特許第6385274号(P6385274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385274含ケイ素高分岐ポリマー及びそれを含む硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385274
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】含ケイ素高分岐ポリマー及びそれを含む硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20180827BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08J7/04 K
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-526976(P2014-526976)
(86)(22)【出願日】2013年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2013070059
(87)【国際公開番号】WO2014017542
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年4月25日
【審判番号】不服2017-7346(P2017-7346/J1)
【審判請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-167797(P2012-167797)
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩康
(72)【発明者】
【氏名】松山 元信
(72)【発明者】
【氏名】原口 将幸
【合議体】
【審判長】 岡崎 美穂
【審判官】 長谷部 智寿
【審判官】 小柳 健悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−75755(JP,A)
【文献】 特開2004−224906(JP,A)
【文献】 特開2000−290326(JP,A)
【文献】 特開平8−62561(JP,A)
【文献】 特開2007−331128(JP,A)
【文献】 特開2004−176054(JP,A)
【文献】 特開2007−46049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/06
C08F289/00
C08F 2/44
C08F265/04
G02F 1/13
B32B 27/30
C08F299/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dと、場合により、該モノマーA及び該モノマーB以外のその他のモノマーとの重合物である、含ケイ素高分岐ポリマーであって、
前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物であり、
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは10〜100の整数を表す。)
前記モノマーAのモル数に対して0.01〜10モル%量の前記モノマーBを用いる、含ケイ素高分岐ポリマー0.01〜10質量部、
(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1〜25質量部
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
(a)分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に炭素原子数6〜30のアルキル基若しくは炭素原子数3〜30の脂環基、及びビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方の1つの基を有するモノマーCと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dと、場合により、該モノマーA、該モノ
マーB及び該モノマーC以外のその他のモノマーとの重合物である、含ケイ素高分岐ポリマーであって、
前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物であり、
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは10〜100の整数を表す。)
前記モノマーAのモル数に対して0.01〜10モル%量の前記モノマーB及び10〜300モル%量の前記モノマーCを用いる、含ケイ素高分岐ポリマー0.01〜10質量部、
(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1〜25質量部
を含む硬化性組成物。
【請求項3】
前記モノマーCが、下記式[3]で表される化合物である、請求項2に記載の硬化性組成物。
【化3】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数6〜30のアルキル基又は炭素原子数3〜30の脂環基を表す。)
【請求項4】
前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記モノマーAが、ジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記重合開始剤Dが、アゾ系重合開始剤である、請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(b)多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(c)重合開始剤がアルキルフェノン化合物である、請求項〜請求項7のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
さらに(d)パーフルオロポリエーテル化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの表面改質剤0.01〜10質量部を含む、請求項〜請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記(d)表面改質剤が(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに(e)溶媒を含む、請求項〜請求項10のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項〜請求項11のうち何れか一項に記載の硬化性組成物を用いて作製された硬化膜。
【請求項13】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法であって、請求項11に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に紫外線を照射し硬化する工程を含む、ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記ハードコート層が0.1〜30μmの膜厚を有する、請求項13に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ケイ素高分岐ポリマー、該含ケイ素高分岐ポリマーを添加した硬化性組成物、及び該組成物から得られるハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー(高分子)材料は、近年、多分野でますます利用されている。それに伴い、それぞれの分野に応じて、マトリクスとしてのポリマーの性状とともに、その表面や界面の特性が重要となっている。例えば、表面エネルギーの低いフッ素系化合物を表面改質剤として用いることにより、撥水撥油性、防汚性、非粘着性、剥離性、離型性、滑り性、耐磨耗性、反射防止特性、耐薬品性などの表面・界面制御に関する特性の向上が期待され、種々提案されている。
【0003】
LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、タッチパネルなどの各種ディスプレイの表面には、傷付き防止のためのハードコート層を具備する各種プラスチックフィルムが使用されている。しかし、ハードコート層は指紋痕や汚れが付着しやすく、付着した指紋痕や汚れが簡単に除去できなかった。そのため、ディスプレイの画像の視認性が著しく損なわれたり、ディスプレイの美観が損なわれたりするという問題があった。特にタッチパネル表面は、直に人が手で触れるものであるため、とりわけ指紋痕が付着しにくく、かつ付着した場合には除去しやすいことが強く望まれている。
【0004】
このようなハードコート層を形成するためのハードコート層形成用塗布液としては、具体的には、シリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物を含むハードコート層用組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化層が、防汚性及び滑り性に優れることが開示されている(特許文献1)。また、含フッ素高分岐ポリマー並びにパーフルオロポリエーテル化合物及び/又はシリコーン化合物を含むコーティング用硬化性組成物から得られるハードコートフィルムが、耐指紋性などの表面特性に優れることが開示されている(特許文献2)。さらに、ポリシロキサンの側鎖をもつ分岐ポリマーを添加した塗料組成物から得られる高分子成形体が、粘着防止性及び耐汚染性を長時間維持できることが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−152751号公報
【特許文献2】国際公開第2012/074071号パンフレット
【特許文献3】特開2002−121487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、ケイ素化合物(シリコーン系表面調整剤)やフッ素化合物(フッ素系表面調整剤)をハードコート層形成用塗布液に添加してハードコート層の表面を改質する方法は種々提案されているが、ケイ素化合物やフッ素化合物を含むハードコート層を具備する各種ディスプレイや電子機器筐体において、それらを使用するユーザーが、その表面に付着した汚れをティッシュペーパーやウェットティッシュを使用して拭き取る際に、表面に十分な滑り性がないと汚れの除去性が良好でないといった課題がある。また、近年ではスマートフォンやタブレットPCなどのタッチパネルにおいては、スライドやフリックといったその表面を指などでなぞるような操作を行うため、より高滑り性な表面を得る技術が求められている。
すなわち高滑り性と撥水撥油性に優れ、かつ、一般的に使用されている窒素雰囲気下又は空気雰囲気下での紫外線照射により硬化可能なハードコート層形成用組成物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる含ケイ素高分岐ポリマーを硬化性組成物に添加することにより、該組成物から得られる硬化膜に高滑り性と撥水撥油性を付与することができ、しかも、該硬化膜は紫外線照射による慣用の硬化条件においてこれら性能を発現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、第1観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる、含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第2観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に炭素原子数6〜30のアルキル基若しくは炭素原子数3〜30の脂環基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる、含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第3観点として、前記モノマーCが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、第2観点に記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第4観点として、前記モノマーCが、下記式[3]で表される化合物である、第3観点に記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数6〜30のアルキル基又は炭素原子数3〜30の脂環基を表す。)
第5観点として、前記モノマーBが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、第1観点〜第4観点のうち何れか一つに記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第6観点として、前記モノマーBが下記式[1]で表される化合物である、第5観点に
記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
【化5】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはケイ素原子でLに結合するシロキサン鎖を表し、Lは炭素原子数1〜6のアルキレン基を表す。)
第7観点として、前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物である、第6観点に記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
【化6】
(式中、R及びLはそれぞれ前記式[1]における定義と同じ意味を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは1〜200の整数を表す。)
第8観点として、前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点〜第7観点のうち何れか一つに記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第9観点として、前記モノマーAが、ジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、第8観点に記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第10観点として、前記重合開始剤Dが、アゾ系重合開始剤である、第1観点又は第2観点に記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第11観点として、前記モノマーAのモル数に対して0.01〜10モル%量の前記モノマーBを用いて得られる、第1観点〜第10観点のうち何れか一つに記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第12観点として、前記モノマーAのモル数に対して0.01〜10モル%量の前記モノマーB及び10〜300モル%量の前記モノマーCを用いて得られる、第2観点〜第10観点のうち何れか一つに記載の含ケイ素高分岐ポリマーに関する。
第13観点として、第1観点〜第12観点のうち何れか一つに記載の含ケイ素高分岐ポリマーを含有するワニスに関する。
第14観点として、(a)第1観点〜第12観点のうち何れか一つに記載の含ケイ素高分岐ポリマー0.01〜10質量部、
(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1〜25質量部
を含む硬化性組成物に関する。
第15観点として、前記(b)多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、第14観点に記載の硬化性組成物に関する。
第16観点として、前記(c)重合開始剤がアルキルフェノン化合物である、第14観点又は第15観点に記載の硬化性組成物に関する。
第17観点として、さらに(d)パーフルオロポリエーテル化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの表面改質剤0.01〜10質量部を含む、第14観点〜第16観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第18観点として、前記(d)表面改質剤が(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、第17観点に記載の硬化性組成物に関する。
第19観点として、さらに(e)溶媒を含む、第14観点〜第18観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第20観点として、第14観点〜第19観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。
第21観点として、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が、第19観点に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に紫外線を照射し硬化する工程により形成されている、ハードコートフィルムに関する。
第22観点として、前記ハードコート層が0.1〜30μmの膜厚を有する、第21観点に記載のハードコートフィルムに関する。
ここで、本発明の好ましい態様のうち一つは、
(a)分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dと、場合により、該モノマーA及び該モノマーB以外のその他のモノマーとの重合物である、含ケイ素高分岐ポリマーであって、
前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物であり、
【化7】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは10〜100の整数を表す。)
前記モノマーAのモル数に対して0.01〜10モル%量の前記モノマーBを用いる、含ケイ素高分岐ポリマー0.01〜10質量部、
(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1〜25質量部
を含む硬化性組成物に関する。
また、本発明の好ましい態様のうち、もう一つは、
(a)分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に炭素原子数6〜30のアルキル基若しくは炭素原子数3〜30の脂環基、及びビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方の1つの基を有するモノマーCと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dと、場合により、該モノマーA、該モノマーB及び該モノマーC以外のその他のモノマーとの重合物である、含ケイ素高分岐ポリマーであって、
前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物であり、
【化8】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは10〜100の整数を表す。)
前記モノマーAのモル数に対して0.01〜10モル%量の前記モノマーB及び10〜3
00モル%量の前記モノマーCを用いる、含ケイ素高分岐ポリマー0.01〜10質量部、
(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1〜25質量部
を含む硬化性組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含ケイ素高分岐ポリマーは、積極的に枝分かれ構造を導入しているため、線状高分子と比較して分子間の絡み合いが少なく、微粒子的挙動を示し、有機溶媒に対する溶解性及び樹脂に対する分散性が高い。このため、マトリクスである樹脂中において、高分岐ポリマーの凝集を防ぎ、さらに、表面に移動しやすく、樹脂表面に活性を付与しやすい。従って、含ケイ素高分岐ポリマーを硬化性組成物に添加することで、該組成物から得られる硬化膜表面に簡便に高滑り性と撥水撥油性を付与することができる。
また、本発明のハードコートフィルムは、高滑り性と撥水撥油性を有するとともに耐指紋性、汚れ拭き取り性等の防汚性を有する。
さらに、本発明の硬化性組成物は、重合開始剤として活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤、特に特定の重合開始剤を選択することによって、窒素雰囲気下での電子線照射といった特定の硬化条件を必要とせず、通常の硬化条件、すなわち、窒素雰囲気下又は空気雰囲気下での紫外線照射においても、高滑り性と撥水撥油性を付与した硬化膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1で得られたHBP1の13C NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、実施例2で得られたHBP2の13C NMRスペクトルを示す図である。
図3図3は、合成例1で得られたHBP3の13C NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<含ケイ素高分岐ポリマー>
本発明の含ケイ素高分岐ポリマーは、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる。
また、本発明の含ケイ素高分岐ポリマーは、所望により、モノマーCとして分子内に炭素原子数6〜30のアルキル基若しくは炭素原子数3〜30の脂環基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーを共重合成分として用いてもよい。
これらの含ケイ素高分岐ポリマーにあっては、さらに本発明の効果を損なわない限り、前記モノマーA、前記モノマーB及び前記モノマーCに属さないその他のモノマーを共重合成分として用いてもよい。
なお、本発明の含ケイ素高分岐ポリマーは、いわゆる開始剤断片組込み(IFIRP)型高分岐ポリマーであり、その末端に重合に使用した重合開始剤Dの断片を有している。
【0012】
[モノマーA]
本発明において、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0013】
このようなモノマーAとしては、例えば、以下の(A1)〜(A7)に示した有機化合物が挙げられる。
(A1)ビニル系炭化水素類:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素類;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素類;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレンオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリレート等
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,4−ジビニルオクタフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン、1,8−ジビニルヘキサデカフルオロオクタン等
【0014】
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素類、(A2)群のビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物である。特に好ましいのは、(A1−3)群に属するジビニルベンゼン、(A2−2)群に属するフタル酸ジアリル、(A3)群に属するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリレート並びに(A5)群に属するメチレンビス(メタ)アクリルアミドである。
これらの中でもジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパンが好ましく、特にトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパンがより好ましい。
【0015】
[モノマーB]
本発明において、分子内にシロキサン鎖及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましく、特に下記式[1]で表される化合物が好ましく、より好ましくは下記式[2]で表されることが望ましい。
【化7】
【化8】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はケイ素原子でL1に結合するシロキサ
ン鎖を表し、R3〜R7はそれぞれ独立して炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、L1
炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、nは1〜200の整数を表す。)
【0016】
1が表す炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
その中でも、トリメチレン基が好ましい。
【0017】
3〜R7が表す炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
その中でも、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好ましい。
【0018】
nは表面改質効果の観点から、10〜100であることが好ましい。
【0019】
このようなモノマーBとしては、例えば、α−ブチル−ω−(3−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ポリジメチルシロキサン、α−メチル−ω−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α−ブチル−ω−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α−ブチル−ω−(3−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらモノマーBは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用しても構わない。
【0020】
本発明において、前記モノマーAと前記モノマーBを共重合させる割合は、反応性や表面改質効果の観点から、好ましくは前記モノマーAのモル数に対して前記モノマーB 0.01〜10モル%、より好ましくは0.1〜10モル%であり、さらに好ましくは0.1〜5モル%である。
【0021】
[モノマーC]
本発明において、分子内に炭素原子数6〜30のアルキル基若しくは炭素原子数3〜30の脂環基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましく、特に下記式[3]で表される化合物が好ましい。
【0022】
【化6】
(式中、R8は水素原子又はメチル基を表し、R9は炭素原子数6〜30のアルキル基又は炭素原子数3〜30の脂環基を表す。)
【0023】
9が表す炭素原子数6〜30のアルキル基としては、ヘキシル基、エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、アラキル基、ベヘニル基、リグノセリル基、セロトイル基、モンタニル基、メリッシル基等が挙げられる。
その中でも、アルキル基の炭素原子数は、表面改質効果の観点から、好ましくは10〜30であり、より好ましくは12〜24である。
【0024】
9が表す炭素原子数3〜30の脂環基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ノルボルネニル基、メンシル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基等が挙げられる。
その中でも、表面改質効果の観点から、好ましくは炭素原子数3〜14の脂環基であり、より好ましくは炭素原子数6〜12の脂環基である。
【0025】
このようなモノマーCとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルネニル(メタ)アクリレート、メンシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらモノマーCは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用しても構わない。
【0026】
本発明において、前記モノマーAと前記モノマーCを共重合させる割合は、反応性や表面改質効果の観点から、好ましくは前記モノマーAのモル数に対して前記モノマーC 10〜300モル%、より好ましくは20〜150モル%であり、さらに好ましくは20〜100モル%である。
【0027】
[重合開始剤D]
前記重合開始剤Dとしては、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)〜(5)に示す化合物を挙げることができる。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等;
(2)アゾアミド化合物:
2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等;
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等;
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等;
(5)その他:
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボン酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロメチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロブチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル)等;
【0028】
前記アゾ系重合開始剤の中でも、得られる含ケイ素高分岐ポリマーの表面エネルギーの観点から、極性の比較的低い置換基を有するものが望ましく、特に2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)又は2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0029】
前記重合開始剤Dは、前記モノマーAのモル数に対して、5〜200モル%の量で使用され、好ましくは20〜200モル%、より好ましくは20〜100モル%の量で使用される。
【0030】
<含ケイ素高分岐ポリマーの製造方法>
本発明の含ケイ素高分岐ポリマーは、前述のモノマーA、モノマーB及び所望によりモノマーCを、該モノマーAに対して所定量の重合開始剤Dの存在下で重合させて得られる。該重合方法としては公知の方法、例えば、溶液重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
【0031】
このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、並びにこれら2種以上からなる混合溶媒が挙げられる。
【0032】
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素類、ハロゲン化物類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類、アミド類等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等である。
【0033】
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、前記モノマーAの1質量部に対する前記有機溶媒の質量は、通常5〜120質量部であり、好ましくは10〜110質量部である。
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の観点から、好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは80〜150℃であり、80〜130℃がより好ましい。
反応時間は、反応温度や、モノマーA、モノマーB、モノマーC及び重合開始剤Dの種類及び割合、重合溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30〜720分、より好ましくは40〜540分である。
重合反応の終了後、得られた含ケイ素高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行なう。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0034】
本発明の含ケイ素高分岐ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000〜400,000、好ましくは2,000〜200,000である。
【0035】
<ワニス>
本発明はまた、上記含ケイ素高分岐ポリマーを含有するワニスに関する。
前記ワニスの形態において使用する溶媒としては、含ケイ素高分岐ポリマーを溶解するものであればよく、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類又はエステルエーテル類;テトラヒドロフラン(THF)、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ヘキサフルオロプロピル=ヘキサフルオロ−2−ペンチル=エーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが挙げられる。これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。
また前記溶媒に含ケイ素高分岐ポリマーを溶解又は分散させる濃度は任意であるが、含ケイ素高分岐ポリマーと溶媒の総質量(合計質量)に対して、含ケイ素高分岐ポリマーの濃度は0.001〜90質量%であり、好ましくは0.002〜80質量%であり、より好ましくは0.005〜70質量%である。
【0036】
そして、前記ワニスを基材上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等によって塗布することで塗膜を得ることができる。得られた塗膜は、必要に応じてホットプレート、オーブン等で乾燥して成膜してもよい。
これらの塗布方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
また前記基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合物)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合物)、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0037】
形成された含フッ素高分岐ポリマーからなる薄膜の厚さは特に限定されないが、通常0.01〜50μm、好ましくは0.05〜20μmである。
【0038】
<硬化性組成物>
本発明はまた、(a)上記含ケイ素高分岐ポリマー、(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー及び(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤を含む硬化性組成物に関する。
【0039】
[(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー]
前記(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとしては、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系、各種(メタ)アクリレート系等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する多官能モノマー等が挙げられる。
好ましくは、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つのモノマーである。
このような活性エネルギー線硬化性多官能モノマーの一例としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ビスフェノールAエチレングリコール付加物(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレングリコール付加物(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレングリコール付加物トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレングリコール付加物トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、変性ε−カプロラクトントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレングリコール付加物トリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレングリコール付加物テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
【0040】
本発明の硬化性組成物において、前記(a)含ケイ素高分岐ポリマーと(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーの配合量は以下のとおりである。すなわち、(b)多官能モノマー100質量部に対して、0.01〜10質量部の量の、好ましくは0.1〜10質量部の量の、特に好ましくは0.1〜5質量部の量の、(a)含ケイ素高分岐ポリマーを使用する。
【0041】
[(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤]
前記(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が用いられる。中でもアルキルフェノン類、特にα−ヒドロキシアルキルフェノン類を使用することが好ましい。より具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1−オン、1−{1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エチリデンアミノオキシ}エタノン、ベンゾフェノン等を例示できる。これらのうちでも、1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンは、少量でも電離放射線の照射による重合反応を開始し促進するため好ましい。これらは、いずれか一方を単独で、又は両方を組み合わせて用いることができる。これらは市販品として入手可能である。
【0042】
本発明の硬化性組成物において、前記(c)重合開始剤は、前記(b)多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜25質量部の量にて、好ましくは0.1〜20質量部の量にて、特に好ましくは1〜20質量部の量にて使用する。
【0043】
[(d)パーフルオロポリエーテル化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの表面改質剤]
本発明の硬化性組成物は、さらに成分(d)としてパーフルオロポリエーテル化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの表面改質剤を含む。
前記(d)パーフルオロポリエーテル化合物及びシリコーン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの表面改質剤としては、前記(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーへの分散性の観点から、片末端又は両末端が有機基で変性されているパーフルオロポリエーテル化合物又はシリコーン化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物又はシリコーン化合物であることが好ましい。特に(メタ)アクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が好ましい。
【0044】
本発明で用いる(d)表面改質剤の具体例として、パーフルオロポリエーテル化合物としては、−(O−CF2CF2)−、−(O−CF2CF2CF2)−又は−(O−CF2C(CF3)F)−の繰り返し構造を含む化合物が好ましく、このような繰り返し構造を含む化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
・両末端アルコール変性:FOMBLIN(登録商標)ZDOL 2000、同ZDOL 2500、同ZDOL 4000、同TX、同ZTETRAOL 2000GT、FLUOROLINK(登録商標)D10H、同E10H[何れも、ソルベイソレクシス(株)製]等;
・両末端ピペロニル変性:FOMBLIN(登録商標)AM2001、同AM3001[何れも、ソルベイソレクシス(株)製]等;
・両末端カルボン酸変性:FLUOROLINK(登録商標)C10[ソルベイソレクシス(株)製]等;
・両末端エステル変性:FLUOROLINK(登録商標)L10H[ソルベイソレクシス(株)製]等;
・両末端(メタ)アクリル変性:FLUOROLINK(登録商標)MD500、同MD700、同5105X、同AD1700[何れも、ソルベイソレクシス(株)製]、CN4000[サートマー社製]等;
・末端(メタ)アクリル変性:KY−1203[信越化学工業(株)製]、オプツール(商標)DAC−HP[ダイキン工業(株)製]等。
これらの中でも、好ましくは両末端(メタ)アクリル変性又は末端(メタ)アクリル変性が好ましく、特に好ましいのは、FLUOROLINK(登録商標)MD500、FLUOROLINK(登録商標)MD700、FLUOROLINK(登録商標)5105X、FLUOROLINK(登録商標)AD1700、KY−1203である。
【0045】
また、(d)表面改質剤の具体例として、シリコーン化合物としては、−(O−Si(CH)−、又は例えば−(O−Si(CH3)(CH2CH2CF3))−等の−(O−Si(CH3)Rf)−(ここでRfはエーテル結合を含んでいてもよい末端がCF3のフルオロアルキル基)の繰り返し構造を含むものが好ましく、このような繰り返し構造を含む化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0046】
・両末端アルコール変性:サイラプレーン(登録商標)FM−4411、同FM−4421、同FM−4425[何れもJNC(株)製]、信越シリコーン(登録商標)X−22−160AS、同KF−6001、同KF−6002、同KF−6003[何れも信越化学工業(株)製]等;
・片末端アルコール変性:サイラプレーン(登録商標)FM−0411、同FM−0421、同FM−0425、同FM−DA11、同FM−DA21、同FA−DA26[何れもJNC(株)製]、信越シリコーン(登録商標)X−22−170BX、同X−22−170DX、同X−22−176DX、同X−22−176F[何れも信越化学工業(株)製]等;
・両末端エーテル変性:信越シリコーン(登録商標)X−22−4952、同X−22−4272、同X−22−6266[何れも信越化学工業(株)製]等;
・両末端ポリエーテル変性:BYK(登録商標)−300、同301、同302、同306、同307、同310、同320、同325、同330、同331、同333、同337、同341、同344、同378、同UV3510[何れもビックケミー・ジャパン(株)製]等;
・ヒドロキシ基含有両末端ポリエーテル変性:BYK(登録商標)−370、同377[何れもビックケミー・ジャパン(株)製]等;
・ヒドロキシ基含有ポリエーテル変性:BYK(登録商標)−SILCLEAN(登録商標)3720[ビックケミー・ジャパン(株)製]等;
・ヒドロキシ基含有両末端ポリエーテルエステル変性:BYK(登録商標)−375[ビックケミー・ジャパン(株)製]等;
・両末端ポリエステル変性:BYK(登録商標)−310、同315、同313[何れもビックケミー・ジャパン(株)製]等;
・ヒドロキシ基含有両末端ポリエステル変性:BYK(登録商標)−370[ビックケミー・ジャパン(株)製]等;
・両末端(メタ)アクリル変性:BYK(登録商標)−UV3500、同3570[何れもビックケミー・ジャパン(株)製]、サイラプレーン(登録商標)FM−7711、同FM−7721、同FM−7725[何れもJNC(株)製]、信越シリコーン(登録商標)X−22−164、同X−22−164AS、同X−22−164A、同X−22−164−B、同X−22−164C、同X−22−164D、同X−22−164E[何れも信越化学工業(株)製]、紫光(登録商標)UT−4314、同UV−AF300[何れも日本合成化学工業(株)製]等;
・片末端(メタ)アクリル変性:サイラプレーン(登録商標)FM−0711、同FM−0721、同FM−0725、同TM−0701、同TM−0701T[何れもJNC(株)製]、信越シリコーン(登録商標)X−22−174DX、同X−22−2426、同X−22−2475[何れも信越化学工業(株)製]等;
・両末端カルボキシル変性:信越シリコーン(登録商標)X−22−162C[信越化学工業(株)製]等;
・片末端カルボキシル変性:信越シリコーン(登録商標)X−22−3710[信越化学工業(株)製]等;
・ヒドロキシ基含有シリコーン変性(メタ)アクリル:BYK(登録商標)−SILCLEAN(登録商標)3700[ビックケミー・ジャパン(株)製]等。
【0047】
これらの中でも、好ましくは両末端(メタ)アクリル変性又は片末端(メタ)アクリル変性が好ましく、特に好ましいのは、紫光(登録商標)UT−4314、紫光(登録商標)UV−AF300である。
【0048】
本発明の硬化性組成物において、上記(d)表面改質剤は、前述の(b)多官能モノマー100質量部に対して0.01〜10質量部の量にて、好ましくは0.1〜10質量部の量にて、特に好ましくは0.1〜5質量部の量にて使用する。
【0049】
[(e)溶媒]
本発明の硬化性組成物は、さらに成分(e)として溶媒を含ませてワニスの形態としていてもよい。
このとき用いられる溶媒としては、前記成分(a)〜成分(d)を溶解するものであればよく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトン、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;プロピレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類などを用いることができる。これらの溶媒は単独又は2種以上の組合せで使用することができる。
また、その使用場面により、溶媒を含まない硬化性組成物が望まれる場合には、前記(b)多官能モノマーとは異なる活性エネルギー線硬化性モノマーを希釈剤として添加してもよい。このような希釈モノマーとしては、前記成分(a)〜成分(d)と相溶するモノマーであれば特に制限はなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシメチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート(ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートともいう)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エニル(メタ)アクリレート(ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートともいう)、2−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート(ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートともいう)、(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−2−イルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類などを使用することができる。
【0050】
本発明の硬化性組成物における固形分は、例えば0.5〜80質量%、1.0〜70質量%、又は1.0〜60質量%である。ここで固形分とは硬化性組成物の全成分から溶媒成分を除いたものである。
【0051】
[その他添加剤]
さらに、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
【0052】
<硬化膜>
本発明の硬化性組成物は、基材上にコーティングして光重合(硬化)させることにより、硬化膜や積層体などの成形品を成すことができる。
前記基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合物)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合物)、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
本発明の硬化性組成物のコーティング方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択し得、中でも短時間で塗布できることから揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、容易に均一な塗布を行うことができるという利点より、バーコート法を用いることが望ましい。ここで用いる硬化性組成物は、前述のワニスの形態にあるものを好適に使用できる。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて硬化性組成物を濾過した後、コーティングに供することが好ましい。
コーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥した後、紫外線等の活性光線を照射して光硬化させる。活性光線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が使用できる。
その後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより重合を完結させることができる。
なお、コーティングによる膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.01〜50μm、好ましくは0.05〜30μm、特に好ましくは0.1〜30μmである。
【0053】
<ハードコートフィルム>
本発明はまた、上記硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に紫外線を照射し硬化する工程により形成されている、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムに関する。
ここで使用する基材や塗膜方法、紫外線照射については、前述の<硬化膜>における基材、コーティング方法、紫外線照射の通りである。
なお、前記ハードコートフィルムにおいて、ハードコート層の膜厚が0.1〜30μmであることが好ましい。
【0054】
本発明の硬化性組成物より得られるハードコートフィルムは、高滑り性と撥水撥油性を有するとともに耐指紋性、汚れ拭き取り性等の防汚性を有する。
このため、本発明のハードコートフィルムは、LCD、PDP、タッチパネルなどの各種ディスプレイの表面のハードコート層材料として有用である。
なお、本発明において、耐指紋性とは、指紋付着後に指紋が目立ちにくく、また付着した場合の指紋の拭き取り除去が容易であることに加え、そもそも指紋が付着しにくい性質であることも包含する性能である。
また汚れ拭き取り性とは、例えば、マジックインキで表面を汚した場合に、拭き取り除去が容易であることを意味するものである。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0056】
(1)13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
内部標準:CDCl(77.0ppm)
(2)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF−804L、GPC KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(3)ガラス転移温度(Tg)測定
装置:NETZSCH社製 DSC204F1Phoenix
測定条件:窒素雰囲気下
昇温速度:5℃/分(25〜160℃)
(4)5%重量減少温度(Td5%)測定
装置:ブルカー・エイエックスエス(株)製 示差熱・熱重量同時測定装置 TG−DTA2000SA
測定条件:空気雰囲気下
昇温速度:10℃/分(25〜400℃)
(5)ワイヤーバーコーター
装置:(株)エスエムテー製 PM−9050MC
ワイヤーバー:No.9
塗布速度:4m/分
(6)オーブン
装置:アズワン(株)製 定温乾燥器LDO−450S
(7)UV照射装置
装置:アイグラフィックス(株)製 4kW×1灯窒素パージ紫外線照射コンベア装置
(8)接触角測定
装置:協和界面化学(株)製 DropMaster DM−701
測定温度:25℃
測定法:測定溶媒が膜表面に付着してから10秒後の接触角を一つの膜に対して5回測定し、その平均値を接触角値とした。
(9)動摩擦係数測定
装置:新東科学(株)製 荷重変動型摩擦磨耗試験機 TRIBOGEAR HHS2000
荷重条件:50g
プローブ:0.6mmR サファイアピン
測定速度:1mm/秒
【0057】
DCP:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製 DCP]
PGHM:2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリルオキシプロパン[新中村化学工業(株)製 701]
PSPA:反応性シリコーン[JNC(株)製 サイラプレーンFM−0721、重量平均分子量Mw5,000]
STA:ステアリルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製 STA]
ADVN:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]
MAIB:2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)[大塚化学(株)製 MAIB]
EB350:シリコーンジアクリレート[ダイセル・サイテック(株)製 EBECRYL350]
PFPE:反応性パーフルオロポリエーテル[信越化学工業(株)製 KY−1203]
FS:反応性フルオロシリコーン[日本合成化学工業(株)製 紫光(登録商標)UV−AF300]
PS:反応性シリコーン[日本合成化学工業(株)製 紫光(登録商標)UT−4314]
M403:5〜6官能脂肪族アクリレート[東亞合成(株)製 アロニックス(登録商標)M−403]
EB5129:6官能脂肪族ウレタンアクリレート[ダイセル・サイテック(株)製 EBECRYL5129]
Irg184:1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)184]
MIBK:メチルイソブチルケトン
【0058】
[実施例1]PGHM、PSPA、MAIB用いたシロキサン鎖を有する高分岐ポリマーHBP1の製造
100mLの反応フラスコに、MIBK34gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の50mLの反応フラスコに、モノマーAとしてPGHM2.3g(10mmol)、モノマーBとしてPSPA0.3g(0.05mmol)、重合開始剤DとしてMAIB1.4g(6mmol)及びMIBK34gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行なった。
前述の100mLの反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、PGHM、PSPA、MAIBが仕込まれた前記50mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK59gを留去後、ヘキサン150gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HBP1)2.1gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図1に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示すHBP1の単位構造組成(モル比)は、PGHMユニット[A−1]:PSPAユニット[B]:MAIBユニット[D−1]=50:1:49であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,100、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.7、ガラス転移温度Tgは42.1℃、5%重量減少温度Td5%は251.5℃であった。
【化9】
【0059】
[実施例2]DCP、PSPA、STA、ADVN用いたシロキサン鎖を有する高分岐ポリマーHBP2の製造
300mLの反応フラスコに、MIBK100gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の200mLの反応フラスコに、モノマーAとしてDCP6.7g(20mmol)、モノマーBとしてPSPA1.0g(0.2mmol)、モノマーCとしてSTA3.2g(10mmol)、重合開始剤DとしてADVN1.4g(6mmol)及びMIBK100gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行なった。
前述の300mLの反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、DCP、PSPA、STA、ADVNが仕込まれた前記200mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK186gを留去後、メタノール332gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HBP2)4.1gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図2に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示すHBP2の単位構造組成(モル比)は、DCPユニット[A−2]:PSPAユニット[B]:STAユニット[C]:ADVNユニット[D−2]=69:1:21:9であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,300、分散度:Mw/Mnは2.4、ガラス転移温度Tgは70.7℃、5%重量減少温度Td5%は292.5℃であった。
【化10】
【0060】
[合成例1]DCP、STA、ADVN用いた高分岐ポリマーHBP3の製造
200mLの反応フラスコに、トルエン53gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ110℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてDCP6.7g(20mmol)、モノマーCとしてSTA3.2g(10mmol)、重合開始剤DとしてADVN3.0g(12mmol)及びトルエン53gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるトルエン中に、DCP、STA、ADVNが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてトルエン80gを留去後、ヘキサン/エタノール混合液(質量比1:2)330gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HBP3)5.3gを得た。
得られた目的物の13C NMRスペクトルを図3に示す。13C NMRスペクトルから算出した下記構造式に示すHBP3の単位構造組成(モル比)は、DCPユニット[A−2]:STAユニット[C]:ADVNユニット[D−2]=58:24:18であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは10,000、分散度:Mw/Mnは2.1、ガラス転移温度Tgは67.2℃、5%重量減少温度Td5%は296.1℃であった。
【化9】
【0061】
[実施例3]含ケイ素高分岐ポリマーを含む硬化性組成物によるハードコートフィルムの作製
多官能モノマーとしてM403 1.0g及びEB5129 0.7g、含ケイ素高分岐ポリマーとして実施例1で製造したHBP1 0.007g(多官能モノマー100質量部に対し0.4質量部)、重合開始剤としてIrg184 0.1g(同6質量部)、並びにMIBK2.7gを混合し、撹拌して溶解させ、均一な硬化性組成物を調製した。
この硬化性組成物を、A4サイズのPETフィルム[東洋紡績(株)製 コスモシャイン(登録商標)A4100]上に、ワイヤーバー(溝厚20μm)を用いてバーコート塗布(塗布スピード4m/分)し塗膜を得た。得られた塗膜を100℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した後、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cm2のUV光を照射し露光することで、およそ4〜6μmの膜厚を有するハードコートフィルムを作製した。
得られたハードコートフィルム表面の、水及びオレイン酸の接触角、耐マジック性、動摩擦係数並びに滑り性を評価した。なお、耐マジック性については、ハードコートフィルム表面に油性マジック[寺西化学工業(株)製 マジックインキ(登録商標)NO.700ゴクホソ(黒)]で線を描き、描いた線を目視で確認し以下の基準に従い評価した。また、滑り性については、ハードコートフィルム表面を不織布ワイパー[旭化成せんい(株)製 BEMCOT(登録商標)M−1]でさすり、その際の感触を以下の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
[耐マジック性評価基準]
A:マジックが点状に弾きほとんど描けない
B:ところどころかすれてきれいに描けない
C:線が描ける
[滑り性評価基準]
A:ひっかかりをほとんど感じない
B:少しのひっかかりは感じるがスムーズに表面をさすることができる
C:ひっかかりを感じスムーズに表面をさすることができない
【0062】
[実施例4〜9]含ケイ素高分岐ポリマーを含む硬化性組成物によるハードコートフィルムの作製
含ケイ素高分岐ポリマー及び表面改質剤を表1に記載の種類及び添加量に変更した以外は実施例3と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0063】
[比較例1〜3]含ケイ素高分岐ポリマーを含まない硬化性組成物によるハードコートフィルムの作製
含ケイ素高分岐ポリマーを添加せず、表面改質剤を表1に記載の種類及び添加量に変更した以外は実施例3と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0064】
[比較例4〜6]汎用滑り性向上添加剤を含む硬化性組成物によるハードコートフィルムの作製
含ケイ素高分岐ポリマーHBP1を汎用滑り性向上添加剤EB350に、表面改質剤を表1に記載の種類及び添加量にそれぞれ変更した以外は実施例3と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0065】
[比較例7]シロキサン鎖非含有高分岐ポリマーを含む硬化性組成物によるハードコートフィルムの作製
含ケイ素高分岐ポリマーHBP1を合成例1で製造したHBP3に変更し、表面改質剤を添加しなかった以外は実施例3と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、本発明の含ケイ素高分岐ポリマーを含む硬化性組成物によるハードコートフィルム(実施例3〜9)では、該高分岐ポリマーを配合しなかったフィルム(比較例1〜3)、該高分岐ポリマーに替えて汎用の滑り性向上添加剤である鎖状シリコーン化合物を配合したフィルム(比較例4〜6)、及び該高分岐ポリマーに替えてシロキサン鎖を含まない高分岐ポリマーを配合したフィルム(比較例7)と比較して、格段に滑り性が向上していた。すなわち、本発明の含ケイ素高分岐ポリマーを硬化性組成物(コーティング液)に添加することで、該組成物から得られるコーティングフィルムに高い滑り性を付与することが可能であり、耐指紋性、汚れ拭き取り性等の防汚性、及び表面滑り性の双方に優れる表面特性を有するコーティングフィルムを得ることができる。
図1
図2
図3