特許第6384698号(P6384698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384698
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20180827BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180827BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20180827BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180827BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C09J153/00
   C09J11/06
   C09J7/38
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
【請求項の数】16
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-516066(P2017-516066)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公表番号】特表2017-535629(P2017-535629A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】KR2015013801
(87)【国際公開番号】WO2016099149
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0181434
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0187438
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0179554
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】イル・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ス・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒョン・ホン
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−116644(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0242303(US,A1)
【文献】 特開2008−291071(JP,A)
【文献】 特開2014−065889(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/064551(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ガラス転移温度が50℃以上である第1ブロックとガラス転移温度が−10℃以下である第2ブロックを有し、前記第1または第2ブロックにヒドロキシ基が存在するブロック共重合体;
(B)多官能イソシアネート化合物;
(C)多官能エポキシ化合物または多官能アジリジン化合物;および
(D)イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、アミン化合物およびフェノール化合物からなる群から選択された一つ以上の化合物を含み、
(A)ブロック共重合体において、第1ブロック及び第2ブロックは、それぞれ一種または二種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体から誘導された重合された単位を含み、
(B)多官能イソシアネート化合物は、(A)ブロック共重合体100重量部対比0.1〜10重量部の比率で含まれ、
(C)多官能エポキシ化合物または多官能アジリジン化合物は、(A)ブロック共重合体100重量部対比0.01〜10重量部の比率で含まれ、
(D)化合物は(A)ブロック共重合体100重量部対比0.001〜5重量部の比率で含まれる、
粘着剤組成物。
【請求項2】
(A)ブロック共重合体のヒドロキシ基は第2ブロックにのみ存在する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
(C)多官能エポキシ化合物はエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルからなる群から選択された一つ以上であり、多官能アジリジン化合物はN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル−1−(2−メチルアジリジン)およびトリ−1−アジリジニルホスフィンオキシドからなる群から選択された一つ以上の、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
イミダゾール化合物は下記の化学式1で表示される化合物である、請求項1に記載の粘着剤組成物:
【化1】
化学式1において、R1〜R4はそれぞれ独立的に水素、アルキル基またはアリール基である。
【請求項5】
ホスフィン化合物は下記の化学式2で表示される化合物である、請求項1に記載の粘着剤組成物:
【化2】
化学式2において、R5〜R7はそれぞれ独立的に水素、アルキル基またはアリール基である。
【請求項6】
アミン化合物は下記の化学式3または4で表示される化合物である、請求項1に記載の粘着剤組成物:
【化3】
化学式3において、L1およびL2はアルキレン基である:
【化4】
化学式4において、R8〜R10は、それぞれ独立的に水素、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはヒドロキシアルキル基である。
【請求項7】
フェノール化合物は下記の化学式5で表示される化合物である、請求項1に記載の粘着剤組成物:
【化5】
化学式5において、R11〜R15はそれぞれ独立的に水素、アルキル基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基またはジアルキルアミノアルキル基である。
【請求項8】
イオン性液体をさらに含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
イオン性液体は、(A)ブロック共重合体100重量部対比0.01〜15重量部の比率で含まれる、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
スズ系化合物をさらに含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
光学フィルム;および前記光学フィルムの一面または両面に形成されており、架橋された請求項1に記載された粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着型光学部材。
【請求項12】
光学フィルムと粘着剤層の間には接着容易処理層が存在する、請求項11に記載の粘着型光学部材。
【請求項13】
偏光子;および前記偏光子の一面または両面に形成されており、架橋された請求項1に記載された粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する、粘着型偏光板。
【請求項14】
偏光子と粘着剤層の間には接着容易処理層が存在する、請求項13に記載の粘着型偏光板。
【請求項15】
厚さが1mm以下であるガラス基板;前記ガラス基板に粘着剤層によって付着している請求項14に記載された粘着型光学部材または請求項13に記載された粘着型偏光板を含む、光学積層体。
【請求項16】
請求項14に記載された粘着型光学部材または請求項13に記載された粘着型偏光板を含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2014年12月16日付提出された大韓民国特許出願第2014−0181434号、2014年12月23日付提出された大韓民国特許出願第2014−0187438号および2015年12月15日付提出された大韓民国特許出願第2015−0179554号に基づいた優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は粘着剤組成物、光学積層体、偏光板および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ装置の具現にはいわゆる粘着剤または接着剤が使われる。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)装置はディスプレイパネルである液晶パネルと光学フィルムを含むが、前記光学フィルムを液晶パネルに付着するか、光学フィルム同士を積層するときに粘着剤または接着剤が使われ得る。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルムまたは輝度向上フィルムなどがあり、このような光学フィルム間の積層や、光学フィルムを液晶パネルなどの被着体に付着するために前記粘着剤または接着剤が使われ得る。
【0004】
光学フィルム用粘着剤または接着剤の主な要求物性には凝集力、粘着力、再作業性、低光漏れ特性および応力緩和性などがある。特許文献1〜3では前記物性の達成のための粘着剤が提案されている。
【0005】
最近ディスプレイパネルとして極薄厚基板を適用したパネルが使われる場合があり、このようなパネルに適用される粘着剤または接着剤には付着後にパネルの反りを防止することが重要な問題になっている。また、光学フィルム用粘着剤または接着剤には基本的に高温および/または高湿条件で耐久性が確保されることが要求され、場合によっては適切な帯電防止能が確保されることも要求され得る。
【0006】
また、光学フィルム用粘着剤または接着剤には光学フィルムとの密着性が要求される。光学フィルムとの密着性が足りない場合には、フィルムの裁断時に粘着剤や接着剤が抜け出る現象が発生するが、このような現象は他の光学フィルムまたはディスプレイパネルなどの汚染を誘発するだけでなく、光学フィルムの付着時に縁部分で十分な付着力が確保されない問題がある。また、密着性が足りないと、再作業、すなわち一旦付着した光学フィルムなどを剥離する場合に粘着剤などが被着体に残存して様々な問題を誘発する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第1023839号
【特許文献2】大韓民国登録特許第1171976号
【特許文献3】大韓民国登録特許第1171977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、高温または高湿条件で耐久性が優秀で、光学フィルムとの密着性が優れているため、裁断性と再作業性などが優秀な粘着型光学部材を形成できる粘着剤組成物を提供することを一つの目的とする。本出願はまた、極薄厚のガラス基板のような薄型基板に適用される場合にも反りを効果的に抑制することができ、物性の安定化のために要求される時間が最小化され、確保された物性の経時的悪化も防止できる粘着剤を形成できる粘着剤組成物を提供することも目的とする。本出願はさらに前記のような粘着剤組成物を使って形成した粘着型光学部材、光学積層体およびディスプレイ装置を提供することも一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な粘着剤組成物は、一つの成分として(A)ブロック共重合体を含むことができる。本明細書で用語「ブロック共重合体」とは、互いに異なる重合された単量体のブロック(blocks of different polymerized monomers)を含む共重合体を指し示し得る。
【0010】
前記ブロック共重合体は、ガラス転移温度が50℃以上である第1ブロックおよびガラス転移温度が−10℃以下である第2ブロックを含むことができる。本明細書でブロック共重合体の「所定ブロックのガラス転移温度」とは、そのブロックを形成する単量体で計算されるガラス転移温度を意味し得る。一つの例示において、前記第1ブロックのガラス転移温度は60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上または95℃以上であり得る。また、前記第1ブロックのガラス転移温度の上限は、特に制限されないが、例えば、前記ガラス転移温度は150℃以下、140℃以下、130℃以下または120℃以下程度であり得る。また、前記において第2ブロックのガラス転移温度は、−20℃以下、−30℃以下、−35℃以下または−40℃以下であり得る。また、前記第2ブロックのガラス転移温度の下限は、特に制限されないが、例えば、前記ガラス転移温度は、−80℃以上、−70℃以上、−60℃以上または−55℃以上程度であり得る。前記2種のブロックを少なくとも含むブロック共重合体は、例えば、粘着剤内で微細な上分離構造を形成することができる。このようなブロック共重合体は、温度変化によって適切な凝集力と応力緩和性を示すため、耐久信頼性、光漏れ防止特性および再作業性などの光学フィルム用にて要求される物性が優秀に維持される粘着剤を形成することができる。
【0011】
ブロック共重合体において第1ブロックは、例えば、数平均分子量(Mn:Number Average Molecular Weight)が2,500〜150,000の範囲内であり得る。第1ブロックの数平均分子量は、例えば、第1ブロックを形成している単量体だけを重合させて製造される重合体の数平均分子量を意味するか、前記第1ブロックが巨大開始剤として作用してブロック共重合体が製造される場合にその巨大開始剤の数平均分子量を意味し得る。本明細書で言及する数平均分子量は、例えば、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を使って実施例で提示された方法で測定することができる。第1ブロックの数平均分子量は他の例示では約100,000以下、約90,000以下、約80,000以下、約70,000以下、約60,000以下、約50,000以下、約40,000以下または約35,000以下程度であり得る。また、第1ブロックの数平均分子量は他の例示で約5,000以上、約10,000以上、約15,000以上、約20,000以上または約25,000以上であり得る。
【0012】
ブロック共重合体は、50,000〜300,000の範囲内の数平均分子量を有することができる。ブロック共重合体の数平均分子量は他の例示では90,000以上、約100,000以上、約150,000以上または約200,000以上であり得る。前記数平均分子量は他の例示で約250,000以下の場合もある。ブロック共重合体は分子量分布(PDI;Mw/Mn)、すなわち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)が1.0〜3.5の範囲内または1.4〜2.0程度の範囲内にあり得る。分子量特性を前記の通りに調節して優秀な物性の粘着剤組成物または粘着剤を提供することができる。
【0013】
一つの例示において、前記ブロック共重合体は架橋性官能基を有する架橋性共重合体であり得る。架橋性官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基またはグリシジル基などが挙げられ、例えば、ヒドロキシ基を使うことができる。
【0014】
架橋性官能基を含む場合、前記官能基は、例えば、第1または第2ブロックのうちいずれか一つのブロックに含まれるか、第1および第2ブロックすべてに含まれ得る。一つの例示において、架橋性官能基は、ガラス転移温度が低い第2ブロックに含まれ得る。このような場合、第1ブロックには架橋性官能基が含まれず、第2ブロックにのみ架橋性官能基が含まれていることがある。架橋性官能基を第2ブロックに含ませると、温度変化によって適切な凝集力と応力緩和性を示すため、耐久信頼性、光漏れ防止特性および再作業性などの光学フィルム用にて要求される物性が優秀に維持される粘着剤を形成することができる。
【0015】
ブロック共重合体において第1ブロックと第2ブロックを形成する単量体の種類は単量体の組合わせによって前記ガラス転移温度が確保される限り、特に制限はない。
【0016】
一つの例示において、第1ブロックは、(メタ)アクリル酸エステル単量体から誘導された重合された単位を含むことができる。本明細書で単量体が重合された単位で重合体またはブロックに含まれているということは、その単量体が重合反応を経てその重合体またはブロックの骨格、例えば、主鎖または測鎖を形成しているということを意味し得る。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを使うことができる。一つの例示において、凝集力、ガラス転移温度および粘着性の調節などを考慮して、炭素数が1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使うことができる。このような単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、前記のうち一種または二種以上を前記ガラス転移温度が確保されるように選択して使うことができる。特に制限されるものではないが、ガラス転移温度調節の容易性などを考慮して第1ブロックを形成する単量体としては、前記単量体の中でメタクリル酸エステル単量体、例えば、炭素数が1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを使うことができる。
【0017】
ブロック共重合体の第2ブロックは、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体90重量部〜99.9重量部および架橋性官能基を有する共重合性単量体0.1重量部〜10重量部から誘導された重合された単位を含むことができる。本明細書で単位重量部は、各成分間の重量の比率を意味し得る。例えば、前記のように第2ブロックが(メタ)アクリル酸エステル単量体90重量部〜99.9重量部および架橋性官能基を有する共重合性単量体0.1重量部〜10重量部から誘導された重合された単位を含むということは、第2ブロックの重合された単位を形成する前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)および架橋性官能基を有する共重合性単量体(B)の重量を基準とした比率(A:B)が90〜99.9:0.1〜10である場合を意味し得る。
【0018】
第2ブロックを形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、前記第1ブロックに含まれ得る単量体の中で前記共重合性単量体との共重合などを通して最終的に前述した範囲のガラス転移温度を確保することができる種類の単量体を選択および使うことができる。特に制限されるものではないが、ガラス転移温度調節の容易性などを考慮して第2ブロックを形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては前述した単量体の中でアクリル酸エステル単量体、例えば、炭素数が1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアクリレートを使うことができる。
【0019】
架橋性官能基を有する共重合性単量体としては、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体のようにブロック共重合体に含まれる他の単量体と共重合され得る部位を有し、また、前述した架橋性官能基、例えば、ヒドロキシ基などを有する単量体を使うことができる。粘着剤の製造分野では前記のような架橋性官能基を有する共重合性単量体が多様に公知されており、このような単量体はすべて前記重合体に使われ得る。例えば、ヒドロキシ基を有する共重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートまたは8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、または2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレートまたは2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが使われ得るが、これに制限されるものではない。第2ブロックを形成する他の単量体との反応性やガラス転移温度の調節容易性などを考慮して前記のような単量体の中でヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキレングリコールアクリレートなどを使用できるが、これに制限されるものではない。
【0020】
第1ブロックおよび/または第2ブロックは、必要な場合、例えば、ガラス転移温度の調節などのために、必要な場合に他の任意の共単量体をさらに含むことができ、前記単量体は重合単位として含まれ得る。前記共単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムなどのような窒素含有単量体;アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルまたはフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどのようなアルキレンオキシド基含有単量体;スチレンまたはメチルスチレンのようなスチレン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートのようなグリシジル基含有単量体;またはビニルアセテートのようなカルボン酸ビニルエステルなどを挙げることができるが、これに制限されるものではない。このような共単量体は必要に応じて適正な種類が一種または二種以上選択されて重合体に含まれ得る。このような共単量体は、例えば、それぞれのブロック内で他の単量体の重量対比20重量部以下、または0.1重量部〜15重量部の比率でブロック共重合体に含まれ得る。
【0021】
ブロック共重合体は、例えば、前記第1ブロック5重量部〜50重量部および第2ブロック50重量部〜95重量部を含むことができる。第1ブロックと第2ブロック間の重量の比率を前記のように調節して、優秀な物性の粘着剤組成物および粘着剤を提供することができる。前記ブロック共重合体は他の例示で前記第1ブロック5重量部〜45重量部および第2ブロック55重量部〜95重量部または前記第1ブロック5重量部〜45重量部および第2ブロック60重量部〜95重量部を含むことができる。
【0022】
他の例示でブロック共重合体は、重量を基準として前記第2ブロックを約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上または約80%以上含むことができる。第1ブロックは重量を基準として約99%以下、約95%以上の比率で含まれ得る。このような状態で第2ブロックは前記第1ブロック100重量部対比約5〜100重量部の比率で含まれ得る。前記第2ブロックは、前記第1ブロック100重量部対比約90重量部以下、約80重量部以下、約70重量部以下、約60重量部以下、約50重量部以下、約40重量部以下、約30重量部以下、約20重量部以下または約15重量部以下で含まれることもある。
【0023】
一つの例示において、前記ブロック共重合体は、前記第1および第2ブロックを含むジブロック共重合体(diblock copolymer)、すなわち前記第1および第2ブロックの2個のブロックだけを含むブロック共重合体であり得る。ジブロック共重合体を使うことによって、粘着剤の耐久信頼性、応力緩和性および再作業性などをより優秀に維持することができる。
【0024】
ブロック共重合体を製造する方法は特に制限されず、通常の方式で製造することができる。ブロック重合体は、例えば、LRP(Living Radical Polymerization)方式で重合することができ、その例としては、有機希土類金属複合体を重合開始剤として使うか、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として使ってアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの無機酸塩の存在下で合成する陰イオン重合、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として使って有機アルミニウム化合物の存在下で合成する陰イオン重合方法、重合制御剤として原子移動ラジカル重合剤を利用する原子移動ラジカル重合法(ATRP)、重合制御剤として原子移動ラジカル重合剤を利用するものの、電子を発生させる有機または無機還元剤下で重合を遂行するARGET(Activators Regenerated by Electron Transfer)原子移動ラジカル重合法(ATRP)、ICAR(Initiators for continuous activator regeneration)原子移動ラジカル重合法(ATRP)、無機還元剤可逆付加−開裂連鎖移動剤を利用する可逆付加−開裂連鎖移動による重合法(RAFT)または有機テルル化合物を開始剤として利用する方法などがあり、このような方法のうち適切な方法が選択されて適用され得る。
【0025】
粘着剤組成物は、追加成分として前記ブロック共重合体を架橋させることができる(B)架橋剤をさらに含むことができる。架橋剤としては、前記ブロック共重合体に含まれる架橋性官能基と反応できる官能基を少なくとも2個有する架橋剤を使うことができる。このような架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤または金属キレート架橋剤などを例示することができる。例えば、(A)ブロック共重合体が架橋性官能基であってヒドロキシ基を含む場合には、通常架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物が使われ得る。本出願で多官能イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上、例えば、2個〜10個、2個〜9個、2個〜8個、2個〜7個、2個〜6個、2個〜5個または2個〜4個程度を含む化合物を意味し得る。
【0026】
架橋剤として使われ得る多官能イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソボロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;または前記ジイソシアネート化合物のうち一つ以上をポリオールと反応させた化合物などが例示されるが、これに制限されるものではない。前記において使用できるポリオールとしては、トリメチロールプロパンなどを例示することができる。
【0027】
粘着剤組成物には前記のうち一種または二種以上の架橋剤が使われるが、使われ得る架橋剤は前記に制限されるものではない。
【0028】
多官能性架橋剤は、例えば、ブロック共重合体100重量部対比0.01重量部〜10重量部で粘着剤組成物に含まれ得る。前記架橋剤は他の例示で、0.03重量部以上または0.05重量部以上の比率で含まれ得る。また、前記架橋剤は他の例示で8重量部以下、6重量部以下、4重量部以下、2重量部以下または1重量部以下の比率で含まれ得る。前記のような範囲で粘着剤のゲル分率、凝集力、粘着力および耐久性などを優秀に維持することができる。
【0029】
粘着剤組成物は、追加成分として、(C)多官能エポキシ化合物または多官能アジリジン化合物をさらに含むことができる。本出願で用語多官能エポキシ化合物はエポキシ基を2個以上、例えば、2個〜10個、2個〜9個、2個〜8個、2個〜7個、2個〜6個、2個〜5個または2個〜4個程度を含む化合物を意味し得、用語多官能アジリジン化合物はアジリジン基を2個以上、例えば、2個〜10個、2個〜9個、2個〜8個、2個〜7個、2個〜6個、2個〜5個または2個〜4個程度を含む化合物を意味し得る。前記のような化合物をさらに含むことによって、光学フィルムなどの部材に対して界面密着性が優秀な粘着剤を形成することができる。
【0030】
本出願で用語エポキシ基は、特に規定しない限り、3個の環の構成原子を有する環状エーテル(cyclic ether)または前記環状エーテルを含む化合物から誘導された1価残基を意味し得る。エポキシ基としては、グリシジル基、エポキシアルキル基、グリシドキシアルキル基または脂環式エポキシ基などを例示することができる。前記において脂環式エポキシ基は、脂肪族炭化水素環構造を含み、前記脂肪族炭化水素造を形成している2個の炭素原子がさらにエポキシ基を形成している構造を含む化合物から由来する1価残基を意味し得る。脂環式エポキシ基としては、6個〜12個の炭素原子を有する脂環式エポキシ基を例示することができ、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などを例示することができる。また、用語アジリジン基は、3個の環の構成原子を含むヘテロ環(heterocycle)状官能基であって、一つのアミン基と2個のメチレンブリッジを含む官能基またはその官能基から由来した誘導体を意味し得る。
【0031】
(C)成分は、特に粘着剤と光学フィルム間の密着性を改善することに寄与することができる。例えば、後述するように、粘着剤がヒドロキシ基やカルボキシル基などのような官能基が導入された光学フィルム上に形成される場合に、前記成分(C)と前記光学フィルム上の官能基の多様な化学的または物理的相互作用によって光学フィルムと粘着剤との密着性が増加し得る。
【0032】
(C)成分の多官能エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルからなる群から選択された一つ以上を挙げることができ、多官能アジリジン化合物としては、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル−1−(2−メチルアジリジン)およびトリ−1−アジリジニルホスフィンオキシドなどを例示できるが、これに制限されるものではない。
【0033】
成分(C)は(A)ブロック共重合体100重量部対比0.1〜10重量部の比率で粘着剤組成物に含まれ得る。成分(C)は、他の例示で成分(A)100重量部対比0.3重量部以上含まれ得る。また、成分(C)は成分(A)100重量部対比8重量部以下、6重量部以下または4重量部以下で含まれ得る。このような範囲内で光学フィルムなどとの適切な密着性が確保されつつ、粘着剤に要求される他の物性も安定的に維持され得る。
【0034】
粘着剤組成物は、追加成分として、(D)イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、アミン化合物、フェノール化合物および酸無水物からなる群から選択された一つ以上の化合物をさらに含むことができる。このような化合物は、粘着剤組成物または粘着剤の光学フィルム表面に対する物理的または化学的相互作用を促進させて前記表面に対する密着性をより強化し、前記密着性確保のために要求される時間を短縮させることができる。
【0035】
成分(D)として適用され得るイミダゾール化合物、ホスフィン化合物、アミン化合物またはフェノール化合物などとしては、例えば、下記のような化合物を使うことができる。
【0036】
すなわち、イミダゾール化合物としては、下記の化学式1で表示される化合物を使うことができる。
【0037】
【化1】
化学式1において、R1〜R4はそれぞれ独立的に水素、アルキル基またはアリール基である。
【0038】
化学式1において、アルキル基としては、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基を例示することができ、このようなアルキル基は直鎖、分枝鎖または環状であり得、任意に一つ以上の置換基に置換されていることもある。
【0039】
化学式1において、アリール基としては、炭素数6〜30、炭素数6〜24、炭素数6〜18または炭素数6〜12のアリール基を例示することができ、このようなアリール基は任意に一つ以上の置換基に置換されていることもある。
【0040】
化学式1の化合物としては、R1が水素またはアルキル基であり、R2〜R4はそれぞれ独立的に水素、アルキル基またはアリール基であるものの、少なくともR4および/またはR3がアルキル基またはアリール基である化合物を使うことができる。
【0041】
このような化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールまたは2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどを例示できるが、これに制限されるものではない。
【0042】
ホスフィン化合物としては、例えば、下記の化学式2で表示される化合物を使うことができる。
【0043】
【化2】
化学式2において、R5〜R7はそれぞれ独立的に水素、アルキル基またはアリール基である。
【0044】
化学式2において、アルキル基またはアリール基の定義は化学式1においての場合と同じである。
【0045】
化学式2で表示される化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メタフェニル)ホスフィンまたはトリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどを例示することができる。
【0046】
アミン化合物としては、例えば、下記の化学式3または4で表示される化合物を使うことができる。
【0047】
【化3】
化学式3において、L1およびL2はアルキレン基である。
【0048】
【化4】
化学式4において、R8〜R10は、それぞれ独立的に水素、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはヒドロキシアルキル基である。
【0049】
化学式3または4において、アルキル基またはアリール基の定義は化学式1においての場合と同じである。
【0050】
また、化学式3において、アルキレン基としては、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキレン基を例示することができ、このようなアルキレン基は直鎖、分枝鎖または環状であり得、任意に一つ以上の置換基に置換されていることもある。
【0051】
化学式3または4で表示される化合物としては、1,8−ジアザビシクロ[5.6.0]ウンデ−7−エン、ベンジルジメチルアミンまたはトリエタノールアミンなどを例示できるが、これに制限されるものではない。
【0052】
フェノール化合物としては、例えば、下記の化学式5で表示される化合物が使われ得る。
【0053】
【化5】
化学式5において、R11〜R15はそれぞれ独立的に水素、アルキル基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基またはジアルキルアミノアルキル基である。
【0054】
化学式5において、アルキル基またはアリール基の定義は化学式1においての場合と同じである。
【0055】
化学式5の化合物としては、例えば、R11〜R15はそれぞれ独立的に水素、アルキル基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基またはジアルキルアミノアルキル基であるものの、R11〜R15のうち少なくとも一つがアミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基またはジアルキルアミノアルキル基である化合物が例示され得る。
【0056】
このような化合物としては、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどが例示されるが、これに制限されるものではない。
【0057】
また、前記酸無水物系化合物としては、マレイン酸無水物またはテトラヒドロフタル酸無水物などが適用され得るが、これに制限されるものではない。
【0058】
成分(D)は、(A)ブロック共重合体100重量部対比0.001〜5重量部の比率で粘着剤組成物に含まれ得る。成分(D)は他の例示で成分(A)100重量部対比0.005重量部以上含まれ得、他の例示では成分(A)100重量部対比4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下または1重量部以下の比率で含まれ得る。このような範囲内で目的とする密着性などが確保され、他の物性も安定的に維持され得る。
【0059】
粘着剤組成物は追加成分としてスズ系化合物を含むことができる。このようなスズ系化合物は、前記成分(D)と相互作用を通じて粘着剤が効果的に架橋されながら架橋された粘着剤が光学フィルムと優秀な界面密着性を示すようにすることができる。
【0060】
スズ系化合物としては、有機スズ化合物を使用することができ、例えば、ジアルキルスズオキサイド、ジアルキルスズの脂肪酸塩または第1スズの脂肪酸塩などが使用され得、具体的にはジアルキルスズオキサイドまたはジアルキルスズジラウレートなどが使われ得る。前記スズ化合物の種類でアルキルは、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖、分枝鎖または環状アルキルであり得る。
【0061】
スズ系化合物は、(A)ブロック共重合体100重量部対比0.001〜5重量部の比率で粘着剤組成物に含まれ得る。スズ系化合物は、他の例示で成分(A)100重量部対比0.005重量部以上含まれ得、他の例示では成分(A)100重量部対比4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下または1重量部以下の比率で含まれ得る。このような範囲内で目的とする架橋度と密着性などが確保され、他の物性も安定的に維持され得る。
【0062】
粘着剤組成物は、追加成分としてイオン性化合物を含むことができる。イオン性化合物としては、無機塩またはイオン性液体が使われ得る。前述した界面密着性などの確保や硬化遅延現象を誘発しない観点ではイオン性液体が無機塩に比べて有利な効果をもたらし得る確認された。本出願で用語イオン性液体は、常温で液体状態で存在するイオン性化合物を意味し得る。前記において常温は、加温または減温されていない自然そのままの温度であって、約10℃〜30℃、約15℃〜30℃、約20℃〜30℃、約25℃または約23℃程度の温度を意味し得る。
【0063】
前記イオン性化合物は粘着剤組成物に含まれて粘着剤が適切な帯電防止性を有するようにすることができる。
【0064】
イオン性化合物として、無機塩が適用される場合に、前記無機塩としては、アルカリ金属陽イオンまたはアルカリ土類金属陽イオンを含む塩を使うことができる。このような陽イオンとしては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)、ベリリウムイオン(Be2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)およびバリウムイオン(Ba2+)などの一種または二種以上を挙げることができ、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンおよびバリウムイオンの一種または二種以上またはイオン安定性および移動性を考慮してリチウムイオンを使うことができる。
【0065】
一方、前記イオン性液体としては、陽イオン成分として窒素、硫黄またはリンを含むオニウム塩を有する化合物を使うことができる。このような陽イオンとしては、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリブチルアンモニウム、N−エチル−N,N,N−トリブチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリヘキシルアンモニウム、N−エチル−N,N,N−トリヘキシルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリオクチルアンモニウムまたはN−エチル−N,N,N−トリオクチルアンモニウムなどのような4級アンモニウム化合物、テトラアルキルホスホニウムなどのようなホスホニウム(phosphonium)またはその誘導体、ピリジニウム(pyridinium)またはその誘導体、テトラヒドロピリジニウムまたはその誘導体、ジヒドロピリジニウムまたはその誘導体、イミダゾリウム(imidazolium)またはその誘導体、ピロリン骨格を含む化合物またはその誘導体、ピロール骨格を含む化合物またはその誘導体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどのようなイミダゾリウムまたはその誘導体、ピラゾリウムまたはその誘導体、トリアルキルスルホニウムまたはその誘導体、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムなどのようなピロリジニウム(pyrolidinium)またはその誘導体または1−メチル−1−プロピルピペリジニウムなどのようなピペリジニウム(piperidinium)またはその誘導体などを例示することができる。本出願では前記言及した陽イオンのうち陽イオンに含まれるアルキル基がアルコキシ基、ヒドロキシ基、アルキニル基またはエポキシ基などで置換された陽イオンを含む化合物も使われ得る。
【0066】
一つの例示において、前記イオン性液体の陽イオンとしては、下記の化学式Aで表示される陽イオンが適用され得る。
【0067】
【化6】
化学式Aにおいて、R1〜R4はそれぞれ独立的に水素、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルを示す。
【0068】
化学式Aにおいて、アルキルまたはアルコキシは炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシであり得る。また、前記アルキルまたはアルコキシは直鎖型、分枝鎖型または環状アルキルまたはアルコキシであり得、任意的に一つ以上の置換基によって置換されていることもある。
【0069】
化学式Aにおいて、アルケニルまたはアルキニルは炭素数2〜20、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4のアルケニルまたはアルキニルであり得る。また、前記アルケニルまたはアルキニルは直鎖型、分枝鎖型または環状アルケニルまたはアルキニルであり得、任意的に一つ以上の置換基によって置換されていることもある。
【0070】
化学式Aの定義において、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルが一つ以上の置換基に置換される場合、置換基の例としては、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シアノ、チオール、アミノ、アリールまたはヘテロアリールなどを挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0071】
一つの例示において、化学式AのR1〜R4はそれぞれ独立的にアルキルであり得、例えば、炭素数1〜12の直鎖型または分枝鎖型のアルキルであり得る。化学式Aにおいて、R1〜R4はそれぞれ独立的に炭素数1〜12の直鎖型または分枝鎖型アルキルを示すものの、R1〜R4が同時に同一の炭素数のアルキルには該当しないこともある。このような場合、化学式Aの範囲内では、R1〜R4がすべて同一炭素数のアルキル基である場合は除外される。R1〜R4がすべて同じ炭素数を有するアルキルである場合、化合物が常温で固相で存在する確率が高くなり得る。
【0072】
化学式Aにおいて、R1は炭素数1〜3のアルキルで、R2〜R4はそれぞれ独立的に炭素数4〜20、炭素数4〜15または炭素数4〜10のアルキルであり得る。このような陽イオンを使うことによって、光学物性、粘着物性、作業性および帯電防止性がさらに優秀であり、基材との密着性が増大し、硬化などの物性の安定化のために要求される時間がさらに短縮された粘着剤が提供され得る。
【0073】
イオン性化合物に含まれる陰イオンとしては、PF、AsF−、NO、フルオライド(F)、クロライド(Cl)、ブロマイド(Br)、ヨオジド(I)、ペルクロレイト(ClO)、ヒドロキシド(OH)、カーボネート(CO2−)、ニトレイド(NO)、トリフルオロメタンスルホネイト(CFSO)、スルホネイト(SO)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、メチルベンゼンスルホネイト(CH(C)SO)、p−トルエンスルホネイト(CHSO)、テトラボレート(B2−)、カルボキシベンゼンスルホネイト(COOH(C)SO)、トリフルロロメタンスルホネイト(CFSO)、ベンゾネイト(CCOO)、アセテート(CHCOO)、トリフルオロアセテイト(CFCOO)、テトラフルオロボラート(BF)、テトラベンジルボラート(B(C)またはトリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C)などを例示することができる。
【0074】
他の例示で陰イオンとしては、下記の化学式Bで表示される陰イオンまたはビスフルオロスルホニルイミドなどが使われることもある。
【0075】
[化学式B]
[X(YO
化学式Bにおいて、Xは窒素原子または炭素原子で、Yは炭素原子または硫黄原子であり、Rはパーフルオロアルキル基であり、mは1または2であり、nは2または3である。
【0076】
化学式Bにおいて、Yが炭素である場合、mは1で、Yが黄色である場合、mは2であり、Xが窒素の場合、nは2で、Xが炭素である場合、nは3であり得る。
【0077】
化学式Bの陰イオンまたはビス(フルオロスルホニル)イミドは、パーフルオロアルキル基(R)またはフルオロ基によって高い電気陰性度を示し、また、特有の共鳴構造を含み、陽イオンとの弱い結合を形成するとともに疏水性を有する。したがって、イオン性化合物が重合体などの組成物の他の性分と優秀な相溶性を示しながら、少量でも高い帯電防止性を付与することができる。
【0078】
化学式BのRは、炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であり得、この場合、前記パーフルオロアルキル基は直鎖型、分枝鎖型または環状構造を有することができる。化学式Bの陰イオンは、スルホニルメチド系、スルホニルイミド系、カルボニルメチド系またはカルボニルイミド系陰イオンであり得、具体的にはトリストリフルオロメタンスルホニルメチド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミド、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド、トリストリフルオロメタンカルボニルメチド、ビスパーフルオロブタンカルボニルイミドまたはビスペンタフルオロエタンカルボニルイミドなどの一種または二種以上の混合であり得る。
【0079】
イオン性化合物は、粘着剤組成物で(A)ブロック共重合体100重量部対比0.01〜15重量部、0.01〜10重量部、0.01〜5重量部、0.1〜5重量部または0.5〜5重量部の比率で存在することができる。このような比率下で目的とする帯電防止性が確保され、光学フィルムとの密着性など他の要求物性も安定的に維持され得る。
【0080】
粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。シランカップリング剤としては、例えば、ベータ−シアノ基またはアセトアセチル基を有するシランカップリング剤を使うことができる。このようなシランカップリング剤は、例えば、分子量が低い共重合体によって形成された粘着剤が優秀な密着性および接着安定性を示すようにすることができ、また、耐熱および耐湿熱条件での耐久信頼性などが優秀に維持されるようにすることができる。
【0081】
ベータ−シアノ基またはアセトアセチル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、下記の化学式5または6で表示される化合物を使うことができる。
【0082】
[化学式5]
(R1)Si(R2)(4−n)
【0083】
[化学式6]
(R3)Si(R2)(4−n)
化学式5または6で、R1は、ベータ−シアノアセチル基またはベータ−シアノアセチルアルキル基であり、R3はアセトアセチル基またはアセトアセチルアルキル基であり、R2はアルコキシ基であり、nは1〜3の数である。
【0084】
化学式5または6で、アルキル基は炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基であり得、このようなアルキル基は直鎖状、分枝鎖状または環状であり得る。
【0085】
化学式5または6で、アルコキシ基は炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルコキシ隠すことができ、このようなアルコキシ基は直鎖状、分枝鎖状または環状であり得る。
【0086】
化学式5または6でnは例えば、1〜3、1〜2または1であり得る。
【0087】
化学式5または6の化合物としては、例えば、アセトアセチルプロピルトリメトキシシラン、アセトアセチルプロピルトリエトキシシラン、ベータ−シアノアセチルプロピルトリメトキシシランまたはベータ−シアノアセチルプロピルトリエトキシシランなどを例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0088】
粘着剤組成物内でシランカップリング剤は(A)ブロック共重合体100重量部対比0.01重量部〜5重量部または0.01重量部〜1重量部で含まれ得、この範囲内で目的とする物性を効果的に粘着剤に付与することができる。
【0089】
粘着剤組成物は、必要に応じて、粘着性付与剤をさらに含むこともできる。粘着性付与剤としては例えば、ヒドロカーボン樹脂またはその水素添加物、ロジン樹脂またはその水素添加物、ロジンエステル樹脂またはその水素添加物、テルペン樹脂またはその水素添加物、テルペンフェノール樹脂またはその水素添加物、重合ロジン樹脂または重合ロジンエステル樹脂などの一種または二種以上の混合物を使用できるが、これに制限されるものではない。粘着性付与剤は、ブロック共重合体100重量部に対し、100重量部以下の量で粘着剤組成物に含まれ得る。
【0090】
粘着剤組成物は、また必要な場合にエポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤および可塑剤からなる群から選択された一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0091】
粘着剤組成物は、架橋構造を具現した後のゲル(gel)分率が80重量%以下であり得る。前記ゲル分率は下記の一般式1で計算され得る。
【0092】
[一般式1]
ゲル分率(%)=B/A×100
【0093】
一般式1で、Aは架橋構造を具現している前記粘着剤組成物の質量であり、Bは前記質量Aの粘着剤組成物を200メッシュ(mesh)の大きさの網に入れた状態で常温でエチルアセテートに72時間の間沈積させた後で採取した不溶解分の乾燥質量を示す。
【0094】
ゲル分率を80重量%以下に維持し、作業性、耐久信頼性および再作業性を優秀に維持することができる。粘着剤組成物のゲル分率の下限は特に制限されず、例えば、0重量%であり得る。ただし、ゲル分率が0重量%ということがすなわち、粘着剤組成物に架橋が全く進行されていないということを意味するわけではない。例えば、ゲル分率が0重量%である粘着剤組成物には架橋が全く進行されていない粘着剤組成物または架橋がある程度進行されたものの、その架橋の程度が低いため前記200メッシュの大きさの網内でゲルが維持できずに漏出される場合も含まれ得る。
【0095】
前記粘着剤組成物は、光学フィルム用粘着剤組成物であり得る。光学フィルム用粘着剤組成物は、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、防眩フィルム、広視野角補償フィルムまたは輝度向上フィルムなどの光学フィルムを互いに積層するか、前記光学フィルムまたはその積層体を液晶パネルなどのような被着体に付着するための用途で使われ得る。一つの例示において、前記粘着剤組成物は、偏光板用粘着剤組成物であって、偏光フィルムを液晶パネルに付着するための用途で使われる粘着剤組成物であり得る。
【0096】
本出願はまた、粘着型光学部材、例えば、粘着型偏光板に関するものである。例示的な前記光学部材は、光学フィルム;および前記光学フィルムの一面または両面に形成されている粘着剤層を含むことができる。前記粘着剤層は、例えば、前記光学フィルムをLCD装置の液晶パネルなどや他の光学フィルムに付着するための粘着剤層であり得る。また、前記粘着剤層は、前述した本出願の粘着剤組成物を含むことができる。前記粘着剤組成物は、架橋構造を具現した状態で前記粘着剤層に含まれていることがある。前記において光学フィルムとしては、偏光子、偏光板、位相差フィルムまたは輝度向上フィルムなどや前記のうち二種以上が積層された積層体が例示され得る。本出願で用語偏光子と偏光板は互いに区別される概念であって、例えば、前記偏光子は、後述するポリビニルアルコールフィルムのような偏光機能を示す層自体を意味し、偏光板はそのような偏光子を他の要素とともに含む積層体を意味し得る。
【0097】
前記光学部材で前記光学フィルムと粘着剤層の間、例えば、粘着剤層が付着する光学フィルムの表面には、粘着剤層と相互作用が可能な官能基としてヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ウレタン結合または尿素結合等が導入されていることもある。このような官能基は粘着剤層に存在する前記多官能性イソシアネート化合物、多官能性エポキシ化合物または多官能性アジリジン化合物との物理的または化学的相互作用を通じて光学フィルムと粘着剤層の密着性を強化させることができる。前記のような官能基を分子中に有する高分子などによって形成された光学フィルムを採用したり、あるいはコロナ放電またはプラズマ処理などのような接着容易処理によって前記官能基が導入されることもできる。本出願では前記のような官能基が導入された光学フィルムの表面または前記コロナ放電またはプラズマ処理された光学フィルムの部位を接着容易処理層と呼ぶことができる。
【0098】
前記のような官能基を導入するために遂行される前記コロナまたはプラズマ処理条件は特に制限されず、業界に公知されている方式が適切に採用されて適用され得る。
【0099】
本出願はまた、粘着型偏光板に関するものである。前記偏光板は、例えば、前記粘着型光学部材で光学フィルムが偏光子である構造を有することができる。
【0100】
偏光板に含まれる偏光子の種類は特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系偏光子などのように、この分野で公知されている一般的な種類を制限なく採用することができる。
【0101】
偏光子は様々な方向に振動して入射する光から片方向に振動する光だけを抽出できる機能性フィルムである。このような偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されている形態であり得る。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアセテート系樹脂をケル化して得ることができる。この場合、使われ得るポリビニルアセテート系樹脂には、ビニルアセテートの単独重合体はもちろん、ビニルアセテートおよび前記と共重合可能な他の単量体の共重合体も含まれ得る。前記においてビニルアセテートと共重合可能な単量体の例には、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類およびアンモニウム基を有するアクリルアミド類などの一種または二種以上の混合を挙げることができるが、これに制限されるものではない。ポリビニルアルコール系樹脂のケル化度は、通常85モル%〜100モル%程度または98モル%以上であり得る。前記ポリビニルアルコール系樹脂はさらに変成されていることもあり、例えば、アルデヒド類に変成されたポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタール等も使われ得る。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度または1,500〜5,000程度であり得る。
【0102】
偏光子は前記のようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸(ex.一軸延伸)する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染め、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着したポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸(boric acid)水溶液で処理する工程およびホウ酸水溶液で処理後に水洗する工程などを経て製造することができる。前記において二色性色素としては、ヨウ素(iodine)や二色性の有機染料などが使われ得る。
【0103】
偏光板は、また、前記偏光子の一面または両面に付着された保護フィルムをさらに含むことができ、この場合、前記粘着剤層は前記保護フィルムの一面に形成されていることもある。保護フィルムの種類は特に制限されず、例えば、TAC(Triacetyl cellulose)のようなセルロース系フィルム;ポリカーボネートフィルムまたはPET(poly(ethylene terephthalet))のようなポリエステル系フィルム;ポリエーテルスルホン系フィルム;またはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはシクロ系やノルボルネン構造を有する樹脂やエチレン−プロピレン共重合体などを使って製造されるポリオレフィン系フィルムなどの一層または2層以上の積層構造のフィルムなどを使うことができる。
【0104】
偏光板はまた、保護層、反射層、防絃層、位相差板、広視野角補償フィルムおよび輝度向上フィルムからなる群から選択された一つ以上の機能性層をさらに含むことができる。
【0105】
粘着型偏光板においても偏光子と粘着剤層の間には前記接着容易処理層が存在することができる。このような接着容易処理層は、前記偏光子またはその偏光子の一面に形成されている保護フィルムなどのような他の機能性層の表面に存在する前記ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ウレタン結合または尿素結合などによって形成される層や、前記偏光子または他の機能性層の表面にコロナ放電またはプラズマ処理などを遂行して形成される層であり得る。
【0106】
本出願で前記のような偏光板または光学フィルムに粘着剤層を形成する方法は特に制限されず、例えば前記粘着剤組成物を偏光板または光学フィルムに直接コーティングし、硬化させて架橋構造を具現する方式を使うか、あるいは離型フィルムの離型処理面に前記粘着剤組成物をコーティングおよび硬化させて架橋構造を形成させた後、これを偏光板または光学フィルムに転写する方式などを使うことができる。
【0107】
前記において粘着剤組成物をコーティングする方法は特に制限されず、例えば、バーコーター(bar coater)などの通常の手段で粘着剤組成物を塗布する方式を使用すればよい。
【0108】
コーティング過程で粘着剤組成物に含まれている多官能性架橋剤は官能基の架橋反応が進行されないように制御されることが均一なコーティング工程の遂行の観点で好ましく、これを通じて、架橋剤がコーティング作業後の硬化および熟成過程で架橋構造を形成して粘着剤の凝集力を向上させ、粘着物性および切断性(cuttability)などを向上させることができる。
【0109】
コーティング過程はまた、粘着剤組成物内部の揮発成分または反応残留物のような気泡誘発成分を十分に除去した後、遂行することが好ましく、これに伴い、粘着剤の架橋密度または分子量などが過度に低いため弾性率が落ち、高温状態でガラス板および粘着層間に存在する気泡が大きくなって内部で散乱体を形成する問題点などを防止することができる。
【0110】
前記コーティングに引き続き粘着剤組成物を硬化させて架橋構造を具現する方法も特に限定されず、例えば、コーティング層内に含まれたブロック共重合体と多官能性架橋剤の架橋反応が誘発されるように、前記コーティング層を適正な温度で維持する方式などで遂行できる。
【0111】
必要であれば、前記粘着剤層を形成する前に前記粘着剤層が形成される表面に接着容易処理層を形成する工程、例えば、コロナ放電またはプラズマ処理などが遂行され得る。
【0112】
本出願はまた、薄いガラス基板;前記ガラス基板に付着している前記粘着型光学部材または偏光板を含む光学積層体に関するものである。前記偏光板または光学部材は前述した粘着剤によってガラス基板に付着していることができる。本出願の粘着剤組成物によって形成される粘着剤層は前述した通り、基材と優秀な密着性を示すことができ、また薄い基板上に適用される場合にも反りを効果的に抑制することができる。前記ガラス基板の厚さは例えば、約1mm以下、約0.9mm以下または約0.8mm以下であり得る。ガラス基板の厚さの下限は特に制限されず、例えば、約0.1mm以上、約0.3mm以上または約0.5mm以上であり得る。
【0113】
本出願はまた、ディスプレイ装置、例えば、LCD装置に関するものである。前記ディスプレイ装置は前述した粘着型光学部材または偏光板を含むことができる。例えば、ディスプレイ装置がLCD装置であれば、前記装置は、液晶パネルおよび前記液晶パネルの一面または両面に付着された前記偏光板または光学部材を含むことができる。前記偏光板または光学部材は前述した粘着剤によって液晶パネルに付着していることができる。
【0114】
前記装置において、液晶パネルとしては、例えば、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型またはPD(polymer dispersed)型のような受動行列方式のパネル;2端子型(two terminal)または3端子型(three terminal)のような能動行列方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルをすべて適用することができる。
【0115】
また、液晶表示装置のその他の構成、例えば、カラーフィルター基板またはアレイ基板のような上下部基板などの種類も特に制限されず、この分野に公知されている構成を制限なく採用することができる。
【発明の効果】
【0116】
本出願では、高温または高湿条件で耐久性が優秀で、光学フィルムとの密着性が優れているため、裁断性と再作業性などが卓越した粘着剤を形成できる粘着剤組成物を提供することができる。また、本出願では、極薄厚のガラス基板のような薄型基板に適用される場合にも反りを効果的に抑制することができ、物性の安定化のために要求される時間が最小化され、確保された物性の経時的悪化も防止できる粘着剤を形成できる粘着剤組成物、前記のような粘着剤組成物を使って形成した粘着型光学部材、光学積層体およびディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下、実施例および比較例を通じて前記粘着剤組成物を詳細に説明するが、前記粘着剤組成物の範囲は下記の実施例によって制限されるものではない。
【0118】
1.分子量評価
数平均分子量(Mn)および分子量分布(PDI)はGPC(Gel Permeation Chromatography)を使って以下の条件で測定し、検量線の製作にはAgilent systemの標準ポリスチレンを使って測定結果を換算した。
【0119】
<測定条件>
測定器:Agilent GPC(Agilent 1200 series、U.S.)
カラム:PL Mixed B 2個連結
カラム温度:40℃
溶離液:THF(Tetrahydrofuran)
流速:1.0mL/min
濃度:〜1mg/mL(100μL injection)
【0120】
2.ガラス粘着力測定
実施例または比較例の粘着偏光板を幅が25mmであり、長さが100mmとなるように裁断してサンプルを製造し、剥離シート(離型PETフィルム)を除去した後、無アルカリガラスにラミネーターを利用して付着した。引き続き、恒温除湿条件(23℃、50%相対湿度)で24時間の間保管した。その後、物性測定機(texture analyzer、stable microsystem社)を利用して0.3m/minの剥離速度および180度の剥離角度で常温で無アルカリガラスから粘着偏光板を剥離して剥離力を評価した。
【0121】
3.粘着剤/基材界面密着力評価
実施例または比較例の粘着偏光板を製造する過程で粘着剤層の形成後それぞれ下記の評価基準に記載された時間だけ経過した偏光板を横が7cmであり、縦が10cmとなるように裁断し、剥離シート(離型PETフィルム)を除去した後、ラミネーターで粘着剤剥離を測定するための粘着テープ(測定用粘着テープ)を横が5cmであり、縦が10cmとなる粘着面積で付着する。その後、恒温除湿条件(25℃、50%相対湿度)に5分の間維持し、付着された測定用粘着テープを除去して偏光板基材面に残留する粘着剤の残留量を確認する。偏光板の縦方向に格子を表示して、格子内に残留する粘着剤の量を基準として肉眼で観察して確認する。
【0122】
<評価基準>
A:コーティング後1日以内、粘着剤が90%以上残留
B:コーティング後2日以内、粘着剤が90%以上残留
C:コーティング後3日以内、粘着剤が90%以上残留
D:コーティング後4日以後、粘着剤が90%以上残留
【0123】
4.粘着剤層の表面抵抗評価
実施例または比較例の粘着偏光板を横が50mmで、縦が50mmとなるように裁断して試片を製造し、試片の粘着剤層に付着している離型PETを除去した後、表面抵抗を測定した。表面抵抗は、MCP−HT 450装備(Mitsubishi chemical製、日本)を使ってメーカーのマニュアルにしたがって測定した。試片を23℃および50%の相対湿度の条件で24時間の間維持した後、偏光板から剥離シート(離型PETフィルム)を除去し、500ボルト(V)の電圧を1分の間印加した後測定した。
【0124】
製造例1.アクリルブロック共重合体(A1)の製造
EBiB(ethyl 2−bromoisobutyrate)0.1gおよびメチルメタクリレ−ト(MMA)28.4gをエチルアセテート(EAc)12.4gに混合した。前記混合物が入れられたフラスコをゴム膜で密封し、約25℃で約30分の間窒素パージおよび撹はんをして、バブリングを通じて溶存酸素を除去した。その後、CuBr2 0.002g、TPMA(tris(2−pyridylmethyl)amine)0.005gおよびV−65(2,2’−azobis(2,4−dimethyl valeronitrile))0.017gを酸素が除去された前記混合物に投入し、約67℃の反応槽に漬けて反応を開始させた(第1ブロックの重合)。メチルメタクリレ−トの転換率が約75%程度の時点であらかじめ窒素にバブリングしておいたブチルアクリレート(BA)310g、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1.6gおよびエチルアセテート(EAc)500gの混合物を窒素の存在下で投入した。その後、反応フラスコにCuBr2 0.006g、TPMA 0.012gおよびV−65 0.05gを入れて、鎖延長反応(chain extention reaction)を遂行した(第2ブロックの重合)。単量体(BA)の転換率が80%以上に到達すると前記反応混合物を酸素に露出させ、適切な溶媒に希釈して反応を終結させることによってブロック共重合体を製造した(前記過程でV−65はその半減期を考慮して反応終了時点まで適切に分割して投入した。)。
【0125】
製造例2および3.アクリルブロック共重合体(A2)および(A3)の製造
ブロック共重合体の重合時に使われた原料(単量体など)の種類および重合条件などを調節したことを除いては製造例1と同じ方式で下記の表1に表れたようなブロック共重合体を製造した。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例1.
【0128】
粘着剤組成物(コーティング液)の製造
製造例1でブロック共重合体(A1)100重量部に対して架橋剤(Coronate LS、Nippon Polyurethane制)0.1重量部、多官能エポキシ化合物(N、N、N’、N’−テトラグリシジルエチレンジアミン)0.5重量部、イオン性液体(FC−4400、3M社)1.0重量部、2−メチルイミダゾール(Acros社)0.01重量部、DBTDL(Dibutyltin dilaurate、Alfa Aesar)0.01重量部およびベータ−シアノアセチル基を有するシランカップリング剤(AD M−812、LG化学)0.4重量部を混合し、溶剤としてエチルアセテートを配合してコーティング固形分が約10〜13重量%となるように調節してコーティング液(粘着剤組成物)を製造した。
【0129】
粘着偏光板の製造
製造された粘着剤組成物を剥離シートとして離型処理された厚さ約38μmのPET(poly(ethylene terephthalate))フィルム(MRF−38、三菱社製)の離型処理面上に乾燥後厚さが約25μmとなるようにコーティングし、110℃のオーブンで約3分の間維持して粘着剤層を形成した。形成された粘着剤層をヨウ素系偏光板の保護フィルム(TACフィルム)の一面にラミネートで粘着して粘着偏光板を製造した(粘着偏光板の構造:離型PET/粘着剤層/TAC/PVA/TACの積層構造:TAC=トリアセチルセルロース、PVA=ポリビニルアルコール系偏光フィルム)。
【0130】
実施例2〜4および比較例1〜5
粘着剤組成物の製造過程で組成を下記表2または3に記載された通り変更したことを除いては実施例1に準じた方式で粘着剤組成物(コーティング液)および粘着偏光板を製造した。
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
本出願では、高温または高湿条件で耐久性が優秀で、光学フィルムとの密着性が優れているため、裁断性と再作業性などが卓越した粘着剤を形成できる粘着剤組成物を提供することができる。また、本出願では、極薄厚のガラス基板のような薄型基板に適用される場合にも反りを効果的に抑制することができ、物性の安定化のために要求される時間が最小化され、確保された物性の経時的悪化も防止できる粘着剤を形成できる粘着剤組成物、前記のような粘着剤組成物を使って形成した粘着型光学部材、光学積層体およびディスプレイ装置を提供することができる。