特許第6384701号(P6384701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6384701-フレキシブルプラスチックフィルム 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6384701
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】フレキシブルプラスチックフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20180827BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C08J7/04 LCEZ
   C08J7/04 KCER
   B32B27/30 A
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-502141(P2018-502141)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(86)【国際出願番号】KR2016008572
(87)【国際公開番号】WO2017023119
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0109699
(32)【優先日】2015年8月3日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0160673
(32)【優先日】2015年11月16日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0098073
(32)【優先日】2016年8月1日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒエ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヨン ラエ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、スン ファ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジン ヨウン
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−155124(JP,A)
【文献】 特開2010−174201(JP,A)
【文献】 特開2015−123721(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208323(WO,A1)
【文献】 特表2012−517513(JP,A)
【文献】 特開2014−030910(JP,A)
【文献】 特開2014−079974(JP,A)
【文献】 特開2013−154631(JP,A)
【文献】 特開2015−038189(JP,A)
【文献】 特開2016−188354(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/186013(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04− 7/06
B32B 1/00−43/00
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D882により測定した時、4GPa以上の弾性モジュラスを有し、厚さが20〜200μmの範囲である支持基材;
および前記支持基材の少なくとも一面に形成されるコーティング層を含み、
前記コーティング層は、
3〜6官能性アクリレート系バインダーと7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーとの架橋共重合体;
並びにd50が20〜35nmの第1無機微粒子群およびd50が40〜130nmの第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル(bi−modal)粒子分布を有する無機微粒子を含む、
フレキシブル(flexible)プラスチックフィルム。
【請求項2】
前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーのアクリレート当量は、
200〜1,500g/molである、
請求項1に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項3】
前記3〜6官能性アクリレート系バインダーおよび7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーの重量比は、
1:9〜4:6である、
請求項1または2に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項4】
前記コーティング層100重量部に対して、
前記3〜6官能性アクリレート系バインダーを10〜50重量部、
前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーを40〜70重量部、
前記第1無機微粒子群を5〜50重量部、
前記第2無機微粒子群を5〜50重量部含む、
請求項1または2に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項5】
前記第1無機微粒子群および第2無機微粒子群は、
それぞれ独立に、同一または異なって、
(メタ)アクリルシラン((meth)acrylsilane)、メタクロキシシラン(methacroxysilane)、ビニルシラン(vinylsilane)、エポキシシラン(epoxysilane)、およびメルカプトシラン(mercaptosilane)からなる群より選択されるいずれか1つ以上のシランカップリング剤で表面が改質処理されたものである、
請求項1から4のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項6】
前記第1無機微粒子群のd10は、10〜19nmであり、
90は、25〜40nmであり、
前記第2無機微粒子群のd10は、25〜110nmであり、
90は、60〜150nmである、
請求項1から5のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項7】
前記第1無機微粒子群および第2無機微粒子群の重量比は、
9:1〜3:7である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項8】
前記支持基材は、
ポリイミド(polyimide、PI)、ポリイミドアミド(polyimideamide)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、サイクリックオレフィン重合体(cyclic olefin polymer、COP)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)からなる群より選択された1種以上である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項9】
前記コーティング層の厚さは、
3〜20μmである、
請求項1から8のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項10】
前記コーティング層の上面または下面に帯電防止層または低屈折率層をさらに含む、
請求項1から9のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項11】
750gの荷重で6H以上の鉛筆硬度を示す、
請求項1から10のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【請求項12】
直径4mmのマンドレル(mandrel)に巻いた時、
クラック(crack)が発生しない、
請求項1から11のいずれか1項に記載のフレキシブルプラスチックフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
【0002】
本出願は、2015年8月3日付の韓国特許出願第10−2015−0109699号、2015年11月16日付の韓国特許出願第10−2015−0160673号、および2016年8月1日付の韓国特許出願第10−2016−0098073号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0003】
本発明は、フレキシブルプラスチックフィルムに関する。より詳細には、高硬度を示しながらも、優れた柔軟性を有するフレキシブルプラスチックフィルムに関する。
【背景技術】
【0004】
最近、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展に伴って、ディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化が要求されている。このようなモバイル機器のディスプレイ用ウィンドウまたは前面板には、機械的特性に優れた素材としてガラスまたは強化ガラスが一般に用いられている。しかし、ガラスは、自体の重量によるモバイル装置が高重量化される原因となり、外部衝撃による破損の問題がある。
【0005】
そこで、ガラスを代替できる素材としてプラスチック樹脂が研究されている。プラスチック樹脂フィルムは、軽量でありながらも、破れる恐れが少なく、より軽いモバイル機器を追求する傾向に適合する。特に、高硬度および耐摩耗性の特性を有するフィルムを達成するために、支持基材にプラスチック樹脂からなるハードコート層をコーティングするフィルムが提案されている。
【0006】
ハードコート層の表面硬度を向上させる方法として、ハードコート層の厚さを増加させる方法が考慮される。ガラスを代替できる程度の表面硬度を確保するためには、一定のハードコート層の厚さを実現する必要がある。しかし、ハードコート層の厚さを増加させるほど表面硬度は高くなり得るが、ハードコート層の硬化収縮によってシワやカール(curl)が大きくなると同時に、ハードコート層の亀裂や剥離が生じやすくなるため、実用的に適用することは容易でない。
【0007】
韓国公開特許第2010−0041992号は、モノマーを排除し、紫外線硬化性ポリウレタンアクリレート系オリゴマーを含むバインダー樹脂を用いるプラスチックフィルム組成物を開示している。しかし、前記開示されたプラスチックフィルムは、鉛筆硬度が3H程度で、ディスプレイのガラスパネルを代替するには強度が十分でない。
【0008】
一方、審美的、機能的理由から、ディスプレイ機器の一部が屈曲していたり、柔軟性あるように曲がるディスプレイが最近注目されており、この傾向は特にスマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器で目立っている。ところが、このような柔軟性のあるディスプレイを保護するためのカバープレートに用いる上でガラスは不適であるので、プラスチック樹脂などへの代替が必要である。しかし、このために、ガラスレベルの高硬度を示しかつ、十分な柔軟性を有するフィルムの製造が容易でないという困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、高硬度を示しながらも、優れた柔軟性を有するフレキシブルプラスチックフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題を解決するために、本発明は、
ASTM D882により測定した時、4GPa以上の弾性モジュラスを有し、厚さが20〜200μmの範囲である支持基材;および前記支持基材の少なくとも一面に形成されるコーティング層を含み、
前記コーティング層は、3〜6官能性アクリレート系バインダーと7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーとの架橋共重合体;並びにd50が20〜35nmの第1無機微粒子群およびd50が40〜130nmの第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル(bi−modal)粒子分布を有する無機微粒子を含む、フレキシブル(flexible)プラスチックフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフレキシブルプラスチックフィルムによれば、柔軟性、屈曲性、高硬度、耐擦傷性、高透明度を示し、繰り返し的、持続的な曲げや長時間折り畳み状態でもフィルムの損傷が少なく、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォールダブル(foldable)モバイル機器、ディスプレイ機器、各種計器板の前面板、表示部などに有用に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例によるフィルムに対して、曲げ耐久性および曲げ安定性テストを実施する方法を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施例による無機微粒子の粒径に応じた分布を示すグラフである。
図3】本発明の比較例による無機微粒子の粒径に応じた分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、ASTM D882により測定した時、4GPa以上の弾性モジュラスを有し、厚さが20〜200μmの範囲である支持基材;および前記支持基材の少なくとも一面に形成されるコーティング層を含み、前記コーティング層は、3〜6官能性アクリレート系バインダーと7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーとの架橋共重合体;並びにd50が20〜35nmの第1無機微粒子群およびd50が40〜130nmの第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル(bi−modal)粒子分布を有する無機微粒子を含む。
【0014】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0015】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0016】
本発明は多様な変更を加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むことが理解されなければならない。
【0017】
以下、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムをより詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施例によるフレキシブルプラスチックフィルムは、ASTM D882により測定した時、4GPa以上の弾性モジュラスを有し、厚さが20〜200μmの範囲である支持基材;および前記支持基材の少なくとも一面に形成されるコーティング層を含み、前記コーティング層は、3〜6官能性アクリレート系バインダーと7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーとの架橋共重合体;並びにd50が20〜35nmの第1無機微粒子群およびd50が40〜130nmの第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル(bi−modal)粒子分布を有する無機微粒子を含む。
【0019】
本発明において、「フレキシブル(flexible)」とは、直径が4mmの円筒形マンドレル(mandrel)に巻いた時、長さ3mm以上のクラック(crack)が発生しない程度の柔軟性を有する状態を意味し、したがって、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォールダブル(foldable)ディスプレイのカバーフィルムなどに適用可能である。
【0020】
本発明のフレキシブルプラスチックフィルムにおいて、前記コーティング層が形成される支持基材は、柔軟性(flexibility)および硬度(hardness)を確保できるように、ASTM D882により測定した時、約4GPa以上の弾性モジュラスを有し、厚さが20〜200μmの範囲である光学用透明プラスチック樹脂であれば、延伸フィルムまたは非延伸フィルムなど支持基材の製造方法や材料に特別な制限なく使用することができる。
【0021】
前記支持基材の条件のうち、弾性モジュラスは、約4GPa以上、または約5GPa以上、または約5.5GPa、または約6GPa以上になってもよいし、上限値では約9GPa以下、または約8GPa以下、または約7GPa以下になってもよい。前記弾性モジュラスが4GPa未満であれば、十分な硬度を達成できないことがあり、9GPaを超えて高すぎると、柔軟性のあるフィルムを形成しにくいことがある。
【0022】
また、前記支持基材の厚さは、約20μm以上、または約25μm以上、または約30μm以上になってもよいし、その上限値では約200μm以下、または約150μm以下、または約100μm以下、または約60μm以下になってもよい。前記支持基材の厚さが20μm未満であれば、コーティング層の形成工程時、破断したり、カール(curl)が発生する恐れがあり、高硬度を達成しにくいことがある。反面、厚さが200μmを超えると、柔軟性が低下してフレキシブルフィルムの形成が困難になり得る。
【0023】
このように、フレキシブルフィルムのための加工性(processibility)を確保し、高硬度と柔軟性の物性バランスを取る側面で、本発明のプラスチックフィルムは、弾性モジュラスが4GPa以上9GPa以下であり、厚さが20〜200μmの範囲である支持基材を使用することができる。
【0024】
より具体的には、本発明の一実施例によれば、前記支持基材としては、上述した弾性モジュラスと厚さ範囲を満足するもので、例えば、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリイミドアミド(polyimideamide)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、サイクリックオレフィン重合体(cyclic olefin polymer、COP)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)などを含むフィルムであってもよい。前記支持基材は、単層または、必要に応じて互いに同一または異なる物質からなる2つ以上の基材を含む多層構造であってもよいし、特に制限されない。
【0025】
あるいは、本発明の一実施例によれば、前記支持基材は、ポリイミド(polyimide、PI)を含む基材であってもよい。
【0026】
また、本発明の一実施例によれば、前記支持基材および前記コーティング層の厚さの比は、約1:0.05〜約1:1、または約1:0.1〜約1:0.8であってもよい。支持基材およびコーティング層の厚さの比が前記範囲の時、高硬度および柔軟性を示すフレキシブルプラスチックフィルムをより容易に形成することができる。
【0027】
本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、前記支持基材の少なくとも一面に形成されるコーティング層を含む。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記コーティング層は、支持基材の両面に形成される。
【0029】
本発明のフレキシブルプラスチックフィルムにおいて、前記コーティング層は、3〜6官能性アクリレート系バインダーと7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーとの架橋共重合体、並びにd50が20〜35nmの第1無機微粒子群およびd50が40〜130nmの第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル(bi−modal)粒子分布を有する無機微粒子を含む。
【0030】
本明細書全体において、前記アクリレート系とは、アクリレートだけでなくメタクリレート、またはアクリレートやメタクリレートに置換基が導入された誘導体をすべて意味する。
【0031】
前記3〜6官能性アクリレート系バインダーは、前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーと架橋重合されて共重合体を形成し、硬化後に形成されるコーティング層に高硬度を付与できる。
【0032】
より具体的な例としては、前記3〜6官能性アクリレート系バインダーは、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられる。前記3〜6官能性アクリレート系バインダーは、単独でまたは互いに異なる種類を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本発明の一実施例によれば、前記3〜6官能性アクリレート系バインダーは、重量平均分子量(Mw)が約200〜約2,000g/mol、または約200〜約1,000g/mol、または約200〜約500g/molの範囲であってもよい。
【0034】
また、本発明の一実施例によれば、前記3〜6官能性アクリレート系バインダーは、アクリレート当量(equivalent weight)が約50〜約300g/mol、または約50〜約200g/mol、または約50〜約150g/molの範囲であってもよい。
【0035】
前記3〜6官能性アクリレート系バインダーの重量平均分子量およびアクリレート当量がそれぞれ上述した範囲内にある時、より最適化された物性のコーティング層を形成することができる。
【0036】
前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーは、前記3〜6官能性アクリレート系バインダーと架橋重合されて共重合体を形成し、硬化後に形成されるコーティング層に高硬度、柔軟性および耐衝撃性を付与できる。前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーは、単独でまたは互いに異なる種類を組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明の一実施例によれば、前記架橋共重合体は、前記3〜6官能性アクリレート系バインダーおよび7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーが約1:9〜約5:5、好ましくは約1:9〜約4:6、より好ましくは約1:9〜約3.5:6.5の重量比で架橋重合されたものであってもよい。前記重量比で3〜6官能性アクリレート系バインダーおよび7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーが架橋結合された架橋共重合体を含むことによって、十分な柔軟性を示し、同時に高硬度の良好な物性を達成することができる。
【0038】
本発明の一実施例によれば、前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーは、重量平均分子量が約2,000〜約8,000g/mol、または約3,000〜約6,000g/mol、または約3,000〜約5,000g/molの範囲であることが、コーティング層の物性の最適化のために好ましい。
【0039】
また、本発明の一実施例によれば、前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーは、アクリレート当量(equivalent weight)が約200〜約1,500g/mol、または約200〜約1,000g/mol、または約300〜約600g/mol、または約300〜約500g/molの範囲であってもよい。前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーのアクリレート当量が高すぎると、コーティング層の硬度が十分でないことがあり、当量が低ければ、硬度は向上するものの、柔軟性が低下することがある。前記のように、高硬度と柔軟性のバランスの観点で、上述した当量の範囲が好ましく、約300〜約500g/molが最も好ましい。
【0040】
前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーの重量平均分子量およびアクリレート当量がそれぞれ上述した範囲内にある時、より最適化された物性のコーティング層を形成することができる。
【0041】
前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーは、紫外線によって架橋重合可能なアクリレート基を分子内に7個以上含むことによって、結合密度が非常に高くてコーティング層が高硬度を達成するのに有利である。しかし、架橋結合密度が高くなるほどカールが発生しやすく、基材との付着力が低下するので、柔軟性のあるフィルムを形成するには適切でない。
【0042】
一方、本発明のコーティング層に含まれる7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーは、7個以上の多官能アクリレート基を含み、同時に分子内にウレタン結合を有していて、弾性および柔軟性に優れた特性を有する。したがって、3〜6官能性アクリレート系バインダーと適切な重量比で架橋結合されて共重合体を形成した時、コーティング層に高硬度と共に十分な柔軟性を付与する役割を果たす。前記7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーは、1分子内にウレタン結合を2個〜20個含むことができる。
【0043】
このように、本発明のコーティング層は、前記3〜6官能性アクリレート系バインダーおよび7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダーが架橋結合された架橋共重合体を含むことによって、フレキシブルプラスチックフィルムに高硬度および柔軟性を付与し、特に曲げ(bending)、巻き(rolling)または折り畳み(folding)に対する耐久性が高くて繰り返し曲げられたり長時間折り畳まれた時もフィルムの損傷の恐れが少ない、非常に優れた柔軟性を確保することができる。
【0044】
本発明のコーティング層は、d50が20〜35nmの第1無機微粒子群およびd50が40〜130nmの第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル(bi−modal)粒子分布を有する無機微粒子を含む。前記のように、本発明のコーティング層はそれぞれ、特定範囲のd50を有する第1および第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル分布を示す無機微粒子を使用することによって、フレキシブル特性を維持しつつ、コーティング層の高硬度および柔軟性を同時にすべて達成することができる。
【0045】
本発明の明細書において、レーザ光回折法(測定方法:Dynamic laser scattering、無機微粒子が分散した溶媒と無機微粒子の屈折率、粘度、および誘電定数を用いてsize distribution by numberを求める、機器名:Malvern Zetasizer Nano−ZS90)によって粒径に応じた累積粒径分布度を測定した時、累積10%の粒径をd10、累積50%の粒径をd50、累積90%の粒径をd90とする。前記レーザ光回折法による粒径分布は、無機微粒子が溶媒に分散した分散液を希釈してSEMまたはTEMで測定したり、前記無機微粒子を含むコーティング層の断面をSEMまたはTEMで分析して測定したものと実質的に同一の分布を示すことができる。
【0046】
小さい粒径範囲を有する第1無機微粒子群は硬度の向上に寄与し、より大きい粒径範囲を有する第2無機微粒子群は屈曲性および柔軟性の向上に寄与して、このように上述した架橋共重合体に加えて粒径範囲の異なる無機微粒子群を混合して用いることによって、硬度および柔軟性の物性が同時に向上したコーティング層を提供することができる。加えて、前記第1および第2無機微粒子群の粒径分布に応じて硬度および柔軟性の程度が変化可能であり、所定の粒径分布度をそれぞれ満足する第1および第2無機微粒子群を使用する時に、コーティング層の硬度および柔軟性の物性バランスが最適化できることに基づいて、本発明を完成した。
【0047】
前記第1および第2無機微粒子群は、例えば、それぞれ独立に、シリカ微粒子、アルミニウムオキサイド粒子、チタンオキサイド粒子、またはジンクオキサイド粒子などを使用することができる。
【0048】
本発明の一実施例によれば、前記第1無機微粒子群のd50は、20nm以上、または約21nm以上であり、35nm以下、または30nm以下、または25nm以下であってもよく、前記第2無機微粒子群のd50は、40nm以上、または約42nm以上、または約45nm以上であり、130nm以下、または125nm以下、または120nm以下であってもよい。
【0049】
また、本発明の一実施例によれば、前記第1無機微粒子群は、d10が10〜19nmであり、d50が20〜35nmであり、d90が25〜40nmであってもよい。さらに、前記第2無機微粒子群は、d10が25〜110nmであり、d50が40〜130nmであり、d90が60〜150nmであってもよい。
【0050】
本発明の一実施例によれば、前記第1無機微粒子群の含有量は、全体コーティング層100重量部に対して、高硬度の向上に寄与するために、約5重量部以上、または約10重量部以上、または約15重量部以上になってもよく、柔軟性を満足させるために、約50重量部以下、または約45重量部以下、または約40重量部以下、または約35重量部以下になってもよい。前記第1無機微粒子群を前記重量範囲に含むことによって、高硬度および柔軟性を同時に満足させる、優れた物性のフレキシブルプラスチックフィルムを形成することができる。
【0051】
また、本発明の一実施例によれば、前記第2無機微粒子群の含有量は、全体コーティング層100重量部に対して、高硬度の向上に寄与するために、約5重量部以上、または約10重量部以上、または約15重量部以上になってもよく、柔軟性を満足させるために、約50重量部以下、または約45重量部以下、または約40重量部以下、または約35重量部以下になってもよい。前記第2無機微粒子群を前記重量範囲に含むことによって、高硬度および柔軟性を同時に満足させる、優れた物性のフレキシブルプラスチックフィルムを形成することができる。
【0052】
さらに、本発明の一実施例によれば、前記第1および第2無機微粒子群を含む無機微粒子の全体含有量は、全体コーティング層100重量部に対して、高硬度の向上に寄与するために、約25重量部以上、または約30重量部以上、または約35重量部以上になってもよく、柔軟性を満足させるために、約50重量部以下、または約45重量部以下、または約40重量部以下に調節することができる。
【0053】
本発明の一実施例によれば、前記第1および第2無機微粒子群は、それぞれ独立に、同一または異なって、表面が(メタ)アクリルシラン((meth)acrylsilane)、メタクロキシシラン(methacroxysilane)、ビニルシラン(vinylsilane)、エポキシシラン(epoxysilane)、およびメルカプトシラン(mercaptosilane)からなる群より選択されるいずれか1つ以上のシランカップリング剤で改質処理されたものであってもよい。
【0054】
前記のようにシランカップリング剤で表面改質された第1および第2無機微粒子群は、バインダーのアクリレート基と反応可能なため、基材との密着性が高く、コーティング層内に均一に分散可能で、コーティング層の柔軟性を低下させることなく硬度を向上させることができるので、より有利であり得る。
【0055】
本発明の一実施例によれば、前記第1および第2無機微粒子群は、約9:1〜約3:7、または約8:2〜約4:6、または約7:3〜約5:5の重量比で含まれる。前記第1および第2無機微粒子群を前記重量比の範囲に含むことによって、高硬度および柔軟性がより向上した、優れた物性のフレキシブルプラスチックフィルムを形成することができる。
【0056】
一方、本発明のコーティング層は、上述したバインダー、無機微粒子、光開始剤、および有機溶媒のほか、界面活性剤、UV吸収剤、UV安定剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤、色値改善のための染料など、本発明の属する技術分野で通常使用される添加剤を追加的に含んでもよい。また、その含有量は、本発明のコーティング層の物性を低下させない範囲内で多様に調節可能なため、特に制限はないが、例えば、前記コーティング層100重量部に対して、約0.01〜約10重量部含まれる。
【0057】
本発明の一実施例によれば、例えば、前記コーティング層は、添加剤として、界面活性剤を含むことができ、前記界面活性剤は、1〜2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤、またはシリコーン系界面活性剤であってもよい。この時、前記界面活性剤は、前記コーティング層内に分散または架橋されている形態で含まれる。
【0058】
また、前記添加剤として、UV吸収剤、またはUV安定剤を含むことができ、前記UV吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、またはトリアジン系化合物などが挙げられ、前記UV安定剤としては、テトラメチルピペリジン(tetramethyl piperidine)などが挙げられる。
【0059】
このような本発明のコーティング層は、3〜6官能性アクリレート系バインダー、7〜20官能性ウレタンアクリレート系バインダー、光開始剤、d50が20〜35nmの第1無機微粒子群およびd50が40〜130nmの第2無機微粒子群を含むことでバイモーダル粒子分布を有する無機微粒子、添加剤、および有機溶媒を含むコーティング組成物を光硬化させて形成することができる。
【0060】
前記光開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、2−ベンゾイル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド、またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられるが、これらに制限されない。また、現在市販の商品としては、Irgacure184、Irgacure500、Irgacure651、Irgacure369、Irgacure907、Darocur1173、Darocur MBF、Irgacure819、Darocur TPO、Irgacure907、Esacure KIP100Fなどが挙げられる。これらの光開始剤は、単独でまたは互いに異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0061】
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを、単独でまたは混合して使用することができる。
【0062】
前記有機溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節可能なため、特に制限はないが、前記コーティング組成物に含まれる成分中の固形分に対して、固形分:有機溶媒の重量比が約30:70〜約99:1となるように含むことができる。前記有機溶媒が前記範囲にある時、適切な流動性および塗布性を有することができる。
【0063】
前記コーティング組成物は、前記支持基材の前面および後面にそれぞれ順次に塗布するか、または支持基材の両面に同時に塗布することができる。
【0064】
本発明の一実施例によれば、上述した成分を含むコーティング組成物を前記支持基材の両面上に塗布した後、光硬化させてコーティング層を形成することによって、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムを得ることができる。この時、前記コーティング組成物を塗布する方法は、本技術の属する技術分野で使用可能なものであれば特に制限されず、例えば、バーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、ソリューションキャスティング(solution casting)方式などを利用することができる。
【0065】
前記コーティング層は、完全に硬化した後、厚さが約3μm以上、例えば、約3〜約20μm、または約3〜約15μm、または約3〜約10μmの厚さを有することができる。本発明によれば、このような厚さを有するコーティング層を含む場合、高硬度のフレキシブルプラスチックフィルムを提供することができる。
【0066】
本発明の一実施例によれば、前記フレキシブルプラスチックフィルムは、少なくとも1つのコーティング層の上面、または基材フィルムとコーティング層との間に、プラスチック樹脂フィルム、粘着フィルム、離型フィルム、導電性フィルム、導電層、液晶層、コーティング層、硬化樹脂層、非導電性フィルム、金属メッシュ層、またはパターン化された金属層のような層、膜、またはフィルムなどを1つ以上さらに含んでもよい。例えば、支持基材に導電性を有する帯電防止層を先に形成した後、その上にコーティング層を形成して帯電防止(anti−static)機能を付与したり、コーティング層上に低屈折率層を導入して低反射(low reflection)機能を実現することもできる。
【0067】
また、前記層、膜、またはフィルムなどは、単一層、二重層、または積層型のいずれの形態でもよい。前記層、膜、またはフィルムなどは、独立した(freestanding)フィルムを接着剤または粘着性フィルムなどを用いてラミネーション(lamination)したり、コーティング、蒸着、スパッタリングなどの方法で前記コーティング層上に積層させることができるが、本発明がこれに制限されるわけではない。
【0068】
本発明によるフレキシブルプラスチックフィルムは、例えば、下記のような方法で製造することができる。
【0069】
本発明の一実施例によれば、まず、支持基材の一面に第1コーティング組成物を第1塗布および第1光硬化した後、支持基材の他面、つまり背面に再びコーティング組成物を第2塗布および第2光硬化する、2段階の工程によって形成することができる。この時、前記第1および第2コーティング組成物は、上述したコーティング組成物と同一であり、単に一面および背面に塗布される組成物をそれぞれ区分するものである。
【0070】
このような方法でコーティング層を形成する場合、第2光硬化段階では、紫外線照射が第1コーティング組成物の塗布された面でない反対側で行われるので、第1光硬化段階で硬化収縮によって発生し得るカールを反対方向に相殺することで、平坦なフレキシブルプラスチックフィルムを得ることができる。したがって、追加的な平坦化過程が不必要である。
【0071】
しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、支持基材の両面に同時にコーティング組成物を塗布した後、硬化する方法で形成することによって、カールバランス(curl balance)を合わせることもできる。
【0072】
本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、優れた柔軟性、屈曲性、高硬度、耐擦傷性、高透明度、曲げ、巻きまたは折り畳みに対する高い耐久性(durability)および安定性(stability)などを示し、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォールダブル(foldable)特性を有する次世代ディスプレイのカバーフィルムなどに用いられる。
【0073】
例えば、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、直径4mm、または3mmの円筒形マンドレル(mandrel)に巻いた時、クラックが発生しない程度の柔軟性を示すことができる。
【0074】
また、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、750gの荷重における鉛筆硬度が6H以上、または7H以上であってもよい。
【0075】
さらに、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、フィルムの中間に4mmの間隔をおいて前記フィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んだ状態で常温で放置した後、折り畳まれた部分が下へいくように平らな底面に広げた時、フィルムが底面から持ち上げられた高さが0.5mm以下程度の曲げ安定性を示すことができる。
【0076】
また、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、フィルムの中間に4mmの間隔をおいて前記フィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んだり広げたりを常温で10万回繰り返した時、1cm以上、または3mm以上のクラックが発生しない程度の曲げ耐久性を示すことができる。
【0077】
また、摩擦試験機に、プラスチックフィルムに対して2cmx2cmの大きさの接触面積を有するチップ(tip)にスチールウール(steel wool)#0000を装着した後、500gの荷重でプラスチックフィルムの表面を400回往復させる場合に、スクラッチが2個以下で発生する。
【0078】
また、本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、光透過率が88.0%以上、または90.0%以上であり、ヘイズが1.5%以下、または1.0%以下、または0.5%以下であってもよい。
【0079】
このような本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、多様な分野で活用可能である。例えば、平らな形態だけでなく、カーブド(curved)、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォールダブル(foldable)形態の移動通信端末、スマートフォンまたはタブレットPCのタッチパネル、および各種ディスプレイのカバー基板または素子基板の用途に使用できる。
【0080】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0081】
<実施例>
【0082】
実施例1
3官能のアクリレート系バインダーのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(製造会社:Cytec、Mw=296g/mol、アクリレート基当量=99g/mol)30g、9官能のウレタンアクリレート系バインダーのMU9800(製造会社:MIWON、Mw=3500g/mol、アクリレート基当量=389g/mol)40g、10官能のウレタンアクリレート系バインダーのMU9020(製造会社:MIWON、Mw=4500g/mol、アクリレート基当量=450g/mol)30g、光開始剤Irgacure184(製造会社:Ciba)1g、メチルエチルケトン(MEK)15gを混合して、アクリレート溶液を製造した。
【0083】
このアクリレート溶液に、シリカ粒子S1(d10=17nm、d50=22nm、d90=28nmであり、メタクリレートシランカップリング剤で表面改質される)がn−BA(normal butyl acetate)に50重量%分散している溶液(以下、S1分散溶液)60g、シリカ粒子S2(d10=29nm、d50=51nm、d90=74nmであり、アクリレートシランカップリング剤で表面改質される)がMEKに30重量%分散している溶液(以下、S2分散溶液)50gを混合して、コーティング組成物を製造した。
【0084】
前記コーティング組成物を、ASTM D882により測定した弾性モジュラス値が6.0GPaのポリイミド基材(大きさ:20cmx30cm、厚さ:35μm)の両面にバーコーティング方式で塗布し、290−320nmの波長のメタルハライドランプで光硬化することによって、コーティング層を形成した。
【0085】
硬化が完了した後、両面に形成されたコーティング層の厚さはそれぞれ6μmであった。
【0086】
実施例2
実施例1において、S2分散溶液を83.3gとし、別途のメチルエチルケトン溶媒を含まないことを除けば、実施例1と同様の方法でコーティング層を形成した。
【0087】
実施例3
実施例1において、メチルエチルケトンを25gとし、S2分散溶液50gの代わりに、シリカ粒子S3(d10=108nm、d50=119nm、d90=131nmであり、アクリレートシランカップリング剤で表面改質される)がMEKに40重量%分散している溶液(以下、S3分散溶液)37.5gを混合して、コーティング組成物を製造した。
【0088】
後の工程は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0089】
実施例4
TMPTA(製造会社:Cytec、Mw=296g/mol、アクリレート基当量=99g/mol)20g、MU9800(製造会社:MIWON、Mw=3500g/mol、アクリレート基当量=389g/mol)40g、MU9020(製造会社:MIWON、Mw=4500g/mol、アクリレート基当量=450g/mol)40g、光開始剤Irgacure184(製造会社:Ciba)1g、メチルエチルケトン(MEK)12gを混合して、アクリレート溶液を製造した。
【0090】
このアクリレート溶液に、S1分散溶液60g、S3分散溶液75gを混合して、コーティング組成物を製造した。
【0091】
後の工程は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0092】
実施例5
ASTM D882により測定した弾性モジュラス値が4.2GPaのポリイミド基材(大きさ:20cmx30cm、厚さ:35μm)を用いたことを除けば、残りの工程は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0093】
実施例6
ASTM D882により測定した弾性モジュラス値が7.6GPaのポリイミド基材(大きさ:20cmx30cm、厚さ:35μm)を用いたことを除けば、残りの工程は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0094】
実施例7
TMPTA(製造会社:Cytec、Mw=296g/mol、アクリレート基当量=99g/mol)30g、MU9020(製造会社:MIWON、Mw=4500g/mol、アクリレート基当量=450g/mol)30g、15官能のウレタンアクリレート系バインダーのSC2152(製造会社:MIWON、Mw=20,000g/mol、アクリレート基当量=1,333g/mol)40g、光開始剤Irgacure184(製造会社:Ciba)1g、メチルエチルケトン(MEK)42gを混合して、アクリレート溶液を製造した。
【0095】
このアクリレート溶液に、S1分散溶液60g、S2分散溶液83.3gを混合して、コーティング組成物を製造した。
【0096】
後の工程は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0097】
実施例8
AZO粒子分散液CX−610M(製造会社:Nissan、固形分60%)20g、ジペンタエリスリトールペンタクリレート(DPHA)10g、光開始剤Irgacure184(製造会社:Ciba)0.5g、エタノール100gを混合して、帯電防止層組成物を製造した。
【0098】
前記帯電防止層組成物を、実施例1で使用したポリイミド基材の一面上に塗布し、光硬化して、厚さ1μm、表面抵抗10Ω/sqの帯電防止層を形成した。
【0099】
前記帯電防止層の上面と、帯電防止層が形成されていない基材の他の一面に、実施例1のコーティング組成物を塗布し、光硬化することによって、それぞれ6μmの厚さのコーティング層を形成した。
【0100】
実施例9
まず、実施例1と同様の過程でポリイミド基材の両面にコーティング層を形成した。
【0101】
中空シリカ分散液Thrulya4320(製造会社:触媒化成、固形分20%)22g、ジペンタエリスリトールペンタクリレート(DPHA)4g、光開始剤Irgacure184(製造会社:Ciba)0.5g、含フッ素化合物RS907(製造会社:DIC、固形分30%)3gを混合して、低屈折率層組成物を製造した。
【0102】
前記低屈折率層組成物をコーティング層の一面上に塗布した後、光硬化して、厚さ120nm、平均反射率2%の低屈折率層を形成した。
【0103】
比較例1
実施例1において、メチルエチルケトンを55gとし、コーティング組成物にシリカ粒子を含まないことを除けば、実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0104】
比較例2
実施例1において、メチルエチルケトンを12gとし、シリカ粒子S4(d10=12nm、d50=17nm、d90=21nmであり、アクリレートシランカップリング剤で表面改質される)がMEKに40重量%分散している溶液(以下、S4分散溶液)のみを112.5g用いたことを除けば、実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0105】
比較例3
実施例1において、メチルエチルケトンを35gとし、S1分散溶液のみを110g含むことを除けば、実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0106】
比較例4
実施例1において、S3分散溶液を125g、S4分散溶液を25g用い、別途のメチルエチルケトン溶媒を含まないことを除けば、実施例1と同様の方法でコーティング層を形成した。
【0107】
比較例5
ASTM D882により測定した弾性モジュラス値が3.1GPaのポリイミド基材(大きさ:20cmx30cm、厚さ:35μm)を用いたことを除けば、残りの工程は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0108】
比較例6
ASTM D882により測定した弾性モジュラス値が4.2GPaのポリエチレンテレフタレート基材(大きさ:20cmx30cm、厚さ:250μm)を用いたことを除けば、残りの工程は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0109】
比較例7
比較例3において、MU9800とMU9020を用いず、6官能のポリエステルアクリレート系バインダーのPS610(製造会社:MIWON、Mw=5,400g/mol、アクリレート基当量=900g/mol)70gを用いたことを除けば、残りの工程は比較例3と同様にしてコーティング層を形成した。
【0110】
前記実施例1〜7および比較例1〜7のコーティング層の主要成分を、下記表1および2にそれぞれまとめた。
【0111】
実施例1〜4のコーティング層に含まれている全体無機微粒子の粒径に応じた分布グラフを図2に、比較例2〜4のコーティング層に含まれている全体無機微粒子の粒径に応じた分布グラフを図3に示した。
【0112】
実施例および比較例において、無機微粒子の粒径分布(d10、d50、d90)は、Malvern Zetasizer Nano−ZS90を用いて分散溶液状態で測定し、粒径に応じた分布(size distribution by number)として求めた。
【表1】
【表2】
【0113】
*表1および2で、無機微粒子の含有量は、溶媒に分散した無機微粒子の重量%に応じて溶媒を除いた無機微粒子(S1〜S4)のみの純重量(net weight)で表した。
【0114】
<実験例>
【0115】
<測定方法>
【0116】
1)鉛筆硬度
鉛筆硬度測定器を用いて、測定標準JIS K5400−5−4により750gの荷重、45度の角度で3回往復した後、キズのない最大硬度を確認した。
【0117】
2)透過率およびヘイズ
分光光度計(機器名:COH−400)を用いて、透過率およびヘイズを測定した。
【0118】
3)屈曲テスト
測定標準JIS K5600−5−1の方法により各フィルムを多様な直径の円筒形マンドレルに挟んで巻いた後、長さ3mm以上のクラックが発生しない最小直径を測定した。
【0119】
4)曲げ耐久性テスト
図1は、本発明の一実施例によるフィルムに対して、曲げ耐久性および曲げ安定性テストを実施する方法を概略的に示す図である。
【0120】
実施例および比較例の各フィルムに対して裁断するが、エッジ(edge)部位の微細クラックを最小化するように、80x140mmの大きさにレーザ裁断した。測定装備上にレーザ裁断されたフィルムを載せて、折り畳まれる部位の間隔が4mmとなるようにして、常温でフィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んだり広げたりを連続動作(フィルムが折り畳まれる速度は1.5秒あたり1回)で1万回繰り返した。
【0121】
1万回繰り返し後、フィルムを引き剥がした後、長さ3mm以上のクラックが発生したか否か(OK、NG)を観察した。クラックが発生しなかった場合、再び1万回の曲げおよびクラック発生の有無を観察するのを繰り返して、クラックの発生しない最大繰り返し回数を測定した。10万回繰り返し時までクラックが発生しなかった場合、曲げ耐久性良好と判断した。
【0122】
5)曲げ安定性テスト
曲げ耐久性テストにおけるのと同様に、実施例および比較例の各フィルムに対して裁断するが、エッジ(edge)部位の微細クラックを最小化するように、80x140mmの大きさにレーザ裁断した。
【0123】
固定装置上にレーザ裁断されたフィルムを載せて、折り畳まれる部位の間隔が4mmとなるように固定した。フィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んだ状態で常温で24時間放置した後、フィルムを剥がして折り畳まれた部分が下へいくようにひっくり返し、その上に口状のSUS構造物を載せてフィルムを固定した。非接触式表面屈曲度測定装備(PLUTO681((株)DUKIN:605nmのレーザ使用、resolution0.1μm)でフィルムの形状を3Dイメージ測定し、底から浮き上がった高さZの最大値を曲げ安定性の物性として測定した。
【0124】
6)回復性テスト
フィルムの回復性を測定するために、曲げ耐久性および安定性の物性を測定したフィルムをそれぞれ常温で1時間放置後、5)曲げ安定性テスト方法により再び浮き上がった高さZの最大値を測定し、折り畳まれた部分の外観の変化を肉眼観察した。
【0125】
Zが0.1mm以下であり、折り畳まれた部分の痕跡などの外観の変化が不十分であればOK、Zが0.1mmを超えたり、折り畳まれた部分に痕跡が多く残るとNGと表した。
【0126】
前記物性の測定結果を、下記表3および4に示した。
【表3】
【表4】
【0127】
前記表3〜4を参照すれば、本発明のフィルムは、各物性においてすべて良好な特性を示し、特に高硬度をはじめとして曲げテストで優れた耐久性および安定性を示した。一方、比較例のフィルムは、鉛筆硬度が低下したり、またはフレキシブルフィルム用に適するだけの曲げ耐久性および安定性を示すことができなかった。
【要約】
本発明は、フレキシブルプラスチックフィルムに関し、より詳細には、高硬度を示しながらも、優れた柔軟性を有するフレキシブルプラスチックフィルムに関する。本発明のフレキシブルプラスチックフィルムによれば、柔軟性、屈曲性、高硬度、耐擦傷性、高透明度を示し、繰り返し曲げられたり長時間折り畳まれた時もフィルムが損傷する恐れが少なく、フレキシブルモバイル機器、ディスプレイ機器、各種計器板の前面板、表示部などに有用に適用することができる。
図1
図2
図3