特許第6384475号(P6384475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6384475-熱サイクル用作動媒体 図000014
  • 特許6384475-熱サイクル用作動媒体 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384475
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】熱サイクル用作動媒体
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K5/04 E
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-514833(P2015-514833)
(86)(22)【出願日】2014年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2014061767
(87)【国際公開番号】WO2014178353
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-95491(P2013-95491)
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-30855(P2014-30855)
(32)【優先日】2014年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真維
(72)【発明者】
【氏名】福島 正人
(72)【発明者】
【氏名】河口 聡史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智昭
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優
【審査官】 林 建二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/157762(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/157763(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/157764(WO,A1)
【文献】 特表2010−533151(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/042781(WO,A1)
【文献】 特開平04−305542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロエチレンとジフルオロエチレンを含有し、作動媒体の全量に対する前記トリフルオロエチレンの割合が20質量%以上であり、前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体。
【請求項2】
前記ジフルオロエチレンが1,1−ジフルオロエチレンである、請求項1に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項3】
さらに、ヒドロフルオロカーボンおよび/またはヒドロフルオロオレフィンを含む、請求項1または2に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項4】
前記ヒドロフルオロカーボンがジフルオロメタンである、請求項に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項5】
前記ヒドロフルオロオレフィンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、請求項3または4に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項6】
トリフルオロエチレンとジフルオロエチレンとジフルオロメタンとを含む熱サイクル用作動媒体であって、作動媒体の全量に対する前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であり、作動媒体の全量に対する前記トリフルオロエチレンと前記ジフルオロメタンの合計量の割合が80質量%以上であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体。
【請求項7】
前記ジフルオロエチレンが1,1−ジフルオロエチレンである、請求項に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項8】
作動媒体の全量に対する前記トリフルオロエチレンの割合が20質量%以上である、請求項6または7に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項9】
トリフルオロエチレンとジフルオロエチレンと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとを含む熱サイクル用作動媒体であって、作動媒体の全量に対する前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であり、作動媒体の全量に対する前記トリフルオロエチレンと前記2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計量の割合が70質量%以上であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体。
【請求項10】
前記ジフルオロエチレンが1,1−ジフルオロエチレンである、請求項に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項11】
作動媒体の全量に対する前記トリフルオロエチレンの割合が20質量%以上である、請求項9または10に記載の熱サイクル用作動媒体。
【請求項12】
トリフルオロエチレンとジフルオロエチレンとジフルオロメタンと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとを含む熱サイクル用作動媒体であって、トリフルオロエチレンとジフルオロメタンと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合計量に対する前記トリフルオロエチレンの割合が20質量%以上70質量%未満であり、ジフルオロメタンの割合が30質量%以上75質量%以下であり、作動媒体の全量に対する前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱サイクル用作動媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動媒体、潜熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクル用作動媒体としては、クロロトリフルオロメタン(CFC−13)、ジクロロジフルオロメタン(CFC−12)等のクロロフルオロカーボン(CFC)、またはクロロジフルオロメタン(HCFC−22)等のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきた。しかし、CFCやHCFCは、成層圏のオゾン層への影響が指摘され、現在、規制の対象となっている。
なお、本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。
【0003】
前述の経緯から、熱サイクル用作動媒体としては、CFCやHCFCに代わって、オゾン層への影響が少ないジフルオロメタン(HFC−32)、テトラフルオロエタン(HFC−134)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)等のヒドロフルオロカーボン(HFC)が用いられる。例えば、R410A(HFC−32とHFC−125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)等は、従来から広く使用されてきた冷媒である。しかし、HFCに関しても、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されているため、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化係数(GWP)の低い熱サイクル用作動媒体の開発が急務となっている。
【0004】
最近、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が少ない熱サイクル用作動媒体として、大気中のOHラジカルによって分解されやすい炭素−炭素二重結合を有するヒドロフルオロオレフィン(HFO)に期待が集まっている。なお、本明細書では、特に断りのない限り、飽和のHFCをHFCと示し、炭素−炭素二重結合を有するHFOとは区別して用いる。
【0005】
HFOを用いた作動媒体として、例えば特許文献1には、トリフルオロエチレン(HFO−1123)を含む組成物が提示されている。特許文献1においては、この作動媒体の不燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO−1123に各種のHFCやHFOを組み合わせて使用することも提示されている。
【0006】
このようにHFO−1123を含む作動媒体において、サイクル性能に優れる組成物が求められている。
HFO−1123は各種の方法により製造されるが、どの製造方法を採る場合にも、生成物中に不純物が存在する。そして、このような不純物を含むHFO−1123(以下、粗HFO−1123ともいう。)をそのまま用いた場合には、サイクル性能に優れる作動媒体が得られない場合があった。
【0007】
そのため、作動媒体として用いるためには、粗HFO−1123からの不純物を低減する工程が必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2012/157764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が少ないうえに、サイクル性能優れる、生産性が高い熱サイクル用作動媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、粗HFO−1123からの不純物を低減する工程を簡略化するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、HFO−1123を含み、ジフルオロエチレンの含有量が低い作動媒体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、上記課題を解決できる作動媒体として、HFO−1123とHFC−32とを含みかつジフルオロエチレンの含有量が低い作動媒体、および、HFO−1123と2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)とを含みかつジフルオロエチレンの含有量が低い作動媒体も見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、HFO−1123とジフルオロエチレンを含有し、作動媒体の全量に対する前記HFO−1123の割合が20質量%以上であり、前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体を提供する。
また、本発明は、HFO−1123とジフルオロエチレンとジフルオロメタンとを含む熱サイクル用作動媒体であって、作動媒体の全量に対する前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であり、作動媒体の全量に対する前記HFO−1123と前記ジフルオロメタンの合計量の割合が80質量%以上であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体を提供する。
さらに、本発明は、HFO−1123とジフルオロエチレンとHFO−1234yfとを含む熱サイクル用作動媒体であって、作動媒体の全量に対する前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であり、作動媒体の全量に対する前記HFO−1123と前記HFO−1234yfの合計量の割合が70質量%以上であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体を提供する。
さらに、また、本発明は、HFO−1123とジフルオロエチレンとジフルオロメタンとHFO−1234yfとを含む熱サイクル用作動媒体であって、HFO−1123とジフルオロメタンとHFO−1234yfの合計量に対する前記HFO−1123の割合が20質量%以上70質量%未満であり、ジフルオロメタンの割合が30質量%以上75質量%以下であり、作動媒体の全量に対する前記ジフルオロエチレンの割合が4質量ppm以上1.5質量%未満であることを特徴とする熱サイクル用作動媒体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱サイクル用作動媒体(以下、作動媒体とも記す。)は、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない。また、HFO−1123の製造の際に不純物として存在するジフルオロエチレンの含有量が、作動媒体の全量に対して1.5質量%未満に調整されているので、サイクル性能に優れる熱サイクル用作動媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例において、作動媒体のサイクル性能を測定するために使用する冷凍サイクルシステムを示した概略構成図である。
図2図1の冷凍サイクルシステムにおける作動媒体の状態変化を、圧力−エンタルピ線図上に記載したサイクル図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<作動媒体>
本発明の実施形態の作動媒体は、HFO−1123とジフルオロエチレンを含有し、作動媒体の全量に対するジフルオロエチレンの割合が1.5質量%未満である。
実施形態の作動媒体は、HFO−1123とジフルオロエチレンの他に、後述する化合物をさらに含有してもよい。
【0015】
<HFO−1123>
HFO−1123は、地球温暖化係数(GWP)が低く、オゾン層への影響が少なく地球温暖化への影響が少ない。また、HFO−1123は、作動媒体としての能力に優れ、特にサイクル性能(例えば、後述する方法で求められる成績係数および冷凍能力)に優れている。
HFO−1123の含有量は、サイクル性能の点から、作動媒体の全量(100質量%)に対して20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。
【0016】
HFO−1123は、単独で用いた場合に高温または高圧下で着火源があると分解反応を起こす、いわゆる自己分解性を有することが知られている。HFO−1123の自己分解反応防止の観点からは、HFO−1123の含有量は、作動媒体の全量に対して80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が最も好ましい。
本発明の作動媒体においては、HFO−1123を、後述するHFC−32等と混合してHFO−1123の含有量を抑えることで、自己分解反応を抑えることができる。HFO−1123の含有割合を80質量%以下とした場合、熱サイクルシステムに適用する場合の温度や圧力条件下では自己分解性を有しないため、安全性の高い作動媒体を得ることができる。
【0017】
<ジフルオロエチレン>
ジフルオロエチレンは、HFO−1123の製造の際に副生し、不純物として生成組成物中に存在する化合物である。ジフルオロエチレンとしては、1,1−ジフルオロエチレン(HFO−1132a)と、E−および/またはZ−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132)を挙げることができる。なお、E−および/またはZ−は、E体とZ体の混合物を意味し、E/Z−とも示す。
本発明におけるジフルオロエチレンの量はHFO−1132aとHFO−1132の合計量を意味するが、本発明の作動媒体としては特にHFO−1123の製造の際に副生し易く、不純物として生成組成物中に残存しやすいHFO−1132aが少ないことが好ましい。
【0018】
作動媒体がジフルオロエチレンを含有すると、サイクル性能が低い。しかし、ジフルオロエチレンの含有量を作動媒体の全量に対して1.5質量%未満とした場合には、十分に優れたサイクル性能を有する作動媒体を得ることができる。
なお、ジフルオロエチレンの含有量は、作動媒体の全量に対して4ppm以上とすることが好ましく、50ppm以上がさらに好ましく、100ppm以上が最も好ましい。含有量が4ppm以上であれば、粗HFO−1123を精製し不純物としてのジフルオロエチレンを低減する工程が簡略化できるという利点がある。
【0019】
<HFCおよび/またはHFO>
本発明の作動媒体は、HFO−1123およびジフルオロエチレン以外に、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、およびその他のヒドロフルオロオレフィン(HFO)をさらに含むことができる。
【0020】
オゾン層への影響が少なく、かつサイクル性能に優れる点から、HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、およびペンタフルオロエタン(HFC−125)が挙げられる。これらのHFCは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、HFC−32が特に好ましい。
【0021】
その他のHFOとしては、オゾン層への影響が少なくサイクル特性に優れる点から、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、2−フルオロプロペン(HFO−1261yf)、1,1,2−トリフルオロプロペン(HFO−1243yc)、トランス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))、シス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)等が挙げられる。これらのHFCは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、高い臨界温度を有し、安全性、サイクル性能に優れる点から、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)が好ましく、HFO−1234yfが特に好ましい。
【0022】
<HFC−32>
本発明の作動媒体がHFC−32を含有する場合、HFO−1123とHFC−32の各含有量の割合は、HFO−1123とHFC−32との合計を100質量%として、HFO−1123を10〜99質量%、HFC−32を90〜1質量%が好ましく、HFO−1123を20〜99質量%、HFC−32を80〜1質量%がより好ましく、HFO−1123を25〜99質量%、HFC−32を75〜1質量%が特に好ましい。特に、HFO−1123の含有割合が90質量%であり、HFC−32の含有割合が10質量%である組成物は、気液両相の組成比の差が極めて小さく、共沸組成物となるので安定性に優れている。
【0023】
また、HFO−1123とHFC−32の合計量は、作動媒体の全量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましい。HFO−1123の含有量は、作動媒体の全量に対して20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
【0024】
<HFO−1234yf>
本発明の作動媒体がHFO−1234yfを含有する場合、HFO−1123とHFO−1234yfの合計量に対するHFO−1123の含有量の割合は、35〜95質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%がさらに好ましく、50〜85質量%がよりさらに好ましく、60〜85質量%が最も好ましい。
HFO−1123とHFO−1234yfの合計量の作動媒体の全量に対する割合は、70質量%以上が好ましい。80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。HFO−1123の含有量は、作動媒体の全量に対して20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。HFO−1123とHFO−1234yfの合計量が上記範囲内であれば、熱サイクルに用いた際に一定の能力を維持しながら効率をより高めることで、良好なサイクル性能が得られる。
【0025】
さらに、本発明の作動媒体が、HFC−32とHFO−1234yfの両方を含有する場合、HFO−1123とHFC−32とHFO−1234yfの合計量は、作動媒体の全量に対して90質量%超が好ましい。また、HFO−1123とHFC−32とHFO−1234yfの合計量に対する、HFO−1123の割合は20質量以上70質量%未満であり、同じくHFC−32の割合は30質量%以上75質量%以下であり、同じくHFO−1234yfの割合は50質量%以下であることが好ましい。HFO−1234yfの割合は、より好ましくは40質量%以下であり、最も好ましくは30質量%である。
HFO−1123をはじめとする各成分の割合を前記範囲内にすることで、地球温暖化への影響を抑えつつ、熱サイクルに用いた際に実用上十分なサイクル性能が得られる作動媒体とすることができる。
【0026】
<その他の成分>
本発明の作動媒体には、HFO−1123、HFC−32、HFO−1234yfおよびジフルオロエチレン以外に、その他の成分を含有してもよい。その他の成分の含有量は、作動媒体の全量を100質量%として、ジフルオロエチレンとその他の成分の合計量で1.5質量%未満が好ましく、1.4質量%以下がより好ましい。
【0027】
その他の成分は、HFO−1123の製造の際に生成する組成物(例えば、反応器からの出口ガスをいう。以下同様である。)に含まれる不純物(原料中の不純物、中間生成物、副生物等が含まれる。以下同様である。)、HFC−32の製造の際に生成する組成物に含まれる不純物、HFO−1234yfの製造の際に生成する組成物に含まれる不純物である。
【0028】
その他の成分の化合物の略称、化学式および名称を、表1および表2に示す。なお、表1および表2は、HFO−1123、ジフルオロエチレン(HFO−1132aおよびHFO−1132)、HFC−32およびHFO−1234yfの略称、化学式および名称も併せて示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
次に、HFO−1123、HFC−32、およびHFO−1234yfの各化合物を製造する方法と、それらの製造時に得られた組成物に含有される不純物について説明する。
【0032】
<HFO−1123の製造>
HFO−1123を製造する方法としては、例えば、(I)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)(CFO−1113)の水素還元と、(II)クロロジフルオロメタン(HCFC−22)とクロロフルオロメタン(HCFC−31)との熱分解を伴う合成、および(III)1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と固体反応剤との接触反応の3つの方法を挙げることができる。
【0033】
(I)CFO−1113の水素還元
CFO−1113と水素とを、触媒担持担体が充填された触媒層を有する反応器内で気相で反応させ、HFO−1123を含むガスを生成する。
この方法では、反応器内で[化1]の反応式に示す反応が行われる。
【化1】
【0034】
原料組成物におけるCFO−1113と水素の割合は、CFO−1113の1モルに対して水素が0.01〜4.0モルの範囲である。反応器内の圧力は、取り扱い性の点から、常圧が好ましい。触媒としてはパラジウム触媒が好ましく、パラジウム触媒は活性炭等の担体に担持して用いる。気相反応を行うために、触媒層の温度は、CFO−1113と水素を含む原料組成物(混合ガス)の露点以上の温度とする。220℃から240℃の範囲が好ましい。原料化合物であるCFO−1113と触媒との接触時間は、4〜60秒間が好ましい。
【0035】
このようなCFO−1113の水素還元においては、HFO−1123を含む組成物を反応器の出口ガスとして得ることができる。出口ガスに含有されるHFO−1123以外の化合物としては、未反応原料であるCFO−1113に加えて、HFO−1132、HFO−1132a、HCFO−1122、HCFO−1122a、HFC−143、メタン、HFC−152a、HCFC−142、HCFC−142b、HCFC−133、HCFC−133b、HCFC−123a、CFC−113、およびCFO−1112等が挙げられる。
【0036】
(II)HCFC−22とHCFC−31との熱分解を伴う合成
HCFC−22とHCFC−31を含む原料組成物を用い、熱媒体の存在下で熱分解を伴う合成反応によりHFO−1123を製造する。
この製造方法では、HCFC−22の1モルに対してHCFC−31を0.01〜4.0モルの割合で予め混合し、または別々に反応器に供給して反応器内に滞留させ、一方熱媒体を反応器に供給し、反応器内で前記原料組成物と接触させる。反応器内の温度は、400〜1200℃とすることが好ましい。
【0037】
この製造方法における反応器内の主な反応を、[化2]の式に示す。
【化2】
【0038】
原料組成物は、常温のまま反応器に導入してもよいが、反応器内での反応性を高めるために、予め加熱してから反応器に導入してもよい。反応器に供給するHCFC−31の温度は0〜600℃とするのが好ましく、HCFC−22の温度は常温(25℃)以上600℃以下とするのが好ましい。
熱媒体は、反応器内の温度で熱分解が生じない媒体であり、水蒸気を50体積%以上含み、残部が窒素および/または二酸化炭素である気体の使用が好ましい。熱媒体の供給量は、熱媒体と前記原料組成物の供給量の合計に対して20〜98体積%が好ましい。熱媒体と原料組成物との反応器内での接触時間は、0.01〜10秒間とするのが好ましく、反応器内の圧力は、ゲージ圧で0〜2.0MPaとするのが好ましい。
【0039】
このようなHCFC−22とHCFC−31との熱分解を伴う合成においては、HFO−1123を含む組成物を反応器の出口ガスとして得ることができる。出口ガスに含有されるHFO−1123以外の化合物としては、未反応原料であるHCFC−22およびHCFC−31に加えて、HFO−1132、HFO−1132a、HFO−1141、CFO−1113、HCFO−1122、HCFO−1122a、HFC−143、FO−1114、HCFO−1131、HFO−1252zf、HFO−1243zf、HFO−1234yf、HFO−1234ze、FO−1216、HFC−125、HFC−134、HFC−134a、HFC−143a、HCFC−124、HCFC−124a、HFC−227ca、HFC−227ea、HFC−236fa、HFC−236ea、CFC−12、HFC−23、HFC−32、HFC−41、HCC−40、RC−318およびメタン等が挙げられる。
【0040】
(III)HFC−134aと固体反応剤との接触反応
HFC−134aを含む原料ガスと固体反応剤とを反応器内で接触させて反応させ、HFO−1123を含む組成物(ガス)を生成する。固体反応剤としては、例えば、粒子状の酸化カルシウムを使用することができる。
この態様における反応器内の主な反応を、[化3]の式に示す。
【化3】
【0041】
原料ガス(100モル%)中のHFC−134aの含有量は、5〜100モル%が好ましい。また、反応器内の温度は200〜500℃が好ましく、圧力はゲージ圧で0〜2MPaが好ましい。
【0042】
また、特に、所定の平均粒子径(1μm〜5000μm)の粒子状の固体反応剤(例えば、炭酸カリウムおよび/または酸化カルシウム)を使用し、この固体反応剤の層中にHFC−134aを含む原料ガスを流通させて、固体反応剤層が流動化した状態でHFC−134aを接触させる方法を採ることもできる。この態様では、HFC−134aを固体反応剤と接触させる温度は100℃〜500℃の範囲が好ましい。
【0043】
このようなHFC−134aと固体反応剤との接触反応においては、HFO−1123を含む組成物を反応器の出口ガスとして得ることができる。出口ガスに含有されるHFO−1123と未反応の原料成分(HFC−134a)以外の化合物としては、フッ化水素、E/Z−HFO−1132、HFO−1132a、HFC−143、HFC−143a、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、1−ノルマルブテン、2−ノルマルブテン、イソブテン、HFO−1141、HFO−1252zf、HFO−1243zf、HFO−1234yf、E/Z−HFO−1234ze、FO−1216、HFC−125、HFC−134、HFC−143a、HFC−227ca、HFC−227ea、HFC−236fa、HFC−236ea、HFC−32、HFC−23およびHFC−41等が挙げられる。
【0044】
このように、HFO−1123の各製造方法では、HFO−1123とともに、前記したジフルオロエチレン化合物(HFO−132aおよび/またはHFO−132)と、各種の化合物が、反応器からの出口ガスのような生成組成物中に不純物として存在する。これらの不純物から、前記ジフルオロエチレン化合物とHFC−32およびHFO−1234yfを除いた化合物が、前記した第1の化合物である。
【0045】
<HFC−32の製造>
HFC−32を製造する方法としては、ジクロロメタン(HCC−30)とフッ化水素とを、フッ化アルミニウム触媒、またはフッ化アルミニウムを担体と混合成型した触媒、あるいはフッ化クロムを担体に担持させた触媒を用い、200〜500℃の温度で気相反応させる方法を挙げることができる。この方法では、反応器の出口ガスに、目的とするHFO−32とともに、HFC−31が含有される。また、未反応のHCC−30も含有される。
【0046】
また、HFC−32を製造する別の態様として、HCC−30とフッ化水素とを、五フッ化アンチモンと三フッ化アンチモンとの混合物、または所定濃度の五フッ化アンチモンのようなフッ素化触媒の存在下、液相で反応させる(80〜150℃の温度、8〜80kg/cmの圧力)方法を挙げることができる。この方法では、HFC−32の他に、不純物として、HFC−31、HFC−23およびHCC−40が生成する。
【0047】
このようにHFC−32の各製造方法では、不純物として、HCC−30、HFC−31、HFC−23、およびHCC−40が生成する。これらの不純物が前記した第1の化合物である。
【0048】
<1234yfの製造>
HFO−1234yfを製造する方法としては、(i)ジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−225)の異性体混合物を用いる方法(225法)、(ii)ヘキサフルオロプロペン(FO−1216)を原料化合物とする方法(HFP法)、(iii)1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230)を出発物質とする方法(TCP法)、(iv)熱媒体存在下、原料組成物を熱分解を伴う合成反応させる方法等を挙げることができる。
【0049】
(i)225法
HCFC−225の異性体混合物を用いてHFO−1234yfを製造する。この方法では、以下の[化4]に示す反応経路の通り、原料中の1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)を選択的に脱フッ化水素させて1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)を製造し、得られるCFO−1214yaを還元してHFO−1234yfを製造する。
【化4】
【0050】
この製造方法において、HFO−1234yfとともに得られる不純物として、以下の化合物が挙げられる。すなわち、原料に含まれる不純物として、HCFC−225ca、その異性体であるHCFC−225cb、HCFC−225aa等が挙げられる。また、中間生成物として、CFO−1214ya、HCFO−1224yd等が挙げられる。さらに、副生物として、HCFC−225caの還元体であるHFC−254eb、HCFC−225aaが脱塩化水素反応した後、還元して得られるHFO−1225zc、HFO−1234yfの過還元体であるHFO−1243zf、HFO−1252zf等が挙げられる。
【0051】
(ii)HFP法
FO−1216(PFO−1216yc)を原料化合物とし、以下の[化5]に示す反応経路によりHFO−1234yfを製造する。
【化5】
【0052】
この製造方法においては、HFO−1234yfとともに得られる不純物として、FO−1216、HFO−1225ye、HFO−1234ze等が挙げられる。
【0053】
さらに、1,2,3−トリクロロプロパンを原料化合物として、以下の[化6]に示す反応経路によりHFO−1234yfを製造することができる。この製造方法では、HFC−245cbが有機不純物となる。
【化6】
【0054】
(iii)TCP法
HCC−1230を出発物質として、HFO−1234yfを生成する。すなわち、以下の[化7]に示す反応経路の通り、HCC−1230をフッ化水素でフッ素化して2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)とした後、このHCFO−1233xfをフッ化水素と反応させて2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)とし、さらにHCFC−244bbを脱ハロゲン化水素してHFO−1234yfを生成する。
【0055】
【化7】
【0056】
この製造方法においては、HCFO−1233xf、HCFC−244bb、HFO−1234ze、HFO−1243zf、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)等が、不純物として生成する。
【0057】
(iv)熱分解を伴う合成法
熱媒体存在下、原料組成物から熱分解を伴う合成反応によりHFO−1234yfを製造する。熱媒体としては、水蒸気、窒素、二酸化炭素等が使用される。水蒸気を50体積%以上含み、残部が窒素および/または二酸化炭素である気体の使用が好ましい。
【0058】
原料組成物としては、反応器内で熱媒体との接触により分解してジフルオロカルベン(FC:)を発生し得る化合物と、クロロメタンまたはメタンとが混合して用いられる。
具体的には、以下の(iv−1)〜(iv−6)に示す化合物を含む原料組成物が使用される。そして、それぞれの項に示す化合物が、HFO−1234yfおよび未反応の原料成分以外に、反応器からの出口ガスの成分(不純物)として得られる。
【0059】
(iv−1)HCFC−22とHCC−40
HCFC−22とHCC−40を所定の割合で混合して、または別々に反応器に供給するとともに、反応器に熱媒体を供給し、反応器内でHCFC−22とHCC−40を含む原料組成物と熱媒体とを接触させ、熱分解を伴う合成反応により、HFO−1234yfとHFO−1132aを生成する。反応器内の温度は、400〜1200℃とする。反応器内の主な反応を以下の[化8]に示す。
【0060】
【化8】
【0061】
反応器の出口ガスに含有されるHFO−1234yfとHFO−1132aおよび未反応の原料成分以外の化合物としては、メタン、エチレン、FO−1114、FO−1216、CFO−1113、HFO−1123、RC-318、HFO−1234ze)、HFO−1132等が挙げられる。
【0062】
(iv−2)HCFC−22とHCC−40とFO−1114
HCFC−22とHCC−40とFO−1114を、予め混合してまたは別々に反応器に供給し、反応器内に所定の時間滞留させ、熱媒体を反応器に供給し、反応器内で原料組成物と熱媒体とを接触させる。そして、熱分解を伴う合成反応により、HFO−1234yfとHFO−1132aを生成する。反応器内の温度は、400〜1200℃とする。反応器内の主な反応を以下の[化9]に示す。
【0063】
【化9】
【0064】
反応器の出口ガスに含有されるHFO−1234yfとHFO−1132aおよび未反応の原料成分以外の化合物としては、メタン、エチレン、FO−1114、FO−1216、CFO−1113、HFO−1123、RC318、HFO−1243zf等が挙げられる。
【0065】
(iv−3)R318とHCC−40
熱媒体存在下、R318とHCC−40を含む原料組成物から、熱分解を伴う合成反応によりHFO−1234yfおよびHFO−1132aを製造する。反応器の出口ガスに含有されるHFO−1234yfとHFO−1132aおよび未反応の原料成分以外の化合物としては、メタン、エチレン、HFC−22、FO−1114、FO−1216、CFO−1113、HFO−1123、HFO−1234ze、HFO−1132等が挙げられる。
【0066】
(iv−4)FO−1216とHCC−40
熱媒体存在下、FO−1216とHCC−40を含む原料組成物から、熱分解を伴う合成反応によりHFO−1234yfおよびHFO−1132aを製造する。反応器の出口ガスに含有されるHFO−1234yfとHFO−1132aおよび未反応の原料成分以外の化合物としては、メタン、エチレン、HFC−22、HFC−23、FO−1114、FO−1216、CFO−1113、RC318、HFO−1123、HFO−1234ze、HFO−1132等が挙げられる。
【0067】
(iv−5)HFC−22および/またはFO−1114とメタン
熱媒体存在下、HFC−22および/またはFO−1114と、メタンを含む原料組成物から、熱分解を伴う合成反応によりHFO−1234yfとHFO−1132aを製造する。反応器の出口ガスに含有されるHFO−1234yfとHFO−1132aおよび未反応の原料成分以外の化合物としては、メタン、エチレン、FO−1114、FO−1216、CFO−1113、RC318、HFO−1123、HFO−1243zf等が挙げられる。
【0068】
(iv−6)FO−1114とHCC−40
熱媒体存在下、FO−1114とHCC−40を含む原料組成物から、熱分解を伴う合成反応によりHFO−1234yfを製造する。原料組成物および熱媒体が供給される反応器内の温度は400〜870℃とする。反応器の出口ガスに含有されるHFO−1234yfおよび未反応の原料成分以外の化合物としては、メタン、エチレン、FO−1216、CFO−1113、RC318、HFO−1132a、HFO−1123、HFO−1243zf等が挙げられる。
【0069】
以上記載したように、本発明の作動媒体は、その他の成分を含有することができるので、作動媒体としての生産性が高い。
【0070】
本発明の作動媒体は、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ないうえに、サイクル性能に優れており、熱サイクルシステム用の作動媒体として有用である。熱サイクルシステムとしては、具体的には、冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置および二次冷却機等が挙げられる。
【0071】
空調機器として、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン(店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン等)、ガスエンジンヒートポンプ、列車空調装置、自動車用空調装置等が挙げられる。
冷凍・冷蔵機器として、具体的には、ショーケース(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース等)、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等が挙げられる。
発電システムとして、具体的には、蒸発器において地熱エネルギー、太陽熱、50〜200℃程度の中〜高温度域廃熱等により作動媒体を加熱し、高温高圧状態の蒸気となった作動媒体を膨張機にて断熱膨張させ、該断熱膨張によって発生する仕事によって発電機を駆動させ、発電を行うシステムが例示される。
熱輸送装置としては、潜熱輸送装置が好ましい。潜熱輸送装置としては、装置内に封入された作動媒体の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行うヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用される。二相密閉型熱サイフォンは、ウィッグを必要とせず構造が簡単であることから、ガス−ガス型熱交換器、道路の融雪促進および凍結防止等に広く利用される。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。例1〜3、5、7、9が実施例であり、例4、6、8、10が比較例である。
【0073】
[例1〜10]
HFO−1123と、HFC−32および/またはHFO−1234yfを表3に示す割合で含み、かつ作動媒体に対してHFO−1132aを同表に示す割合で含有する作動媒体を作製した。そして、これらの作動媒体について、以下の方法で、冷凍サイクル性能(以下、冷凍能力Qという。)を測定した。
なお、冷凍能力Qは負荷流体を冷凍する能力を意味しており、Qが高いほど同一のシステムにおいて、多くの仕事ができることを意味している。言い換えると、大きなQを有する場合は、少量の作動媒体で目的とする性能が得られることを表しており、システムの小型化が可能となる。
【0074】
[冷凍能力Qの測定]
冷凍能力Qの測定は、図1に示す冷凍サイクルシステム10に作動媒体を適用して、図2に示す熱サイクル、すなわちAB過程で圧縮機11による断熱圧縮、BC過程で凝縮器12による等圧冷却、CD過程で膨張弁13による等エンタルピ膨張、DA過程で蒸発器14による等圧加熱を実施した場合について行った。
【0075】
なお、図1に示す冷凍サイクルシステム10は、作動媒体(蒸気)を圧縮する圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体の蒸気を冷却し液体とする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体(液体)を膨張させる膨張弁13と、膨張弁13から排出された液状の作動媒体を加熱して蒸気とする蒸発器14とを備える。この冷凍サイクルシステム10において、作動媒体は、蒸発時、蒸発器14の入口から出口に向かい温度が上昇し、反対に凝縮時、凝縮器12の入口から出口に向かい温度が低下する。冷凍サイクルシステム10においては、蒸発器14および凝縮器12において、作動媒体と対向して流れる水や空気等の熱源流体との間で熱交換を行うことにより構成されている。熱源流体は、冷凍サイクルシステム10において、蒸発器14では「E→E’」で示され、凝縮器12では「F→F’」で示される。
【0076】
測定条件は、蒸発器14における作動媒体の平均蒸発温度を0℃、凝縮器12における作動媒体の平均凝縮温度を40℃、凝縮器12における作動媒体の過冷却度(SC)を5℃、蒸発器14における作動媒体の過熱度(SH)を5℃として実施した。
【0077】
蒸発器において、熱源流体としてフッ素系ブライン(アサヒクリンAE−3000:旭硝子株式会社製)を用い、蒸発器14での熱交換の前後の熱源流体の温度と流量から、作動媒体の冷凍能力Qを求めた。
【0078】
冷凍能力Qの評価結果を、表3に示す。表3において、各作動媒体組成物中のHFO−1132aの含有量が0ppmの時の冷凍能力Qを1とした際の相対能力の値が1以上を◎(優)、0.9〜1を○(良)、0.7〜0.9の場合を△(やや不良)、0.7未満を×(不良)と評価して記載した。
【0079】
【表3】
【0080】
表3から、HFO−1123と、HFC−32および/またはHFO−1234yfと、HFO−1132aとを含み、かつHFO−1132aの含有量の作動媒体に対する割合が1.5質量%未満となっている例1〜3、5、7、9の作動媒体は、冷凍能力Qに優れることがわかる。これに対して、HFO−1132aの含有量の作動媒体に対する割合が1.5質量%以上である例4、6,8,10の作動媒体は、冷凍能力Qが不良である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の熱サイクル用作動媒体は、冷凍・冷蔵機器(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等)、空調機器(ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等)、発電システム(廃熱回収発電等)、熱輸送装置(ヒートパイプ等)に利用可能である。
なお、2013年4月30日に出願された日本特許出願2013−095491号および2014年2月20日に出願された日本特許出願2014−030855号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0082】
10…冷凍サイクルシステム、11…圧縮機、12…凝縮器、13…膨張弁、14…蒸発器、15,16…ポンプ。
図1
図2