特許第6385144号(P6385144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385144
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20180827BHJP
   H05F 3/04 20060101ALI20180827BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01L21/304 646
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648G
   H05F3/04 C
   H05F3/04 D
   H01L21/68 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-113828(P2014-113828)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-228429(P2015-228429A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】山田 将二郎
(72)【発明者】
【氏名】楊 云峰
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−327613(JP,A)
【文献】 特開2002−066865(JP,A)
【文献】 特開平04−011728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
H05F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工するための加工手段と、該加工手段によって加工された被加工物を洗浄する洗浄手段と、該洗浄手段で洗浄された被加工物を該洗浄手段から搬出する搬出手段と、被加工物にイオン化されたエアーを噴射する除電手段と、を備える加工装置であって、
該洗浄手段は、
被加工物を保持する洗浄テーブルと、該洗浄テーブルに保持された被加工物に洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、該洗浄テーブルを収容し上面に開口を有する洗浄ハウジングと、を備え、
該搬出手段は、
該洗浄テーブルに保持された被加工物を上昇させて該洗浄ハウジングから搬出し、
該除電手段は、
該洗浄ハウジングの該開口の近傍に配設され、該開口に近接離間する方向に進退可能で、該エアーの噴射方向が該開口の上方に設定された噴射ノズルと、該噴射ノズルの下方で、該噴射ノズルが噴射する該エアーの流れをガイドするガイド面と、を備え、
該ガイド面は、
該噴射ノズルの進退を案内し、該開口側に向かって上昇する傾斜面と、該傾斜面の上端部と連続し、該開口に向かって落ち込む落ち込み面と、を有し、
該洗浄ハウジング内の被加工物の上面を除電する際には、該エアーの流れがコアンダ効果によって該落ち込み面にガイドされるように該噴射ノズルを該落ち込み面に近接させ、該搬出手段によって該洗浄ハウジングの上方に位置付けられた被加工物の下面を除電する際には、該傾斜面の上端部を上方に超えて該落ち込み面から離間された位置に該噴射口を位置付けることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、ガイド面に沿って延在するスリット状の噴射口を有することを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記噴射ノズルは、前記傾斜面に案内されることで、該傾斜面の上端部を上方に超えて前記落ち込み面から離間された位置に該噴射口を位置付け可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を除電する除電ユニットを備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に複数のデバイスが形成された半導体ウェーハ等の被加工物は、例えば、ストリート(分割予定ライン)に沿って切削され、各デバイスに対応する複数のチップへと分割される。切削後の被加工物は、切削屑等の異物で汚染されているので、この異物を除去するために洗浄ユニットで洗浄される。
【0003】
ところで、被加工物の洗浄工程において表面に高圧の洗浄水を吹き付けたり、裏面に貼着されたダイシングテープを洗浄ユニットの洗浄テーブルから引き剥がしたりすると、静電気が発生してデバイスを破損させる可能性が高い。そこで、イオン化されたエアー(イオン化エアー)を供給できる除電ユニット(例えば、特許文献1参照)を洗浄ユニットの近傍に配置して、被加工物の表面側及び裏面側を除電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−327613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように被加工物の表面側及び裏面側を除電するためには、少なくとも、2方向に向けてエアーを噴射するメカニズムが必要である。しかしながら、例えば、2方向に向けてエアーを噴射するために2組の除電ユニットを用いると、加工装置は大型化して価格も高くなる。
【0006】
除電ユニットの向きを変えるメカニズムを採用すれば、2組の除電ユニットを用いる場合に比べて加工装置の価格を低く抑えながら2方向に向けてエアーを噴射できる。しかしながら、この場合でも、加工装置の大型化を十分に抑制できないという問題が残されてしまう。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大型化及び高価格化を抑制しながら被加工物を適切に除電できる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工するための加工手段と、該加工手段によって加工された被加工物を洗浄する洗浄手段と、該洗浄手段で洗浄された被加工物を該洗浄手段から搬出する搬出手段と、被加工物にイオン化されたエアーを噴射する除電手段と、を備える加工装置であって、該洗浄手段は、被加工物を保持する洗浄テーブルと、該洗浄テーブルに保持された被加工物に洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、該洗浄テーブルを収容し上面に開口を備えた洗浄ハウジングと、を備え、該搬出手段は、該洗浄テーブルに保持された被加工物を上昇させて該洗浄ハウジングから搬出し、該除電手段は、該洗浄ハウジングの該開口の近傍に配設され、該開口に近接離間する方向に進退可能で、該エアーの噴射方向が該開口の上方に設定された噴射ノズルと、該噴射ノズルの下方で、該噴射ノズルが噴射する該エアーの流れをガイドするガイド面と、を備え、該ガイド面は、該噴射ノズルの進退を案内し、該開口側に向かって上昇する傾斜面と、該傾斜面の上端部と連続し、該開口に向かって落ち込む落ち込み面と、を有し、該洗浄ハウジング内の被加工物の上面を除電する際には、該エアーの流れがコアンダ効果によって該落ち込み面にガイドされるように該噴射ノズルを該落ち込み面に近接させ、該搬出手段によって該洗浄ハウジングの上方に位置付けられた被加工物の下面を除電する際には、該傾斜面の上端部を上方に超えて該落ち込み面から離間された位置に該噴射口を位置付けることを特徴とする加工装置が提供される。
【0009】
本発明において、前記噴射ノズルは、ガイド面に沿って延在するスリット状の噴射口を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明において、前記噴射ノズルは、前記傾斜面に案内されることで、該傾斜面の上端部を上方に超えて前記落ち込み面から離間された位置に該噴射口を位置付け可能に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加工装置は、洗浄ハウジングの開口側に向かって上昇し、噴射ノズルの進退を案内する傾斜面と、傾斜面の上端部と連続し、開口に向かって落ち込む落ち込み面と、を有するガイド面を含む除電手段を備えるので、エアーの噴射方向が開口の上方に設定された噴射ノズルを、傾斜面に沿って開口に近接離間する方向に進退させることで、エアーの流れる方向を容易に変更できる。
【0012】
具体的には、噴射ノズルを落ち込み面に近接させることで、エアーはコアンダ効果によって落ち込み面にガイドされ、洗浄ハウジング内に導かれる。一方、噴射ノズルを落ち込み面から離間させれば、エアーは落ち込み面の影響を受けることなく開口の上方に導かれる。
【0013】
このように、本発明の加工装置では、噴射ノズルを傾斜面に沿って僅かに移動させるだけで、洗浄ハウジング内の被加工物の上面側を除電し、また、搬出手段によって洗浄ハウジングの上方に位置付けられた被加工物の下面側を除電できる。つまり、シンプルな直動機構でエアーの噴射方向を上下に変更できるので、大型化及び高価格化を抑制しながら被加工物を適切に除電できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、洗浄ハウジング内の被加工物が除電される様子を示す模式図であり、図2(B)は、図2(A)の一部を拡大した拡大図である。
図3図3(A)は、洗浄ハウジングの上方に位置付けられた被加工物が除電される様子を示す模式図であり、図3(B)は、図3(A)の一部を拡大した拡大図である。
図4】先端側から見た噴射ノズルを示す模式図である。
図5図5(A)は、洗浄ハウジングの上方に位置付けられた被加工物が除電される様子を示す模式図であり、図5(B)は、図5(A)の一部を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。なお、本実施形態では、切削ユニットを備える加工装置(切削装置)について説明するが、本発明の加工装置は必ずしも切削装置でなくて良い。
【0016】
図1に示すように、加工装置2は、各構成を支持する基台4を備えている。基台4において、前端の一方側の角部には矩形状の開口4aが形成されており、この開口4a内には、カセット載置台6が昇降可能に設置されている。カセット載置台6の上面には、複数の被加工物11を収容する直方体状のカセット8が載置される。なお、図1では、説明の便宜上、カセット8の輪郭のみを示している。
【0017】
被加工物11は、例えば、円盤状の半導体ウェーハであり、その表面(上面)側は、中央のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられている。デバイス領域は、格子状に配列されたストリート(分割予定ライン)でさらに複数の領域に区画されており、各領域にはIC等のデバイス13が形成されている。
【0018】
被加工物11の裏面(下面)側には、被加工物11より大径のダイシングテープ15が貼着されている。ダイシングテープ15の外周部分は、環状のフレーム17に固定されている。すなわち、被加工物11はダイシングテープ15を介してフレーム17に支持されている。
【0019】
カセット載置台6と近接する位置には、前後方向(X軸方向、加工送り方向)に長い矩形状の開口4bが形成されている。この開口4b内には、移動テーブル10、移動テーブル10を前後方向に移動させるテーブル移動機構(不図示)、及びテーブル移動機構を覆う防塵・防滴カバー12が設けられている。
【0020】
移動テーブル10上には、被加工物11を吸引保持するチャックテーブル14が設置されている。チャックテーブル14の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム17を四方から挟持固定する4個のクランプ16が設置されている。
【0021】
チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)と連結されており、鉛直方向(Z軸方向)に延びる回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14は、上述のテーブル移動機構によって移動テーブル10とともに前後方向に移動する。
【0022】
チャックテーブル14の上面は、被加工物11を吸引保持する保持面となっている。この保持面は、チャックテーブル14の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)と接続されており、被加工物11は、保持面に作用する吸引源の負圧でチャックテーブル14に吸引保持される。
【0023】
開口4bの前部上方には、被加工物11を仮置きするための仮置き機構18が設けられている。仮置き機構18は、相互に離間接近可能な一対のガイドレール18a,18bを含んでいる。ガイドレール18a,18bの断面形状は、被加工物11のガイドに適したL字型である。
【0024】
基台4の上方には、門型の第1支持構造20が開口4bを跨ぐように配置されている。第1支持構造20の前面には、左右方向(Y軸方向)に伸びる第1レール22が固定されており、この第1レール22には、第1移動機構24を介して第1保持機構(搬出手段)26が連結されている。第1保持機構26は、第1移動機構24によって昇降し、第1レール22に沿って左右方向に移動する。
【0025】
第1保持機構26の開口4a側には、被加工物11を保持したフレーム17を把持する把持機構28が設けられている。把持機構28でフレーム17を把持して第1保持機構26とともに左右方向に移動させれば、カセット8に収容されている被加工物11を仮置き機構18のガイドレール18a,18bに引き出し、又は、ガイドレール18a,18bに載置されている被加工物11をカセット8に挿入できる。
【0026】
また、第1支持構造20の前面には、左右方向(Y軸方向)に伸びる第2レール30が第1レール22の上方に固定されており、この第2レール30には、第2移動機構32を介して第2保持機構34が連結されている。第2保持機構34は、第2移動機構32によって昇降し、第2レール30に沿って左右方向に移動する。
【0027】
第1支持構造20の後方には、門型の第2支持構造36が配置されている。第2支持構造36の前面には、2組の移動機構38を介して、2組のブレードユニット(加工手段)40が設けられている。各ブレードユニット40は、移動機構38によって左右方向(Y軸方向)及び鉛直方向(Z軸方向)に移動する。
【0028】
各ブレードユニット40は、Y軸の周りに回転するスピンドル(不図示)の一端側に装着された円環状の切削ブレードを備えている。各スピンドルの他端側にはモータ(不図示)が連結されており、スピンドルに装着された切削ブレードを回転させる。この切削ブレードを回転させて、チャックテーブル14で吸引保持された被加工物11に切り込ませることで、被加工物11を切削できる。
【0029】
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、洗浄ユニット(洗浄手段)42が配置されている。この洗浄ユニット42は、上端部に円形の開口を備えた洗浄ハウジング44(図2参照)を備える。洗浄ハウジング44の内部空間44a(図2参照)には、被加工物11を吸引保持して回転する円盤状の洗浄テーブル(スピンナテーブル)46が収容されている。
【0030】
洗浄テーブル46は、モータ等の回転駆動源(不図示)と連結されており、鉛直方向に延びる回転軸の周りに回転する。洗浄テーブル46の上面は、被加工物11を吸引保持する保持面となっている。
【0031】
この保持面は、洗浄テーブル46の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)と接続されており、被加工物11は、保持面に作用する吸引源の負圧で洗浄テーブル46に吸引保持される。
【0032】
洗浄テーブル46の上方には、洗浄テーブル46で吸引保持された被加工物11に洗浄液を噴射する洗浄ノズル(不図示)が配置されている。この洗浄ノズルは、支持アーム(不図示)を介して搖動機構(不図示)に連結されており、洗浄テーブル46の上方におい搖動する。
【0033】
ブレードユニット40で切削された被加工物11は、第2保持機構34で洗浄ユニット42へと搬入され、洗浄ハウジング44内の洗浄テーブル46に載置される。その後、被加工物11を吸引保持した洗浄テーブル46を回転させながら、搖動させた洗浄ノズルで高圧の洗浄水を噴射することにより、被加工物11の表面側を洗浄できる。洗浄後の被加工物11は、第1保持機構26によって洗浄ユニット42から搬出される。
【0034】
洗浄ハウジング44の開口の周囲には、被加工物11にイオン化されたエアー(イオン化エアー)を供給する除電ユニット(除電手段)48が設けられている。図2(A)は、洗浄ハウジング44内の被加工物11が除電される様子を示す模式図であり、図2(B)は、図2(A)の一部を拡大した拡大図である。
【0035】
また、図3(A)は、洗浄ハウジング44の上方に位置付けられた被加工物11が除電される様子を示す模式図であり、図3(B)は、図3(A)の一部を拡大した拡大図である。
【0036】
図2(A)、図2(B)、図3(A)、及び図3(B)に示すように、除電ユニット48は、イオン化エアーAを噴射する噴射ノズル50と、イオン化エアーAの流れをガイドするガイド面52とを含む。噴射ノズル50は、洗浄ハウジング44の開口近傍に設置されており、開口から遠い基端側には、エアー供給管(不図示)等を介してエアー供給源(不図示)が接続されている。
【0037】
また、噴射ノズル50の基端側には、ガイド面52に沿って噴射ノズル50を移動させる移動機構が設けられている。この移動機構によって、噴射ノズル50は、開口に近接又は離間する方向に移動(進退)する。
【0038】
図4は、先端側(開口側)から見た噴射ノズル50を示す模式図である。図2(B)、図3(B)、図4等に示すように、噴射ノズル50の先端部(開口側)には、ガイド面52に沿って延在するスリット状(例えば、略長方形状)の噴射口50aが形成されている。噴射口50aの形状は、後述するコアンダ効果を発生させるために、細く長いスリット形状としている。この噴射口50aは、開口の上方に向けてイオン化エアーAを噴射できるように形成されている。
【0039】
ガイド面52は、洗浄ハウジング44の開口側が高くなるように傾斜した傾斜面52aを含む。すなわち、傾斜面52aは、開口側に向かって上昇するように形成されている。この傾斜面52aには、噴射ノズル50が設置されており、傾斜面52aは、噴射ノズル50の進退を案内する案内面として機能する。
【0040】
傾斜面52aの開口側の端部(上端部)には、洗浄ハウジング44の開口側が低くなるように傾斜した落ち込み面52bが接続されている。すなわち、落ち込み面52bは、傾斜面52aと連続し、かつ、洗浄ハウジング44の開口に向かって落ち込んでいる。
【0041】
この落ち込み面52bによって、イオン化エアーAを洗浄ハウジング44の内部空間44aに導くことができる。なお、傾斜面52aと落ち込み面52bとの接続部分は、イオン化エアーAの流れを妨げない滑らかな曲面で形成されている。ただし、傾斜面52aと落ち込み面52bとの接続部分は、必ずしも滑らかな曲面で形成されなくとも良い。
【0042】
被加工物11の表面側を除電する際には、図2(A)及び図2(B)に示すように、噴射ノズル50の噴射口50aを落ち込み面52bに近接させて、落ち込み面52bによるコアンダ効果を噴射ノズル50から噴射されたイオン化エアーAに作用させる。
【0043】
その結果、イオン化エアーAは、落ち込み面52bに引き寄せられるようにガイドされ、洗浄ハウジング44の内部空間44aに導かれる。これにより、洗浄ハウジング44の洗浄テーブル46に吸引保持された被加工物11の表面側を除電できる。なお、ガイド面52によるコアンダ効果は、噴射口50aのガイド面52に沿う方向の辺が長くなるほど大きくなる。
【0044】
一方、被加工物11の裏面側を除電する際には、図3(A)及び図3(B)に示すように、噴射ノズル50の噴射口50aを落ち込み面52bから離間させて、落ち込み面52bによるコアンダ効果を噴射ノズル50から噴射されたイオン化エアーAに作用させないようにする。
【0045】
上述のように、噴射口50aは、洗浄ハウジング44の開口の上方に向けてイオン化エアーAを噴射できるように形成されているので、噴射ノズル50の噴射口50aを落ち込み面52bから離間させると、イオン化エアーAは、開口の上方に導かれる。
【0046】
これにより、例えば、第1保持機構26によって上昇され、洗浄ハウジング44の上方に位置付けられた被加工物11の裏面側を除電できる。なお、イオン化エアーAの流速は、それほど高くないので、被加工物11の裏面側(例えば、ダイシングテープ15)に水滴が残留している場合でも、この水滴が吹き飛ばされて加工装置2内に飛散してしまうことはない。
【0047】
以上のように、本実施形態の加工装置2は、洗浄ハウジング44の開口側に向かって上昇し、噴射ノズルの進退を案内する傾斜面52aと、傾斜面52aの上端部と連続し、開口に向かって落ち込む落ち込み面52bと、を有するガイド面52を含む除電ユニット(除電手段)42を備えるので、傾斜面52aに沿って開口に近接離間する方向に噴射ノズル50を進退させることで、イオン化エアーAの流れる方向を容易に変更できる。
【0048】
具体的には、噴射ノズル50を落ち込み面52bに近接させることで、イオン化エアーAはコアンダ効果によって落ち込み面52bにガイドされ、洗浄ハウジング44内に導かれる。一方、噴射ノズル50を落ち込み面52bから離間させれば、イオン化エアーAは落ち込み面52bの影響を受けることなく開口の上方に導かれる。
【0049】
このように、本実施形態の加工装置2では、噴射ノズル50を傾斜面に沿って僅かに(例えば、5mm以下)移動させるだけで、洗浄ハウジング44内の被加工物11の表面(上面)側を除電し、また、第1保持機構(搬出手段)26によって洗浄ハウジング44の上方に位置付けられた被加工物11の裏面(下面)側を除電できる。つまり、シンプルな直動機構でイオン化エアーAの噴射方向を上下に変更できるので、大型化及び高価格化を抑制しながら被加工物11を適切に除電できる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、被加工物11の裏面側を除電する際に、噴射ノズル50の噴射口50aを洗浄ハウジング44の開口から離れる方向に移動させているが、本発明はこれに限定されない。
【0051】
図5(A)は、洗浄ハウジング44の上方に位置付けられた被加工物11が除電される様子を示す模式図であり、図5(B)は、図5(A)の一部を拡大した拡大図である。図5(A)及び図5(B)に示すように、例えば、噴射ノズル50の噴射口50aを洗浄ハウジング44の開口に近づける方向に移動させる。
【0052】
これにより、噴射口50aは、傾斜面52aの上端部を上方に超えて落ち込み面52bから離間された位置に位置付けられる。その結果、落ち込み面52bによるコアンダ効果がイオン化エアーAに作用しなくなるので、洗浄ハウジング44の上方に位置付けられた被加工物11の裏面側にイオン化エアーAを供給して適切に除電できる。
【0053】
その他、上記実施形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0054】
2 加工装置
4 基台
4a,4b 開口
6 カセット載置台
8 カセット
10 X軸移動テーブル
12 防塵・防滴カバー
14 チャックテーブル
16 クランプ
18 仮置き機構
18a,18b ガイドレール
20 第1支持構造
22 第1レール
24 第1移動機構
26 第1保持機構(搬出手段)
28 把持機構
30 第2レール
32 第2移動機構
34 第2保持機構
36 第2支持構造
38 移動機構
40 ブレードユニット(加工手段)
42 洗浄ユニット(洗浄手段)
44 洗浄ハウジング
44a 内部空間
46 洗浄テーブル(スピンナテーブル)
48 除電ユニット(除電手段)
50 噴射ノズル
50a 噴射口
52 ガイド面
52a 傾斜面
52b 落ち込み面
11 被加工物
13 デバイス
15 ダイシングテープ
17 フレーム
A イオン化エアー
図1
図2
図3
図4
図5