特許第6385443号(P6385443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385443SEMにおける向上した試料アクセスのためのノッチ付き磁気レンズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385443
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】SEMにおける向上した試料アクセスのためのノッチ付き磁気レンズ
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/141 20060101AFI20180827BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20180827BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01J37/141 A
   H01J37/252 A
   H01J37/28 B
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-544052(P2016-544052)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公表番号】特表2016-534537(P2016-534537A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】US2014056832
(87)【国際公開番号】WO2015042545
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】61/881,351
(32)【優先日】2013年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/490,565
(32)【優先日】2014年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ クリストファー エム
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−036261(JP,A)
【文献】 特開平08−124512(JP,A)
【文献】 特開昭60−091544(JP,A)
【文献】 特開平07−226180(JP,A)
【文献】 特開2002−42713(JP,A)
【文献】 特開平7−134964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/00−37/02
37/05
37/09−37/18
37/21
37/24−37/244
37/252−37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
荷電粒子の一次ビームを発生させ、前記一次ビームを標的上へ集束させるように構成される荷電粒子光学カラムを備え、前記荷電粒子光学カラムは、磁気液浸レンズを含み、前記磁気液浸レンズは、外側極片及び内側極片を有し、それらの間には間隙があり、前記外側極片は、前記標的からのエネルギー粒子が前記外側極片を通って外部検出器に渡ることを可能にする開口部を有し、前記内側または外側極片は、前記間隙に近接する1つ以上のノッチを有する、
システム。
【請求項2】
前記1つ以上のノッチは、前記荷電粒子カラムの前記軸に対して軸対称パターンで配設される2つ以上のノッチを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ以上のノッチは、前記荷電粒子カラムの前記軸に対して軸対称パターンで配設される3つ以上のノッチを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のノッチは、前記荷電粒子カラムの前記軸に対して軸対称パターンで配設される4つ以上のノッチを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ノッチは、前記液浸レンズを駆動するために必要とされる電力を1%以上増加させることなく、前記検出器デバイスの前記標的への所望のアクセスを提供するのに十分大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記外側極片は、前記間隙に近接するいくつかのノッチを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記内側極片は、前記間隙に近接するいくつかのノッチを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記内側極片及び前記外側極片はどちらも、前記間隙に近接するいくつかのノッチを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記間隙は、半径方向の間隙である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記間隙は、軸方向の間隙である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記外部検出器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記外部検出器は、X線検出器である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記荷電粒子光学カラムは、電子の一次ビームを発生させ、前記電子の一次ビームを前記標的上へ集束させるように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
磁気液浸レンズ装置であって、
外側極片及び内側極片を備え、それらの間には間隙があり、前記外側極片は、前記液浸レンズの前方の標的からのエネルギー粒子が前記外側極片を通って外部検出器に渡ることを可能にする開口部を有し、前記外側または内側極片は、前記間隙に近接する1つ以上のノッチを有する、
磁気液浸レンズ装置。
【請求項15】
前記1つ以上のノッチは、荷電粒子カラムの軸に対して軸対称パターンで配設される2つ以上のノッチを含む、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項16】
前記1つ以上のノッチは、荷電粒子カラムの軸に対して軸対称パターンで配設される4つ以上のノッチを含む、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項17】
前記ノッチは、前記液浸レンズを駆動するために必要とされる電力を1%以上増加させることなく、前記検出器の前記標的への所望のアクセスを提供するのに十分大きい、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項18】
前記外側極片は、前記間隙に近接するいくつかのノッチを有する、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項19】
前記内側極片は、前記間隙に近接するいくつかのノッチを有する、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項20】
前記内側極片及び前記外側極片はどちらも、前記間隙に近接するいくつかのノッチを有する、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項21】
前記間隙は、半径方向の間隙である、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項22】
前記間隙は、軸方向の間隙である、請求項14に記載の磁気液浸レンズ装置。
【請求項23】
磁気液浸レンズのための外側極片であって、前記外側極片は、前記液浸レンズの前方の標的からのエネルギー粒子が前記外側極片を通って外部検出器に渡ることを可能にする開口部を有し、前記外側極片は、中央開口に近接する1つ以上のノッチを有する、
磁気液浸レンズのための外側極片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Christopher M.Searsの2013年9月23日に出願された「NOTCHED RADIAL GAP MAGNETIC LENS FOR IMPROVED SAMPLE ACCESS IN AN SEM」に対する、共同所有で同時係属の米国仮特許出願第61/881,351号の本出願であり、その優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明の実施形態は、電子顕微鏡検査に関し、より具体的には、電子顕微鏡検査のための一般的な磁気液浸レンズの修正物に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー分散型X線分光法(EDS、EDX、またはXEDS)は、あるときにはエネルギー分散型X線分析(EDXA)またはエネルギー分散型X線微量分析(EDXMA)と呼ばれ、試料の元素分析または化学的特徴付けに使用される分析手法である。この手法は、いくつかのX線励起源と試料との相互作用に依存する。その特徴付け能力は、主に、各元素が固有の原子構造を有し、そのX線スペクトル上に固有の1組のピークを許容するという、基本原理によるものである。
【0004】
EDSシステムは、全般的に、励起源(例えば、電子ビームまたはX線ビーム)と、X線検出器と、パルスプロセッサと、分析器とを含む。X線検出器は、収集したX線エネルギーを、次にパルスプロセッサに送られる電圧信号に変換するために使用される。パルスプロセッサは、信号を測定し、そして、データの表示及び分析のために、該信号を分析器に渡す。最も一般的な検出器は、液体窒素によって極低温に冷却されるSi(Li)検出器である。また、ペルチェ冷却システムを有するシリコンドリフト検出器(SDD)も使用される。
【0005】
具体的には、試料からの固有X線の放出を促進するために、(例えば、粒子励起X線放出またはプロトン励起X線(PIXE)における)電子もしくは陽子等の荷電粒子の高エネルギービーム、またはX線のビームを、研究している試料に集束させる。安静時に、試料内の原子は、離散的なエネルギー準位の基底状態(または非励起状態)の電子、または核に結合される電子殻を含む。入射ビームは、内殻の電子を励起し得、該電子を殻から追い出し、一方で、電子があった場所に電子孔を作り出す。次いで、外側のより高いエネルギーの殻からの電子がその孔を満たし、より高いエネルギーの殻とより低いエネルギーの殻とのエネルギーの差が、X線の形態で放出され得る。試験片から放出されるX線の数及びエネルギーは、エネルギー分散型分光計で測定することができる。X線のエネルギーは、2つの殻間のエネルギーの差の特性、及びX線が放出された元素の原子構造の特性であるので、そのことは、試験片の元素組成を測定することを可能にする。
【0006】
走査型電子顕微鏡(SEM)システムは、しばしば、試料に近接する電子光学カラムの前方に、磁気液浸レンズを有する。磁気液浸レンズは、一般的に、電子光学カラムの中心軸を中心に回転対称の2つの極片を有する。磁場は、1つ以上の対の通電コイルによって極片において生成される。2つの極片の間には間隙があり、該極片は、磁気回路を形成する。この間隙の近くの領域の漏れ磁場は、光学カラムからの電子を集束または偏向させる。標的から放出されたX線は、この間隙を通ってX線検出器に渡ることができる。SEMシステムでは、試料から放出されるX線へのアクセスを増加させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0153782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
試料へのアクセスを増加させるための従来の方法は、試料をレンズからさらに遠く離すこと、またはレンズ極片間の間隙を増大させることを含む。試料へのアクセスを増加させるこれらの方法のそれぞれには、不利な点を有する。試料を遠ざけることは、電子スポットのサイズを増大させ、したがって、解像度を低下させる。磁極片間の間隙を増大させることは、回路の磁気抵抗を増大させ、したがって、同じ磁場を達成するためにより多くの電流を必要とする。その結果、レンズ内の熱放散を増大させ、システムの性能にさらなる悪影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
こうした背景において、本開示の態様が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の態様は、荷電粒子の一次ビームを発生させ、該一次ビームを標的上へ集束させるように構成される荷電粒子光学カラムを有するシステムを含む。このカラムの前方には、磁気液浸レンズが提供される。この液浸レンズは、外側極片及び内側極片を有し、それらの間には第1及び第2の極片の共通軸に近接する間隙がある。外側極片は、標的からのエネルギー粒子が外側極片を通って外部検出器に渡ることを可能にする開口部を有する。内側または外側極片は、間隙に近接する1つ以上のノッチを有し、該ノッチは、エネルギー粒子が標的からそこを通って外部検出器に渡ることができる受容円錐を拡大する少なくとも1つのノッチを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、1つ以上のノッチは、荷電粒子カラムの軸に対して軸対称パターンで配設される2つ以上のノッチを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、1つ以上のノッチは、荷電粒子カラムの軸に対して軸対称パターンで配設される3つ以上のノッチを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、1つ以上のノッチは、荷電粒子カラムの軸に対して軸対称パターンで配設される4つ以上のノッチを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、ノッチは、液浸レンズを駆動するために必要とされる電力を1%以上増加させることなく、検出器デバイスの標的への所望のアクセスを提供するのに十分に大きく作製され得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、外側極片は、間隙に近接するいくつかのノッチを有し得る。他の実施形態において、内側極片は、間隙に近接するいくつかのノッチを有し得る。さらに他の実施形態において、内側極片及び外側極片はどちらも、間隙に近接するいくつかのノッチを有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、間隙は、半径方向の間隙であり得る。他の実施形態において、間隙は、軸方向の間隙であり得る。
【0017】
システムはさらに、随意に、外部検出器を備え得る。いくつかのそのような実施形態において、外部検出器は、X線検出器であり得る。ある特定の実施形態において、荷電粒子光学カラムは、電子の一次ビームを発生させ、該電子の一次ビームを標的上へ集束させるように構成され得る。
【0018】
本発明の他の態様によれば、磁気液浸レンズ装置は、外側極片及び内側極片を含み得、それらの間には極片の共通軸に近接する間隙がある。外側極片は、液浸レンズの前方の標的からのエネルギー粒子が外側極片を通って外部検出器に渡ることを可能にする開口部を有する。外側または内側極片は、間隙に近接する1つ以上のノッチを有し、該ノッチは、エネルギー粒子が標的からそこを通って外部検出器に渡ることができる受容円錐を拡大する少なくとも1つのノッチを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、1つ以上のノッチは、荷電粒子カラムの軸に対して軸対称パターンで配設される2つ以上または4つ以上のノッチを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、ノッチは、液浸レンズを駆動するために必要とされる電力を1%以上増加させることなく、検出器デバイスの標的への所望のアクセスを提供するのに十分大きくなり得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、外側極片は、間隙に近接するいくつかのノッチを有する。他の実施形態において、内側片は、間隙に近接するいくつかのノッチを有する。さらに他の実施形態において、内側極片及び外側極片はどちらも、間隙に近接するいくつかのノッチを有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、間隙は、半径方向の間隙である。他の実施形態において、間隙は、軸方向の間隙である。
【0023】
他の態様によれば、磁気液浸レンズのための外側極片は、液浸レンズの前方の標的からのエネルギー粒子が外側極片を通って外部検出器に渡ることを可能にする開口部を有する。外側極片は、中央開口に近接する1つ以上のノッチを有し、該ノッチは、エネルギー粒子が標的からそこを通って外部検出器に渡ることができる受容円錐を拡大する少なくとも1つのノッチを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の目的及び利点は、以下の詳細な説明を読み、添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
図1A】エネルギー分散型X線(EDX)システムの形態の、本開示の一態様による荷電粒子ビームシステムの実施例を例示する図である。
図1B】エネルギー分散型X線(EDX)システムの形態の、本開示の一態様による荷電粒子ビームシステムの実施例を例示する図である。
図2】本開示の態様に従う荷電粒子ビームシステムのための磁気液浸レンズの一部分の拡大図を例示する図である。
図3A】本開示の態様に従う磁気液浸レンズの一部分の底面図である。
図3B】本開示の態様に従う磁気液浸レンズの一部分の側面図である。
図4A】本開示の態様に従う磁気液浸レンズの内部の3次元1/4断面図である。
図4B図4Aの磁気液浸レンズの底面図である。
図5A】本開示の態様に従う磁気液浸レンズの開口部に沿った3次元図である。
図5B】本開示の態様に従う磁気液浸レンズの開口部に沿った3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、本発明が実践され得る具体的な実施形態が実例として示される添付図面に対して参照が行われる。図面は、実施形態の実施例に従う実例を示し、該実施形態はまた、本明細書において「実施例」とも称される。図面は、当業者が本主題を実践することを可能にするように十分詳細に説明される。実施形態は、特許請求される範囲から逸脱することなく、組み合わせることができ、他の実施形態を利用することができ、または構造的、理論的、及び電気的変更を行うことができる。これに関して、「頂部」、「底部」、「前方」、「後方」、「先頭」、「最後尾」等の方向を示す用語は、説明されている図面(複数可)の配向を参照して使用される。本発明の実施形態の構成要素は、いくつかの異なる配向で位置付けることができるので、方向を示す用語は、例示の目的で使用され、いかなる場合も限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得ること、または構造的もしくは論理的な変更が行われ得ることを理解されたい。
【0026】
この文書において、「1つの(「a」及び「an」)」という用語は、特許文献においてよく見られるように、1つまたは1以上を含むために使用される。本文書において、「または(「or」)」という用語は、非排他的な「または」を指すために使用され、よって、別途指示されない限り、「AまたはB」は、「AだがBではない」、「BだがAではない」、及び「A及びB」を含む。したがって、以下の詳細な説明は、限定的なものととらえるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0027】
本発明で使用するとき、「光(light)」という用語は、全般的に、約1ナノメートル(10−9メートル)〜約100ミクロンの真空波長の範囲におおよそ相当する、赤外線から紫外線にわたる周波数の範囲のどこかの周波数によって特徴付けられる電磁放射線を指す。
【0028】
図1A及び図1Bは、本開示のある特定の態様を組み込む、荷電粒子ビームシステム100の実施例を例示する。この非限定的な実施例において、システム100は、電子供給源115と、ビーム光学要素135と、外側極片104A及び内側極片104Bを有する液浸レンズ104とを伴う荷電粒子光学カラム102を有する走査型電子顕微鏡(SEM)として構成される。光学カラム102は、以下ビーム駆動装置と称される、電子機器136によって制御され得る。ビーム駆動装置136は、電子供給源115、ビーム光学要素135、及び液浸レンズ104を制御し得る。本実施例において、ビーム光学系135は、供給源115から電子を抽出し、該電子を標的101の方向に進行する一次ビーム103に形成するために電場を生成する電圧に維持される、2つ以上の電気伝導シリンダを含む。液浸レンズ104は、一次ビームを標的の表面の狭幅スポットの中へ集束させる。
【0029】
電子ビームカラム102からの電子は、標的101の表面へ集束され、該標的は、集積回路ウエハまたは試験ウエハであり得る。標的101は、ステージ118によって支持される。電子は、例えば1つ以上の静電偏向板106によって提供される場を偏向させる磁石によって、標的101の表面全体にわたって走査され得る。電圧は、ビーム走査器駆動装置108を介して、偏向板106に提供される。いくつかの実施形態において、ビーム走査器駆動装置108は、電流を磁気コイルに印加して、標的101全体にわたって電子ビームを走査し得る。代替的に、ステージ118は、光学カラム102に対して1つ以上の方向で、標的101の表面に平行なX−Y平面に沿って標的を移動させるように構成される、ステージ走査機構111及びステージ走査器駆動装置119を含み得る。いくつかの実施形態において、ステージ走査機構111及びステージ走査器駆動装置119は、ビーム走査器駆動装置108がある方向(例えば、Y方向)にビームを走査するときに、ステージを異なる方向(例えば、X方向)に移動させ得る。代替的に、ステージ走査器駆動装置119は、光学カラム102に対してX及びYの両方向にステージを駆動して、標的全体にわたってビームを走査し、一方で、ビームが光学カラムに対して固定された状態を維持し得る。
【0030】
標的101に当たった電子は、後方散乱するか、または二次放出を開始する。電子ビームカラムは、標的101の表面から現れるそのような後方散乱した、または二次電子117(または他の二次粒子)を収集する。二次粒子117のいくつかは、電子ビームカラムを通って逆に進行し、内部の二次粒子検出器110に衝突し得、後方散乱または二次放出の量に比例する二次信号を発生させる。
【0031】
他のタイプの二次粒子117も標的101から放出され、外部検出器140によって収集され得る。例えば、固有X線は、電子ビームが標的から内殻電子を取り除いたときに、より高いエネルギーの電子にその殻を満たさせ、エネルギーを放出させる。外部検出器140の受容円錐142内にあるこれらの固有X線は、外部検出器によって収集され、該外部検出器は、収集した粒子エネルギーを電圧信号に変換する。信号は、標的101の中の多数の元素の組成の識別及び測定のために、増幅器112によって増幅され、分析器116によって分析され得る。標的101での一次ビーム103の電子のランディングエネルギーは、一次ビームによって励起される標的の元素の所望の固有X線ラインに応じて、約3000電子ボルト(3keV)〜約30,000電子ボルト(30keV)であり得る。
【0032】
外側極片104A及び内側極片104Bは、共通軸に対して実質的に対称であり、該共通軸は、図1Aに示される実施例において、光学カラム102の対称軸zでもある。軸対称からのいくらかの変動は、本開示の範囲内である。具体的には、極片の機械加工のある段階中に、極片は、旋盤で旋削され得、ある許容度の範囲内で旋盤の軸に対して対称であるとみなすことができる極片をもたらす。加えて、その後の機械加工は、数学的な感覚でこの軸に対して若干非対称的である一方または双方の極片をもたらし得る。例えば、本開示の態様によれば、外側極片104Aは、受容円錐142の中の二次粒子117が外側極片を通って外部検出器140に渡ることを可能にするための開口部を含み得る。しかしながら、外側極片104Aの一方だけにそのような開口部を形成することは、極片の共通対称軸を変化させない。
【0033】
代替の実施形態では、電子以外のエネルギー粒子(例えば、イオン、中性子、紫外放射線、またはX線)の供給源が、システムの性質に応じて、電子供給源115の代替物として使用され得る。一例として、限定を目的とするものではないが、電子ビーム励起は、電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、及び走査型透過電子顕微鏡(STEM)で使用され、X線ビーム励起は、X線蛍光(XRF)分光計で使用される。
【0034】
図1Bのブロック図に示されるように、分析器116は、コントローラ120の一部であり得る。コントローラ120は、自己内蔵型マイクロコントローラであり得る。代替的に、コントローラ120は、中央プロセッサユニット(CPU)122と、メモリ124(例えば、RAM、DRAM、ROM、及び同類のもの)と、電力供給源121、入力/出力(I/O)機能123、時計126、キャッシュ134、及び同類のもの等のよく知られているサポート回路128とを含むように構成され、制御システムバス130に連結される、汎用コンピュータであり得る。メモリ124は、システム100の性能を促進するためにCPU122が実行する命令を含み得る。メモリ124の中の命令は、プログラムコード125の形態であり得る。コード125は、例えば、供給源115によって生成される電子ビームの電圧及び電流、ビーム光学系135及び液浸レンズ104によるビームの集束、コイル106による電子ビームの走査、ステージ走査器111によるステージ118の走査、及び検出器110からの信号による画像の形成を従来の様式で制御し得る。コード125はまた、画像の分析も実現し得る。
【0035】
コード125は、アセンブリ、C++、JAVA(登録商標)、またはいくつかの他の言語等の、いくつかの異なるプログラミング言語のうちのいずれか1つに従い得る。コントローラ120はまた、制御システムバス130に連結され得る随意の大容量記憶デバイス132、例えば、CD−ROM、ハードディスク、及び/またはリムーバブル記憶装置、フラッシュメモリ、及び同類のものも含み得る。コントローラ120は、随意に、操作者(図示せず)からの入力の受け取りを提供する、CPU122に連結される、キーボード、マウス、または光ペン等のユーザインターフェース127を含み得る。コントローラ120はまた、随意に、プロセッサユニット122の制御下でグラフィック表示及び/または英数字の形態で情報を操作者に提供するための表示ユニット129も含み得る。表示ユニット129は、例えば、陰極線管(CRT)またはフラットスクリーンモニタであり得る。
【0036】
コントローラ120は、メモリ124によって記憶され、取り出されるデータ及びプログラムコードに応答して、I/O機能123を通して、撮像デバイス走査器駆動装置108、電子ビーム駆動装置135、二次検出器110、Xデイ検出器140、または増幅器112と信号を交換し得る。コントローラ120の構成または選択に応じて、走査器駆動装置108、検出器110、及び/または増幅器112は、調整回路を介してI/O機能123とインターフェースし得る。調整回路は、例えばコード125内に、ハードウェアまたはソフトウェアの形態で実現され得る。
【0037】
図2は、本開示の態様に従う図1Aの液浸レンズ104の一部分の拡大図を例示する。液浸レンズ104は、標的101に近接する電子光学カラム102(図2に図示せず)の前方に提供される。液浸レンズ104は、2つの透磁性軸対称極片、すなわち、外側極片104A及び内側極片104Bを有する。本明細書で使用するとき、「外側極片」という用語は、標的101に最も近い極片を指し、「内側極片」という用語は、他の極片を指す。あるときには、「前方極片」及び「後方極片」という用語が、それぞれ外側極片及び内側極片を指すために使用される。一例として、限定を目的とするものではないが、極片104A及び104Bは、軟鉄で作製される。液浸レンズ104はまた、極片104A及び104Bのそれぞれに磁場を生成するために、極片の内側に1対の通電コイル150(例えば、銅線のコイル)も含む。軸対称漏れ磁場は、内側極片と外側極片との間の間隙gによる磁束漏れの結果として、標的101の近くに生成される。間隙gは、(図4A〜4B及び図5A〜5Bに示されるような)半径方向の間隙または図1Aに示されるような軸方向の間隙のいずれか、または例えば図2及び図3A〜3Bに示されるような、半径方向及び軸方向の間隙のある組み合わせであり得る。磁場は、一次ビーム103の中の荷電粒子を標的101上へ集束させる。2つの極片間の間隙gはまた、X線または標的から放出される他の二次粒子117が、外部検出器140に向かって通過することも可能にする。
【0038】
外側極片140Aは、標的101からの二次粒子117が外側磁極104Aを通って外部検出器140の中へ渡ることを可能にする開口部144を含む。本開示の一態様によれば、外側極片104Aは追加的に、図3Aに示されるように、間隙gに近接するいくつかのノッチ302を有する。ノッチ302は、受容円錐142を増大させて、外部検出器140による標的のより良好な視認、及びクリッピングの低減を可能にする。図3Aは、図2の液浸レンズ104の一部分の底面図であり、図3Bは、側面図である。図3Aに示される実施例において、外側極片104Aは、極片の対称軸の近くに4つのノッチ302を有する。外側極片の磁気材料の一部分は、ノッチを形成するために、焦点から投射される円錐として切り取られる。一例として、限定を目的とするものではないが、ノッチ302は、放電加工機械(EDM)及び/またはCNC機械によって形成され得る。他の実施形態において、ノッチ302は、内側極片104Bにおいて、または内側極片104A及び外側極片104Bの双方において切り取ることができる。いくつかの実施形態において、ノッチ302は、円錐形状である。
【0039】
これらのノッチ302は、外部検出器140による、標的のより大きい視認円錐142を可能にする。いくつかの実施形態において、ノッチは、所望のアクセスを提供するのに十分に大きいが、レンズを駆動するために必要とされる電力を約1%以上増加させるほど大きくないようにサイズ決定される。一例として、限定を目的とするものではないが、円錐形状のノッチ302のサイズは、(図3Aで示されるように)深さが約20mm、及び外側極片104Aの前方で幅が約6mmであり得る。外側極片104Aの中央の元々の(すなわち、ノッチのない)開口(図3Aの304)の半径は、約8mmである。
【0040】
従来の実践例は、出口開口に近接する磁気液浸レンズのための極片の回転対称性を厳密に維持するためのものである。開口304に近接する内側または外側極片におけるノッチの存在は、当業者による慣例に反する方法で回転対称性を壊す。しかしながら、この一般通念に反して、ノッチが比較的弱いまたは容易に修正可能な混乱をビームに誘導する場合には、極片にノッチを配置することが有利であることが分かる。1つのノッチ302は、ビームをシフトする双極子項を導入する。これは、ビームシフトが大き過ぎない場合に、偏向板106を使用して修正され得る。2つのノッチ302は、非点収差を生じさせる四重極摂動項を導入する。しかしながら、非点収差は、四重極摂動が大き過ぎない場合に、適切に構成されたビーム光学系135によって修正され得る。3つのノッチは、標的において3つ葉のクローバーのように見える一次ビームスポットを作製する、六重極摂動を導入する。より多くのノッチが加えられると、より高次の摂動項がより弱くなり、したがって、他の収差によって不明瞭になる傾向がある。いくつかの実施形態では、修正に対するあらゆる必要性を排除するために、最低4つのノッチが外側極片104Aに加えられ得る。
【0041】
図4A〜5Bに示される3次元図は、外側極片104Aにおけるノッチ302及び開口部144の相対的な構成を例示する。図4Aでは、本開示の態様に従う磁気液浸レンズ104の外側極片104Aには、4つの円錐形状のノッチが形成される。本実施例において、液浸レンズ104は、市販の電子ビームウエハ欠陥検査システム及び分類システムから改良した。図4Bは、図4Aの底面図である。図4A〜4Bに例示される実施例において、X線検出器は、ウエハ平面から約3mmの作動距離及び5°の半角によって提供され得る。レンズの軸の近くの外側極片の一部分は、4つ葉のクローバーに類似するパターンで4つのノッチを形成するように切り抜かれる。図4Aで示されるように、側壁には楕円形の穴が形成される。八重極項におけるレンズの磁気抵抗のいかなる顕著な増加も観察されなかった。
【0042】
図5A〜5Bは、本開示の態様に従う液浸レンズの開口部144を通した3次元図である。いくつかの実施形態において、液浸レンズは、市販の電子ビームウエハ欠陥検査システム及び分類システムから改良される。図5Aに大まかに示される図は、図3Bの受容円錐142の上部の破線に沿った図に対応する。図5Bに大まかに示される図は、図3Bの受容円錐142の下部の破線に沿った図に対応する。球体は、2つの異なる作動距離z=−2.3mm及び−3.4mmで、標的101と一次ビームの光軸とが交差する所に位置する。作動距離zは、外側極片の前方と標的との間で軸に沿って測定される。両球体は、図5A及び図5Bに見られ得、外部検出器140が、両作動距離について、ビーム軸と標的とが交差する所で生じる粒子を検出することができることを示す。
【0043】
応用例において、回転軸の近くの極片に加えられるノッチを有するそのような液浸レンズは、光学カメラが標的にアクセスして撮像するために、または照明、例えば標的に対するレーザー照明を提供するために使用することができる。
【0044】
SEMシステムに加えて、数多くの他の荷電粒子システムが、上で説明される液浸レンズを用い得ることに留意されたい。システムの例としては、集束イオンビーム(FIB)、紫外線光電子分光法(UPS)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、ヘリウムイオン顕微鏡検査(HIM)、及び二次イオン質量分光法(SIMS)を実現するように構成されるシステムが挙げられ得る。
【0045】
添付の特許請求の範囲は、そのような限定が所与の請求項において「〜のための手段」という成句を使用して明示的に記載されていない限り、ミーンズプラスファンクション限定を含むものとして解釈されるべきではない。特定の機能を行う「ための手段」を明示的に記載していない請求項の任意の要素は、米国特許法第35編第112条(f)項に規定されるような「手段」または「ステップ」として解釈されるべきではない。具体的には、本明細書の特許請求の範囲における「ステップ」の使用は、米国特許法第35編第112条(f)項の規定を行使することを意図しない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B