特許第6385428号(P6385428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385428
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】スルホキシドを酸化する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 315/02 20060101AFI20180827BHJP
   C07C 317/14 20060101ALI20180827BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   C07C315/02
   C07C317/14
   !C07B61/00 300
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-516154(P2016-516154)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-520109(P2016-520109A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2014061097
(87)【国際公開番号】WO2014191475
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】13169755.9
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ−ニコラエ パルヴレスク
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シュピールマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ガオ
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−136647(JP,A)
【文献】 特表2002−511335(JP,A)
【文献】 米国特許第04287366(US,A)
【文献】 特表2003−514751(JP,A)
【文献】 特開2010−159245(JP,A)
【文献】 特開2002−102709(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102838516(CN,A)
【文献】 MOREAU, Patrice et al,Oxidation of sulfoxide to sulfones by hydrogen peroxide over Ti-containing zeolites,Applied Catalysis A: General,1997年,155,253-263
【文献】 CHENG, Shifu et al,Catalytic Oxidation of Benzothiophene and Dibenzothiophene in Model Light Oil over Ti-MWWW,Chinese Journal of Catalysis,2006年 7月 7日,27(7),547-549
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 315/02
C07C 317/14
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホキシドをそれぞれのスルホンに酸化する方法であって、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、
ここで、前記触媒は、触媒活性材料として多孔質のチタン含有シリケートを有し、
前記触媒中に含まれる前記多孔質のチタン含有シリケートが、チタン及びケイ素を有するゼオライト骨格構造を有するチタン含有ゼオライト材料であり、
前記触媒中に含まれる前記チタン含有ゼオライト材料の前記骨格構造が、MWW型骨格構造であり、
前記スルホキシドは、式(I)
【化1】
に従った構造を有し、かつ前記それぞれのスルホンは、式(II)
【化2】
に従った構造を有し、ここで、R1及びR2は、互いに無関係に、炭素原子5〜10個を有する置換されたアリール基である、前記方法。
【請求項2】
前記置換されたアリール基の置換基は、ハロゲン基またはヒドロキシル基である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記スルホキシドが、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド又は4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記触媒中に含まれる前記チタン含有ゼオライト材料の前記骨格構造が、元素として計算して、かつ前記チタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、0.5〜3.0質量%の範囲のチタン含有率を有し、並びに、元素として計算して、かつ前記チタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、30〜50質量%の範囲のケイ素含有率を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記工程(i)において用いられる前記過酸化水素を、過酸化水素水溶液であって、当該水溶液の全質量に対して10〜70質量%の範囲の過酸化水素含有率を有するものとして用いる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記工程(i)に従った前記反応の開始時に、過酸化水素対スルホキシドのモル比が、1:1〜50:1の範囲にある、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記工程(i)に従った前記反応の開始時に、スルホキシド対前記チタン含有シリケート中に含まれるチタンのモル比が、10:1〜500:1の範囲にある、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記工程(i)に従った前記反応を、溶媒の存在下に実施し、かつ、ここで、前記混合物(M)が、さらに溶媒を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒を、1−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩素化炭化水素、及びそれらの2つ以上の組合せ物から成る群から選択する、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記工程(i)に従った前記反応の開始時に、スルホキシド対溶媒のモル比が、0.01:1〜10:1の範囲にある、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記工程(i)に従った前記反応を、少なくとも1種の不活性ガスの存在下に実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記工程(i)に従った前記反応を、0〜90℃の範囲の温度で実施する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記工程(i)に従った前記反応を、最大で15barの圧力下で実施する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記工程(i)に従った前記反応を、バッチ方式において実施する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記工程(i)に従った前記反応を、1〜15時間の範囲の期間にわたって実施する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
さらに、(ii)前記混合物(M)から前記触媒を分離する工程
を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
さらに、(iii)前記混合物(M)から、式(II)に従った前記スルホンを分離する工程
を有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が噴霧粉末である、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホキシドを酸化する方法に関し、当該方法は、スルホキシドを、触媒活性材料として多孔質のチタン含有シリケートを有する触媒の存在下に過酸化水素と反応させる工程を有する。
【背景技術】
【0002】
一般構造式R1−S(=O)2−R2[式中、R1及びR2は有機部分である]を有する化合物であるスルホンは、化学工業において幅広く用いられている。例えば、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンといったジアリールスルホンは、例えば耐熱性ポリマーとして用いられるポリアリーレンスルホンを製造するための重要な前駆体である。
【0003】
露国特許第2 158 257C1号明細書は、第一のステップにおいて、塩化チオニルを塩化アルミニウムの存在下にクロロベンゼンと反応させて4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシドを得る工程を有する、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンの製造法を開示している。第二のステップにおいて、当該スルホキシドは、過酸化水素及び酢酸を有する混合物を用いて4,4’−ジクロロジフェニルスルホンに酸化される。
【0004】
同様に、中国特許出願公開第102351757号公報は、塩化チオニルを塩化アルミニウムの存在下にクロロベンゼンと反応させて4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシドを得る工程を有する、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンの合成を開示している。第二のステップにおいて、当該スルホキシドは、触媒として有機セレン酸の存在下に過酸化水素で4,4’−ジクロロジフェニルスルホンに酸化される。
【0005】
中国特許出願公開第102351756号公報は、塩化チオニルを三酸化アルミニウムの存在下にクロロベンゼンと反応させて4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシドを得る、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン合成を開示している。引き続き、当該4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシドは、触媒として、活性炭に担持されたヘテロポリ酸、例えばリンタングステン酸及びケイタングステン酸を用いて、過酸化水素で4,4’−ジクロロジフェニルスルホンに酸化される。
【0006】
国際公開第2012/143281号には、硫酸、アレーンスルホン酸及びオレウムから成る群から選択された酸を、フッ素化無水物及び少なくとも1つのハロベンゼンと反応させる、スルホンを製造するためのワンポット合成が開示されている。この反応のために、均一系又は不均一系であってよい触媒が開示されている。不均一系触媒の内、アルミノシリケートが記載されている。アルミノシリケートとして、40以下のシリカ:アルミナの比を有するH−ベータゼオライトが記載されている。温度プロファイルに関して、国際公開第2012/143281号に記載された反応は、個々の反応ステップにおいて3つの異なる温度T1、T2及びT3が実現されなければならないことから非常に複雑である。
【0007】
中国特許出願公開第102838516号公報は、スルホキシド及びスルホンの製造法を開示している。出発材料としてチオエーテルが用いられる。この文献によれば、スルホキシド又はスルホンのいずれかがチオエーテルから製造される。特に、この文献は、スルホンを製造するための出発材料としてスルホキシドを用いることについては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】露国特許第2 158 257 C1号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第102351757号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第102351756号公報
【特許文献4】国際公開第2012/143281号
【特許文献5】中国特許出願公開第102838516号公報
【0009】
先行技術のたいていの方法において教示されているのは、比較的複雑な触媒系、例えばヘテロポリ酸若しくは有機セレン酸及び/又は複雑な反応シーケンスである。
それゆえ、本発明の課題は、スルホンを製造するための有利な方法を提供することであった。
【0010】
意想外にも、かかる有利な方法は、チタンを有する特定の不均一系触媒を用い、かつスルホキシドをこの触媒の存在下に酸化してスルホンを得る場合に実現され得ることがわかった。
【0011】
それゆえ、本発明は、スルホキシドをそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として多孔質のチタン含有シリケートを有する。
【0012】
ステップ(i)
ステップ(i)においては、スルホキシドを、触媒の存在下に過酸化水素と反応させ、それによってスルホン及び触媒を有する混合物(M)が得られ、ここで、触媒は、触媒活性材料として多孔質のチタン含有シリケートを有する。
【0013】
好ましくは、ステップ(i)において反応物(educt)として用いられるスルホキシドは、式(I)
【化1】
に従った構造を有し、かつ生成物として得られるそれぞれのスルホンは、式(II)
【化2】
に従った構造を有し、ここで、R1及びR2は、互いに無関係に、線状若しくは分枝状の、置換された若しくは非置換の、好ましくは炭素原子1〜20個を有するアルキル基、線状若しくは分枝状の、置換された若しくは非置換の、好ましくは炭素原子2〜20個を有するアルケニル基、又は置換された若しくは非置換の、好ましくは炭素原子5〜20個を有するアリール基若しくはヘテロアリール基である。好ましくは、R1及びR2は、互いに無関係に、置換された若しくは非置換のアリール基、より好ましくは置換されたアリール基である。好ましくは、置換基は、ハロゲン基、例えばF基、Cl基、Br基若しくはI基、ヒドロキシル基、線状若しくは分枝状の、好ましくは炭素原子1〜10個を有するアルキル基、線状若しくは分枝状の、好ましくは炭素原子1〜10個を有するアルキルオキシ基、線状若しくは分枝状の、好ましくは炭素原子2〜10個を有するアルケニル基、好ましくは炭素原子5〜10個を有するアリール基、好ましくは炭素原子5〜10個を有するヘテロアリール基、並びにそれらの2つ以上の組合せ物から成る群から選択される。好ましくは、ヘテロアリール基のヘテロ原子は、N、P、O及びSから成る群から選択される。より好ましくは、R1及びR2は、互いに無関係に、炭素原子5〜10個を有する、より好ましくは炭素原子6〜10個を有する置換されたアリール基であり、ここで、置換基は、好ましくはハロゲン基、例えばF基、Cl基、Br基若しくはI基、又はヒドロキシル基、より好ましくはCl基又はヒドロキシル基である。
【0014】
より好ましくは、スルホキシドは、式(III)に従った4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシドである。それに応じて、ステップ(i)において得られるスルホンは、(IV)に従った4,4’−ジクロロジフェニルスルホンであることが好ましい:
【化3】
【0015】
同様に、好ましくは、スルホキシドは、式(IIIa)に従った4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドである。それに応じて、同様に、ステップ(i)において得られるスルホンは、式(IVa)に従った4,4’−ジジヒドロキシジフェニルスルホンであることが好ましい:
【化4】
【0016】
本発明の方法において用いられる触媒は、触媒活性材料として多孔質のチタン含有シリケートを有する。
【0017】
それらの孔径に依存して、多孔質のシリケートは、ミクロ孔、すなわち、2ナノメートル未満の孔径を有する細孔、及び/又はメソ孔、すなわち、2〜50ナノメートルの範囲の孔径を有する細孔、及び/又はマクロ孔、すなわち、50ナノメートル超の孔径を有する細孔を有してよい。前述の細孔は、DIN 66135及びDIN 66134に記載された方法に従って測定されていると理解されるべきである。好ましくは、本発明の多孔質のシリケートは、ミクロ孔及び/又はメソ孔を有する。より好ましくは、本発明の多孔質のシリケートはミクロ孔を有する。
【0018】
一般的に、多孔質のチタン含有シリケートは、非晶質又は結晶質であってよい。好ましくは、多孔質のチタン含有シリケートは、少なくとも部分的に結晶質である。より好ましくは、多孔質のチタン含有シリケートの少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%が結晶質である。
【0019】
一般的に、多孔質のチタン含有シリケートは、ケイ素及び酸素に加えて、シリケート構造の構成要素として、すなわち、シリケート構造におけるヘテロ原子として、又は、例えばシリケート構造に吸着されるか若しくはさもばければ結合されるチタン種として、チタンを有してよい。好ましくは、チタンの少なくとも一部分が、ケイ素及び酸素に加えて、シリケート構造の構成要素として存在する。より好ましくは、多孔質のチタン含有シリケートにおいて存在するチタンの少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%が、ケイ素及び酸素に加えて、シリケート構造の構成要素として存在する。
【0020】
ケイ素及び酸素及び好ましくはチタンのほかに、多孔質のシリケートのシリケート骨格は、少なくとも1個の更なるヘテロ原子を有してよい。考えられる更なるヘテロ原子には、Al、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pbが含まれるが、しかし、これらに限定されない。好ましくは、本発明の多孔質のシリケートのシリケート骨格は、本質的にアルミニウムを含まない。本発明の文脈において用いられる“本質的にアルミニウムを含まない”との表記は、多孔質のシリケートのシリケート骨格の全質量に対して、500ppm未満のアルミニウム、好ましくは300ppm未満のアルミニウム、より好ましくは200ppm未満のアルミニウムを有する多孔質のシリケートのシリケート骨格に関する。それゆえ、より好ましい更なるヘテロ原子は、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pb、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。
【0021】
好ましくは、本発明の多孔質のシリケートのシリケート骨格の少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、ケイ素、酸素、及びチタンから成る。
【0022】
一般的に、本発明の多孔質のチタン含有シリケートは、少なくとも1個の追加的なシリケート骨格元素を有してよい。考えられる追加的なシリケート骨格元素には、Al、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pbが含まれるが、しかし、これらに限定されない。好ましくは、本発明の多孔質のチタン含有のシリケートは、本質的にアルミニウムを含まない。本発明の文脈において用いられる“本質的にアルミニウムを含まない”との表記は、多孔質のチタン含有シリケートの全質量に対して、500ppm未満のアルミニウム、好ましくは300ppm未満のアルミニウム、より好ましくは200ppm未満のアルミニウムを有する多孔質のチタン含有シリケートに関する。それゆえ、より好ましい追加的なシリケート骨格元素は、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pb、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。
【0023】
本発明の多孔質のチタン含有シリケートが、少なくとも1個の追加的なシリケート骨格元素を有する場合、この少なくとも1個の元素は、好ましくは、多孔質のチタン含有シリケートの全質量に対して、かつ多孔質のチタン含有シリケートに含まれる全ての追加的なシリケート骨格元素の合計に関して、0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜7質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の量で含まれる。
【0024】
好ましくは、本発明の多孔質のチタン含有シリケートのシリケート骨格の少なくとも一部分は、少なくとも1つのゼオライト骨格から成る。より好ましくは、本発明の多孔質のチタン含有シリケートのシリケート骨格の少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%、より好ましくは少なくとも99.9質量%が、少なくとも1つのゼオライト骨格から成る。
【0025】
それゆえ、本発明はまた、触媒中に含まれる多孔質のチタン含有シリケートが、チタン及びケイ素を有する少なくとも1つのゼオライト骨格構造を有するチタン含有ゼオライト材料である上記の方法に関する。
【0026】
好ましくは、少なくとも1つのゼオライト骨格構造は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITQ、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YNU、YUG、ZON、及びそれらの2つの以上を組み合わせた構造から成る群から選択される。これらの3つの文字コード及びそれらの定義に関して、“Atlas of Zeolite Framework Types”,第5版,エルゼビア社,ロンドン,英国(2001)が参照される。
【0027】
好ましくは、触媒中に含まれる多孔質のチタン含有シリカは、チタン及びケイ素を有するゼオライト骨格構造を有するチタン含有ゼオライト材料である。
【0028】
チタン及びケイ素を有するゼオライト骨格構造を有するゼオライト材料は、チタンをシリケート骨格の四面体位置に組み込み、そうしてアルミニウム及び/又はケイ素原子を少なくとも部分的に置き換えることによって作製されることができる。チタン及びケイ素を有するゼオライト骨格構造を有し、好ましくはアルミニウム不含であるゼオライト材料は、全ての考えられる方法に従って製造されることができる。基本的に、チタン及びケイ素を有するゼオライト骨格材料は、直接合成及び/又は二次合成によって製造されることができる。
【0029】
好ましくはゼオライト骨格構造中に含まれるチタンは、全ての考えられる方法に従って骨格構造中に導入されることができる。例えば、少なくとも1つの適したチタン源、少なくとも1つの適したケイ素源に基づき、かつ任意に少なくとも1つの適したテンプレート化合物の存在下にゼオライト材料を合成することが可能である。さらに、第一のステップにおいて、チタンとは異なるヘテロ原子、例えば、アルミニウム及び/又はホウ素を含有するゼオライト材料を製造し、適切にかつ少なくとも部分的に、チタンとは異なる当該ヘテロ原子をゼオライト骨格から取り除き、かつチタンをゼオライト骨格中に、チタンとは異なるヘテロ原子によって予め占有されていた骨格サイトの少なくとも一部分において導入してよい。
【0030】
チタンに加えて、ゼオライト骨格は、少なくとも1個の更なるヘテロ原子を含んでよい。考えられる更なるヘテロ原子には、Al、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pbが含まれるが、しかし、これらに限定されない。好ましくは、本発明のゼオライト骨格は、本質的にアルミニウムを含まない。本発明の文脈において用いられる“本質的にアルミニウムを含まない”との表記は、ゼオライト材料のゼオライト骨格の全質量に対して、500ppm未満のアルミニウム、好ましくは300ppm未満のアルミニウム、より好ましくは200ppm未満のアルミニウムを有するゼオライト骨格に関する。それゆえ、より好ましい更なるヘテロ原子が、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pb、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。
【0031】
好ましくは、本発明のゼオライト材料のゼオライト骨格の少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、ケイ素、酸素、及びチタンから成る。
【0032】
一般的に、本発明の多孔質のチタン含有ゼオライト材料は、少なくとも1個の追加的なゼオライト骨格元素を有してよい。考えられる追加的なゼオライト骨格元素には、Al、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pbが含まれるが、しかし、これらに限定されない。好ましくは、本発明の多孔質のチタン含有ゼオライト材料は、本質的にアルミニウムを含まない。本発明の文脈において用いられる“本質的にアルミニウムを含まない”との表記は、チタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、500ppm未満のアルミニウム、好ましくは300ppm未満のアルミニウム、より好ましくは200ppm未満のアルミニウムを有する多孔質のチタン含有ゼオライト材料に関する。それゆえ、より好ましい追加的なゼオライト骨格元素が、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pb、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。考えられる実施態様によれば、追加的なゼオライト骨格原子は、Znを含み、好ましくはZnである。
【0033】
本発明の多孔質のチタン含有ゼオライト材料が、少なくとも1個の追加的なゼオライト骨格元素を有する場合、この少なくとも1個の元素は、好ましくは、チタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、かつチタン含有ゼオライト材料に含まれる全ての追加的なゼオライト骨格元素の合計に関して、0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜7質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の量で含まれる。
【0034】
好ましくは、(i)において用いられる触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造は、MFI、MWW、BEA、MOR、YNU、及びそれらの2つ以上を組み合わせた構造から成る群から選択される。より好ましくは、(i)において用いられる触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造は、MFI及びMWWから成る群から選択される。より好ましくは、(i)において用いられる触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造は、MFI構造ではない。より好ましくは、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造は、MWWである。
【0035】
それゆえ、本発明はまた、スルホキシドをそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料としてチタン含有ゼオライト材料を有し、ここで、(I)において用いられる触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造は、MFI構造ではない。
【0036】
さらに、本発明は、スルホキシドをそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として骨格構造MWWを有するチタン含有ゼオライト材料を有する。
【0037】
それゆえ、本発明はまた、式(III)
【化5】
のスルホキシドを、式(IV)
【化6】
のそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として骨格構造MWWを有するチタン含有ゼオライト材料を有する。
【0038】
それゆえ、本発明はまた、式(IIIa)
【化7】
のスルホキシドを、式(IVa)
【化8】
のそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として骨格構造MWWを有するチタン含有ゼオライト材料を有する。
【0039】
好ましくは、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料のMWW骨格構造は、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有し、並びに、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、30〜50質量%、好ましくは35〜48質量%、より好ましくは38〜47質量%の範囲のケイ素含有率を有する。それゆえ、本発明の方法において用いられる触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料は、MWW骨格構造を有するチタン含有ゼオライト材料(これ以降TiMWWと呼ぶ)である。
【0040】
したがって、本発明はまた、スルホキシドをそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として、好ましくは触媒活性材料としてTiMWWを有し、ここで、MWW骨格構造は、元素として計算して、かつTiMWWの全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有する。
【0041】
さらに、本発明は、スルホキシドをそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として、好ましくは触媒活性材料としてTiMWWを有し、ここで、MWW骨格構造は、元素として計算して、かつTiMWWの全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有し、かつ、ここで、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料のMWW骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは98質量%、より好ましくは99質量%、より好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.9質量%が、Ti、Si、O、及びHから成る。
【0042】
それゆえ、本発明はまた、式(III)
【化9】
のスルホキシドを、式(IV)
【化10】
のそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として、好ましくは触媒活性材料としてTiMWWを有し、ここで、MWW骨格構造は、元素として計算して、かつTiMWWの全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有し、かつ、ここで、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料のMWW骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは98質量%、より好ましくは99質量%、より好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.9質量%が、Ti、Si、O、及びHから成る。
【0043】
それゆえ、本発明はまた、式(IIIa)
【化11】
のスルホキシドを、式(IVa)
【化12】
のそれぞれのスルホンに酸化する方法に関し、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程
を有し、ここで、触媒は、触媒活性材料として、好ましくは触媒活性材料としてTiMWWを有し、ここで、MWW骨格構造は、元素として計算して、かつTiMWWの全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有し、かつ、ここで、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料のMWW骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは98質量%、より好ましくは99質量%、より好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.9質量%が、Ti、Si、O、及びHから成る。
【0044】
TiMWWは、少なくとも1個の追加的なゼオライト骨格元素を有してよい。考えられる追加的なゼオライト骨格元素には、Al、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pbが含まれるが、しかし、これらに限定されない。好ましくは、TiMWWは、本質的にアルミニウムを含まない。本発明の文脈において用いられる“本質的にアルミニウムを含まない”との表記は、TiMWWの全質量に対して、500ppm未満のアルミニウム、好ましくは300ppm未満のアルミニウム、より好ましくは200ppm未満のアルミニウムを有するTiMWWに関する。それゆえ、より好ましい追加的なゼオライト骨格元素は、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pb、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。考えられる実施態様によれば、追加的なゼオライト骨格原子は、Znを含み、好ましくはZnである。
【0045】
好ましくは、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料のMWW骨格構造は、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、最大で0.08質量%のホウ素、好ましくは最大で0.05質量%のホウ素を有する。
【0046】
TiMWWの製造のための好ましい方法
好ましくは、チタンを含有するMWW構造型のゼオライト材料(TiMWWW)は、第一のステップにおいて製造され、ここで、得られたTiMWWは、任意に、第二のステップにおいて適した処理に供されてZnTiMWWが得られる。
【0047】
任意にさらに亜鉛を含有するTiMWWが、
(I)ホウ素を含有するMWW構造型のアルミニウム不含ゼオライト材料(B−MWW)を製造する工程;
(II)B−MWWを脱ホウ素化して、MWW構造型のアルミニウム不含ゼオライト材料(MWW)を得る工程;
(III)チタン(Ti)をMWW中に導入して、Tiを含有するMWW構造型のアルミニウム不含ゼオライト材料(TiMWW)を得る工程;
(IV)好ましくはTiMWWを酸処理する工程
を有する方法によって製造されることが好ましい。
【0048】
段階(I)
(I)に関する限り、特に制限はない。好ましくは、適した出発混合物、好ましくは水性混合物であって、好ましくはB含有源及びSi含有源を含有し、好ましくは少なくとも1つの適したミクロ孔−形成剤を含む混合物が、自生圧力下で水熱結晶化に供される。結晶化のために、少なくとも1つの適したシーディング材料を用いることが考えられ得る。適したSi含有前駆体として、ヒュームドシリカ又はコロイドシリカ、好ましくはコロイドシリカ、例えばLudox(登録商標)AS−40といったアンモニア安定化コロイドシリカが、例として言及され得る。適したホウ素含有前駆体として、ホウ酸、B23、ホウ酸塩、好ましくはホウ酸が、例として言及され得る。適したミクロ孔−形成剤として、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、又はピペリジンとヘキサメチレンイミンの混合物が、例として言及され得る。好ましくは、結晶化時間は、3〜8日間、より好ましくは4〜6日間の範囲にある。水熱合成中、結晶化混合物は撹拌してよい。結晶化の間に適用される温度は、好ましくは、160〜200℃、より好ましくは160〜180℃の範囲にある。B−MMW前駆体は、その母液中で得られ、ここで、母液は、好ましくは9を上回るpHを有する。
【0049】
好ましくは、水熱合成後、得られた結晶質のゼオライト材料B−MMW前駆体を含有する母液のpHは、好ましくは6〜9の範囲の値に調節される。
【0050】
得られた結晶質のゼオライト材料B−MWW前駆体は、好ましくは、母液から適切に分離される。B−MWW前駆体をその母液から分離する全ての方法が考えられる。これらの方法に含まれるのは、例えば濾過、限外濾過、透析濾過及び遠心法、又は、例えば噴霧乾燥法及び噴霧造粒法である。これらの方法の2つ以上の組合せを適用してよい。本発明によれば、B−MWW前駆体は、好ましくは、その母液から濾過によって分離されて、濾過ケーキが得られ、これは、好ましくは、洗浄、好ましくは水による洗浄に供される。引き続き、適した懸濁液を得るために任意にさらに加工された濾過ケーキは、噴霧乾燥又は限界濾過に供される。B−MWW前駆体をその母液から分離する前に、母液のB−MWW前駆体含有量を懸濁液の濃縮によって増大させることが可能である。洗浄が適用される場合、洗浄水が、1000mS/cm未満、より好ましくは900mS/cm未満、より好ましくは800mS/cm未満、より好ましくは700mS/cm未満の伝導率を有するまで、洗浄プロセスを続けることが好ましい。
【0051】
B−MWWを、好ましくは濾過によって懸濁液から分離した後、かつ洗浄した後、B−MWW含有前駆体を含有する洗浄された濾過ケーキは、好ましくは、例えば、濾過ケーキを、適したガス流、好ましくは窒素流に、好ましくは、4〜10時間、より好ましくは5〜8時間の範囲の長さで供することによって、予備乾燥に供される。
【0052】
引き続き、予備乾燥された濾過ケーキは、好ましくは、100〜300℃、より好ましくは150〜275℃、より好ましくは200〜250℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中で乾燥される。かかる乾燥は、例えば噴霧乾燥によって達成されることができる。さらに、B−MWW前駆体を適した濾過法によってその母液から分離し、その後に洗浄及び噴霧乾燥を行うことが可能である。
【0053】
乾燥後、B−MWW前駆体は、好ましくは、500〜700℃、より好ましくは550〜675℃、より好ましくは600〜675℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中での焼成に供されてB−MWWが得られる。
【0054】
段階(II)
(II)に関する限り、特に制限はない。好ましくは、MWW構造型のゼオライト材料(MWW)を得るためのB−MWWの脱ホウ素化は、少なくとも1種の無機酸及び/若しくは少なくとも1種の有機酸、又はそれらの塩を含有してよいか又は含有しなくてよい液体溶媒系によるB−MWWの適した処理によって達成される。考えられる酸は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、及び酒石酸である。好ましい酸は、無機酸であり、ここで、硝酸が殊に好ましい。液体溶媒系は、好ましくは、一価アルコール、多価アルコール、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。
【0055】
好ましくは、液体溶媒系は、水、一価アルコール、多価アルコール、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択され、かつ、ここで、前述の液体溶媒系は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び酒石酸から成る群から選択される無機酸若しくは有機酸又はそれらの塩を含有しない。より好ましくは、液体溶媒系は、無機酸若しくは有機酸、又はそれらの塩を含有しない。さらにより好ましくは、液体溶媒系は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2,3−トリオール、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。最も好ましくは、液体溶媒系は水である。
【0056】
(II)に従った処理は、好ましくは、75〜125℃、より好ましくは85〜115℃の範囲の温度で、好ましくは、8〜15時間、より好ましくは9〜12時間の範囲の長さで実施される。
【0057】
得られた脱ホウ素化された結晶質のゼオライト材料MWWは、好ましくは、水及び/又は酸をさらに有する懸濁液から適切に分離される。MWWを懸濁液から分離する全ての方法が考えられる。これらの方法に含まれるのは、例えば濾過、限外濾過、透析濾過及び遠心法、又は、例えば噴霧乾燥法及び噴霧造粒法である。これらの方法の2つ以上の組合せを適用してよい。本発明によれば、MWWは、好ましくは、懸濁液から濾過によって分離されて、濾過ケーキが得られ、これは、好ましくは、洗浄、好ましくは水による洗浄に供される。引き続き、適した懸濁液を得るために任意にさらに加工された濾過ケーキは、噴霧乾燥又は限界濾過に供される。MWWを懸濁液から分離する前に、懸濁液のMWW含有量を懸濁液の濃縮によって増大させることが可能である。洗浄が適用される場合、洗浄水が、1000mS/cm未満、より好ましくは900mS/cm未満、より好ましくは800mS/cm未満、より好ましくは700mS/cm未満の伝導率を有するまで、洗浄プロセスを続けることが好ましい。
【0058】
MWWを、好ましくは濾過によって懸濁液から分離した後、かつ洗浄した後、MWWを含有する洗浄された濾過ケーキは、好ましくは、例えば、濾過ケーキを、適したガス流、好ましくは窒素流に、好ましくは、4〜10時間、より好ましくは5〜8時間の範囲の長さで供することによって、予備乾燥に供される。
【0059】
引き続き、予備乾燥された濾過ケーキは、好ましくは、100〜300℃、より好ましくは150〜275℃、より好ましくは200〜250℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中で乾燥される。かかる乾燥は、例えば噴霧乾燥によって達成されることができる。さらに、MWWを適した濾過法によって懸濁液から分離し、その後に洗浄及び噴霧乾燥を行うことが可能である。
【0060】
乾燥後、MWWは、500〜700℃、より好ましくは550〜675℃、より好ましくは600〜675℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中での焼成に供される。好ましくは、(II)に従った焼成は実施されない。
【0061】
段階(III)
(III)に関する限り、特に制限はない。好ましくは、適した出発混合物、好ましくは水性混合物であって、MWW及びTi含有前駆体を含有し、かつ好ましくは少なくとも1つの適したミクロ孔−形成剤を含有する混合物が、自生圧力下で水熱結晶化に供される。少なくとも1つの適したシーディング材料を用いることが考えられ得る。適したTi含有前駆体として、オルトチタン酸アルキル、例えばオルトチタン酸テトラブチルが、例として言及され得る。適したミクロ孔−形成剤として、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、又はピペリジンとヘキサメチレンイミンの混合物が、例として言及され得る。好ましくは、結晶化時間は、4〜8日間、より好ましくは4〜6日間の範囲にある。水熱合成中、結晶化混合物は撹拌してよい。結晶化の間に適用される温度は、好ましくは、160〜200℃、より好ましくは160〜180℃の範囲にある。
【0062】
水熱合成後、得られた結晶質のゼオライト材料TiMWWは、好ましくは、母液から適切に分離される。TiMWWをその母液から分離する全ての方法が考えられる。これらの方法に含まれるのは、例えば濾過、限外濾過、透析濾過及び遠心法、又は、例えば噴霧乾燥法及び噴霧造粒法である。これらの方法の2つ以上の組合せを適用してよい。本発明によれば、TiMWWは、好ましくは、その母液から濾過によって分離されて、濾過ケーキが得られ、これは、好ましくは、洗浄、好ましくは水による洗浄に供される。引き続き、適した懸濁液を得るために任意にさらに加工された濾過ケーキは、噴霧乾燥又は限界濾過に供される。TiMWWをその母液から分離する前に、母液のTiMWW含有量を懸濁液の濃縮によって増大させることが可能である。洗浄が適用される場合、洗浄水が、1000mS/cm未満、より好ましくは900mS/cm未満、より好ましくは800mS/cm未満、より好ましくは700mS/cm未満の伝導率を有するまで、洗浄プロセスを続けることが好ましい。
【0063】
TiMWWを、好ましくは濾過によってその母液から分離した後、かつ洗浄した後、TiMWWを含有する洗浄された濾過ケーキは、好ましくは、例えば、濾過ケーキを、適したガス流、好ましくは窒素流に、好ましくは、4〜10時間、より好ましくは5〜8時間の範囲の長さで供することによって、予備乾燥に供される。
【0064】
引き続き、予備乾燥された濾過ケーキは、好ましくは、100〜300℃、より好ましくは150〜275℃、より好ましくは200〜250℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中で乾燥される。かかる乾燥は、例えば、噴霧粉末を得るための噴霧乾燥によって達成されることができる。
【0065】
選択的に、TiMWWは、好ましくは、水熱合成の後に母液から分離されない。したがって、水熱合成において得られたTiMWWを有する母液は、噴霧粉末を得るために噴霧乾燥に直接供されることが好ましい。
【0066】
乾燥後、TiMWWは、500〜700℃、より好ましくは550〜675℃、より好ましくは600〜675℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中での焼成に供される。好ましくは、(III)に従った焼成は実施されない。
【0067】
段階(IV)
本発明の方法の段階(IV)は、好ましくは、段階(III)から得られたTiMWWのTi含有量と、好ましくは炭素含有量も減少させる役割を持ち、Ti含有量の減少は、好ましくは、酸処理によって達成され、かつ炭素含有量の減少は、好ましくは、下記に記される焼成によって達成される。なお、本発明の考えられる実施態様によれば、早くも所望のTi含有量を示すTiMWWを、段階(III)において製造することが可能であり得る。さらに、段階(III)において、それぞれ得られたTiMWWが、さらに段階(V)に従って加工され得るように十分に低い炭素含有量をもたらす、適した焼成を実施することが可能であり得る。
【0068】
一般的に、(IV)に関する限り、特に制限はない。好ましくは、最終的に所望のTiMWW構造型のアルミニウム不含ゼオライト材料を得るための段階(III)に従って得られたTiMWWの酸処理は、少なくとも1種の酸、好ましくは無機酸、より好ましくは硝酸によるTiMWWの適した処理によって達成される。(IV)に従った処理は、好ましくは、75〜125℃、より好ましくは85〜115℃の範囲の温度で、好ましくは17〜25時間、より好ましくは18〜22時間の長さで実施される。
【0069】
酸処理後、得られた結晶質のゼオライト材料TiMWWは、好ましくは、酸をさらに有する懸濁液から適切に分離される。TiMWWを懸濁液から分離する全ての方法が考えられる。これらの方法に含まれるのは、例えば濾過、限外濾過、透析濾過及び遠心法、又は、例えば噴霧乾燥法及び噴霧造粒法である。これらの方法の2つ以上の組合せを適用してよい。本発明によれば、TiMWWは、好ましくは、懸濁液から濾過によって分離されて、濾過ケーキが得られ、これは、好ましくは、洗浄、好ましくは水による洗浄に供される。引き続き、適した懸濁液を得るために任意にさらに加工された濾過ケーキは、噴霧乾燥又は限界濾過に供される。TiMWWを懸濁液から分離する前に、懸濁液のTiMWW含有量を懸濁液の濃縮によって増大させることが可能である。洗浄が適用される場合、洗浄水が、1000mS/cm未満、より好ましくは900mS/cm未満、より好ましくは800mS/cm未満、より好ましくは700mS/cm未満の伝導率を有するまで、洗浄プロセスを続けることが好ましい。
【0070】
TiMWWを、好ましくは濾過によって懸濁液から分離した後、かつ洗浄した後、TiMWWを含有する洗浄された濾過ケーキは、好ましくは、例えば、濾過ケーキを、適したガス流、好ましくは窒素流に、好ましくは、4〜10時間、より好ましくは5〜8時間の範囲の長さで供することによって、予備乾燥に供される。
【0071】
引き続き、予備乾燥された濾過ケーキは、好ましくは、100〜300℃、より好ましくは150〜275℃、より好ましくは200〜250℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中で乾燥される。かかる乾燥は、例えば噴霧粉末を得るための噴霧乾燥によって達成されることができる。さらに、TiMWWを適した濾過法によって懸濁液から分離し、その後に洗浄及び噴霧乾燥を行うことが可能である。
【0072】
乾燥後、TiMWWは、好ましくは、500〜700℃、より好ましくは550〜675℃、より好ましくは600〜675℃の範囲の温度で、工業用窒素、空気、又は希薄空気といった適した雰囲気中、好ましくは空気又は希薄空気中での焼成に供される。
【0073】
段階(IV)で得られたTiMWWは、好ましくは、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有し、並びに、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、30〜50質量%、好ましくは35〜48質量%、より好ましくは38〜47質量%の範囲のケイ素含有率を有する。
【0074】
考えられる段階(V)
段階(V)によれば、好ましくは段階(IV)に従って得られたTiMWWは、任意に、適したZn処理に供してよい。一般的に、(V)に関する限り、上記で定義される好ましいZnTiMWWが好ましいZn及びTi含有量をもって得られることができるという前提では、特に制限はない。最も好ましくは、段階(V)は、少なくとも1つの適した含浸段階、より好ましくは少なくとも1つの湿式含浸段階を有する。
【0075】
この含浸段階に関して、好ましくは(IV)に従って得られたTiMWWを、少なくとも1種の適した溶媒(湿式含浸)、最も好ましくは水中で、少なくとも1つの適したZn含有前駆体と接触させることが好ましい。適したZn含有前駆体として、水溶性のZn塩が殊に好ましく、ここで、酢酸亜鉛二水和物が、殊に好ましい。さらに、Zn含有前駆体の溶液、好ましくは水溶液を調製し、かつTiMWWをこの溶液中に懸濁させることが好ましい。さらに好ましくは、含浸は、室温に対して高められた、好ましくは75〜125℃、より好ましくは85〜115℃の範囲の温度で、好ましくは、3.5〜5時間、より好ましくは3〜6時間の範囲の長さで実施される。含浸の間に懸濁液を撹拌することが好ましい。含浸後、得られたZnTiMWWは、好ましくは、懸濁液から適切に分離される。ZnTiMWW前駆体を懸濁液から分離する全ての方法が考えられる。殊に好ましくは、分離は、濾過、限外濾過、透析濾過又は遠心法によって実施される。これらの方法の2つ以上の組合せを適用してよい。本発明によれば、ZnTiMWWは、好ましくは、懸濁液から濾過によって分離されて、濾過ケーキが得られ、これは、好ましくは、洗浄、好ましくは水による洗浄に供される。洗浄が適用される場合、洗浄水が、1000mS/cm未満、より好ましくは900mS/cm未満、より好ましくは800mS/cm未満、より好ましくは700mS/cm未満の伝導率を有するまで、洗浄プロセスを続けることが好ましくあり得る。引き続き、好ましくは洗浄された濾過ケーキは、例えば、濾過ケーキを、適したガス流、好ましくは窒素流に、好ましくは、5〜15時間、より好ましくは8〜12時間の範囲の長さで供することによって、予備乾燥に供される。段階(V)における含浸から得られたZnTiMWWは、好ましくは、亜鉛元素として計算して、1.0〜2.0質量%、より好ましくは1.1〜1.7質量%、より好ましくは1.2〜1.6質量%、より好ましくは1.3〜1.5質量%の範囲の亜鉛含有率、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率、及び元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、30〜50質量%、好ましくは35〜48質量%、より好ましくは38〜47質量%の範囲のケイ素含有率を有する。
【0076】
噴霧粉末及び成形物(molding)
本発明の方法のステップ(i)に従った反応は、例えば、バッチ方式、半連続方式、及び/又は連続方式において実施してよい。それぞれの方式に依存して、多孔質のチタン含有シリケート、好ましくはチタン含有ゼオライト材料、より好ましくはTiMWWを粉末として用いることが可能である。好ましくは、TiMWWが多孔質のチタン含有シリケートとして用いられる場合、TiMWWを、粉末として、好ましくは、上で記載した段階(IV)に従って得られる噴霧粉末として用いることが可能である。
【0077】
好ましくは、本発明の方法において用いられる触媒は、噴霧粉末である。任意に、この噴霧粉末は、成形物中に含まれ、ここで、成形物は、好ましくは、少なくとも1つのバインダー、好ましくはシリカバインダーを有する。
【0078】
好ましくは、噴霧粉末の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、多孔質のチタン含有シリケート、好ましくはチタン含有ゼオライト材料から成る。
【0079】
好ましくは、噴霧粉末は、3〜10マイクロメートル、好ましくは4〜6マイクロメートルの範囲のDv10値、7〜50マイクロメートル、好ましくは8〜30マイクロメートルの範囲のDv50値、及び12〜90マイクロメートル、好ましくは13〜70マイクロメートルの範囲のDv90値を有する粒子の形態で存在する。
【0080】
好ましくは、噴霧粉末は、DIN 66133に準拠したHg圧入法によって測定された、10〜50nm、好ましくは15〜45nmの範囲の平均孔径(4V/A)を有するメソ孔と、DIN 66133に準拠したHg圧入法によって測定された、50ナノメートル超の範囲の、好ましくは0.06〜3マイクロメートルの範囲の平均孔径(4V/A)を有するマクロ孔を有する。
【0081】
一般的に、本発明自体に従った噴霧粉末を、さらに何らかの調節を施すことなく、本発明の方法のための触媒として用いることが可能である。
【0082】
この噴霧粉末を基にして、当該噴霧粉末を含有する成形物を製造することも可能である。かかる方法において、噴霧粉末は、任意に更なる調節後に、適切に成形され、かつ任意に後処理される。噴霧粉末のかかる更なる調節は、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する溶液により噴霧粉末を含浸し、それによって少なくとも1個のヘテロ原子を導入し、任意にその後に乾燥及び/又は焼成を行うことを含んでよい。成形物は、少なくとも1種の貴金属を導入することによって、かつ/又は成形物を水処理に供することによって適切に後処理してよく、ここで、水処理は、オートクレーブ中で自生圧力下に、高められた温度で液体の水により処理し、その後に任意に成形物の乾燥及び/又は焼成を行うことを含む。
【0083】
成形物の製造のために、本発明による方法において触媒として用いられる噴霧粉末に、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つのバインダー前駆体と、任意に少なくとも1つの細孔形成剤及び/又は少なくとも1つの可塑剤を混ぜてよい。
【0084】
適したバインダーの例は、金属酸化物、例えばSiO2、Al23、TiO2、ZrO2若しくはMgO又は粘土又はこれらの酸化物の2つ以上の組合せ物又はSi、Al、Ti、Zr、及びMgの少なくとも2つの混合酸化物である。粘土鉱物及び天然に存在するか又は合成的に製造されたアルミナ、例えばα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、κ−アルミナ、χ−アルミナ又はθ−アルミナ及びそれらの無機前駆体化合物若しくは有機金属前駆体化合物、例えばギブサイト、バイヤライト、ベーマイト若しくは擬ベーマイト又はトリアルコキシアルミナート、例えばアルミニウムトリイソプロピラートが、Al23バインダーとして特に好ましい。更なる考えられるバインダーは、極性及び非極性成分並びにグラファイトを有する両親媒性化合物であってよい。更なるバインダーは、例えば、粘土であってよく、例えばモンモリロナイト、カオリン、メタカオリン、ヘクトライト、ベントナイト、ハロイサイト、ジッカイト、ナクライト又はアナキサイトであってよい。シリカバインダーが殊に好ましい。
【0085】
本発明の方法において用いられる成形物は、当該成形物の質量に対して、95質量%まで、90質量%まで、85質量%まで、80質量%まで、75質量%まで、70質量%まで、65質量%まで、60質量%まで、55質量%まで、50質量%まで、45質量%まで、40質量%まで、35質量%まで、30質量%まで、25質量%まで、20質量%まで、15質量%まで、10質量%まで又は5質量%までの1つ以上のバインダー材料を含有してよい。好ましくは、本発明の成形物は、10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%のバインダー、最も好ましくはシリカバインダーを含有する。
【0086】
細孔形成剤には、高分子ビニル化合物といったポリマー、例えば、ポリエチレンオキシドのようなポリアルキレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリエステル、炭水化物、例えばセルロース若しくはメチルセルロースのようなセルロース誘導体、又は糖又は天然繊維が含まれるが、しかし、これらに限定されない。更なる適した細孔形成剤は、例えばパルプ又はグラファイトであってよい。細孔特性に関して達成されることが所望される場合、2つ以上の細孔形成剤の混合物を用いてよい。
【0087】
可塑剤には、特に親水性の、有機ポリマー、例えば、セルロースのような炭水化物、メチルセルロースのようなセルロース誘導体、及びバレイショデンプンといったデンプン、壁紙漆喰、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテン又はポリテトラヒドロフランが含まれる。水、アルコール若しくはグリコール又はそれらの混合物、例えば水とアルコール、又は水とグリコール、例えば水とメタノール、又は水とエタノール、又は水とプロパノール、又は水とプロピレングリコールといった混合物の可塑剤としての使用が言及され得る。
【0088】
本発明の方法において用いられる成形物の形状に関して、特に制限はない。特に、それぞれの形状は、成形物の特定用途の特定ニーズに応じて選択してよい。成形物を触媒として用いる場合、例えば長方形、三角形、六角形、正方形、楕円形、又は円形の断面を有するストランド、星形のもの、ペレット、球体、中空円筒体等といった幾何学的形状が可能である。本発明の成形物の好ましい幾何学的形状の1つが、円形断面を有するストランドである。かかる幾何学的形状は、本発明の成形物が、例えば固定床触媒として、最も好ましくは連続型の反応において用いられる場合に好ましい。例えば押出し法によって製造されることができる円形断面を有するこれらのストランドの直径は、好ましくは、1〜4mm、より好ましくは1〜3mm、より好ましくは1〜2mm、より好ましくは1.5〜2mm、より好ましくは1.5〜1.7mmの範囲にある。
【0089】
触媒、例えば固定床触媒としての、最も好ましくは連続型の反応における成形物について、一般的に、当該成形物は、反応器中での長期使用を可能にするために優れた機械抵抗を有している必要がある。本発明の方法において用いられる、好ましくは、円形断面及び1.5〜1.7mmの直径を有するストランドの形態における成形物は、少なくとも5Nの圧縮強度、好ましくは20Nまでの、例えば10〜20N、特に11〜20Nの圧縮強度を有する。
【0090】
過酸化水素
本発明によれば、酸化剤として用いられる過酸化水素は、現場で水素と酸素から又は他の適した前駆体からの反応の間に形成されることが考えられる。
【0091】
好ましくは、過酸化水素は、現場で形成されず、出発材料として、好ましくは溶液の形態で用いられる。好ましくは、(i)において用いられる過酸化水素は、過酸化水素水溶液として用いられる。さらに、過酸化水素水溶液が、当該水溶液の全質量に対して、10〜70質量%、より好ましくは25〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲の過酸化水素含有率を有することが好ましい。
【0092】
(i)において用いられる過酸化水素の製造のために、アントラキノン法を用いてよい。この方法は、アントラキノン化合物を接触水素化して相応のアントラヒドロキノン化合物を形成し、続けてこれを酸素と反応させて過酸化水素を形成し、かつ形成された過酸化水素を続けて抽出することに基づく。このサイクルは、再び酸化において形成されたアントラキノン化合物の再水素化によって終えられる。アントラキノン法の概要は、“Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry”、第5版、第13巻、第447頁〜第456頁に記される。
【0093】
過酸化水素を、硫酸の陽極酸化によって、陰極での水素の同時発生を伴いながら製造してペルオキソ二硫酸を生じさせることも可能である。ペルオキソ二硫酸の加水分解により、まずペルオキソ硫酸が形成し、次いで過酸化水素及び硫酸が形成し、硫酸は、したがって回収される。
【0094】
(i)における反応
好ましくは、(i)における反応の開始時に、過酸化水素対スルホキシドのモル比は、1:1〜50:1、より好ましくは2:1〜30:1、より好ましくは3:1〜10:1の範囲にある。
【0095】
好ましくは、(i)における反応の開始時に、スルホキシド対チタン含有シリケート中に含まれる、好ましくはチタン含有ゼオライト材料の骨格構造中に含まれるチタンのモル比は、10:1〜500:1、より好ましくは30:1〜300:1、より好ましくは50:1〜200:1の範囲にある。
【0096】
一般的に、(i)における反応は、溶媒の不存在下に実施されてよい。好ましくは、(i)における反応は、溶媒の存在下に実施される。
【0097】
一般的に、(i)における反応が実施され得るという前提では、溶媒の化学的性質に関する制限は特にない。好ましくは、溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。より好ましくは、溶媒は、1−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩素化炭化水素、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。塩素化炭化水素は、好ましくは、ジクロロメタン、トリクロロメタン、トリクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。より好ましくは、溶媒は、1−メチル−2−ピロリドンである。
【0098】
その結果として、(i)における反応が、溶媒の存在下に実施される場合、(i)から得られた混合物(M)は、溶媒をさらに有する。
【0099】
好ましくは、(i)に従った反応の開始時に、スルホキシド対溶媒のモル比は、0.01:1〜10:1、好ましくは0.1:1〜5:1、より好ましくは0.3:1〜1:1の範囲にある。
【0100】
好ましくは、(i)に従った反応は、少なくとも1種の不活性ガスの存在下に実施される。少なくとも1種の不活性ガスを有する不活性ガス雰囲気が、(i)に従った反応の開始時に、液面より上に確立されていてよく、それによって、さらに不活性ガスは(i)における反応の間に導入されない。少なくとも1種の不活性ガスが、適した流量で連続的に液相中に、好ましくは少なくとも部分的に(i)に従った反応の間に導入されてもよい。
【0101】
本発明の文脈において用いられる“不活性ガス”との用語は、出発材料、中間生成物又は反応混合物中の反応生成物と、不都合にも相互作用しないか又は本質的に相互作用しないガスを指す。より好ましくは、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。より好ましくは、不活性ガスは窒素であり、より好ましくは工業用窒素である。
【0102】
好ましくは、(i)に従った反応は、0〜90℃、より好ましくは2〜85℃、より好ましくは5〜80℃の範囲の温度で実施される。好ましい温度範囲は、0〜20℃、好ましくは2〜15℃、より好ましくは5〜10℃である。更なる好ましい温度範囲は、65〜90℃、好ましくは70〜85℃、より好ましくは75〜80℃である。まださらに好ましい温度範囲は、30〜60℃、好ましくは35〜55℃、より好ましくは40〜50℃である。一般的に、反応の間、2つ以上の適した異なる温度が、これらの2つ以上の温度が上述の好ましい範囲内にある前提で適用される。方法の間の加熱及び/又は冷却は、連続的に、半連続的に、又は不連続的に実施してよい。個々の出発材料は、一緒に混合される前に予熱されてよいか、又は混合後に続けて加熱されてよい。
【0103】
好ましくは、(i)に従った反応は、最大で15bar、好ましくは最大で10barの圧力下で実施される。一般的に、(i)における反応の間、2つ以上の適した異なる圧力が、これらの2つ以上の圧力が上述の好ましい範囲内にある前提で適用される。方法の間の圧力の増大又は減少は、連続的に、半連続的に、又は不連続的に実施してよい。
【0104】
(i)に従った反応は、好ましくは、バッチ方式、半連続方式、及び/又は連続方式において実施してよい。
【0105】
本発明の文脈において用いられる“反応の開始時に”との表記は、本発明の方法の出発点を指す。バッチ方式において、“反応の開始時に”との用語は、全ての反応物及び触媒が反応物混合物中に存在する時点を定義する。適した反応器中で実施される連続方式において、“反応の開始時に”との用語は、出発材料と触媒が最初に互いに接触する反応器入口下流での反応器中の箇所を定義する。
【0106】
スルホキシドは、好ましくは、(i)において適した反応器中に供される。たいてい、反応器は、その中に配置された不均一系触媒を有し、かつ反応圧力、撹拌速度、不活性ガス流量、温度等を制御する手段が備わっている。反応器には、さらに供給及び除去手段が適切に備わっている。反応器は、反応条件下で不活性である材料から成っていてよい。例として、ガラス又はステンレス鋼が言及され得る。
【0107】
好ましくは、連続方式において、触媒は、成形物の形態で、好ましくはストランドの形態で、適した反応器中に配置されて、例えば固定床の形態で存在し、これは、触媒上を通過する出発材料との完全な接触を可能にする。
【0108】
好ましくは、バッチ方式において、触媒活性材料としてのチタン含有ゼオライト材料は、好ましくは、粉末として、好ましくは噴霧粉末として、液体の出発混合物中に懸濁されて存在する。ゼオライト材料と出発混合物との接触は、撹拌によって高めてよい。
【0109】
酸化反応の過程におけるチタン含有ゼオライト材料の活性の起こり得る低下は、特に連続方式において行われる場合、反応温度、圧力、撹拌速度等を調整することによって補償されることができる。チタン含有ゼオライト材料の活性の指標は、反応物の転化率及び所望の生成物の選択率である。転化率及び選択率は、下記の表1に示される式に従って計算されることができる。転化率及び選択率は、所定の時点での反応混合物中に存在する反応物及び生成物の量に基づき計算されることができる。生成物及び反応物の量は、任意の適した技法、例えばクロマトグラフィーによって測定されることができる。
【0110】
(i)に従った反応をバッチ方式において実施する場合、反応は、1〜15時間、好ましくは2〜10時間、より好ましくは4〜6時間の範囲の期間にわたって実施されることが好ましい。
【0111】
スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させた後に(i)において得られた混合物(M)は、スルホン及び触媒及び任意に溶媒を有する。(i)において得られた混合物(M)は、反応しなかった出発材料及び/又は1つ以上の副生成物をさらに有してよい。
【0112】
ステップ(ii)
更なるステップ(ii)において、触媒を混合物(M)から分離することが好ましい。
【0113】
触媒の分離は、任意の考えられる方法によって達成されることができる。好ましくは、特に(i)における反応がバッチ方式において実施される場合、触媒は、混合物(M)の濾過、遠心分離、排出、混合物(M)のポンプ排出、又はこれらの方法の2つ以上の適した組合せによって分離される。より好ましくは、チタン含有ゼオライト材料を有する触媒は、濾過によって混合物(M)から分離される。
【0114】
ステップ(ii)に従った触媒の分離の下流で、混合物(M)を、例えば混合物(M)中に含まれるスルホンを分離することなく、出発材料として適した反応において直接用いてよい。適した反応には、重合反応−ここで、混合物(M)中に含まれるスルホンは、例えば、1つ以上の適した化合物、例えば1つ以上の二官能性求核性化合物と反応させられる−が含まれるが、しかし、これに限定されない。適した重合反応は、ポリエーテルスルホン、例えばポリ(オキシ−1,4−フェニルスルホニル−1,4−フェニル)の製造を含んでよい。
【0115】
ステップ(iii)
好ましくは混合物(M)中に含まれるスルホン、好ましくは混合物(M)中に含まれる式(II)に従ったスルホンは、工程(iii)において混合物(M)から分離される。
【0116】
好ましくはスルホン、好ましくは式(II)に従ったスルホンは、沈殿、結晶化、抽出、溶媒蒸発、又はそれらの2つ以上の適した組合せによって混合物(M)から分離される。より好ましくは、スルホン、好ましくは式(II)に従ったスルホンは、沈殿によって混合物(M)から分離される。
【0117】
混合物(M)からの分離によって得られたスルホン、好ましくは式(II)に従ったスルホンは、更なる精製ステップに供することが可能である。更なる精製ステップは、再結晶化、クロマトグラフィー、昇華、又はそれらの2つ以上の適した組合せから選択され得る。
【0118】
本発明の方法は、先行技術に従ったスルホンの製造と比べて相当の利点を有する。
【0119】
先行技術の多数の方法においては、酸化剤、例えば過酢酸と、均一系触媒、例えばルイス酸が用いられる。これらの化合物の使用には、相当の安全対策が必要とされ、そうして、特に大規模でのスルホン製造が複雑となり、かつコストが大いにかかることとなる。それに、かかる酸性化合物を用いることによって相当量の廃水が生まれ、これは、環境への放出前に完全に再生することが必要とされる。均一系触媒を用いる更なる欠点は、生成物混合物から分離するのに時間とエネルギーを消費することである。本発明の方法は、これらの欠点のいずれも有さず、なぜなら、多孔質のチタン含有シリケートを有する実質的に不活性の不均一系触媒が用いられ、これは容易に反応混合物から分離されることができるからである。
【0120】
さらに、不均一系触媒を用いた先行技術の方法は、本発明の方法より相当に複雑であり、ここで、先行技術は、非常に特定の条件下でいくつかの後続反応の段階が欠かせない。それに、これらの方法の反応物混合物は複雑であり、さらに、化学量論量におけるいくつかの異なる強酸性化合物が存在している必要がある。しかしながら、多孔質のチタン含有シリケートを有する不均一系触媒を用いた本発明の方法は、単一のステップにおいて、定常条件下で、単に2つの反応物、スルホキシドと過酸化水素を反応させることによって所望のスルホンを有利な収率で得ることによって実施することができる。
【0121】
さらに、本発明は、以下の実施態様及びそれぞれの従属性によって特徴付けられる態様の組合せによって定義される:
1. スルホキシドをそれぞれのスルホンに酸化する方法であって、当該方法は、
(i)スルホキシドを触媒の存在下に過酸化水素と反応させて、スルホン及び触媒を有する混合物(M)を得る工程を含み、ここで、触媒は、触媒活性材料として多孔質のチタン含有シリケートを有する、方法。
【0122】
2. スルホキシドは、式(I)
【化13】
に従った構造を有し、かつそれぞれのスルホンは、式(II)
【化14】
に従った構造を有し、ここで、R1及びR2は、互いに無関係に、線状若しくは分枝状の、置換された若しくは非置換の、好ましくは炭素原子1〜20個を有するアルキル基、線状若しくは分枝状の、置換された若しくは非置換の、好ましくは炭素原子2〜20個を有するアルケニル基、又は置換された若しくは非置換の、好ましくは炭素原子5〜20個を有するアリール基若しくはヘテロアリール基である、態様1の方法。
【0123】
3. R1及びR2が、互いに無関係に、置換された若しくは非置換のアリール基、好ましくは置換されたアリール基である、態様2の方法。
【0124】
4. アリール基の置換基が、ハロゲン基、好ましくはF基、Cl基、Br基若しくはI基、ヒドロキシル基、線状若しくは分枝状の、好ましくは炭素原子1〜10個を有するアルキル基、線状若しくは分枝状の、好ましくは炭素原子1〜10個を有するアルキルオキシ基、線状若しくは分枝状の、好ましくは炭素原子2〜10個を有するアルケニル基、好ましくは炭素原子5〜10個を有するアリール基、好ましくは炭素原子5〜10個を有するヘテロアリール基、並びにそれらの2つ以上の組合せ物から成る群から選択され、ここで、ヘテロアリール基のヘテロ原子は、好ましくは、N、P、O及びSから成る群から選択される、態様3の方法。
【0125】
5. R1及びR2が、互いに無関係に、置換された、炭素原子5〜10個、好ましくは炭素原子6〜10個を有するアリール基であり、ここで、置換基は、好ましくはハロゲン基、より好ましくはF基、Cl基、Br基若しくはI基、又はヒドロキシル基、より好ましくはCl基又はヒドロキシル基である、態様2から4までのいずれか1つの方法。
【0126】
6. R1及びR2が、互いに無関係に、置換された、炭素原子6個を有するアリール基であり、ここで、置換基は、Cl基又はヒドロキシル基である、態様2から5までのいずれか1つの方法。
【0127】
7. スルホキシドが、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシドである、態様1から6までのいずれか1つの方法。
【0128】
8. スルホキシドが、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドである、態様1から6までのいずれか1つの方法。
【0129】
9. 触媒中に含まれる多孔質のチタン含有シリケートが、チタン及びケイ素を有するゼオライト骨格を有するチタン含有ゼオライト材料である、態様1から8までのいずれか1つの方法。
【0130】
10. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料が、さらに、Al、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Ge、In、Sn、Pb及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択された2つ以上の元素を有し、ここで、更なる元素は、好ましくはZnである、態様9の方法。
11. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、MWW型骨格構造、好ましくはMWW骨格構造である、態様9又は10の方法。
【0131】
12. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有する、態様9から11までのいずれか1つの方法。
【0132】
13. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、30〜50質量%、好ましくは35〜48質量%、より好ましくは38〜47質量%の範囲のケイ素含有率を有する、態様9から12までのいずれか1つの方法。
【0133】
14. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、0〜0.08質量%、好ましくは0〜0.05質量%の量のホウ素を有する、態様9から13までのいずれか1つの方法。
【0134】
15. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、MWW骨格構造であり、ここで、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、0.5〜3.0質量%の範囲のチタン含有率を有し、並びに、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、30〜50質量%の範囲のケイ素含有率を有する、態様9から14までのいずれか1つの方法。
【0135】
16. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、MWW骨格構造であり、ここで、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、1.0〜2.5質量%の範囲のチタン含有率を有し、並びに、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、35〜48質量%の範囲のケイ素含有率を有する、態様9から15までのいずれか1つの方法。
【0136】
17. 触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、MWW骨格構造であり、ここで、触媒中に含まれるチタン含有ゼオライト材料の骨格構造が、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、1.2〜2.2質量%の範囲のチタン含有率を有し、並びに、元素として計算して、かつチタン含有ゼオライト材料の全質量に対して、38〜47質量%の範囲のケイ素含有率を有する、態様9から16までのいずれか1つの方法。
【0137】
18. 触媒中に含まれるチタンチタン含有ゼオライト材料のMWW骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%、より好ましくは少なくとも99.5質量%、より好ましくは少なくとも99.9質量%が、Ti、Si、O及びHから成る、態様15から17までのいずれか1つの方法。
【0138】
19. (i)において用いられる過酸化水素を、過酸化水素水溶液として、好ましくは当該水溶液の全質量に対して10〜70質量%、より好ましくは15〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲の過酸化水素含有率を有するものとして用いる、態様1から18までのいずれか1つの方法。
【0139】
20. (i)に従った反応の開始時に、過酸化水素対スルホキシドのモル比が、1:1〜50:1、好ましくは2:1〜30:1、より好ましくは3:1〜10:1の範囲にある、態様1から19までのいずれか1つの方法。
【0140】
21. (i)に従った反応の開始時に、スルホキシド対チタン含有シリケート中に含まれる、好ましくはチタン含有ゼオライト材料の骨格構造中に含まれるチタンのモル比が、10:1〜500:1、好ましくは30:1〜300:1、より好ましくは50:1〜200:1の範囲にある、態様1から20までのいずれか1つの方法。
【0141】
22. (i)に従った反応を、溶媒の存在下に実施し、かつ、ここで、混合物(M)が、さらに溶媒を有する、態様1から21までのいずれか1つの方法。
【0142】
23. 溶媒が、1−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩素化炭化水素、及びそれらの2つ以上の組合せ物から成る群から選択される、態様22の方法。
【0143】
24. (i)に従った反応の開始時に、スルホキシド対溶媒のモル比が、0.01:1〜10:1、好ましくは0.1:1〜5:1、より好ましくは0.3:1〜1:1の範囲にある、態様22又は23の方法。
【0144】
25. (i)に従った反応を、少なくとも1種の不活性ガスの存在下に実施する、態様1から24までのいずれか1つの方法。
【0145】
26. 不活性ガスが、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択され、ここで、好ましくは、不活性ガスは窒素を有し、より好ましくは工業用窒素を有し、より好ましくは工業用窒素から成る、態様25の方法。
【0146】
27. (i)に従った反応を、0〜90℃、好ましくは2〜85℃、より好ましくは5〜80℃の範囲の温度で実施する、態様1から26までのいずれか1つの方法。
【0147】
28. (i)に従った反応を、最大で15bar、好ましくは最大で10barの圧力下で実施する、態様1から27までのいずれか1つの方法。
【0148】
29. (i)に従った反応を、1〜15bar、好ましくは1〜10barの範囲の圧力下で実施する、態様1から28までのいずれか1つの方法。
【0149】
30. (i)に従った反応を、バッチ方式において実施する、態様1から29までのいずれか1つの方法。
【0150】
31. (i)に従った反応を、1〜15時間、好ましくは2〜10時間、より好ましくは4〜6時間の範囲の期間にわたって実施する、態様30の方法。
【0151】
32. (i)に従った反応を、連続方式において実施する、態様1から29までのいずれか1つの方法。
【0152】
33. さらに、(ii)混合物(M)から、好ましくは濾過によって、触媒を分離する工程を有する、態様1から32までのいずれか1つの方法。
【0153】
34. さらに、(iii)混合物(M)から、好ましくは沈殿によって、式(II)に従ったスルホンを分離する工程を有する、態様1から33までのいずれか1つの方法。
【0154】
35. 触媒が噴霧粉末である、態様1から34までのいずれか1つの方法。
【0155】
36. 噴霧粉末の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、チタン含有シリケート、好ましくはチタン含有ゼオライト材料から成る、態様35の方法。
【0156】
37. 噴霧粉末が成形物中に含まれる、態様35又は36の方法。
【0157】
38. 成形物が、噴霧粉末に加えて、少なくとも1つのバインダー、好ましくはシリカバインダーを有する、態様37の方法。
【0158】
本発明を、以下の例によってさらに説明する。
【実施例】
【0159】
例1:MWW骨格構造を有するチタン含有ゼオライト材料(Ti−MWW)の製造
例1.1:ホウ素含有MWW(B−MWW)の合成
a)水熱合成
脱イオン水480kgを容器に供給した。70rpm(毎分回転数)で撹拌しながら、ホウ酸166kgを水中に懸濁させた。懸濁液をさらに3時間撹拌した。引き続き、ピペリジン278kgを添加し、かつ混合物をさらに1時間撹拌した。結果生じる溶液に、Ludox(登録商標)AS−40 400kgを添加し、かつ結果生じる混合物を、70rpmでさらに1時間撹拌した。
【0160】
この合成混合物中には、ホウ素元素として計算したホウ素源のホウ酸が、ケイ素元素として計算したケイ素源のLudox(登録商標)AS−40に対して、1:1のモル比で存在し;水が、ケイ素元素として計算したケイ素源のLudox(登録商標)AS−40に対して、10:1のモル比で存在し;かつテンプレート化合物のピペリジンが、ケイ素元素として計算したケイ素源のLudox(登録商標)AS−40に対して、1.2:1のモル比で存在していた。
【0161】
最終的に得られた混合物を、結晶化容器に移し、かつ自生圧力下及び撹拌下(50rpm)で5時間以内に175℃に加熱した。175℃の温度を、60時間ほぼ一定に保った;この60時間のあいだ、混合物を50rpmで撹拌した。引き続き、混合物を、5時間以内に50〜60℃の温度に冷却した。
【0162】
結晶化されたBMWW前駆体を含有する母液は、pH電極を用いた測定によって求めて11.3のpHを有していた。
【0163】
b)pH調整
a)において得られた母液に、10質量%のHNO3水溶液1400kgを、50rpm(毎分回転数)で撹拌しながら添加した。添加は、40℃の懸濁液の温度で実施した。10質量%のHNO3水溶液の添加後、結果生じる懸濁液を、40℃の懸濁液の温度にて、50rpmで撹拌しながら5時間さらに撹拌した。このようにpH調整した母液の、pH電極を用いた測定によって求めたpHは7であった。
【0164】
c)噴霧乾燥及び焼成
b)において得られたpH調整した母液から、B−MWW前駆体を、異なる種類の濾過装置(濾材Sefar Tetex(登録商標)Mono 24−1100−SK 012を有する吸引フィルター、遠心フィルター、キャンドルフィルター)を用いた濾過によって分離した。次いで、濾過ケーキを、洗浄水が700mS/cm未満の伝導率を有するまで、脱イオン水で洗浄した。洗浄された濾過ケーキから、15質量%の固体含有率を有する水性懸濁液を調製した。懸濁液を、以下の噴霧乾燥条件による噴霧塔内での噴霧乾燥に供した:
乾燥ガス、ノズルガス:工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口):270〜340℃
− 噴霧塔の温度(出口):150〜167℃
− フィルターの温度(入口):140〜160℃
− スクラバーの温度(入口):50〜60℃
− スクラバーの温度(出口):34〜36℃
フィルターの差圧:8.3〜10.3mbar
ノズル:
− 二成分ノズル:供給元:Gerig;サイズ:0
− ノズルガスの温度:室温
− ノズルガスの圧力:2.5bar
運転モード:窒素直流
用いた器具:1個のノズルを備えた噴霧塔
配置:噴霧塔−フィルター−スクラバー
ガス流量:1900kg/h
濾材:Nomex(登録商標)ニードルフェルト:20m2
可撓性チューブポンプによる計量供給:SP VF 15(供給元:Verder)
【0165】
噴霧塔は、2650mmの長さ、1200mmの直径を有する縦型に配置された円筒体から成っており、当該円筒体は、底部では円錐形に細くなっていた。円錐の長さは600mmであった。円筒体のヘッドには、霧化手段(二成分ノズル)を配置していた。噴霧乾燥された材料を、噴霧塔の下流のフィルターにおいて乾燥ガスから分離し、次いで乾燥ガスをスクラバーに通した。懸濁液をノズルの内側開口部に通し、かつノズルガスを、開口部を取り囲む環状スリットに通した。
【0166】
次いで、噴霧乾燥された材料を、0.8〜1.0kg/hの範囲の流量により回転焼成炉において650℃での焼成に供した。
【0167】
得られたBMWWは、1.3質量%のホウ素含有率、44質量%のケイ素含有率、及び0.1質量%未満の全有機炭素含有率(TOC)、並びにXRDによって測定した88%の結晶化度を有していた。DIN 66131に準拠した77Kでの窒素吸着によって測定したBET比表面積は468m2/gであった。
【0168】
例1.2:MWW骨格構造を有する脱ホウ素化されたゼオライト材料の製造
a)脱ホウ素化
水1590gを、還流凝縮器を備えた容器中に流した。40rpmで撹拌しながら、1.1の項目に従って得られた噴霧乾燥された材料106kgを、水中に懸濁させた。引き続き、容器を閉じ、かつ還流凝縮器を運転し始めた。撹拌速度を、70rpmで撹拌しながら70rpmに増大させ、容器の中身を10時間以内に100℃に加熱し、かつ10時間この温度で保った。次いで、容器の中身を50℃未満の温度に冷却した。結果生じる脱ホウ素化されたMWW構造型のゼオライト材料を、懸濁液から、2.5barの窒素圧下で濾過によって分離し、かつ脱イオン水で4回洗浄した。濾過後、濾過ケーキを、窒素流中で6時間乾燥した。得られた脱ホウ素化されたゼオライトは、IR(赤外)測定器を用いて160℃で測定して、80%の残留湿分を有していた。
【0169】
b)噴霧乾燥
上記a)の項目に従って得られた、80%の残留湿分を有する窒素乾燥された濾過ケーキから、水性懸濁液を、脱イオン水を用いて製造し、ここで、懸濁液は、15質量%の固体含有率を有していた。懸濁液を、以下の噴霧乾燥条件による噴霧塔内での噴霧乾燥に供した:
乾燥ガス、ノズルガス:工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口):290〜310℃
− 噴霧塔の温度(出口):140〜160℃
− フィルターの温度(入口):140〜160℃
− スクラバーの温度(入口):40〜60℃
− スクラバーの温度(出口):20〜40℃
フィルターの差圧:6.0〜10.0mbar
ノズル:
− 二成分ノズル:供給元:Nilo;直径:4mm
− ノズルガスの圧力:2.5bar
運転モード:窒素直流
用いた器具:1個のノズルを備えた噴霧塔
配置:噴霧塔−フィルター−スクラバー
ガス流量:1900kg/h
濾材:Nomex(登録商標)ニードルフェルト:20m2
可撓性チューブポンプによる計量供給:VF 15(供給元:Verder)
【0170】
噴霧塔は、2650mmの長さ、1200mmの直径を有する縦型に配置された円筒体から成っており、当該円筒体は、底部では円錐形に細くなっていた。円錐の長さは600mmであった。円筒体のヘッドには、霧化手段(二成分ノズル)を配置していた。噴霧乾燥された材料を、噴霧塔の下流のフィルターにおいて乾燥ガスから分離し、次いで乾燥ガスをスクラバーに通した。懸濁液をノズルの内側開口部に通し、かつノズルガスを、開口部を取り囲む環状スリットに通した。MWW骨格構造を有する得られた噴霧乾燥されたゼオライト材料は、0.04質量%のホウ素含有率、42質量%のケイ素含有率、及び0.1質量%未満の全有機炭素含有率(TOC)、並びにXRDによって測定した82%の結晶化度を有していた。DIN 66131に準拠した77Kでの窒素吸着によって測定したBET比表面積は462m2/gであった。
【0171】
例1.3:MWW骨格構造を有するチタン含有ゼオライト材料の製造
a)水熱合成
上で得られた脱ホウ素化されたMWW材料に基づき、チタン(Ti)を含有するMWW構造型のゼオライト材料(これ以降TiMWWと呼ぶ)を製造した。
【0172】
出発材料:脱イオン水:789g
ピペリジン:291g
オルトチタン酸テトラブチル:41.4g
脱ホウ素化されたゼオライト材料:192g
【0173】
蒸留水500gをビーカーに入れ、かつピペリジン291gを添加し、かつ混合物を5分間撹拌した。その後、オルトチタン酸テトラブチル41.4gを、撹拌しながら添加し、かつ混合物を、蒸留水289gの添加前に、30分間さらに撹拌した。さらに10分間撹拌した後、MWW材料192gを、撹拌しながら添加し、かつ懸濁液を、さらに30分間、続けて撹拌した。次いで、懸濁液をオートクレーブに移し、かつ撹拌しながら(100rpm)170℃に90分で加熱し、かつそこで48時間保った。合成の間の圧力増大分は9barである。引き続き、TiMWWを含有する得られた懸濁液を、1時間以内に50℃を下回る温度に冷却した。
【0174】
b)噴霧乾燥
得られた懸濁液を、85質量%の水の濃度を有するように水で希釈して、以下の噴霧乾燥条件による噴霧塔内での噴霧乾燥に直接供した:
乾燥ガス、ノズルガス:工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口):160〜200℃
− 噴霧塔の温度(出口):150〜170℃
− フィルターの温度(入口):150〜170℃
− スクラバーの温度(入口):30〜50℃
− スクラバーの温度(出口):30〜50℃
フィルターの差圧:6.0〜10.0mbar
ノズル:
− 二成分ノズル:供給元:Nilo;直径:4mm
− ノズルガスの圧力:1.5bar
運転モード:窒素直流
用いた器具:1個のノズルを備えた噴霧塔
配置:噴霧塔−フィルター−スクラバー
ガス流量:1800kg/h
濾材:PEとPTF膜、表面積1.13m2
可撓性チューブポンプによる計量供給:SP VF 15(供給元:Verder)
【0175】
噴霧塔は、2650mmの長さ、1200mmの直径を有する縦型に配置された円筒体から成っており、当該円筒体は、底部では円錐形に細くなっていた。円錐の長さは600mmであった。円筒体のヘッドには、霧化手段(二成分ノズル)を配置していた。噴霧乾燥された材料を、噴霧塔の下流のフィルターにおいて乾燥ガスから分離し、次いで乾燥ガスをスクラバーに通した。懸濁液をノズルの内側開口部に通し、かつノズルガスを、開口部を取り囲む環状スリットに通した。
【0176】
例1.4:MWW骨格を有するチタン含有ゼオライト材料(TiMWW)の酸処理
a)酸処理
上で得られた噴霧乾燥されたTiMWW材料を、以下に記載した酸処理に供した:
出発材料:脱イオン水:1885g
硝酸(65%)(水と混合して10質量%になる):365g
例1.3に従った噴霧乾燥されたTiMWW:50g
脱イオン水1885gを容器に入れた。硝酸365gを添加し、かつ噴霧乾燥されたTiMWW50gを、撹拌しながら添加した。容器中の混合物を100℃に加熱し、かつ自生圧力下で撹拌しながら(250rpm)1時間この温度で保った。次いで、このようにして得られた混合物を、1時間以内に50℃未満の温度に冷却した。冷却された混合物を、濾過に供し、かつ濾過ケーキを4Lの水で洗浄した。濾過後、濾過ケーキを、炉内で120℃にて10時間乾燥した。
【0177】
b)焼成
次いで、乾燥された材料を、650℃で5時間焼成に供した(加熱速度2K/分)。
【0178】
焼成された材料は、44質量%のケイ素含有率、1.7質量%のチタン含有率、及び0.1質量%未満の全有機炭素含有率を有していた。DIN 66131に準拠した77Kでの窒素吸着によって測定したラングミュア表面積は584m2/gであり、DIN 66131に準拠した77Kでの窒素吸着によって測定した多点BET法による比表面積は432m2/gであった。XRDによって測定した結晶化度は84%であり、結晶子の平均的な大きさは29.0nmであった。
【0179】
例2:例1に従って得られたTiMWWを用いることによる4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド(DCDPSO)のH22による酸化
氷で冷却されたガラスオートクレーブ中に、例1(1.4)に従って得られたTiMWW0.5gを入れ、その後に、別個に製造した1−メチル−2−ピロリドン60g及びDCDPSO(Sigma−Aldrich社より市販されている、CAS 3085−42−5)5.0gの溶液を添加した。これは、得られた懸濁液の全量に対して約0.8質量%のTiMWW触媒に相当する。反応体の添加後、オートクレーブを閉じ、かつ窒素でフラッシングした。懸濁液を、マグネチックスターラーにより700rpmで撹拌し、かつオートクレーブを8℃に加熱した。オートクレーブ温度が8℃の反応温度に達したら、過酸化水素水溶液10g(水中35質量%)をオートクレーブ中にポンプ供給した。過酸化水素の添加後、反応混合物を連続的に5時間撹拌した。引き続き、オートクレーブを開き、かつ触媒を濾過によって除去し、かつ反応混合物をGC及びGC−MSによって分析した。
【0180】
例2において得られたDCDPSOの転化率及びDCDPS(4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)の選択率(%)を、下記の表1にまとめている。転化率及び選択率は、GC分析に基づき、下記の表1に示される式に従って計算した。0.25mmの内径IDを有する30mのCP Sil 8カラムを、分析のために用いた。
【0181】
例3:例1に従って得られたTiMWWを用いることによる4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド(DCDPSO)のH22による酸化
氷で冷却されたガラスオートクレーブ中に、例1(1.4)に従って得られたTiMWW0.5gを入れ、その後に、別個に製造した1−メチル−2−ピロリドン60g及びDCDPSO(Sigma−Aldrich社より市販されている、CAS 3085−42−5)5.0gの溶液を添加した。これは、得られた懸濁液の全量に対して約0.8質量%のTiMWW触媒に相当する。反応体の添加後、オートクレーブを閉じ、かつ窒素でフラッシングした。懸濁液を、マグネチックスターラーにより700rpmで撹拌し、かつオートクレーブを50℃に加熱した。オートクレーブ温度が50℃の反応温度に達したら、過酸化水素水溶液10g(水中35質量%)をオートクレーブ中にポンプ供給した。過酸化水素の添加後、反応混合物を連続的に5時間撹拌した。引き続き、オートクレーブを開き、かつ触媒を濾過によって除去し、かつ反応混合物をGC及びGC−MSによって分析した。
【0182】
例3において得られたDCDPSOの転化率及びDCDPS(4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)の選択率(%)を、下記の表1にまとめている。転化率及び選択率は、GC分析に基づき、下記の表1に示される式に従って計算した。0.25mmの内径IDを有する30mのCP Sil 8カラムを、分析のために用いた。
【0183】
例4:例1に従って得られたTiMWWを用いることによる4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド(DCDPSO)のH22による酸化
氷で冷却されたガラスオートクレーブ中に、例1(1.4)に従って得られたTiMWW0.5gを入れ、その後に、別個に製造した1−メチル−2−ピロリドン60g及びDCDPSO(Sigma−Aldrich社より市販されている、CAS 3085−42−5)5.0gの溶液を添加した。これは、得られた懸濁液の全量に対して約0.8質量%のTiMWW触媒に相当する。反応体の添加後、オートクレーブを閉じ、かつ窒素でフラッシングした。懸濁液を、マグネチックスターラーにより700rpmで撹拌し、かつオートクレーブを70℃に加熱した。オートクレーブ温度が70℃の反応温度に達したら、過酸化水素水溶液10g(水中35質量%)をオートクレーブ中にポンプ供給した。過酸化水素の添加後、反応混合物を連続的に5時間撹拌した。引き続き、オートクレーブを開き、かつ触媒を濾過によって除去し、かつ反応混合物をGC及びGC−MSによって分析した。
【0184】
例4において得られたDCDPSOの転化率及びDCDPS(4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)の選択率(%)を、下記の表1にまとめている。転化率及び選択率は、GC分析に基づき、下記の表1に示される式に従って計算した。0.25mmの内径IDを有する30mのCP Sil 8カラムを、分析のために用いた。
【0185】
例5:例1に従って得られたTiMWWを用いることによる4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド(DCDPSO)のH22による酸化
氷で冷却されたガラスオートクレーブ中に、例1(1.4)に従って得られたTiMWW1.0gを入れ、その後に、別個に製造した1−メチル−2−ピロリドン60g及びDCDPSO(Sigma−Aldrich社より市販されている、CAS 3085−42−5)5.0gの溶液を添加した。これは、得られた懸濁液の全量に対して約1.5質量%のTiMWW触媒に相当する。反応体の添加後、オートクレーブを閉じ、かつ窒素でフラッシングした。懸濁液を、マグネチックスターラーにより700rpmで撹拌し、かつオートクレーブを70℃に加熱した。オートクレーブ温度が70℃の反応温度に達したら、過酸化水素水溶液10g(水中35質量%)をオートクレーブ中にポンプ供給した。過酸化水素の添加後、反応混合物を連続的に5時間撹拌した。引き続き、オートクレーブを開き、かつ触媒を濾過によって除去し、かつ反応混合物をGC及びGC−MSによって分析した。
【0186】
例5において得られたDCDPSOの転化率及びDCDPS(4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)の選択率を、下記の表1にまとめている。転化率及び選択率は、GC分析に基づき、下記の表1に示される式に従って計算した。0.25mmの内径IDを有する30mのCP Sil 8カラムを、分析のために用いた。
【0187】
例6:例1に従って得られたTiMWWを用いることによる4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド(DCDPSO)のH22による酸化
氷で冷却されたガラスオートクレーブ中に、例1(1.4)に従って得られたTiMWW1.0gを入れ、その後に、別個に製造した1−メチル−2−ピロリドン60g及びDCDPSO(Sigma−Aldrich社より市販されている、CAS 3085−42−5)5.0gの溶液を添加した。これは、得られた懸濁液の全量に対して約0.8質量%のTiMWW触媒に相当する。反応体の添加後、オートクレーブを閉じ、かつ窒素でフラッシングした。懸濁液を、マグネチックスターラーにより700rpmで撹拌し、かつオートクレーブを70℃に加熱した。オートクレーブ温度が70℃の反応温度に達したら、過酸化水素水溶液7g(水中35質量%)をオートクレーブ中にポンプ供給した。過酸化水素の添加後、反応混合物を連続的に5時間撹拌した。引き続き、オートクレーブを開き、かつ触媒を濾過によって除去し、かつ反応混合物をGC及びGC−MSによって分析した。
【0188】
例6において得られたDCDPSOの転化率及びDCDPS(4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)の選択率(%)を、下記の表1にまとめている。転化率及び選択率は、GC分析に基づき、下記の表1に示される式に従って計算した。0.25mmの内径IDを有する30mのCP Sil 8カラムを、分析のために用いた。
【0189】
例7:例1に従って得られたTiMWWを用いることによる4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド(DCDPSO)のH22による酸化
氷で冷却されたガラスオートクレーブ中に、例1(1.4)に従って得られたTiMWW0.5gを入れ、その後に、別個に製造したテトラヒドロフラン60g及びDCDPSO(Sigma−Aldrich社より市販されている、CAS 3085−42−5)5.0gの溶液を添加した。これは、得られた懸濁液の全量に対して約0.8質量%のTiMWW触媒に相当する。反応体の添加後、オートクレーブを閉じ、かつ窒素でフラッシングした。懸濁液を、マグネチックスターラーにより700rpmで撹拌し、かつオートクレーブを50℃に加熱した。オートクレーブ温度が50℃の反応温度に達したら、過酸化水素水溶液10g(水中35質量%)をオートクレーブ中にポンプ供給した。過酸化水素の添加後、反応混合物を連続的に5時間撹拌した。引き続き、オートクレーブを開き、かつ触媒を濾過によって除去し、かつ反応混合物をGC及びGC−MSによって分析した。
【0190】
例7において得られたDCDPSOの転化率及びDCDPS(4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)の選択率(%)を、下記の表1にまとめている。転化率及び選択率は、GC分析に基づき、下記の表1に示される式に従って計算した。0.25mmの内径IDを有する30mのCP Sil 8カラムを、分析のために用いた。
【0191】
【表1】
【0192】
DCDPSOの転化率は、以下の式に基づいて計算した:
転化率(%)=100−(反応後の(DCDPSO)モル/導入された(DCDPSO)モル)×100
【0193】
DCDPSの選択率は、以下の式IIに基づいて計算した:
選択率(%)=(反応後の(DCDPS)モル/消費された(DCDPSO)モル)×100