴム組成物の製造およびゴム架橋物(試験片)の作製を行い、同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0123】
〔実施例4〕
放射状イソプレン重合体2を含有する溶液 13.604部の代わりに、製造例5で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体4を含有する溶液 25.960部を使用した以外は、実施例2と同様にして、放射状共役ジエン系ゴム4の製造を行った。得られた放射状共役ジエン系ゴム4は、GPC測定において、Mnが212,000、Mwが268,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.26の溶出成分(ピーク面積比37.5%)、Mnが581,000、Mwが591,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.02の溶出成分(ピーク面積比28.0%)、およびMnが915,000、Mwが945,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.03の溶出成分(ピーク面積比34.5%)からなるものであり、全体としてMnが381,000、Mwが592,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.55のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この放射状共役ジエン系ゴム4のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は21.4重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は61.9モル%であった。
【0124】
そして、放射状共役ジエン系ゴム1の代わりに、上記にて得られた放射状共役ジエン系ゴム4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴム組成物の製造およびゴム架橋物(試験片)の作製を行い、同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0125】
〔実施例5〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン94.8部およびスチレン25.2部を仕込んだ後、製造例3で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体2を含有する溶液 13.604部を添加し、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95〜100%の範囲になったことを確認してから、トリス(ジメチルアミノ)クロロシラン0.157部を添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.064部を添加して変性放射状共役ジエン系ゴム1を含有する溶液を得た。
【0126】
そして、得られた変性放射状共役ジエン系ゴム1を含有する溶液に、重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性放射状共役ジエン系ゴム1を得た。
【0127】
得られた変性放射状共役ジエン系ゴム1は、GPC測定において、Mnが219,000、Mwが271,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.24の溶出成分(ピーク面積比43.8%)、Mnが588,000、Mwが599,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.02の溶出成分(ピーク面積比26.2%)、およびMnが959,000、Mwが995,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比30.0%)からなるものであり、全体としてMnが362,000、Mwが574,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.56のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この変性放射状共役ジエン系ゴム1のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は21.8重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は61.3モル%であった。
【0128】
そして、放射状共役ジエン系ゴム1の代わりに、上記にて得られた変性放射状共役ジエン系ゴム1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴム組成物の製造およびゴム架橋物(試験片)の作製を行い、同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0129】
〔比較例1〕
放射状イソプレン重合体1を含有する溶液 13.712部の代わりに、製造例1で得られたリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼンを含有する溶液0.812部を使用した以外は、実施例1と同様にして、放射状共役ジエン系ゴム5の製造を行った。得られた放射状共役ジエン系ゴム5は、GPC測定において、Mnが233,000、Mwが292,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.25の溶出成分(ピーク面積比37.1%)、Mnが681,000、Mwが717,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.05の溶出成分(ピーク面積比62.9%)からなるものであり、全体としてMnが398,000、Mwが559,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.41のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この放射状共役ジエン系ゴム5のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は20.7重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は61.6モル%であった。
【0130】
そして、放射状共役ジエン系ゴム1の代わりに、上記にて得られた放射状共役ジエン系ゴム5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴム組成物の製造およびゴム架橋物(試験片)の作製を行い、同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0131】
〔比較例2〕
放射状イソプレン重合体2を含有する溶液 13.604部の代わりに、製造例6で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体5を含有する溶液 2.828部を使用した以外は、実施例2と同様にして、放射状共役ジエン系ゴム6の製造を行った。得られた放射状共役ジエン系ゴム6は、GPC測定において、Mnが215,000、Mwが265,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.23の溶出成分(ピーク面積比41.3%)、Mnが585,000、Mwが596,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.02の溶出成分(ピーク面積比30.5%)、およびMnが904,000、Mwが930,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.03の溶出成分(ピーク面積比28.2%)からなるものであり、全体としてMnが364,000、Mwが553,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.52のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この放射状共役ジエン系ゴム6のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は21.0重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は61.0モル%であった。
【0132】
そして、放射状共役ジエン系ゴム1の代わりに、上記にて得られた放射状共役ジエン系ゴム6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴム組成物の製造およびゴム架橋物(試験片)の作製を行い、同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0133】
〔比較例3〕
放射状イソプレン重合体2を含有する溶液 13.604部の代わりに、製造例7で得られた活性末端を有する放射状イソプレン重合体6を含有する溶液 8.284部を使用した以外は、実施例2と同様にして、放射状共役ジエン系ゴム7の製造を行った。得られた放射状共役ジエン系ゴム7は、GPC測定において、Mnが211,000、Mwが258,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.22の溶出成分(ピーク面積比44.0%)、Mnが566,000、Mwが577,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.02の溶出成分(ピーク面積比26.7%)、およびMnが915,000、Mwが947,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比29.5%)からなるものであり、全体としてMnが347,000、Mwが546,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.57のものであった。また、多角度光散乱測定により、高分子側のピークの分岐度が高い事が確認された。また、この放射状共役ジエン系ゴム7のスチレン−ブタジエン重合体鎖中におけるスチレン単位の含有量は21.2重量%、ブタジエン単位中のビニル結合含有量は62.2モル%であった。
【0134】
そして、放射状共役ジエン系ゴム1の代わりに、上記にて得られた放射状共役ジエン系ゴム7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴム組成物の製造およびゴム架橋物(試験片)の作製を行い、同様に評価を行なった。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
表1より、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物の存在下で、該アルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属1モルに対して、イソプレン65〜500モルを反応させることで得られた、活性末端を有する放射状イソプレン重合体は、重合に用いる不活性溶媒としてのシクロヘキサンに対する溶解性に優れ、しかも、1,3−ブタジエンおよびスチレンを共重合するための重合開始点として用いることで、得られるゴム組成物の配合物粘度を低くすることができ、しかも、得られるゴム架橋物は、ウェットブリップ性が良好なものであった(実施例1〜5)。
【0137】
一方、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物であるリチオ化1,3,5−トリメチルベンゼンは、重合に用いる不活性溶媒としてのシクロヘキサンに対する溶解性に劣り、そのため、製造安定性に劣るものであった(比較例1)。
また、上記一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物のアルカリ金属1モルに対するイソプレンの配合量を、65モル未満とした場合には、得られる活性末端を有する放射状イソプレン重合体は、重合に用いる不活性溶媒としてのシクロヘキサンに対する溶解性に劣り、さらには、1,3−ブタジエンおよびスチレンを共重合するための重合開始点として用いた場合に、得られるゴム架橋物は、ウェットブリップ性に劣るものであった(比較例2,3)。