特許第6385281号(P6385281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6385281-ペットフードの製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385281
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ペットフードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 40/10 20160101AFI20180827BHJP
【FI】
   A23K40/10
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-553201(P2014-553201)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2013084071
(87)【国際公開番号】WO2014098179
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-277502(P2012-277502)
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】内井 沙耶香
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−055050(JP,A)
【文献】 特開2004−033095(JP,A)
【文献】 特開2012−130347(JP,A)
【文献】 特開2012−070724(JP,A)
【文献】 特許第2629003(JP,B2)
【文献】 特開2005−323558(JP,A)
【文献】 特開2005−229860(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0219658(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0020355(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/173078(WO,A1)
【文献】 トピックス〜フード・ペプタイド | ペプチドは魅力的なペットフード素材,2009年 4月18日,URL,https://web.archive.org/web/20090418004943/http://topics.food
【文献】 研究のキーワード(2)メイラード反応,北里大学 食品機能安全学研究室,2010年 6月17日,URL,http://www.food-kitasato.jp/news/news100617.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00−50/90
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクストルーダーを使用して、原材料の混合物を150℃以下の温度で加熱して造粒してフード粒を形成する造粒工程、
フード粒の水分含量がフード粒の全体の質量に対して6〜12重量%となるように前記フード粒を乾燥する乾燥工程、
雰囲気温度が160〜230℃となるように遠赤外線を照射して乾燥した前記フード粒を焼成する焼成工程、及び
前記焼成により得られたフード粒と水とを接触させながら撹拌する水添加工程を含むペットフードの製造方法であって、
前記水添加工程後に得られるフード粒の水分含量がフード粒の全体の質量に対して6〜12重量%であるペットフードの製造方法。
【請求項2】
前記原材料の混合物が、還元糖およびアミノ酸を含有する請求項1に記載のペットフードの製造方法。
【請求項3】
最短径及び最長径が3mm〜30mmの大きさであるフード粒を造粒することを特徴とする請求項1又は2に記載のペットフードの製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程は、前記造粒したフード粒を焼成前に100〜150℃の温風によって乾燥させることを含む請求項1〜3の何れか一項に記載のペットフードの製造方法。
【請求項5】
前記水添加工程後に油脂によりフード粒をコーティングすることを更に含む請求項1〜4の何れか一項に記載のペットフードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフードの製造方法及びペットフードに関する。より詳しくは、ペットの食いつき(「嗜好性」ということもある。)を向上させたペットフード及びペットフードの製造方法に関する。
本願は、2012年12月19日に、日本に出願された特願2012−277502号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
栄養バランスを考慮した原材料が配合されたペットフード組成物を造粒し、これを乾燥して水分10%以下にし、180℃程度で加熱処理し、造粒物の油コーティングを施した後で、更に種々のフレーバーを呈する添加剤を油コーティング後の造粒物にコーティングするペットフードの製造方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特許第2629003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のペットフードはいわゆるドライタイプであり、加熱することで水分含有量が低下し、食感も変化するため、ペットの食いつきが優れないといった問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ペットの食いつきが優れ、ペットが好む香りがより出るペットフードの製造方法、及びその製造方法により製造されたペットフードの提供を課題とする。なお、ペットとしては、例えば猫や犬が挙げられ、中でも犬が好ましい。
本願において「食いつき」とは、ペットがペットフードに対して示す嗜好性を意味する。即ち、少なくとも2種の比較対照となるペットフードを同時にペットに与えたとき、当該ペットが任意に選択するペットフードの被選択率で表される。
具体的な評価方法は後述の実施例に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 原材料の混合物からフード粒を造粒し、前記フード粒を焼成して得られたフード粒に水分を添加することを特徴とするペットフードの製造方法。
(2) 前記水分の添加後に得られるフード粒の水分含量が6〜12重量%であることを特徴とする前記(1)に記載のペットフードの製造方法。
(3) 前記焼成に供するフード粒の水分含量が6〜12重量%であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のペットフードの製造方法。
(4) 前記混合物中に、還元糖およびアミノ酸を含有させることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(5) 遠赤外線を用いて、前記焼成を行うことを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(6) 最短径及び最長径が共に3mm〜30mmの大きさであるフード粒を造粒することを特徴とする前記(1)〜(5)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(7) 造粒した前記フード粒を焼成前に100〜150℃の温風によって乾燥させることを特徴とする前記(1)〜(6)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(8) 前記水分の添加後に油脂によりフード粒をコーティングすることを特徴とする前記(1)〜(7)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれか一に記載のペットフードの製造方法によって製造されたペットフード。
本発明の別の側面を以下に示す。
(1) 原材料の混合物を造粒してフード粒を形成すること、前記フード粒を焼成すること、及び前記焼成により得られたフード粒に水分を添加することを含むペットフードの製造方法。
(2) 前記水分の添加後に得られるフード粒の水分含量がフード粒の総重量に対して6〜12重量%である前記(1)に記載のペットフードの製造方法。
(3) 前記焼成に供するフード粒の水分含量がフード粒の総重量に対して6〜12重量%である前記(1)又は(2)に記載のペットフードの製造方法。
(4) 前記原材料の混合物が、還元糖およびアミノ酸を含有する前記(1)〜(3)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(5) 遠赤外線を照射して、前記焼成を行うことを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(6) 最短径及び最長径が3mm〜30mmの大きさであるフード粒を造粒することを特徴とする前記(1)〜(5)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(7) 前記造粒したフード粒を焼成前に100〜150℃の温風によって乾燥させることを更に含む前記(1)〜(6)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(8) 前記水分の添加後に油脂によりフード粒をコーティングすることを更に含む前記(1)〜(7)の何れか一に記載のペットフードの製造方法。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれか一に記載のペットフードの製造方法によって製造されたペットフード。
【発明の効果】
【0007】
本発明のペットフードの製造方法によれば、ペットの食いつきが優れ、ペットが好む香りが従来のペットフードより優れるペットフードを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明にかかる製造方法の焼成工程の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《ペットフードの製造方法》<第一実施形態>
本発明の第一実施形態は、原材料の混合物からフード粒を造粒し、前記フード粒を焼成して得られたフード粒に水分を添加するペットフードの製造方法である。
第一実施形態のペットフードの製造方法は、原材料の混合物を造粒してフード粒を得る工程(造粒工程)と、造粒した前記フード粒を焼成する工程(焼成工程)と、焼成した前記フード粒に水分を添加する工程(水添加工程)と、を少なくとも含む。
【0010】
従来は、フード粒を油中でフライすることによって加熱していたが、得られるフード粒の油含有量が過多になることがあり、油含有量を調整することが困難であった。ペットの健康を考慮すると、油過多のペットフードは望ましくない。
一方、本発明においては、フード粒を焼成することによって、焼成後に得られるフード粒の油含有量が過多になることがない。健康的な量に制限した量の油を添加することができるので、ペットフードの油含有量をより容易に調整することができる。つまり、フード粒を焼成することによって、ペットフードのカロリー等の栄養設計をより容易に行うことができる。また、油中でフライされた従来のフード粒に大量の油が含有されている場合、後述の水添加工程において当該ペットフード粒に水分を添加することが困難になることもある。一方、本発明のペットフードにおいては、焼成されたフード粒の油含有量が過多になることは殆ど無いため、水添加工程において容易に水分を添加することができる。また、フード粒を焼成することにより、ペットフードの風味や食感を向上させることができる。
【0011】
焼成後のフード粒の水分含量は、通常、フード粒の総重量に対して2〜6重量%程度である。この程度の水分含量であるとペットの食いつきが悪い。また、焼成後のフード粒の水分含量を高める目的で、焼成前に水分を多めに(例えばフード粒の総重量に対して15重量%程度)含有させると、食欲をそそる香ばしい香りが焼成時にフード粒内に生成し難くなる。
これらの問題を解決するために、本発明の第一実施形態においては、焼成後のフード粒に水分を添加する。本発明の一つの側面(態様)では、水分添加後の前記フード粒の水分含量はフード粒の総重量に対して6〜12重量%である。本発明の別の側面では、水分添加後の前記フード粒の水分含量はフード粒の総重量に対して7〜11重量%である。本発明の更に別の側面では、水分添加後の前記フード粒の水分含量はフード粒の総重量に対して8〜10重量%である。これらの範囲の水分含量であると、当該ペットフードが焼成前のペットフードの硬さと同等になり、ペットの食い付きを向上させることができる。また、焼成時に生成された香ばしいアロマ成分の揮発が、添加した水分の蒸発によって促されることにより、ペットだけでなくペットの飼い主に対しても本発明の第一実施形態のペットフードがより香ばしい香りを有すると感じさせることができる。
以下、各工程を説明する。
【0012】
<造粒工程>
造粒工程は、原材料の混合物を造粒してフード粒を得る工程である。
前記原材料としては、ペットフードの完全な栄養食として一般的に使用されるものが適用できる。前記原材料に含まれる重要な栄養素として、蛋白質及び炭水化物がある。
前記蛋白質としては、植物由来の蛋白質、動物由来の蛋白質又はこれらの混合物が例示できる。具体的には、前記植物由来の蛋白質は、例えばグルテン、小麦蛋白質、大豆蛋白質、米蛋白質、とうもろこし蛋白質等が挙げられる。前記動物由来の蛋白質としては、例えば牛、豚、鶏及び魚介類の筋肉、臓器などの蛋白質、乳の蛋白質又はこれらの混合物が例示できる。これらの蛋白質を含む原材料には、通常、脂肪、ビタミン、鉄分等が含まれうるので、栄養源として使用できる。
前記炭水化物としては、とうもろこし、小麦、大麦、オート麦、米、大豆等の穀物類の炭水化物が好ましいものとして例示できる。これらの穀物類には、炭水化物の他に、蛋白質、灰分、ミネラル、ビタミン等が含まれうるので、栄養源として使用できる。
即ち、本発明で用いる原材料としては、とうもろこし、小麦粉、コーングルテンミール、大豆等の穀物類、牛肉、豚肉、とり肉、チキンミール、ポークミール等の肉類、魚肉、フィッシュミール等の魚介類が挙げられ、これらから適宜選択して配合することができる。前記原材料には、更に、ビタミン、ミネラル、還元糖、アミノ酸、水、植物油、動物油脂、チキンエキス、フィッシュエキス等を添加することができる。
【0013】
前記混合物中には、還元糖を添加してもよい。混合された還元糖は、混合物中のアミノ酸、蛋白質の加水分解物又は蛋白質とメイラード反応を起こして、ペットの食いつきを向上させうる香ばしいアロマ成分をより多く生成させることができる。焼成時のメイラード反応を更に促進させるために、前記混合物中に還元糖とともにアミノ酸を添加することが好ましい。
【0014】
前記還元糖は、環状構造をとる糖が開環した際に、アルデヒド基を有するアルドース又はケトン基を有するケトースを含む。
前記還元糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、アラビノース等の単糖類、ラクトース、マルトース等の二糖類、その他のオリゴ糖が挙げられる。
前記還元糖の分子量は1000以下であることが多いが、還元糖の一種である異性化糖の中には分子量1000を超える還元糖が含まれることもある。
前記混合物中の還元糖の含有量は特に制限されないが、例えば原材料の混合物の総重量に対して0.1〜5.0重量%の割合で含有させることができる。還元糖は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記アミノ酸の種類は特に制限されず、公知のアミノ酸が適用可能であり、例えばグリシン、バリン、フェニルアラニン、リジン、アルギニン、システイン、プロリン等が挙げられる。アミノ酸は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、蛋白質の加水分解物を2種以上のアミノ酸混合物として使用してもよい。2種以上のアミノ酸を併用することにより、ペットフードの嗜好性をより向上させることができる。
前記混合物中のアミノ酸の含有量は特に制限されないが、例えば原材料の混合物の総重量に対して0.1〜5.0重量%の割合で含有させることができる。
【0016】
前記混合物中に還元糖又はアミノ酸を混合する方法は特に制限されず、粉状又は水等に溶解した液状の還元糖若しくはアミノ酸を前記原材料中に投入して混合する方法が挙げられる。
前記混合物は、前記原材料を所望の配合率で混合して得られる。混合時に、水、植物油、動物油脂等を適宜添加してもよい。
原材料の配合の一例を表1に示す。
【0017】
【表1】
前記混合物を得る方法としては、原材料を粉砕機で粉砕し、ミキサー等で混合する公知の方法が適用できる。
【0018】
前記混合物を造粒する方法としては、ペットが食するのに適した形状に成型できる方法であれば特に制限されず、例えばエクストルーダ(押出し機)が好適である。食品の混合物を適当な大きさに造粒することができる公知のエクストルーダを使用できる。
【0019】
ここで、「造粒する」とは、ペットが食することができる形状に成型することを意味する。本発明において、成型するフード粒の形状は、ペットが食せる形状であれば特に制限されず、例えば球状、多角体状、柱状、ドーナッツ状、板状、碁石状等、あらゆる形状が適用可能である。また、成型するフード粒の大きさは、ペットが一口で頬張れる小粒形状であってもよいし、ペットが複数回にわたって噛り付くことができる大粒形状であってもよい。
【0020】
フード粒の大きさ及び形状は特に制限されないが、例えば、犬用としては大きさは最短径及び最長径が2mm〜20mmであることがより好ましく、最短径及び最長径が3mm〜18mmであることがさらに好ましく、最短径及び最長径が4mm〜16mmであることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が2mm〜10mmかつ最長径が6mm〜20mmであり、更に好ましくは、最短径が3mm〜8mmでありかつ最長径が7mm〜18mmであり、最短径が4mm〜6mmであり、最長径が8mm〜16mmであることが最も好ましい。
形状としては、例えば、犬用としては大きさは最短径及び最長径が2mm〜20mmの碁石状であることが好ましく、最短径及び最長径が3mm〜18mmの碁石状であることがより好ましく、最短径及び最長径が4mm〜16mmの碁石状であることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が2mm〜10mmかつ最長径が6mm〜20mmの碁石上であり、更に好ましくは、最短径が3mm〜8mmでありかつ最長径が7mm〜18mmの碁石上であり、最短径が4mm〜6mmかつ最長径が8mm〜16mmの碁石上であることが最も好ましい。
また、フード粒の大きさ及び形状は特に制限されないが、例えば、猫用としては大きさは最短径及び最長径が猫用としては1.5mm〜15mmであることがより好ましく、最短径及び最長径が2mm〜12.5mmであることがさらに好ましく、最短径及び最長径が4mm〜10mmであることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が1.5mm〜6mmかつ最長径が5mm〜15mmであり、更に好ましくは、最短径が2mm〜5mmでありかつ最長径が6mm〜12.5mmであり、最短径が2.5mm〜4mmであり、最長径が7mm〜10mmであることが最も好ましい。
形状としては、例えば、猫用としては大きさは最短径及び最長径が1.5mm〜15mmの碁石状であることが好ましく、最短径及び最長径が2mm〜12.5mmの碁石状であることがより好ましく、最短径及び最長径が4mm〜10mmの碁石状であることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が1.5mm〜6mmかつ最長径が5mm〜15mmの碁石上であり、更に好ましくは、最短径が2mm〜5mmでありかつ最長径が6mm〜12.5mmの碁石上であり、最短径が2.5mm〜4mmかつ最長径が7mm〜10mmの碁石上であることが最も好ましい。この大きさ及び形状であると、加熱の際に内部まで火が通り易い。また、前の造粒後のフード粒の形状は、ペットがそのまま食するには大き過ぎる板状、柱状又はチューブ状であってもよい。この場合、後述の乾燥処理及び焼成工程の何れかの後で、ペットが食し易い形状に小片化することが好ましい。
ここで最長径または最短径とは、例えば、本発明に係るフード粒を水平面上に静置し、前記フード粒の水平方向の大きさ及び鉛直方向の大きさを計測した際に最長又は最短となる値を意味する。
【0021】
また、造粒工程において、混合物を成型して造粒する際、同時に加熱処理を行うことにより、混合物中の炭水化物をアルファ化することができる。アルファ化することにより、得られるフード粒の風味及び食感が向上すると共に、当該ペットフードが消化され易くなる。
【0022】
前記造粒における加熱処理の温度及び時間は特に制限されない。本発明の一つの側面では、前記加熱処理の温度は、150℃以下である。本発明の別の側面では、前記加熱処理の温度は、70〜130℃である。本発明の更に別の側面では、前記加熱処理の温度は、80〜120℃である。これらの温度で加熱する場合、当該加熱処理の時間は、1分間〜10分間が好ましく、2分間〜5分間がより好ましい。
【0023】
上記加熱処理の温度及び時間が70℃以上及び1分間以上であると、前記アルファ化を充分に促進することができる。上記加熱処理の温度及び時間が150℃以下及び10分間以下であると、前記混合物が過度に加熱されることによりフード粒の造粒が困難になることを防ぐことができる。
即ち、加熱温度が70〜130℃で加熱時間が1分間〜10分間であることが好ましく、加熱温度が80〜120℃で加熱時間が2分間〜5分間であることがより好ましい。なお、加熱方法は特に限定されないが、例えば、後述の実施例に記載するエクスローダーにて造粒する際にエクスローダー内にて加熱をする。
【0024】
造粒工程において、造粒したフード粒を乾燥させる処理を施しても構わない。造粒したフード粒を乾燥させることにより、後述の焼成工程におけるピラジン類などのアロマ成分の生成をより一層促進させる効果が得られる。ここでは、造粒工程において乾燥処理を行うことを説明するが、造粒工程とは別に、乾燥工程を設けてもよい。ここで、乾燥工程とは造粒したフード粒の水分含量を減じる工程を意味する。通常、造粒中又は造粒直後のフード粒の水分含量はフード粒の総重量に対して15重量%以上、より具体的には20重量%〜30重量%であるので、前記乾燥工程では水分含量を6重量%〜12重量%%、好ましくは7重量%〜11重量%%、より好ましくは8重量%〜10重量%%に調整することができる。
【0025】
<乾燥処理>
前記フード粒を乾燥させる方法は特に制限されず、自然に乾燥させる方法、温風を吹き付けて乾燥させる方法、減圧して乾燥させる方法、フリーズドライで乾燥させる方法等の公知の方法が適用可能である。これらの乾燥方法の中でも、温風を吹き付けて乾燥させる方法が、ペットフードの風味をより向上させることができる。
【0026】
前記乾燥させる際のフード粒の温度又は前記フード粒に吹き付ける温風の温度は特に制限されない。本発明の一つの側面では、前記温度は150℃以下である。本発明の別の側面では、前記温度は100〜150℃である。本発明の更に別の側面では、前記温度は110〜150℃である。本発明の他の側面では、前記温度は120〜150℃である。これらの温度で乾燥させる場合、前記温風は一般的なドライヤー温風全体の排出空気量の規格値(例えば、200Nm/min)であることが好ましく、乾燥処理の時間は、1分間〜120分間が好ましく、5分間〜60分間がより好ましく、10分間〜30分間がさらに好ましい。
上記温度及び時間が100℃以上及び1分間以上であると、比較的短時間でフード粒を乾燥させることができる。上記温度及び時間が150℃以下及び120分間以下であると、フード粒が過度に加熱されることを防げる。
即ち、乾燥温度が110〜150℃で乾燥時間が5分間〜60分間であることが好ましく、加熱温度が120〜150℃で加熱時間が10分間〜30分間であることがより好ましい。
なお、前記加熱処理の温度と、乾燥処理の温度とは同じであっても異なっていてもよく、前記加熱処理の温度と、前記加熱処理は前記乾燥処理を兼ねることができ、逆に前記乾燥処理は前記加熱処理を兼ねることができる。
【0027】
本発明の一つの側面では、焼成に供するフード粒の水分含有量はフード粒の総重量に対して6.0〜12.0重量%である。本発明の別の側面では、焼成に供するフード粒の水分含有量はフード粒の総重量に対して7.0〜11.0重量%である。本発明の更に別の側面では、焼成に供するフード粒の水分含有量はフード粒の総重量に対して8.0〜10.0重量%である。
フード粒の水分含量を乾燥処理で造粒後より少なくすることにより、後述後述の焼成処理によるフード粒中のピラジン類などのアロマ成分の生成量をより向上させることができる。また、風味や食感を向上させることができる。
【0028】
<プレコーティング工程>
造粒した前記フード粒には、焼成前に油脂をコーティングしてもよい。
添加する油脂の材料は特に制限されず、例えば動物性油脂及び植物性油脂が挙げられる。前記動物性油脂としては、例えば牛脂、豚脂、鳥脂、魚脂等が挙げられる。油脂に、チキンエキス(鶏肉由来の抽出物)又はフィッシュエキス(魚肉由来の抽出物)等の公知のミールエキスを加えてもよい。
前記ミートエキスの添加量は前記原材料の配合で例示した範囲であることが好ましい。
【0029】
造粒したフード粒に油脂をコーティングする(付着させる)方法は、造粒したフード粒の少なくとも一部に油脂を付着させることにより行われ、後述の水分添加工程の実施を不能にするような方法でなければ、特に制限されない。前記フード粒の表面の少なくとも一部に油脂を付着させる方法として、例えば加温して流動化させた動物性油脂及び前記フード粒をコーティングリール中で攪拌する方法が挙げられる。攪拌中又は攪拌後に、前記フード粒の表面に流動化させた油脂を付着させた状態を、所定時間(例えば1〜30分間)維持することにより、油脂の少なくとも一部を前記フード粒の内部まで含浸させることができる。
即ち、本発明において、「造粒したフード粒に油脂をコーティングする」とは、フード粒の中心部まで油脂を含浸させてもよいし、フード粒の表面に近い浅い領域のみに含浸させてもよい。後述の焼成による加熱効率をより向上させる観点から、フード粒の内部まで油脂を染み込ませることが好ましい。
【0030】
プレコーティング工程を行う時の油脂の添加量は、前記造粒前の原材料の混合物と、プレコーティング工程で添加する油脂及び後述のコーティング工程で添加する油脂を合わせた総重量に対して、0.01〜40.0重量%程度が好ましく、0.01〜30.0重量%程度がより好ましく、0.01〜20.0重量%程度が好ましい。また、プレコーティング工程の具体的な方法は、特に限定はされないが、後述のコーティング工程と同じ方法が例示できる。
【0031】
プレコーティング工程において油脂をフード粒の少なくとも表面に付着させることにより、焼成による加熱効率が向上するため、より少ない時間で、フード粒の内部まで充分に加熱する(調理する)ことができる。更に、フード粒の少なくとも一部の表面を油脂でコーティングすることにより、フード粒同士が擦れ合うことによりフード粒の表面から原材料の粉が発生することを抑制することができる。
前記プレコーティング工程と前記乾燥工程と前記加熱工程の順序は、特に制限されないが、いずれの工程も後述の焼成工程の前に行うことが好ましい。
【0032】
<焼成工程>
焼成工程は、前記フード粒を焼成する工程である。焼成に供するフード粒は、前記乾燥処理が行われていてもよいし、行われていなくてもよいが、乾燥処理によりフード粒の水分含量がフード粒の総重量に対して6.0〜12.0重量%であることが好ましく、7.0〜11.0重量%であることがより好ましく、8.0〜10.0重量%に減少されていることが最も好ましい。また、焼成に供するフード粒は前記プレコーティング工程において油脂が添加されていてもよいし、油脂が添加されていなくてもよい。 本発明において、「焼成する」とは、フード粒を空気中において高温で短時間に加熱することを意味する。ここで、「高温」とは150℃以上300℃以下のことを意味し、「短時間」とは5〜200秒間以下のことを意味する。
即ち、フード粒を150℃以上300℃以下の雰囲気に5〜200秒間置いて加熱することが好ましく、160℃以上〜230℃以下の雰囲気に5〜200秒間置いて加熱することがより好ましい。
【0033】
前記焼成の温度は、焼成後に得られるフード粒中にピラジン類などのアロマ成分を生成させる温度であることが好ましい。
アロマ成分を生成させる温度で焼成することによって、当該フード粒中に、ペットの食いつきを向上させる成分を生成させ得る。また、アロマ成分が香ばしい香りを生じさせ、ペットの食いつきを向上させ得る。
【0034】
本明細書において、ピラジン類は、化学式Cで表されるピラジン、及びピラジンが有する1以上の水素原子を炭素数1〜6のアルキル基で置換したピラジン誘導体を意味する。前記炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状の何れであってもよく、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基若しくはエチル基がより好ましい。前記置換されるピラジンの水素原子の数は、1〜3が好ましい。
前記ピラジン類をペットフードに含有させることによって、ペットの食いつきを向上させ得る。
【0035】
前記ピラジン類は、2,5−ジメチルピラジン(2,5-DMPと略す場合がある。)、2,6−ジメチルピラジン(2,6-DMと略す場合がある。)及び/又は2,3,5−トリメチルピラジン(2,3,5-TMと略す場合がある。)であることがさらに好ましい。これらのピラジン類を含有するように焼成したフード粒は、ペットの食いつきをより一層向上させ得る。
【0036】
焼成温度及び焼成時間は、焼成後のフード粒中のピラジン類の含有量を向上させること、又はフード粒(ペットフード)の風味及び食感を向上させることを考慮して、フード粒の形状や大きさによって適宜調整すればよい。
【0037】
前記フード粒を焼成する方法は特に制限されず、例えば網上に前記フード粒を並べて、前記網の上方または下方から熱線又は熱風を当てる方法が挙げられる。前記熱線又は熱風の照射源としては、遠赤外線を発生するセラミックスヒーター、より具体的にはガスバーナーで熱した遠赤外線を発生するセラミックスヒーターが好適であり、熱線を直接当てても良いし、熱線から発生する熱風を当てても良い。
【0038】
遠赤外線を用いて前記フード粒を焼成することにより、プレコーティング工程で油脂を添加したことによるピラジン類の発生効率の向上を一層促進することができる。更に、前記混合物中に還元糖を添加した場合には、メイラード反応による好ましい風味の増加を一層促進することができる。前記混合物中に還元糖と共にアミノ酸を添加した場合には、前記メイラード反応による好ましい風味の増加を更に一層促進することができる。
【0039】
遠赤外線を照射して前記フード粒を焼成することにより、遠赤外線が発生しないグリル(火炎で網焼きすることをいう。)やロースト(炒ることをいう。)に比べて速くフード粒の内部まで加熱することができる。この結果、設備を簡素化して設備投資を抑制することができる。また、遠赤外線を照射して加熱することによって、焼成後のフード粒の水分含有量をより容易に調整することができ、ペットフードの風味や食感を向上させることができ、ペットの食いつきに優れたペットフードが得られる。
【0040】
一方、他の焼成方法として、遠赤外線を発生させず、例えばフード粒をグリルしたり、ローストする場合、フード粒の内部までよく加熱するためには、加熱時間を長くしなければならないことがある。この場合、工業生産ラインにおいては、ライン長が長くなり、設備投資が過大となる問題がある。
【0041】
(第一の焼成方法)
焼成温度及び焼成時間としては、例えば、フード粒を250℃以上の雰囲気に5〜200秒間置いて加熱する方法が挙げられる。具体的には、250℃〜380℃の温度範囲で、5〜200秒間の時間範囲で検討することができる。第一の焼成前の前記フード粒が通常の形状及び大きさである場合、例えば下記の焼成温度を例示できる。なお、ここでいう「通常の形状及び大きさ」、即ち「焼成前の前記フード粒が通常の形状及び大きさ」であるとは、形状は、球状、多角体状、柱状、ドーナッツ状、板状又は碁石状等であり、例えば、犬用としては大きさは最短径及び最長径が2mm〜20mmであることがより好ましく、最短径及び最長径が3mm〜18mmであることがさらに好ましく、最短径及び最長径が4mm〜16mmであることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が2mm〜10mmかつ最長径が6mm〜20mmであり、更に好ましくは、最短径が3mm〜8mmでありかつ最長径が7mm〜18mmであり、最短径が4mm〜6mmであり、最長径が8mm〜16mmであることが最も好ましい。
形状としては、例えば、犬用としては大きさは最短径及び最長径が2mm〜20mmの碁石状であることが好ましく、最短径及び最長径が3mm〜18mmの碁石状であることがより好ましく、最短径及び最長径が4mm〜16mmの碁石状であることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が2mm〜10mmかつ最長径が6mm〜20mmの碁石上であり、更に好ましくは、最短径が3mm〜8mmでありかつ最長径が7mm〜18mmの碁石上であり、最短径が4mm〜6mmかつ最長径が8mm〜16mmの碁石上であることが最も好ましい。
また、フード粒の大きさ及び形状は特に制限されないが、例えば、猫用としては大きさは最短径及び最長径が猫用としては1.5mm〜15mmであることがより好ましく、最短径及び最長径が2mm〜12.5mmであることがさらに好ましく、最短径及び最長径が4mm〜10mmであることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が1.5mm〜6mmかつ最長径が5mm〜15mmであり、更に好ましくは、最短径が2mm〜5mmでありかつ最長径が6mm〜12.5mmであり、最短径が2.5mm〜4mmであり、最長径が7mm〜10mmであることが最も好ましい。
形状としては、例えば、猫用としては大きさは最短径及び最長径が1.5mm〜15mmの碁石状であることが好ましく、最短径及び最長径が2mm〜12.5mmの碁石状であることがより好ましく、最短径及び最長径が4mm〜10mmの碁石状であることが最も好ましい。より好ましくは、最短径が1.5mm〜6mmかつ最長径が5mm〜15mmの碁石上であり、更に好ましくは、最短径が2mm〜5mmでありかつ最長径が6mm〜12.5mmの碁石上であり、最短径が2.5mm〜4mmかつ最長径が7mm〜10mmの碁石上であることが最も好ましい。この大きさ及び形状であると、加熱の際に内部まで火が通り易い。また、前の造粒後のフード粒の形状は、ペットがそのまま食するには大き過ぎる板状、柱状又はチューブ状であってもよい。この場合、後述の乾燥処理及び焼成工程の何れかの後で、ペットが食し易い形状に小片化することが好ましい。
【0042】
本発明の一つの側面では、前記焼成温度は270〜370℃である。本発明の別の側面では、前記焼成温度は270〜350℃である。本発明の更に別の側面では、前記焼成温度は280℃〜330℃である。これらの焼成温度の場合、焼成時間は、5〜90秒が好ましく、10〜75秒がより好ましく、20〜75秒がさらに好ましく、20〜45秒が特に好ましい。
上記焼成温度及び焼成時間が250℃以上及び5秒以上であることにより、焼成後に得られるフード粒中にピラジン類及び/又はペットが好む成分(ただし、ピラジン類を除く)をより多く生成できる。上記焼成温度及び焼成時間が380℃以下及び200秒以下であることにより、ペットが嫌う焦げ臭等の原因物質の発生を抑制できる。
【0043】
(第二の焼成方法)
遠赤外線を照射してフード粒を焼成する場合は、風味や食感を向上させる観点から、雰囲気温度が160〜230℃となるように遠赤外線を照射して前記フード粒を焼成することが好ましい。
【0044】
遠赤外線を照射することによってフード粒を焼成する方法としては、例えば、遠赤外線を照射しつつ、フード粒を160℃〜230℃の雰囲気(空気雰囲気)とした炉内に置く方法が挙げられる。この際、例えば、フード粒を搬入する前の炉内の温度(空焚き時の温度)が200℃〜330℃となるように遠赤外線を照射した後、その炉内(雰囲気)にフード粒を搬入することによって、当該フード粒に遠赤外線を照射しつつ、160℃〜230℃の雰囲気温度で焼成することができる。なお、フード粒を搬入する前の温度が200℃〜330℃となるように遠赤外線を照射した雰囲気を形成する方法としては、使用する遠赤外線照射装置の設定温度を280℃〜330℃に設定する方法が例示できる。空焚き状態の200℃〜330℃の雰囲気にフード粒を搬入すると、当該雰囲気がフード粒や外気の流入等によって冷却されて160℃〜230℃程度になる。フード粒を160℃〜230℃で安定して加熱することができる場合は、装置の設定温度を160℃〜230℃としても構わない。ここで例示した温度について、表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
雰囲気温度が160〜230℃となるように遠赤外線照射してフード粒を焼成する時間は、フード粒の大きさに応じて適宜調整すればよい。例えば、前述のように、フード粒が最短径及び最長径が3mm〜30mmの大きさである場合、加熱時間は20秒〜55秒が好ましい。この加熱条件であると、フード粒の内部まで確実に加熱して、風味及び食感をより向上させることができる。一方、160℃未満又は20秒未満であると、フード粒の内部が生焼けになり風味や食感が不良になることがある。また、55秒超の焼成時間であると、フード粒の表面が激しく焦げて、不快な焦げ臭が生じることがある。
【0047】
フード粒に遠赤外線を効率良く照射するために、前記フード粒を網に載せて、前記フード粒に対して上方及び下方の少なくとも一方から遠赤外線を照射する方法が好ましく、上方及び下方の両方から遠赤外線照射する方法を含むことがより好ましい。この方法によれば、鉄板上にフード粒を載せて、前記フード粒に対して上方から遠赤外線を照射する方法よりも、前記フード粒の下部をより効率よく加熱できる。 具体的な方法としては、例えば、図1に示すように、ネットコンベヤーを用いてフード粒を載せた金属製の網を搬送しつつ、前記フード粒の上下から遠赤外線を照射する方法が挙げられる。フード粒の搬送速度を調整することにより、フード粒の加熱時間を調整することができる。
【0048】
フード粒を搬送する際の前記ネットコンベヤーの速度を調整することにより、フード粒の加熱時間を調整することができる。ネットコンベヤーの速度を遅くして加熱時間を長くするほど、フード粒の水分含量を低下させることができる。
【0049】
遠赤外線(ここで、波長は4〜1000μmである。)の照射源としては、熱せられたセラミックス若しくは石英又は燃焼している炭等が用いられる。ガス炎や電熱線等で加熱されたセラミックス若しくは石英から遠赤外線を放射させて、フード粒に照射することができる。耐久性が高く、遠赤外線を強力に照射できるので、セラミックスヒーターを用いることが好ましい。セラミックスを熱する方法は、設備投資及びランニングコストの観点から、ガス炎であることが好ましい。
【0050】
遠赤外線を放射するセラミックスヒーターとフード粒との間の距離は特に制限されない。本発明の一つの側面(態様)では、前記距離は80mm〜120mmである。本発明の別の側面では、前記距離は90〜110mmである。これらの離間距離であると、フード粒の内部までより確実に加熱することができ、且つ表面を激しく焦がす恐れがない。
【0051】
焼成工程後に得られたフード粒の水分含量は特に制限されないが、当該フード粒の総重量に対して、例えば以下の範囲が挙げられる。
本発明の一つの側面では、前記水分含量はフード粒の総重量に対して2〜6重量%である。本発明の別の側面では、前記水分含量はフード粒の総重量に対して3〜6重量%である。本発明の更に別の側面では、前記水分含量はフード粒の総重量に対して3〜5重量%である。なお、本願明細書の水分含量は後述の方法により測定できる。
【0052】
<水添加工程>
焼成して得られたフード粒に水(水分)を添加する。焼成後のフード粒に水分を添加することにより、当該フード粒の硬さが緩和されるので、ペットが当該フード粒を食べ易くすることができる。また、フード粒から水分が蒸発する際にアロマ成分も蒸発し易くなるため、当該アロマ成分によりペットの食欲を向上させ、食いつきを向上させることができる。
【0053】
焼成して得られたフード粒に水分を添加する方法としては、フード粒に所定の含有量で水分を含ませることができる方法であれば特に制限されない。例えば、前述の油脂のコーティングに使用される公知のコーティングリールを適用することができる。添加する水の温度は特に制限されず、通常10〜40℃の水を使用すればよい。
【0054】
水分添加後のフード粒の水分含量は、水分添加後のフード粒の全重量のうち、例えば以下の範囲が挙げられる。本発明の一つの側面では、前記水分含量はフード粒の総重量に対して6〜12重量%である。本発明の別の側面では、前記水分含量はフード粒の全重量に対して7〜11重量%である。本発明の更に別の側面では、前記水分含量はフード粒の総重量に対して8〜10重量%である。
上記水分含量は、好ましくは6重量%以上、より好ましくは7重量%以上、更に好ましくは8重量%以上である。これらの好適な範囲であると、フード粒の硬さを充分に緩和し、アロマ成分による食欲増進効果を充分に得られる。上記水分含量がフード粒の全重量に対して12重量%以下であると、カビや微生物の発生を防止することができる。
前記水分含量は、後述する水分含量の測定方法により、対象のフード粒の水分含量を測定することにより適宜調整することができる。
【0055】
<コーティング工程>
水分を添加して得られた前記フード粒に油脂を添加してもよい。油脂を添加することによって、ペットの食いつきを向上させること及びペットフードのカロリーを必要に応じて高めることができる。
【0056】
コーティング工程における油脂の添加量は、前記プリコーティング工程における油脂の添加量に連動して調整することができる。例えば、プリコーティング工程で添加する油脂とコーティング工程で添加する油脂を合わせた合計の油脂の添加量を、コーティング工程後に得られたフード粒の総重量に対して2.0〜15.0重量%にすることが挙げられる。
【0057】
コーティング工程において添加する油脂の種類は特に制限されないが、前記油脂としては、例えばプリコーティング工程において添加する油脂と同じ油脂が適用できる。水分添加したフード粒に油脂を添加する方法は特に制限されない。例えば、前述したコーティングリールによる添加方法を適用できる。
【0058】
前記油脂等をフード粒に添加する際の加温は、油脂が固化しないようにすることが主な目的である。この目的が達成できる温度であれば、加温の温度は特に限定されない。油脂の酸化を防ぐ観点から、なるべく低い温度であることが好ましく、例えば40〜80℃とすることができる。
【0059】
フード粒に添加する油脂の割合は、カロリー設計に応じて適宜調整することが可能であり、例えば、製造後のペットフードの全重量のうち脂肪成分の総含有量(総脂肪含有量)が5〜20重量%となるような割合で添加することができる。
なお、「脂肪」及び「油脂」の主成分は、通常、脂肪酸のグリセリンエステル(「中性脂肪」ということもある。)である。
【0060】
コーティング工程後に得られたフード粒の水分含量は、前述した水添加工程後に得られたフード粒の水分含量と同程度にしてもよい。
コーティング工程後のフード粒の水分含量は、当該フード粒の全重量のうち、例えば以下の範囲が挙げられる。
本発明の一つの側面では、前記水分含量は6〜12重量%である。本発明の別の側面では、前記水分含量は7〜11重量%である。本発明の更に別の側面では、前記水分含量は8〜10重量%である。
上記水分含量は、好ましくは6重量%以上、より好ましくは7重量%以上、更に好ましくは8重量%以上である。これらの好適な範囲であると、アロマ成分による食欲増進効果を充分に得られる。
【0061】
<水分含有量の測定方法>
製造過程におけるフード粒および製造後のペットフードの水分含有量は、以下の常圧加熱乾燥法で測定することができる。
(常圧加熱乾燥法)
アルミ秤量缶の重量(以下の式において「W1」と表す。)を恒量値として予め測定する。このアルミ秤量缶に試料を入れて重量(以下の式において「W2」と表す。)を秤量する。つぎに強制循環式の温風乾燥器を使用して、135℃、2時間の条件で試料を乾燥させる。乾燥雰囲気中(シリカゲルデシケーター中)で放冷した後、重量(以下の式において「W3」と表す。)を秤量する。得られた各重量から下記式を用いて水分含有量を求める。
水分(%)=(W2−W3)÷(W2−W1)×100
【0062】
<ピラジン類の含有量の測定方法>
製造過程におけるフード粒および製造後のペットフードのピラジン類の含有量は、ガスクロマトグラフ−質量分析法によって測定することができる。具体的には、以下の溶媒抽出法によって、測定することが好ましい。
(溶媒抽出法)
ペットフード試料2〜10gに水50ml及びジエチルエーテル20mlを加え浸漬し、氷冷下においてホモジナイザーで攪拌し、塩化ナトリウム20gを加え、10分間の振とう抽出を行った後、2000rpm/分で5分間の遠心分離を行う。ジエチルエーテル層を脱水ろ過し、4mlまで濃縮したものを試験溶液とする。この試験溶液の所定量をガスクロマトグラフ−質量分析計に注入し、ガスクロマトグラムでピラジン類に該当するピークのマススペクトルを得、物質の特定を行う。得られたガスクロマトグラムから、試料中のピラジン類の含有量を算出できる。例えば、焼成処理を行ったフード粒と焼成処理を行っていないフード粒とを各々試料として測定すると、ピラジン類の含有量を測定できる。以下に、好適な条件を示す。
(ガスクロマトグラフ−質量分析計の操作条件)
機種:6890N/5975B inertXL [Agilent Technologies, Inc.]、カラム:DB-WAX [Agilent Technologies, Inc.] φ0.25mm×30m 膜厚0.25μm、注入量:1μl、導入系:スプリット(1:5)、温度:試料注入口220℃ カラム60℃(1分保持)→10℃/分 昇温→220℃、ガス流量:ヘリウム(キャリアーガス)1ml/分、イオン源温度:230℃、イオン化法:EI、設定質量数:m/z=108.42(2,5−DMP及び2,6−DMP)、m/z=122.42(2,3,5−TMP)
【0063】
<脂肪(油脂という場合もある)含有量の測定方法>
製造過程におけるフード粒および製造後のペットフードの脂肪含有量は、以下に説明する酸分解ジエチルエーテル抽出法で測定することができる。
(酸分解ジエチルエーテル抽出法)
分析試料2gを正確に量って100mlのビーカーに入れ、エタノール2mlを加え、ガラス棒で混和して試料を潤した後、28%の塩酸20mlを加えて時計皿で覆い、70〜80℃の水浴中でときどきかき混ぜながら1時間加熱した後放冷する。
先のビーカーの内容物を200mLの分液漏斗Aに入れ、ビーカーをエタノール10ml及びジエチルエーテル25mlで順次洗浄し、洗浄液を分液漏斗Aに合わせて入れる。
更にジエチルエーテル75mlを分液漏斗Aに加え、振り混ぜた後で静置する。ジエチルエーテル層(上層)をピペット等でとり、あらかじめ水20mlを入れた300mlの分液漏斗Bに加える。
分液漏斗Aにジエチルエーテル50mlを加え、同様に2回操作し、各ジエチルエーテル層をピペット等でとり、分液漏斗Bに合わせて入れる。
分液漏斗Bを振り混ぜた後で静置し、水層(下層)を捨てる。更に水20mlを分液漏斗Bに加え、同様に2回操作する。ジエチルエーテル層を、あらかじめ脱脂綿を詰め硫酸ナトリウム(無水)10g以上の適量を入れた漏斗で、脂肪ひょう量瓶又は300mlのなす形フラスコにろ過する。この脂肪ひょう量瓶又はなす形フラスコは、あらかじめ95〜100℃で乾燥し、デシケーター中で放冷した後、重さを正確に量っておいたものを使用する。
次に、脂肪ひょう量瓶を用いた場合はソックスレー抽出器を使用して、なす形フラスコを用いた場合はロータリーエバポレーターを使用して、前記ろ過したジエチルエーテルを回収する。回収したジエチルエーテルを揮散させて、95〜100℃で3時間乾燥し、デシケーター中で放冷した後、重さを正確にはかり、試料中の粗脂肪量を算出する。
【0064】
《ペットフード》
本発明の第二実施形態のペットフードは、前述した第一実施形態のペットフードの製造方法によって製造されたペットフードである。
前記ペットフードの水分含有量は、例えば以下の範囲が挙げられる。本発明の一つの側面(態様)では、前記水分含量は6〜12重量%である。本発明の別の側面では、前記水分含量は7〜11重量%である。本発明の更に別の側面では、前記水分含量は8〜10重量%である。
上記水分含量は、好ましくは6重量%以上、より好ましくは7重量%以上、更に好ましくは8重量%以上である。これらの好適な範囲であることにより、ペットフードが極端に固くなったり、形状が保てないほど極端に脆くなったりすることを防ぐことができる。
【0065】
本発明のペットフードは、従来公知の原材料を使用して前述した方法で製造できる。
本発明のペットフードは、種々の動物によって食されるが、ネコ及びイヌによって好まれ、特にイヌに好まれる。
【0066】
本発明のペットフードがイヌ又はネコに与えることに適したペットフードであることをペットの飼い主に伝えるために、ペットフードを包装して販売する際に、イヌ又はネコに適したペットフードである旨を前記包装に表示して販売することができる。
また、本発明に係るペットフードは、水蒸気バリア性のある包装又は容器に収納して販売することが好ましい。製造直後の水分含量とアロマ成分の減少を抑制するためである。
前記水蒸気にバリア性のある包装としては、バリア0ミクロンナイロン15ミクロンとLLDPE40ミクロンを張り合わせた材料及びVMPET12とCPP40を張り合わせた材料の組み合わせからなるバリア材料を包装材料として密閉した形態が挙げられる。
更に、本発明に係るペットフードは、猫または犬などのペットの一回あたりの摂餌量毎、又は前記一回あたりの摂餌量を更に分割した量毎に前記水蒸気バリア性のある包装又は容器に収納されていることが好ましい。前記一回あたりの摂餌量は15〜700gが好ましく、60〜80gがより好ましい。
【実施例】
【0067】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
表3に示す配合で、穀類、肉類、魚介類、ビタミン類、アミノ酸(蛋白質の加水分解物)並びに還元糖(含水ブドウ糖)を粉砕機で粉砕し、ミキサーで混合し、原材料の混合物を得た。この際、還元糖をアミノ酸よりも多く配合した。
前記穀類は、とうもろこし、小麦粉、コーングルテンミール、大豆などを含む。前記肉類は、チキンミール、ポークミールなどを含む。前記魚介類は、フィッシュミールなどを含む。前記ビタミン類の他にミネラル類を含んでいても良い。
【0069】
【表3】
【0070】
得られた混合物をエクストルーダを用いて、直径及び高さ(厚さともいう。)が3mm〜30mmの碁石状のフード粒となるように造粒した。この際、80〜100℃で3〜6分間の加熱処理を施し、澱粉成分をアルファ化した。
得られたフード粒を、乾燥機を用いて、100〜105℃の温風で10〜30分の乾燥処理を行い、表4に示す水分含量を有するフード粒を各々得た。
【0071】
つぎに、図1で示したように、各フード粒を金属製の網上に載せてネットコンベヤー3で搬送し、セラミックスヒーター1を備えた炉2の内部において、前記網の上方及び下方から遠赤外線を照射して、フード粒4を焼成した。具体的には、フード粒を搬入する前の炉内の温度(空焚き時の温度のことをいう。)220〜260℃の範囲とし、フード粒の搬入を継続的に行う際の炉内の温度(粒流し時の温度のことをいう。)を190〜230℃の範囲にして、フード粒1個当り30秒の焼成時間となるように、ネットコンベヤーによる網の搬送速度を調整した。
この際、セラミックスヒーターとフード粒との離間距離は約100mmに設定した。なお、炉内の温度(雰囲気温度のことをいう。)は、網から30mm上方且つ網の端から350mm側方且つセラミックスヒーターの中央部から95mm離れた位置に温度計を設置してモニターした。焼成後、炉内から搬出されたフード粒はネットコンベヤーで搬送されている間に空気で自然に冷却した。
【0072】
焼成後に得られた各フード粒をコーティングリール内に投入し、フード粒と水とを接触させながら攪拌することにより、表4に示す水分含量になるように各フード粒に水分を添加した。なお、比較例1〜2のフード粒については、水添加処理を行わずに後述のコーティング工程に供した。
【0073】
その後、各フード粒をコーティングリールに投入して40℃以上に加温し、混合しながら少量の牛脂を添加することによって、フード粒の表面及び内部に牛脂を添加した。得られたペットフード、即ち完成品のペットフードの水分含量を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
以上の製造方法により、焼成後に水分を添加した実施例1のペットフード;焼成前のフード粒中に還元糖及びアミノ酸を含み、更に焼成後に水分を添加した実施例2のペットフード;焼成後に水分を添加しない以外は実施例1と同様に製造した比較例1のペットフード;焼成前の水分含量を増やし、更に焼成後に水分を添加しない以外は実施例2と同様に製造した比較例2のペットフードをそれぞれ得た。
【0076】
<嗜好性の評価>
製造した各ペットフードの嗜好性を以下の方法で評価した。これらの結果を表5に示す。
【0077】
(テスト1)
実施例1と比較例1のペットフードのうち、どちらの嗜好性が高いかを調べるために、オス及びメスを含む2〜10歳の犬合計10頭()をモニターとして2日間でテストした。
第1日は、各ペットフードのうち、一方を左から、他方を右から、犬1頭に対して230gずつ同時に与え、犬が食べた量を1時間後に測定した。 当該犬1頭が第1日に食べた合計のペットフードの重量のうち、実施例のペットフードの摂食量と比較例のペットフードの摂食量を百分率で求めた。モニターである10頭の犬から得られた百分率を平均して、第1日の結果とした。
第2日は、各ペットフードのうち、一方を右から、他方を左から、犬1頭に対して230gずつ同時に給与し、犬が食べた量を1時間後に測定した。
当該犬1頭が第2日に食べた合計のペットフードの重量のうち、実施例のペットフードの摂食量と比較例のペットフードの摂食量を百分率で求めた。モニターである10頭の犬から得られた百分率を平均して、第2日の結果とした。
最後に、第1日と第2日の結果を平均して、最終結果である摂食量の比率(嗜好性スコア)を求めた。この嗜好性の数値が高い程、モニターである犬が好んで摂食したことを示す。
【0078】
(テスト2)
実施例1のペットフードを実施例2のペットフードに変更し、比較例1を比較例2のペットフードに変更した以外は、テスト1と同様にテストした。その結果を表5に併記する。
【0079】
【表5】
【0080】
表5において、嗜好性スコアの値が大きいほど食いつきが良いことを示す。例えば、実施例1の嗜好性スコアは87%である。この結果は、同時に与えた比較例1の嗜好性スコアが100−87=13%であることを意味する。
【0081】
テスト1の結果から、実施例1の方が比較例1よりも嗜好性が優れていることが明らかである。焼成後のフード粒に水分を添加することにより、嗜好性を飛躍的に高めることができた。
【0082】
テスト2の結果から、実施例2の方が比較例2よりも嗜好性が優れていることが明らかである。
【0083】
更に、実施例2の方が比較例2よりも香ばしい香りが強かった。この理由として、比較例2は、焼成前の水分含量が高い為、焼成時に得られる効果が不十分で、香ばしい香りを有するアロマ成分の生成が少なかったことが推測される。
【0084】
実施例2の嗜好性が優れている要因の一つとして、実施例2のペットフードの製造時に、添加した還元糖及びアミノ酸のメイラード反応によりペットフードの風味が向上したことが推測される。
【0085】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明にかかるペットフードは、愛玩動物の飼料の分野に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…セラミックスヒーター、2…炉、3…ネットコンベヤー、4…フード粒、5…フード粒の輸送路、6…焼成したフード粒の回収容器
図1