特許第6384624号(P6384624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6384624
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】樹脂被覆金属顔料
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/62 20060101AFI20180827BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20180827BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20180827BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180827BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20180827BHJP
【FI】
   C09C1/62
   C09C3/10
   C09D7/62
   C09D201/00
   C09D11/037
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-565869(P2017-565869)
(86)(22)【出願日】2017年8月8日
(86)【国際出願番号】JP2017028725
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-234107(P2016-234107)
(32)【優先日】2016年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】仲澤 大助
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】大坪 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】小坂 典生
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−241039(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/044926(WO,A1)
【文献】 特開2010−070617(JP,A)
【文献】 特開2014−185328(JP,A)
【文献】 特開2012−025826(JP,A)
【文献】 特開2007−119671(JP,A)
【文献】 特開2005−240013(JP,A)
【文献】 特開2004−224824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00−1/68
C09C 3/00−3/12
C09D 1/00−10/00
C09D101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料であって、シンナムアルデヒド、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、2−ヒドロキシシンナムアルデヒド、メタクロレインから選ばれる少なくとも1種以上の、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)と、メチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物から選ばれる少なくとも1種以上の、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)を必須成分とした共重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料。
【請求項2】
1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)および1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)のpKa(酸解離定数の負の常用対数値)が5.0以下の成分含有量が5質量%以下である請求項1記載の樹脂被覆金属顔料。
【請求項3】
前記樹脂被覆金属顔料の金属粒子含有量と被覆樹脂含有量の合計量100質量%に対し、樹脂含有量が0.05質量%〜30質量%である、請求項1または2記載の樹脂被覆金属顔料。
【請求項4】
請求項1〜請求項3いずれか1項記載の樹脂被覆金属顔料を含む塗料、インクまたは成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック塗料は、自動車の車体や内装部品、及び冷蔵庫・洗濯機に代表される家庭用電化製品や、スマートフォン、モバイルコンピュ−タ−に代表される携帯用電子機器等に塗装され、主にメタリック調の質感を付与する目的で、広く使用されている。メタリック塗料には、通常、扁平形状(鱗片形状ともいう)を有するアルミニウム・銅・ニッケル・チタンなどの金属粉や、マイカ等の無機粒子等に代表されるメタリック顔料が配合される。
【0003】
従来、これらのメタリック顔料では、表面に金属原子、もしくは無機化合物分子が露出しているため、酸、アルカリ、化学薬品等と反応して顔料表面の平滑性が損なわれ、メタリック塗装の光輝感が損なわれたり、また塗膜が浸食を受けて基材表面が露出したりして、塗装された筐体全体の耐久性を損なわせる原因ともなってきた。
【0004】
これらの問題を解決するため、メタリック顔料の表面に高分子被膜を形成し、酸、アルカリ、化学薬品への耐久性を付与する試みがなされてきた。
【0005】
例えば特許文献1では、ラジカル重合性二重結合を3個以上有するモノマ−、ラジカル重合性不飽和カルボン酸及び/またはラジカル重合性二重結合を有するリン酸エステルを重合して得られる共重合体で顔料表面を被覆することにより、耐水性、耐薬品性、耐指紋跡性に優れたアルミニウム顔料が得られるという。
【0006】
また特許文献2では、振動的外的作用を付加しながら溶剤中に金属顔料粒子を分散させ、分子内に一個以上の二重結合を有する単量体及び/又はオリゴマ−を重合して得られる共重合体で顔料表面を被覆することにより、樹脂被覆層の表面粗さが一定以下であり、顔料分散性、耐薬品性、密着性、光沢保持性に優れたアルミニウム顔料が得られるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−253668号公報
【特許文献2】国際公開第2011/033655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし上記の技術では、酸性モノマ−でアルミ顔料を処理する過程で、顔料の最表面が腐食されて平滑性が損なわれたり、高分子被膜が均一な厚みで形成されないため、入射光の散乱による光沢・輝度感の低下をもたらしていた。さらに、高分子被覆されていない部分(ピンホ−ル)が存在することで耐薬品性の低下をもたらしていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルデヒド基を有する単量体を含有する重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料は、表面平滑性が優れることにより樹脂の被覆が均一となることで光輝感であることを見出し、本発明の樹脂被覆金属顔料を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)共重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料であって、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料。
(2)さらに、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)を含み、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)および1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)のpKa(酸解離定数の負の常用対数値)が5.0以下の成分含有量が5質量%以下である樹脂被覆金属顔料。
(3)前記樹脂被覆金属顔料の金属粒子含有量と被覆樹脂含有量の合計量100質量%に対し、樹脂含有量が0.05質量%〜30質量%である樹脂被覆金属顔料。
(4)前記いずれか記載の樹脂被覆金属顔料を含む塗料、インク又は成形品。
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
金属顔料表面の平滑性が良好のため、光輝性が良好な樹脂被覆金属顔料、および該樹脂被覆金属顔料を含む塗料、インク、成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪樹脂被覆金属顔料≫
本実施形態の樹脂被覆金属顔料(「樹脂被覆金属顔料」と省略することがある。)は、扁平形状の金属粒子表面が、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料である。また、前記共重合体が、さらに1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)を含み、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)および1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)の、pKa(酸解離定数の負の常用対数値)が5.0以下である単量体の含有量が5質量%以下である、樹脂被覆金属顔料である。
【0013】
<金属粒子>
実施形態に係る粒子は、無機粒子又は金属粒子であってもよく、無機又は金属を含む任意の粒子であってもよい。金属としては、元素の周期表1〜15族に属するもののうち、第1周期及び第2周期のものを除いたものが挙げられる。無機及び/又は金属材料としては、雲母チタン、ガラス粉末、アルミニウム粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、亜鉛粉、ステンレス粉、ニッケル粉などを例示できる。これらのなかでは、金属粉子が好ましく、扁平形状(鱗片形状)の金属粒子がより好ましく、アルミニウム粒子がさらに好ましく、光輝性の観点から扁平形状(鱗片形状)のアルミニウム粒子が特に好ましい。
【0014】
実施形態に係る金属粒子は、従来公知の方法で製造されたものを広く用いることができる。扁平形状のアルミニウム粒子を用いる場合には、略球状のアルミニウム粒子を磨砕・加工して扁平形状のアルミニウム粒子にしてもよく、蒸着等の方法により扁平形状のアルミニウムに加工してもよい。加工方法としては、ボ−ルミルを用いる方法や蒸着を利用する方法等が挙げられる。コ−ンフレ−クまたはシルバ−ダラーと呼ばれる形状のアルミニウム粒子や蒸着アルミニウム粒子等が例示される。
【0015】
以下、粒子の形状について説明する。通常、顔料としての粒子は1個のみで提供されることは想定されないため、下記に示す値は、提供される複数個の粒子を対象にして求められた平均値であってもよい。
【0016】
粒子の平均粒径は、100μm以下であってよく、0.1μm〜100μmであってよく、1μm〜80μmであってよく、5μm〜50μmであってよい。
【0017】
粒子の平均粒径とは、レ−ザ−回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積粒度分布から、体積基準メジアン径d50として算出可能である。
【0018】
優れた光輝性及び分散性が得られるとの観点から、粒子の平均粒径は0.1μm以上であることが好ましい。なかでも、特に優れた光輝性及び分散性が得られるとの観点から、粒子の平均粒径は5μm以上であることが好ましい。粒子の平均粒径が100μm以下であると、粒子の沈殿が生じ難く、且つ光輝性も良好であるため好ましい。なかでも特に、粒子の平均粒径が50μm以下であると、粒子の沈殿が生じ難く、且つ光輝性も良好であるため好ましい。
【0019】
粒子が扁平形状である場合、粒子の平均厚みは、1μm以下であってよく、0.001μm〜1μmであってよく、0.01〜0.8μmであってよく、0.01〜0.5μmであってよい。粒子の平均厚みは、1個の粒子に対して、無作為に選定された領域における厚みの平均値をもとめ、そこからさらに複数個の粒子の厚みについての平均値とする。ここで複数個とは10個以上とする。
【0020】
粒子の平均粒径(R)と平均厚み(t)の比R/tは、5以上であることが好ましく、5〜3000であってよく、15〜1500であってよく、30〜750であってよい。粒子の前記R/tが上記の範囲内であることで、粒子が適度な薄片の形状となるため、優れた光輝性が得られやすい。
【0021】
粒子の表面粗さRaは、20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。粒子の表面粗さRcは、80nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。前記表面粗さRa及び/又はRcが上記の上限値以下であることにより、粒子の表面状態がより平滑となり、優れた光輝性が発揮されやすい。
【0022】
粒子の形状に関し、上記の平均粒径、平均厚み、R/t、Ra、Rcの5つの項目の数値範囲のうち、2つ以上の項目の数値範囲を満たしていることが好ましい。
【0023】
<共重合体>
実施形態に係る共重合体は、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分としたものである。また、共重合体は、さらに1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)を含み、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)および1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)のpKa(酸解離定数の負の常用対数値)が5.0以下の成分含有量が、5質量%以下であってもよい。
【0024】
実施形態に係る単量体(A)は、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体である。
【0025】
上記化合物の一般例としては、アクロレイン、メタクロレイン、2−エチルアクロレイン、クロトンアルデヒド、2−ペンテナール、2−ヘキセナール、2−ヘプテナール、2−オクテナール、2−ノネナール、2−デセナール、2−ドデセナール、2−オクタデセナール、3−メチル−2−ブテナール、2−エチルブテナール、2−メチルペンテナール、2−エチルペンテナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−ヘプタジエナール、2,4−オクタジエナール、シンナムアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド、α−メチルシンナムアルデヒド、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、α−ブロモシンナムアルデヒド、2−ヒドロキシシンナムアルデヒド、2−ニトロシンナムアルデヒド、4−アジドシンナムアルデヒド、4−メトキシシンナムアルデヒド、trans−4−ブロモシンナムアルデヒド、4−ニトロシンナムアルデヒド、4−ジメチルアミノシンナムアルデヒド、4−フルオロシンナムアルデヒド、2−フラルアクロレイン、ゲラニアール、ネラール、シトラール、ファルネサールなどが挙げられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0026】
1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体は、酸性を示す官能基がふくまれていないため、アルミニウムのようなイオン化傾向の高い金属表面を処理した場合でも、顔料表面での腐食が発生しない。従って、顔料表面の平滑性が維持されるため、高い光沢、輝度を有する樹脂被覆金属顔料を得ることが可能となった。
【0027】
実施形態に係る、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)は、1分子当たり1〜6個のラジカル重合性二重結合を含む単量体である。これらは単独もしくは複数を組み合わせて使用できる。
【0028】
1分子当たり1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
1分子当たり2〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む、所謂多官能単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、
ビスフェノールA−ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)としては、例えば耐薬品性を求められる場合等には、被覆樹脂の架橋がより強固になるため、複数のラジカル重合性二重結合をもった単量体を用いることが好ましく、2個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体を用いることが好ましく、3個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体を用いることがさらに好ましい。また、高輝度が求められるような場合には、樹脂分子が秩序よく配列することでより均一な被覆層を形成できる点で、1個以上2個以下のラジカル重合性二重結合を有する単量体を用いることが好ましく、1個のラジカル重合性二重結合を有する単量体を用いることがさらに好ましい。
【0030】
実施形態に係る、pKa(酸解離定数の負の常用対数値)が5.0以下である単量体は、分子中に1個以上のカルボキシル基を含むラジカル重合性不飽和カルボン酸や、分子中に1個以上のリン酸基を含むラジカル重合性リン酸エステル単量体や、分子中に1個以上のスルホン酸基を含むラジカル重合性スルホン酸単量体が挙げられる。
【0031】
ラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはこれら不飽和ジカルボン酸のハーフエステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を併用して用いることができるが、これらが樹脂組成中に占める割合は5質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが好ましい。
【0032】
ラジカル重合性リン酸エステル単量体としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−アクリロイルオキシエチルスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルホスフェート等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を併用して用いることができるが、これらが樹脂組成中に占める割合は5質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが好ましい。
【0033】
ラジカル重合性スルホン酸単量体としては、N−tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を併用して用いることができるが、これらが樹脂組成中に占める割合は5質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが好ましい。
【0034】
実施形態に係る単量体について、pKa(酸解離定数の負の常用対数値)が5.0以下である単量体の含有量が、5質量%以下でなければならない理由としては、pKaが5.0以下を示す酸によって金属顔料表面が腐食されることが広く知られているためである。腐食の程度は酸の強さ、即ちpKaに依存することが知られている。例えば酢酸(pKa:4.8)をアルミニウムに接触させた場合、その表面を強く腐食することがよく知られており、pKaに依存して金属顔料が腐食されることは容易に予想される。
【0035】
pKaが5.0以下を示す単量体としては、単量体中にカルボキシル基やリン酸基やスルホ基を一定量以上有するモノマー等が挙げられる。例えば、アクリル酸のpKaは4.3である。また2−メタクリロイロキシエチルホスフェートのpKaは2.5(10%水溶液中)である。また、N−tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸のpKaは2.6(0.1%水溶液中)である。そのため、単量体中にはこれらカルボキシル基やリン酸基やスルホン酸基を有するモノマーは少ないほうが好ましく、実質的に含まれないのがより好ましい。
【0036】
樹脂被覆金属顔料における共重合体は、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)に由来する構成単位のモル比率(A:B)は、被覆樹脂の被覆状態を良好とする観点から、1:1.5〜1:10が好ましく、1:1.5〜1:7がより好ましく、1:1.5〜1:4がさらに好ましい。
【0037】
<重合開始剤(D)>
実施形態に係る重合開始剤(D)は、活性種として少なくともラジカルを発生させるラジカル重合開始剤であり、例えば、アゾ重合開始剤が挙げられる。
【0038】
実施形態に係る重合開始剤(D)としてニトリル基を含むアゾ重合開始剤を用いる場合、前記1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)とをラジカル重合反応させるものである。
【0039】
実施形態に係る重合開始剤(D)としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)等が挙げられ、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0040】
実施形態に係る他の重合開始剤(D)としては過酸化物が挙げられ、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾイルパ−オキサイド、ラウロイルパ−オキサイド、イソブチルパ−オキサイド、メチルエチルケトンパ−オキサイド、ジ−(t−ブチル)シクロヘキシリデンジペルオキサイド等が例示されるが、これらに限定されない。
【0041】
実施形態に係る重合開始剤(D)の、重合時温度は70〜120℃であってもよく、70〜100℃であってもよい。半減期時間は、重合時温度や開始剤種により適宜設定することができる。
【0042】
<粒子と被覆樹脂>
以下、実施形態の樹脂被覆金属顔料における粒子及び被覆樹脂について説明する。ここで、通常、樹脂被覆金属顔料は、顔料の粒子1個のみで提供されることは想定されないため、下記に示す値は、提供される樹脂被覆金属顔料を対象にした平均値として求めてもよい。
【0043】
実施形態の樹脂被覆金属顔料において、粒子は、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を含有する被覆樹脂に被覆されている。
【0044】
被覆樹脂は1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を50質量%以上含むものであることが好ましく、80質量%以上含むものであることがより好ましく、95質量%以上含むものであることがさらに好ましく、99質量%以上含むものであることが特に好ましい。又は、被覆樹脂は1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体のみからなるものであってもよい。
【0045】
本明細書において、粒子が「被覆樹脂に被覆されている」とは、粒子表面の一部又は全部に被覆樹脂が積層されている状態を意味する。被覆樹脂は、粒子の表面に直接結合していることが好ましい。結合の種類としては、共有結合、配位結合、イオン結合等の化学結合が挙げられる。被覆樹脂が粒子の表面に結合していることにより、粒子から被覆樹脂を剥がれ難くすることができる。
【0046】
金属粒子含有量と被覆樹脂含有量の合計量100質量%に対し、樹脂含有量は0.05質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜20質量%がより好ましい。
【0047】
粒子と被覆樹脂との質量比が上記範囲内にあることで、粒子の光輝性と被覆樹脂の耐薬品性とのバランスが好ましいものとなる。また、粒子に対する被覆樹脂の被覆が薄くなることで、光輝感の観点からも好ましい。
【0048】
実施形態の樹脂被覆金属顔料における、粒子の総表面積[m]あたりの、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)の質量[g]は、金属顔料の表面積に応じて適宜設定されるものである。
【0049】
粒子総表面積あたりの、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)の質量が適性範囲内にあることで、粒子の光輝性と被覆樹脂の耐薬品性とのバランスが好ましいものとなる。また、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)は、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体の重合の起点となり得るものであるので、粒子総表面積あたりの、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)の質量が適性範囲であることにより、粒子の表面上でのラジカル重合が、領域間でより均一な状態で進行すると考えられる。その結果、平滑で均一な厚みを有する被覆樹脂が得られる。
【0050】
粒子の総表面積は、比表面積計を用いて測定した粒子の比表面積と粒子の質量から計算することができる。
【0051】
前記被覆樹脂は樹脂粒を有していてよい。実施形態に係る樹脂粒は、粒子上で共重合体がラジカル重合されることで形成され得るものであり、半球状の共重合物であり得る。
【0052】
被覆樹脂の「平滑」及び「均一な厚み」の程度の指標として、実施形態の樹脂被覆金属顔料において、前記被覆樹脂の面積に対する、前記被覆樹脂の表面の、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積の割合が15面積%以下であることが好ましく、13面積%以下であることがより好ましく、5面積%以下であることがさらに好ましく、2面積%以下であることが特に好ましい。面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積の割合が上記の上限値以下である樹脂被覆金属顔料は、被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するので、光輝性及び耐薬品性が大変に優れている。
【0053】
前記被覆樹脂の面積(投影面積)に対する、前記被覆樹脂の表面の、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積(投影面積)の割合は、例えば、樹脂被覆金属顔料のSEM画像ファイルに対して、測定エリアで観察される樹脂粒1粒子ごとにHeywood径(面積円相当径)を算出し、樹脂被覆金属顔料表面に観察される付着樹脂について、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の割合(面積%)を下記式により計算できる。
【0054】
面積円相当径25nm以上の樹脂粒割合(面積%)=測定エリアにおける面積円相当径25nm以上の樹脂粒の総面積(μm2)/測定エリア面積(μm2)×100
なお、測定に使用した画像は、被覆樹脂が撮像されていた部分のみを測定エリアとして使用し、面積円相当径25nm以上の樹脂粒の総面積は、各面積円相当径から算出するものとする。値は、複数個の被覆粒子の粒子表面に対しての観察結果の平均値として算出してよい。
【0055】
実施形態の樹脂被覆金属顔料は、一例として、後述の樹脂被覆金属顔料の製造方法により製造可能である。
【0056】
実施形態の樹脂被覆金属顔料は、
(i)金属粒子と、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)と、を反応させ、
(ii)前記1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)又はそれに由来する構造と、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)とを、重合開始剤(D)にてラジカル重合反応させることにより、金属粒子上に1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を形成させてなり、
前記金属粒子が、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を含有する被覆樹脂に被覆され、
前記1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体の末端に、前記重合開始剤(D)に由来する下記一般式(1)で表される構造を含むものであってもよい。
【0057】
【化1】
【0058】
[式(1)中、R1はメチル基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキル基、−C(=O)−O−R2aで表される基、又は−C(=O)−NH−R2aで表される基{前記R2aは炭素数1〜8のアルキル基を表す。}を表し、前記R1と前記R2とが互いに結合した環状構造を形成してもよい。]
金属粒子、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)、重合開始剤(D)、及び式(1)について、上記で例示したものが挙げられる。
【0059】
前記ラジカル重合反応は、開始剤の半減期時間を特に定めることなく行うことができる。但し、7〜50分の条件下で行われることが好ましく、より短い半減期時間で行われたものがさらに好ましい。
【0060】
<塗料・インク>
実施形態の樹脂被覆金属顔料は、塗料又はインクとして利用可能である。一実施形態として、実施形態の樹脂金属顔料を含有する塗料又はインクを提供できる。塗料としては、粉体塗料、家具塗装用塗料、電化製品塗装用塗料、自動車塗装用塗料、プラスチック塗装用塗料等が挙げられる。インクとしては、印刷用インク、包装材印刷用インク等が挙げられる。
【0061】
塗料又はインクは、実施形態の樹脂被覆金属顔料と、分散媒と塗料又はインク用樹脂とを含有してもよい。分散媒としては、金属顔料の分散に用いられる任意の分散媒を用いることができ、従来公知の分散媒を用いてもよい。分散媒としては、エチルアルコ−ル、n−プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、イソブチルアルコ−ルなどのアルコ−ル系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエ−テルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、ホワイトスピリッツ等の脂肪族炭化水素系溶剤、及びミネラルスピリット等の芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素の混合系溶剤等が挙げられる。
【0062】
塗料又はインク用樹脂としては、塗料またはインクへと配合される任意の樹脂を用いることができ、従来公知の樹脂を用いてもよい。樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0063】
また、塗料又はインク用顔料としては、実施形態の樹脂被覆金属顔料の他に、実施形態の樹脂被覆金属顔料に該当しない、塗料またはインクへと配合される任意の着色顔料を更に含有することができ、従来公知の着色顔料を用いてもよい。着色顔料としては、フタロシアニン系顔料、ハロゲン化フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロ−ル系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、アゾメチン金属錯体系顔料、インダンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、ベンゾイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラピリミジン系顔料、酸化チタン、酸化鉄、カ−ボンブラック、バナジウム酸ビスマスが挙げられる。
【0064】
例えば、塗料又はインクは樹脂被覆金属顔料を0.5〜50質量%含有することが好ましく、5〜40質量%含有することがより好ましく、5〜30質量%含有することがさらに好ましい。
【0065】
塗料又はインクは、実施形態の樹脂被覆金属顔料の他に、必要に応じて老化防止剤、防腐剤、防軟剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0066】
実施形態の樹脂被覆金属顔料は、重合開始剤(D)にてラジカル重合反応させた、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を含有する被覆樹脂に被覆されていることが好ましい。実施形態に係る重合開始剤(D)を用いて、前記1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)と、前記1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体 (B)とをラジカル重合反応させると、得られた1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を含有する被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するものとなり、樹脂被覆金属顔料は、光輝感が良好で且つ耐薬品性に優れたものとなる。
【0067】
本発明の樹脂被覆金属顔料に被覆されている樹脂表面の樹脂粒のサイズは従来技術に比して小さくなる。この結果、形成された半球状の共重合物である樹脂粒同士の間に生じる空隙面積は無視できるほど小さくすることが出来る。これは、無機または金属粒子の露出面積がほとんどなくなることを意味し、酸またはアルカリによって腐食され難く、優れた耐薬品性を担保することが可能となる。
【0068】
また、樹脂粒の直径が小さいと樹脂被覆金属顔料表面の凹凸が小さくなるため、光の乱反射が起こりにくく、光輝感の低下を防ぐことが出来る。
【0069】
被覆樹脂の層を厚くすれば耐薬品性を向上させることができるが、被覆樹脂の層が厚くなると光輝性が損なわれてしまう。一方、実施形態の被覆樹脂は、被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するので、光輝性、及び耐薬品性が非常に良好である。
【0070】
樹脂の表面が平滑でないと凸部に力が加えられた場合に剥がれやすさの原因となってしまう。一方、実施形態の被覆樹脂は、被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するので、光輝性、耐薬品性、に加え、塗膜耐久性も良好となり得る。
【0071】
被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有することは、同等の耐薬品性を有する樹脂被覆金属顔料と比べて、より被覆樹脂の厚みを少なくできるということであり、本来の粒子の輝きがより良好に発揮される。
【0072】
≪樹脂被覆金属顔料の製造方法≫
実施形態の樹脂被覆金属顔料の製造方法は、
(i)金属粒子と、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)と、を反応させる工程、
(ii)前記1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)又はそれに由来する構造と、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)とを、重合開始剤(D)にてラジカル重合反応させることにより、金属粒子上に1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を形成させる工程を有し、
前記金属粒子が、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を含有する被覆樹脂に被覆される。
【0073】
前記1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体の末端に、前記重合開始剤(D)に由来する下記一般式(1)で表される構造を含んでもよい。
【0074】
【化2】
【0075】
[式(1)中、R1はメチル基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキル基、−C(=O)−O−R2aで表される基、又は−C(=O)−NH−R2aで表される基{前記R2aは炭素数1〜8のアルキル基を表す。}を表し、前記R1と前記R2とが互いに結合した環状構造を形成してもよい。]
【0076】
実施形態の樹脂被覆金属顔料の製造方法において、金属粒子、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B) 、重合開始剤(D)、及び式(1)について、上記≪樹脂被覆無機又は金属顔料≫で例示したものが挙げられ、詳細な説明を省略する。
【0077】
前記工程(i)は、粒子と、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)と、を反応させて前記粒子との間に結合を形成させる工程であってもよい。結合の種類としては、共有結合、配位結合、イオン結合等の化学結合が挙げられる。
【0078】
前記工程(i)は、粒子の最表面の原子と、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)との間に結合を形成させる工程であってもよい。結合の種類としては、共有結合、配位結合、イオン結合等の化学結合が挙げられる。
【0079】
上記工程(i)によれば、粒子の表面に、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)、又は反応の結果生じた1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)に由来する構造が結合した状態となる。粒子の表面に結合した、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)又はそれに由来する構造は、続くラジカル重合の起点となり得る。
【0080】
上記工程(ii)によれば、粒子の表面に、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を形成できる。
【0081】
上記工程(i)及び工程(ii)を経て製造された樹脂被覆金属顔料の、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体は、金属粒子の側から、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)に由来する構成単位、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)に由来する構成単位をこの順に有するものとなり得る。
【0082】
工程(i)及び工程(ii)において、反応は反応液中で進行させることができる。工程(i)における反応液は、金属粒子と、1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)と、溶媒及び/又は分散媒と、必要に応じその他の成分と、を含むことができる。工程(ii)における反応液は、金属粒子と1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)との反応物と、重合開始剤(D)と、1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B) と、溶媒及び/又は分散媒と、必要に応じその他の成分と、を含むことができる。
【0083】
溶媒及び/又は分散媒としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエ−テルエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤を例示できる。これらは、単独で用いても複数種の混合溶媒で用いても良い。その他の成分としては、ラジカル重合反応の連鎖移動剤等が挙げられる。
【0084】
工程(i)における反応液の温度は、一例として、80〜120℃程度が挙げられる。 工程(ii)における反応液の温度は、ラジカル重合反応の反応温度であり、一例として、70〜120℃であってもよく、70〜100℃であってもよい。
【0085】
実施形態の樹脂被覆金属顔料の製造方法によれば、上記工程(i)及び工程(ii)を行うことにより、実施形態の樹脂被覆金属顔料が製造される。
【0086】
実施形態に係る重合開始剤(D)を用いて、前記1個以上のアルデヒド基と1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(A)と、前記1個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体(B)とをラジカル重合反応させると、得られた1個以上のアルデヒド基と1個以上の重合性二重結合基を有する単量体(A)を必須成分とした共重合体を含有する被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するものとなり、樹脂被覆金属顔料は、光輝感が良好で且つ耐薬品性に優れたものとなる。
【0087】
実施形態に係る樹脂被覆金属顔料を含む成型品としては、実施形態に係る樹脂被覆金属顔料を含む塗料やインキが塗布され加飾された各種成型品が挙げられ、例えば包装容器やマニキュアなどの化粧料、各種プラスチック塗装品等が例示される。また別の形態として、実施形態に係る樹脂被覆金属顔料を内添した成型品も挙げられ、例えば電気機器筐体や自動車内装、メイキャップやファンデーションなどの化粧料やプラスチック容器等が例示される。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりがない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0089】
〔樹脂被覆アルミニウム顔料の製造〕
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム顔料を、下記のとおり製造した。
【0090】
<実施例1>
容量3Lの4つ口フラスコに、顔料としてアルミニウムペースト「MAXAL 64064」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径15μm、金属分67%)300g、溶剤として酢酸ノルマルブチル1150gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。次に単量体Aとしてシンナムアルデヒド3.4gを加え、100℃で1時間攪拌した。この工程により、顔料表面と単量体Aとの間に化学結合が形成された。
【0091】
次に、モノマー溶液(単量体Bとしてトリメチロールプロパントリメタクリレート31gを上述の溶剤である酢酸ノルマルブチルに溶解させ、30%溶液に調製したもの)と開始剤溶液(開始剤として2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5gを上述の溶剤である酢酸ノルマルブチルに溶解させ、2.5%溶液に調製したもの)を加え、100℃で4時間重合した。重合終了後、常温まで冷却し、この反応液を濾過し、上述の溶剤である酢酸ノルマルブチルを用いて洗浄することにより、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム粒子(X−1)を得た。この粒子における金属分と樹脂被覆層の質量比は85:15であった。
【0092】
<実施例2―4>
各原料を表1に示した化合物、仕込み量に変更した以外は実施例1と同様に合成を行い、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム粒子(X−2)〜(X−4)を得た。これら粒子における金属分と樹脂被覆層の質量比は表1に併記した。
【0093】
<実施例5−6>
各原料を表1に示した化合物、仕込み量に変更し、かつ反応温度を70℃に変更した以外は実施例1と同様に合成を行い、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム粒子(X−5)〜(X−6)を得た。これら粒子における金属分と樹脂被覆層の質量比は表1に併記した。
【0094】
<実施例7−10>
各原料を表1に示した化合物、仕込み量に変更した以外は実施例1と同様に合成を行い、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム粒子(X−7)〜(X−10)を得た。これら粒子における金属分と樹脂被覆層の質量比は表1に併記した。
【0095】
<比較例1>
容量3Lの4つ口フラスコに、顔料としてアルミニウムペースト「MAXAL 64064」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径15μm、金属分67%)300g、溶剤として酢酸ノルマルブチル1150gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。次に単量体Aに代えてアクリル酸2.0gを加え、100℃で1時間攪拌した。この工程により、顔料表面とアクリル酸との間に化学結合が形成された。なお、アクリル酸のpKaは4.3である。
【0096】
次に、モノマー溶液(単量体Bとしてトリメチロールプロパントリメタクリレート31 gを上述の溶剤である酢酸ノルマルブチルに溶解させ、30%溶液に調製したもの)と開始剤溶液(開始剤として2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5gを上述 の溶剤である酢酸ノルマルブチルに溶解させ、2.5%溶液に調製したもの)を加え、100℃で4時間重合した。重合終了後、常温まで冷却し、この反応液を濾過し、原料Bを用いて洗浄することにより、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム粒子(Y−1)を得た。この粒子における金属分と樹脂被覆層の質量比は86:14であった。
【0097】
<比較例2>
各原料を表1に示した化合物、仕込み量に変更した以外は実施例1と同様に合成を行い、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム粒子(Y−2)を得た。これら粒子における金属分と樹脂被覆層の質量比は表1に併記した。なお、2−メタクリロイロキシエチルホスフェートのpKaは2.5(10質量%水溶液中)である。
【0098】
【表1】
【0099】
得られた樹脂被覆アルミニウム顔料の評価を、以下の方法により行った。
【0100】
〔輝度の評価〕 樹脂被覆アルミニウム顔料(不揮発分)4.4質量部と、ワニス{ベッコライト(登録商標)M−6003−60、DIC株式会社製}12.3質量部、ス−パ−ベッカミン(登録商標)L−105−60(DIC株式会社製)1.8質量部、ス−パ−ベッカミン(登録商標)J−820−60(DIC株式会社製)1.8質量部と、混合溶剤(ソルベッソ(登録商標)100(エクソン モ−ビル社製):n−ブタノ−ル=1:2)9.6質量部とを混ぜて、プラスチック板に塗装した。得られた塗板を30分間常温で乾燥した後、該塗板を140℃にて15分間加熱して塗膜を硬化させた。
【0101】
上記で得られた塗膜の輝度感を目視評価することにより、輝度評価を行った。輝度評価としては、「優」:塗膜輝度が高い場合を「5」、「劣」:塗膜輝度が低い場合を「1」として、5段階で相対評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【要約】
酸性モノマ−でアルミ顔料を処理する過程で、顔料の最表面が腐食されて平滑性が損なわれたり、高分子被膜が均一な厚みで形成されないため、入射光の散乱による光沢・輝度感の低下をもたらしていた。さらに、高分子被覆されていない部分(ピンホ−ル)が存在することで耐薬品性の低下をもたらしていた。
アルデヒド基を有する単量体を含有する重合体で被覆された樹脂被覆金属顔料は、表面平滑性が優れることにより樹脂の被覆が均一となることで光輝感であることを見出し、本発明の樹脂被覆金属顔料を完成させるに至った。