(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385748
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】熱処理装置及び熱処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20180827BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20180827BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
H01L21/30 567
H01L21/02 Z
B05D3/02 Z
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-150438(P2014-150438)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-25296(P2016-25296A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 勤
【審査官】
田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
再公表特許第2008/016143(JP,A1)
【文献】
特開2008−172204(JP,A)
【文献】
特開2012−227265(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0184100(US,A1)
【文献】
特開2007−221059(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/176670(WO,A1)
【文献】
特開2003−133250(JP,A)
【文献】
再公表特許第2003/078910(JP,A1)
【文献】
特開2004−085158(JP,A)
【文献】
特開2011−066106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/30、
21/027、
21/205、
21/31、
21/365、
21/46、
21/469、
21/86、
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した状態で基板を熱処理可能な処理容器と、
該処理容器の外周を、所定空間を有して離間して覆う加熱手段と、
前記処理容器の外部であって前記所定空間内に略鉛直方向に延在して設けられ、前記処理容器の内部と連通して前記処理容器内の排ガスを排出可能な排出管と、
該排出管の全周を覆い、前記略鉛直方向に沿って延び、前記排出管の頂部から下端に亘って設けられている断熱材と、を有する熱処理装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、赤外線を放射する赤外線加熱ヒータであり、
前記断熱材は、赤外線を透過する材料から構成された請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記断熱材の耐熱温度は、350℃以上である請求項1又は2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記断熱材は、前記排出管を長手方向に沿って覆う縦長の布から構成された請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記断熱材は、前記布を前記排出管の周囲に固定するための紐を有する請求項4に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記断熱材は、2枚の布を短手方向にずらして縫い合わせ、短手方向の中央領域が2枚重ね、両外側領域が1枚布である請求項5に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記断熱材を前記排出管の周囲に巻き、前記紐を前記断熱材の周囲に巻回させて結んで固定したとき、前記排出管の周囲で総て前記布の厚さが2枚重ねとなるように前記中央領域と前記両外側領域が調整された請求項6に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記断熱材は、ガラスクロスから構成された請求項4乃至7のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記排出管が石英から構成された請求項1乃至8のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項10】
前記処理容器が石英から構成された請求項1乃至9のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項11】
前記処理容器は、前記基板を多段に収容可能な横よりも縦が長い形状を有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記基板を鉛直方向に所定間隔を有して多段に積載支持可能であり、前記処理容器内に収容可能な基板支持台を更に有し、
該基板支持台が前記処理容器内で前記基板を支持した状態で前記基板を熱処理する請求項1乃至11のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項13】
前記所定空間を冷却する冷却手段を更に備えた請求項1乃至12のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項14】
前記加熱手段を作動させて熱処理を行い、
該熱処理後は、前記加熱手段を停止させるとともに、前記冷却手段を作動させる制御を行う制御手段を更に有する請求項13に記載の熱処理装置。
【請求項15】
基板を処理容器内に収容する工程と、
該処理容器の周囲から該処理容器を加熱手段により加熱し、前記基板を熱処理する工程と、
前記処理容器と前記加熱手段との間の空間に略鉛直方向に延在して設けられ、前記略鉛直方向に沿って延びるとともに頂部から下端に亘って設けられている断熱材で全周が覆われた排出管を介して、前記処理容器内で発生した排出ガスを排出する工程と、
前記加熱手段の加熱を終了し、前記基板の熱処理を終了する工程と、
前記処理容器と前記加熱手段との間の前記空間を冷却する工程と、を有する熱処理方法。
【請求項16】
前記加熱手段による加熱は、赤外線を放射することにより行われ、
前記断熱材は、前記赤外線を透過させて前記排出管の加熱を妨げないとともに、前記空間の冷却時には前記排出管の冷却を断熱して妨げる請求項15に記載の熱処理方法。
【請求項17】
前記空間の冷却時には、前記排出管の内部に副生成物が付着するのを前記断熱材の断熱により防ぐ請求項16に記載の熱処理方法。
【請求項18】
前記加熱手段による加熱は、200℃以上の温度で行い、
前記空間の冷却時には、前記排出管の温度を125℃以上に保つ請求項17に記載の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置及び熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、周囲に加熱手段が設けられた縦型の処理容器内に、その下方から上方に向けて不活性ガスを流しつつ、保持手段に保持された複数枚の基板に対して熱処理を施すようにした熱処理装置であって、処理容器の下端部に設けられた不活性ガスを供給するガス供給系と、処理容器の周方向に沿って不活性ガスを流すために設けられたガス供給ヘッダ部と、処理容器内へ不活性ガスを供給するためにガス供給ヘッダ部に設けられたガス導入部とを有する熱処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる構成によれば、ガス供給ヘッダが加熱された処理容器の外周壁に沿って設けられるため、導入される不活性ガスを加熱してから処理容器内に供給することができる。よって、常温レベルで不活性ガスを導入すると、コールドスポットが発生し、基板表面に塗布されたフォトレジストに含まれている感光剤成分を含む気化ガスが凝縮し、処理容器の下部に紛体や液状の堆積物が付着する、という現象が発生するが、この堆積物の付着を抑制することができる。
【0004】
なお、フォトレジストに含まれていた水分や溶媒等が熱処理中に気化して発生した気化ガスは、ガス供給ヘッダから導入された不活性ガスが処理容器内を下方から上方に向かって流れ出て行くときにこれに搬送され、処理容器の天井部に到達した後、処理容器の上部に連通して設けられた排気管を介して外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−3119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、処理容器が加熱されている処理中に処理容器の下部に堆積物が付着することを抑制することはできるが、処理が終了し、処理容器の加熱が行われていないときには、必ずしも堆積物の発生を抑制することはできないという問題があった。
【0007】
特に、近年、生産性向上の観点から、熱処理が終了した後、次の熱処理を短時間で開始するため、熱処理装置が自然に冷却するのを待たずに、冷却手段を用いて積極的に処理容器を周囲から空冷で冷却するようなプロセスも導入されている場合がある。かかるプロセスが導入された場合、熱処理終了付近、又は熱処理終了後の余熱により処理容器内で発生した排ガスが、排気管内で凝縮してしまい、凝縮物が配管内に付着してしまうという問題を生ずる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、熱処理が終了したときであっても、排出管内に凝縮物が発生するのを抑制することができる熱処理装置及び熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る熱処理装置は、基板を収容した状態で基板を熱処理可能な処理容器と、
該処理容器の外周を、所定空間を有して離間して覆う加熱手段と、
前記処理容器の外部であって前記所定空間内に略鉛直方向に延在して設けられ、前記処理容器の内部と連通して前記処理容器内の排ガスを排出可能な排出管と、
該排出管の全周を覆い、前記略鉛直方向に沿って延び
、前記排出管の頂部から下端に亘って設けられている断熱材と、を有する。
【0010】
本発明の他の態様に係る熱処理方法は、基板を処理容器内に収容する工程と、
該処理容器の周囲から該処理容器を加熱手段により加熱し、前記基板を熱処理する工程と、
前記処理容器と前記加熱手段との間の空間に略鉛直方向に延在して設けられ、前記略鉛直方向に沿って延びる
とともに頂部から下端に亘って設けられている断熱材で全周が覆われた排出管を介して、前記処理容器内で発生した排出ガスを排出する工程と、
前記加熱手段の加熱を終了し、前記基板の熱処理を終了する工程と、
前記処理容器と前記加熱手段との間の前記空間を冷却する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱処理が終了した後であっても排出管内に凝縮物が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱処理装置の一例を示す構成図である。
【
図2】熱処理装置内の保温手段の一例を示す断面図である。
【
図4】熱処理装置におけるヒータの断面斜視図である。
【
図5】熱処理装置におけるヒータの横断面図である。
【
図6】熱処理装置におけるヒータの縦断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る熱処理装置の排出管の周囲に設けられた断熱材をより詳細に説明するための図である。
図7(a)は、断熱材が設けられる領域の一例を示した図である。
図7(b)は、断熱材が排出管の周囲に設けられたときの一例を示した図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る熱処理装置の排出管に設けられた断熱材の一例を示した図である。
図8(a)は断熱材の正面図である。
図8(b)は断熱材の側面図である。また、
図8(c)は、断熱材の断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る熱処理装置の排出管を覆う断熱材の構成の一例を示した図である。
図9(a)は、断熱材のカバー部の平面図である。
図9(b)は、断熱材の断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る熱処理装置及び熱処理方法を実施した実施例の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る熱処理装置の一例を示す構成図である。
【0015】
図1に示すように、熱処理装置2は、下端が開口された筒体状になされたバッチ式の縦長の処理容器4を有している。処理容器4は、例えば耐熱性の高い石英により円筒体状に成形されており、その下端部にはフランジ部6が形成されている。この処理容器4の天井部には上方へ突出された排気室8が形成されている。この排気室8からは、例えば石英製の排出管10が延びており、排出管10は処理容器4の外壁に沿って下方に延在されて、処理容器4の下部で水平方向へ屈曲されている。そして、排出管10には、排気系12が接続されており、処理容器4内の雰囲気を排気できるようになっている。
【0016】
排気系12は、排出管10の先端部に接続された例えばステンレススチール製の排気流路14を有している。排気流路14には、その上流側から下流側に向けて圧力調整弁16、排気ポンプ18及び除害装置20が順次介設されている。圧力調整弁16の制御により処理容器4内の圧力を調整できるようになっている。また、排気ポンプ18としては、例えばエゼクタを用いることができ、プロセス圧力が常圧に近い場合には、この排気ポンプ18を省略することができる。除害装置20では、排気ガス中に含まれる有害物質を除去できるようになっている。
【0017】
排出管10の周囲には、断熱材90が設けられている。断熱材90は、排出管10の長手方向に沿って延び、排出管10の外周を覆うように設けられている。断熱材90は、排出管10を保温し、排出管10内で副生成物が凝縮により発生し、排出管10の内部に付着するのを防止するために設けられる。なお、断熱材90の詳細については後述する。
【0018】
また、処理容器4の下端の開口部からは、複数枚の基板としての半導体ウエハWを保持する保持手段としてのウエハボート22が昇降可能に挿脱自在(ロード及びアンロード)になされている。このウエハボート22の全体は、例えば石英により形成されている。具体的には、このウエハボート22は、天板24と底板26とを有し、両者間に複数本、例えば4本の支柱28(
図1では2本のみ記す)が掛け渡されている。
【0019】
各支柱28には、所定のピッチで支持溝(図示せず)が形成されており、この支持溝にウエハWの周縁部を支持させることによって複数枚のウエハWを多段に保持できるようになっている。そして、このウエハボート22の横方向の一側よりウエハWの搬入搬出を行うことができるようになっている。このウエハボート22には、例えば直径が300mmのウエハWを50〜150枚程度保持できるようになっている。
【0020】
ウエハボート22は、石英製の保温手段30を介してテーブル32上に載置されており、このテーブル32は、処理容器4の下端開口部を開閉する蓋部34を貫通する回転軸36の上端部に取り付けられている。そして、この回転軸36の蓋部34に対する貫通部には、例えば磁性流体シール38が介設され、この回転軸36を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部34の周辺部と処理容器4のフランジ部6との間には、例えばOリング等よりなるシール部材40が介設されており、処理容器4内のシール性を保持している。そして、蓋部34には、これを加熱する蓋部ヒータ部42が設けられている。
【0021】
回転軸36は、例えばボートエレベータ等の昇降機構44に支持されたアーム46の先端に取り付けられており、ウエハボート22及び蓋部34等を一体的に昇降できるようになされている。また上記保温手段30は、上述のように全体が石英で形成されている。
【0022】
図2は、熱処理装置内の保温手段の一例を示す断面図である。
図2に示すように、保温手段30は、円形リング状の天板48と円板状の底板50とを有し、これらの両者間に複数本、例えば4本の支柱52(
図2では2本のみ記す)を掛け渡して形成されている。そして、この支柱52の途中に複数の円形リング状のフィン54が所定のピッチで設けられている。
【0023】
保温手段30の部分に後述する加熱手段からの熱を蓄熱してウエハボート22の下端部の領域の温度が過度に低下しないように保温している。ここでは、保温手段30とウエハボート22とを別体として形成しているが、両者を石英により一体成形したものも用いることができる。また、この保温手段30として石英により円筒体状に成形することにより保温筒として形成されたものも用いることができる。
【0024】
処理容器4の側部及び天井部には、これを取り囲むようにしてカーボンワイヤ製のヒータを有する円筒体状のヒータ56が設けられており、この内側に位置する半導体ウエハWを加熱し得るようになっている。ヒータ56は、例えば、ベースプレート55上に設置されてもよい。
【0025】
ヒータ56は、
図3〜
図6に示すように筒状(例えば円筒状)の断熱材57を有している。断熱材57はシリカ及びアルミナを主成分として形成されている。ヒータ56は、処理容器4を加熱することができれば、種々の構成を有してよいが、例えば、赤外線を放射して処理容器4を加熱する赤外線ヒータとして構成されてもよい。断熱材57の厚さは、例えば30〜40mmとされている。断熱材57の内周には線状の発熱抵抗体58が螺旋状(
図4,
図6参照)又は蛇行状に配設されている。発熱抵抗体58はヒータ56の高さ方向に複数のゾーンに分けて温度制御が可能なように構成されている。なお、断熱材57は発熱抵抗体58等の施工性を考慮して半割りにされていても良い。発熱抵抗体58は断熱材57の内周面に保持部材59を介して保持されている(
図5参照)。
【0026】
断熱材57の形状を保持すると共に断熱材57を補強するために、断熱材57の外周は金属製例えばステンレス製のアウターシェル(外皮)60で覆われている。また、ヒータ外部への熱影響を抑制するために、アウターシェル60の外周は水冷ジャケット61で覆われている(
図5,
図6参照)。断熱材57の頂部にはこれを覆う上部断熱材62が設けられ、上部断熱材62の上部にはアウターシェル60の頂部(上端部)を覆うステンレス製の天板63が設けられている。
【0027】
熱処理後にウエハを急速降温させて処理の迅速化ないしスループットの向上を図るために、ヒータ56にはヒータ56と処理容器4との間の空間64内の雰囲気を外部に排出する排熱系65と、空間64内に冷却流体(例えば空気)を導入して強制的に冷却する冷却手段66とが設けられている。排熱系65は、例えばヒータ56の上部に設けられた排気口67と、排気口67と図示しない工場排気系とを結ぶ図示しない排熱管とから主に構成されている。排熱管には図示しない排気ブロワ及び熱交換器が設けられている。
【0028】
冷却手段66は、断熱材57とアウターシェル60の間に高さ方向に複数形成された環状流路68と、各環状流路68から断熱材57の中心斜め方向へ冷却流体を吹き出して空間64の周方向に旋回流を生じさせるべく断熱材57に設けられた吹出し孔69とを有する。環状流路68は、断熱材57の外周に帯状又は環状の断熱材70を貼り付けるか、或いは断熱材57の外周を環状に削ることにより形成される。
【0029】
図示例では、所定の厚さ(15〜20mm程度)及び所定の幅(30〜50mm程度)を有する環状の断熱材70を複数形成し、これらの環状断熱材70を円筒状断熱材57の外周に高さ方向(軸方向)に所定の間隔で嵌め、接着剤で固定してなる。この円筒状断熱材57の外側に環状断熱材70を介して円筒状のアウターシェル60を嵌めることにより、円筒状断熱材57の外周に環状流路68が高さ方向に複数段形成される。
【0030】
吹出し孔69は環状断熱材70に各環状流路68の範囲内で周方向に略等間隔で複数例えば4〜15個、高さ方向に1〜2段、ヒータ各部の設計降温速度に対応して設けられている。吹出し孔69は上記空間64の周方向に沿って螺旋状に旋回する冷却流体の流れを形成するために平面視でヒータ56の中心方向に対して所定の角度θ、例えばθ=35°で傾斜して設けられている。吹出し孔69は、例えばアウターシェル60を装着する前に断熱材57に対して内側又は外側からドリル等で孔を開けることにより形成される。
【0031】
ヒータ56内の空間64には上部の排気口67からの吸引排気により上昇気流が生じるため、吹出し孔69は斜め上方を向いて形成されている必要がなく、図示例では水平方向を向いて形成されているが、斜め上方を向いて形成されていても良い。吹出し孔69としては、断熱材57に吹出しノズルを埋め込んだものであっても良く、またその場合、吹出しノズルは隣接する発熱抵抗体58の間を突き抜けるように先端部が突出していても良い。
【0032】
アウターシェル60の外面には、各環状流路68に冷却流体を分配供給するための共通の1本の供給ダクト71が高さ方向に沿って設けられている。アウターシェル60には供給ダクト71内と各環状流路68とを連通する連通口72が形成されている。供給ダクト71の導入口74にはクリーンルーム内の空気を冷却流体として吸引し、圧送供給する図示しない冷却流体供給源(例えば送風機)が開閉バルブを介して接続されている。なお、ヒータ56の底部には中央に開口部73aを有する底板73が設けられ、この底板73がベースプレート55上にボルト等で固定されている。
【0033】
このように、冷却流体を処理容器4とヒータ56との間の空間64に供給できる機構を備えることにより、1バッチのウエハWの熱処理が終了した後、冷却流体を空間64に供給することにより、速やかに処理容器4を冷却し、次のバッチの熱処理に移行し、生産性を高めることができる。
【0034】
一方、熱処理後に冷却流体を空間64に供給すると、空間64内に設けられた排出管10が急激に冷却され、熱処理中に生成した副生成物が排出管10内で凝縮するおそれがあるが、本実施形態に係る熱処理装置2においては、排出管10の周囲に断熱材90を設けているため、急激な排出管10内の冷却を低減させることができる。これにより、排出管10の内部で副生成物が凝縮し、排出管10の内部に付着するのを防止することができる。
【0035】
また、
図1に戻ると、熱処理装置2には、ガスの供給量、プロセス温度、プロセス圧力等を制御したり、熱処理装置2の全体の動作を制御したりするために例えばマイクロコンピュータ等よりなる装置制御部80が設けられている。装置制御部80は、熱処理装置2の動作を制御する時に用いるプログラムを記憶するために記憶媒体82を有している。なお、装置制御部80は、熱処理後の冷却流体を空間64に供給する際にも、冷却流体の流量等の制御も含めて、熱処理装置2の全体の制御を行うようにしてよい。
【0036】
記憶媒体82は、例えばフレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。また図示されていないが、専用回線を用いてユーザインタフェースを介して各種指示、プログラム等を装置制御部80へ入力するようにしてもよい。
【0037】
図7は、本発明の実施形態に係る熱処理装置の排出管10の周囲に設けられた断熱材90をより詳細に説明するための図である。
図7(a)は、断熱材90が設けられる領域の一例を示した図であり、
図7(b)は、断熱材90が排出管10の周囲に設けられたときの一例を示した図である。
【0038】
図7(a)に示されるように、処理容器4の外部とヒータ56の内部の間の空間64に排出管10が設けられ、排出管10は処理容器4内部と処理容器4の頂部にて連通している。排出管10は、処理容器4の頂部から処理容器4の略半径分水平方向に延びた後、円弧状に曲がって鉛直下側に向かって延びて処理容器4の外周壁に沿って鉛直方向に延在し、次いで処理容器4の下端付近から水平方向外側に向かって屈曲し、処理容器4の外部と連通する構成となっている。つまり、排出管10は、全体としては、処理容器4の頂部から下端に亘って略鉛直方向に延在している。
【0039】
そして、
図7(b)に示すように、断熱材90は、空間64内に存在する排出管10の周囲をほぼ総て覆うように排出管10の頂部から下端に亘って設けられている。このような構成とすることにより、空間64に冷却流体が供給されて空冷が行われたとしても、排出管10を冷却流体から断熱して保温し、排出管10の内部が冷却されるのを低減することができる。
【0040】
図8は、本発明の実施形態に係る熱処理装置の排出管10に設けられた断熱材90の一例を示した図である。
図8(a)は断熱材90の正面図であり、
図8(b)は断熱材90の側面図である。また、
図8(c)は、断熱材90の断面図である。
【0041】
図8(a)〜(c)に示すように、断熱材90は、カバー部91と固定部95とを有する。カバー部91は、排出管10の周囲を覆うため、広い面積を有する領域である。一方、固定部95は、カバー部91を排出管10の周囲に固定するために設けられている。断熱材90は、熱処理に対応可能な耐熱性を有し、熱処理時には、ヒータ56からの熱が排出管10に伝達するのを妨げず、かつ、熱処理後の冷却時には排出管10内が冷却するのを低減することができれば、種々の材料から構成されてよい。
【0042】
断熱材90に要求される耐熱性は、熱処理の用途及び熱処理温度を考慮して定めることができるが、例えば、350℃以上の耐熱性を有する材料から選択してもよい。例えば、副生成物は、加熱温度を200℃以上としたときに発生する場合が多く、熱処理の上限は350℃程度に設定される場合が多いので、そのような設定としてもよい。また、耐熱性の上限は特に無いが、実際のプロセスを考慮し、500℃を上限としてもよい。つまり、一般的に、350℃以上500℃以下の耐熱性を有する材料であれば、断熱材90として好適に利用することができる。
【0043】
例えば、ヒータ56が赤外線ヒータの場合、一般的に、断熱材90が金属材料から構成されていると、ヒータ56からの赤外線を反射して熱の排出管10への伝達を妨げてしまう場合が多い。一方、例えば、ガラスクロスのような十分な耐熱性を有する材料であれば、熱処理時にはヒータ56からの赤外線を排出管10に伝達し、かつ、冷却時には、冷却流体から排出管10を断熱し、排出管10を保温することができる。よって、断熱材90は、ガラスクロスで構成されてもよい。
【0044】
また、断熱材90は、十分な耐熱性を有し、ヒータ56からの赤外線を排出管10に伝達するとともに、冷却流体の供給による排出管10内部の冷却を低減できれば、ガラスクロス以外の布で構成してもよい。断熱材90を布で構成した場合、カバー部91を、排出管10の周囲を巻回して覆うことができるだけの面積及び形状を有する布として構成し、固定部95を紐として構成してもよい。このような構成とすることにより、カバー部91で排出管10の周囲を覆い、更にカバー部91の上から紐を巻回させるともに結んで固定し、容易に断熱材90を排出管10の周囲に取り付けることができる。
【0045】
この場合、
図8(a)〜(c)に示すように、紐95は、カバー部91の長手方向に沿って適切な間隔を有して設けてよく、非常に簡素な構成とすることができる。また、接着剤等が不要であるので、不純物を熱処理装置2内に発生させるおそれを無くすことができる。
【0046】
図9は、本発明の実施形態に係る熱処理装置の排出管を覆う断熱材の構成の一例を示した図である。
図9(a)は、断熱材90のカバー部91の平面図であり、
図9(b)は、断熱材90の断面図である。
【0047】
図9(a)に示すように、断熱材90のカバー部91は、例えば、細長い矩形に構成されてよい。長手方向には、排出管10の略全長を覆うことができる長さLを有し、幅方向には、排出管10の周囲を隙間無く覆うことができる幅Bを有すれば、排出管10の冷却を断熱して保温するという役割を十分に果たすことができる。また、紐95を所定間隔離間させて取り付けることにより、断熱材90の長手方向における排出管10への均一な取り付けが可能となる。
【0048】
図9(b)に示すように、カバー部91は、2枚の布92、93を重ねて、糸96等で縫い合わせて構成してもよい。その際、幅方向の両端の所定幅B1が1枚となるようにし、その一枚の所定幅B1を有する領域同士が重なった状態で紐95を用いて固定すると、排出管10の周囲に巻回された断熱材90の厚さが均一となり、熱伝達効率も均一とすることができる。なお、所定幅B1は、排出管10の径の大きさに合わせて、カバー部91を排出管10の周囲に巻回させたときに丁度1枚の部分同士が重なるように適切な幅に調整することが好ましい。
【0049】
このように、2枚の布92、93をともに同じく所定幅B1ずらし、布92、93同士を重なり合わせて構成することにより、排出管10に取り付け後の断熱材90の厚さを全周で一定とすることができ、熱処理及び冷却時の双方において、排出管10の全周で均一な熱伝達が可能となる。なお、紐95は、カバー部91の外側に取り付け、周囲を複数回巻回させてから結んで固定すれば十分である。
【0050】
また、布92、93は、各々が複数の薄い布を重ね合わせて構成してもよい。例えば、布92、93が各々薄い2枚の布を重ね合わせて構成され、更にこれらが重ね合されて合計4枚の薄い布が重ねられた状態で排出管10の周囲を覆うようにしてもよい。
【実施例】
【0051】
図10は、本発明の実施形態に係る熱処理装置及び熱処理方法を実施した実施例の結果を示した図である。
図10において、横軸はウエハ温度(℃)、縦軸は排出管温度(℃)となっている。ウエハ温度が200℃以上のときに、アウトガスが発生する。なお、アウトガスとは、真空環境下において有機材料等から放出される様々なガスのことであり、レジスト、蒸着材料等から放出するガスも含まれる。
【0052】
そして、排出管10の温度が125℃以下となったときに、排出管10内に副生成物が付着する。よって、
図10において、領域C内の状態、つまり、ウエハ温度が200℃以上、かつ、排出管10の温度が125℃以下のときに、排出管10内に副生成物が析出し、排出管10の内部に付着する。
【0053】
なお、実施例は、熱処理後の冷却手段66の出力を適宜変化させて温度特性を測定した。また、本実施例において、理解の容易のため、実施形態で説明した構成要素に対応する構成要素は、同一の参照符号を付して説明する。断熱材90には、ガラスクロスを用いた。
【0054】
曲線Dは、断熱材90を排出管10に設けず、冷却手段66の冷却出力を100%とした場合の測定結果である。曲線Dの相当の部分が領域Cに含まれているので、排出管10の内部に副生成物が当然に付着する。
【0055】
曲線Eは、断熱材90を排出管10に設けず、冷却手段66の冷却出力を100%とした場合であって、副生成物が比較的付着しにくい処理容器4の頂点付近の測定結果である。曲線Dより領域Cに含まれている状態は少ないが、やはり副生成物が付着してしまう。
【0056】
曲線Fは、断熱材90を排出管10に設けず、冷却手段66の冷却出力を30%に低下させた場合の測定結果である。冷却出力を低減させたことにより、副生成物は排出管10内に付着しなかった。しかしながら、冷却出力を低減させているので、熱処理を連続的に行う間隔は延ばさざるを得ず、スループットは低下してしまう。
【0057】
曲線Gは、断熱材90を排出管10に設け、冷却手段66の冷却出力を100%とした場合の測定結果である。曲線Gは、領域Cにどの箇所も含まれていない。よって、排出管10内に、付着物は発生しない。また、冷却手段66の冷却出力も100%であるので、スループットも最大限に高めることができる。
【0058】
このように、本実施例に係る熱処理装置及び熱処理方法によれば、熱処理後に処理容器の冷却を行う場合であっても、排出管内部での副生成物の発生を低減させることができる。
【0059】
なお、以上の説明では、熱処理後に処理容器の冷却を行う場合を中心に説明したが、熱処理後に冷却を行わなくても排出管に副生成物が析出してしまうような場合にも、本発明に係る熱処理装置及び熱処理方法を好適に適用することができる。本発明に係る熱処理装置及び熱処理方法は、熱処理後の冷却の有無に関わらず、排出管内に副生成物が発生する場合に総て適用可能である。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0061】
2 熱処理装置
4 処理容器
12 排気系
22 ウエハボート(保持手段)
30 保温手段
56 加熱手段
57、70、90 断熱材
64 空間
66 冷却手段
91 カバー部材
92、93 布
95 固定部材
96 糸
W 半導体ウエハ(基板)