(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算処理部は、前記分光計測部により検出された前記紫外光の強度分布において、強度が予め設定された基準値以下になった波長を吸収端波長とする請求項2に記載の紫外光透過部材の温度計測装置。
前記演算処理部は、前記分光計測部により検出された前記紫外光の強度分布において、波長をλとし各波長の強度をIとしたときに、dI/dλが予め設定された基準値以上となる波長を吸収端波長とする請求項2に記載の紫外光透過部材の温度計測装置。
前記演算処理部は、予め記憶された前記紫外光透過部材を透過する以前の紫外光の強度分布と、前記分光計測部により検出された前記紫外光の強度分布とを対比し、差異が予め設定された基準値以上、基準値と同一又は基準値以下に変化した波長を吸収端波長とする請求項2に記載の紫外光透過部材の温度計測装置。
前記紫外光透過部材は材質がフッ化カルシウムであり、前記予め設定された基準値の温度または前記基準温度は190〜210℃である請求項6または7に記載の光源装置。
前記演算処理部は、前記分光計測部により検出された前記第2の紫外光の強度分布において、強度が予め設定された基準値以下になった波長を吸収端波長とする請求項11に記載の紫外光透過部材の温度計測装置。
前記演算処理部は、前記分光計測部により検出された前記第2の紫外光の強度分布において、波長をλとし各波長の強度をIとしたときに、dI/dλが予め設定された基準値以上となる波長を吸収端波長とする請求項11に記載の紫外光透過部材の温度計測装置。
前記演算処理部は、予め記憶された前記紫外光透過部材を透過する以前の前記第2の紫外光の強度分布と、前記分光計測部により検出された前記第2の紫外光の強度分布とを対比し、差異が予め設定された基準値以上、基準値と同一又は基準値以下に変化した波長を吸収端波長とする請求項11に記載の紫外光透過部材の温度計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外光透過部材をランプの容器として用いるような場合、容器内部に高圧のガスを封入し、このガスに電極間での放電やレーザ照射等を与えてプラズマを発生させて発光させるため、紫外光透過部材の温度が高温になりやすい。紫外光透過部材の温度が高温になると、一般的に機械的強度が低下する。特に、フッ化カルシウム(CaF
2)は温度が二百数十度程度になると結晶界面で滑りが生じ始め、それ以上の温度で機械的強度が大きく低下する。機械的強度の低下に基づく損傷等の問題を未然に防止するためには、まず紫外光透過部材の温度を検知することが求められる。
【0006】
部材の温度を非接触で計測する手法の一つとして、対象物から出ている赤外線の放射エネルギーを検出し可視化するサーモビジョンないしサーモグラフィと称される温度計測装置がある。ところが、フッ化カルシウムを含め、上述した材料はいずれも真空紫外領域〜赤外領域の広い範囲にわたって透過率が高く、赤外領域でも透明なため、サーモビジョン等により紫外光透過部材そのものの温度を計測することはできない。熱電対等の接触式の温度計測は、紫外光透過部材に熱電対等を固定する固定部材によりプラズマからの光の紫外光透過部材の外部への出射が妨げられたり、レーザ励起によりプラズマを発生させる場合にはレーザ光の紫外光透過部材内部への入射が妨げられたりするため好ましくない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡明な手段で紫外光透過部材の温度を的確に計測可能な温度計測方法、温度計測装置、光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明を例示する第1の態様は、紫外光を透過する紫外光透過部材(例えば実施形態におけるハウジング13、紫外光透過部材45)の温度を計測する温度計測方法である。この温度計測方法は、紫外光透過部材を透過した紫外光を分光計測部により検出して当該透過部材の吸収端波長を求め、求められた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材の温度を導出することを特徴とする。
【0009】
ここで、波長が300nm以下の紫外領域における各種材料の透過特性のグラフを
図1〜
図3に例示する。
図1はフッ化カルシウム(CaF
2)の透過特性、
図2は水晶(結晶)の透過特性、
図3は石英ガラスの透過特性であり、いずれも厚さが10mmの場合の測定値である。各グラフにおいて、横軸は波長、縦軸は透過率であり、図中に18℃(室温)〜500℃の範囲で温度を変化させた場合の各温度における透過特性をプロットしている。これらの透過特性において短波長側で透過率が急激に低下する波長が「吸収端波長」であり、例えば、フッ化カルシウムの吸収端波長は、室温レベルの温度状態(18℃)においておよそ122nm程度である。各図から、紫外光透過材料の温度が高くなるとこれに伴って吸収端波長が長波長側にシフトすることが分かる。詳細については後述するが、紫外光透過部材の温度と吸収端波長との間には一次の比例関係があり、吸収端波長を検出することにより、その吸収端波長から紫外光透過部材の温度を導出することができるのである。なお、紫外光の透過率は部材の厚さによって変化するため、
図1〜3に例示した透過特性や温度と吸収端波長との関係等は、用いる紫外光透過部材の厚さに対応して設定される。
【0010】
本発明を例示する第2の態様は、紫外光を透過する紫外光透過部材(例えば実施形態におけるハウジング13、紫外光透過部材45)の温度を計測する温度計測装置である。この温度計測装置は、紫外光透過部材を透過した紫外光における紫外光透過部材の吸収端波長を含む波長領域の強度分布を検出する分光計測部と、分光計測部により検出された紫外光の強度分布から紫外光透過部材の吸収端波長を求め、求められた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材の温度を導出する演算処理部とを備えて構成される。
【0011】
本発明を例示する第3の態様は光源装置である。この光源装置は、紫外光を発生する光源部と、光源部で発生した紫外光を透過する紫外光透過部材(例えば実施形態におけるハウジング13)と、第2の態様の紫外光透過部材の温度計測装置とを備え、温度計測装置が、導出した紫外光透過部材の温度が予め設定された基準値以上になったときに警報作動を行う警報制御部を備える。
【0012】
本発明を例示する第4の態様は光源装置である。この光源装置は、紫外光を発生する光源部と、光源部で発生した紫外光を透過する紫外光透過部材(例えば実施形態におけるハウジング13)と、紫外光透過部材を透過した紫外光における紫外光透過部材が基準温度になったときの吸収端波長の光の強度を検出する分光計測部と、分光計測部により検出された光の強度が予め設定された基準値以下になったときに警報作動を行う警報制御部とを備えて構成される。
【0013】
本発明を例示する第5の態様は、第1の紫外光を透過する紫外光透過部材(例えば実施形態における紫外光透過部材45)の温度を計測する温度計測装置である。この温度計測装置は、第2の紫外光を発生する光源部と、光源部により発生され紫外光透過部材を透過した第2の紫外光における紫外光透過部材の吸収端波長を含む波長領域の強度分布を検出する分光計測部と、分光計測部により検出された第2の紫外光の強度分布から紫外光透過部材の吸収端波長を求め、求められた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材の温度を導出する演算処理部とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様の温度計測方法は、紫外光透過部材を透過した紫外光を分光計測部により検出して吸収端波長を求め、求めた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材の温度を導出する。そのため、簡明な手段で紫外光透過部材の温度を的確に計測することができる。
【0015】
第2の態様の温度計測装置は、紫外光透過部材を透過した紫外光の強度分布を検出する分光計測部と、紫外光の強度分布から紫外光透過部材の吸収端波長を求め、求められた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材の温度を導出する演算処理部とを備えて構成される。そのため、簡明な構成で紫外光透過部材の温度を的確に計測可能な温度計測装置を提供することができる。
【0016】
第3の態様の光源装置は、紫外光を発生する光源部と、光源部で発生した紫外光を透過する紫外光透過部材と、第2の態様の紫外光透過部材の温度計測装置とを備え、温度計測装置が、導出した紫外光透過部材の温度が予め設定された基準値以上になったときに警報作動(使用者等に危険を知らせるための作動、装置が危険な状態に至ることを回避するための作動又は装置を危険な状態から脱却させるための作動等)を行う警報制御部とを備える。ここで、本明細書における「警報作動」とは、回転灯や液晶表示画面等によりアラーム表示を行う表示警報、スピーカ等によりアラーム音を発生する音声警報、光源部で発生する紫外光の発光強度を低減させたり、冷却構造による紫外光透過部材の冷却能力を増加させたりする能動制御警報などを含む概念である。そのため、簡明な装置構成で紫外光透過部材の温度上昇に起因した問題発生を未然に防止可能な光源装置を提供することができる。
【0017】
第4の態様の光源装置は、紫外光を発生する光源部と、光源部で発生した紫外光を透過する紫外光透過部材と、紫外光透過部材を透過した紫外光における紫外光透過部材が基準温度になったときの吸収端波長の光の強度を検出する分光計測部と、分光計測部により検出された光の強度が予め設定された基準値以下になったときに警報作動を行う警報制御部とを備えて構成される。そのため、簡明且つ安価な装置構成で紫外光透過部材の温度上昇に起因した問題発生を未然に防止可能な光源装置を提供することができる。
【0018】
第5の態様の温度計測装置は、第1の紫外光を透過する紫外光透過部材の温度を計測する温度計測装置であり、第2の紫外光を発生する光源部(例えば実施形態における第2光源部42)と、光源部により発生され紫外光透過部材を透過した第2の紫外光における紫外光透過部材の吸収端波長を含む波長領域の強度分布を検出する分光計測部と、分光計測部により検出された第2の紫外光の強度分布から紫外光透過部材の吸収端波長を求め、求められた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材の温度を導出する演算処理部とを備えて構成される。そのため、簡明な構成で紫外光透過部材の温度を的確に計測可能な温度計測装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。本発明を例示する第1の実施形態として、
図4に紫外光透過部材の温度を計測する温度計測装置を含む光源装置LS1の概要構成図を、
図5に光源装置LS1における光源の概略図を示す。本実施形態では、紫外光を発生する光源の一例として重水素ランプを示し、重水素ランプのハウジング(チャンバ、バルブなどとも称される)にフッ化カルシウムのチューブを用いた構成を例示する。
【0021】
光源装置LS1は、真空紫外領域にスペクトルを有する紫外光を発生する光源1と、光源1における重水素ランプのハウジングの温度を計測する温度計測装置2とを主に備える。
【0022】
光源1は、重水素ランプ(D
2ランプ)10と、重水素ランプ10に電力を供給するランプ電源15とを備える。重水素ランプ10は、アノード(陽極)11、カソード(陰極)12、ハウジング13などからなる。ハウジング13は、円筒状のフッ化カルシウム(CaF
2)製のチューブを素材として加工成形される。ハウジング13の両端にはアノード11及びカソード12が所定のギャップを隔てて融着され、ハウジング13の内部に重水素(Deuterium)ガスが充填されて重水素ランプ10が構成される。
【0023】
アノード11及びカソード12にはランプ電源15が電気的に接続され、ランプ電源15からDC電力が供給される。このときアノード11とカソード12との間で放電が発生し、放電により励起された重水素のプラズマが発光して、真空紫外領域にスペクトルを有する紫外光UV1が発生する。すなわち、アノード11とカソード12との間の放電領域が重水素ランプ10の光源部14に該当する。光源部14で発生する紫外光UV1の発光スペクトルの一例を
図6に示す。
図6におけるグラフの横軸は波長、縦軸は規格化した光強度(光出力)である。この
図6から、重水素ランプ10の発光スペクトルは160nm付近に強いピーク(輝線)を有するとともに、これよりも短波長側では120nm以下の領域まで発光帯域が伸びていることが分かる。
【0024】
光源部14で発生した紫外光UV1は、紫外光透過部材であるハウジング13を透過して重水素ランプ10から出射する。重水素ランプ10から出射した紫外光UV1は、放物面鏡などの集光部材18により集光されコリメートされて光源装置LS1から出力される。光源装置LS1から出力された紫外光UV1は、その一部(例えば数%程度)がビームスプリッタ19により取り出され温度計測装置2に入射する。
【0025】
温度計測装置2は、ビームスプリッタ19により取り出された紫外光UV1の強度分布(スペクトル、または分光強度分布)を検出する分光計測部20と、紫外光の強度分布からハウジング13の吸収端波長を求め、求められた吸収端波長に基づいてハウジング13の温度を導出する演算処理部25とを備える。
【0026】
分光計測部20は、紫外光UV1を分光する分光部材21と、分光部材21により分光された紫外光UV1の強度分布を検出する強度分布検出器22とを有する。紫外光UV1を分光する分光部材21として、紫外光UV1の波長帯域の光を反射する金属材料で形成した回折格子(diffraction grating)、紫外光UV1の波長帯域の光を透過する紫外光透過材料で形成したプリズムなどが例示される。
図4には回折格子を用いた構成を例示する。強度分布検出器22として、紫外光UV1の波長帯域の光に感度を有するフォトダイオードアレイやフォトマルが例示される。
図4にはフォトダイオードアレイを用いた構成を例示する。強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布の信号は、分光計測部20から出力され演算処理部25に入力される。
【0027】
演算処理部25は、予め設定された温度導出プログラムやハウジング13に関する特性データ等を記憶するメモリ26、分光計測部20により検出された紫外光UV1の強度分布及びメモリ26に記憶された特性データから温度導出プログラムに基づいてハウジング13の温度を導出する演算部27、及び演算部27により導出されたハウジング13の温度が予め設定された基準値以上になったときに警報作動を行う警報制御部28を備える。
【0028】
メモリ26には、ハウジング13に関する特性データや紫外光UV1の強度分布からハウジング13の温度を導出する温度導出プログラムなどが予め設定記憶(設定及び/又は記憶)される。温度導出プログラムには、紫外光UV1の強度分布からハウジング13の吸収端波長を求める吸収端波長検出サブプログラムと、求められた吸収端波長からハウジング13の温度を算出する波長温度変換サブプログラムとが含まれる。また、ハウジング13に関する特性データとして、例えば、
図1に示したようなフッ化カルシウムの透過特性や
図6に示した光源部14の発光スペクトルなどが例示される。
【0029】
以下、演算処理部25によるハウジング温度の導出方法について説明する。まず、分光計測部20(強度分布検出器22)により検出された紫外光UV1の強度分布からハウジング13の吸収端波長を求める吸収端波長検出方法について、いくつかの実施例を示して説明する。
【0030】
(第1実施例)
第1実施例の吸収端波長検出方法においては、分光計測部20により検出された紫外光UV1の強度分布において、強度が所定の基準値以下になった波長を吸収端波長とする。第1実施例の吸収端波長の検出方法を説明するための説明図を
図7に示す。グラフの横軸は紫外光UV1に含まれる光の波長、縦軸は強度であり、強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布の一例をプロットしている。例示した紫外光UV1の強度分布S
1では、波長127.5nm付近において破線で示す強度I
1以下になっている。メモリ26には
図7中に破線で示した強度I
1が基準値として設定記憶されており、演算部27は強度分布検出器22から出力された紫外光UV1の強度分布S
1のデータから強度がI
1以下となる波長λ
1を検出し、このλ
1をハウジング13の吸収端波長とする。なお、強度の基準値I
1は、温度が室温レベル(18℃)の状態で検出される波長λ
1の光の強度に対して1%〜30%程度の範囲で適宜に設定することができる。
【0031】
(第2実施例)
第2実施例の吸収端波長検出方法においては、分光計測部20により検出された紫外光UV1の強度分布において、波長をλとし各波長の強度をIとしたときに、dI/dλすなわち強度分布の傾きが所定の基準値以上となる波長をハウジング13の吸収端波長とする。この吸収端波長の検出方法を説明するための説明図を
図8に示す。グラフの縦軸及び横軸は
図7と同様に横軸が紫外光UV1に含まれる光の波長、縦軸が強度であり、強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布の一例をプロットしている。例示した紫外光UV1の強度分布S
2では、二点鎖線で示すように波長127.5nm付近においてdI/dλの値、すなわち強度分布の傾きが急激に大きくなっている。メモリ26には二点鎖線で示したdI/dλの値I′が基準値として設定記憶されており、演算部27は強度分布検出器22から出力された紫外光UV1の強度分布S
2のデータからdI/dλが基準値I′以上となる波長λ
2を検出して、この波長λ
2を吸収端波長とする。
【0032】
(第3実施例)
第3実施例の吸収端波長検出方法においては、メモリ26に予め設定記憶された光源部14近傍での紫外光UV1の発光スペクトル(強度分布)と、ハウジング13を透過して分光計測部20により検出された紫外光UV1の強度分布とを対比し、その差異が所定の基準値以上に変化した波長をハウジング13の吸収端波長とする。この吸収端波長の検出方法を説明するための説明図を
図9(a)、
図9(b)に示す。これらのグラフの縦軸及び横軸は
図7、
図8と同様に横軸が紫外光UV1に含まれる光の波長、縦軸が強度であり、
図9(a)には光源部14近傍での紫外光UV1の発光スペクトルS
31を二点鎖線で、ハウジング13を透過して強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布S
32を実線でプロットしている。また
図9(b)には光源部14近傍での紫外光UV1の発光スペクトルS
31から強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布S
32を減算処理した差分(S
31−S
32)の強度特性(分光強度特性)S
3をプロットしている。
【0033】
ここで、光源部14近傍での紫外光UV1の発光スペクトルS
31はハウジング13を透過する以前の紫外光UV1の強度分布であり、強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布S
32はハウジング13を透過した後の紫外光UV1の強度分布であり、差分の強度特性S
3はハウジング13を透過する際に生じた損失の特性を表す。そして、短波長領域に損失が大きい領域が存在することは、この領域の波長を有する光の吸収がハウジング13で生じていることを意味し、差分が急激に増加する波長λ
3がハウジング13の吸収端波長になる。メモリ26には、光源部14の発光スペクトルS
31のデータ及び差分の基準値Dが予め設定記憶されており、演算部27は、光源部14近傍での紫外光UV1の発光スペクトルS
31から強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布S
32を減算処理した差分の強度特性S
3から差分が基準値D以上に変化する波長λ
3を検出し、この波長λ
3を吸収端波長とする。
【0034】
なお、上記実施例では、光源部14近傍での紫外光UV1の発光スペクトルと強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布との差異を求める処理方法の一つとして、発光スペクトルS
31と強度分布S
32との差分(S
31−S
32)を求める方法を例示したが、両者の差異が基準値以上、基準値以下、又は基準値と同一になる波長を求められれば良く、処理方法は他の方法を用いても良い。例えば、強度分布検出器22により検出された紫外光UV1の強度分布S
32を光源部14近傍での紫外光UV1の発光スペクトルS
31で除算し、S
32/S
31の値が基準値以下に変化する波長を検出するように構成しても良い。
【0035】
このようにして求めた吸収端波長から、演算処理部25は以下のようにしてハウジング13の温度を導出する。まず、改めて
図1を参照する。この図からハウジング13の材質がフッ化カルシウム(CaF
2)の場合、温度が18℃(室温レベル)のときのハウジング13の吸収端波長は約122nmである。吸収端波長は温度の上昇に伴って長波長側に変化し、500℃では約140nmになる。なお、ここでは透過率が1%未満になる波長を吸収端波長としている。
【0036】
この図を温度と吸収端波長との関係にまとめ直したグラフを
図10に示す。グラフの横軸は温度、縦軸は吸収端波長(ここでも同様に、透過率が1%未満になる波長を用いている。)である。
図10中には、ハウジング13の材質であるフッ化カルシウムの他、
図2に示した水晶、
図3に示した石英ガラス(SiO
2)についてもデータをプロットするとともに、最小二乗法で求めた回帰直線をフッ化カルシウムについては一点鎖線で、水晶については破線で、石英ガラスについては実線で記載している。また、各材料について導出された回帰式及び決定係数(重決定)R
2を図中に付記する。回帰式(以下、「特性式」という)におけるxは温度、yは吸収端波長である。
【0037】
この図から、特性式の係数は材質ごとに相違するが、いずれの材質においても吸収端波長と温度との間には一次の比例関係があることが分かる。そして、このようにして求めた特性式に基づいて、吸収端波長から紫外光透過部材の温度を正確に導出可能なことが理解される。例えばハウジング13の材質がフッ化カルシウムの場合、検出された吸収端波長が127.5nmであれば、フッ化カルシウムの特性式からハウジング13の温度が約200℃であることが導出される。
【0038】
なお、上記では透過率が1%未満となる波長を吸収端波長として、このように定めた吸収端波長の下で特性式を求める場合について説明したが、吸収端波長を透過光の強度が基準値以下となる波長とし(第1実施例)、あるいは吸収端波長をdI/dλが基準値以上となる波長とし(第2実施例)、または吸収端波長を光源部の発光スペクトルと紫外光強度分布との差異が基準値以上に変化した波長とした場合(第3実施例)についても、温度と吸収端波長との関係は一次の比例関係であり、同様にして特性式を求めることができ、各特性式に基づいてハウジング13の温度を導出することができる。また前述の通り紫外光の透過率は部材の厚さによって変化するため、特性式は測定対象であるハウジング13の形状や寸法等によっても異なり得る。特性式はメモリ26に予め設定記憶されている。
【0039】
演算処理部25は、前述した第1実施例〜第3実施例の少なくとも何れかの手法により検出したハウジング13の吸収端波長に基づいて、ハウジング13の温度を導出する。具体的には、メモリ26に記憶された特性式を演算部27に読み出し、例えば第1実施例の手法により検出した吸収端波長λ
1を代入してハウジング13の温度を算出する。そして、算出されたハウジング温度をI/O回路を介して不図示の操作パネルや外部のパーソナルコンピュータに出力し、「ハウジング温度」として表示させる。
【0040】
また、算出されたハウジング温度が、予めメモリ26に設定記憶された所定の基準値以上であるときに、演算処理部25は以下のような警報作動を行う。メモリ26に設定記憶される基準値は、ハウジング13の材質や形状、寸法等に応じて設定される。例えば、フッ化カルシウムは二百数十度以上になると結晶界面で滑りが生じ始め、機械的強度が低下する。そのため本実施形態のようにハウジング13の材質がフッ化カルシウムである場合、メモリ26にはアラーム発生の基準温度として190〜210℃程度の温度(例えば200℃)が設定記憶される。190℃よりも低い温度にすれば光源部14の発光強度が不必要に低く抑制されたり稼働率が低下したりする虞があり、210℃よりも高い温度にすればハウジング13に損傷を生じる虞があるためである。他の例として、ハウジング13の材質が水晶の場合、メモリ26には警報作動の基準温度として380〜420℃程度の温度(例えば400℃)が設定記憶される。水晶は450℃近傍で構造変化が生じるためである。
【0041】
演算処理部25は、演算部27により算出されたハウジング13の温度が、メモリ26に設定記憶された上記基準温度以上になったときに、警報制御部28により警報作動を行わせる。既述したように、本明細書における「警報作動」とは、回転灯や液晶表示画面等によりアラーム表示を行う表示警報、スピーカ等によりアラーム音を発生する音声警報、光源部14で発生する紫外光UV1の発光強度を低減させたり、冷却構造の冷却能力を増加させて紫外光透過部材の冷却を強化させたりする能動制御警報などを含む概念である。その中で、ここでは能動制御警報の例として、第4実施例と第5実施例の二つの構成例を示す。
【0042】
(第4実施例)
警報制御部28は、重水素ランプ10の光源部14で発生する紫外光UV1の発光強度を低減させる警報作動を行う。具体的には、警報制御部28は重水素ランプ10のランプ電源15に警報信号を出力してアノード11とカソード12との間の放電電力を低下させ、光源部14で発生する紫外光UV1の発光強度を低減させる。例えば、発光強度を警報発生前の発光強度の80%程度に低減させる。このとき警報制御部28は、I/O回路を介して不図示の操作パネルや外部のパーソナルコンピュータ等にも警報信号を出力し、「ハウジング温度が基準値以上になったため発光強度を80%に低減中」である旨を表示させる。これらの能力制御警報と同時に、回転灯により異常を知らせる表示警報や、ビープ音等による音声警報を行うことも好ましい。
【0043】
(第5実施例)
警報制御部28は、重水素ランプ10を冷却する冷却構造の冷却能力を増加させてハウジング13の冷却を強化する警報作動を行う。光源装置LS1の構成を説明する際には簡明化のため説明を省略したが、光源1には重水素ランプ10を冷却する冷却構造CLが設けられている。冷却構造CLの一例として、窒素ガスを、大気環境からの重水素ランプ10のシールド(遮断)及び重水素ランプ10の冷却に用いた構成について説明する。このとき、重水素ランプ10は密閉構造のランプハウジングRH内に取り付けられる。ランプハウジングRHには窒素ガスを供給するガス供給ユニットGSが接続されて常時新鮮な窒素ガスが適宜な流量でパージ又は供給される。そのため、重水素ランプ10が大気環境から遮断されるとともに、ランプ外周を流れる窒素ガスによってハウジング13が冷却される。冷却構造CLの冷却能力は、ガス供給ユニットGSから供給する窒素ガスの流量を変化させることにより増減することができる。すなわち、本実施例においてはランプハウジングRHとガス供給ユニットGSが冷却構造CLを構成する。
【0044】
ハウジング13の温度が基準温度以上になったとき、警報制御部28はガス供給ユニットGSに警報信号を出力して窒素ガスの流量を増加させ、冷却構造CLの冷却能力を増加させる。例えば、ガス供給ユニットGSに、警報発生前の流量に対して20%程度増加した流量で窒素ガスを供給させる。このとき警報制御部28は、I/O回路を介して不図示の操作パネルや外部のパーソナルコンピュータ等にも警報信号を出力し、「ハウジング温度が基準値以上になったため窒素ガス供給量を20%増加中」である旨を表示させる。これらの能動制御警報と同時に回転灯により異常を知らせる表示警報や、ビープ音等による音声警報を行うことも好ましい。
【0045】
なお、重水素ランプ10の外周にジャケット(不図示)を設けて冷却水(冷媒)を供給し、ハウジング13を冷却するような冷却構造の場合、上記窒素ガスパージの場合と同様に冷却水等の流量を増加させることにより冷却能力を増加させることができる。また、冷却水等の温度を低下させることにより冷却能力を増加させるように冷却構造を構成しても良い。
【0046】
以上説明したような温度計測装置2を備えた光源装置LS1によれば、簡明な構成でハウジング13の温度を的確に計測することができ、ハウジング13の温度上昇に起因した問題の発生を未然に防止することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明を例示する第2の実施形態として、
図11に温度計測装置3を含む光源装置LS2の概要構成図を示す。以下この図を参照しながら第2実施形態の光源装置LS2について説明する。なお、本実施形態の光源装置LS2は、既述した光源装置LS1と対比して温度計測装置3の構成が光源装置SL1の温度計測装置2と相違するが、光源1の構成は光源装置SL1の光源1と同一である。そこで、同一の構成には同一の番号を付して重複説明を省略し、温度計測装置2と相違する温度計測装置3について詳細に説明する。
【0048】
光源装置LS2は、重水素ランプ10を有し真空紫外領域にスペクトルを有する紫外光UV1を発生する光源1と、重水素ランプ10のハウジング13の温度が予め設定された基準値以上になったときにこれを検出して警報作動を行う温度計測装置3とを主に備える。
【0049】
温度計測装置3は、ビームスプリッタ19により取り出された紫外光UV1を分光して所定波長の光の強度を検出する分光計測部30と、分光計測部30により検出された光の強度が予め設定された基準値以下であるか否かを判断する演算処理部35とを備える。
【0050】
分光計測部30は、紫外光UV1を分光する分光部材31と、分光部材31により分光された光のうち、所定波長の光の強度を検出する分光検出器32とを有する。分光部材31として回折格子を用い、所定波長の光の強度を検出する分光検出器32として、分光された光の所定波長位置に開口を設けた開口板32aと、開口の背後(
図11における下方)に配置したフォトダイオード32bとを用いた構成を
図11に例示する。
【0051】
ここで、上記所定波長は、ハウジング13の温度が基準温度になったときのハウジング13の吸収端波長である。基準温度はそれ以上の温度領域でのハウジング13の使用を抑制すべき温度であり、ハウジング13の材質がフッ化カルシウムの場合には190〜210℃程度、例えば200℃に設定される。フッ化カルシウムの温度が200℃になったときの吸収端波長(透過率が1%未満になる波長を用いている)は、
図10から概ね127.5nmである。従って、開口板32aの開口を波長127.5nmの位置に配設してこの波長の光の強度をフォトダイオード32bで検出する。この時、フォトダイオード32bにより検出された波長127.5nmの光の強度が所定の基準値(例えば室温状態で検出される波長127.5nmの光の強度の10%)以下になったときには、ハウジング13の温度が基準温度200℃以上になったことを意味する。分光検出器32により検出されたハウジング13の吸収端波長の光強度の信号は、分光計測部30から出力されて演算処理部35に入力される。
【0052】
演算処理部35は、予め設定された上記所定の基準値を記憶するメモリ36、分光計測部30で検出された光の強度とメモリ36に設定された基準値とを対比して光強度が基準値以下であるか否かを判断する演算部37、演算部37において分光計測部30の検出強度が基準値以下になったと判断されたときに警報作動を行う警報制御部38とを備える。
【0053】
演算処理部35は、分光計測部30で検出された光の強度がメモリ36に設定された基準値以下になったと演算部37が判断したときに、警報制御部38により警報作動を行わせる。警報制御部38が実行する警報作動の具体的な制御内容は、第1実施形態の第4実施例及び第5実施例として既述した警報制御部28の制御内容と同様である。
【0054】
従って、以上説明したような温度計測装置3を備えた光源装置LS2によれば、簡明且つ安価な装置構成でハウジング13の温度を的確に計測することができ、ハウジング13の温度上昇に起因した問題の発生を未然に防止することができる。
なお、本実施形態の温度計測装置3においては、フォトダイオード32bにより検出された波長127.5nmの光の強度が所定の基準値と同一となったとき、または波長127.5nmの光の強度と所定の基準値との差分が所定値以下となったときに、ハウジング13の温度が基準温度200℃以上となったことを意味するように所定の基準値を設定してもよい。また、本実施形態の温度計測装置3においては、演算部37ではなく警報制御部38において、分光計測部30で検出された光の強度とメモリ36に設定された基準値とを対比して光強度が基準値以下であるか否かを判断してもよい。また、本実施形態の温度計測装置3においては、開口板32aを省略することも可能である。この場合は、フォトダイオード32bのみを波長127.5nmの位置に配設する。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明を例示する第3の実施形態として、
図12に温度計測装置5の概略図を示す。以下この図を参照しながら第3実施形態の温度計測装置5について説明する。この温度計測装置5は、第1光源部41から出射した第1の紫外光LV1が透過するウィンドウやレンズあるいは波長変換光学素子等の紫外光透過部材45の温度を計測する温度計測装置である。温度計測装置5は、真空紫外領域にスペクトルを有する第2の紫外光LV2を発生する第2光源部42と、第2光源部42により発生され紫外光透過部材45を透過した第2の紫外光LV2の強度分布を検出する分光計測部50と、分光計測部50により検出された第2の紫外光LV2の強度分布から紫外光透過部材45の吸収端波長を求め、求めた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材45の温度を導出する演算処理部55とを備える。
【0056】
第1光源41として、ArFエキシマレーザやF
2レーザ、あるいはこれらと同様の波長を有するレーザ光を出力する全固体型レーザ装置(例えば本出願人に係る特開2005−275095号公報等を参照)が例示される。このとき、第1の紫外光LV1は、波長が193nm、あるいは157nmで単色性が高い光である。但し、第1の紫外光LV1はこれらのレーザ光に限るものではなく、所定のスペクトル幅を有する紫外光であっても良い。本実施形態では、これらの波長帯域の紫外光を透過する紫外光透過部材45として、水晶(結晶)を用いた場合について説明する。
【0057】
第2の紫外光LV2は、紫外光透過部材45の吸収端波長を含む波長領域にスペクトル(強度分布)を有する光である。紫外光透過部材45の材質が水晶である場合には、第2の紫外光LV2は、水晶の吸収端波長である145〜155nmを含む波長領域にスペクトルを有する光である。このような第2の紫外光LV2を発生する第2光源42として、前述した重水素ランプ10が例示される。
【0058】
分光計測部50は、第2の紫外光LV2を分光する分光部材51と、分光部材51により分光された第2の紫外光LV2の強度分布を検出する強度分布検出器52とを有する。分光部材51として回折格子やプリズム、強度分布検出器52としてフォトダイオードアレイやフォトマルが例示される。
図12には分光部材51として回折格子を用い、強度分布検出器42としてフォトダイオードアレイを用いた構成を例示する。強度分布検出器52により検出された第2の紫外光LV2の強度分布の信号は、分光計測部50から出力され演算処理部55に入力される。
【0059】
演算処理部55は、予め設定された温度導出プログラムや紫外光透過部材45に関する特性データ等を記憶するメモリ56と、分光計測部50により検出された第2の紫外光LV2の強度分布及びメモリ56に記憶された特性データから温度導出プログラムに基づいて紫外光透過部材45の温度を導出する演算部57と、演算部57により導出された紫外光透過部材45の温度が予め設定された基準値以上になったときに警報作動を行う警報制御部58とを備える。
【0060】
メモリ56には、紫外光透過部材45に関する特性データや、第2の紫外光LV2の強度分布から紫外光透過部材45の温度を導出する温度導出プログラムなどが予め設定記憶される。温度導出プログラムには、第2の紫外光LV2の強度分布から紫外光透過部材45の吸収端波長を求める吸収端波長検出サブプログラムや、求められた吸収端波長から紫外光透過部材45の温度を算出する波長温度変換サブプログラムが含まれる。また、紫外光透過部材45に関する特性データとして、例えば、
図2に示したような水晶の透過特性や
図6に示したような第2光源部42の発光スペクトル(但し
図6は第2光源部42の発光スペクトルそのものではなく、第2光源部42と同一構造である、ハウジングを含む重水素ランプ10の発光スペクトルである)が例示される。
【0061】
演算処理部55による紫外光透過部材45の温度の導出方法は、前述した第1実施形態の演算処理部25によるハウジング13の温度導出方法(第1実施例〜第3実施例)と同様である。そのため、ここでは演算処理部55による紫外光透過部材45の温度導出方法として、前述した第1実施例の温度導出方法を適用した場合について簡潔に説明する。
【0062】
この温度導出方法では、分光計測部50により検出された第2の紫外光LV2の強度分布において、強度が所定の基準値以下になった波長を紫外光透過部材45の吸収端波長とする。
図13に示すグラフにおける横軸は第2の紫外光LVに含まれる光の波長、縦軸は強度であり、強度分布検出器52により検出された第2の紫外光LV2の強度分布の一例をプロットしている。メモリ56には破線で示した強度I
4が基準値として設定記憶されており、演算部57は強度分布検出器52から出力された第2の紫外光LV2の強度分布S
4のデータから強度がI
4以下となる波長λ
4を検出し、この波長λ
4を紫外光透過部材45の吸収端波長とする。
【0063】
そして、演算処理部55は、予め設定記憶された紫外光透過部材45の特性式と、検出された吸収端波長λ
4とに基づいて、紫外光透過部材45の温度を導出する。具体的には演算処理部55は、メモリ56に記憶された水晶の特性式(一例として
図10を参照)を演算部57に読み出し、読み出した特性式に吸収端波長λ
4を代入して紫外光透過部材45の温度を算出する。例えば、λ
4が153nmであれば、水晶の特性式から紫外光透過部材45の温度は300℃と算出される。演算処理部55は、算出された紫外光透過部材45の温度をI/O回路を介して不図示の操作パネルや外部のパーソナルコンピュータに出力し、「紫外光透過部材温度」として表示させる。
【0064】
また、算出された紫外光透過部材45の温度が予めメモリ56に設定記憶された所定の基準値以上であるときには、演算処理部55は所定の警報作動を行う。メモリ56に設定記憶される基準値は、紫外光透過部材45の材質や形状寸法、透過する第1の紫外光LV1の波長などに応じて設定される。例えば、本実施形態のように紫外光透過部材45の材質が水晶である場合、水晶は450℃近傍で構造変化が生じ、物理的、機械的特性が変化する。従って、第1の紫外光LV1の波長が紫外光透過部材45の吸収端波長に対して余裕がある場合、具体的には例えば第1の紫外光LV1の波長が193nmであり、紫外光透過部材45の温度が450℃の時の吸収端波長(
図10より約157nm)との差が大きい場合には、上記温度(450℃)に基づいてアラーム発生の基準温度が設定される。このときの警報作動の基準温度は380〜420℃程度の温度(例えば400℃)に設定され、メモリ56に設定記憶される。
【0065】
一方、第1の紫外光LV1の波長が紫外光透過部材45の吸収端波長と近接している場合には、その波長差(余裕)を考慮する必要がある。例えば第1の紫外光LV1の波長が157nmであるような場合に、警報作動の基準温度を上記と同様の400℃に設定記録すると、基準温度における紫外光透過部材45の吸収端波長は156nmであり、第1の紫外光LV1の波長である157nmとの波長差が1nm程度になる。この場合、僅かな温度上昇で紫外光透過部材45の吸収端波長は157nmにシフトするため、紫外光透過部材45において第1の紫外光LV1の吸収率が急激に高まり熱暴走による損傷を生じる虞がある。従って、このような場合には第1の紫外光LV1の波長と基準温度における紫外光透過部材45の吸収端波長との間に一定程度の波長差を設け、警報作動の基準温度は300〜340℃程度の温度(例えば320℃)に設定される。この時、紫外光透過部材45の320℃における吸収端波長は、
図10では約153nmである。
【0066】
演算処理部55は、演算部57により算出された紫外光透過部材45の温度が、メモリ56に設定記憶された上記基準温度以上になったときに、警報制御部58により警報作動を行わせる。警報作動の具体的な内容についてはこれまでに説明したとおりである。すなわち、例えば演算処理部55はI/O回路を介して不図示の操作パネルや外部のパーソナルコンピュータ等に警報信号を出力して「紫外光透過部材が基準温度になった」旨を表示させ、あるいは回転灯等による表示警報や、ビープ音等による音声警報を行わせる。
【0067】
従って、温度計測装置5によれば、簡明な構成で紫外光透過部材45の温度を的確に計測することができる。また、警報制御部58による警報作動に基づいて第1光源41の出力を低下させるなどの対応を行うことにより、紫外光透過部材45の温度上昇に起因した問題の発生を未然に防止することができる。
【0068】
以上説明したように、本発明の態様の温度計測方法、温度計測装置2,3,5及び光源装置LS1,LS2は、紫外光透過部材を透過した紫外光を分光計測部により検出して紫外光透過部材の吸収端波長を求め、求めた吸収端波長に基づいて紫外光透過部材の温度を導出する。そのため、簡明な構成・手段で紫外光透過部材の温度を的確に計測することができる。
【0069】
なお、実施形態では、真空紫外領域の紫外光を発生する光源の例として重水素ランプを示したが、光源は真空紫外領域に発光スペクトルを有するものであれば良く、例えばエキシマランプなどであっても良い。また、真空紫外領域の紫外光を透過する紫外光透過部材の材質として、フッ化カルシウム(CaF
2)、水晶、石英ガラス(SiO
2)を例示したが、本発明はこれらの材質に限られるものではなく、フッ化マグネシウム(MgF
2)やフッ化リチウム(LiF)、サファイアガラスなど、真空紫外領域の紫外光を透過する他の公知の材質についても同様に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、実施形態では、吸収端波長の定め方として、分光強度分布において透過光の強度が基準値以下となる波長を吸収端波長とする方法(第1実施例)、分光強度分布においてdI/dλが基準値以上となる波長を吸収端波長とする方法(第2実施例)、光源部近傍の紫外光の分光強度分布と紫外線透過部材を透過した後の紫外光の分光強度分布との差異が基準値以下、基準値と同一又は基準値以上となった波長を吸収端波長とする方法(第3実施例)を述べたが、吸収端波長の定め方はこれらには限られない。例えば、分光強度分布において透過光の強度が基準値と等しくなる波長や透過光の強度と基準値との差分が所定値以下となる波長を吸収端波長としてもよく、dI/dλが基準値と等しくなる波長やdI/dλと基準値との差分が所定値以下となる波長を吸収端波長としてもよい。すなわち吸収端波長は、分光強度分布の短波長側に存在する強度が急激に低下する波長領域の波長の中から、所定の基準値に基づいて決定されたある波長であればよく、上述の第1実施例〜第3実施例はその決定を行う際に採用し得る多くの基準の一例にすぎない。
【0071】
なお、第1、第3実施形態においては、演算処理部25、55はハウジング13、紫外光透過部材45の温度が基準温度以上となったときに警報制御部28、58に警報作動を行わせているがこれには限られない。警報作動は、ハウジング13、紫外光透過部材45の温度と基準温度との比較に基づいて行われるものであればよく、演算処理部25、55は、ハウジング13、紫外光透過部材45の温度が基準温度と同一となったとき、又は基準温度に接近したときに警報制御部28、58に警報作動を行わせるよう構成されていてもよい。