(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ガス送出工程にある前記吸着塔から送出されて前記第1ガス導入工程にある前記吸着塔に導入されるガス量を、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に多くする請求項1に記載のヘリウムガスの精製方法。
前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程を実行すると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程を実行する請求項1または2に記載のヘリウムガスの精製方法。
前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガス量を、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に少なくする請求項3に記載のヘリウムガスの精製方法。
前記オフガスが前記原料ヘリウムガスとしてリサイクルされるように、前記原料ヘリウムガスの前記吸着塔それぞれへの導入流路に前記オフガスを導く請求項1〜5の中の何れか1項に記載のヘリウムガスの精製方法。
前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程が実行されると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程が実行されるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御される請求項7〜9の中の何れか1項に記載のヘリウムガスの精製システム。
前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程が実行されると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程が実行されるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御され、
前記連通流路を流れるガス流量を調節する流量制御弁を備え、
前記流量制御弁は、流量調節動作ができるように流量調節用アクチュエータを有する自動弁とされると共に前記制御装置に接続され、
前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度を検出すると共に前記制御装置に接続されるセンサを備え、
前記洗浄工程の予め定めた一定の実行時間が前記制御装置に記憶され、
前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガスの前記連通流路における流量と、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、前記制御装置に記憶され、
前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガス量が、前記センサにより検出されたヘリウム濃度が高い程に少なくなるように、前記制御装置により記憶された前記実行時間だけ前記洗浄工程を実行するため前記開閉弁が制御されると共に、前記対応関係に基づき前記流量制御弁により前記連通流路の開度が変更される請求項7に記載のヘリウムガスの精製システム。
前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程が実行されると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程が実行されるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御され、
前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度を検出すると共に前記制御装置に接続されるセンサを備え、
前記洗浄工程の実行時間と、前記原料ヘリウムガスにおけるヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、前記制御装置に記憶され、
前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガス量が、前記センサにより検出されたヘリウム濃度が高い程に少なくなるように、前記制御装置により前記対応関係に基づき前記洗浄工程の実行時間が変更される請求項7に記載のヘリウムガスの精製システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヘリウムガスは貴重であることから、不純物ガスを含む原料ヘリウムガスを精製する際に回収率を向上することが望まれる。しかし、特許文献1に記載のような圧力スイング吸着法によれば、ヘリウムガスを高純度に精製した場合、オフガスとして排出されるヘリウムガスが多くなり、ヘリウムガスの回収率が低下する。
また、吸着塔の内部圧力差の低減の際に、吸着工程後であって脱着工程前の吸着塔の内部ガスを、脱着工程後であって昇圧工程前の吸着塔に導入することで、ヘリウムガスの回収率を向上できる。しかし、特許文献2に記載のように、精製処理サイクル毎に吸着塔の内部圧力差の低減を複数回行っても、回収率を十分に向上できなかった。
さらに、真空脱着工程により吸着剤の性能を回復して回収率を向上できるが、真空脱着工程による回収率の向上度は僅かなものであった。
そのため、従来技術によれば、ヘリウムガスを小規模な精製システムで高純度に精製する場合に回収率を向上するのが困難であるという問題があった。本発明は、圧力スイング吸着法を用いる従来技術の問題を解決できるヘリウムガスの精製方法と精製システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の知見による。
圧力スイング吸着法においては、吸着塔の内部圧力差の低減による回収率の向上度と、真空脱着工程による回収率の向上度は、それぞれ僅かなものである。そのため従来は、吸着塔の内部圧力差の低減を複数回実行することと、真空脱着工程とを組み合わせても、回収率は大幅に向上しないと考えられていた。また、その組み合わせにより精製に要する時間が長くなり、精製システムが複雑になるため、回収率が僅かに向上するというメリットよりも精製コストが増大するというデメリットが大きいと考えられていた。よって、従来の圧力スイング吸着法を用いたヘリウムガスの精製方法においては、吸着塔の内部圧力差の低減を複数回実行することと、真空脱着工程の実行とが組み合わされることはなかった。
このような従来の技術水準下において、そのような組み合わせを行った場合の回収率の向上度が、吸着塔の内部圧力差の低減を複数回実行することによる回収率の向上度と、真空脱着工程による回収率の向上度とを単に合計したよりも大きくなり、相乗効果を奏することを本件発明者は見い出して本発明に至った。
【0009】
本発明によるヘリウムガスの精製方法は、複数の吸着塔を有する圧力スイング吸着装置を用いて、不純物ガスを含む原料ヘリウムガスを精製する際に、前記吸着塔それぞれに、不純物ガスをヘリウムガスに優先して吸着する吸着剤を収納し、前記吸着塔それぞれに前記原料ヘリウムガスを順次導入し、前記吸着塔それぞれにおいて、導入された前記原料ヘリウムガスに含まれる不純物ガスを前記吸着剤に加圧下で吸着させると共に、前記吸着剤に吸着されない精製ヘリウムガスを排出する吸着工程と、前記吸着剤から不純物ガスを脱着してオフガスとして排出する脱着工程と、内部圧力を上昇させる昇圧工程とを順次実行する。前記吸着工程後であって前記脱着工程前の状態にある前記吸着塔の何れかから内部ガスを送出する第1ガス送出工程を実行すると同時に、その送出された内部ガスを前記脱着工程後であって前記昇圧工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかに導入する第1ガス導入工程を実行する。前記第1ガス送出工程後であって前記脱着工程前の状態にある前記吸着塔の何れかから内部ガスを送出する第2ガス送出工程を実行すると同時に、その送出された内部ガスを前記脱着工程後であって前記第1ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかに導入する第2ガス導入工程を実行する。前記脱着工程において、前記吸着塔の内部を真空ポンプにより大気圧未満に減圧する。
【0010】
本発明方法によれば、第1ガス送出工程にある吸着塔から送出される内部ガスが第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されることで、両吸着塔の内部圧力差が低減される。また、第2ガス送出工程にある吸着塔から送出される内部ガスが第2ガス導入工程にある吸着塔に導入されることで、両吸着塔の内部圧力差が低減される。すなわち、精製処理サイクル毎に吸着塔の内部圧力差の低減を2回行うことができる。
吸着塔の内部圧力差の低減により、第1、第2ガス送出工程にある吸着塔の内部ガスが、第1、第2ガス導入工程にある吸着塔に導入されるので、その内部ガスに含まれる不純物ガスを吸着剤に吸着させ、吸着剤に吸着されない精製ヘリウムガスを回収できる。また、脱着工程において吸着塔の内部を真空ポンプにより大気圧未満に減圧することで、真空脱着工程を実行できる。真空脱着工程により吸着剤の性能を回復できる。
すなわち、精製処理サイクル毎に吸着塔の内部圧力差の低減を2回実行し、且つ、真空脱着工程により吸着剤の性能を回復することで、相乗効果によりヘリウムガスの回収率を大幅に向上できる。
前記第1ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力と前記第1ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力との差は、前記第1ガス送出工程と前記第1ガス導入工程の完了時になくす必要はないが、その差をなくして両内部圧力を均等化してもよい。また、前記第2ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力と前記第2ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力との差は、前記第2ガス送出工程と前記第2ガス導入工程の完了時になくす必要はないが、その差をなくして両内部圧力を均等化してもよい。
【0011】
本発明によるヘリウムガスの精製システムは、複数の吸着塔を有する圧力スイング吸着装置を備え、前記吸着塔それぞれに、不純物ガスをヘリウムガスに優先して吸着する吸着剤が収納される。前記圧力スイング吸着装置は、前記吸着塔それぞれに前記原料ヘリウムガスを導入するための原料ガス導入流路と、前記吸着塔それぞれから精製ヘリウムガスを排出するための精製ガス流路と、前記吸着塔それぞれからオフガスを排出するためのオフガス流路と、前記吸着塔の何れかと別の何れかとを互いに連通させるための連通流路と、前記吸着塔それぞれと前記原料ガス導入流路との間を個別に開閉する原料ガス導入路開閉弁と、前記吸着塔それぞれと前記精製ガス流路との間を個別に開閉する精製ガス路開閉弁と、前記吸着塔それぞれとオフガス流路との間を個別に開閉するオフガス路開閉弁と、前記吸着塔それぞれと前記連通流路との間を個別に開閉する連通路開閉弁とを有する。前記開閉弁それぞれは、個別に開閉動作ができるように開閉用アクチュエータを有する自動弁とされると共に制御装置に接続される。前記吸着塔それぞれにおいて、導入された前記原料ヘリウムガスに含まれる不純物ガスを前記吸着剤に加圧下で吸着させると共に、前記吸着剤に吸着されない精製ヘリウムガスを排出する吸着工程と、前記吸着剤から不純物ガスを脱着してオフガスとして排出する脱着工程と、内部圧力を上昇させる昇圧工程とが順次実行されるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御される。前記吸着工程後であって前記脱着工程前の状態にある前記吸着塔の何れかから内部ガスを送出する第1ガス送出工程を実行すると同時に、その送出された内部ガスを前記脱着工程後であって前記昇圧工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかに導入する第1ガス導入工程を実行するため、前記第1ガス送出工程にある前記吸着塔の何れかの内部と、前記第1ガス導入工程にある前記吸着塔の別の何れかの内部とが通じるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御される。前記第1ガス送出工程後であって前記脱着工程前の状態にある前記吸着塔の何れかから内部ガスを送出する第2ガス送出工程を実行すると同時に、その送出された内部ガスを前記脱着工程後であって前記第1ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかに導入する第2ガス導入工程を実行するため、前記第2ガス送出工程にある前記吸着塔の何れかの内部と、前記第2ガス導入工程にある前記吸着塔の別の何れかの内部とが通じるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御される。前記脱着工程にある前記吸着塔の内部を大気圧未満に減圧する真空ポンプを備える。
本発明システムによれば本発明方法を実施できる。
【0012】
本発明方法において、前記第1ガス送出工程にある前記吸着塔から送出されて前記第1ガス導入工程にある前記吸着塔に導入されるガス量を、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に多くするのが好ましい。
これにより、原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に、第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるヘリウムガス量が多くなるので、ヘリウムガスの回収率を向上できる。よって、原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が変動する場合、例えば光ファイバーの製造工程等から排出されるようなヘリウムガスを原料ヘリウムガスとして用いる場合に、原料ガスの濃度変動に柔軟に対応ができる。
【0013】
この場合、本発明システムは、前記連通流路を流れるガス流量を調節する流量制御弁を備え、前記流量制御弁は、流量調節動作ができるように流量調節用アクチュエータを有する自動弁とされると共に前記制御装置に接続され、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度を検出すると共に前記制御装置に接続されるセンサを備え、前記第1ガス送出工程および前記第1ガス導入工程の予め定めた一定の実行時間が前記制御装置に記憶され、前記第1ガス送出工程にある前記吸着塔から送出されて前記第1ガス導入工程にある前記吸着塔に導入されるガスの前記連通流路における流量と、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が前記制御装置に記憶され、前記第1ガス送出工程にある前記吸着塔から送出されて前記第1ガス導入工程にある前記吸着塔に導入されるガス量が、前記センサにより検出されたヘリウム濃度が高い程に多くなるように、前記制御装置により記憶された前記実行時間だけ前記第1ガス送出工程および前記第1ガス導入工程を実行するため前記開閉弁が制御されると共に、前記対応関係に基づき前記流量制御弁により前記連通流路の開度が変更されるのが好ましい。
あるいは、本発明システムは、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度を検出すると共に前記制御装置に接続されるセンサを備え、前記第1ガス送出工程および前記第1ガス導入工程の実行時間と、前記原料ヘリウムガスにおけるヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が前記制御装置に記憶され、前記第1ガス送出工程にある前記吸着塔から送出されて前記第1ガス導入工程にある前記吸着塔に導入されるガス量が、前記センサにより検出されたヘリウム濃度が高い程に多くなるように、前記制御装置により前記対応関係に基づき前記第1ガス送出工程および前記第1ガス導入工程の実行時間が変更されるのが好ましい。
【0014】
本発明方法において、前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程を実行すると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程を実行するのが好ましい。
【0015】
この場合、本発明システムは、前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程が実行されると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程が実行されるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御されるのが好ましい。
【0016】
本発明方法において、前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガス量を、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に少なくするのが好ましい。さらに、前記洗浄工程を、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が予め定めた設定値以上である時は実行しないのが好ましい。
これにより、原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に、吸着塔の内部を洗浄後にオフガスとして排出されるヘリウムガス量が少なくなるので、ヘリウムガスの回収率を向上できる。よって、原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が変動する場合、例えば光ファイバーの製造工程等から排出されるようなヘリウムガスを原料ヘリウムガスとして用いる場合に、原料ガスの濃度変動に柔軟に対応できる。
【0017】
この場合、本発明システムは、前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程が実行されると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程が実行されるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御され、前記連通流路を流れるガス流量を調節する流量制御弁を備え、前記流量制御弁は、流量調節動作ができるように流量調節用アクチュエータを有する自動弁とされると共に前記制御装置に接続され、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度を検出すると共に前記制御装置に接続されるセンサを備え、前記洗浄工程の予め定めた一定の実行時間が前記制御装置に記憶され、前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガスの前記連通流路における流量と、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、前記制御装置に記憶され、前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガス量が、前記センサにより検出されたヘリウム濃度が高い程に少なくなるように、前記制御装置により記憶された前記実行時間だけ前記洗浄工程を実行するため前記開閉弁が制御されると共に、前記対応関係に基づき前記流量制御弁により前記連通流路の開度が変更されるのが好ましい。
あるいは、前記第1ガス送出工程後であって前記第2ガス送出工程前の状態にある前記吸着塔の何れかにおいて、内部圧力を減少させる減圧工程が実行されると同時に、前記脱着工程後であって前記第2ガス導入工程前の状態にある前記吸着塔の別の何れかにおいて、前記減圧工程にある前記吸着塔の内部ガスを導入した後にオフガスとして排出する洗浄工程が実行されるように、前記制御装置により前記開閉弁それぞれが制御され、前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度を検出すると共に前記制御装置に接続されるセンサを備え、前記洗浄工程の実行時間と、前記原料ヘリウムガスにおけるヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、前記制御装置に記憶され、前記減圧工程にある前記吸着塔から送出されて前記洗浄工程にある前記吸着塔に導入されるガス量が、前記センサにより検出されたヘリウム濃度が高い程に少なくなるように、前記制御装置により前記対応関係に基づき前記洗浄工程の実行時間が変更されるのが好ましい。
【0018】
本発明方法において、前記オフガスが前記原料ヘリウムガスとしてリサイクルされるように、前記原料ヘリウムガスの前記吸着塔それぞれへの導入流路に前記オフガスを導くのが好ましい。これにより、オフガスに含まれるヘリウムガスをリサイクルできるので回収率を向上できる。この場合、本発明システムは、前記オフガス流路を、前記原料ガス導入流路と接続するためのリサイクル流路を備えるのが好ましい。
【0019】
本発明方法において、前記吸着塔それぞれに導入される前記原料ヘリウムガスのヘリウム濃度を15vol %以上とするのが好ましい。これにより、ヘリウムガスの無駄を少なくして効率良く目標純度のヘリウムガスを得ることができる。なお、原料ヘリウムガスのヘリウム濃度は、リサイクルされたオフガスと混合される場合、混合後に圧力スイング吸着装置に導入されるので、混合後に15vol %以上であれば、本発明方法によって効率良く目標純度のヘリウムガスを得ることができる。
【0020】
本発明方法において、前記吸着塔それぞれから前記吸着工程において排出される精製ヘリウムガスのヘリウム濃度が目標純度、例えば99.999vol %以上となるように、前記圧力スイング吸着装置での吸着工程の繰り返し間隔を設定するのが好ましい。さらに高純度ヘリウムガスを得るため、前記吸着塔それぞれから前記吸着工程において排出される精製ヘリウムガスのヘリウム濃度が99.9999vol %以上となるように、前記圧力スイング吸着装置での前記吸着工程の繰り返し間隔を設定してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、不純物を含むヘリウムガスを小規模な設備で高純度に精製する際に、ヘリウムガスの回収率を向上するのに寄与できる方法とシステムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示す本発明の実施形態に係るヘリウムガスの精製システムαは、不純物ガスを含む原料ヘリウムガスG1を精製するために用いられる圧力スイング吸着装置1を備える。
図2に示すように、圧力スイング吸着装置1は複数の吸着塔2a、2b、2c、2dを有する。本実施形態においては第1〜第4吸着塔2a、2b、2c、2dが設けられ、各吸着塔2a、2b、2c、2dの一端と他端とにガス通過口2a′、2b′、2c′、2d′、2a″、2b″、2c″、2d″が形成されている。
【0024】
各吸着塔2a、2b、2c、2dに、不純物ガスをヘリウムガスに優先して吸着する吸着剤が収納される。その吸着剤は、不純物ガスをヘリウムガスに優先して吸着できるものであれば特に限定されず、例えば活性炭、合成ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブ、アルミナゲル等を用いることができる。
【0025】
図2に示すように、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれに原料ガス導入配管3、精製ガス配管4、及びオフガス配管5が接続される。
【0026】
原料ガス導入配管3の一端は原料ヘリウムガスG1の供給源、例えば光ファイバー製造装置に接続される。原料ガス導入配管3の他端は、第1〜第4吸着塔2a、2b、2c、2dに向かうように4分岐され、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれの一端のガス通過口2a′、2b′、2c′、2d′に、原料ガス導入路開閉弁を構成する第1〜第4開閉弁6a、6b、6c、6dを介して接続される。これにより、原料ガス導入配管3は吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれに原料ヘリウムガスG1を導入するための原料ガス導入流路を構成する。また、第1〜第4開閉弁6a、6b、6c、6dにより、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれと原料ガス導入流路との間を個別に開閉することで、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれに原料ヘリウムガスG1を原料ガス導入流路を介して個別に導入できる。
【0027】
原料ヘリウムガスG1はヘリウムガスと不純物ガスとの混合ガスである。吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれに導入される原料ヘリウムガスG1は、ヘリウム濃度が15vol %以上であるのが好ましい。本実施形態において供給源から供給される原料ヘリウムガスG1は濃度、流量が変動するものとされる。例えば、原料ヘリウムガスG1は不純物ガスとして空気を含む希薄ヘリウムガスであり、ヘリウム濃度が30vol %である時は空気濃度が70vol %であり、ヘリウム濃度は15〜70vol %の間で変動し、ヘリウムガス流量は10〜100Nm
3 /hの間で変動する。
【0028】
精製ガス配管4の一端は、第1〜第4吸着塔2a、2b、2c、2dに向かうように4分岐され、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれの他端のガス通過口2a″、2b″、2c″、2d″に、精製ガス路開閉弁を構成する第5〜第8開閉弁7a、7b、7c、7dを介して接続される。精製ガス配管4の他端は精製ヘリウムガスG2の出口とされる。これにより、精製ガス配管4は吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれから精製ヘリウムガスG2を排出するための精製ガス流路を構成する。また、第5〜第8開閉弁7a、7b、7c、7dにより、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれと精製ガス流路との間を個別に開閉することで、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれから精製ヘリウムガスG2を個別に排出し、回収することができる。回収された精製ヘリウムガスG2の用途は限定されない。
【0029】
精製ガス配管4の他端に背圧調節用の圧力調節弁26が設けられ、これにより、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれにおける内部圧力を、吸着工程において予め定めた吸着圧力に調節することができる。
【0030】
オフガス配管5の一端は、第1〜第4吸着塔2a、2b、2c、2dに向かうように4分岐され、ガス通過口2a′、2b′、2c′、2d′に、オフガス路開閉弁を構成する第9〜第12開閉弁8a、8b、8c、8dを介して接続される。オフガス配管5の他端はオフガスG3、G3′の出口とされる。これにより、オフガス配管5は吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれからオフガスG3、G3′を排出するためのオフガス流路を構成する。また、第9〜第12開閉弁8a、8b、8c、8dにより、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれとオフガス流路との間を個別に開閉することで、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれからオフガスG3、G3′を個別に排出できる。
【0031】
オフガス配管5に接続される第1リサイクル配管41に、流量調節用の第3流量制御弁18が設けられる。これにより、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれにおける内部圧力を、設定圧力に調節できる。また、放圧脱着工程においてオフガスG3が予め定めた圧力を有するように調節できる。
【0032】
吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかと別の何れかとを互いに連通させるための連通流路を構成する連通配管9が設けられている。連通配管9は、第1連通部9a、第2連通部9b、第3連通部9c、及び第4連通部9dを有する。第1連通部9aの一端は、第1〜第4吸着塔2a、2b、2c、2dに向かうように4分岐され、ガス通過口2a″、2b″、2c″、2d″に、連通路開閉弁を構成する第13〜第16開閉弁10a、10b、10c、10dを介して接続される。第2連通部9bの一端は、第1〜第4吸着塔2a、2b、2c、2dに向かうように4分岐され、ガス通過口2a″、2b″、2c″、2d″に、連通路開閉弁を構成する第17〜第20開閉弁11a、11b、11c、11dを介して接続される。第3連通部9cの一端は、第1〜第4吸着塔2a、2b、2c、2dに向かうように4分岐され、ガス通過口2a″、2b″、2c″、2d″に、連通路開閉弁を構成する第21〜第24開閉弁12a、12b、12c、12dを介して接続される。第2連通部9bの他端と第3連通部9cの他端は、連通路開閉弁を構成する第25開閉弁14と、連通流路を流れるガス流量を調節する流量制御弁を構成する第1流量制御弁15とを介して、互いに接続される。第4連通部9dの一端は第1連通部9aの他端に、連通路開閉弁を構成する第26開閉弁16と、連通流路を流れるガス流量を調節する流量制御弁を構成する第2流量制御弁17を介して接続される。第4連通部9dの他端は精製ガス配管4に接続される。よって、第13〜第26開閉弁10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、11d、12a、12b、12c、12d、14、16により、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれと連通流路との間を個別に開閉することで、吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかと別の何れかとを、互いの間が開いて互いに連通する状態と、互いの間が閉鎖されて連通することのない状態とに切り換えることができる。
【0033】
第1〜第26開閉弁6a、6b、6c、6d、7a、7b、7c、7d、8a、8b、8c、8d、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、11d、12a、12b、12c、12d、14、16それぞれは、公知の自動弁により構成され、弁を作動させるためのソレノイド、モータ等の開閉用アクチュエータを有する。
図3に示すように、各開閉弁は、精製システムαを構成する制御装置20に接続され、制御装置20により制御されることで個別に開閉動作ができる。制御装置20はコンピュータにより構成できる。
【0034】
第1、第2、第3流量制御弁15、17、18それぞれは、公知の自動弁により構成され、弁を作動させるためのモータ等の流量調節用アクチュエータを有する。
図3に示すように、各流量制御弁は制御装置20に接続され、制御装置20により制御されることで個別に流量調節動作ができる。圧力調節弁26は、公知の自動弁により構成され、弁を作動させるためのモータ等の圧力調節用アクチュエータを有する。
図3に示すように、圧力調節弁26は制御装置20に接続され、制御装置20により制御されることで個別に圧力調節動作ができる。
【0035】
原料ガス導入配管3に、供給源から供給される原料ヘリウムガスG1の流量を検出する流量センサ21、原料ヘリウムガスG1を一時的に貯留するバッファタンク22、バッファタンク22の貯蔵量測定用センサ22a、コンプレッサー23、吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度を検出する濃度センサ24、および原料ガス導入配管3から各吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1の流量調節用の第4流量制御弁25が設けられている。バッファタンク22内は、放圧脱着工程末期および洗浄工程末期にある各吸着塔2a、2b、2c、2dの内部よりも低圧で大気圧以上の圧力とされる。コンプレッサー23は原料ヘリウムガスG1を吸引して予め定めた圧力、例えば0.8〜0.9MPa(ゲージ圧)まで昇圧させる。吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれに導入される原料ヘリウムガスG1の温度は、例えば0〜40℃とされる。第4流量制御弁25は、公知の自動弁により構成され、弁を作動させるためのモータ等の流量調節用アクチュエータを有する。
【0036】
オフガス配管5に第1リサイクル配管41の一端が接続され、第1リサイクル配管41の他端は第1切り換え弁42に接続される。第1切り換え弁42は、第1リサイクル配管41を第2リサイクル配管43の一端と第1放出用配管44の一端に選択的に接続する。第1放出用配管44の他端は大気圧下の常圧空間に通じる。第2リサイクル配管43の他端は第2切り換え弁45に接続される。第2切り換え弁45は、第2リサイクル配管43を第3リサイクル配管46の一端と第4リサイクル配管47の一端に選択的に接続する。第3リサイクル配管46の他端はバッファタンク22に接続される。第4リサイクル配管47の他端は第3切り換え弁48に接続される。第3切り換え弁48は、第4リサイクル配管47を第5リサイクル配管49の一端と第2放出用配管44′の一端に選択的に接続する。第5リサイクル配管49の他端はバッファタンク22に接続され、第2放出用配管44′の他端は大気圧下の常圧空間に通じる。第4リサイクル配管47の途中に真空ポンプ50が設けられている。これによりオフガス流路を、第1〜第3切り換え弁42、45、48を用いて、真空ポンプ50を介することなくバッファタンク22に通じる状態と、真空ポンプ50を介してバッファタンク22に通じる状態と、第1放出用配管44を介して常圧空間に通じる状態と、第2放出用配管44′を介して常圧空間に通じる状態とに切り換えることができる。なお、第1〜第3切り換え弁42、45、48を制御装置20に接続される自動弁とし、制御装置20により動作が制御されるようにしてもよい。また、真空ポンプ50を制御装置20に接続し、制御装置20により動作が制御されるようにしてもよい。
【0037】
第1〜第5リサイクル配管41、43、46、47、49は、オフガス流路をバッファタンク22を介して原料ガス導入流路に接続するためのリサイクル流路を構成する。これにより、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれへの原料ヘリウムガスG1の導入流路にオフガスG3、G3′を導き、オフガスG3、G3′を原料ヘリウムガスG1に混入できる。すなわち、オフガスG3、G3′を原料ヘリウムガスG1としてリサイクルできる。オフガスG3、G3′は常圧空間に放出されてもよい。
【0038】
図3に示すように、流量センサ21、貯蔵量測定用センサ22a、濃度センサ24、第4流量制御弁25が制御装置20に接続される。また、制御装置20に、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれの内部圧力を検出する圧力センサ27a、27b、27c、27d、キーボード等の入力装置28、モニター等の出力装置29が接続される。
【0039】
原料ヘリウムガスG1をバッファタンク22に一時的に貯留することで、原料ヘリウムガスG1の組成変動と流量変動を緩和できる。バッファタンク22は、容量可変となるように貯蔵ガス量に応じて変形するバルーンにより構成するのが好ましい。また、制御装置20からの信号により第4流量制御弁25を制御して流量調節動作を行うことで、各吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1の流量が調節される。これにより、各吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1の流量は、通常時は流量センサ21の検出流量と一致するように制御される。センサ22aにより検出されるバッファタンク22の貯蔵ガス量が上限設定値を超える時は、貯蔵ガス量が減少するように、各吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1の流量は流量センサ21の検出流量よりも多くなるものとされる。センサ22aにより検出されるバッファタンク22の貯蔵ガス量が下限設定値未満の時は、貯蔵ガス量が増加するように、各吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1の流量は流量センサ21の検出流量よりも少なくなるものとされる。
【0040】
圧力スイング吸着装置1を用いて原料ヘリウムガスG1の精製を行うため、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれに原料ヘリウムガスG1が順次導入される。吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれにおいて、複数の精製処理工程を順次実行する精製処理サイクルが繰り返される。
【0041】
本実施形態においては、圧力スイング吸着装置1における精製処理サイクルの1サイクルを構成する複数の精製処理工程として、吸着工程、第1ガス送出工程、減圧工程、第2ガス送出工程、脱着工程、洗浄工程、第2ガス導入工程、第1ガス導入工程、および昇圧工程を順次実行する。本実施形態の脱着工程は放圧脱着工程と真空脱着工程とを実行するものであるが、真空脱着工程のみを実行するものでもよい。本実施形態では第2ガス導入工程と第1ガス導入工程との間に待機状態が設けられるが、各工程に要する時間次第で待機状態はなくてもよい。各精製処理工程の実行時間は、必要とされる精製ヘリウムガスG2の純度や回収率に応じて予め実験により求めて設定すればよい。吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれにおける精製処理工程の実行タイミングは互いに相違する。これにより圧力スイング吸着装置1においては、
図4A〜
図4Dに示すように、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれにおける精製処理工程が互いに相違する運転状態(a)〜(t)が順次具現され、連続的に精製ヘリウムガスG2が排出される。
図4A〜
図4Dにおける矢印はガスの流動方向を示す。
【0042】
圧力スイング吸着装置1において精製処理工程を順次実行するため、制御装置20により第1〜第26開閉弁6a、6b、6c、6d、7a、7b、7c、7d、8a、8b、8c、8d、10a、10b、10c、10d、11a、11b、11c、11d、12a、12b、12c、12d、14、16、第1、第2流量制御弁15、17がそれぞれ制御される。
図5A〜
図5Dは、圧力スイング吸着装置1の運転状態(a)〜(i)における、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれにおいて実行される精製処理工程と、第1〜第26開閉弁それぞれの状態との対応関係を示し、○印は開閉弁の開き状態を示し、×印は開閉弁の閉じ状態を示す。
【0043】
運転状態(a)においては、第1、第5、第11、第18、第24、第25開閉弁6a、7a、8c、11b、12d、14が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第1、第5開閉弁6a、7aが開かれることで、第1吸着塔2aで吸着工程が実行される。第11、第24、第25開閉弁11b、12d、14が開かれることにより、第2吸着塔2bで第1ガス導入工程が実行され、第4吸着塔2dで第1ガス送出工程が実行される。第18開閉弁8cが開かれることにより、第3吸着塔2cで脱着工程が実行される。ここでは、第3吸着塔2cは真空ポンプ50に通じるものとされ、第3吸着塔2cでの脱着工程は真空脱着工程とされる。
【0044】
運転状態(b)においては、第1、第5、第11、第14、第19、第24、第25、第26開閉弁6a、7a、8c、10b、11c、12d、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第1、第5、第14、第26開閉弁6a、7a、10b、16が開かれることで、第1吸着塔2aでは運転状態(a)に引き続いて吸着工程が実行され、第2吸着塔2bで昇圧工程が実行される。第11、第19、第24、第25開閉弁8c、11c、12d、14が開かれることで、第3吸着塔2cで洗浄工程が実行され、第4吸着塔2dで減圧工程が実行される。ここでは、第3吸着塔2cは真空ポンプ50に通じるものとされ、洗浄工程で排出されるオフガスG3′は真空ポンプ50により吸引される。
【0045】
運転状態(c)においては、第1、第5、第14、第19、第24、第25、第26開閉弁6a、7a、10b、11c、12d、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第1、第5、第14、第26開閉弁6a、7a、10b、16が開かれることで、第1吸着塔2aでは運転状態(b)に引き続いて吸着工程が実行され、第2吸着塔2bでは運転状態(b)に引き続いて昇圧工程が実行される。第19、第24、第25開閉弁11c、12d、14が開かれることで、第3吸着塔2cで第2ガス導入工程が実行され、第4吸着塔2dで第2ガス送出工程が実行される。ここでは、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。
【0046】
運転状態(d)においては、第1、第5、第12、第14、第26開閉弁6a、7a、8d、10b、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第1、第5、第14、第26開閉弁6a、7a、10b、16が開かれることで、第1吸着塔2aでは運転状態(c)に引き続いて吸着工程が実行され、第2吸着塔2bで運転状態(c)に引き続いて昇圧工程が実行される。第3吸着塔2cは何ら精製処理工程が実行されない待機状態とされる。第12開閉弁8dが開かれることで、第4吸着塔2dで脱着工程が実行される。第4吸着塔2dは真空ポンプ50に通じないものとされ、第4吸着塔2dでの脱着工程は放圧脱着工程とされる。ここでは、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。
【0047】
運転状態(e)においては、開閉弁の開閉状態は運転状態(d)と同一とされる。これにより、第1吸着塔2aでは運転状態(d)に引き続いて吸着工程が実行され、第2吸着塔2bで運転状態(d)に引き続いて昇圧工程が実行され、第3吸着塔2cは待機状態とされる。運転状態(d)と異なり、運転状態(e)においては第4吸着塔2dは真空ポンプ50に通じるものとされ、第4吸着塔2dでの脱着工程が真空脱着工程とされる。
【0048】
運転状態(f)においては、第2、第6、第12、第19、第21、第25開閉弁6b、7b、8d、11c、12a、14が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第2、第6開閉弁6b、7bが開かれることで、第2吸着塔2bで吸着工程が実行される。第19、第21、第25開閉弁11c、12a、14が開かれることにより、第1吸着塔2aで第1ガス送出工程が実行され、第3吸着塔2cで第1ガス導入工程が実行される。第12開閉弁8dが開かれることにより、第4吸着塔2dで脱着工程が実行される。ここでは運転状態(e)に引き続いて第4吸着塔2dでの脱着工程は真空脱着工程とされる。
【0049】
運転状態(g)においては、第2、第6、第12、第15、第20、第21、第25、第26開閉弁6b、7b、8d、10c、11d、12a、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第2、第6、第15、第26開閉弁6b、7b、10c、16が開かれることで、第2吸着塔2bでは運転状態(f)に引き続いて吸着工程が実行され、第3吸着塔2cで昇圧工程が実行される。第12、第20、第21、第25開閉弁8d、11d、12a、14が開かれることで、第1吸着塔2aで減圧工程が実行され、第4吸着塔2dで洗浄工程が実行される。ここでは、第4吸着塔2dは真空ポンプ50に通じるものとされ、洗浄工程で排出されるオフガスG3′は真空ポンプ50により吸引される。
【0050】
運転状態(h)においては、第2、第6、第15、第20、第21、第25、第26開閉弁6b、7b、10c、11d、12a、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第2、第6、第15、第26開閉弁6b、7b、10c、16が開かれることで、第2吸着塔2bでは運転状態(g)に引き続いて吸着工程が実行され、第3吸着塔2cでは運転状態(g)に引き続いて昇圧工程が実行される。第20、第21、第25開閉弁11d、12a、14が開かれることで、第1吸着塔2aで第2ガス送出工程が実行され、第4吸着塔2dで第2ガス導入工程が実行される。ここでは、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。
【0051】
運転状態(i)においては、第2、第6、第9、第15、第26開閉弁6b、7b、8a、10c、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第2、第6、第15、第26開閉弁6b、7b、10c、16が開かれることで、第2吸着塔2bでは運転状態(h)に引き続いて吸着工程が実行され、第3吸着塔2cで運転状態(h)に引き続いて昇圧工程が実行される。第9開閉弁8aが開かれることで、第1吸着塔2aで脱着工程が実行される。第1吸着塔2aは真空ポンプ50に通じないものとされ、第1吸着塔2aでの脱着工程は放圧脱着工程とされる。ここでは、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。第4吸着塔2dは待機状態とされる。
【0052】
運転状態(j)においては、開閉弁の開閉状態は運転状態(h)と同一とされる。これにより、第2吸着塔2bでは運転状態(h)に引き続いて吸着工程が実行され、第3吸着塔2cで運転状態(h)に引き続いて昇圧工程が実行され、第4吸着塔2dは待機状態とされる。運転状態(h)と異なり、運転状態(j)においては第1吸着塔2aは真空ポンプ50に通じるものとされ、第1吸着塔2aでの脱着工程が真空脱着工程とされる。
【0053】
運転状態(k)においては、第3、第7、第9、第20、第22、第25開閉弁6c、7c、8a、11d、12b、14が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第3、第7開閉弁6c、7cが開かれることで、第3吸着塔2cで吸着工程が実行される。第20、第22、第25開閉弁11d、12b、14が開かれることにより、第2吸着塔2bで第1ガス送出工程が実行され、第4吸着塔2dで第1ガス導入工程が実行される。第9開閉弁8aが開かれることにより、第1吸着塔2aで脱着工程が実行される。ここでは運転状態(j)に引き続いて第1吸着塔2aでの脱着工程は真空脱着工程とされる。
【0054】
運転状態(l)においては、第3、第7、第9、第16、第17、第22、第25、第26開閉弁6c、7c、8a、10d、11a、12b、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第3、第7、第16、第26開閉弁6c、7c、10d、16が開かれることで、第3吸着塔2cでは運転状態(k)に引き続いて吸着工程が実行され、第4吸着塔2dで昇圧工程が実行される。第9、第17、第22、第25開閉弁8a、11a、12b、14が開かれることで、第1吸着塔2aで洗浄工程が実行され、第2吸着塔2dで減圧工程が実行される。ここでは、第1吸着塔2aは真空ポンプ50に通じるものとされ、洗浄工程で排出されるオフガスG3′は真空ポンプ50により吸引される。
【0055】
運転状態(m)においては、第3、第7、第16、第17、第22、第25、第26開閉弁6c、7c、10d、11a、12b、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第3、第7、第16、第26開閉弁6c、7c、10d、16が開かれることで、第3吸着塔2cでは運転状態(l)に引き続いて吸着工程が実行され、第4吸着塔2cでは運転状態(l)に引き続いて昇圧工程が実行される。第17、第22、第25開閉弁11a、12b、14が開かれることで、第1吸着塔2aで第2ガス導入工程が実行され、第2吸着塔2bで第2ガス送出工程が実行される。ここでは、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。
【0056】
運転状態(n)においては、第3、第7、第10、第16、第26開閉弁6c、7c、8b、10d、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第3、第7、第16、第26開閉弁6c、7c、10d、16が開かれることで、第3吸着塔2cでは運転状態(m)に引き続いて吸着工程が実行され、第4吸着塔2dで運転状態(m)に引き続いて昇圧工程が実行される。第10開閉弁8bが開かれることで、第2吸着塔2bで脱着工程が実行される。第2吸着塔2bは真空ポンプ50に通じないものとされ、第2吸着塔2bでの脱着工程は放圧脱着工程とされる。ここでは、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。第1吸着塔2dは待機状態とされる。
【0057】
運転状態(o)においては、開閉弁の開閉状態は運転状態(n)と同一とされる。これにより、第3吸着塔2cでは運転状態(n)に引き続いて吸着工程が実行され、第4吸着塔2dで運転状態(n)に引き続いて昇圧工程が実行され、第1吸着塔2aは待機状態とされる。運転状態(n)と異なり、運転状態(o)においては第2吸着塔2bは真空ポンプ50に通じるものとされ、第2吸着塔2bでの脱着工程が真空脱着工程とされる。
【0058】
運転状態(p)においては、第4、第8、第10、第17、第23、第25開閉弁6d、7d、8b、11a、12c、14が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第4、第8開閉弁6d、7dが開かれることで、第4吸着塔2dで吸着工程が実行される。第17、第23、第25開閉弁11a、12c、14が開かれることにより、第1吸着塔2aで第1ガス導入工程が実行され、第3吸着塔2cで第1ガス送出工程が実行される。第10開閉弁8bが開かれることにより、第2吸着塔2aで脱着工程が実行される。ここでは運転状態(o)に引き続いて第2吸着塔2bでの脱着工程は真空脱着工程とされる。
【0059】
運転状態(q)においては、第4、第8、第10、第13、第18、第23、第25、第26開閉弁6d、7d、8b、10a、11b、12c、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第4、第8、第13、第26開閉弁6d、7d、10a、16が開かれることで、第1吸着塔2aで昇圧工程が実行され、第4吸着塔2dでは運転状態(p)に引き続いて吸着工程が実行される。第10、第18、第23、第25開閉弁8b、11b、12c、14が開かれることで、第2吸着塔2bで洗浄工程が実行され、第3吸着塔2cで減圧工程が実行される。ここでは、第2吸着塔2bは真空ポンプ50に通じるものとされ、洗浄工程で排出されるオフガスG3′は真空ポンプ50により吸引される。
【0060】
運転状態(r)においては、第4、第8、第13、第18、第23、第25、第26開閉弁6d、7d、10a、11b、12c、14、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第4、第8、第13、第26開閉弁6d、7d、10a、16が開かれることで、第1吸着塔2aでは運転状態(q)に引き続いて昇圧工程が実行され、第4吸着塔2dでは運転状態(q)に引き続いて吸着工程が実行される。第18、第23、第25開閉弁11b、12c、14が開かれることで、第2吸着塔2bで第2ガス導入工程が実行され、第3吸着塔2cで第2ガス送出工程が実行される。ここでは、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。
【0061】
運転状態(s)においては、第4、第8、第11、第13、第26開閉弁6d、7d、8c、10a、16が開かれ、残りの開閉弁が閉じられる。第4、第8、第11、第26開閉弁6d、7d、10a、16が開かれることで、第1吸着塔2aで運転状態(r)に引き続いて昇圧工程が実行され、第4吸着塔2dでは運転状態(r)に引き続いて吸着工程が実行される。第11開閉弁8cが開かれることで、第3吸着塔2cで脱着工程が実行される。第3吸着塔2cは真空ポンプ50に通じないものとされ、第3吸着塔2cでの脱着工程は放圧脱着工程とされる。ここで、真空ポンプ50は不要であるので停止してもよい。第2吸着塔2bは待機状態とされる。
【0062】
運転状態(t)においては、開閉弁の開閉状態は運転状態(s)と同一とされる。これにより、第1吸着塔2aで運転状態(s)に引き続いて昇圧工程が実行され、第4吸着塔2dでは運転状態(s)に引き続いて吸着工程が実行され、第2吸着塔2bは待機状態とされる。運転状態(s)と異なり、運転状態(t)においては第3吸着塔2cは真空ポンプ50に通じるものとされ、第3吸着塔2cでの脱着工程が真空脱着工程とされる。
【0063】
運転状態(a)、(b)、(e)、(f)、(g)、(j)、(k)、(l)、(o)、(p)、(q)、(t)においては、第1切り換え弁42を介して第1リサイクル配管41と第2リサイクル配管43とが接続され、第2切り換え弁45を介して第2リサイクル配管43と第4リサイクル配管47とが接続され、第3切り換え弁48を介して第4リサイクル配管47が第5リサイクル配管49または第2放出用配管44′に接続される。これにより、真空脱着工程、洗浄工程におけるオフガスG3、G3′を真空ポンプ50を介してバッファタンク22または常圧空間に導くことができる。運転状態(c)、(d)、(h)、(i)、(m)、(n)、(r)、(s)においては、第1切り換え弁42を介して第1リサイクル配管41が第2リサイクル配管43または第1放出用配管44に接続され、第2切り換え弁45を介して第2リサイクル配管43と第3リサイクル配管46とが接続される。これにより、放圧脱着工程におけるオフガスG3を真空ポンプ50を介することなくバッファタンク22または常圧空間に導くことができる。
【0064】
吸着工程が吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかにおいて実行される時、その吸着塔の内部に原料ガス導入流路を介して原料ヘリウムガスG1が導入される。吸着塔内部は原料ヘリウムガスG1の圧力により吸着圧力まで加圧される。吸着圧力は圧力調節弁26により調節できる。これにより、導入された原料ヘリウムガスG1に含まれる不純物ガスが吸着剤に加圧下で吸着される。また、吸着剤に吸着されないガスは、精製ヘリウムガスG2として吸着塔内部から精製ガス流路を介して排出される。精製ヘリウムガスG2のヘリウム濃度が目標濃度になるように、圧力スイング吸着装置1での吸着工程の繰り返し間隔を設定するのが好ましい。精製ヘリウムガスG2のヘリウム濃度は、99.999vol %以上とするのが好ましく、99.9999vol %以上とするのがより好ましい。例えば、濃度センサ24により検出される原料ヘリウムガスG1の濃度と、第4流量制御弁25により調節される流量と、精製ヘリウムガスG2の目標濃度と、吸着工程の繰り返し間隔との間の関係を予め実験により求め、その関係に基づき検出濃度と調節流量と目標濃度に対応する吸着工程の繰り返し間隔を設定すればよい。圧力スイング吸着装置1での吸着工程の繰り返し間隔は、精製処理サイクルの1サイクルの時間を定めることで設定でき、その設定変更は精製処理サイクルの1サイクルにおける吸着工程の実行時間と脱着工程の実行時間を変更すればよい。
【0065】
第1ガス送出工程後であって第2ガス送出工程前の状態にある吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかにおいて減圧工程が実行される時、その吸着塔内部は、連通流路、洗浄工程にある吸着塔の内部、およびオフガス流路に通じることで、圧力が次第に減少する。この減圧工程にある吸着塔の内部ガスG4′は洗浄工程にある吸着塔に導入されるので、減圧工程における吸着塔の内部圧力の減少幅は、洗浄工程にある吸着塔に導入されるガス量に対応する。
【0066】
放圧脱着工程が吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかにおいて実行される時、その吸着塔内部はオフガス流路に通じ、第1、第2切り換え弁42、45により、真空ポンプ50を介することなくバッファタンク22に通じる状態と、第1放出用配管44を介して常圧空間に通じる状態とに切り換えられる。その吸着塔の内部圧力は第3流量制御弁18により調節された圧力まで減圧され、吸着剤から不純物ガスが脱着される。脱着された不純物ガスは、オフガスG3として吸着塔内部からオフガス流路を介して排出される。放圧脱着工程の末期における吸着塔内部の圧力は、脱着工程においてオフガスG3が自らの圧力によりリサイクル流路を流動してバッファタンク22に至り、または、第1放出用配管44から常圧空間に放出されるように、大気圧よりも多少高い圧力とされる。
【0067】
真空脱着工程が吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかにおいて実行される時、その吸着塔内部はオフガス流路に通じ、さらに、第1〜第3切り換え弁42、45、48により、真空ポンプ50を介してバッファタンク22に通じる状態と、第2放出用配管44′を介して常圧空間に通じる状態とに切り換えられる。これにより、吸着塔の内部圧力は真空ポンプ50により大気圧未満に減圧され、吸着剤から不純物ガスが脱着される。脱着された不純物ガスは、真空ポンプ50に吸引されることでオフガスG3として吸着塔内部からオフガス流路を介して排出される。オフガスG3は、リサイクル流路を流動してバッファタンク22に至り、または、第2放出用配管44′から常圧空間に放出される。
【0068】
昇圧工程が吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかにおいて実行される時、その吸着塔内部は、連通流路を介して吸着工程にある吸着塔の内部に通じる。この際、吸着工程にある吸着塔から排出される精製ヘリウムガスG2の一部が、昇圧工程にある吸着塔に導入される。これにより昇圧工程にある吸着塔の内部は、加圧されて吸着圧力あるいは吸着圧力近傍まで圧力上昇する。
【0069】
各精製処理サイクルにおいて、吸着工程後であって脱着工程前の状態にある吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかから内部ガスを送出する第1ガス送出工程が実行されると同時に、その送出された内部ガスを脱着工程後であって昇圧工程前の状態にある吸着塔2a、2b、2c、2dの別の何れかに導入する第1ガス導入工程が実行される。第1ガス送出工程にある吸着塔の内部と、第1ガス導入工程にある吸着塔の内部とが通じることにより、第1ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力と第1ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力との差が低減される。換言すれば、第1ガス送出工程にある吸着塔から送出される内部ガスが第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されることで、第1ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力が減少し、第1ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力が上昇する。本実施形態では、第1ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力と第1ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力との差は、第1ガス送出工程と第1ガス導入工程の完了時に残るものとされるが、両内部圧力は均等化されてもよい。
【0070】
各精製処理サイクルにおいて、第1ガス送出工程後であって脱着工程前の状態にある吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかから内部ガスを送出する第2ガス送出工程が実行されると同時に、その送出された内部ガスを脱着工程後であって第1ガス送出工程前の状態にある吸着塔2a、2b、2c、2dの別の何れかに導入する第2ガス導入工程が実行される。第2ガス送出工程にある吸着塔の内部と、第2ガス導入工程にある吸着塔の内部とが通じることにより、第2ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力と第2ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力との差が低減される。換言すれば、第2ガス送出工程にある吸着塔から送出される内部ガスが第2ガス導入工程にある吸着塔に導入されることで、第2ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力が減少し、第2ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力が上昇する。本実施形態では、第2ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力と第2ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力との差は、第2ガス送出工程と第2ガス導入工程の完了時になくされ、両内部圧力は均等化されるが、両内部圧力の差が残されてもよい。
【0071】
これにより、吸着工程と減圧工程との間および減圧工程と脱着工程との間それぞれにおいて、吸着塔の内部圧力の差が低減される。吸着塔の内部圧力の差が低減されることにより、第1、第2ガス送出工程にある吸着塔の内部ガスが、第1、第2ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力の上昇に利用されるので、その内部ガスに含まれる不純物ガスを吸着剤に吸着させ、吸着剤に吸着されない精製ヘリウムガスを回収できる。
【0072】
第1ガス導入工程にある吸着塔に第1ガス送出工程にある吸着塔の内部ガスを導入するため、連通流路の開閉弁の何れかが開かれる。そのため、第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガス量は、第1ガス送出工程または第1ガス導入工程の実行時間と連通流路を流れるガス流量との積に対応する。本実施形態の第1ガス送出工程と第1ガス導入工程の実行時間は予め定めた一定時間とされ、この一定の実行時間が制御装置20に記憶される。
【0073】
本実施形態においては、第1ガス導入工程にある吸着塔に導入するガス量は、連通流路を流れるガスの流量を第1流量制御弁15によって調節することで変更される。そのため、第1ガス送出工程にある吸着塔から送出されて第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガスG4の連通流路における流量と、原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、制御装置20に記憶される。
【0074】
濃度センサ24により検出された原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度が高い程に、第1ガス送出工程にある吸着塔から送出されて第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガス量が多くなるように、制御装置20により記憶された実行時間だけ第1ガス送出工程および第1ガス導入工程を実行するため開閉弁が制御されると共に、記憶された対応関係に基づき第1流量制御弁15による調節ガス流量が変更される。
【0075】
第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガス量は、第1ガス送出工程にある吸着塔における第1ガス送出工程開始時の内圧と第1ガス送出工程終了時の内圧との圧力差δP′に対応する。よって、濃度センサ24による検出ヘリウム濃度の変化に応じて圧力差δP′を変更することで、第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガス量を最適化すればよい。例えば、検出ヘリウム濃度が30vol %以上の場合は、圧力差δP′が350kPaとなり、検出ヘリウム濃度が15vol %のときは圧力差δP′が50kPaとなるような、連通流路を流れるガス流量と原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度との間の関係が予め定められる。第1流量制御弁15によるガス流量の調節は、精製処理工程の1サイクルに1回行えばよいが、原料ヘリウムガスG1の濃度変動が小さければ複数サイクルに1回でもよい。
【0076】
第1ガス導入工程にある吸着塔に導入するガス量を、原料ヘリウムガスG1におけるヘリウム濃度が高い程に多くする場合、その第1ガス導入工程に続く昇圧工程の開始時点における吸着塔の内部圧力が変化する。よって、その昇圧工程にある吸着塔の内圧を吸着圧力まで昇圧させる時、吸着工程にある吸着塔から送出されて昇圧工程にある吸着塔に導入される精製ヘリウムガスG2の量も変化させるのが好ましい。この場合、昇圧工程においては、昇圧工程の時間を予め定めた一定値とし、連通流路を流れるガス流量を第2流量制御弁17により調節すればよい。そのため、第2流量制御弁17により調節される連通流路を流れるガス流量と原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度との間の関係を実験により予め定めればよい。
【0077】
第1ガス導入工程にある吸着塔に導入するガス量を、原料ヘリウムガスG1におけるヘリウム濃度が高い程に多くするための変形例として、第1ガス送出工程および第1ガス導入工程の実行時間を調節してもよい。この場合、第1流量制御弁15による流量制御は連通流路を流れるガス流量を一定とするので不要である。
すなわち、第1ガス導入工程にある吸着塔に導入するガス量は、第1ガス送出工程および第1ガス導入工程の実行時間と連通流路を流れるガス流量との積に対応するので、第1ガス送出工程および第1ガス導入工程の実行時間を調節することで、そのガス量を変更できる。
そのため、第1ガス送出工程および第1ガス導入工程の実行時間と、原料ヘリウムガスG1におけるヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、制御装置20に記憶される。濃度センサ24により検出された原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度が高い程に、第1ガス送出工程にある吸着塔から送出されて第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガス量が多くなるように、制御装置20により記憶された対応関係に基づき第1ガス送出工程および第1ガス導入工程の実行時間、すなわち第1ガス送出工程および第1ガス導入工程のための開閉弁の制御時間が変更される。なお、第1ガス送出工程、第1ガス導入工程の実行時間を変更する場合に吸着工程の実行時間を変更しない場合、昇圧、脱着工程の実行時間を変更すればよい。他は実施形態と同様に制御すればよい。
【0078】
第2ガス導入工程にある吸着塔に第2ガス送出工程にある吸着塔の内部ガスを導入するため、連通流路の開閉弁の何れかが開かれる。本実施形態においては、第2ガス送出工程にある吸着塔の内部圧力と第2ガス導入工程にある吸着塔の内部圧力とが均等化されるまで、第2ガス送出工程と第2ガス導入工程が実行される。
【0079】
減圧工程が吸着塔2a、2b、2c、2dの何れかにおいて実行されると同時に、脱着工程後であって第2ガス導入工程前の状態にある吸着塔2a、2b、2c、2dの別の何れかにおいて洗浄工程が実行される。洗浄工程にある吸着塔2a、2b、2c、2dの内部は、減圧工程にある吸着塔2a、2b、2c、2dの内部に連通流路を介して通じ、また、オフガス流路に通じる。これにより、減圧工程にある吸着塔から送出された内部ガスG4′が、洗浄工程にある吸着塔に導入された後にオフガスG3′として排出される。洗浄工程にある吸着塔から排出されるオフガスG3′は減圧工程にある吸着塔の内部ガスG4′に含まれるヘリウムガスを含む。洗浄工程にある吸着塔内部は、オフガス流路から第1〜第3切り換え弁42、45、48により、真空ポンプ50を介してバッファタンク22に通じる状態と、第2放出用配管44′を介して常圧空間に通じる状態とに切り換えられる。これによりオフガスG3′は真空ポンプ50に吸引され、リサイクル流路を流動してバッファタンク22に至り、または、第2放出用配管44′から常圧空間に放出される。なお、洗浄工程にある吸着塔内部を真空ポンプ50に通じないものとしてもよく、この場合、オフガス流路は第1、第2切り換え弁42、45により、真空ポンプ50を介することなくバッファタンク22に通じる状態と、第1放出用配管44を介して常圧空間に通じる状態とに切り換えられ、オフガスG3′はリサイクル流路を介してバッファタンク22に至り、又は、第1放出用配管44を介して常圧空間に放出される。
【0080】
圧力スイング吸着装置1において、減圧工程にある吸着塔から送出されて洗浄工程にある吸着塔に導入されるガス量は、吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度が高い程に少なくされる。そのため下記のように、洗浄工程の実行時間が一定とされると共に、第1流量制御弁15により連通流路を流れるガス流量が調節される。さらに本実施形態においては、吸着塔2a、2b、2c、2dに導入される原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度が予め定めた設定値未満である時に洗浄工程は実行され、ヘリウム濃度がその設定値以上である時は洗浄工程は実行されない。
【0081】
洗浄工程にある吸着塔に減圧工程にある吸着塔の内部ガスを導入するため、連通流路の開閉弁の何れかが開かれる。そのため、洗浄工程にある吸着塔に導入するガス量は、洗浄工程の実行時間と連通流路を流れるガス流量との積に対応する。本実施形態の洗浄工程の実行時間は予め定めた一定時間とされ、この一定の実行時間が制御装置20に記憶される。
【0082】
洗浄工程にある吸着塔に導入するガス量は、連通流路を流れるガスの流量を第1流量制御弁15によって調節することで変更できる。そのため、洗浄工程にある吸着塔に導入されるガスG4′の連通流路における流量と、原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、制御装置20に記憶される。
【0083】
濃度センサ24により検出された原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度が高い程に、減圧工程にある吸着塔から送出されて洗浄工程にある吸着塔に導入されるガス量が少なくなるように、制御装置20により記憶された実行時間だけ洗浄工程を実行するため開閉弁が制御されると共に、記憶された対応関係に基づき第1流量制御弁15による調節ガス流量が変更される。また、ヘリウム濃度の予め定めた設定値が制御装置20に記憶され、濃度センサ24による検出ヘリウム濃度が記憶した設定値以上である時、第1流量制御弁15による調節ガス流量は零とされて洗浄工程は実行されない。洗浄工程が実行されない時は減圧工程も実行されない。
【0084】
洗浄工程にある吸着塔に導入されるガス量は、減圧工程にある吸着塔における洗浄工程開始時の内圧と洗浄工程終了時の内圧との圧力差δPに対応する。よって、濃度センサ24による検出ヘリウム濃度の変化に応じて圧力差δPを変更することで、洗浄工程において吸着塔に導入するガス量を最適化すればよい。例えば、検出ヘリウム濃度が50vol %以上の時、その圧力差δPが零になるように第1流量制御弁15による調節ガス流量を零として洗浄工程を実行しないものとする。また、検出ヘリウム濃度が50vol %未満の場合は、検出ヘリウム濃度の減少に応じて圧力差δPが増加するように、第1流量制御弁15により調節される連通流路を流れるガス流量と原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度との間の関係を実験により予め定めればよい。例えば、検出ヘリウム濃度が30vol %のときは圧力差δPが50kPaとなり、検出ヘリウム濃度が15vol %のときは圧力差δPが70kPaとなるような、連通流路を流れるガス流量と原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度との間の関係が予め定められる。第1流量制御弁15によるガス流量の調節は、精製処理工程の1サイクルに1回行えばよいが、原料ヘリウムガスG1の濃度変動が小さければ複数サイクルに1回でもよい。
【0085】
減圧工程にある吸着塔から送出されて洗浄工程にある吸着塔に導入されるガス量を、原料ヘリウムガスG1におけるヘリウム濃度が高い程に少なくするための変形例として、洗浄工程の実行時間を調節してもよい。この場合、第1流量制御弁15による流量制御は連通流路を流れるガス流量を一定とするので不要である。
すなわち、洗浄工程にある吸着塔に導入するガス量は、洗浄工程の実行時間と連通流路を流れるガス流量との積に対応するので、洗浄工程の実行時間を調節することで、そのガス量を変更できる。
そのため、洗浄工程の実行時間と、原料ヘリウムガスG1におけるヘリウム濃度との間の予め定められた対応関係が、制御装置20に記憶される。濃度センサ24により検出された原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度が高い程に、減圧工程にある吸着塔から送出されて洗浄工程にある吸着塔に導入されるガス量が少なくなるように、制御装置20により記憶された対応関係に基づき洗浄工程の実行時間、すなわち洗浄工程のための開閉弁の制御時間が変更される。なお、洗浄工程の実行時間を変更する場合に吸着工程の実行時間を変更しない場合、昇圧、脱着工程の実行時間を変更すればよい。他は実施形態と同様に制御すればよい。
【0086】
上記実施形態および変形例によれば、圧力スイング吸着装置1を用いて精製処理サイクルを繰り返すことで原料ヘリウムガスG1を精製し、精製ヘリウムガスG2を連続的に得ることができる。精製処理サイクル毎に吸着塔の内部圧力差の低減が2回行われる。吸着塔の内部圧力差の低減により、第1、第2ガス送出工程にある吸着塔の内部ガスが、第1、第2ガス導入工程にある吸着塔に導入されるので、その内部ガスに含まれる不純物ガスを吸着剤に吸着させ、吸着剤に吸着されない精製ヘリウムガスを回収できる。また、脱着工程において吸着塔の内部を真空ポンプにより大気圧未満に減圧することで、真空脱着工程を実行できる。真空脱着工程により吸着剤の性能を回復できる。各精製処理サイクルにおいて吸着塔の内部圧力差の低減を2回行い、且つ、真空脱着工程により吸着剤の性能を回復することで、ヘリウムガスの回収率を相乗効果により大幅に向上できる。さらに、第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガス量を、原料ヘリウムガスG1におけるヘリウム濃度が高い程に多くすることで、ヘリウムガスの回収率を向上できる。また、洗浄工程にある吸着塔に導入するガス量を、原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度が高い程に少なくすることで、ヘリウムガスの回収率が不必要に低下するのを防止できる。よって、例えば光ファイバーの製造工程等から排出されるようなヘリウムガスを原料ヘリウムガスとして用いる場合において、原料ガスの濃度変動に柔軟に対応でき、効率良く目標純度のヘリウムガスを得ることができる。しかも、オフガスG3、G3′に含まれるヘリウムガスをリサイクルすることでも回収率を向上できる。
【実施例】
【0087】
〔実施例1〕
ヘリウムガスの精製システムαを用いて原料ヘリウムガスG1を上記実施形態に従って精製した。
原料ヘリウムガスG1は、ヘリウム濃度を30.0vol %、不純物ガスとしての空気の濃度を70.0vol %とした。
圧力スイング吸着装置1への原料ヘリウムガスG1の供給流量は300NL/hとした。
吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれはステンレス製で、内径37mm、内寸高さ1000mmの円筒形状を有し、容量が約1Lであった。吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれに吸着剤として活性炭を約0.7L、ゼオライトを約0.3L積層充填した。
圧力スイング吸着装置1における精製処理工程として、吸着塔2a、2b、2c、2dそれぞれにおいて、吸着工程を130秒間、第1ガス送出工程を15秒間、減圧工程を25秒間、第2ガス送出工程を15秒間、放圧脱着工程を10秒間、真空脱着工程を80秒間、洗浄工程を25秒間、第2ガス導入工程を15秒間、待機状態を75秒間、第1ガス導入工程を15秒間、昇圧工程を115秒間、順次実行した。運転状態(a)の開始から運転状態(t)の終了までの1サイクルタイムは520秒間であった。
吸着工程にある吸着塔2a、2b、2c、2dの内部圧力の最大値は0. 8MPa(ゲージ圧)とした。第1ガス送出工程の開始時の吸着塔内部圧力と終了時の吸着塔内部圧力との圧力差は350kPaとした。減圧工程の開始時の吸着塔内部圧力と終了時の吸着塔内部圧力との圧力差は50kPaとした。第2ガス送出工程と第2ガス導入工程は、両工程にある2つの吸着塔の内部圧力が均等になるまで行った。真空脱着工程の末期にある吸着塔の内部圧力は−95kPa(ゲージ圧)とした。
オフガスG3、G3′はリサイクルすることなく常圧空間に放出した。
精製ヘリウムガスG2の流量は65.7NL/h、不純物濃度は0.8vol ppm(島津製作所製GC−PDDにて測定)、ヘリウム回収率は73.0%であった。
【0088】
〔実施例2〕
実施例1の安定状態から圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を68.2NL/h、不純物濃度を8.5vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は75.8%であった。
【0089】
〔実施例3〕
実施例1の安定状態からの原料ヘリウムガスG1の濃度変動を想定し、原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度を50.0vol %、空気濃度を50.0vol %に変更した。洗浄工程と減圧工程は実施しなかった。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を121.4NL/h、不純物濃度を0.9vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は80.9%であった。
【0090】
〔実施例4〕
実施例1の安定状態からの原料ヘリウムガスG1の濃度変動を想定し、原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度を15.0vol %、空気濃度を85.0vol %に変更した。第1ガス送出工程の開始時の吸着塔内部圧力と終了時の吸着塔内部圧力との圧力差は50kPaとした。また、減圧工程の開始時の吸着塔内部圧力と終了時の内部圧力との圧力差は70kPaとした。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を27.5NL/h、不純物濃度を0.9vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は61.2%であった。
【0091】
〔実施例5〕
実施例1の安定状態からの原料ヘリウムガスG1の濃度変動を想定し、原料ヘリウムガスG1のヘリウム濃度を50.0vol %、空気濃度を50.0vol %に変更した。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を116.1NL/h、不純物濃度を0.8vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は77.4%であった。
【0092】
〔実施例6〕
圧力スイング吸着装置1から排出されるオフガスG3、G3′の50%量を、リサイクル流路を介して原料ヘリウムガスG1に混入した。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を72.6NL/h、不純物濃度を0.8vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合の全工程のヘリウム回収率は80.7%となった。
【0093】
〔実施例7〕
実施例1の安定状態から第1ガス送出工程の開始時の吸着塔内部圧力と終了時の吸着塔内部圧力との圧力差を50kPaとした。また、減圧工程の開始時の吸着塔内部圧力と終了時の内部圧力との圧力差を70kPaとした。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を60.7NL/h、不純物濃度を0.9vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は67.4%であった。
【0094】
〔比較例1〕
第1ガス送出工程と第1ガス導入工程と真空脱着工程を行うことなく、放圧脱着工程の末期にある吸着塔の内部圧力を5kPa(ゲージ圧)として、原料ヘリウムガスG1の精製を行った。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を55.6NL/h、不純物濃度を0.9vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は61.8%となった。
【0095】
〔比較例2〕
第1ガス送出工程と第1ガス導入工程を行うことなく、原料ヘリウムガスG1の精製を行った。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を57.7NL/h、不純物濃度を0.8vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は64.1%となった。
【0096】
〔比較例3〕
真空脱着工程を行わず、放圧脱着工程の末期にある吸着塔の内部圧力を5kPa(ゲージ圧)として、原料ヘリウムガスG1の精製を行った。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を57.2NL/h、不純物濃度を0.9vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は63.6%となった。
【0097】
〔比較例4〕
第1ガス送出工程と第1ガス導入工程と真空脱着工程とを行わず、放圧脱着工程の末期にある吸着塔の内部圧力は5kPa(ゲージ圧)として、原料ヘリウムガスG1の精製を行った。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を64.7NL/h、不純物濃度を8.7vol ppmとした。他は実施例1同様とした。この場合のヘリウム回収率は71.9%となった。
【0098】
〔比較例5〕
第1ガス送出工程と第1ガス導入工程と真空脱着工程を行わず、放圧脱着工程の末期にある吸着塔の内部圧力は5kPa(ゲージ圧)として、原料ヘリウムガスG1の精製を行った。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を100.5NL/h、不純物濃度を0.9vol ppmとした。他は実施例3同様とした。この場合のヘリウム回収率は67.0%となった。
【0099】
〔比較例6〕
第1ガス送出工程と第1ガス導入工程と真空脱着工程とを行わず、放圧脱着工程の末期にある吸着塔の内部圧力は5kPa(ゲージ圧)として、原料ヘリウムガスG1の精製を行った。圧力スイング吸着装置1での吸着工程時間の調整により吸着工程の繰り返し間隔を変更し、精製ヘリウムガスG2の流量を25.1NL/h、不純物濃度を0.9vol ppmとした。他は実施例4同様とした。この場合のヘリウム回収率は55.7%となった。
【0100】
比較例1と2のヘリウム回収率の差から、真空脱着工程によるヘリウム回収率の向上度は2.3%程度である。比較例1と3のヘリウム回収率の差から、吸着塔の内部圧力差の低減回数を1回から2回に増加させることによるヘリウム回収率の向上度は1.8%程度である。よって、吸着塔の内部圧力差の低減回数を増加させることと、真空脱着工程とを組み合わせても、回収率の向上度は4.1%程度であろうと従来は考えられていた。しかし、実施例1のヘリウム回収率と比較例1、3のヘリウム回収率の差から、その組み合わせによるヘリウム回収率の向上度は8.9%〜9.4%程度である。よって、その組み合わせにより相乗効果を奏することを確認できる。
また、実施例1と7から、第1ガス送出工程にある吸着塔から第1ガス導入工程にある吸着塔に導入されるガス量を、原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に多くし、洗浄工程にある吸着塔に導入されるガス量を原料ヘリウムガスのヘリウム濃度が高い程に少なくすることで、ヘリウムガスの回収率が向上されることを確認できる。
実施例1と6から、オフガスG3、G3′をリサイクル流路を介して原料ヘリウムガスG1に混入することで、ヘリウム回収率が向上されることを確認できる。
実施例3と5から、原料ガスヘリウム濃度が高い場合は洗浄工程を実施しないことでヘリウム回収率が向上されることを確認できる。
実施例1と2から、ヘリウム純度を高くする必要がない場合はヘリウム回収率を向上できることを確認できる。
実施例1と比較例4、実施例3と比較例5、実施例4と比較例6から、吸着塔の内部圧力差の低減回数を増加させることと真空脱着工程とを組み合わせることで、精製ヘリウムの純度とヘリウム回収率を向上できることを確認できる。
【0101】
本発明は上記実施形態、実施例、変形例に限定されるものではなく、本発明思想から逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、吸着装置における吸着塔の数は4塔に限定されず3塔でもよいし5塔以上でもよい。さらに、各精製処理サイクルにおける吸着塔の内部圧力差の低減回数は3回以上であってもよい。また、上記実施形態では吸着塔に精製ヘリウムガスを導入することで昇圧工程を実行したが、精製ヘリウムガスに代えて原料ガスを吸着塔に導入することで昇圧工程を実行してもよい。さらに、第1ガス導入工程にある吸着塔に第1ガス送出工程にある吸着塔からの内部ガスだけでなく原料ガスを導入してもよい。