特許第6385131号(P6385131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385131
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20180827BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180827BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B23K26/38 Z
   H01L21/78 Q
   B23K26/16
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-99269(P2014-99269)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-213955(P2015-213955A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】カール プリワッサー
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−294287(JP,A)
【文献】 特開2008−283025(JP,A)
【文献】 特開2014−053510(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0242052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
B23K 26/16
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有し、該デバイス領域に対応する裏面が所定の厚みへと研削された円形凹部と該円形凹部を囲繞する該外周余剰領域に対応した環状凸部とが形成されたウェーハの加工方法であって、
ウェーハの表面に第一テープを貼着するとともに該第一テープを介してウェーハを第一環状フレームに装着する第一テープ貼着ステップと、
該第一テープ貼着ステップを実施した後、該第一テープを介してウェーハをチャックテーブルで保持し、該環状凸部と該円形凹部との境界にレーザビームを照射してウェーハを該第一テープとともに分断し、該円形凹部と該環状凸部とに分離する分離ステップと、
該分離ステップを実施した後、該第一テープを介して該第一環状フレームに装着された該環状凸部を該第一環状フレームと共にウェーハの該デバイス領域から除去する除去ステップと、
該除去ステップを実施した後、該デバイス領域のみからなるウェーハの裏面に第二テープを貼着するとともに該第二テープを介してウェーハを第二環状フレームに装着する第二テープ貼着ステップと、
該第二テープ貼着ステップを実施する前又は後に、該第一テープをウェーハの表面から除去する第一テープ除去ステップと、
該第二テープ貼着ステップと該第一テープ除去ステップとを実施した後、ウェーハを個々のデバイスへと分割する分割ステップと、
を備えたことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該分離ステップを実施する前に、ウェーハの裏面に水溶性保護膜を被覆する保護膜被覆ステップと、
少なくとも該保護膜被覆ステップと該分離ステップとを実施した後、ウェーハの裏面に洗浄水を供給して該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、
を更に備えた請求項1記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に円形凹部及び円形凹部を囲繞する環状凸部が形成されたウェーハから環状凸部を除去するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスにおいては、略円板形状である半導体ウェーハ(以下、単にウェーハと略称することがある)の表面に格子状に配列されたストリートとよばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウェーハをストリートに沿って切削装置で切削することにより、半導体ウェーハが個々の半導体チップ(デバイス)に分割される。
【0003】
分割されるウェーハは、ストリートに沿って切削する前に裏面を研削して所定の厚みに形成される。近年、電気機器の軽量化、小型化を達成するために、ウェーハの厚さをより薄く、例えば50μm程度にすることが要求されている。
【0004】
このように薄く形成されたウェーハは紙のように腰がなくなり取り扱いが困難になり、搬送等において破損する恐れがある。そこで、ウェーハのデバイス領域に対応する裏面のみを研削し、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域に対応するウェーハの裏面に補強用の環状凸部を形成する研削方法が、例えば特開2007−19461号公報で提案されている。
【0005】
このように裏面の外周に環状凸部が形成されたウェーハをストリート(分割予定ライン)に沿って分割する方法として、環状凸部を除去した後、ウェーハの表面側から切削ブレードで切削する方法が提案されている(特開2007−19379号公報参照)。
【0006】
特開2007−17379号公報では、環状凸部を除去する方法として、研削によって環状凸部を除去する方法と、切削ブレードで円形凹部と環状凸部との界面を円形に切削した後、環状凸部を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−19461号公報
【特許文献2】特開2007−19379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、デバイス領域から環状凸部を除去する際、環状凸部が破損しやすいこと、環状凸部が破損してデバイス領域を傷つけること、環状凸部を除去するための特別な装置が必要になること等の問題があり、環状凸部を除去するのに困難を有する。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、環状凸部を破損することなく容易に除去できるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有し、該デバイス領域に対応する裏面が所定の厚みへと研削された円形凹部と該円形凹部を囲繞する該外周余剰領域に対応した環状凸部とが形成されたウェーハの加工方法であって、ウェーハの表面に第一テープを貼着するとともに該第一テープを介してウェーハを第一環状フレームに装着する第一テープ貼着ステップと、該第一テープ貼着ステップを実施した後、該第一テープを介してウェーハをチャックテーブルで保持し、該環状凸部と該円形凹部との境界にレーザビームを照射してウェーハを該第一テープとともに分断し、該円形凹部と該環状凸部とに分離する分離ステップと、該分離ステップを実施した後、該第一テープを介して該第一環状フレームに装着された該環状凸部を該第一環状フレームと共にウェーハの該デバイス領域から除去する除去ステップと、該除去ステップを実施した後、該デバイス領域のみからなるウェーハの裏面に第二テープを貼着するとともに該第二テープを介してウェーハを第二環状フレームに装着する第二テープ貼着ステップと、該第二テープ貼着ステップを実施する前又は後に、該第一テープをウェーハの表面から除去する第一テープ除去ステップと、該第二テープ貼着ステップと該第一テープ除去ステップとを実施した後、ウェーハを個々のデバイスへと分割する分割ステップと、を備えたことを特徴とするウェーハの加工方法が提供される。
【0012】
好ましくは、ウェーハの加工方法は、該分離ステップを実施する前に、ウェーハの裏面に水溶性保護膜を被覆する保護膜被覆ステップと、少なくとも該保護膜被覆ステップと該分離ステップとを実施した後、ウェーハの裏面に洗浄水を供給して該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、を更に備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加工方法によると、レーザビームの照射による分離ステップを実施した後、第一テープに貼着された環状凸部を第一環状フレームと共にウェーハのデバイス領域から除去するので、環状凸部を破損することなく容易にデバイス領域から除去することができる。
【0014】
分離ステップをレーザビームの照射により実施するので、円形凹部の底部であるウェーハの裏面に金属膜が被覆されていても腐食が発生することがない。また、レーザビームを使用して分離ステップを行うため、カーフを切削ブレードで切る時よりも狭くできるので、有効デバイスの領域を最大限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】半導体ウェーハの表面側斜視図である。
図2】表面に保護テープが貼着された状態のウェーハの裏面側斜視図である。
図3】研削ステップを示す斜視図である。
図4】研削ステップ終了後のウェーハの断面図である。
図5】第一テープ貼着ステップを示す斜視図である。
図6】レーザ加工装置の斜視図である。
図7】保護膜被覆ステップを示す断面図である。
図8】分離ステップを示す斜視図である。
図9】分離ステップを示す拡大断面図である。
図10】除去ステップを示す斜視図である。
図11】洗浄ステップを示す断面図である。
図12】第二テープ貼着ステップを示す斜視図である。
図13】第一テープ除去ステップを示す斜視図である。
図14】分割ステップを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、半導体ウェーハ(以下、単にウェーハと略称することがある)11の表面側斜視図が示されている。半導体ウェーハ11は、例えば厚さが700μmのシリコンウェーハからなっており、表面11aに複数のストリート(分割予定ライン)13が格子状に形成されているとともに、複数のストリート13によって区画された各領域にIC、LSI等のデバイス15が形成されている。
【0017】
このように構成された半導体ウェーハ11は、デバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19をその表面11aに備えている。また、半導体ウェーハ11の外周には、シリコンウェーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ21が形成されている。
【0018】
ウェーハ11の裏面11bを研削するに当たり、ウェーハ11の表面11aには保護テープ23が貼着される。従って、ウェーハ11の表面11aは保護テープ23によって保護され、図2に示すように裏面11bが露出する形態となる。
【0019】
本発明の加工方法の加工対象となるウェーハ11は、デバイス領域17に対応するウェーハ11の裏面11bが所定の厚みへと研削されて円形凹部が形成され、円形凹部を囲繞する外周余剰領域19に対応した環状凸部が形成されたウェーハであり、図3及び図4を参照してウェーハの研削方法について説明する。
【0020】
図3において、符号2は研削装置の研削ユニットであり、スピンドルハウジング4中に回転可能に収容されたスピンドル6と、スピンドル6の先端に固定されたホイールマウント8と、ホイールマウント8に着脱自在に装着された研削ホイール10とを含んでいる。研削ホイール10は、環状のホイール基台12と、ホイール基台12の下端外周部に環状に貼着された複数の研削砥石14とから構成される。
【0021】
裏面研削ステップでは、ウェーハ11の表面11aに貼着された保護テープ23を研削装置のチャックテーブル16で吸引保持し、ウェーハ11の裏面11bを露出させる。そして、チャックテーブル16を矢印Aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール10を矢印Bで示す方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、図示しない研削ユニット送り機構を駆動して研削砥石14をウェーハ11の裏面11bに接触させる。そして、研削ホイール10を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。
【0022】
その結果、半導体ウェーハ11の裏面11bには、図4に示すように、デバイス領域17に対応する領域が研削除去されて円形凹部18が形成されるとともに、外周余剰領域19が残存されて環状凸部20が形成される。
【0023】
ウェーハ11の裏面研削終了後、本発明のウェーハの加工方法では、図5に示すように、ウェーハ11の表面11aに貼着されていた保護テープ23を剥離し、ウェーハ表面11aに粘着テープである第一ダイシングテープT1を貼着するとともに、第一ダイシングテープT1を介してウェーハ11を第一環状フレームF1に装着する第一テープ貼着ステップを実施する。即ち、外周部が第一環状フレームF1に貼着された第一ダイシングテープT1にウェーハ11の表面11aを貼着する。
【0024】
ウェーハ11の表面11aに貼着された保護テープ23を剥離せず、保護テープ23を介してウェーハ表面11aに第一ダイシングテープT1を貼着するようにしてもよい。
【0025】
図6を参照すると、デバイス領域17と環状凸部20とを分離するのに使用するレーザ加工装置22の斜視図が示されている。レーザ加工装置22の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル24が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像ユニットによって撮像された画像が表示されるCRT等の表示モニタ26が設けられている。
【0026】
図5に示すように、ウェーハ11は第1ダイシングテープT1を介して第1環状フレームF1に支持された状態となり、図6に示したウェーハカセット28中にウェーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウェーハカセット28は上下動可能なカセットエレベータ29上に載置される。
【0027】
ウェーハカセット28の後方には、ウェーハカセット28からレーザ加工前のウェーハ11を搬出するとともに、加工後のウェーハをウェーハカセット28に搬入する搬出入手段30が配設されている。
【0028】
ウェーハカセット28と搬出入手段30との間には、搬出入対象のウェーハが一時的に載置される領域である仮置き領域32が設けられており、仮置き領域32にはウェーハ11を一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段34が配設されている。
【0029】
50は保護膜被覆装置であり、この保護膜被覆装置50は加工後のウェーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。仮置き領域32の近傍には、ウェーハ11と一体となった第1フレームF1を吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段36が配設されている。
【0030】
仮置き領域32に搬出されたウェーハ11は、搬送手段36により吸着されて保護膜被覆装置50に搬送される。保護膜被覆装置50は、後で詳細に説明するようにウェーハ11の裏面に水溶性樹脂を塗布して保護膜を被覆する。
【0031】
裏面に保護膜が被覆されたウェーハ11は、搬送手段36により吸着されてチャックテーブル38上に搬送され、チャックテーブル38に吸引されるとともに、複数の固定手段(クランプ)39により第1フレームFが固定されることでチャックテーブル38上に保持される。
【0032】
チャックテーブル38は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル38のX軸方向の移動経路の上方には、ウェーハ11のレーザ加工すべき領域を検出するアライメントユニット40が配設されている。
【0033】
アライメントユニット40は、ウェーハ11を撮像する撮像ユニット42を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によってレーザ加工すべき領域を検出することができる。撮像ユニット42によって取得された画像は、表示ユニット26に表示される。
【0034】
アライメントユニット40の左側には、チャックテーブル38に保持されたウェーハ11に対してレーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット44が配設されている。レーザビーム照射ユニット44はY軸方向に移動可能である。
【0035】
レーザビーム照射ユニット44は、ケーシング46中に収容されたYAGレーザ発振器等のレーザ発振器を有するレーザビーム発生ユニットを含んでおり、レーザビーム発生ユニットから出射されたレーザビームはケーシング46の先端に装着された集光器48からチャックテーブル38に保持されたウェーハ11上に照射される。
【0036】
レーザ加工の終了したウェーハ11は、搬送手段52に保持されて洗浄装置を兼用する保護膜被覆装置50まで搬送され、洗浄装置を兼用する保護膜被覆装置50で洗浄される。
【0037】
次に、図7を参照して、ウェーハ11の裏面11bに保護膜を被覆する保護膜被覆ステップについて説明する。この保護膜被覆ステップはオプションであり、通常はこのステップは必要ないが、ウェーハ11の裏面11b、即ち凹部18の底面に金属膜が形成されているウェーハ11について実施する。
【0038】
図7において、保護膜被覆装置52は、スピンナーテーブル54と、スピンナーテーブル54を包囲して配設された洗浄水受け容器56とを具備している。スピンナーテーブル54は、ポーラスセラミックス等の多孔性材料から形成された吸引保持部と、吸引保持部を囲繞する枠体とから構成され、第一環状フレームF1をクランプする複数のクランプ58を有している。スピンナーテーブル54は、電動モータ58の出力軸60に連結されている。
【0039】
保護膜被覆装置52は、スピンナーテーブル54に保持されたレーザ加工前の半導体ウェーハ11に水溶性樹脂を供給する水溶性樹脂供給ノズル62と、レーザ加工後のウェーハ11に洗浄水を供給する洗浄水供給ノズル66を有している。水溶性樹脂供給ノズル62はモータ64により待避位置と供給位置との間で回動され、洗浄水供給ノズル66はモータ68により待避位置と供給位置との間で回動される。
【0040】
保護膜被覆ステップを実施するには、搬送手段36により、図5に示す第一テープ貼着ステップ実施後のウェーハ11を保護膜被覆装置50まで搬送し、保護膜被覆装置50のスピンナーテーブル54上に載置する。
【0041】
そして、モータ64を駆動して水溶性樹脂供給ノズル62を図7に示す供給位置に回動し、水溶性樹脂をウェーハ11上に供給してから、電動モータ58を駆動してスピンナーテーブル54をR1方向に約2000rpmで回転させて供給された水溶性樹脂をウェーハ11の裏面に形成された円形凹部18の全面にスピンコーティングする。
【0042】
スピンナーテーブル54は2000rpmという比較的高速で回転するので、振り子式のクランプ58は遠心力により回動して第一環状フレームF1をクランプして固定する。これにより、ウェーハ11の円形凹部18中に供給された水溶性樹脂は凹部18の底部に万遍なくスピンコーティングされ水溶性保護膜が被覆される。
【0043】
水溶性保護膜を形成する水溶性樹脂としては、PVA(ポリ・ビニール・アルコール)、PEG(ポリ・エチレン・グリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等の水溶性のレジストが望ましい。
【0044】
第一テープ貼着ステップ実施後、又は第一テープ貼着ステップ及び保護膜被覆ステップ実施後、ウェーハ11のデバイス領域17と環状凸部20とを分離する分離ステップを実施する。この分離ステップについて図8を参照して説明する。
【0045】
レーザ加工装置22のチャックテーブル38で第一ダイシングテープT1を介して円形凹部18及び環状凸部20の形成されたウェーハ11を吸引保持する。そして、撮像ユニット42でウェーハ11を撮像し、環状凸部20とデバイス領域17(円形凹部18)との境界を検出するアライメントを実施し、検出した境界の座標値をアライメントユニット40のメモリに記憶する。
【0046】
アライメント実施後、レーザビーム照射ユニット44の集光器48からウェーハに対して吸収性を有する波長(例えば355mm)のレーザビームを環状凸部20と円形凹部18との境界に向けて照射し、チャックテーブル38を回転させて、集光器48から照射されたレーザビームで環状凸部20と円形凹部18との境界をアブレーションにより円形に除去する。
【0047】
好ましくは、図9に示すように、チャックテーブル38の枠体38bに環状凸部20と円形凹部18との境界部分に対応する環状溝27を形成し、この環状溝27中にレーザビーム吸収部材29を配設する。これにより、集光器48から照射されたレーザビームでチャックテーブル38の枠体38b部分を加工してしまうことが防止される。
【0048】
レーザビームを環状凸部20と円形凹部18との境界の全周に照射することにより、ウェーハ11のデバイス領域17と環状凸部20とが第一ダイシングテープT1と共に分離される(分離ステップ)。
【0049】
分離ステップ実施後、図10に示すように、第一ダイシングテープT1を介して第一環状フレームF1に装着された環状凸部20を、第一環状フレームF1と共にウェーハ11のデバイス領域17から除去する除去ステップを実施する。
【0050】
除去ステップ実施後、保護膜被覆ステップを実施したケースの場合には、ウェーハ11の裏面11bに洗浄水を供給して保護膜を除去する保護膜除去ステップを実施する。この保護膜除去ステップについて図11を参照して説明する。
【0051】
保護膜被覆装置52のスピンナーテーブル54でデバイス領域17の裏面に保護膜の被覆されたウェーハ11を吸引保持する。そして、モータ68を駆動して洗浄水供給ノズル66を待避位置から図11に示す供給位置に回動する。
【0052】
次いで、洗浄水供給ノズル66から洗浄水を供給しながら電動モータ58を駆動して、スピンナーテーブル54を約1000rpmで回転させる。保護膜は水溶性保護膜であるため、この洗浄ステップ(保護膜除去ステップ)で、保護膜はデバイス領域17の裏面から除去される。
【0053】
分離ステップ及び保護膜除去ステップ実施後、図10に示すように、第一ダイシングテープT1を介して第一環状フレームF1に装着された環状凸部20を第一環状フレームF1と共にデバイス領域17から除去する除去ステップを実施する。従って、チャックテーブル38には第一ダイシングテープT1に貼着されたデバイス領域17が残ることになる。
【0054】
除去ステップを実施した後、図12に示すように、デバイス領域17のみからなるウェーハ11の裏面11bに第二ダイシングテープT2を貼着するとともに、第二ダイシングテープT2を介して第二環状フレームF2に装着する第二テープ貼着ステップを実施する。
【0055】
この第二テープ貼着ステップを実施したことにより、デバイス領域17のみからなるウェーハ11は第二ダイシングテープT2を介して第二環状フレームF2に支持されたことになり、ウェーハ11の表面11aであるデバイス領域17が上側となる。
【0056】
第二テープ貼着ステップを実施した後、図13に示すように、第一ダイシングテープT1をウェーハ11の表面11aから除去する第一テープ除去ステップを実施する。尚、この第一テープ除去ステップは、第二テープ貼着ステップを実施する前に行っても良い。
【0057】
第二テープ貼着ステップと第一テープ除去ステップを実施した後、ウェーハを個々のデバイスへと分割する分割ステップを実施する。この分割ステップは、例えば図14に要部が示されている切削装置により実施する。
【0058】
74は切削装置70の切削ユニットであり、スピンドルハウジング76中に収容された図示しないモータにより回転駆動されるスピンドルと、スピンドルの先端に着脱可能に装着された切削ブレード78とを含んでいる。
【0059】
切削ブレード78は、ホイールカバー80で覆われている。ホイールカバー80に取り付けられたパイプ82は図示しない切削水供給源に接続されている。パイプ82から導入された切削水は、切削ブレード78を挟むように配置された切削水供給ノズル84から噴出され、デバイス領域17の切削が遂行される。
【0060】
デバイス領域17の切削時には、切削水供給ノズル84から切削水を噴射しながら、切削ブレード78を矢印A方向に高速(例えば30000rpm)で回転させて、チャックテーブル72をX軸方向に加工送りすることにより、デバイス領域17がストリート13に沿って切削されて切削溝31が形成される。
【0061】
切削ユニット74をY軸方向にストリート13のピッチずつ割り出し送りしながら第1の方向に伸長するストリート13を次々と切削する。第1の方向に伸長する全てのストリート13の切削終了後、チャックテーブル72を90°回転してから、第2の方向に伸長するストリート13に沿って同様な切削を実行し、ウェーハ11のデバイス領域17を個々のデバイス15に分割する。
【0062】
分割ステップは切削装置によるダイシングに限られるものではなく、レーザビームを利用したアブレーション加工又はレーザビームを照射してウェーハ内部に改質層を形成し、改質層の形成されたウェーハに外力を付与することにより、ウェーハ11のデバイス領域17を個々のデバイス15に分割するようにしてもよい。尚、レーザビームを利用した加工時におけるレーザビームはウェーハの表面側から入射させてもよいし裏面側から入射させてもよい。
【0063】
また、本実施形態ではウェーハの表面に表面保護テープを貼着して裏面を研削して円形凹部と環状凸部を形成したが、ウェーハの研削前にウェーハ表面に粘着テープである第一ダイシングテープを貼着するとともに、第一ダイシングテープを介してウェーハを第一環状フレームに装着する第一テープ装着ステップを実施してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 研削ホイール
11 半導体ウェーハ
14 研削砥石
17 デバイス領域
18 円形凹部
19 外周余剰領域
20 環状凸部
23 保護テープ
44 レーザビーム照射ユニット
48 集光器
50 保護膜被覆装置
54 スピンナーテーブル
62 水溶性樹脂供給ノズル
66 洗浄水供給ノズル
74 切削ユニット
78 切削ブレード
T1 第一ダイシングテープ
T2 第二ダイシングテープ
F1 第一環状フレーム
F2 第二環状フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14