特許第6384808号(P6384808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384808
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】再生琥珀の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/10 20060101AFI20180827BHJP
   B29K 96/00 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   B29C47/10
   B29K96:00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-72242(P2014-72242)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193133(P2015-193133A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502391079
【氏名又は名称】久慈琥珀株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592128788
【氏名又は名称】ポーライト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】新田 久男
(72)【発明者】
【氏名】小山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 紀之
(72)【発明者】
【氏名】島田 登
(72)【発明者】
【氏名】大隈 厚士
(72)【発明者】
【氏名】岩▲さき▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】木村 英睦
(72)【発明者】
【氏名】清水 友治
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−010913(JP,A)
【文献】 特開2000−111408(JP,A)
【文献】 特開2009−012451(JP,A)
【文献】 特開平04−362057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
A44C 1/00− 3/00
A44C 7/00−27/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPlus/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
琥珀の小片及び/または該小片を粉砕した粉粒体からなる原材料を加熱及び加圧して成形する再生琥珀の製造方法において、
上記琥珀の小片を、色相,明度,彩度の少なくとも何れかの色の属性に従って複数種類の小片群に区分けする区分け工程と、該区分け工程での区分けされた各小片群に対応して得られる複数種類の原材料の集団から選択的に所要量の原材料を抽出する抽出工程と、該抽出工程で抽出された複数種類の原材料を混合して成形する成形工程とを備え、
上記区分け工程の後に、区分けした小片群毎に該小片群を粉砕して粉粒体からなる区分けされた複数の原材料の集団にする粉砕工程を設け、
上記成形工程において、加熱されるコンテナ内に原材料を入れてダイの穴からこの原材料を押出す押出し成形機を用い、該コンテナ内に、複数種類の原材料を各々押出し方向に沿って層状に収容し、それから、上記ダイを上記コンテナ内に押し込み、該ダイの穴から原材料を押出し、該複数種類の原材料を成形しながら不均一に混合して表面にマーブル模様を発現させることを特徴とする再生琥珀の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、琥珀の製品加工時などに生ずる琥珀の小片を用いて、大きな塊の再生琥珀にする再生琥珀の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、琥珀の加工において、加工に供しない小さい琥珀、あるいは、加工の際に生じる製品から分離した小片は、そのままでは製品化することがほとんどできないことから、これを、大きな塊にし、再生琥珀として再利用することを行っている。
従来、この再生琥珀の製造方法としては、例えば、特公平6−20765号公報に掲載された技術が知られている。これは、製品化できない琥珀を周知の粉砕機等を使用して粉粒状にし、この粉粒状の琥珀を原材料として、成形機によって加熱及び加圧して成形することにより再生琥珀を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−20765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、琥珀の原石は、色相が所謂琥珀色といわれる茶系の色が主流であるが、中には白っぽいものや黒っぽいものがあり、また、明度にも濃淡があって明るいもの暗いものがあり、色彩も透明感が強いもの弱いものなど種々ある。また、濃い部分と薄い部分の両方を含んだ琥珀の中には両方の色味が強くなりマーブル模様を呈するものもある。しかしながら、上記従来の製造方法においては、琥珀の小片を粉砕した粉粒状のものを混合して成形しているので、色が同じようになってしまい、原石のような種々の色や模様を発現させることができないなど、多様性に劣るという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、種々の色や模様を発現させることができるようにして、バラエティに富んだ再生琥珀を得ることのできる再生琥珀の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するための本発明の再生琥珀の製造方法は、琥珀の小片及び/または該小片を粉砕した粉粒体からなる原材料を加熱及び加圧して成形する再生琥珀の製造方法において、上記琥珀の小片を、色相,明度,彩度の少なくとも何れかの色の属性に従って複数種類の小片群に区分けする区分け工程と、該区分け工程での区分けされた各小片群に対応して得られる複数種類の原材料の集団から選択的に所要量の原材料を抽出する抽出工程と、該抽出工程で抽出された複数種類の原材料を混合して成形する成形工程とを備えた構成としている。
【0006】
これにより、区分け工程において、琥珀の小片を、色相,明度,彩度の少なくとも何れかの色の属性に従って、例えば、明度(濃淡)の度合いを複数段階に設定し、この設定に従って複数種類の小片群に区分けする。それから、この区分けした小片群をそのまま原材料とし、あるいは、粉砕して粉粒体としたものを原材料とし、抽出工程において、これらの複数種類の原材料の集団から、再生琥珀に発現させようとする色及び/または模様に対応して、例えば、明度に対応して、選択的に所要量の原材料を抽出する。この場合、全ての原材料の集団から夫々必要量を抽出しても良く、また、選択されるいずれか複数の原材料の集団から夫々必要量を抽出しても良い。そして、成形工程において、これら抽出された複数種類の原材料を混合して加熱及び加圧して成形する。この場合、混合は、成形する前に予め行っても良く、また、成形しながら混合させるようにしても良い。成形は適宜の成形機を用いる。この成形機内で成形しながら混合させる手法をとると、例えば、表面にマーブル模様(墨流しの方法で作成される大理石の表面に似た模様)を発現させた再生琥珀が得られる。
このため、複数種類に区分けした原材料の抽出の仕方によって、再生琥珀に発現される色及び/または模様を種々に変え、調整することができ、この結果、所望の原石に近い色合いや模様の再生琥珀を得、あるいは、原石にはない新しい色合いや模様の再生琥珀を得ることができ、バラエティに富んだ再生琥珀を得ることができる。
【0007】
そして、必要に応じ、上記区分け工程の後に、区分けした小片群毎に該小片群を粉砕して粉粒体からなる区分けされた複数の原材料の集団にする粉砕工程を設けた構成としている。粉粒体は、例えば、粒径が10mm以下のものである。成形をやり易くするためには、粒径を1mm以下、望ましくは、粒径を200μm以下、より望ましくは、100μm以下に粉砕する。これにより、区分けされた複数の原材料毎に、各原材料の色が均一化され、抽出による色の調合を容易にすることができる。
【0008】
また、必要に応じ、上記成形工程において、複数種類の原材料を不均一(不完全)に混合して表面にマーブル模様を発現させる構成としている。より一層、バラエティに富んだ再生琥珀を得ることができる。
【0009】
この場合、必要に応じ、上記成形工程において、加熱されるコンテナ内に原材料を入れてダイの穴からこの原材料を押出す押出し成形機を用い、該コンテナ内に、複数種類の原材料を各々押出し方向に沿って層状に収容し、それから、上記ダイを上記コンテナ内に押し込み、該ダイの穴から原材料を押出し、該複数種類の原材料を成形しながら不均一に混合して表面にマーブル模様を発現させる構成としている。マーブル模様を確実に形成することができる。
【0010】
そしてまた、上記目的を達成するための本発明の再生琥珀は、琥珀の小片及び/または該小片を粉砕した粉粒体からなる原材料を加熱及び加圧して成形される再生琥珀において、上記の再生琥珀の製造方法により製造された構成としている。上記と同様の作用,効果を奏する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数種類に区分けした原材料の抽出の仕方によって、再生琥珀に発現される色及び/または模様を種々に変え、調整することができ、この結果、所望の原石に近い色合いや模様の再生琥珀を得、あるいは、原石にはない新しい色合いや模様の再生琥珀を得ることができ、バラエティに富んだ再生琥珀を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る再生琥珀の製造方法を示す工程図である。
図2】本発明の実施の形態に係る再生琥珀の製造方法において、マーブル模様を発現させた再生琥珀を製造する成形工程の状態を示し、(a)は押出し成形機に原材料を充填した状態を示す断面図、(b)は押出し成形機により再生琥珀を押出し成形している状態の断面図である。
図3】本発明の実施例に係り、琥珀の小片を3種類の小片群(グループA,B,C)に区分けした状態を示す写真図である。
図4】本発明の実施例に係り、3種類の小片群(グループA,B,C)を夫々粉砕機で粉砕した粉粒体の状態を示す写真図である。
図5】本発明の実施例に係り、マーブル模様を発現させた再生琥珀の一例を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る再生琥珀の製造方法及び再生琥珀について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る再生琥珀の製造方法は、琥珀の小片S及び/または小片Sを粉砕した粉粒体Fからなる原材料Wを、加熱及び加圧して成形して再生琥珀Kを製造する方法であり、基本的には、琥珀の小片Sを区分けする区分け工程(1)と、区分けされた琥珀の各小片群を粉砕して粉粒体Fにする粉砕工程(2)と、粉粒体Fからなる原材料Wを抽出する抽出工程(3)と、抽出された原材料W(F)を成形する成形工程(4)とを備えている。以下、各工程について説明する。
【0014】
(1)区分け工程
本発明が対象とする再生に係る琥珀は、加工に供しない小さい琥珀、あるいは、加工の際に生じる製品から分離した琥珀の小片などであるが、これらの琥珀の小片Sには、色相として例えば白っぽいものや黒っぽいものがあり、また、明度にも濃淡があって明るいもの暗いものがあり、色彩も透明感が強いもの弱いものなど種々ある。区分け工程においては、このような琥珀の小片Sを、色相,明度,彩度の少なくとも何れかの色の属性に従って複数種類の小片群に区分けする。図1の例では、明度(濃淡)の度合いを複数段階(3段階)に設定し、この設定に従って、目視によって、琥珀の小片を複数種類(3種類)の小片群(グループA,B,C)に区分けした。
【0015】
(2)粉砕工程
区分け工程の後に、区分けした小片群毎にこの小片群を粉砕して粉粒体Fからなる区分けされた複数の原材料Wの集団にする。実施の形態では、周知の粉砕機を用い、例えば、粒径を1mm以下、望ましくは、粒径を200μm以下、より望ましくは、100μm以下に粉砕する。これにより、原材料の色が均一化され、後述の抽出による色の調合を容易にすることができる。
【0016】
(3)抽出工程
上記に区分け工程での区分けされた各小片群に対応し、粉砕工程で粉砕されて得られる複数種類の原材料W(F)の集団から選択的に所要量の原材料W(F)を抽出する。再生琥珀に発現させようとする色及び/または模様に対応して、例えば、明度に対応して、選択的に所要量の原材料W(F)を抽出する。この場合、3つの全ての原材料W(F)の集団から夫々必要量を抽出しても良く、また、選択されるいずれか2つの原材料の集団から夫々必要量を抽出しても良い。
【0017】
(4)成形工程
抽出工程で抽出された複数種類の原材料W(F)を混合して成形する。この場合、混合は、成形する前に予め行っても良く、また、成形しながら混合させるようにしても良い。成形は適宜の成形機を用いる。例えば、押出し成形機により、成形温度を200℃前後に設定し、成形圧力を数百MPa(例えば400MPa)に設定し、これらの粉粒体が一体化するように成形する。混合を成形する前に行うが場合には、均一の色合いの再生琥珀Kが得られる。
【0018】
また、成形機内で成形しながら混合させる手法をとることもできる。この手法をとると、複数種類の原材料を不均一(不完全)に混合して表面にマーブル模様(墨流しの方法で作成される大理石の表面に似た模様)を発現させた再生琥珀が得られる。詳しくは、この手法は、図2に示すような押出し成形機Tを用いる。この押出し成形機Tは、例えば、加熱されるコンテナ1内に原材料W(F)を入れ、ダイ2をコンテナ1内に押し込んでこのダイ2の穴3からこの原材料W(F)を押出すものである。
【0019】
この押出し成形機Tを用い、先ず、図2(a)に示すように、コンテナ1内に、複数種類の原材料W(F)を各々押出し方向に沿って層状に収容し、それから、図2(b)に示すように、ダイ2をコンテナ1内に押し込む。これにより、ダイ2の穴3からこの原材料W(F)を押出すと、各原材料W(F)は層状になって加熱されて軟化若しくは溶融しているので、ダイ2の穴3から不均一(不完全)に混合して押出し出されていき、表面にマーブル模様を発現させた再生琥珀Kが得られる。
【0020】
このようにして得られた再生琥珀Kにおいては、複数種類に区分けした原材料W(F)の抽出の仕方によって、再生琥珀Kに発現される色及び/または模様を種々に変え、調整することができ、この結果、所望の原石に近い色合いや模様の再生琥珀Kを得、あるいは、原石にはない新しい色合いや模様の再生琥珀Kを得ることができ、バラエティに富んだ再生琥珀Kを得ることができる。
【実施例】
【0021】
次に、実施例を示す。岩手県久慈で産出する“久慈産琥珀”を用い、加工に供しない小さい琥珀、あるいは、加工の際に生じる製品から分離した琥珀の小片を対象とした。明度(濃淡)の度合いを3段階に設定し、この設定に従って、目視によって、これらの琥珀の小片を3種類の小片群(グループA,B,C)に区分けした。結果を図3に示す。小片群が明暗(濃淡)によって3段階に分かれていることが分かる。そして、各グループA,B,C毎に、小片群を粉砕し、原材料を得た。結果を図4に示す。原材料が、明暗(濃淡)によって3段階に分かれていることが分かる。この3種類の原材料を用いて、上記と同様の条件で、マーブル模様を発現させた再生琥珀を製造した。その一例を、図5に示す。マーブル模様が形成されたことがわかる。
【0022】
尚、上記の実施の形態においては、琥珀の小片Sの区分けを、明度に従って行ったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、白、茶、黒などの色相に従っても良く、あるいは、色の鮮やかさ,透明感などの彩度に従っても良く、適宜変更して差支えない。また、区分けの数も、上記の3段階に限定されるものではなく、2段階、あるいは、4段階以上に設定してよく、適宜変更して差支えない。また、抽出工程(3)による原材料W(F)の抽出も、再生琥珀に発現させたい色や模様に対応させて、適宜行ってよいことは勿論である。更に、上記実施の形態では、粉砕工程(2)を設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、粉砕工程(2)を設けずに、小片S自体を原材料Wとして、この原材料W(S)同士を接合させる成形を行っても良い。この場合も、斬新な模様などを表出できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
岩手県久慈で産出する琥珀“久慈産琥珀”は約8,500万年前(中生代白亜紀)の樹脂の化石であり、また、海外で産出する琥珀は、約2,000万年前〜4,500万年前(新生代古第三紀)のものが大半を占め、極めて価値が高い。従来の再生琥珀においては、色などの多様性に劣っていたが、本発明によれば、再生琥珀に発現される色及び/または模様を種々に変え、調整することができ、これにより、幅広い製品展開が容易となり、琥珀の有効利用率向上、琥珀の価値向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
(1)区分け工程
(2)粉砕工程
(3)抽出工程
(4)成形工程
K 再生琥珀
S 小片
F 粉粒体
W 原材料
T 押出し成形機
1 コンテナ
2 ダイ
3 穴
図1
図2
図3
図4
図5