(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル樹脂層(A)の一方の面(I)に、該面(I)から順にポリカーボネート樹脂層(B)とアクリル樹脂層(C)とが積層され、アクリル樹脂層(A)の他方の面(II)に、該面(II)から順に、ポリカーボネート樹脂層(D)とアクリル樹脂層(E)とが積層された構造を有することを特徴とする共押出積層板。
ポリカーボネート樹脂層(B)の厚さおよびアクリル樹脂層(C)の厚さの合計、及びポリカーボネート樹脂層(D)の厚さおよびアクリル樹脂層(E)の厚さの合計が、各々30〜200μmである請求項1〜3のいずれかに記載の積層板。
ポリカーボネート樹脂層(B)の厚さおよびアクリル樹脂層(C)の厚さの合計、及びポリカーボネート樹脂層(D)の厚さおよびアクリル樹脂層(E)の厚さの合計が、各々アクリル樹脂層(A)の厚さを基準にして5〜50%である請求項1〜4のいずれかに記載の積層板。
ポリカーボネート樹脂層(B)の厚さおよびアクリル樹脂層(C)の厚さの合計と、ポリカーボネート樹脂層(D)の厚さおよびアクリル樹脂層(E)の厚さの合計との差が、−50〜50μmである請求項1〜5のいずれかに記載の積層板。
アクリル樹脂層(A)、アクリル樹脂層(C)およびアクリル樹脂層(E)のうち1層以上が、アクリル樹脂100重量部に対して、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤および酢酸エステル系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種を0.001〜1重量部を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の積層板。
ポリカーボネート樹脂層(B)およびポリカーボネート樹脂層(D)のうち少なくとも一方が、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、アクリル系樹脂0.01〜1重量部を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の積層板。
ポリカーボネート樹脂層(B)およびポリカーボネート樹脂層(D)のうち少なくとも一方が、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、スチレン系樹脂0.01〜2重量部を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の積層板。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔積層板〕
本発明の積層板は、アクリル樹脂層(A)の一方の面(I)に、該面(I)から順にポリカーボネート樹脂層(B)とアクリル樹脂層(C)とが積層され、アクリル樹脂層(A)の他方の面(II)に、該面(II)から順に、ポリカーボネート樹脂層(D)とアクリル樹脂層(E)とが積層されてなるものであり、(C)/(B)/(A)/(D)/(E)の5層構成を有するものである。
【0023】
異種類の樹脂層を交互に複数層積層した多層積層板において耐熱性、耐久性及び剛性等の物理特性を向上させるためには、異種類の樹脂層間の密着性を充分に高くする必要がある。異種類の樹脂層間の密着性は、樹脂層の厚さを特定の範囲に調節すること、異種類の樹脂層に挟まれた中間層に密着性を補助する物質を含有させること、樹脂層の柔軟性を高めること、積層する各樹脂層の厚さを、積層板の厚さ方向の中央に位置する厚さ方向と垂直な面を基準にして上下対称にすること等によって高くすることができる。
【0024】
積層板全体の厚さは、0.2〜3mmであるのが好ましく、0.3〜2mmであるのがより好ましく、0.4〜1.5mmであるのがさらに好ましい。積層板全体の厚さがあまり薄いと、成形し難くなり、積層板の厚さがあまり大きいと、押出成形法により積層板を製造する場合、成形時に要する冷却時間が長くなり、生産性が低下する。
【0025】
積層板において、アクリル樹脂層(A)の厚さは、170〜2900μm、好ましくは200〜1000μmである。ポリカーボネート樹脂層(B)およびポリカーボネート樹脂層(D)の厚さは、各々10〜100μm、好ましくは20〜80μm、より好ましくは20〜70μmである。アクリル樹脂層(C)およびアクリル樹脂層(E)の厚さは、各々20〜100μm、好ましくは30〜80μm、より好ましくは40〜75μmである。
【0026】
アクリル樹脂層(C),(E)の厚さがあまり薄いと積層板の表面硬度が低下するおそれがあり、アクリル樹脂層(C),(E)の厚さがあまりに厚いと積層板の面衝撃性が低下するおそれがある。アクリル樹脂層(C),(E)のポリカーボネート樹脂層(B),(D)に対する密着性を高くするためには、アクリル樹脂層(C),(E)はできるだけ薄いことが好ましい。アクリル樹脂層(C),(E)の厚さが100μmを超えるとアクリル樹脂層(C),(E)のポリカーボネート樹脂層(B),(D)に対する密着性が不十分になる。
【0027】
ポリカーボネート樹脂層(B),(D)の厚さがあまりに薄いと積層板の面衝撃性、耐熱性が低下するおそれがある。ポリカーボネート樹脂層(B),(D)の厚さがあまりに厚いとコスト面で不利になったり、積層板の透明性が低下するおそれがある。ポリカーボネート樹脂層(B),(D)のアクリル樹脂層(A),(C),(E)に対する密着性を高くするためには、ポリカーボネート樹脂層(B),(D)はできるだけ薄いことが好ましい。ポリカーボネート樹脂層(B),(D)の厚さが100μmを超えるとポリカーボネート樹脂層(B),(D)のアクリル樹脂層(A),(C),(E)に対する密着性が不十分になる。
【0028】
積層板において、アクリル樹脂層(C)の厚さとポリカーボネート樹脂層(B)の厚さとの合計、及びアクリル樹脂層(E)の厚さとポリカーボネート樹脂層(D)の厚さとの合計は、各々30〜200μm、好ましくは50〜150μm、より好ましくは70〜140μmである。
【0029】
上記アクリル樹脂層(C)の厚さとポリカーボネート樹脂層(B)の厚さとの合計、及びアクリル樹脂層(E)の厚さとポリカーボネート樹脂層(D)の厚さとの合計は、各々アクリル樹脂層(A)の厚さを基準にして5〜50%、好ましくは8〜40%、より好ましくは10〜35%である。
【0030】
アクリル樹脂層(C)とポリカーボネート樹脂層(B)は積層板の表面硬度および耐熱性を付与するためにある程度の厚みが必要であり、アクリル樹脂層(E)とポリカーボネート樹脂層(D)は積層板に耐熱性および表面硬度を付与する必要がある。
【0031】
他方、ポリカーボネート樹脂層(B),(D)のアクリル樹脂層(A)に対する密着性を高くするためには、アクリル樹脂層(C)の厚さとポリカーボネート樹脂層(B)の厚さとの合計、アクリル樹脂層(E)の厚さとポリカーボネート樹脂層(D)の厚さとの合計は、できるだけ薄いことが好ましい。アクリル樹脂層(C)の厚さとポリカーボネート樹脂層(B)の厚さとの合計、又はアクリル樹脂層(E)の厚さとポリカーボネート樹脂層(D)の厚さとの合計が200μmを超えるか、樹脂層(A)の厚さを基準にして50%を超えるとポリカーボネート樹脂層(B),(D)のアクリル樹脂層(A)に対する密着性が不十分になる。
【0032】
アクリル樹脂層(C)の厚さおよびポリカーボネート樹脂層(B)の厚さの合計と、アクリル樹脂層(E)およびポリカーボネート樹脂層(D)の厚さの合計との差は、好ましくは−50〜50μm、より好ましくは−30〜30μm、特に好ましくは−10〜10μmである。
【0033】
アクリル樹脂層(C)の厚さおよびポリカーボネート樹脂層(B)の厚さの合計と、アクリル樹脂層(E)の厚さおよびポリカーボネート樹脂層(D)の厚みの合計をできるだけ近くすることが望ましく、両者の差が大きくなるほど、積層板の反りが大きくなる傾向がある。
【0034】
<アクリル樹脂層>
アクリル樹脂層(A),(C),(E)を構成するアクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル単位を主成分とするメタクリル樹脂が好ましく、具体的にはメタクリル酸メチル単位を通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上含むメタクリル樹脂が好ましい。
メタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル単位のみからなるメタクリル酸メチル単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルと、該メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体との共重合体であってもよい。
【0035】
メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類や;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。また、スチレンや;置換スチレン類;クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類や;ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン類等も挙げられる。さらに、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;無水マレイン酸;フェニルマレイミド;シクロヘキシルマレイミド等も挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(ゴム状重合体)
アクリル樹脂層(A),(C),(E)は、積層板の耐衝撃性などを向上させる観点から、それぞれ独立して、ゴム状重合体を含有していてもよく、樹脂成分として上記のメタクリル樹脂を含有し、さらにゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂組成物から構成されていてもよい。
【0037】
但し、ある一形態においては、アクリル樹脂層(A)はゴム状重合体を含有しないことが好ましい。ゴム粒子を含有させると光透過性が低下し、積層板の導光性能が低下する可能性がある。上記一形態としては、当該積層板からなる導光板が挙げられる。
【0038】
ゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム等のジエン系ゴム;アクリル系ゴム;エチレン/プロピレン/非共役ジエン系ゴム等が挙げられる。これらのゴム状重合体にメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の単量体をグラフト重合させてなるグラフト共重合体も好適に用いられる。グラフト共重合体は、ゴム状重合体とグラフトさせる単量体との割合が、通常、前者が5〜80重量部、後者が95〜20重量部である。これらのグラフト共重合体としては、例えば、特開昭55−147514号公報や特公昭47−9740号公報等に記載されているものを用いることができる。
【0039】
また、グラフト共重合体の好ましい例として、ゴム状重合体を内層とし、グラフト重合鎖を外層とする多層構造重合体を挙げることができる。
【0040】
この場合、内層のゴム状重合体としては、アクリル系ゴムを用いるのが好ましい。このアクリル系ゴムは、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル50重量%以上とアクリル酸アルキル以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。アクリル系ゴムを構成するアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。アクリル系ゴムを構成するアクリル酸アルキル以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸アルキル、アルコキシアクリル酸アルキル、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、さらにメタクリル酸アリル等の架橋性の単量体を用いることもできる。アクリル系ゴムのガラス転移点(Tg)は25℃未満であるのがよい。
【0041】
外層のグラフト重合鎖としては、アルキル基の炭素数が1〜4であるメタクリル酸アルキルの単独重合体や、該メタクリル酸アルキル50重量%以上と該メタクリル酸アルキル以外の単量体50重量%以下との共重合体であるのが好ましい。外層のグラフト重合鎖を構成するメタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。外層のグラフト重合鎖を構成するメタクリル酸アルキル以外の単量体としては、例えば、炭素数が5以上のメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、さらにメタクリル酸アリル等の架橋性の単量体を用いることもできる。この外層のグラフト重合鎖のガラス転移点(Tg)は25℃以上であるのがよい。
【0042】
さらに、前記グラフト重合鎖と同様の重合体を、内層のアクリル系ゴムのさらに内側に存在させることもできる。
【0043】
上述のような多層構造重合体は、その全体の重量を基準として、アクリル系ゴムからなる層を20〜60重量%含有するものがよい。これらの多層構造重合体としては、例えば、特公昭55−27576号公報、特開平6−80739号公報、特開昭49−23292号公報等に記載されているものを用いることができる。
【0044】
メタクリル樹脂組成物におけるゴム状重合体の割合は、メタクリル樹脂およびゴム状重合体の合計100重量%を基準にして、通常0〜50重量%である。アクリル樹脂層(A)では、ゴム状重合体の含有量ができるだけ少ない方が積層板の剛性に優れ、コスト面で有利であるため、ゴム状重合体の割合は、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%となる。アクリル樹脂層(C),(E)では、積層板の耐衝撃性を重視する場合、ゴム状重合体を含有するのが好ましく、係る場合、ゴム状重合体の割合は、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜10重量%となる。
【0045】
アクリル樹脂層(A)を構成するメタクリル樹脂組成物に含有されるゴム状重合体の組成と、アクリル樹脂層(C),(E)を構成するメタクリル樹脂組成物に含有されるゴム状重合体の組成とは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
アクリル樹脂層(A),(C),(E)は互いに同じ組成であっても、異なっていてもよいが、得られる積層体の反りの発生を抑制するなどの観点から、少なくともアクリル樹脂層(C),(E)は同じ組成であることが好ましい。
【0047】
<ポリカーボネート樹脂層>
ポリカーボネート樹脂層(B),(D)を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば、二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法等で反応させることにより得られるもの;カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの;環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0048】
ポリカーボネート樹脂を構成する二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選ばれる二価フェノールを単独で、または2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
【0049】
ポリカーボネート樹脂を構成するカルボニル化剤としては、例えば、ホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル;二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0050】
ポリカーボネート樹脂層(B)および(D)のうち少なくとも一方に、アクリル系樹脂又はスチレン系樹脂を含有させてもよい。アクリル系樹脂又はスチレン系樹脂を含有させることで、ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層との密着性が向上する。アクリル樹脂層に対する密着性を向上させるためにポリカーボネート樹脂層に含有させる物質としてより好ましいものはスチレン系樹脂である。スチレン樹脂は屈折率がポリカーボネート樹脂に近いため、透過率に悪影響を及ぼしにくい傾向がある。
【0051】
アクリル系樹脂の含有割合は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜1重量部であることが好ましい。スチレン系樹脂の含有割合は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.08〜0.5重量部である。アクリル系樹脂とスチレン系樹脂は、いずれか単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0052】
ポリカーボネート樹脂層に添加するアクリル系樹脂としては、例えば、前述のアクリル樹脂層(A),(C),(E)を構成するアクリル樹脂として例示したものと同様のものが挙げられ、中でも低分子量のものが好ましく用いられる。ポリカーボネート樹脂層に含有させるアクリル系樹脂の重量平均分子量の範囲は1000〜100000であるのが好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が低すぎると、押出成形の際にアクリル系樹脂が揮発してしまうおそれがあり、アクリル系樹脂の重量平均分子量が高すぎると、アクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂との相分離を起こし、積層板の透過率を低下させる傾向がある。
【0053】
また、ポリカーボネート樹脂層に含有させるスチレン系樹脂は、単量体単位としてスチレン系単量体を50〜100重量%、メタクリル酸メチルを0〜50重量%含む重合体が好ましく用いられる。好ましいスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、メタクリル酸メチル単量体単位を30重量%未満共重合したメタクリル酸メチルースチレン共重合体が挙げられる。
【0054】
ここで、スチレン系単量体としては、スチレンの他、置換スチレン類を用いることもでき、該置換スチレン類としては、例えば、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのアルキルスチレン類等が挙げられる。スチレン系単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。ポリカーボネート樹脂層に含有させるスチレン系樹脂の重量平均分子量の範囲は1000〜20000であるのが好ましい。スチレン系樹脂の重量平均分子量が低すぎると、押出成形の際にスチレン系樹脂が揮発してしまうおそれがあり、高すぎるとスチレン系樹脂と、ポリカーボネート樹脂との相分離を起こし、外観を悪化させる傾向がある。
【0055】
ポリカーボネート樹脂層(B),(D)は互いに同じ組成であっても、異なっていてもよいが、得られる積層体の反りの発生を抑制するなどの観点から、同じ組成であることが好ましい。
【0056】
(添加剤)
上述したポリカーボネート樹脂層(B),(D)、アクリル樹脂層(A),(C),(E)には、それぞれ必要に応じて、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセライド、ポリエーテルエステルアミド等の帯電防止剤;ヒンダードフェノール等の酸化防止剤;燐酸エステル等の難燃剤;パルミチン酸、ステアリルアルコール等の滑剤;ヒンダードアミン等の光安定剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤、酢酸エステル紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;光拡散剤;染料;蛍光増白剤等を添加してもよく、これらの添加剤は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0057】
(紫外線吸収剤)
さらに、積層板を導光板として使用する場合、紫外線に対する耐久性を向上させる観点から、アクリル樹脂層に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては、上述したものの中でも、該導光板から出射する光の色調の観点から、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤および酢酸エステル系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種が好ましい。紫外線吸収剤の含有割合は、アクリル樹脂層(A)、(C)および(E)のうち紫外線吸収剤を含有させる各層におけるアクリル樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部、好ましくは0.003〜0.5重量部、より好ましくは0.005〜0.1重量部である。
【0058】
マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が挙げられ、中でも下記式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【0060】
(式中、X
1は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R
1およびR
2はそれぞれ同一または異なる基であって、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0061】
上記式(1)中、X
1で表されるアルキル基およびX
1で表されるアルコキシ基におけるアルキル基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。X
1は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であるのが好ましく、X
1の置換位置は、パラ位であるのが好ましい。
【0062】
上記式(1)中、R
1およびR
2で表されるアルキル基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。R
1およびR
2は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基であるのが好ましい。
【0063】
上記式(1)で示される化合物としては、特に、2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル(Mw:250、λmax:308nm、εmax:24200mol
-1cm
-1)が好ましい。
【0064】
オキサルアニリド系紫外線吸収剤としては、例えば、アルコキシオキサルアニリド類が挙げられ、中でも下記式(2)で示される化合物が好適に用いられる。
【0066】
(式中、R
3およびR
4はそれぞれ同一または異なる基であって、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0067】
上記式(2)中、R
3およびR
4で表されるアルキル基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。R
3およびR
4は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基であるのが好ましく、また、R
3およびR
4の置換位置は、それぞれオルト位であるのが好ましい。
【0068】
上記式(2)で示される化合物としては、特に2−エトキシ−2’−エチルオキサルアニリド(Mw:312、λmax:298nm、εmax:16700mol
-1cm
-1)が好ましい。
【0069】
酢酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(1−アリールアルキリデン)酢酸エステル類が挙げられ、中でも下記式(3)で示される化合物が好適に用いられる。
【0071】
(式中、X
2は水素原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、R
5はアルキル基を表す。)
【0072】
置換基X
2におけるアルコキシル基は、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4程度のアルコキシル基である。置換基X
2におけるアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4程度のアルキル基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基X
2はアルコキシル基であることが好ましい。
【0073】
置換基R
5におけるアルキル基としては、通常は炭素数1〜10程度のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、1−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10程度のアルキル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、2−エチルヘキシル基等である。
【0074】
添加剤を配合する方法としては、例えば、原料樹脂と添加剤とをヘンシェルミキサーやタンブラー等で機械的に混合した後、溶融混練する方法等が挙げられる。また、この溶融混練は、例えば、一軸または二軸の押出機や各種ニーダー等を用いて行うことができる。
【0075】
〔積層板の製造方法〕
積層板は、アクリル樹脂層(A)の一方の面(I)に、該面(I)から順にポリカーボネート樹脂層(B)とメタクリル樹脂層(C)とが積層され、アクリル樹脂層(A)の他方の面(II)に、該面(II)から順に、ポリカーボネート樹脂層(D)とアクリル樹脂層(E)とが積層されるように共押出成形で積層一体化することにより、好適に製造される。この共押出成形は、アクリル樹脂層(C)および(E)が同じ組成であり、ポリカーボネート樹脂層(B)および(D)が同じ組成である場合、3基の一軸または二軸の押出機を用いて、ポリカーボネート樹脂層(B)および(D)、アクリル樹脂層(A)、アクリル樹脂層(C)および(E)の各原料樹脂をそれぞれ溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して積層することにより行うことができる。積層一体化された溶融樹脂は、例えば、ロールユニット等を用いて冷却固化すればよい。共押出成形により製造した積層板は、粘着剤や接着剤を用いた貼合により製造した積層板に比べて、二次加工し易い点で好ましい。
【0076】
積層板の層構成としては、アクリル樹脂層(A)の両面に、ポリカーボネート樹脂層(B),(D)が、さらにその両面に、アクリル樹脂層(C),(E)がこの順で積層されるような2〜5種5層構造である必要がある。
【0077】
以下、本発明の積層板の製造方法にかかる一実施形態について、アクリル樹脂層(A)の両方の面に、ポリカーボネート樹脂層(B),(D)が、さらにその両面に、アクリル樹脂層(C),(E)がこの順で積層された5層構造の積層板を共押出成形により製造する場合を例に挙げ、
図1を参照して詳細に説明する。なお、本例においては、アクリル樹脂層(A)と(C)と(E)、ポリカーボネート樹脂層(B)と(E)がそれぞれ同じ組成の2種5層構成とする。
【0078】
図1に示すように、まず、ポリカーボネート樹脂層(B)および(D)と、アクリル樹脂層(A)と、アクリル樹脂層(C)および(E)との各原料樹脂を、それぞれ別個の押出機1,2,3で加熱して溶融混練し、それぞれフィードブロック4に供給して溶融積層一体化した後、ダイ5から押出す。
【0079】
次いで、ダイ5から押出したシート状ないしフィルム状の溶融樹脂を、略水平方向に対向配置した第1冷却ロール6と第2冷却ロール7の間に挟み込む。第1,第2冷却ロール6,7は、少なくとも一方がモータ等の回転駆動手段に接続されており、両ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。両ロールのうち、第2冷却ロール7は、両ロール間で挟持された後のシート状ないしフィルム状の積層板が巻き掛けられる、巻き掛けロールである。
【0080】
第1,第2冷却ロール6,7としては、例えば、剛性を有する金属ロール、弾性を有する金属弾性ロール等が挙げられる。前記金属ロールとしては、例えば、ドリルドロール、スパイラルロール等が挙げられる。前記金属弾性ロールとしては、例えば、軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され溶融樹脂に接触する円筒形の金属製薄膜とを備え、これら軸ロールと金属製薄膜との間に水や油等の温度制御された流体が封入されたもの;ゴムロールの表面に金属ベルトを巻いたもの等が挙げられる。
【0081】
第1,第2冷却ロール6,7は、金属ロールおよび金属弾性ロールから選ばれる1種で構成してもよいし、金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせて構成してもよい。
【0082】
リタデーション値が低減された積層板を得る場合には、第1,第2冷却ロール6,7を金属ロールと金属弾性ロールとの組み合わせで構成するのが好ましい。すなわち、溶融樹脂を金属ロールと金属弾性ロールとの間に挟持すると、金属弾性ロールが溶融樹脂を介して金属ロールの外周面に沿って凹状に弾性変形し、金属弾性ロールと金属ロールとが溶融樹脂を介して所定の接触長さで接触する(
図1を参照)。これにより、金属ロールと金属弾性ロールとが、溶融樹脂に対して面接触で圧着するようになり、これらロール間に挟持される溶融樹脂は面状に均一加圧されながら製膜される。その結果、製膜時の歪みが低減され、リタデーション値の低減された積層板が得られる。
【0083】
金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせる場合には、金属弾性ロールを第1冷却ロール6、金属ロールを第2冷却ロール7とするのが好ましい。これにより、得られる積層板のリタデーション値をより低減することができる。
【0084】
上述した第1冷却ロール6と第2冷却ロール7の間に挟み込んだ溶融樹脂を、第2冷却ロール7および第3冷却ロール8の順に巻き掛ける。具体的には、第2冷却ロール7に巻き掛けられた溶融樹脂を、第2冷却ロール7と第3冷却ロール8との間に通して第3冷却ロール8に巻き掛けるようにする。これにより、溶融樹脂が緩やかに冷却されるので、得られる積層板のリタデーション値を低減することができる。なお、第2冷却ロール7と第3冷却ロール8との間は、所定の間隙を設けて解放状態にしてもよいし、所定の間隙を設けずに溶融樹脂が両ロール間に挟み込まれるようにしてもよい。
【0085】
第3冷却ロール8としては、特に限定されるものではなく、従来から押出成形で使用されている通常の金属ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロールやスパイラルロール等が挙げられる。第3冷却ロール8の表面状態は、鏡面であるのが好ましい。なお、第3冷却ロール8以降に第4冷却ロール,第5冷却ロール,・・・と複数本の冷却ロールを設け、第3冷却ロール8に巻き掛けたシート状ないしフィルム状の積層板を順次、次の冷却ロールに巻き掛けるようにしてもよい。
【0086】
第3冷却ロール8に巻き掛けて緩やかに冷却した積層板を、図示しない引取りロールによって引取り、これを巻き取ると、積層板が得られる。
【0087】
積層板の厚さは、溶融状態の積層板の厚さや、冷却ユニットが備えるロールやベルトの間隔、周速度等を調整することにより、任意に調整することができる。
【0088】
〔積層板の用途〕
得られた積層板は、エクステリア用途や看板用途をはじめ、照明用途やディスプレイにおける前面板用途、導光板等に好適に用いることができ、特にディスプレイにおける前面板、導光板として好適に用いることができる。また、本発明の積層板は、例示した用途に限定されず、外観が重視される分野において、好適に用いることができる。
【0089】
積層板は導光板としても好適に利用できる。積層板を導光板として利用する場合、透明性に優れるアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂を使用することが望ましい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
以下の実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、次の通りである。
・押出機1:スクリュー径65mm、一軸、ベント付きの押出機(東芝機械(株)製)を用いた。
・押出機2:スクリュー径45mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)を用いた。
・押出機3:スクリュー径45mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)を用いた。
・フィードブロック4:2種5層,3種5層,2種3層,1種3層または2種4層の分配ピンを取り付けた分配型のフィードブロック(日立造船(株)製)を用いた。
・ダイ5:リップ幅1400mm、リップ間隔1mmのTダイ(日立造船(株)製)を用いた。
・第1,第2,第3冷却ロール6,7,8:横型、面長1400mm、径300mmφの冷却ロールを用いた。
【0092】
第1,第2,第3冷却ロール6,7,8について、より具体的に説明すると、第1冷却ロール6には金属弾性ロールを用いた。該金属弾性ロールには、軸ロールの外周面を覆うように金属製薄膜が配置され、軸ロールと金属製薄膜との間に流体が封入されているものを採用した。
【0093】
軸ロール、金属製薄膜および流体は、次の通りである。
・軸ロール:ステンレス鋼製のものを用いた。
・金属製薄膜:厚さ2mmのステンレス鋼製の鏡面金属スリーブを用いた。
・流体:油であり、この油を温度制御することによって、金属弾性ロールを温度制御可能にした。より具体的には、温度調節機のON−OFF制御により前記油を加熱、冷却して温度制御可能にし、軸ロールと金属製薄膜との間に循環させた。
【0094】
第2,第3冷却ロール7,8には、高剛性の金属ロールを用いた。該金属ロールは、表面状態が鏡面であるステンレス鋼製のスパイラルロールである。
【0095】
実施例および比較例で使用した樹脂は、以下の5種類である。
・樹脂1:熱変形温度(Th)140℃の住友ダウ(株)製のポリカーボネート樹脂「カリバー301−10」を用いた。
・樹脂2:熱変形温度(Th)100℃の住友化学(株)製のポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂「スミペックスMH」100重量部にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤((株)アデカ製のLA−31)0.5重量部を混合した組成物を用いた。
・樹脂3:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=98/2(重量比)の共重合体86重量%と、下記参考例で得たゴム状重合体14重量%との混合物を用いた。
・樹脂4:芳香族ポリカーボネート樹脂(住友ダウ(株)製の「カリバー200−13」)100重量部に重量平均分子量2500のポリスチレン樹脂(Aldrich社製)を0.1重量部添加したポリカーボネート樹脂組成物を用いた。このポリカーボネート樹脂組成物の熱変形温度(Th)は140℃である。
・樹脂5:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=94/6(重量比)の共重合体100重量部にマロン酸エステル系紫外線吸収剤を0.01重量部添加したアクリル樹脂組成物を用いた。このアクリル樹脂組成物の熱変形温度(Th)は100℃である。前記マロン酸エステル系紫外線吸収剤は、上記式(1)中、X
1がメトキシ基でその置換位置がパラ位であり、R
1およびR
2がメチル基の化合物である2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル(Clariant社製の商品名「Sanduvor PR−25」)を用いた。
【0096】
[参考例]
(ゴム状重合体の製造)
まず、内容積5Lのガラス製反応容器に、イオン交換水1700g、炭酸ナトリウム0.7gおよび過硫酸ナトリウム0.3gを仕込んで窒素気流下に撹拌した。次いで、分散剤(花王(株)製の「ペレックスOT−P」)4.46g、イオン交換水150g、メタクリル酸メチル150gおよびメタクリル酸アリル0.3gを加えた後、75℃に昇温して150分間撹拌を続けた。
【0097】
次いで、アクリル酸ブチル689g、スチレン162gおよびメタクリル酸アリル17gの混合物と、過硫酸ナトリウム0.85g、分散剤(花王(株)製の「ペレックスOT−P」)7.4gおよびイオン交換水50gの混合物とを、別々に90分間かけて添加し、さらに90分間重合を続けた。
【0098】
重合完了後、さらにメタクリル酸メチル326gおよびエチルアクリレート14gの混合物と、過硫酸ナトリウム0.34gを溶解させたイオン交換水30gとを、別々に30分間かけて添加した。
【0099】
添加終了後、さらに60分間保持し重合を完了した。得られたラテックスを0.5重量%塩化アルミニウム水溶液に投入してゴム状重合体を凝集させた。これを温水にて5回洗浄後、乾燥してゴム状重合体を得た。
【0100】
[実施例1〜5および比較例1〜5]
<積層板の作製>
まず、押出機1,2,3、フィードブロック4、ダイ5、第1,第2,第3冷却ロール6,7,8を
図1に示すように配置した。次いで、樹脂層(A)として表1に示す種類の樹脂を押出機1にて溶融混練し、樹脂層(B),(D)として表1に示す種類の樹脂を押出機2にて溶融混練し、樹脂層(C),(E)として表1に示す種類の樹脂を押出機3にて溶融混練し、それぞれをフィードブロック4に供給した。
【0101】
そして、押出機1からフィードブロック4に供給される樹脂層(A)の両面に、押出機2からフィードブロック4に供給される樹脂層(B),(D)が積層され、この樹脂層(B),(D)の表面に、押出機3からフィードブロック4に供給される樹脂層(C),(E)が積層されたフィルム状の溶融樹脂を、ダイ5から押出した。
【0102】
次いで、ダイ5から押出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロール6と第2冷却ロール7との間に挟み込み、第3冷却ロール8に巻き掛けて成形・冷却し、樹脂層(A)の両面に、樹脂層(B),(D)および樹脂層(C),(E)がこの順に積層され、かつ表1に示す厚さを有する5層構造(PMMA/PC/PMMA/PC/PMMA)の積層板を得た(実施例1〜5)。なお、PMMAはアクリル樹脂層、PCはポリカーボネート樹脂層をそれぞれ示し、比較例1〜5は、以下の層構成を有する。
【0103】
比較例1:PC/PMMA/PC/PMMA/PC (5層構造)
比較例2:PC/PMMA/PC (3層構造)
比較例3:PMMA/PMMA/PMMA (3層構造)
比較例4:PC/PC/PC (3層構造)
比較例5:PMMA/PC/PC/PC (4層構造)
【0104】
なお、第1冷却ロール6の表面温度は105℃、第2冷却ロール7の表面温度は110℃、第3冷却ロール8の表面温度は115℃であった。これらの温度は、各冷却ロールの表面温度を実測した値である。また、表1に示す項目は以下のとおりである。
【0105】
「総厚み」:得られた積層板の総厚み
「C+B」:樹脂層(C)の厚みおよび樹脂層(B)の厚みの合計
「D+E」:樹脂層(D)の厚みおよび樹脂層(E)の厚みの合計
「(B+C)−(D+E)」:樹脂層(C)の厚さおよび樹脂層(B)の厚さの合計と、樹脂層(E)の厚さおよび樹脂層(D)の厚みの合計との差
【0106】
<評価>
得られた各積層板(実施例1〜5および比較例1〜5)について、表面硬度、加熱収縮率、長光路透過率(初期、耐久試験後)および曲げ弾性率を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表3に示す。
【0107】
(表面硬度)
JIS K 5400に準拠して鉛筆硬度を測定した。
【0108】
(加熱収縮率)
まず、得られた積層板から120×120mmのサイズに試験片を切り出した。次いで、この試験片に直径100mmの円を描き、MD方向及びTD方向に円の中心を通る分割線を入れた。試験前の分割線の長さ(円の直径)と120℃×60分オーブン内で暴露した試験片の分割線の長さの比(収縮率=1−試験後の円直径/試験前の円直径)から加熱収縮率を算出した。加熱収縮率の数値が小さいほど、耐熱性に優れていることを示す。
【0109】
(初期の長光路透過率)
まず、得られた導光板から5cm×4cmサイズで試験片を切り出し、この試験片の4辺を、エッジ研磨機(メガロテクニカ(株)製の「PB−500」)を用いて研磨した。
ついで、この試験片の光の透過率を、分光光度計((株)日立製作所製の「U4100型」積分球付き)を用いて光路4cm、波長300〜800nmを1nm刻みで測定し、波長380〜780nmの光の平均透過率を求め、これを初期の長光路透過率とした。
【0110】
(耐久試験後の長光路透過率)
耐久試験は、ATLAS−UVCON(東洋精機(株)製)を用いて、60℃、UV連続144時間照射、エッジ入光の条件で実施した。サンプルサイズ5cm×4cm、5cm側エッジを暴露し、光路4cm、波長300〜800nmを1nm刻みで測定し、波長380〜780nmの光の平均透過率を求め、これを耐久試験後の長光路透過率とした。
【0111】
(曲げ弾性率)
自動引張り・曲げ複合試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製)において、JIS K7171に準拠して測定した。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1〜5について、アクリル樹脂層(A)の厚さを基準にして、ポリカーボネート樹脂層(B)の厚さおよびアクリル樹脂層(C)の厚さの合計の割合、及びポリカーボネート樹脂層(D)の厚さおよびアクリル樹脂層(E)の厚さの合計の割合を計算すると表2の通りである。
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
実施例1〜5で得られた積層板は、PMMA/PC/PMMA/PC/PMMAの5層構造であるので、透明性、耐久性、剛性、表面硬度および耐熱性に優れることがわかった。
【0117】
一方、比較例1で得られた積層板(PC/PMMA/PC/PMMA/PC)は、樹脂層Aおよび最外層(樹脂層C,E)がPCであるため表面硬度および剛性が十分ではなかった。比較例2で得られた積層板(PC/PMMA/PC)は、最外層(樹脂層B,D)がPCであるため表面硬度が十分ではなかった。比較例3で得られた積層板(PMMA/PMMA/PMMA)は、樹脂層Aと、最外層(樹脂層C,E)との間に、PCを設けなかったため耐熱性が十分ではなかった。比較例4で得られた積層板(PC/PC/PC)は、最外層(樹脂層B,D)がPCであるため表面硬度が十分ではなく、各層は紫外線吸収剤を含有していないため耐久性が十分ではなく、樹脂層AがPCであるため剛性も十分ではなかった。比較例5で得られた積層板(PMMA/PC/PC/PC)は、裏側の最外層(樹脂層E)がPCであるため裏側の表面硬度が十分ではなく、表側の最外層(樹脂層C)のみが紫外線吸収剤を含有しているため耐久性が十分ではなく、樹脂層AがPCであるため剛性も十分ではなかった。