【文献】
hypothetical protein MGL_1304 [Malassezia globosa CBS 7966].,2008年,URL, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/XP_001732036.1
【文献】
Arch. Dermatol. Res.,2012年 4月,vol.304, no.8,pp.647-654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
標準物質を含む、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の量の測定用組成物であって、該標準物質がMGL_1304蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgEモノクローナル抗体である、組成物。
MGL_1304蛋白質が固相化されたELISAプレートまたはヒト由来の試料を固相化するためのELISAプレートを含むELISAキットである、請求項19または20に記載のキット。
請求項36に記載のスクリーニング方法を行うことにより単離されたヒトIgE抗体の遺伝子を発現する動物細胞を培養することを含む、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片およびその製造方法
本発明は、第1の側面(aspect)において、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片およびその製造方法を提供する。
【0013】
本明細書において、汗アレルギー抗原蛋白質は、汗アレルギーの抗原である蛋白質であり、ヒト汗から公知の方法(例えば、田中稔彦、他.アレルギー 56: 54-57, 2007, Tanaka A, et al. Exp Dermatol 15: 283-290, 2006, 国際公開2009−133951号パンフレット)で部分精製される蛋白質または微生物:Malassezia globosa(例えば、ATCCから購入できるMalassezia globosa(番号MYA-4612))が産生する蛋白質であって、汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体(受託番号FERM BP-11111)に結合する蛋白質であり得る。また、汗アレルギー抗原蛋白質は、Malassezia globosaが菌体外に分泌する約17kDa(例えば、14kDa以上20kDa以下)の蛋白質であり得る。例えば、汗アレルギー抗原蛋白質は、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)であり得る。配列番号1で表されるアミノ酸配列を以下に示す。
配列番号1:MVSLNIFSAAFVASLASAVFAAPSALERRAAPDNTVWVTSVADHCLILPRHKMSVGDSESPGNMRSFCTKPYSSKQGQLASDFWTKAHFKKTDKYVQITGCINPNVQSTLLSNDEGGQYDSNGGEGGRGNPAGSVCLGYSSYVELVEPAGNRACIRCCYDPSDCDVSQDEAGCETVIPGKYDC
【0014】
汗アレルギー抗原はヒスタミン遊離活性を有する。ヒスタミン遊離活性は、公知の方法に従って測定することができる(Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)。例えば、細胞表面にIgE受容体を発現する細胞に汗アレルギー抗原及びIgE抗体を接触させ、該細胞から分泌されるヒスタミン量を測定することで、ヒスタミン遊離活性を決定してもよい。細胞表面にIgE受容体を発現する細胞は、例えば、好塩基球、マスト細胞(肥満細胞)、IgE受容体遺伝子を発現させて人工的に作製したヒスタミン等の化学伝達物質遊離能を有する細胞株等が挙げられる。
例えば、ヒスタミン量を測定し、全ヒスタミン量に対する遊離ヒスタミン量が3〜97%の範囲の場合にヒスタミン遊離活性を有すると判定することができる(Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)。
【0015】
汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体とは、例えば、汗アレルギー抗原蛋白質の存在下でマスト細胞または好塩基球等の高親和性IgE受容体を発現している細胞に接触させたときに、ヒスタミンや酵素等の顆粒内物質を細胞外に放出しないヒトIgE抗体であり得る。
ヒトIgE抗体は、ヒト抗体であり、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよい。ヒトIgE抗体またはその抗体の断片は、また、酵素等(例えば、Horseradish Peroxidase、ビオチン等)で標識されてもよい。
【0016】
本明細書において、抗体の断片は、抗原と特異的に結合する抗体の一部である。抗体の断片には、Fab (fragment of antigen binding)、F(ab')2、Fab'、一本鎖抗体(single chain Fv;以下、scFvと称する)、ジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv;以下、dsFvと称する)、2量化体V領域断片 (以下、Diabodyと称する)、CDRを含むペプチド等を挙げることができる(エキスパート・オピニオン・オン・テラピューティック・パテンツ、第6巻、第5号、第441〜456頁、1996年)。抗体および抗体の断片は、当業界にて周知の方法により調製可能である(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988、http://www.gene.mie-u.ac.jp/Protocol/Original/Antibody.html、米国特許第6331415号、米国特許第5693761号、米国特許第5225539号、米国特許第5981175号、米国特許第5612205号、米国特許第5814318号、米国特許第5545806号、米国特許第7145056号、米国特許第6492160号、米国特許第5871907号、米国特許第5733743号などを参照)。
【0017】
本発明者らは、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体として、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)(DIA HE1-01A/DIA HE1-1A)(ABS社IgE抗体とも称す)を見出した。
一つの実施態様として、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片は、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)(DIA HE1-01A/DIA HE1-1A)またはその抗体断片であり得る。なお、IgEモノクローナル抗体(クローンHE1)(DIA HE1-01A/DIA HE1-1A)は、例えば、Fairley J.A., et al., (2007) J. Invest. Dermatol. 127:2605-2611において、Non-specific human IgE (http://www.diatec.com, Oslo, Norway)として使用されている。
ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)(Catalog Number:DIA HE1-01A/DIA HE1-1A)は、健常人ドナー由来のIgEモノクローナル抗体である。
この事実から、汗アレルギー患者ではなくて健常人由来のIgE抗体発現ライブラリから、「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体」を単離できる妥当性が示された。よって、一つの実施態様として、本発明は、健常人由来のIgE抗体発現ライブラリから、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体をスクリーニングする方法を提供する。
【0018】
ヒトIgEモノクローナル抗体またはその断片は、ファージディスプレイ法を用いてスクリーニングできることが報告されている(Steinverger P. et al., (1996) J. Biol. Chem. 271, 10967-10972等)。
例えば、ヒト由来のIgE産生細胞から抽出されたtotal RNAを使用してM13などの繊維状ファージに蛋白質を発現させ、ヒトIgE発現ナイーブ(非免疫)ライブラリを構築し、パニングにより目的の生物活性を有するヒトIgEモノクローナル抗体をスクリーニングすることができる。
【0019】
よって、一つの実施態様として、本発明は、
a)健常人由来のIgE産生細胞から抽出されたRNAを使用してscFvファージライブラリ(ナイーブ(非免疫)ライブラリ)を構築する工程;
b)汗アレルギー抗原蛋白質に結合するscFvを発現するファージをライブラリからスクリーニングして単離する工程;
c)b)で単離されたファージからVHおよびVL遺伝子をPCRで増幅し、汗アレルギー抗原蛋白質に結合するIgE抗体を調製する工程;および
d)c)で調製されたIgE抗体を汗アレルギー抗原蛋白質の存在下でマスト細胞または好塩基球に反応させ、脱顆粒を起こさないIgE抗体を単離する工程
を含む、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体をスクリーニングする方法を提供する。
「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片」のスクリーニング方法の具体例には、限定はされないが、以下の工程を含む:
工程1: 健常人の末梢血単核球を調製する;
工程2: mRNAを単離しcDNAを合成する;
工程3: cDNAよりPCRでVH遺伝子とVL遺伝子をそれぞれ別個に増幅する;
工程4: 増幅したVH遺伝子とVL遺伝子をランダムに連結させ(例えば、増幅したVH遺伝子とVL遺伝子とを(GGGGS)
3等のリンカ―ペプチド配列をコードしたリンカーDNAを利用してアセンブリPCRによりランダムに連結させ)、scFv遺伝子を調製する;
工程5: 調製したscFv遺伝子をファージミドベクター(例えば、pCANTAB5E)に組み込み、scFv遺伝子ライブラリを構築する;
工程6: 調製したscFv遺伝子ライブラリを大腸菌に形質転換後、ヘルパーファージを重感染させ、scFvファージライブラリを調製する;
工程7: 固定化した汗アレルギー抗原蛋白質にscFvファージライブラリを反応させ、結合しなかったファージを洗浄により除去した後に、結合したファージを溶出し大腸菌に感染させて増殖させるという操作を数回行うことで、汗アレルギー抗原蛋白質に特異的なscFvを発現するファージを単離する;
工程8: 単離したファージより、汗アレルギー抗原蛋白質に特異的なscFvのVHとVLの遺伝子をPCRにより増幅し、抗体の定常領域遺伝子があらかじめ組み込まれているプラスミドベクターに導入し、CHO等の動物細胞で発現させて、汗アレルギー抗原蛋白質に結合するモノクローナル抗体を調製する;
工程9: 調製した汗アレルギー抗原蛋白質に結合するモノクローナル抗体を、汗アレルギー抗原蛋白質の存在下でマスト細胞または好塩基球等の高親和性IgE受容体を発現している細胞に接触させ、ヒスタミン遊離活性を測定し、ヒスタミン遊離活性を有しないモノクローナル抗体を「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体」として単離する、
方法が挙げられる。 上記実施態様において、PCRで使用されるプライマーは、当業者が適宜設計できる(Steinverger P. et al., (1996) J. Biol. Chem. 271, 10967-10972等)。
また、一つの実施態様として、本発明は、上記スクリーニング方法を実施し、その結果単離されたヒトIgE抗体の遺伝子を発現する動物細胞(例えば、CHO細胞)を培養することを含む、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体を製造する方法を提供する。
また、一つの実施態様として、本発明が提供する「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片」は、健常人由来のIgE産生細胞から抽出されたRNAを使用して構築されたヒトIgE発現ライブラリより単離されたヒトIgEモノクローナル抗体またはその抗体断片であり得る。
【0020】
2.汗アレルギーもしくは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物、汗アレルギー抗原除去もしくは中和用組成物または汗アレルギー抗原除去材
本発明は、第2の側面(aspect)において、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片を含む、汗アレルギーもしくは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物、汗アレルギー抗原除去もしくは中和用組成物または汗アレルギー抗原除去材を提供する。
【0021】
本発明が提供するIgEモノクローナル抗体は、汗アレルギー抗原蛋白質に結合するヒトIgEであり、かつ高親和性IgEに安定して結合(感作)するが、このモノクローナル抗体により感作されたマスト細胞および好塩基球の脱顆粒を惹起しない。このIgEモノクローナル抗体は本発明の第1の側面で提供される抗体であり得、例えばABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)であり得るが、これに限るものではない。
よって、このIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)またはその抗体の断片を含む組成物は、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物となり得る。
【0022】
本明細書において、汗アレルギー抗原が関連する疾患は、汗に含まれる抗原物質により誘引される汗アレルギーを随伴する疾患であり得、例えば、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(例えば、コリン性蕁麻疹)、アレルギー性鼻炎等が挙げられる。
【0023】
本発明が提供する治療用組成物は、本発明の第1の側面で提供される抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))を使用して、適宜製剤化される。例えば、本発明が提供する治療用組成物は、医薬品として許容できる担体(添加剤も含む)と共に製剤化することができる。医薬品として許容できる担体としては、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、溶剤(例えば、水、食塩水、大豆油等)、保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エステル等)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記治療用組成物の投与量、投与方法は、投与対象の年齢、体重、健康状態によって、当業者により適宜選択され得る。例えば、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片は、0. 1μg/kg体重〜10mg/kg体重で投与されてもよく、例えば、成人1日当たり0.1〜100mgで静脈内投与されてもよい。
【0024】
また、汗アレルギー抗原蛋白質に特異的に結合する抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片は、汗アレルギー抗原の抗原活性を中和するために使用できる。また、汗アレルギー抗原を患部から除去するためにも使用できる。
例えば、汗アレルギー抗原蛋白質に特異的に結合する抗体またはその抗体の断片を含む生理食塩水等の等張液を患部に接触させることにより、汗アレルギー抗原が中和および/または汗アレルギー抗原の患部からの除去が達成され得る。
本発明により提供される汗アレルギー抗原除去もしくは中和用組成物は、本発明の第1の側面で提供される抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))を使用して、適宜調製される。例えば、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片を0.01μg/ml〜10mg/mlで含んで、溶液組成物を調製してもよい。
【0025】
また、汗アレルギー抗原蛋白質に特異的に結合する抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))を繊維に固定化して、汗アレルギー抗原を患部から除去する除去材として使用してもよい。除去材の例としては、拭き取りシートが挙げられる。このような除去材は、当業者が適宜製造することができる。
例えば、特許第3642340号には、公定水分率が7%以上である繊維(織布または不織布等)に抗体を固定化して、拭き取りシート等の除去材を製造する方法が開示されている。
抗体の繊維等の担体に固定化する方法は、例えば、担体をγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングしたのちにアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法を挙げることができる。ここで、上記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C6H5NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。また、抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよく、使用されるリンカーの例としては、マレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl)エステル、イミドエステル、EDC(1-Etyl-3-[3-dimetylaminopropyl]carbodiimido)、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanete)が挙げられる。
除去材は、グリセロールを含む水に含浸させて保管され得る。
【0026】
一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギーもしくは汗アレルギー抗原が関連する疾患の治療用組成物、汗アレルギー抗原除去もしくは中和用組成物または汗アレルギー抗原除去材の製造のための、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片の使用を提供する。
【0027】
一つの実施態様として、本発明は、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片を投与することを含む、汗アレルギーもしくは汗アレルギー抗原が関連する疾患を治療する方法を提供する。
また、本発明は、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片を汗アレルギー抗原蛋白質と接触させることを含む、汗アレルギー抗原蛋白質の中和または除去方法を提供する。
【0028】
3.ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質の量の測定用組成物またはキット
本発明は、第3の側面(aspect)において、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片を含む、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質の量の測定用組成物またはキットを提供する。
汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体は、本発明の第1の側面で提供される抗体であり得、例えばABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)であり得るが、これに限るものではない。
【0029】
汗アレルギー抗原蛋白質の検出および汗アレルギー抗原の量の測定は、任意の方法で測定することができる。例えば、ウエスタンブロッティングやELISAを用いて汗アレルギー抗原の検出および汗アレルギー抗原の量の測定を実施することができる。
よって、一つの実施態様として、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出用またはヒト汗アレルギー抗原の量の測定用組成物は、ウエスタンブロッティングやELISAに用いるための、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片を含む組成物であり得る。
また、一つの実施態様として、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出用またはヒト汗アレルギー抗原の量の測定用キットは、ウエスタンブロッティングまたはELISAに必要な試薬を含んだキットであり得る。ウエスタンブロッティングに必要な試薬の例としては、SDS-PAGEゲル;ニトロセルロース膜またはPVDF膜;汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片;ブロッキング溶液(例えば、BSA溶液、乳蛋白質溶液等);洗浄液(界面活性剤を含むリン酸緩衝液(例えば、Tween20を含むPBS));発光検出試薬等が挙げられる。ELISAに必要な試薬の例としては、プレート(例えば96穴プレート);汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片;ブロッキング溶液(例えば、BSA溶液、乳蛋白質溶液等);洗浄液(界面活性剤を含むリン酸緩衝液(例えば、Tween20を含むPBS));発色基質(例えば、TMB)等が挙げられる。
【0030】
ELISAの場合は、例えば、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質を直接ELISAプレートに固相化し、「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片」を検出抗体に用いたELISAでもよく、また、例えば、「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片」と共に、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)に特異的に結合する他の抗体またはその抗体の断片を用いたサンドイッチELISAであってもよい。ヒト汗アレルギー抗原蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)に特異的に結合する他の抗体の例には、限定はされないが、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質を哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ等)に免疫して調製できるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が挙げられ、そのモノクローナル抗体の例としては以下の(i)−(iii)が挙げられる。
(i)2009年4月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(あて名:日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566))に寄託された受託番号FERM BP-11110(平成19年11月16日に寄託されたFERM P-21439より移管)であるハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma smith-1)が産生する抗体(本明細書において、Smith1抗体とも称す);
(ii)2009年4月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(あて名:日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566))に寄託された受託番号FERM BP-11111(平成19年11月16日に寄託されたFERM P-21440より移管)であるハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma smith-2)が産生する抗体(本明細書において、Smith2抗体とも称す);
(iii)2009年4月1日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(あて名:日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566))に寄託された受託番号FERM BP-11112(平成20年10月1日に寄託されたFERM P-21697より移管)であるハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma smith-8)が産生する抗体(本明細書において、Smith8抗体とも称す)。
よって、一つの実施態様として、本発明は、
(1)汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体または抗体断片(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片;および
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質を哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ等)に免疫して調製できるモノクローナル抗体(例えば、Smith1抗体、Smith2抗体またはSmith8抗体)またはポリクローナル抗体、またはその抗体の断片を含む、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出用またはヒト汗アレルギー抗原の量の測定用ELISAキットを提供する。
上記(1)に記載のヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片、および上記(2)に記載の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質を哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ等)に免疫して調製できるモノクローナル抗体(例えば、Smith1抗体、Smith2抗体またはSmith8抗体)またはポリクローナル抗体、またはその抗体の断片は、どちらを固相化抗体として使用してもよく、どちらを検出抗体として使用してもよい。例えば、Smith2抗体を固相化し、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)を固相化されたSmith2抗体に結合したヒト汗アレルギー抗原を検出させるための抗体として使用してもよい。
【0031】
また、本発明が第3の側面で提供する、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出用またはヒト汗アレルギー抗原の量の測定用キットは、標準物質として、MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)、またはMalassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質、またはヒト汗より公知の方法で部分精製される、汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質を含んでもよい。MGL_1304遺伝子によってコードされる蛋白質(例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)またはMalassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質の既知濃度の溶液を使用することにより、正確な汗アレルギー抗原量の定量が可能となる。例えば、Malassezia globosaの培養上清に存在し汗アレルギー患者由来の血清および/またはSmith2抗体に結合する蛋白質の複数の既知濃度の溶液を使用することにより、正確な汗アレルギー抗原量の定量が可能となる。
【0032】
ウエスタンブロッティングおよびELISAは当業者が適宜実施できる。
例えば、ウエスタンブロッティングであれば、汗アレルギー抗原を含む試料をSDS-PAGEゲルを用いて電気泳動し、PVDF膜に転写し、「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片」(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))および酵素標識抗ヒトIgE抗体を順に反応させ、その後、酵素活性により、汗アレルギー抗原を検出または定量することができる。
【0033】
本発明の第3の側面で提供される組成物またはキットは、本発明の第1の側面で提供される抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))を使用して、適宜調製される。例えば、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片を0.01μg/ml〜10mg/mlで含んで、溶液組成物またはキットを調製してもよい。
【0034】
本発明は、一つの実施態様として、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質の量の測定用組成物またはキットを製造するための、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片の使用を提供する。
【0035】
本発明は、また、一つの実施態様として、「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))」またはその抗体の断片をヒト由来の試料と接触させることを含む、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の検出方法、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質の量の測定方法または汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断方法を提供する。当該方法は、in vitroで実施され得る。
【0036】
ヒト由来の試料は、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質が含まれる試料であり得、例えば、ヒトから採取された汗(例えば、汗アレルギー患者から採取された汗)、皮膚の洗浄液(例えば、汗アレルギー患者の皮膚を生理食塩水で洗い流した液)、ヒト体表の角層(例えば、肘窩、上腕、頸部)、血清または血漿であり得る。
【0037】
4.ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の量の測定用組成物またはキット
本発明は、第4の側面(aspect)において、標準物質を含む、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の量の測定用組成物またはキットであって、該標準物質が汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体である、組成物またはキットを提供する。
【0038】
本明細書において、標準物質とは、ある物質を検出または定量するときに、陽性対照となるものである。一つの実施態様として、標準物質を用いてある物質を定量すれば、定量結果を標準物質で換算した絶対濃度単位(例えば、pg/ml)で表わすことができる。
【0039】
本発明の第4の側面(aspect)において、標準物質である「ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体」は、本発明の第1の側面にて提供される抗体であってもよく、モノクローナル抗体が好ましい。例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)であり得るが、これに限定されない。
【0040】
本発明が第4の側面で検出または量を測定するヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の例には、ヒトIgE抗体、ヒトIgG抗体、ヒトIgA抗体、ヒトIgD抗体およびヒトIgM抗体が挙げられる。これらのヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体は、任意の方法で検出または測定されることができ、例えば、ELISAやウエスタンブロッティングより検出または測定され得る。よって、本発明が第4の側面で提供する組成物またはキットは、ELISAまたはウエスタンブロッティング用であり得る。
ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合するヒトIgE抗体、ヒトIgG抗体、ヒトIgA抗体、ヒトIgD抗体またはヒトIgM抗体を検出または測定するELISAは当業者が適宜設計できる。例えば、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合するヒトIgG抗体、ヒトIgA抗体、ヒトIgD抗体またはヒトIgM抗体の検出または測定は、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)を固相化し、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質をこれに結合させ、該ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合したヒト抗体(例えば、ヒト血清中のIgG抗体等)を、HRP標識抗ヒト免疫グロブリン(例えば、IgG)抗体で検出するELISA系を用いることができる。また、例えば、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合するヒトIgE抗体の検出または測定は、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)をFab断片、Fab'断片、またはF(ab')2断片にして固相化し、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質をこれに結合させ、該ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合したヒトIgE抗体(例えば、ヒト血清中のIgE抗体)を、IgEのFc部分を特異的に認識するHRP標識抗ヒトIgE抗体で検出するELISA系を用いることができる。
【0041】
よって、一つの実施態様として、本発明は、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の量の測定用組成物またはキットの製造のための、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))またはその抗体断片の使用を提供する。
【0042】
ヒト血清中にはマウスIgGを認識するヒトIgGまたはIgEなどの抗体(Human Anti-Mouse Antibody: HAMA)が存在することがあり、その様な個体では、構成物にマウスIgGを含むELSIAでは事前に血清よりHAMAを取り除くなどの処理が必要である。しかしながら、本発明が第4の側面で提供する、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の検出用またはヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の量の測定用キットにおいて、ELISAプレートなどの支持体に汗アレルギー抗原蛋白質を固相化するための抗体として「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片」(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)、そのFab断片、Fab' 断片、またはF(ab')2断片)を用いれば、HAMAを取り除く必要はない。
【0043】
本発明が第4の側面が提供する組成物またはキットを用いてヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体を定量することで、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患を診断できる。
例えば、本発明が第4の側面において提供するキットを用いて、被験者であるヒトの血液由来の試料(例えば、血清または血漿)中の汗アレルギー抗原に結合する抗体(例えば、IgEおよび/またはIgG(例えば、全IgGおよび/またはIgG4))の量を測定し、健常人の血液由来の試料における汗アレルギー抗原に結合する抗体の量と比較し、被験者の血液由来の試料中の汗アレルギー抗原に結合する抗体の量が健常人の血液由来の試料中の汗アレルギー抗原に結合する抗体の量より多い場合は、被験者が汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患に罹患している、または汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患を発症するリスクがあると診断できる。また、この汗アレルギー抗原に結合する抗体の量の測定結果を、臨床所見による汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患の診断の補助とできる。さらに、汗アレルギーまたは汗アレルギー抗原が関連する疾患と診断された患者の中でも、血液由来の試料中の汗アレルギー抗原に結合する抗体の濃度が高い場合は、同抗体の濃度が低い場合と比べて、汗アレルギー抗原蛋白質を除く、および/または汗アレルギーを改善する治療の有効性が高いと診断できる。
この例に関連して、被検者や健常人の抗体の定量の際に、標準物質として、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)を一緒に試験し標準曲線を作成すれば、被検者や健常人の抗体の濃度をABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)の濃度(例えば、pg/ml)で換算することができ、その値を、時期を異にして試験した被検者や健常人の抗体の濃度のABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)の濃度換算値(例えば、pg/ml)と比較することができる。ELISAの一次的な測定値は、吸光度であることが通常であるが、吸光度は試験毎に一定ではないので、異なる時に実施された試験間の結果の比較は事実上不可能である。しかしながら、標準物質として、既知濃度の汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))を使用し、各試験の結果を標準物質の濃度で換算すれば、異なる時に実施された試験間の結果を客観的に比較することが可能となる。
このような本発明の第4の実施態様が提供する組成物またはキットの利点は、例えば、減感作治療を行った時に、その治療効果を判定するのに有用である。例えば、汗アレルギー患者に、汗アレルギー抗原の減感作治療を行った結果、治療前より汗アレルギー抗原に結合するIgE抗体の量が減少し、そして/または汗アレルギー抗原に結合するIgG4抗体の量が増加した場合は、減感作治療が効果を奏していると判定できる。
【0044】
本発明が第4の側面で提供するキットの非限定的な例としては、
(1)ELISAプレート;汗アレルギー抗原蛋白質(例えば、MGL_1304蛋白質);抗ヒトIgE抗体;および標準物質としての既知濃度のABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)を含む、ELISAキット(この場合、汗アレルギー抗原蛋白質(例えば、MGL_1304蛋白質)をELISAプレートに固相化し、それに既知濃度のABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)と並行して被検者由来の血清または血漿を添加して、結合した血清または血漿中に含まれるIgE抗体を抗ヒトIgE抗体で検出する)、および
(2)ELISAプレート; Smith2抗体(受託番号FERM BP-11111);汗アレルギー抗原蛋白質を含む組成物(例えば、部分精製汗抗原(QRX));抗ヒトIgE抗体;および標準物質としての既知濃度のABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)を含む、ELISAキット(この場合、Smith2抗体をELISAプレートに固相化し、固相化したSmith2抗体に汗アレルギー抗原蛋白質(例えば、MGL_1304蛋白質)を結合させ、それに既知濃度のABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1)と並行して被検者由来の血清または血漿を添加して、結合した血清または血漿中に含まれるIgE抗体を抗ヒトIgE抗体で検出する。)
が挙げられる。
【0045】
本発明の第4の側面で提供される組成物またはキットは、本発明の第1の側面で提供される抗体(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))を使用して、適宜調製される。例えば、汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片を0.01μg/ml〜10mg/mlで含んで、溶液組成物またはキットを調製してもよい。
【0046】
本発明は、また、一つの実施態様として、ヒト汗アレルギー抗原蛋白質に結合する抗体の検出または量の測定における、「汗アレルギー抗原蛋白質に結合し、ヒト高親和性IgE受容体に結合するが、汗アレルギー抗原蛋白質と反応させても脱顆粒を起こさないヒトIgE抗体またはその抗体断片(例えば、ABS社から購入できるIgEモノクローナル抗体(クローンHE1))」またはその抗体の断片の標準物質としての使用を提供する。当該使用は、in vitroでの使用であり得る。
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1:部分精製汗抗原(QRX)の精製
1−1.濃縮汗の調製
ヒトの汗を、100μmと70μmのメッシュフィルター(Nylon製Cell Strainer, Falcon)を通して不溶物を除去した後、さらに0.22μmフィルター(Bottle Top Filter, 1L, Corning)で沈殿物を除去した。フィルター濾過済みの汗4Lを限外濾過(3000M.W.cut)で150mL程度に濃縮して、汗抗原精製のための材料とした。
【0049】
1−2.陰イオン交換カラムによる分離
あらかじめ10mmol/L Tris-HCl(pH8.0)で平衡化させた陰イオン交換カラムMonoQ 10/100 GT(GEヘルスケアバイオサイエンス)に、pH8.0に調製した濃縮汗75mLをロードし、10mmol/L Tris-HCl(pH8.0)中、0〜1.0MのNaCl濃度勾配により溶出した。精製用クロマト装置としてはAKTA explorer(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
【0050】
ヒスタミン遊離活性を誘引する物質を含む画分を選択するために、各フラクションについて、アトピー性皮膚炎患者の好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験を行った。
【0051】
まず、適当に希釈した各フラクションと、5mmol/L グルコース、0.03w/v%HSA、2mmol/L CaCl
2、1mmol/L MgCl
2を含むHEPESバッファー中に調製したアトピー性皮膚炎患者の好塩基球画分を1:1で混和し、37℃で40分インキュベートした。遠心分離で上清と沈渣血球に分け、それぞれに0.2mol/L過塩素酸を加えて蛋白質を変性させた後、遠心分離によって得られた上清中のヒスタミン濃度をHPLC(シマヅLC solution)で測定した。全ヒスタミン量に対する上清のヒスタミン量の割合をヒスタミン遊離活性とした。
【0052】
なお、ヒスタミン量の測定は文献(Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999)記載の方法に従った。
【0053】
その結果、他の画分に比べヒスタミン遊離活性が高かった0.25〜0.3mol/L NaClの塩濃度範囲で溶出される画分を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収し、以後これをQR画分とした。
【0054】
1−3.逆相カラムによる分離
実施例1−2で得られた画分(QR)18mLを純水で10倍希釈して最終濃度0.1v/v%のTFAを添加した。これを、逆相カラム(SOURCE 15RPC ST 4.6/100(GEヘルスケアバイオサイエンス) にロードし、0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/アセトニトリルの濃度勾配で溶出した。精製用クロマト装置としてはAKTA explorer(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
【0055】
溶出した各フラクションのTFAおよびアセトニトリルを揮発させた後、実施例1−2と同様にヒスタミン遊離試験を行った。
【0056】
その結果、他の画分に比べヒスタミン遊離活性が高かった約30〜35v/v%アセトニトリルの範囲を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収した(4mL)。
【0057】
1−4.ゲル濾過クロマトによる分離
実施例1−3で得られた画分は、凍結乾燥後、PBSに再溶解してSuperdex 75 PC 3.2/30(GEヘルスケアバイオサイエンス)にロードし、PBS(-)で分画溶出した。精製用クロマト装置としてはSmart system(GEヘルスケアバイオサイエンス)を用いた。
【0058】
溶出した各フラクションについて、実施例1−2と同様にヒスタミン遊離試験を行った。
【0059】
その結果、溶出位置15〜60kDの範囲を、ヒスタミン遊離活性を示す画分として回収し(1.2mL)、以後これをQRX画分とした。
【0060】
実施例2:部分精製汗抗原(QRX)の精製と質量分析
部分精製汗抗原(QRX)を、Aqua 5μ-C18-200A HPLCカラム(Phenomenex社製)を用いて精製した(0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/100%アセトニトリルの濃度勾配で溶出)。ヒスタミン遊離活性を示す画分を回収し、これをJupiter 5μ-C18-300A HPLCカラム(Phenomenex社製)で更に精製し(0.1v/v%TFA/蒸留水から0.1v/v%TFA/80%アセトニトリルの濃度勾配で溶出)、ヒスタミン遊離活性を示した画分(
図1の矢印の分画)について質量分析(TOF-MS)を行った。TOF-MSでは、通常試料をカチオン化するが、本実験ではアニオン化することにより質量を測定した。ヒスタミン遊離活性は、Koro, O. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 103, 663-670, 1999記載の方法に従って測定した。検出したアミノ酸配列はMGL_1304と一致した。
【0061】
実施例3:MGL_1304の組換え蛋白質の作製と、アトピー性皮膚炎患者IgEとの反応性
Malassezia globosaをATCCから購入した(MYA-4612)。 Malassezia globosaから抽出したmRNAをcDNAに逆転写し、PCR法(senseプライマー: 5'-GGGGTACCGTATCCCTCAACATTTTCTCAGCTGC-3'(配列番号2); antisenseプライマー: 5'-CCCAAGCTTTTAGCAGTCGTACTTGCCGGGGATG-3'(配列番号3), (94℃ 5 min/60℃ 1 min/72℃ 1 min)×1サイクル、(94℃ 1 min/60℃ 1 min/72℃ 1 min)×30サイクル、(94℃ 5 min/60℃ 1 min/72℃ 10 min)×1サイクル)を用いてMGL_1304をコードするcDNAを増幅し、pColdTFベクター(タカラバイオ製)に組み込み、大腸菌JM109に形質転換を行った。15℃で24時間培養し、得られた大腸菌をxTractorバッファーで溶解し、コバルトカラムで組み換え蛋白質を精製した。Trigger Factorのみ(TF)、TF-MGL_1304融合蛋白(TF-MGL_1304)、融合蛋白を酵素処理してTFを取り除いたもの(rMGL_1304)を作製した。得られた蛋白をアクリルアミドゲル電気泳動し、そのままCBB染色(
図2左)を行い、またPVDF膜に転写して抗Hisタグ抗体(
図2中)、アトピー性皮膚炎患者血清(
図2右)で免疫ブロットを行った。アトピー性皮膚炎患者IgEはrMGL_1304に結合することが示された(
図2)。
作製したrMGL_1304を、アトピー性皮膚炎患者末梢血好塩基球(
図3、AD1、AD2、AD3)、健常人末梢血好塩基球(
図3、HC1)と反応させ、ヒスタミン遊離試験を行った。MGL_1304はアトピー性皮膚炎患者特異的にヒスタミン遊離を起こすことが示された。
また、上述したMGL_1304をコードするcDNAまたはダニcDNAを、Myc-tagを含むpSecTag2/Hygroベクター(Invitrogen社製)に組み込み、COS7細胞にトランスフェクションした。これらのDNAをトランスフェクションしたCOS7細胞の培養上精をアクリルアミドゲル電気泳動し、PVDF膜に転写して抗Mycタグ抗体で免疫ブロットを行った。培養上清中には各々のcDNAに対応する蛋白質が含まれることが示された(
図4A)。さらにその培養上清をアトピー性皮膚炎患者末梢血好塩基球と反応させ、ヒスタミン遊離試験を行った。また、同じ好塩基球をヒト汗を濃縮、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相カラムクロマトグラフィーにより部分精製した汗抗原(QR)と反応させ、ヒスタミン遊離試験を行い、培養上清によるヒスタミン遊離率と比較した(
図4B)。
COS7細胞により産生されたMGL_1304蛋白(rMGL_1304)は、部分精製したヒト汗抗原(QR)と同様のヒスタミン遊離を起こすことが示された。
【0062】
実施例4:MGL_1304の組換え蛋白質とアトピー性皮膚炎患者IgEとの反応性
MGL_1304がこれまで用いてきた部分精製汗抗原(QRX)とほぼ同一の性質を有しているかを検討した。
(1)
組み換えダニ抗原(Der f1)、QRX、MGL_1304を電気泳動し、PVDF膜に転写したものを複数用意した。QRXまたは実施例3で作製したMGL_1304で前処理したアトピー患者血清(AD serum)、または前処理をしなかったAD serumをそれぞれ用いて、免疫ブロットを行った。用いたアトピー性皮膚炎患者血清は3名分である。MGL_1304による前処理はQRXへのIgE結合を、QRXによる前処理はMGL_1304に対するIgEの結合を、それぞれ阻害した(
図5)。
(2)
アトピー性皮膚炎患者血清(AD1〜AD4)をTFまたはTF-MGL_1304で前処理し、ヒトIGE受容体(Aサブユニット)を発現させたラット細胞株に感作して、抗ヒトIgE抗体(anti-IgE)、QRX、ダニ抽出物(Mite-Df)刺激を行ったときの脱顆粒を測定したものである。実施例3で作製したMGL_1304前処理してMGL_1304特異的IgEを取り除くことで、QRX刺激への反応性が消失することが示された(
図6)。
【0063】
実施例5:各種ヒトIgEのQRXに対する結合
実施例1で調製したQRXをELISAプレートにコーティングした(50 ng/well)。ABS社human monoclonal IgE (non-immune)抗体(κ,monoclonal hybridoma由来:ABS社 DIA HE1-01A/DIA HE1-1A)(ABS社IgE抗体などとも称す)、CHEMICON社human myeloma IgE抗体(CHEMICON社=Millipore社 AG30P)、AbD serotec社human myeloma IgE抗体(λ:AbD serotec社 PHP142)、GenWay Biotech社human myeloma IgE抗体(κ:GenWay Biotech社 11-511-248640)の各human IgE抗体について、濃度依存的にQRXが検出されることをELISAにより検討した。なお、QRXに結合した各human IgE抗体は、HRP標識抗ヒトIgE抗体を用いて検出した。
その結果、ABS社human monoclonal IgE抗体を用いたときのみ、濃度依存的にQRXが検出された(
図7)。ABS社human monoclonal IgE抗体がQRXに結合し、QRXを定量的に検出できることが示された。
【0064】
実施例6:ABS社IgE抗体のrMGL_1304に対する結合
実施例3で大腸菌に強制発現させて調製したTF-MGL_1304融合蛋白をELISAプレートにコーティングした(150 ng/well)。ABS社IgE抗体およびCHEMICON社human myeloma IgE抗体が、濃度依存的にTF-MGL_1304融合蛋白を検出できるか否かをELISAにより検討した。なお、TF-MGL_1304融合蛋白質に結合した各ヒトIgE抗体は、HRP標識抗ヒトIgE抗体を用いて検出した。
その結果、ABS社IgE抗体は、濃度依存的にTF-MGL_1304融合蛋白を検出した(
図8)。ABS社IgE抗体がMGL_1304蛋白質に結合し、MGL_1304蛋白質を定量的に検出できることが示された。一方、CHEMICON社human myeloma IgE抗体は十分にTF-MGL_1304融合蛋白を検出しなかった(
図8)。
TF-MGL_1304融合蛋白をELISAプレートにコーティングした(150 ng/well)。ABS社IgE抗体の濃度をさらに広い範囲を含むように変えて(0.02〜20ng/ml)、固相化された組換MGL_1304蛋白質をELISAにより検出し、標準曲線を作成した。なお、TF-MGL_1304融合蛋白質に結合したABS社IgE抗体は、HRP標識抗ヒトIgE抗体を用いて検出した。
その結果、TF-MGL_1304融合蛋白質とABS社IgE抗体の結合は定量的であった(
図9)。TF-MGL_1304融合蛋白質は実施例1−3で示されるように、汗アレルギーの抗原(汗抗原)であるので、ABS社IgE抗体は、汗抗原に結合するIgE抗体の定量の際の標準品として使用できることが示された。
【0065】
実施例7:ABS社IgE抗体の他の抗原に対する結合
実施例1で調製した部分精製汗抗原(QRX)をELISAプレートにコーティングした(50 ng/well)。また、大腸菌に発現させて調製したダニ抗原およびキヌ抗原をそれぞれELISAプレートにコーティングした(各 50 ng/well)。それぞれの抗原をABS社IgE抗体が検出できるか否かを、ELISAを用いて検討した。なお、各抗原に結合したABS社IgE抗体は、HRP標識抗ヒトIgE抗体を用いて検出した。
その結果、ABS社IgE抗体は、特異的に部分精製汗抗原(QRX)を検出した(
図10)。
【0066】
実施例8:ABS社IgE抗体とSmith2抗体のQRX検出についての比較
実施例1で調製した部分精製汗抗原(QRX)をELISAプレートにコーティングした(50ng/well)。QRXを検出するABS社IgE抗体とSmith2抗体(受託番号FERM BP-11111)の濃度を比較した。なお、QRXに結合したABS社IgE抗体はHRP標識抗ヒトIgE抗体を用いて、QRXに結合したSmith2抗体はHRP標識抗マウスIgG抗体を用いて検出した。
その結果、ABS社IgE抗体は0.01μg/mlより固相化されたQRXを検出することができ、1μg/mlで吸光度が約3となりQRXの検出が飽和した一方、Smith2抗体は100μg/mlでQRXを検出することができたものの、吸光度は約0.5であった。この結果から、ABS社IgE抗体がSmith2抗体に比較し、QRXを検出する感度が非常に高いことが示された(
図11)。
【0067】
実施例9:ABS社IgE抗体とSmith2抗体を用いたELISA
上記実施例の結果より、ABS社IgE抗体が汗アレルギーの抗原(汗抗原)に定量的に結合することが示されたので、汗抗原に結合するSmith2抗体と共に用いることで、汗抗原を高感度で検出するELISAの構築を試みた。
まず、Smith2抗体を固相化抗体とし、ABS社IgE抗体を検出抗体として使用するELISAを試験した(以下、このELISA系をELISA系Iとも称す)。具体的には、Smith2抗体をELISAプレートに固相化し(10、30、100μg/ml、 50μl/well)、続いて、QRX(1μg/ml、100 μl/well)またはvehicleを添加した。さらに、ABS社IgE抗体(1μg/ml、100μl/well)、HRP標識抗ヒトIgE抗体(KPL社製)をそれぞれ添加して、吸光度(450nm)を測定した。その結果、QRXを添加しない場合の吸光度(back ground)が約0であった一方、QRXを添加した場合では吸光度が約3.5であった(
図12)。
次に、ABS社IgE抗体を固相化抗体とし、Smith2抗体を検出抗体として使用するELISAを試験した(以下、このELISA系をELISA系IIとも称す)。具体的には、ABS社IgE抗体をELISAプレートに固相化し(1、3、10μg/ml、50μl/well)、続いて、QRX(1μg/ml、 100μl/well)またはvehicleを添加した。さらに、Smith2抗体(10 μg/ml、100μl/well)、HRP標識抗マウスIgG抗体(KPL社製)をそれぞれ添加して、吸光度(450nm)を測定した。その結果、QRXを添加しない場合の吸光度(back ground)は約0.5であった一方、QRXを添加した場合では吸光度が約3.5であった(
図12)。
これらの結果より、Smith2抗体を固相化抗体とし、ABS社IgE抗体を検出抗体として使用した前者のELISA系(ELISA系I)が後者のELISA系(ELISA系II)より優れたELISA系であると考えられたので、前者のELISA系(ELISA系I)が、QRXを濃度依存的に検出できるか否かを検討した。その結果、ELISA系IはQRXを濃度依存的に検出した(
図13)。
また、ELISA系Iは、QRXを直接プレートに固相化し、それをABS社IgE抗体で検出するELISA系に比較し、約300倍低濃度のQRXを検出できることが示された(
図14)。
このELISA系Iを用いて、ヒト体表の角層中に含まれる汗抗原(QRX)の量を測定できるか検討した。角層中のQRXは、体表に2.5cm×2.5cm角の糊付きテープを貼付してはがしたものを、1枚当たり500μlの10倍希釈RIPA buffer(Pierce社:25 mM Tris・HCl pH 7.6、150 mM NaCl、1% NP-40、1% sodium deoxycholate、0.1% SDS)で溶解して回収した。
その結果、肘窩では1.01±2.64ng/ml、上腕では0.13±0.078ng/ml、頚部では1.01±1.38ng/mlのQRXが含まれていることが示された(
図15)。
さらに、ABS社IgE抗体の濃度を変えて、QRXへの結合量が変化するかを検討したところ、ABS社IgE抗体の濃度依存的に吸光度が変化した(
図16)。これにより、ABS社IgE抗体を標準物質として使用すれば、QRXに結合する抗体の濃度が未知である試料に対してELISAを実施した場合にQRXに結合するIgE抗体の濃度を吸光度ではなく、ABS社IgE抗体の絶対的濃度単位(例えば、pg/ml)として測定できることが示された。
【0068】
実施例10:ABS社IgE抗体を用いたwestern blot
ABS社IgE抗体が、QRXおよび組換MGL_1304蛋白質(実施例3で調製したTF-MGL_1304融合蛋白を酵素処理してTrigger Factor(TF)を取り除いたもの)を認識することを、ウエスタンブロッティングを用いて確認した(
図17)。
Native-PAGEおよびSDS-PAGEの両方の電気泳動を用いたウエスタンブロッティングの結果から、ABS社IgE抗体が、QRXおよびMGL_1304蛋白質の両方を認識することが示された。
また、MGL_1304蛋白質の以下の部分ペプチド:
i)P1:MGL_1304蛋白のアミノ酸配列1-50(配列番号4)に相当するポリペプチド;
ii)P2: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列46-100(配列番号5)に相当するポリペプチド;
iii)P3: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列96-140(配列番号6)に相当するポリペプチド;iv)P4: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列136-183(配列番号7)に相当するポリペプチド;v)P1-3: MGL_1304蛋白のアミノ酸配列1-140(配列番号8)に相当するポリペプチド;および
vi)P2-4:MGL_1304蛋白のアミノ酸配列46-183(配列番号9)に相当するポリペプチド、を強制発現させ、ABS社IgE抗体が認識するか否かを検討した。その結果、ABS社IgE抗体は、主にP3、P4領域に結合することが示された(
図17)。
【0069】
実施例11:ABS社IgE抗体の汗抗原中和作用
汗アレルギー患者由来の好塩基球にQRXを添加することで惹起されるヒスタミン遊離をABS社IgE抗体が抑制するか否かを試験した。
その結果、ABS社IgE抗体は、QRXにより惹起されるヒスタミン遊離を抑制した(
図18)。
また、未精製のヒト汗のヒスタミン遊離活性をABS社IgE抗体が抑制するか否かを試験した。患者より汗を採取し、各汗中のMGL1304の濃度を1μg/mlに調整した汗サンプルを汗アレルギー患者由来の好塩基球に添加し、ABS社IgE抗体を添加した時(ABS社IgE抗体の最終濃度:1μg/ml)と添加しなかった時で比較した。
その結果、QRXの他、5人のヒトより得られた未精製の汗についても、ABS社IgE抗体を添加することでアトピー性皮膚炎患者好塩基球によるヒスタミン遊離が抑制された(
図19)。
【0070】
実施例12:
ABS社IgE抗体で細胞を感作することによる汗抗原への反応性の変化
ABS社IgEがマスト細胞または好塩基球に発現するヒト高親和性IgE受容体に結合(感作)すると、マスト細胞または好塩基球が汗アレルギー抗原蛋白質に対する反応性を生じるか否かを検討するため、ヒト高親和性IgE受容体を発現するラット肥満細胞をアトピー性皮膚炎患者の血清またはABS社IgE抗体で感作し、QRXの刺激によりヒスタミンが遊離されるか否かを試験した。
その結果、アトピー性皮膚炎患者の血清で感作したときには、QRXで刺激することで脱顆粒が惹起されたが(
図20,AD serum参照)、ABS社IgE抗体で感作した細胞は、QRXで刺激しても脱顆粒しなかった(
図20,ABS-IgE参照)。
また、2人のヒトの血液試料より好塩基球を調製し、IgE受容体に結合しているIgEを架橋してIgE受容体を活性化する抗ヒトIgE抗体(anti-IgE)を添加したところ、どちらのドナー由来の好塩基球ともヒスタミン遊離が認められた(
図21、未処理参照)。部分精製した汗抗原であるQRXを添加した場合はドナー1由来の好塩基球から弱いヒスタミン遊離が認められ、ドナー2由来の好塩基球からはヒスタミン遊離は認められなかった。また、IgEが結合していないIgE受容体を架橋することでIgE受容体を活性化するマウスモノクローナル抗体6F7を添加したところ、どちらのドナー由来の好塩基球とも中等度のヒスタミン遊離が認められた(
図21、未処理参照)。よって、どちらのドナー由来の好塩基球もそのIgE受容体の一部にIgEが結合していると考えられた。そこで、乳酸処理し、IgEをIgE受容体から乖離させて同様に刺激したところ、抗IgE抗体によるヒスタミン遊離の程度は低下し、QRXによるヒスタミン遊離は消失した(
図21、乳酸処理参照)。続いて、これらの細胞をさらにABS社IgE抗体で感作して同様に刺激したところ、どちらのドナー由来の好塩基球とも抗ヒトIgE抗体刺激には反応したが、QRX刺激ではヒスタミン遊離が認められなかった。また、6F7刺激によるヒスタミン遊離は消失または著しく低下した(
図21、IgE再感作参照)。なお、好塩基球を乳酸処理しても抗IgE抗体によるヒスタミン遊離率がゼロにならないのは、細胞表面上の一部の高親和性IgE受容体にまだIgEが結合しているものが残存しているためで、好塩基球ドナー2をIgEで再感作しても抗ヒトIgE抗体刺激によるヒスタミン遊離率(net %)がさらに低下したのは、細胞の処理により自発的なヒスタミン遊離率が増加し、一律にnetの遊離率が低下したことによる。乳酸処理により多くの高親和性IgE受容体からIgEが解離し、IgEによる再感作により再び多くの高親和性IgE受容体がIgEを結合した状態になったことは、これらの処理によりIgE競合性抗高親和性IgE受容体モノクローナル抗体の6F7によるヒスタミン遊離率が乳酸処理により増加し、IgE再感作により低下または消失したことで確認された。
これらの結果は、ABS社IgE抗体が細胞上のIgE受容体に結合するがそこに汗アレルギー抗原が存在しても、マスト細胞の脱顆粒を惹起しないことを示す。
【0071】
実施例13:患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定(1)
実施例6で作製した、rTF-MGLを固相化したELISA(
図9)を用いて、アトピー性皮膚炎(AD)、アレルギー性鼻炎および健常人(Normal)の血清中の汗抗原に特異的に結合するIgE抗体を検出できるか否かを検討した。
【0072】
rTFまたはrTF-MGLを、96穴ELISAプレートに、3μg/ml、50μl/wellでコーティングし、4℃で一晩放置した。2回洗浄後、2%BSAでブロッキング(室温、1時間)し、2回洗浄した。1%BSAで10倍(x10)または20倍(x20)に希釈した血清を100μl/well加え室温で1時間放置した。3回洗浄後、HRP標識抗ヒトIgE抗体を含む溶液を100μl/well加え1時間放置し、3回洗浄後、TMBを用いて発色させ吸光度(450nm)を測定した。rTF-MGLをコートしたウェルから得られた吸光度より、rTFをコートしたウェルから得られた吸光度を差し引き、MGL特異的IgEの結合量とした。また、実施例6で示したABS社IgE抗体の標準曲線(
図9)を同時に作成した。
【0073】
その結果、rTFまたはrTF-MGLを固相化したELISAを用いて、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性鼻炎患者の血清中で汗抗原(MGL)に特異的に結合するIgEを検出し、ABS社IgE抗体を標準物質としてIgE抗体の濃度を定量することができた(
図22)。一方、健常人の血清中で汗アレルギー抗原蛋白(rMGL)に結合するIgEは極めて低値または検出限界(100pg/ml)以下であった(
図22)。
【0074】
これらの結果より、ABS社IgE抗体を標準物質として用いることにより、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性鼻炎患者における汗アレルギーの診断が可能であることが示された。
【0075】
実施例14:患者血清中の抗汗抗原特異的IgE抗体の測定(2)
実施例9で作製した、固相化したSmith2抗体に結合したQRXにヒトIgE抗体を結合させるELISA(
図16)を用いて、アトピー性皮膚炎患者(AD1-3)、および健常人(Normal1-2)の血清中の汗抗原に特異的に結合するIgE抗体を定量した。
【0076】
96穴ELISAプレートにSmith2抗体(10μg/ml、100μl/well)を入れて4℃で一晩放置し、2回洗浄後、2%BSAでブロッキング(室温、1時間)し、2回洗浄した。続いてQRX(1μg/ml、100μl/well)を添加し、2回洗浄した。1%BSAで40倍(x40)または80倍(x80)に希釈した血清を100μl/well加え、室温で90分放置した。3回洗浄後、HRP標識抗ヒトIgE抗体を含む溶液を100μl/well加え1時間放置し、3回洗浄後、TMBを用いて発色させ吸光度(450nm)を測定した。また、実施例9で示したABS社IgE抗体のELISAを行うことで標準曲線(
図16)を同時に作成した。
【0077】
その結果、汗中に存在し、Smith2抗体に結合する汗抗原に特異的に結合するIgEの濃度を定量化することができた。その値は血清の希釈倍率によらず、実施例13で得られた値とおおむね一致し、定量に再現性が認められた(
図23)。