特許第6385876号(P6385876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385876情報統合方法及び装置及びシステム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385876
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】情報統合方法及び装置及びシステム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/00 20060101AFI20180827BHJP
   G01M 9/02 20060101ALI20180827BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20180827BHJP
   G06T 7/215 20170101ALI20180827BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20180827BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G01P13/00 E
   G01M9/02
   A61B5/055 380
   G06T7/215
   G06T7/60 150S
   G06T1/00 290Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-76517(P2015-76517)
(22)【出願日】2015年4月3日
(65)【公開番号】特開2016-197042(P2016-197042A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107010
【弁理士】
【氏名又は名称】橋爪 健
(72)【発明者】
【氏名】金 太一
(72)【発明者】
【氏名】野村 征司
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 季
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 靖志
(72)【発明者】
【氏名】庄野 直之
(72)【発明者】
【氏名】庄島 正明
(72)【発明者】
【氏名】中冨 浩文
(72)【発明者】
【氏名】小山 博史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 延人
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6162452(JP,B2)
【文献】 特開2012−115658(JP,A)
【文献】 特開2014−171867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 13/00
A61B 5/00
G06T 1/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報統合方法であって、
処理部が、記憶部又は他の装置から、同一対象についての形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報を取得し、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出し、
前記処理部が、前記流れ若しくはベクトル情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出し、
前記処理部が、抽出された前記最速候補領域又は前記形状中心線と、抽出された前記最速領域又は前記流れ中心線との位置合わせを行い、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報間の相対位置を求め、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を、前記相対位置を用いて統合して統合情報を形成し、前記統合情報を前記記憶部に記憶する及び/又は表示部に表示する
情報統合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報統合方法において、
前記処理部が、第1の測定装置が測定した前記形状若しくはスカラー情報又は前記第1の測定装置が測定した形状若しくはスカラー画像から得られる前記形状若しくはスカラー情報、及び、第2の測定装置が測定した前記流れ若しくはベクトル情報又は前記第2の測定装置が測定した流れ若しくはベクトル画像から得られる前記流れ若しくはベクトル情報を、前記記憶部に記憶することを特徴とする情報統合方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報統合方法において、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報及び/又は前記流れ若しくはベクトル情報を、予め定められた閾値又は方向に基づき限定した後に、前記形状若しくはスカラー情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出する、及び/又は、前記流れ若しくはベクトル情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出することを特徴とする情報統合方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の情報統合方法において、
前記処理部が、さらに前記形状若しくはスカラー情報及び/又は前記流れ若しくはベクトル情報を、前記統合情報と共に前記表示部に表示することを特徴とする情報統合方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の情報統合方法において、
前記処理部が、さらに、前記形状若しくはスカラー情報、前記流れ若しくはベクトル情報、及び、前記統合情報を、予め定められた時間間隔ごとに取得及び形成し、これら情報を、前記記憶部に記憶し、及び/又は、前記表示部に時間変化を動画により表示又は複数の連続する静止画により表示することを特徴とする情報統合方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の情報統合方法において、
前記形状若しくはスカラー情報と前記流れ若しくはベクトル情報は、血管・血流、リンパ等の医用画像、航空機・ロケット・自動車・船等、風洞・水流・潮流、地球・宇宙・タイムマシン・その他の物理学のいずれかの技術分野で、同一対象から取得した情報であることを特徴とする情報統合方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の情報統合方法において、
前記形状若しくはスカラー情報は、各種TOF−MRA(time−of−flight MR angiography)、3次元血管撮影、CTアンギオグラフィーのいずれかによる取得情報又は画像に基づく情報であり、
前記流れ若しくはベクトル情報は、PC−MRA(phase−contrast MR angiography)、脳血管撮影、インドシアニングリーンを用いた蛍光血管撮影、超音波のいずれかによる取得情報又は画像に基づく情報である
ことを特徴とする情報統合方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の情報統合方法において、
前記形状若しくはスカラー情報と前記流れ若しくはベクトル情報は、それぞれ、血管形状情報と血流情報、又は、リンパ管形状とリンパ流情報であることを特徴とする情報統合方法。
【請求項9】
情報統合装置であって、
形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報及びこれら両情報を統合した統合情報を記憶する記憶部と、
表示部と、
処理部と、
を備え、
前記処理部が、記憶部又は他の装置から、同一対象についての形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報を取得し、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出し、
前記処理部が、前記流れ若しくはベクトル情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出し、
前記処理部が、抽出された前記最速候補領域又は前記形状中心線と、抽出された前記最速領域又は前記流れ中心線との位置合わせを行い、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報間の相対位置を求め、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を、前記相対位置を用いて統合して統合情報を形成し、前記統合情報を前記記憶部に記憶する及び/又は前記表示部に表示する
情報統合装置。
【請求項10】
情報統合システムであって、
前記形状若しくはスカラー情報を測定する第1の測定装置と、
前記流れ若しくはベクトル情報を測定する第2の測定装置と
前記第1の測定装置及び前記第2の測定装置から、それぞれ前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を入力する、請求項9に記載された情報統合装置と、
を備えた情報統合システム。
【請求項11】
情報統合プログラムであって、
処理部が、記憶部又は他の装置から、同一対象についての形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報を取得するステップと、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出するステップと、
前記処理部が、前記流れ若しくはベクトル情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出するステップと、
前記処理部が、抽出された前記最速候補領域又は前記形状中心線と、抽出された前記最速領域又は前記流れ中心線との位置合わせを行い、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報間の相対位置を求めるステップと、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を、前記相対位置を用いて統合して統合情報を形成し、前記統合情報を前記記憶部に記憶する及び/又は表示部に表示するステップと
をコンピュータに実行させるための情報統合プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報統合方法及び装置及びシステム及びプログラムに係り、特に、形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報がそれぞれ取得された場合に、両情報を統合するための情報統合方法及び装置及びシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図11に、従来の流体解析の説明図を示す。
従来の数値流体力学(Computational Fluid Dynamics)は、主に、流体の運動に関する方程式をコンピュータで解くことによって流れを観察する数値解析・シミュレーション方法を用いていた。この場合、コンピュータに、全ての「入り口」と「出口」に流速を予め与え、その「あいだ」の流れをコンピュータで計算する。血流等の医用画像、航空機・自動車・風洞実験・水流など、ほとんどの流体解析は、このような方法が用いられている。
【0003】
また、特許文献1には、「第1の画像データセットと第2の画像データセットとの間における位置合わせに関する第1の位置合わせと、第1の画像データセットと第2の画像データセットとの間の第1の位置合わせとは異なる位置合わせに関する第2の位置合わせとを実施する位置合わせユニットと、第1の位置合わせと第2の位置合わせとによる位置合わせの差に基づいて、第1の画像データセットと第2の画像データセットとの間の整合性度合いを判定する整合性判定ユニットと、を具備」し、「複数の医用画像の位置合わせにおいて、位置合わせの度合いを判定可能な医用画像処理装置」が開示されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−171867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の流体解析の場合、コンピュータには、通常、全ての「入り口」と「出口」に流速を予め与えなくてはならず、その「あいだ」の流れをコンピュータで計算しているだけであり、さらに「形状」がないと計算できない。また、通常、流れが途中で途切れていても、コンピュータは計算することができない。
また、従来より、形状をモデル化しシミュレーションを行う研究はなされているが、実際の画像を用いた形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報の統合は行われていない。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報とを統合して統合情報を求めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の解決手段によると、
情報統合方法であって、
処理部が、記憶部又は他の装置から、同一対象についての形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報を取得し、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出し、
前記処理部が、前記流れ若しくはベクトル情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出し、
前記処理部が、抽出された前記最速候補領域又は前記形状中心線と、抽出された前記最速領域又は前記流れ中心線との位置合わせを行い、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報間の相対位置を求め、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を、前記相対位置を用いて統合して統合情報を形成し、前記統合情報を前記記憶部に記憶する及び/又は表示部に表示する
情報統合方法が提供される。
【0008】
本発明の第2の解決手段によると、
情報統合装置であって、
形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報及びこれら両情報を統合した統合情報を記憶する記憶部と、
表示部と、
処理部と、
を備え、
前記処理部が、記憶部又は他の装置から、同一対象についての形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報を取得し、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出し、
前記処理部が、前記流れ若しくはベクトル情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出し、
前記処理部が、抽出された前記最速候補領域又は前記形状中心線と、抽出された前記最速領域又は前記流れ中心線との位置合わせを行い、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報間の相対位置を求め、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を、前記相対位置を用いて統合して統合情報を形成し、前記統合情報を前記記憶部に記憶する及び/又は前記表示部に表示する
情報統合装置が提供される。
【0009】
本発明の第3の解決手段によると、
情報統合システムであって、
前記形状若しくはスカラー情報を測定する第1の測定装置と、
前記流れ若しくはベクトル情報を測定する第2の測定装置と
前記第1の測定装置及び前記第2の測定装置から、それぞれ前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を入力する、上述のような情報統合装置と、
を備えた情報統合システムが提供される。
【0010】
本発明の第4の解決手段によると、
情報統合プログラムであって、
処理部が、記憶部又は他の装置から、同一対象についての形状若しくはスカラー情報及び流れ若しくはベクトル情報を取得するステップと、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出するステップと、
前記処理部が、前記流れ若しくはベクトル情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出するステップと、
前記処理部が、抽出された前記最速候補領域又は前記形状中心線と、抽出された前記最速領域又は前記流れ中心線との位置合わせを行い、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報間の相対位置を求めるステップと、
前記処理部が、前記形状若しくはスカラー情報及び前記流れ若しくはベクトル情報を、前記相対位置を用いて統合して統合情報を形成し、前記統合情報を前記記憶部に記憶する及び/又は表示部に表示するステップと
をコンピュータに実行させるための情報統合プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報とを統合して統合情報を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】情報統合システムの構成図。
図2】情報統合装置の構成図。
図3】統合情報ファイルのデータフォーマットの説明図。
図4】情報統合処理のフローチャート。
図5】形状(スカラー)情報の説明図。
図6】流れ(ベクトル)情報の説明図。
図7】形状(スカラー)情報の最速候補領域又は形状中心線の説明図。
図8】流れ(ベクトル)情報の最速領域又は流れ中心線の説明図。
図9】位置合わせ処理及び統合情報の説明図。
図10】(A)血管形状(スカラー)情報の最速候補領域又は形状中心線の説明図、(B)血流(ベクトル)情報の最速領域又は流れ中心線の説明図。
図11】従来の流体解析の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.情報統合処理

図1に、情報統合システムの構成図を示す。
本システムは、情報統合装置10、形状(スカラー)情報測定装置20、流れ(ベクトル)情報測定装置30を備える。なお、情報統合装置10と、形状(スカラー)情報測定装置20及び流れ(ベクトル)情報測定装置30とは、図示のように、有線又は無線の適宜のネットワークを介して接続されるようにしてもよいし、ネットワークを介さないで接続されるようにしてもよい。また、情報統合装置10は、形状(スカラー)情報測定装置20及び流れ(ベクトル)情報測定装置30とは接続されず、形状(スカラー)情報測定装置20及び流れ(ベクトル)情報測定装置30が測定した情報を、予め入力し、内部に記憶しておいてもよい。
【0014】
図2に、情報統合装置の構成図を示す。
情報統合装置10は、処理部1、入力部2、表示部3、インタフェース部(I/F)4、記憶部5を備える。I/F4は、形状(スカラー)情報測定装置20及び流れ(ベクトル)情報測定装置30と接続し、それぞれ形状(スカラー)情報画像及び流れ(ベクトル)情報画像を入力するためのインタフェースである。記憶部5は、統合情報ファイル50を含む。
【0015】
図3に、統合情報ファイルのデータフォーマットの説明図を示す。
図3(A)は統合情報ファイル50の第1の例を示す。
ここでは、統合情報ファイル50は、識別情報(ID)51毎に、形状(スカラー)情報52及び流れ(ベクトル)情報53及びこれら両情報を統合した統合情報54が記憶される。
図3(B)は統合情報ファイル50の第2の例を示す。統合情報ファイル50は、ID毎の形状(スカラー)情報画像及び流れ(ベクトル)情報画像及び統合情報を別々のファイル55〜57に記憶する。
【0016】
図4に、情報統合処理のフローチャートを示す。
以下に、形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報がそれぞれ取得された場合の情報統合処理について説明する。情報統合処理は、具体的には、例えば管状等の形状およびその流れを対象とすることができ、内部を層流が流れていることを利用して統合することができる。
一例として、処理部1は、形状(スカラー)情報測定装置20が測定した形状(スカラー)情報をI/F4を介して入力して記憶部5の統合情報ファイル50にID毎に予め記憶しているものとすることができる。あるいは、処理部1は、形状(スカラー)情報測定装置20が測定した形状情報画像をI/F4を介して入力して、形状情報画像から形状(スカラー)情報を抽出等により得て、記憶部5の統合情報ファイル50にID毎に予め記憶しているものとすることができる。
また、処理部1は、流れ(ベクトル)情報測定装置30が測定した流れ(ベクトル)情報をI/F4を介して入力して記憶部5の統合情報ファイル50にID毎に予め記憶しているものとすることができる。あるいは、処理部1は、流れ(ベクトル)情報測定装置30が測定した流れ情報画像をI/F4を介して入力して、流れ情報画像から流れ(ベクトル)情報を抽出等により得て、記憶部5の統合情報ファイル50にID毎に予め記憶しているものとすることができる。
なお、処理部1は、対象がひとつであったり、予め指定されている等の場合は、IDを省略し、ID毎に処理しなくてもよい(以下の処理において同様)。
【0017】
以下に、手順を述べる。
ステップS101で、処理部1は、入力部2等により指定されたIDに従い、記憶部5の統合情報ファイル50に記憶されている形状(スカラー)情報を取得する。
図5に、形状(スカラー)情報の説明図を示す。
ステップS103で、処理部1は、入力部2等により指定されたIDに従い、記憶部5の統合情報ファイル50に記憶されている流れ(ベクトル)情報を取得する。
図6に、流れ(ベクトル)情報の説明図を示す。
なお、ステップS101及び/又はS103において、形状(スカラー)情報及び/又は流れ(ベクトル)情報が、記憶部5の統合情報ファイル50に予め記憶されていない場合など、記憶部5からではなく、形状(スカラー)情報測定装置20及び/又は流れ(ベクトル)情報測定装置30等から適宜のタイミングで測定画像を入力して、入力したデータから形状(スカラー)情報及び/又は流れ(ベクトル)情報を抽出又は取得してもよい。また、処理部1は、入力した各画像から形状(スカラー)情報及び流れ(ベクトル)情報を抽出又は取得し、これら情報をID毎に記憶部5の統合情報ファイル50に記憶してもよい。
【0018】
ステップS105で、処理部1は、形状(スカラー)情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出する。例えば、処理部1は、管等の方向に対して垂直方向又は略垂直方向の断面における重心位置およびその周辺を流速の高い領域であるとして最速候補領域とすることができる。あるいは、処理部1は、例えば、管等の形状を表す輝度等の形状(スカラー)情報において、管等の方向に対して垂直方向又は略垂直方向の断面における最大輝度等又は輝度等の重心などを形状中心線として取得してもよい。また、処理部1は、形状(スカラー)情報を細線化処理し、形状の中心軸を抽出するようにしてもよい。なお、処理部1は、周辺領域を重心位置に対してガウスフィルターなど各種画像処理手法を用いて取得してもよい。また、処理部1は、形状(スカラー)情報を、予め定められた閾値以上のデータや予め定められた方向のデータ等により、中心付近の領域に限定した後に、形状(スカラー)情報から流れの最速候補領域又は形状中心線を抽出するようにしてもよい。
なお、ここで最速候補領域としている理由は,最速であると仮定しているだけであり、必ずしも最速とは限らないためである。また、最速候補領域又は形状中心線は、例えば、管等の流れに沿ったラインや、管等の流れに沿った幅が一定又は一定でないライン状の領域などで、適宜表すことができる。
【0019】
ステップS107で、処理部1は、流れ(ベクトル)情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出する。例えば、処理部1が、最速領域を、流れ方向に対し垂直な方向において速度(ベクトルのノルム値・大きさ)変化が小さくかつ速度が局所的に最大となる領域の集合として抽出することができる。あるいは、処理部1は、各位置における流れ(ベクトル)情報の大きさ(ベクトルのノルム値)が、管等の方向に対して垂直方向又は略垂直方向の断面における最大又は重心等の位置を流れ中心線として取得してもよい。また、処理部1は、得られた流れ(ベクトル)情報に対し、管等の断面方向に対して速度が最大となる位置を抽出し、それを流れ方向につなげることで流れの中心線を取得するようにしてもよい。なお、この時、処理部1は、滑らかさ拘束(流れ方向に対して得られた領域が連続していること)やガウスフィルターなど各種画像処理手法を用いてノイズ除去や情報の強調を行っても良い。また、処理部1は、流れ(ベクトル)情報を、予め定められた閾値以上のデータや予め定められた方向のデータ等により、中心付近の領域に限定した後に、流れ(ベクトル)情報から管内流れの最速領域又は流れ中心線を抽出するようにしてもよい。なお、最速領域又は流れ中心線は、例えば、管等の流れに沿ったラインや、管等の流れに沿った幅が一定又は一定でないライン状の領域などで、適宜表すことができる。
【0020】
図7に、形状(スカラー)情報の最速修補領域又は形状中心線を示す。
また、図8に、流れ(ベクトル)情報の最速領域又は流れ中心線を示す。
ここでは、最速修補領域又は形状中心線、最速領域又は流れ中心線を、一例として線で表しているが、線以外にもメッシュや他のカラー又は模様等で表してもよい。処理部1は、これら最速修補領域又は形状中心線、最速領域又は流れ中心線を表示部に表示してもよいし、表示しなくてもよい。また、処理部1は、これら情報を記憶部5に記憶してもよいし、記憶しなくてもよい。
【0021】
ステップS109で、処理部1は、ステップS105で得られた最速候補領域又は形状中心線のいずれかと、ステップS107で得られた最速領域又は流れ中心線とが一致するとして位置合わせ(レジストレーション)を行う。例えば、処理部1は、ステップS105で最速候補領域を得て、ステップS107で最速領域を得た場合、最速候補領域と最速領域とが一致するとして位置合わせ(レジストレーション)を行う。あるいは、処理部1は、ステップS105で形状中心線を得て、ステップ107で流れ中心線を得た場合、形状中心線と流れ中心線とが一致するとして位置合わせ(レジストレーション)を行う。あるいは、最速候補領域と流れ中心線とによる位置合わせ、又は、形状中心線と最速領域とによる位置合わせ(レジストレーション)を行ってもよい。位置合わせ手法は、例えば、領域情報を形状化した後に行う形状間レジストレーション法や画素情報を用いて行う画像間レジストレーション法やその組み合わせを用いたり、各種のレジストレーション処理方法・位置合わせ処理方法を用いることができる。また、処理部1は、ステップS105で得られた管等の形状中心線と、ステップS107で得られた流れ中心線をIterative closest point法等の位置合わせ処理により位置合わせするようにしてもよい。
また、ステップS109で、さらに、処理部1は、得られた相対位置(相対位置姿勢)を、形状(スカラー)情報および流れ(ベクトル)情報間の相対位置(相対位置姿勢)として求める。
【0022】
ステップS111で、処理部1は、可視化ソフトウェア等により、ステップS109で得られた相対位置(相対位置姿勢)を用いて位置合わせ(レジストレーション)することで形状(スカラー)情報および流れ(ベクトル)情報を統合処理して統合情報を形成し、記憶部5の統合情報ファイル50に、ID毎に統合情報を記憶し、記憶部5の統合情報ファイル50を参照し、表示部3に統合情報を表示する。なお、処理部1は、形状(スカラー)情報及び/又は流れ(ベクトル)情報を、統合情報と共に表示部3に表示するようにしてもよい。
図9に、位置合わせ処理及び統合情報の説明図を示す。
図9(A)は、位置合わせ前の表示画像(形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報とを重ねた画像)の一例を示し、図9(B)は、位置合わせ後の表示画像(統合情報の画像)の一例を示す。
【0023】
(時間変化への応用)
処理部1は、さらに、上述の実施形態の、形状(スカラー)情報、流れ(ベクトル)情報、及び、統合情報を、予め定められた時間間隔ごとに取得及び形成することができる。そして、処理部1は、これら情報を、ID毎に記憶部5の統合情報ファイル50に記憶し、また、表示部3に時間変化を動画により表示したり、複数の連続する静止画で表示することができる。
【0024】
(適用例)
本発明及び/又は本実施の形態は、例えば、以下のように各情報を対応させて通用することができる。
・形状(スカラー)情報:各種TOF−MRA(time−of−flight MR angiography)、3次元血管撮影、CTアンギオグラフィーなどによる取得情報・画像等に基づく情報
・流れ(ベクトル)情報:PC−MRA(phase−contrast MR angiography)、脳血管撮影、インドシアニングリーンを用いた蛍光血管撮影、超音波などによる取得情報・画像等に基づく情報
【0025】
また、血管・血流、リンパ等の医用画像、航空機・ロケット・自動車・船等、風洞・水流・潮流、地球・宇宙・タイムマシン(時空転移装置等)などの物理学など、ひとつの(測定)対象(同一(測定)対象)から形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報の両情報を取得することができる様々な流体解析に、本発明及び/又は本実施の形態を適用することができる。
【0026】
2.血管形状情報と血流情報のへの適用

以下に、一例として、血管形状(スカラー)と血流情報(ベクトル)を統合表示することで多次元診断を行う場合ついて説明する。
【0027】
脳神経外科領域では、医用画像の評価に基づく頭蓋内血管病変の手術適応の判断や治療計画の立案は重要なプロセスであり、血管の病変診断にも使用されてきた。血管病変の評価には血管形状情報と血流情報が必要であるが、血管の形状の3次元画像と血流情報を統合する技術が従来は存在しなかった。
また、血管は様々な医用画像検査から情報が得られる。例えば血管形状情報にはtime−of−flight magnetic resonance angiography(TOF−MRA)を、血流情報にはphase−contrast magnetic resonance angiography(PC−MRA)が用いられる。前者はスカラー情報であり後者はベクトル画像であり次元が異なる。そのため形状情報と血流情報を統合し診断を行うためには、異なる次元間の位置合わせ手法を提案する必要がある。従来、例えば、血管形状をモデル化して血流シミュレーションを行う研究はなされているかもしれないが、実際の医用画像を用いた形状と血流情報の統合は行われていない。
【0028】
そこで、本実施の形態では、TOF−MRI、CT、血管撮影などの形状(スカラー)情報測定装置20による測定画像から血管の形状を抽出して得られる血管形状情報を、形状(スカラー)情報として用いる。また、PC−MRAなどの流れ(ベクトル)情報測定装置30から取得される血流情報を、流れ(ベクトル情報)として用いる。これら形状(スカラー)情報と流れ(ベクトル)情報は、両者ともに同一(同一対象)の血管を撮影したものである。
本実施の形態によると、従来不可能であった、血管形状情報(スカラー情報)と血流情報(ベクトル情報)の統合法を提供することができる。
ここでは、一例として、処理部1により、血管形状情報の最速候補領域又は形状中心線と、血流情報の最速領域又は流れ中心線は共通するという仮定において、これら最速領域又は中心線に関する情報を拘束条件にした画像間位置合わせを行う。
【0029】
この場合、例えば、図のフローチャートの前段に、次のような処理1)〜3)を追加して実行することができる。
1) まず、形状(スカラー)情報測定装置20及び流れ(ベクトル)情報測定装置30は、一例として患者のTOF−MRA等およびPC−MRA等を測定し、処理部1は、これら両画像を取得する。
2) 処理部1は、形状(スカラー)情報として、TOF−MRA等から血管形状情報を抽出し、それを記憶部5の統合情報ファイル50に患者のID毎に記憶する。
3) 処理部1は、流れ(ベクトル)情報として、PC−MRA等から血流情報を抽出し、それを記憶部5の統合情報ファイル50に患者のID毎に記憶する。
4) 処理部1は、取得されたこれら情報を用いて、上述の図のフローチャートに従い、各ステップを実行することで、統合情報を形成し、表示及び/又は記憶することができる。
【0030】
図10(A)に、血管形状(スカラー)情報の最速候補領域又は形状中心線、図10(B)に、血流(ベクトル)情報の最速領域又は流れ中心線を示す。
ここでは、最速候補領域又は形状中心線、最速領域又は流れ中心線を、一例として線で表している。処理部1は、これらを表示部に表示してもよいし、表示しなくてもよい。また、処理部1は、これら情報を記憶部5に記憶してもよいし、記憶しなくてもよい。
処理部1は、最速候補領域又は形状中心線と、最速領域又は流れ中心線との位置合わせを実行する。
【0031】
このように、本実施の形態によると、TOF−MRAとPC−MRAを統合表示することで、血管の形状(スカラー)情報と血液の流れ(ベクトル)情報を統合提示することができ、病変部の診断が一層容易に可能となることが期待される。また、本実施の形態は、頭蓋内血管病変(未破裂脳動脈瘤、脳動静脈奇形等)における予後(経過観察中の出血リスク)の評価や出血予防手術(開頭脳動静脈奇形摘出術、開頭血管芽細胞腫摘出術、開頭クリッピング術等)の術前計画(多数ある病変血管の処理する優先順の決定)に適用することが期待される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の情報統合方法又は情報統合装置・システムは、その各手順をコンピュータに実行させるための情報統合プログラム、情報統合プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、情報統合プログラムを含みコンピュータの内部メモリにロード可能なプログラム製品、そのプログラムを含むサーバ等のコンピュータ、等により提供されることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 情報統合装置
20 形状(スカラー)情報測定装置
30 流れ(ベクトル)情報測定装置
図1
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