(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷媒回路と、該冷媒回路に設けられ圧縮機及び蒸発器を含む冷凍サイクル構成機器とを有し、冷媒より比重が大きく前記蒸発器に滞留した不溶性冷凍機油を前記冷媒から分離する冷凍装置の油分離装置において、
前記蒸発器の下部に設けられた油溜り部と、
前記油溜り部と前記圧縮機の冷媒吸入路とに接続された油戻し路と、
前記油戻し路に設けられて内部に冷凍機油を滞留可能であり、かつ該冷凍機油の滞留量を検出可能なフロートセンサと、
前記フロートセンサの上流側の前記油戻し路と前記圧縮機の冷媒吐出路とに接続された高圧冷媒導入路と、
前記フロートセンサで検出した前記冷凍機油の滞留量に応じて前記油戻し路を開閉し、前記フロートセンサに滞留した冷凍機油を前記冷媒吸入路に戻すための制御装置と、を備え、
前記フロートセンサは、
前記冷凍機油の比重より小さい比重を有するフロートと、
前記冷凍機油の滞留空間が形成され、該滞留空間に前記フロートが上下動可能に収容されるように構成されたケーシングと、
前記滞留空間に流入した前記冷凍機油によって浮上する前記フロートの上下方向位置を検出し、この検出値を前記制御装置に送るための位置センサと、を備えていることを特徴とする冷凍装置の油分離装置。
【背景技術】
【0002】
オゾン層破壊防止や温暖化防止等の観点から、室内の空調や食品などの冷凍に用いる冷凍装置の冷媒として、NH
3やCO
2等の自然冷媒が見直されている。そこで、冷却性能は高いが毒性があるNH
3を一次冷媒とし、毒性がないCO
2を二次冷媒とした冷凍装置が広く用いられている。
NH
3冷媒は、他の冷媒と比べて、COP(成績係数)が良く、また、アルキルベンゼンなどの不溶油を使用した場合、不溶油は一般に潤滑性能が良く、かつNH
3冷媒に溶解しないため、NH
3冷媒は冷媒としての特性が長期に亘って安定する等の利点がある。
【0003】
冷凍機に用いられる圧縮機は、小容量の冷凍庫用として、小容量で効率の良い往復動式圧縮機がよく用いられている。圧縮機を複数段とすることでさらに低温域の温度まで冷却できるが、往復動式圧縮機は複数段の圧縮機をコンパクトにまとめることができる利点がある。そこで、2段の往復動式圧縮機を用い、低段と高段の間に例えばエコノマイザなどの中間冷却器を設けることでCOP(成績係数)を向上させることができる。
往復動式圧縮機はクランクケースにのみ冷凍機油を溜めておけばよく、少ない冷凍機油で作動できる利点があるが、摺動部分が多いため、冷凍機油の潤滑性能の優劣はその作動に大きく影響する。
【0004】
一方、NH
3冷媒に不溶性の冷凍機油を用いた場合、不溶性の冷凍機油はNH
3冷媒から分離して機器類の底部に溜まりやすい。特に、低温の蒸発器では、冷凍機油の粘度が高くなるために、蒸発器に浸入した冷凍機油は徐々に蓄積し、蒸発器の性能を劣化させるおそれがある。そのため、滞留した冷凍機油を回収する必要がある。
特許文献1には、蒸発器と凝縮器間及び凝縮器と圧縮機の吐出冷媒路間に油戻し路を設け、デフロスト運転時に圧縮機から高圧の冷媒ガスを蒸発器に送り、蒸発器の油溜めポットに溜まった冷凍機油を前記凝縮器を介して前記圧縮機の冷媒吸入路に回収する油回収手段が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された油回収手段は、蒸発器及び受液器に油溜部を設ける必要があり高コストになる。また、回収作業は冷凍運転を一旦休止し、デフロスト運転時などに行う必要があり、冷凍装置の運転効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、かかる従来技術の課題に鑑み、蒸発器に溜まった冷凍機油を簡易かつ低コストな手段で分離回収可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る冷凍装置の油分離装置は、
冷媒回路と、該冷媒回路に設けられ圧縮機及び蒸発器を含む冷凍サイクル構成機器とを有し、冷媒より比重が大きく前記蒸発器に滞留した不溶性冷凍機油を前記冷媒から分離する冷凍装置の油分離装置において、
前記蒸発器の下部に設けられた油溜り部と、
前記油溜り部と前記圧縮機の冷媒吸入路とに接続された油戻し路と、
前記油戻し路に設けられて内部に冷凍機油を滞留可能であり、かつ該冷凍機油の滞留量を検出可能なフロートセンサと、
前記フロートセンサの上流側の前記油戻し路と前記圧縮機の冷媒吐出路とに接続された高圧冷媒導入路と、
前記フロートセンサで検出した前記冷凍機油の滞留量に応じて前記油戻し路を開閉し、前記フロートセンサに滞留した冷凍機油を前記冷媒吸入路に戻すための制御装置と、を備え、
前記フロートセンサは、
前記冷凍機油の比重より小さい比重を有するフロートと、
前記冷凍機油の滞留空間が形成され、該滞留空間に前記フロートが上下動可能に収容されるように構成されたケーシングと、
前記滞留空間に流入した前記冷凍機油によって浮上する前記フロートの上下方向位置を検出し、この検出値を前記制御装置に送るための位置センサと、を備えている。
【0009】
前記構成(1)において、前記位置センサで前記フロートの上下方向位置を検出し、該検出値が上限閾値を超えたら、圧縮機の冷媒吐出路から高圧の冷媒ガスを前記油戻し路に供給する。こうして、前記フロートセンサの前記滞留空間に溜まった冷凍機油を前記油戻し路に流出させ前記冷媒吸入路に戻すようにする。
前記構成(1)によれば、前記滞留空間に溜った冷凍機油のみを分離して圧縮機入口の冷媒吸入路に戻すので、特許文献1に開示された油回収手段と比べて、冷媒液の戻りによるトラブルを回避することができる。
さらに、前記位置センサで冷凍機油の滞留量を検出できるので、該滞留量を監視しながら冷凍運転中に自動で油回収を行うことができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、前記構成(1)において、
前記高圧冷媒導入路の接続部より上流側の前記油戻し路に設けられた第1の開閉弁と、
前記フロートセンサより下流側の前記油戻し路に設けられた第2の開閉弁と、
前記高圧冷媒導入路に設けられた第3の開閉弁とをさらに備え、
前記制御装置は、
前記位置センサの検出値が上限閾値に超えたとき、前記第1の開閉弁を閉鎖すると共に、前記第2の開閉弁及び前記第3の開閉弁を開放し、
前記位置センサの検出値が下限閾値を下回ったとき、前記第2の開閉弁及び前記第3の開閉弁を閉鎖し、前記第1の開閉弁を開放する。
【0011】
前記構成(2)によれば、油回収時、前記第1の開閉弁を閉鎖して前記油溜り部と前記フロートセンサとを遮断した上で、前記高圧冷媒導入路の高圧冷媒を前記油戻し路に供給できるので、冷凍運転中でも油回収を確実に行うことができ、運転効率を低下させない。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、前記構成(1)又は(2)において、
前記フロートに上下方向に一体に設けられた被検出ロッドと、
前記ケーシングに支持され、前記被検出ロッドを上下方向に往復動可能に案内する案内部材と、を有し、
前記位置センサは前記被検出ロッドの上下方向位置を検出するものである。
前記構成(3)によれば、前記被検出ロッドの上下方向位置を検出することで前記フロートの上下方向位置を検出するようにしているので、前記フロートの上下方向位置の検出が容易になり、かつ検出精度を向上できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(3)のいずれかにおいて、
前記ケーシングの側壁に前記油戻し路の入口開口が形成されると共に、前記ケーシングの底壁に前記油戻し路の出口開口が形成され、
前記フロートの比重は前記冷媒より大きくかつ前記冷凍機油より小さい。
前記構成(4)において、前記フロートセンサのケーシング内で最下部に溜まった冷凍機油の上にフロートが浮き、冷凍機油の上方に溜まった冷媒にはフロートは浮かない。そのため、前記出口開口から先に冷凍機油を流出でき、冷凍機油と冷媒の分離を容易かつ精度良く行うことができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(4)のいずれかにおいて、
前記冷媒はNH
3冷媒であり、
前記冷凍機油は前記NH
3冷媒に対して不溶性を有する。
前記構成(5)において、冷凍機油を前記フロートセンサのケーシング内でNH
3冷媒から分離し、NH
3冷媒の下方に滞留し、冷凍機油のみにフロートが浮く。そのため、油回収時、該ケーシングの出口開口から油戻し路への冷凍機油の流出を容易に行うことができる。
【0015】
(6)幾つかの実施形態では、前記構成(1)〜(5)のいずれかにおいて、
前記冷凍装置は、
NH
3冷媒が循環し冷凍サイクル構成機器が設けられた一次冷媒回路と、
CO
2冷媒が循環し前記蒸発器として機能するCO
2液化器を介して前記一次冷媒回路と接続された二次冷媒回路とを有し、
前記CO
2液化器の下部に前記油溜り部が設けられている。
前記構成(6)によれば、NH
3/CO
2冷凍装置の前記CO
2液化器に前記構成(1)〜(5)のいずれかの油分離装置を備えることで、前記CO
2液化器からの冷凍機油の分離回収を簡易かつ低コストな手段で、運転効率の低下をまねくことなく行うことができる。
【0016】
(7)幾つかの実施形態では、前記構成(6)において、
前記CO
2液化器はシェルアンドチューブ型満液式CO
2液化器であり、シェル側にNH
3冷媒が導入され、チューブ側にCO
2冷媒が導入されるものである。
前記構成(7)において、シェル側に導入されたNH
3冷媒に混入している冷凍機油はCO
2液化器の下部に設けられた油溜り部に溜まる。そのため、かかる構成のCO
2液化器に前記構成(1)〜(5)のいずれかの油分離装置を備えることで、前記CO
2液化器からの冷凍機油の分離回収を簡易かつ低コストな手段で、運転効率の低下をまねくことなく行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、蒸発器に前記構成の油分離部を備えることにより、蒸発器からの油回収を簡易かつ低コストな手段でかつ運転効率の低下をまねかず行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0020】
図1〜
図4は、本発明の少なくとも一実施形態に係る油分離装置を備えたNH
3/CO
2冷凍装置を示している。
図1に示すように、冷凍装置10は、冷媒回路と、該冷媒回路に設けられ圧縮機16及び蒸発器(CO
2液化器34)を含む冷凍サイクル構成機器とを有している。圧縮機16は前記冷媒回路を循環する冷媒より比重が大きい不溶性冷凍機油を用いており、前記蒸発器に滞留した前記冷凍機油を冷媒から分離する油分離部60が設けられている。
例示的な実施形態では、前記冷媒回路は、NH
3冷媒が循環する一次冷媒回路12とCO
2冷媒が循環する二次冷媒回路14で構成され、これらの回路は蒸発器としての機能を有するCO
2液化器34で接続されている。圧縮機16はNH
3冷媒より比重が大きい冷凍機油を用い、油分離部60はCO
2液化器34の下部に設けられた油溜めポット62を含んでいる。
【0021】
油分離部60は、CO
2液化器34を構成するケーシングの下部に設けられた油溜めポット62と、油溜めポット62と圧縮機16の冷媒吸入路12bとに接続された油戻し路64とを有している。
また、油分離部60は、油戻し路64に設けられて内部に冷凍機油rの滞留空間Sを有し、該滞留空間Sに溜まった冷凍機油rの滞留量を検出可能なフロートセンサ66と、フロートセンサ66の上流側の油戻し路64と圧縮機16の吐出口に接続される一次冷媒吐出路12cとに接続された高圧冷媒導入路68とを有している。
図4に示すように、制御装置100はフロートセンサ66で検出した冷凍機油の滞留量に応じて油戻し路64を開閉し、フロートセンサ66に滞留した冷凍機油を一次冷媒回路12の一部であって圧縮機16の入口に接続される一次冷媒吸入路12bに戻す。
【0022】
図3に示すように、フロートセンサ66は、冷媒及び冷凍機油の中間の比重を有するフロート72と、滞留空間Sを有し該滞留空間Sにフロート72が上下動可能に収容されるように構成されたケーシング70と、滞留空間Sに流入した冷凍機油によって浮上するフロート72の上下方向位置を検出し、この検出値を制御装置100に送る位置センサ(スイッチ部80)とを備えている。
【0023】
図1に示すように、例示的な実施形態では、CO
2液化器34は、シェルアンドチューブ型満液式で構成され、シェル側にNH
3冷媒が導入され、チューブ側にCO
2冷媒が導入される。
また、高圧冷媒導入路68の接続部より上流側の油戻し路64にモータバルブ86が設けられ、フロートセンサ66より下流側の油戻し路64に電磁開閉弁88が設けられ、さらに、高圧冷媒導入路68に電磁開閉弁90が設けられている。
制御装置100は、前記位置センサ(スイッチ部80)の検出値が上限閾値を超えたとき、モータバルブ86を閉鎖すると共に、電磁開閉弁88及び90を開放することで、フロートセンサ66に溜まった冷凍機油を一次冷媒吸入路12bに戻すことができる。
また、前記位置センサの検出値が下限閾値を下回ったとき、電磁開閉弁88及び90を閉鎖し、モータバルブ86を開放することで、フロートセンサ66に冷凍機油を溜めることができる。
【0024】
例示的な実施形態では、フロート72に上下方向に一体に被検出ロッド(ロッド82)が設けられている。ロッド82はケーシング70に支持された案内部材(案内パイプ76)で上下方向に往復動可能に案内される。前記位置センサは前記被検出ロッドの上下方向位置を検出することでフロート72の上下方向位置を検出する。
【0025】
例示的な実施形態では、ケーシング70の側壁に油戻し路64の入口開口70aが形成され、ケーシング70の底壁に油戻し路64の出口開口70bが形成されている。
例示的な実施形態では、圧縮機16は半密閉型の単機2段往復動式圧縮機であり、互いに直列に接続された低段圧縮部16a及び高段圧縮部16bで構成されている。圧縮機16は駆動装置としてハーメチックモータ18を有している。ハーメチックモータ18には冷却水路48が接続され、ハーメチックモータ18はインバータ18aによって回転数制御される。
高段圧縮部16bから吐出されたNH
3冷媒ガスは、受液器として機能するNH
3凝縮器20に送られ、凝縮する。
【0026】
例示的な実施形態では、NH
3凝縮器20はシェルアンドチューブ型熱交換器で構成され、軸方向両端に形成されたカバー20aの一方に冷却水路22が接続されている。両カバー間に冷却水路22から導入された冷却水wが循環する多数の伝熱管20bが架設されている。NH
3凝縮器20の下部には冷媒液溜めポット20cが形成され、冷媒液溜めポット20cには、冷媒液溜めポット20cに溜まるNH
3冷媒の上限液位を検出する上限レベルセンサ24a及び下限液位を検出する下限レベルセンサ24bが設けられている。
図4に示すように、これらレベルセンサの検出信号は制御装置100に送られる。
【0027】
NH
3凝縮器20の下流側で一次冷媒回路12に中間冷却器としてエコノマイザ26が設けられている。エコノマイザ26の上流で一次冷媒回路12から分岐路28が分岐し、分岐路28に温度式膨張弁30が設けられている。分岐路28はエコノマイザ26で一次冷媒回路12と熱交換部を形成すると共に、低段圧縮部16aの吐出側の一次冷媒路12aに接続されている。
温度式膨張弁30を通ったNH
3冷媒は気化して低温となり、エコノマイザ26で一次冷媒回路12を流れるNH
3冷媒を過冷却する。分岐路28の低温となったNH
3冷媒ガスは低段圧縮部16aと高段圧縮部16b間に設けられた一次冷媒路12aに流入し、高段圧縮部16bに送られる低段圧縮部16aから吐出されるNH
3冷媒ガスを冷却する。
温度式膨張弁30によって、分岐路28のNH
3冷媒は一次冷媒路12aへ液バックしないように過熱度が調整される。
【0028】
このように、圧縮機16は、低段圧縮部16a及び高段圧縮部16bが往復動式圧縮機で構成された単機2段圧縮機であり、かつエコノマイザ26を備えているので、低温域の温度まで冷却可能であると共に、簡易な構成でCOPを向上できる。
【0029】
冷媒液溜めポット20cの下部に一次冷媒回路12が接続されており、重力で冷媒液溜めポット20cに溜まったNH
3冷媒液は一次冷媒回路12に流出する。
エコノマイザ26の下流側で一次冷媒回路12に給液電磁弁31及び電子式膨張弁32が設けられ、電子式膨張弁32の下流側で一次冷媒回路12はCO
2液化器34の下部に接続されている。
エコノマイザ26で過冷却されたNH
3冷媒は電子式膨張弁32で減圧された後、CO
2液化器34に導入される。
【0030】
例示的な実施形態では、
図1に示すように、CO
2液化器34はシェルアンドチューブ型満液式CO
2液化器で構成されている。CO
2液化器34は軸方向両端にカバー34aが形成され、両カバー間に多数の伝熱管34bが架設されている。前記両カバーの一方で該カバーの下部に二次冷媒回路14の一部としてCO
2冷媒液を冷却負荷に送るCO
2送り路14aが接続され、他方のカバーに冷却負荷からCO
2冷媒液ガスが戻るCO
2戻り路14bが接続されている。CO
2液化器34の上部には、一次冷媒回路12の一部を構成し低段圧縮部16aの入口に接続される一次冷媒吸入路12bが接続されている。
こうして、CO
2液化器34は、シェル側にNH
3冷媒が導入され、伝熱管34bにCO
2冷媒が流れる。
一次冷媒吸入路12bには、低段圧縮部16aに吸入されるNH
3冷媒ガスの温度を検出する吸入温度センサ36及び圧力を検出する吸入圧力センサ38が設けられている。
【0031】
電子式膨張弁32を経てCO
2液化器34に流入したNH
3冷媒液は、CO
2戻り路14bから戻ったCO
2冷媒から蒸発潜熱を吸収して気化すると共に、CO
2冷媒を液化する。気化したNH
3冷媒は一次冷媒吸入路12bを経て低段圧縮部16aに吸入される。液化したCO
2冷媒液はCO
2送り路14aを通ってCO
2受液器50に送られる。
【0032】
例示的な実施形態では、圧縮機16にはオイルクーラ40が設けられている。オイルクーラ40と圧縮機16との間に冷凍機油が循環する油循環路44及び46が接続される。オイルクーラ40には、圧縮機16のジャケットに連通する冷却水路42が接続されている。油循環路44及び46を循環する冷凍機油はオイルクーラ40で冷却水wによって冷却される。
【0033】
図2に示すように、例示的な実施形態では、CO
2送り路14a及びCO
2戻り路14bはCO
2受液器50に接続されている。CO
2受液器50を構成するケーシングの下部には液溜めポット50aが形成され、液溜めポット50aと冷却負荷である冷凍庫56の内部に設けられた冷却ユニット58との間にCO
2送り路52aが設けられている。
液溜めポット50aに溜まったCO
2冷媒液は、CO
2送り路52aに設けられた液ポンプ54によってCO
2送り路52aを介して冷却ユニット58に送られる。冷却ユニット58で冷凍庫内部の冷却に供された後のCO
2冷媒は、CO
2戻り路52bを介してCO
2受液器50に戻される。
【0034】
図4は冷凍装置10の制御系を示している。
図4において、上限レベルセンサ24a及び下限レベルセンサ24bの検出信号は制御装置100に入力される。即ち、冷媒液溜めポット20cに溜まったNH
3冷媒の液位が下限レベルセンサ24bの位置に達した時、下限レベルセンサ24bは給液電磁弁31のオフ信号を制御装置100に送る。また、NH
3冷媒の液位が上限レベルセンサ24aの位置に達した時、上限レベルセンサ24aは給液電磁弁31のオン信号を制御装置100に送る。
制御装置100は、NH
3冷媒の液位が常に下限レベルセンサ24bと上限レベルセンサ24aの間にあるように電子式膨張弁32の開度を制御する。
【0035】
また、吸入温度センサ36及び吸入圧力センサ38の検出信号は制御装置100に入力される。制御装置100は、これらの検出値から低段圧縮部16aに吸入されるNH
3冷媒ガスの過熱度を演算し、該過熱度が設定値となるように電子式膨張弁32の開度を制御する。
【0036】
例示的な実施形態では、冷凍機油として、NH
3冷媒に対し潤滑性能が良好な不溶油であって、NH
3冷媒及びフロート72より比重が大きい冷凍機油(例えばアルキルベンゼンなど)が用いられる。不溶性の冷凍機油はNH
3冷媒との分離性が良好で、かつ高い潤滑性能を保持できる。
油分離部60は、CO
2液化器34に貯留したNH
3冷媒からNH
3冷媒に混じった不溶性の冷凍機油を分離する。以下、油分離部60の構成を説明する。
【0037】
図1に示すように、例示的な実施形態では、CO
2送り路14aが接続されたカバー34aの近傍でCO
2液化器34の下部に油溜めポット62が形成されている。油溜めポット62の下端と一次冷媒吸入路12bとに油戻し路64が接続されている。NH
3冷媒に混じった比重の大きい冷凍機油が油溜めポット62に溜まりやすいように、CO
2液化器34は油溜めポット62が設けられた側のカバー34aが下側になるように若干傾斜している。
また、油戻し路64にフロートセンサ66が設けられ、フロートセンサ66より上流側の油戻し路64と一次冷媒回路12の一部であり高段圧縮機16bの吐出口に接続された冷媒吐出路12cとの間に高圧冷媒導入路68が接続されている。
【0038】
以下、フロートセンサ66の例示的な構成を
図3に基づいて説明する。
図3において、フロートセンサ66のケーシング70は上下方向に長い円形横断面を有し、内部に冷凍機油が流入可能な滞留空間Sを有している。また、隔壁に油戻し路64に連通する入口開口70a及び出口開口70bを有し、その他は密閉壁で構成されている。入口開口70aはケーシング70の側壁に形成され、出口開口70bはケーシング70の下部に形成されている。滞留空間Sに球形のフロート72が収容されている。
フロート72はNH
3冷媒と冷凍機油との中間の比重を有するように構成されている。
【0039】
フロート72の上方でケーシング70の内壁にパイプアダプタ74が設けられ、パイプアダプタ74に中空の案内パイプ76がパイプアダプタ74から上方に向けて固定されている。ケーシング70の上端にスイッチケース78が装着され、スイッチケース78の底壁に形成された孔から案内パイプ76がスイッチケース78の内部に導設されている。スイッチケース78の内部で案内パイプ76にスイッチ部80が取り付けられている。
フロート72の上端にケーシング70の軸方向に沿って配置されたロッド82が装着されている。ロッド82は案内パイプ76の内部に上下動可能に挿入され、その上端はスイッチ部80の高さまで十分達している。
【0040】
かかる構成において、油戻し路64からNH
3冷媒および冷凍機油rの混合物が入口開口70aを介して滞留空間Sに流入すると、混合物は両者の比重差によってNH
3冷媒が冷凍機油rの上になり、冷凍機油rがケーシング70の底部に溜まるように分離する。また、フロートセンサ66はNH
3冷媒と冷凍機油rとの中間の比重を有するので、NH
3冷媒には浮かばず、冷凍機油rのみに浮くように上方へ動く。そのため、冷凍機油rのみを出口開口70bから油戻し路64へ導出させることができる。
出口開口70bの周囲の内壁には、周方向に部分的に突起84が形成されている。突起84によってフロート72が最下端位置にあるときでもフロート72が出口開口70bを塞がない。
【0041】
スイッチ部80は、ロッド82の上下方向位置を検出することで、フロート72の上下方向位置を検出し、その検出信号を制御装置100に送る。
例示的な実施形態では、ロッド82の上部部位には被検出スポットDが設けられ、スイッチ部80は電気的手段又は磁気的手段により被検出スポットDの位置を検出可能に構成されている。被検出スポットDを検出することで、例えば、フロート72が最下端位置(フロート72の下部が突起84に接した位置)H
1及び最上端位置(最下端位置から設定ストロークLだけ上方の位置)H
2を検出し、その検出信号を制御装置100に送る。
【0042】
図1に示すように、高圧冷媒導入路68の接続部より上流側の油戻し路64にモータバルブ86が設けられ、フロートセンサ66より下流側の油戻し路64に電磁開閉弁88が設けられ、さらに、高圧冷媒導入路68に電磁開閉弁90が設けられている。
制御装置100は、スイッチ部80がフロート72が最上端位置H
2に位置することを検出したとき、モータバルブ86を閉とし、電磁開閉弁88及び90を開とする。これによって、フロートセンサ66に溜まった冷凍機油は一次冷媒吸入路12bに流出する。スイッチ部80がフロート72が最下端位置H
1に位置することを検出したとき、電磁開閉弁88及び90を閉とし、モータバルブ86を開とする。
【0043】
幾つかの実施形態によれば、CO
2液化器34から冷凍機油rのみを分離して一次冷媒吸入路12bに戻すようにしているので、特許文献1に開示された油回収手段と比べて、確実に冷媒と冷凍機油を分離回収できるので冷媒液の戻りによるトラブルを回避することができる。
また、油回収時、モータバルブ86を閉鎖して油溜めポット62とフロートセンサ66とを遮断した上で、高圧冷媒導入路68の高圧冷媒を油戻し路64に供給するので、冷凍運転中でも油回収を確実に行うことができ、運転効率を低下させない。
さらに、スイッチ部80で冷凍機油rの滞留量を検出できるので、該滞留量を監視しながら冷凍運転中に自動で油回収を行うことができる。
【0044】
例示的な実施形態によれば、冷凍機油面でフロート72の上下方向位置を検出するので、フロート72の上下方向位置の検出が容易になり、かつ検出精度を向上できる。
また、滞留空間SでNH
3冷媒の下方に冷凍機油rが溜まるため、出口開口70bから確実に冷凍機油rを流出させることができる。
出口開口70bの周囲に突起84があるため、フロート72が最下端位置H
1にあるときでも出口開口70bは開放されるため、冷凍機油rを出口開口70bから流出させ、NH
3冷媒液と分離して電磁開閉弁88までの油戻し路64に冷凍機油rを溜めることができる。
【0045】
また、例示的な実施形態によれば、副次的な作用効果として、沸騰状態にある蒸発器(CO
2液化器34)でなく、NH
3凝縮器20内の安定したNH
3冷媒の液位を制御することでCO
2液化器34内のNH
3冷媒の液位を設定値に制御できる。そのため、確実にNH
3冷媒量を管理できるので一次冷媒回路12のNH
3冷媒量を冷凍サイクル構成機器の作動に最低限必要な量まで低減でき、省エネ及び設備の低コスト化が可能になる。
また、CO
2液化器34でNH
3冷媒から冷凍機油を分離できるので、さらなる省エネ及び低コスト化が可能になる。
さらに、低段圧縮部16aに吸入されるNH
3冷媒の過熱度を適正に制御でき、かつ低段圧縮部16aへの液バックを抑制できる。
【0046】
また、制御装置100によって、吸入圧力センサ38及び吸入温度センサ36の検出値から演算した過熱度に基づいて、電子式膨張弁32の開度を制御するので、過熱度制御及び液バック防止を精度良く行うことができる。
また、NH
3凝縮器20では、冷媒液溜めポット20cに上限レベルセンサ24a及び下限レベルセンサ24bを設けたことで、NH
3受液器20内のNH
3冷媒の液位を正確かつ精度良く検出できる。
さらに、CO
2液化器34でNH
3冷媒と熱交換して冷却され液化したCO
2冷媒は、一旦CO
2受液器36に貯留され、CO
2受液器36から冷却ユニット58に送られるので、冷却ユニット58へのCO
2冷媒の循環を容易に行うことができる。