特許第6384919号(P6384919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井造船株式会社の特許一覧

特許6384919ハイドレート用掘削装置及びハイドレート掘削方法
<>
  • 特許6384919-ハイドレート用掘削装置及びハイドレート掘削方法 図000002
  • 特許6384919-ハイドレート用掘削装置及びハイドレート掘削方法 図000003
  • 特許6384919-ハイドレート用掘削装置及びハイドレート掘削方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384919
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ハイドレート用掘削装置及びハイドレート掘削方法
(51)【国際特許分類】
   E21C 50/00 20060101AFI20180827BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   E21C50/00
   E21B43/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-237598(P2014-237598)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-98597(P2016-98597A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和則
(72)【発明者】
【氏名】横田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿仁
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 和之
(72)【発明者】
【氏名】丹 誠二
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−13380(JP,A)
【文献】 特開2003−193787(JP,A)
【文献】 特開2011−052493(JP,A)
【文献】 特開2009−041301(JP,A)
【文献】 特開2005−330773(JP,A)
【文献】 特開2013−170374(JP,A)
【文献】 特開2003−262083(JP,A)
【文献】 特表2000−513061(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0193103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 50/00
E21B 43/00〜 43/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンハイドレートの存在する水底を掘削する掘削刃を有するハイドレート用掘削装置であって、
前記掘削刃の部分に流体を放出する流体放出部を備え、
前記流体放出部は、メタンガスが飽和状態まで溶けていない流体を前記掘削刃の部分に該流体が該掘削刃に直接接触するように放出することを特徴とするハイドレート用掘削装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイドレート用掘削装置において、
前記流体放出部は、前記流体を前記掘削刃の先端部の中心から該掘削刃の外周方向に向けて放出することを特徴とするハイドレート用掘削装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイドレート用掘削装置において、
前記掘削刃の部分に放出される流体は、該掘削刃の付近の水温より高温の流体であることを特徴とするハイドレート用掘削装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハイドレート用掘削装置において、
前記流体放出部は、前記放出する流体を加熱する加熱部を備え、
前記加熱部は、前記流体を掘削刃の付近の水温より高温に加熱して前記掘削刃の部分に放出することを特徴とするハイドレート用掘削装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のハイドレート用掘削装置において、
前記流体放出部は、前記掘削刃の回転軸に沿って配設された管を流路として前記流体を前記掘削刃の部分に放出することを特徴とするハイドレート用掘削装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のハイドレート用掘削装置において、
前記流体放出部は、前記掘削刃の回転軸の内部を流路として前記流体を前記掘削刃の部分に放出することを特徴とするハイドレート用掘削装置。
【請求項7】
メタンハイドレートの存在する水底を掘削刃によって掘削するハイドレート掘削方法であって、
メタンガスが飽和状態まで溶けていない流体を前記掘削刃の部分に該流体が該掘削刃に直接接触するように放出しつつ掘削することを特徴とするハイドレート掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンハイドレートの存在する海底や湖底等の水底を掘削する掘削刃を有するハイドレート用掘削装置及びハイドレート掘削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスハイドレートは、高圧、低温の生成条件下において、水素結合によって形成される水分子(ホスト分子)の籠状構造(クラスレートと称される場合もある)の内部に別の分子(ゲスト分子)が包み込まれてできる結晶である。高圧、低温のガスハイドレート生成条件を満たす海洋、湖等の水底下には、前記ゲスト分子として主にメタンガスが取り込まれたメタンハイドレートが存在することが分かっており、新たなエネルギーとして期待されている。
【0003】
海底や湖底等の水底のメタンハイドレートには、水深400m以深の水底表面に露出している表層型メタンハイドレートと、前記水底の更に地下において砂と交じり合った状態で存在する砂層型メタンハイドレートとがある。
水底のメタンハイドレートの存在状態の調査、或いはメタンハイドレートを採取する等の目的で、メタンハイドレートの存在する海底や湖底等の水底を掘削装置で掘削することが行われている。
【0004】
特許文献1には、硬い地盤が存在する場合であっても、確実に地盤及びメタンハイドレートを掘削でき、効率的にメタンハイドレートからメタンガスを生産することを目的とし、カッターヘッドを回転軸線周りに回転させ、カッターヘッドの掘削刃と反対側に設けられた導入室にメタン濃度が低い水を供給し、更に導入室内の水’を揚水してメタンガスを回収するメタンガス生産装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−84896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メタンハイドレートは、水深400m以上の深い水底においては、圧力及び温度がメタンハイドレートの生成条件を満たしているので、分解しないで存在している。しかし、掘削装置の掘削刃で掘削した場合、その掘削刃とメタンハイドレートとの接触部分では、大きな動摩擦抵抗による発熱等によって、僅かにメタンハイドレートの分解が起こる。その分解によってメタンガスと水が生じるが、その場所の平衡条件は生成側にあるので、直ちに生成反応が進んでメタンハイドレートが再生成する。その際、再生成したメタンハイドレートの一部又はほとんどが掘削刃の表面に付着する。
メタンハイドレートの付着が徐々に進んで付着量が増すと、掘削刃の回転が停止し、メタンハイドレートの掘削を継続することができなくなる問題が生じる場合がある。特許文献1においては、このような問題は全く考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、メタンハイドレートの存在する海底や湖底等の水底を掘削装置で掘削する際に、掘削刃の回転停止によって掘削が継続できなくなる虞を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、メタンハイドレートの存在する水底を掘削する掘削刃を有するハイドレート用掘削装置であって、前記掘削刃の部分に流体を放出する流体放出部を備え、前記流体放出部は、メタンガスが飽和状態まで溶けていない流体を前記掘削刃の部分に放出することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、「流体」とは、海洋であれば海水、湖であれば湖水が好ましいが、前記海水や湖水以外の他の淡水、真水、汽水等を含む意味で、本願明細書においては使われている。
【0010】
本態様によれば、流体放出部によって放出された流体によって掘削刃の表面がコーティングされた状態となり、メタンハイドレートが掘削刃の表面で生成して付着することを前記コーティングによって抑制することができる。
また、前記掘削刃の部分に放出される流体は、メタンガスが飽和状態まで溶けていない流体であるので、メタンハイドレートが掘削刃の表面で生成してもそれを前記不飽和状態の流体によって分解することができる。これにより、メタンハイドレートが掘削刃の表面で生成して付着することを効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係るハイドレート用掘削装置は、第1の態様において、前記流体放出部は、前記流体として水底付近の水を前記掘削刃の部分に放出することを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、前記流体放出部は、水底付近の水を前記掘削刃の部分に放出するので、ポンプ等の放出用動力源として低動力のものを用いて前記掘削刃の部分に水を放出することができ、コスト削減を図ることができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係るハイドレート用掘削装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記掘削刃の部分に放出される流体は、該掘削刃の付近の水温より高温の流体であることを特徴とするものである。
ここで「高温の流体」における「高温」とは、実用的な観点から、掘削刃の付近の水温は10℃程度、特に20℃程度の高温が好ましい。
【0014】
本態様によれば、前記掘削刃の部分に放出される流体として、該掘削刃の付近の水温より高温の流体を用いるので、メタンハイドレートが掘削刃の表面で生成してもそれを該高温の流体によって一層効果的に分解することができる。
【0015】
本発明の第4の態様に係るハイドレート用掘削装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記流体放出部は、前記水を連続放出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、前記流体放出部は、前記水を連続放出するように構成されているので、該流体によって掘削刃の表面がコーティングされた状態を安定して作り易く、以って、メタンハイドレートが掘削刃の表面で生成して付着することを一層効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の第5態様に係るハイドレート用掘削装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様において、前記流体放出部は、前記掘削刃の回転軸に沿って配設された管を流路として前記流体を前記掘削刃の部分に放出することを特徴とするものである。
【0018】
本態様によれば、前記流体放出部は、前記掘削刃の回転軸に沿って配設された管を流路として前記流体を前記掘削刃の部分に放出するので、該流体によって掘削刃の表面がコーティングされた状態を作る構造を容易に実現することができる。
【0019】
本発明の第6態様に係るハイドレート用掘削装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様において、前記流体放出部は、前記掘削刃の回転軸の内部を流路として前記流体を前記掘削刃の部分に放出することを特徴とするハイドレート用掘削装置。
【0020】
本態様によれば、前記流体放出部は、前記掘削刃の回転軸の内部を流路として前記流体を前記掘削刃の部分に放出するので、該流体によって掘削刃の表面がコーティングされた状態を作る構造を既存の回転軸を利用して容易に実現することができる。
【0021】
本発明の第7態様に係るハイドレート掘削方法は、メタンハイドレートの存在する水底を掘削刃によって掘削するハイドレート掘削方法であって、メタンガスが飽和状態まで溶けていない流体を前記掘削刃の部分に放出しつつ掘削することを特徴とするものである。
本態様によれば、第1の態様と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態1に係るハイドレート用掘削装置を用いた掘削初期の状態を示す概略側面図。
図2】本発明の実施形態1に係るハイドレート用掘削装置を用いた掘削後期の状態を示す概略側面図。
図3】本発明の実施形態2に係るハイドレート用掘削装置を用いた掘削初期の状態を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施形態1]
以下に、本発明の実施形態1に係るハイドレート用掘削装置について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
図1に示したように、実施形態1に係るハイドレート用掘削装置1は、メタンハイドレートMHの存在する海底2を掘削する掘削刃3と、この掘削刃3の部分に流体Lを放出する流体放出部4を備えている。図1においては、掘削対象が表層型のメタンハイドレートMHである場合を示したが、砂層型メタンハイドレートであってもよい。尚、湖底については海底2と同様の説明になるので、その説明は省略する。
【0024】
前記掘削刃3は回転軸5の下端に取り付けられている。該回転軸5の上端は掘削船6の回転動力伝達部7に回転可能に保持されている。回転軸5は回転動力伝達部7から回転力を受けて軸周り8に回転し、この回転によって下端の掘削刃3が回転してメタンハイドレートMHを掘削する。掘削刃としては、ドリル構造のものやカッタービットを備えた構造のもの等が挙げられる。
【0025】
前記流体放出部4は、本実施形態では、前記掘削刃3の回転軸5に沿って配設された管9を流路として前記流体Lを掘削刃3の部分に放出するように構成されている。該管9は、掘削刃3の掘削と共に掘進方向に一体に進行するように該掘削刃の上側に隣接して設けられている。
【0026】
前記流体放出部4は、メタンガスが飽和状態まで溶けていない流体Lを掘削刃3の部分に放出するように構成されている。
ここで、流体L中に溶けているメタンガスの濃度は、低い程良いと言えるが、実用的な観点から飽和状態の50%以下、特に10%以下が好ましい。
また、「掘削刃3の部分に放出」における「放出」とは、当該流体Lが流体放出部4の放出口10から出て周囲の海水と混ざらないように放出される状態とすることが好ましい。さらに、前記放出口10は該放出口10から流出した流体Lが掘削刃3先端部の中心から掘削刃3の外周方向に向けて放出されるのが好ましい。
また、当該流体Lが、掘削刃3と掘削されたメタンハイドレートの隙間を浸透して掘削刃3の側に浸み出る状態では、該掘削刃3の表面が流体Lによってコーティングされにくい。そのため、当該流体Lが流体放出部4の放出口10から出て直接掘削刃3の表面に接する状態とするのが好ましい。即ち、前記放出口10は該放出口10から流出した流体Lが掘削刃3に直接接触するように配置されるのが好ましい。
【0027】
流体放出部4は、本実施形態では、前記流体Lとして水底2付近の水を掘削刃3の部分に放出するように構成されている。即ち、海底2に置いた海水供給ポンプ11によって海底2付近の海水を流路ライン12を介して前記管9内に供給するように構成されている。図において、符号13は流路ライン12と管9との接続部を示す。また、符号16は掘削船6と海水供給ポンプ11を電気的に接続する接続線を示す。
このように海底2付近の海水(水)を利用するので、海水供給ポンプ11等の放出用動力源として低動力のものを用いて掘削刃3の部分に水を放出することができ、以ってコスト削減を図ることができる。
【0028】
メタンハイドレートMHの表層15の直上の海水は、メタンガスが飽和状態で溶けている場合が多い。そのため、本実施の形態では、海水供給ポンプ11は、メタンハイドレートMHの表層15の上ではなく、地盤14の上に置かれている。該海水供給ポンプ11がメタン濃度が飽和していない海水が存在する地盤14上に設置されることにより、前記低動力の海水供給ポンプ11によってメタン濃度の低い海水を掘削刃3の部分に容易に放出することができる。
また、海水供給ポンプ11の設置位置が、メタンハイドレートMHの掘削位置(掘削刃3の在る位置)から大きく離れた位置に置くことが可能になるので、該掘削刃3で掘削中にメタンハイドレートMH層が崩落した場合でも、当該海水供給ポンプ11がその崩落に巻き込まれる虞を低減することができる。
あるいは、海水供給ポンプ11を掘削位置(掘削刃3の在る位置)の近くに設置した状態で、取水ライン(メタン濃度の低い海水採取用)のみを伸ばして、メタン濃度の低い海水領域に取水口を設置することもできる。
【0029】
尚、海水供給ポンプ11の動力が大きくなることは問題にせず、メタン濃度の低い海水を掘削刃3の部分に放出することだけを優先する場合は、海底2付近(地盤14付近)の海水ではなく、海面18付近又は海面18寄りの海水を利用してもよい。また、海水以外の他の淡水、真水、汽水等をメタン濃度の低いものであれば利用してもよい。
【0030】
前記「水底2付近の水」における「水底付近」とは、本願明細書においては、掘削刃3が位置する深さの所の水圧と大きく変わらない領域を意味する。よって、図示のような海底(水底)2に限らず、該海底2よりも上方であって例えば50m程度浅い所の海水(水)を利用してもよい。この場合は、海水供給ポンプ11を浮き具や吊り具によって海中に浮かせるようにする。
そしてこの場合は、海底2からある程度離れるので、その離れた分だけ海水中のメタン濃度も低下する傾向が出てくる。よって、該海水供給ポンプ11を浮かせる位置として、メタンハイドレートMH層の上方の位置であってもよい。
【0031】
更に本実施形態では、前記流体放出部4は、前記海水(水)を切削刃3に対して連続放出するように構成されている。この連続放出構造により、該海水(水)によって掘削刃3の表面がコーティングされた状態を安定して作り易くなる。これにより、メタンハイドレートが掘削刃3の表面で生成して付着することを一層効果的に抑制することができる。
尚、連続放出は、流体Lの流出状態である流速や流量が一定の場合と、それらを適宜変化させる場合の両方が選択できるようにすることが好ましい。
また、連続放出ではなく、放出と停止の繰り返しを可能な構成にしてもよい。
【0032】
次に、上記ハイドレート用掘削装置1によるハイドレート掘削方法について図1図2に基いて説明しつつ、その作用について説明する。
海水供給ポンプ11を海底2の地盤14の上に設置する。そして、該海水供給ポンプ11によって海底付近の海水であってメタン濃度の低い海水である流体Lを掘削刃3の部分に放出しつつ該掘削刃3を回転させてメタンハイドレートMHの掘削を開始する。図1は掘削初期の状態を、そして図2は掘削後期の状態を示し、掘削刃3の掘進方向に掘削孔17が形成される。掘削深さは例えば100メートル、掘削径は数十センチメートルである。
【0033】
本実施形態によれば、流体放出部4の放出口10から放出された海水である流体Lによって掘削刃3の表面がコーティングされた状態となり、メタンハイドレートが掘削刃3の表面で生成して付着することを前記コーティングによって抑制することができる。
また、前記掘削刃3の部分に放出される海水である流体Lは、メタンガスが飽和状態まで溶けていない流体Lであるので、メタンハイドレートが掘削刃3の表面で生成してもそれを前記不飽和状態の流体Lによって分解することができる。これにより、メタンハイドレートが掘削刃3の表面で生成して付着することを効果的に抑制することができる。
【0034】
[実施形態2]
次に、図3を用いて、実施形態2に係るハイドレート用掘削装置1について説明する。本実施形態2は実施形態1と構成要素の多くが共通しているので、その異なる構成要素の部分について説明し、共通部分については同一符号を付してその説明は省略する。
本実施形態2では、前記掘削刃3の部分に放出される流体は、該掘削刃3の付近の水温より高温の流体であることを特徴とする。前記流路ライン12に加熱部19が設けられ、該加熱部19によって前記高温の流体が作られる。ここで「高温の流体」における「高温」とは、実用的な観点から、掘削刃の付近の水温は10℃程度、特に20℃程度の高温が好ましい。
【0035】
本実施形態2によれば、前記掘削刃3の部分に放出される流体Lとして、該掘削刃3の付近の水温より高温の流体Lを用いるので、メタンハイドレートが掘削刃3の表面で生成してもそれを該高温の流体Lによって一層効果的に分解することができる。
【0036】
[実施形態3]
実施形態3に係るハイドレート用掘削装置1は、前記流体放出部4は、前記掘削刃3の回転軸5の内部を流路として前記流体Lを前記掘削刃3の部分に放出するように構成されている(図示を省く)。本実施形態でも流出口は、前記実施形態1と同様に、該放出口から流出した流体Lが掘削刃3に直接接触するように構成されるのが好ましい。
【0037】
本実施形態3によれば、前記流体放出部4は、前記掘削刃3の回転軸5の内部を流路として前記流体Lを前記掘削刃3の部分に放出するので、該流体Lによって掘削刃3の表面がコーティングされた状態を作る構造を既存の回転軸を利用して容易に実現することができる。
【0038】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、海底の表層型メタンハイドレートを掘削する場合を説明したが、砂層型メタンハイドレートに対しても同様に適用することができる。砂層型メタンハイドレートは海底に地盤の下の数百m程度の深さに存在している場合が多い。そのため、表層型メタンハイドレートの掘削と異なり、砂層型メタンハイドレートでは、掘削位置近くの海水はメタン濃度が低いので、海水供給ポンプ11を掘削位置から十数メートル離れた近くの位置の地盤の上に設置することができる。
【0039】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 ハイドレート用掘削装置、2 水底(海底、湖底)、3 掘削刃、
4 流体放出部、 5 回転軸、6 掘削船、7 回転動力伝達部、
8 軸周り、9 管、10 放出口、11 海水供給ポンプ、
12 流路ライン、13 接続部、14 地盤、15 表層、16 接続線、
17 掘削孔、18 海面、19 加熱部
図1
図2
図3