特許第6386051号(P6386051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6386051X線管用回転陽極ターゲットの製造方法、X線管の製造方法、およびX線検査装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386051
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】X線管用回転陽極ターゲットの製造方法、X線管の製造方法、およびX線検査装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 9/14 20060101AFI20180827BHJP
   H01J 35/10 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01J9/14 M
   H01J35/10 B
   H01J35/10 D
   H01J35/10 F
   H01J35/10 C
   H01J35/10 M
   H01J35/10 Z
   H01J35/10 A
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-537755(P2016-537755)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2015003806
(87)【国際公開番号】WO2016017163
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-154133(P2014-154133)
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎一
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−74392(JP,A)
【文献】 特表2013−502034(JP,A)
【文献】 特開2010−212088(JP,A)
【文献】 特表2012−532409(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/49761(WO,A1)
【文献】 国際公開第95/26565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/14
H01J 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および鉄からなる群より選ばれた少なくとも一つの金属または前記金属を含有する合金を含む第1の原料粉末を成形して第1の成形体を形成し、前記第1の成形体を焼結して焼結体を形成し、前記焼結体を円盤状に加工して円盤状金属部材を形成する工程と、
前記円盤状金属部材の表面にX線放射部を形成する工程と、
モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および鉄からなる群より選ばれた少なくとも一つの金属または前記金属を含有する合金を含む第2の原料粉末を成形して第2の成形体を形成し、前記第2の成形体を円筒状に加工して円筒状金属部材を形成する工程と、
前記円盤状金属部材と前記円筒状金属部材とを接合する工程と、
を具備し、
前記円盤状金属部材は、前記円盤状金属部材と前記円筒状金属部材との接合部から2mm以内の第1の領域に複数の第1の結晶粒子を含み、
前記円筒状金属部材は、前記接合部から2mm以内の第2の領域に複数の第2の結晶粒子を含み、
記第1の結晶粒子の第1の平均アスペクト比は、1.3以上1.8以下であり、
記第2の結晶粒子の第2の平均アスペクト比は、2.4以上6.5以下である、X線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項2】
000μm×1000μmの単位面積あたり個数割合で80%以上100%以下の前記第2の結晶粒子の長径方向と前記円筒状金属部材の長さ方向とのずれが−25度以上+25度以下である、請求項1に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項3】
記第1の結晶粒子の平均粒径が20μm以上500μm以下である、請求項1または請求項2に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項4】
記第2の結晶粒子の平均粒径が20μm以上800μm以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項5】
前記円筒状金属部材がろう材層を介して前記円盤状金属部材に接合される、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項6】
前記ろう材層がTi、Zr、Hf、Pt、Co、Cr、Ni、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む、請求項5に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項7】
前記円盤状金属部材の表面に金属酸化物被膜を形成する工程をさらに具備する、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項8】
前記金属酸化物被膜が酸化チタンと酸化アルミニウムとの混合物を含む、請求項7に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項9】
グラファイト部材を前記円盤状金属部材に接合する工程をさらに具備する、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項10】
前記円盤状金属部材の厚さが10mm以上60mm以下である、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項11】
前記X線放射部がReとWとの合金を含む、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項12】
前記円筒状金属部材の円筒内に固定軸を設ける工程と、
前記円筒状金属部材と前記固定軸との間に液体金属潤滑剤を供給する工程と、をさらに具備する、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法
【請求項13】
前記円盤状に加工するときの前記焼結体の加工率は、10%以上60%以下であり、
前記円筒状金属部材を形成するときの前記第2の成形体の加工率は、10%以上90%以下である、請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法。
【請求項14】
X線管の製造方法であって、
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載のX線管用回転陽極ターゲットの製造方法によりX線管用回転陽極を製造する工程と、
前記X線管用回転陽極と、前記X線放射部に電子ビームを照射する陰極と、を保持する真空容器を設ける工程と、を具備するX線管の製造方法
【請求項15】
請求項14に記載のX線管の製造方法によりX線管を製造する工程と、
透過されたX線を検出する検出器を設ける工程と、
前記検出器からの検出データに対応する画像を生成する工程と、を具備する、X線検査装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管用回転陽極ターゲット、X線管、およびX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管は、CT(Computed Tomography:CT)装置など様々なX線検査装置に搭載されている。X線管は、X線管用回転陽極ターゲットを具備する。X線管用回転陽極ターゲットは、X線放射部を備える円盤状部材と、円盤状部材と一体化された回転軸と、を具備する。回転陽極ターゲットは、陰極から放出される電子ビームがX線放射部に照射されることによりX線を放射する。X線放射を繰り返すとX線放射部の温度が上昇する。高温下では、回転陽極ターゲットが熱変形しやすくなる。
【0003】
X線管用回転陽極ターゲットの回転構造は、ベアリングボールを使った玉軸受構造と動圧軸受構造との2種類の構造に分けられる。玉軸受構造は、回転軸をベアリングボールで支持しながら回転させる構造である。動圧軸受構造は、円筒形状を有する回転軸の円筒と、円筒内に設けられ、らせん形状などを有する固定軸と、円筒内に充填された液体金属等の液体金属潤滑剤とを備えるすべり軸受を具備する構造である。
【0004】
玉軸受構造は、ベアリングボールを備える構造であるため、安定な高速回転を得ることができる。しかしながら、回転軸がベアリングボールと接触するため、動作音がうるさいといった問題があった。
【0005】
動圧軸受構造は、すべり軸受を備える構造である。よって、動作音や振動は非常に小さい。また、磨耗も小さいため長寿命である。動圧軸受構造は、液体金属などの液体金属潤滑剤を使用していることからX線放射部を備える円盤状部材の放熱性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−068239号公報
【特許文献2】特開2010−212088号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、熱変形が生じにくいX線管用回転陽極ターゲットを提供することである。本発明が解決しようとする課題は、液体金属を用いた動圧軸受で回転駆動させるX線管に適した回転陽極ターゲットおよびX線管を提供することである。
【0008】
実施形態に係るX線管用回転陽極ターゲットの製造方法は、円盤状金属部材を形成する工程と、円盤状金属部材の表面にX線放射部を形成する工程と、円筒状金属部材を形成する工程と、円盤状金属部材と円筒状金属部材とを接合する工程と、を具備する。円盤状金属部材は、円盤状金属部材と円筒状金属部材との接合部から2mm以内の第1の領域に複数の第1の結晶粒子を含み、円筒状金属部材は、接合部から2mm以内の第2の領域に複数の第2の結晶粒子を含む。第1の結晶粒子の第1の平均アスペクト比は、1.3以上1.8以下であり、第2の結晶粒子の第2の平均アスペクト比は、2.4以上6.5以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】X線管用回転陽極ターゲットの一例を示す断面模式図である。
図2】X線管用回転陽極ターゲットの他の一例を示す断面模式図である。
図3】X線管用回転陽極ターゲットの他の一例を示す断面模式図である。
図4】円盤状金属部材と円筒状金属部材との接合部を含むX線管用回転陽極ターゲットの断面の一例を示す断面模式図である。
図5】円盤状金属部材と円筒状金属部材との接合部を含むX線管用回転陽極ターゲットの断面の一例を示す断面模式図である。
図6】動圧軸受構造のX線管用回転陽極ターゲットの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、X線管用回転陽極ターゲットの一例を示す断面図である。図1に示すX線管用回転陽極ターゲット1は、円盤状金属部材2と、円筒状金属部材3と、X線放射部4と、を具備する。
【0011】
円盤状金属部材2は、円筒状金属部材3と接続するための穴を備える。円盤状金属部材2の直径は、例えば100mm以上200mm以下であることが好ましい。円盤状金属部材の厚さは、例えば10mm以上60mm以下であることが好ましい。円筒状金属部材3と接続する穴の直径は、例えば30mm以上70mm以下であることが好ましい。
【0012】
円盤状金属部材2は、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および鉄の少なくとも一つの金属、または上記金属を主成分とする合金を含むことが好ましい。X線管用回転陽極ターゲットからX線を放射しているとき、X線管用回転陽極ターゲットは高温になる。よって、円盤状金属部材2の耐熱性は高いことが好ましい。例えば、モリブデン(融点2620℃)、タングステン(融点3400℃)、タンタル(融点2990℃)、またはニオブ(融点2470℃)等の金属は、融点が高いため円盤状金属部材2の材料として好ましい。さらに、モリブデンまたはモリブデン合金は、高融点金属の中で加工しやすく、価格が低いため、円盤状金属部材2の材料としてより好ましい。
【0013】
合金の場合、金属酸化物および金属炭化物の少なくとも一つの金属化合物を含有する合金が円盤状金属部材2に用いられてもよい。酸化物や炭化物を含有させる場合、円盤状金属部材2は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、もしくは希土類元素の酸化物、および炭化物の少なくとも一つの材料を0.1質量%以上5質量%以下含有することが好ましい。希土類元素としては、例えばLa(ランタン)、Ce(セリウム)が挙げられる。金属酸化物や金属炭化物は、高融点金属の強度向上、高温下でのガス発生の抑制といった効果を有する。また、金属酸化物や金属炭化物は、高融点金属の結晶粒子の粒成長を抑制する効果も有する。
【0014】
鉄を使用する場合、合金工具鋼を用いることが好ましい。合金工具鋼は、炭素工具鋼にモリブデン、タングステン、クロム、珪素、バナジウム、ニッケルなどを添加することにより形成される。合金工具鋼として、例えば金型用合金工具鋼(例えばSteel Kogu Dice:SKD)を用いることが好ましい。
【0015】
円筒状金属部材3は、動圧軸受構造を有するX線管用回転陽極ターゲットを構成する部材の一つであり、X線管の回転軸としての機能を有する。円筒状金属部材3は、円筒を有する。円筒状金属部材3は、円盤状金属部材2に接合されている。図1において、円筒状金属部材3の側面は、円盤状金属部材2の穴の側面に接合されている。円筒状金属部材3が円盤状金属部材2と接合されている状態を円筒状金属部材3が円盤状金属部材2と一体化されている状態ともいう。すなわち、図1に示すX線管用回転陽極ターゲット1は、一体化された円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とを具備する。
【0016】
円筒状金属部材3の直径は、例えば40mm以上80mm以下であることが好ましい。円筒状金属部材3は、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および鉄の少なくとも一つの金属、または当該金属を主成分とする合金を含むことが好ましい。
【0017】
円筒状金属部材3は、金属酸化物や金属炭化物を含有してもよい。鉄を使う場合、円筒状金属部材3は、合金工具鋼、さらには金型用合金工具鋼であることが好ましい。円筒状金属部材3の材料は円盤状金属部材2と同じでもよい。円筒状金属部材3の材料は円盤状金属部材2と異なる材料でもよい。
【0018】
X線放射部4は、円盤状金属部材2に設けられている。X線放射部4は、円盤状金属部材2の上面に設けられている。X線放射部4は、陰極から照射される電子ビームによりX線を発生する領域である。X線放射部4は、例えばRe−W合金を含むことが好ましい。
【0019】
図2はX線管用回転陽極ターゲットの他の一例を示す断面図である。図2に示すX線管用回転陽極ターゲット1は、円盤状金属部材2と、円筒状金属部材3と、X線放射部4と、ろう材層5と、を具備する。円筒状金属部材3は、ろう材層5を介して円盤状金属部材2に接合されている。図1に示すX線管用回転陽極ターゲット1と共通する部分の説明として、図1の説明を適宜援用することができる。
【0020】
ろう材層5は、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との間に設けられる。ろう材層5に用いられるろう材の融点は、1500℃以上であることが好ましい。X線検査装置を連続稼働しているとき、X線管用回転陽極ターゲットの温度が1000℃付近まで上昇する。ろう材の融点が1500℃未満であると円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合の信頼性が低下しやすくなる。
【0021】
融点1500℃以上のろう材は、例えばTi、Zr、Hf、Pt、Co、Cr、Ni、およびVの少なくとも1つの元素を主成分として含む。融点1500℃以上のろう材は、例えばTi、Zr、Hf、およびPtの少なくとも1つの元素を主成分として含むことがより好ましい。融点1500℃以上のろう材は、TiおよびZrの少なくとも1つの元素を主成分として含むことがより好ましい。TiおよびZrの少なくとも1つの元素を主成分とするろう材を用いることにより、ろう材層5とモリブデン(モリブデン合金)との接合強度を高くすることができる。
【0022】
図3はX線管用回転陽極ターゲットの他の一例を示す断面図である。図3に示すX線管用回転陽極ターゲット1は、円盤状金属部材2と、円筒状金属部材3と、X線放射部4と、ろう材層5と、グラファイト部材6と、を具備する。図1に示すX線管用回転陽極ターゲット1と共通する部分の説明として、図1の説明を適宜援用することができる。
【0023】
グラファイト部材6は、円盤状金属部材2に接合されている。図3において、グラファイト部材6は、円盤状金属部材2の下面に接合されている。グラファイト部材6を設けることにより、円盤状金属部材2の熱を逃がしやすくすることができる。また、円盤状金属部材2の厚みを減らすことができ、X線管用回転陽極ターゲット1を軽量化することができる。
【0024】
図1ないし図3に示す構造に限定されず、例えば円盤状金属部材2の外周の少なくとも一部に金属酸化物被膜が設けられてもよい。例えば、円盤状金属部材2のX線放射部4が設けられていない領域に金属酸化物被膜が設けられてもよい。金属酸化物被膜は、例えば酸化チタン(TiO)と酸化アルミニウム(Al)との合金を含むことが好ましい。TiOおよびAlと円盤状金属部材2に適用されるモリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および鉄の少なくとも一つの金属、または上記金属を主成分とする合金とのなじみは良い。よって、密着性が高い膜を形成することができる。金属酸化物被膜を設けることにより、X線管用回転陽極ターゲット1の熱放射を促進させ、温度を下げることができる。
【0025】
金属酸化物被膜の形成法としては、例えば溶射法やスパッタ法などの成膜技術や、ペーストの塗布、焼成といった塗布技術が挙げられる。金属酸化物被膜の膜厚は300μm以下であることが好ましい。300μmを超えると、それ以上の効果が得られないだけでなく放熱性が低下するおそれがある。
【0026】
図4は、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合部を含む、円筒状金属部材3の長さ方向に垂直な方向のX線管用回転陽極ターゲット1の断面模式図である。円盤状金属部材2は、複数の第1の結晶粒子を有する第1の結晶組織を備える。円筒状金属部材3は、複数の第2の結晶粒子を有する第2の結晶組織を備える。
【0027】
複数の第1の結晶粒子の平均アスペクト比は、2未満、より好ましくは1.6以下である。複数の第2の結晶粒子の平均アスペクト比は、2以上、より好ましくは2.5以上である。平均アスペクト比の上限は8以下であることが好ましい。平均アスペクト比が8を超える場合、加工の負荷が大きくなる。また、円筒状金属部材に加工歪が残るおそれがある。
【0028】
結晶粒子のアスペクト比は、例えば以下のように求められる。円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合部を含み、円筒状金属部材3の長さ方向に垂直な方向のX線管用回転陽極ターゲット1の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で撮影する。撮影した断面の拡大写真に写る個々の結晶粒子の最大径を長径と定義する。拡大写真上において長径の中心を通り、かつ長径方向に垂直な方向の粒径を短径と定義する。短径に対する長径の比が結晶粒子のアスペクト比に相当する。上記作業を円盤状金属部材2の第1の結晶組織内の100粒の第1の結晶粒子に対して行い、得られた複数のアスペクト比の平均値を第1の平均アスペクト比と定義する。また、上記作業を円筒状金属部材3の第2の結晶組織内の100粒の第2の結晶粒子のそれぞれに対して行い、得られた複数のアスペクト比の平均値を第2の平均アスペクト比と定義する。このとき、アスペクト比の測定対象は、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合部から2mm以内の第1の領域に位置する第1の結晶粒子および当該接合部から2mm以内の第2の領域に位置する第2の結晶粒子である。図4の場合、ろう材層5から2mm以内の領域に位置する結晶粒子も測定対象とする。
【0029】
アスペクト比が2未満の場合、結晶粒子は実質的な球状組織を備える。球状組織は、熱の伝わり方が方向によって変化しない。よって、第1の結晶粒子の平均アスペクト比を2未満に調整することにより、円盤状金属部材2の表面全体で放熱することができる。例えば、電子ビームがX線放射部4に照射されたとき、X線放射部4の温度は約2500℃と非常に高い。よって、平均アスペクト比が2未満である第1の結晶粒子を含む第1の結晶組織を備える円盤状金属部材2を用いることにより、円盤状金属部材2の表面全体で放熱することができる。
【0030】
アスペクト比が2以上の場合、結晶粒子が実質的な柱状組織を備える。柱状組織は、結晶粒子の短径方向よりも長径方向に熱が伝わりやすい。よって、第2の結晶粒子の平均アスペクト比を2以上に調整し、第2の結晶粒子の長径方向を実質的に円筒状金属部材3の長さ方向に揃えることにより、円盤状金属部材2での熱を円筒状金属部材3の長さ方向に沿って逃がしやすくすることができる。よって、X線管用回転陽極ターゲット全体の放熱性が向上し、熱膨張による熱変形を小さくすることができる。例えば、動圧軸受構造を備えるX線管用回転陽極ターゲットの場合、円筒状金属部材3の内面が液体金属潤滑剤と接するため、効率的に放熱させることができる。
【0031】
第2の結晶粒子の長径方向が実質的に円筒状金属部材3の長さ方向に揃っている状態は、以下のように定義される。図5は、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合部を含む、円筒状金属部材3の長さ方向に垂直な方向のX線管用回転陽極ターゲット1の断面模式図である。円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合部を含み、円筒状金属部材3の長さ方向に垂直な方向のX線管用回転陽極ターゲット1の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で撮影する。撮影した断面の拡大写真(SEM写真)に写る個々の第2の結晶粒子の長径(最大径)を示す第1の直線を引く。円筒状金属部材3の長さ方向を示す第2の直線を引く(図5左側)。第1の直線と第2の直線とのずれをθとする。第2の結晶粒子の長径方向が実質的に円筒状金属部材3の長さ方向に揃っている状態とは、θが−25度以上+25度以下である状態である。
【0032】
平均アスペクト比が2以上である第2の結晶粒子のうち、単位面積1000μm×1000μmあたり個数割合で80%以上100%以下の第2の結晶粒子の長径方向と円筒状金属部材3の長さ方向とのずれは、−25度以上25度以下であることが好ましい。
【0033】
第1の結晶粒子の平均粒径は、20μm以上500μm以下であることが好ましい。平均粒径が20μm未満の場合、粒界の割合が多い。粒界が多くなると熱が伝わり難くなり放熱性が低下するおそれがある。平均粒径が500μmを超える場合、第1の結晶粒子の熱膨張による熱変形が大きくなるおそれがある。第1の結晶粒子の平均粒径は、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。
【0034】
第2の結晶粒子の平均粒径は、20μm以上800μm以下であることが好ましい。平均粒径が20μm未満であると、粒界の割合が多くなる。粒界が多くなると熱が伝わりにくくなり放熱性が低下するおそれがある。平均粒径が800μmを超えると第2の結晶粒子の熱膨張による熱変形が大きくなるおそれがある。第2の結晶粒子の平均粒径は、50μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0035】
平均粒径は以下のように求められる。アスペクト比の測定で使用する結晶粒子の長径と短径の情報を利用し、(長径+短径)÷2=結晶粒径とする。100粒の第1の結晶粒子に対して上記作業を行い、平均値を第1の結晶粒子の平均粒径とする。また、100粒の第2の結晶粒子に対して上記作業を行い、平均値を第2の結晶粒子の平均粒径とする。
【0036】
実施形態に係るX線管用回転陽極ターゲットは、放熱性に優れ、耐熱性に優れるため熱変形が生じにくい。よって、X線管用回転陽極ターゲットの寿命を長くすることができる。さらに、実施形態に係るX線管用回転陽極ターゲットを用いたX線管並びにX線検査装置の信頼性は高い。
【0037】
X線管用回転陽極ターゲットの回転駆動構造としては、動圧軸受構造または玉軸受構造を適用することができる。実施形態に係るX線管用回転陽極ターゲットは、円筒状金属部材を備える。よって、動圧軸受構造に適している。
【0038】
図6は、動圧軸受構造のX線管用回転陽極ターゲットの一例を示す断面模式図である。図6に示すX線管用回転陽極ターゲット1は、円盤状金属部材2と、円筒状金属部材3と、固定軸7と、液体金属潤滑剤8と、を具備する。図1に示すX線管用回転陽極ターゲット1と共通する部分の説明として、図1の説明を適宜援用することができる。
【0039】
固定軸7の表面および円筒状金属部材3の内面は、ラジアル方向やスラスト方向のらせん溝を有していてもよい。円筒状金属部材3の図面下部方向は、図示しないスラストリングなどで封止されている。回転磁界によって回転駆動させるためのステータなどが設けられている。X線管の場合は、X線照射部4に電子ビームを照射する陰極やX線管用回転陽極ターゲット1と陰極とを保持する真空容器などと組み合せてもよい。
【0040】
液体金属潤滑剤8は、円筒状金属部材3と固定軸7との間に供給されている。液体金属潤滑剤8は、例えばガリウム、ガリウム合金などを含む。動圧軸受構造は、固定軸7が円筒状金属部材3の内面と直接接触していないため振動が小さく、動作音が小さい。また、直接接触していないため、円筒状金属部材3の内面と固定軸7との磨耗がほとんどない。そのため、軸受としての寿命を長くすることができる。
【0041】
実施形態に係るX線管用回転陽極ターゲットの放熱性は高い。よって、熱変形が生じにくい。従って、連続稼働時の熱変形により固定軸7が円筒状金属部材3の内面と直接接触することを防ぐことができる。このため、優れた長期信頼性を有するX線管並びにX線検査装置を提供することができる。
【0042】
X線検査装置は、医療用検査装置や工業用検査装置など様々な分野に用いられている。医療用検査装置としては、CT装置(コンピュータ断層撮影装置等)が挙げられる。CT装置は、被検者(患者)にX線を照射し、透過したX線を、シンチレータなどを備えた検出器で検出して画像を得ることができる。近年では、2次元画像だけでなく、3次元画像を得ることもできる。
【0043】
CT装置を使用しているとX線管用回転陽極ターゲットの温度が上昇する。X線管用回転陽極ターゲットが一定の温度を超えると一定時間測定を止めて、X線管用回転陽極ターゲットを冷却する必要がある。X線管用回転陽極ターゲットを冷却する際、被検者の測定を行うことができない。実施形態に係るX線管用回転陽極ターゲットの放熱性および熱変形は優れている。よって、X線検査装置の連続稼働に対応することができる。従って連続稼働時間を長くすることができるため、被検者の測定を長時間連続して行うことができる。
【0044】
次に、実施形態に係るX線管用回転陽極ターゲットの製造方法例について説明する。前述の構成を具備していれば製造方法は特に限定されないが、効率的に得るための方法として次の方法がある。
【0045】
円盤状金属部材2の形成法としては、例えば粉末金型成形法、ホットプレス法、通電プラズマ焼結、溶射法のいずれか1つが挙げられる。
【0046】
粉末金型成形法では、原料粉末を金型に充填し、成形する。得られた成形体を必要に応じ脱脂した後、焼結する。ホットプレス法では、原料粉末を金型に充填し、圧力と温度を付加して焼結する。通電プラズマ焼結法では、成形体を通電焼結する。溶射法では、原料粉末を溶射して堆積させる。
【0047】
焼結工程の雰囲気は、真空雰囲気(10−3Pa以下)や不活性ガス雰囲気であることが好ましい。大気などの酸素含有雰囲気中では焼結体が酸化してしまうおそれがある。焼結または溶射を行った後、HIP(熱間静水圧プレス)を行ってもよい。HIPでは、温度が1600℃以上2000℃以下であり、圧力が100MPa以上であることが好ましい。
【0048】
原料粉末は、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、鉄またはこれらを主成分とする合金から選ばれる1つ材料を含むことが好ましい。主成分とする合金は、50質量%以上含有されている合金である。合金に金属酸化物または金属炭化物を添加してもよい。
【0049】
原料粉末の平均粒径は例えば0.5μm以上20μm以下、さらには1μm以上10μm以下であることが好ましい。上記範囲の原料粉末を用いることにより、第1の結晶粒子の平均粒径を例えば20μm以上500μm以下に制御しやすい。
【0050】
焼結前に成形体を形成してもよい。成形工程は、金型成形、CIP(冷間静水圧プレス)などを含んでいてもよい。成形圧力は100MPa以上300MPa以下であることが好ましい。円筒状金属部材3を接合するための穴を成形体に設けてもよい。
【0051】
原料粉末として、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、またはこれらの合金を用いる場合、焼結温度は1800℃以上2500℃以下であることが好ましい。焼結温度が1800℃未満では焼結体の密度が低くなりやすい。焼結温度が2500℃を超えると粒成長し過ぎるおそれがある。原料粉末として鉄または鉄合金を用いる場合、焼結温度が1000℃以上1600℃以下であることが好ましい。焼結雰囲気は、真空雰囲気(10−3Pa以下)や不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0052】
焼結体に鍛造加工または機械加工を行ってもよい。鍛造加工または機械加工を行うことにより、焼結体を所望のX線管用回転陽極ターゲットの形状に加工することができる。鍛造工程を行うことにより、焼結体中に存在するポアをつぶすことができる。その結果、気孔率が0%以上0.5%以下である高密度の円盤状金属部材2を得ることができる。
【0053】
鍛造加工は、温度が1400℃以上1700℃以下であり、加工率が10%以上60%以下である熱間鍛造加工を含むことが好ましい。温度が1400℃未満である場合、焼結体に割れが発生しやすい。温度が1700℃を超える場合、必要以上に熱変形するおそれがある。熱間鍛造加工の温度は、1500℃以上1600℃以下であることがより好ましい。加工率が10%未満である場合、加工量が小さいため、ポアが潰れないおそれがある。加工率が60%を超える場合、第1の結晶粒子の平均アスペクト比が2未満になりにくい。加工率は20%以上50%以下であることがより好ましい。機械加工としては、例えば表面研磨加工などが挙げられる。円盤状金属部材2において、円筒状金属部材3に接合される面は、研磨加工等により平坦面であることが好ましい。
【0054】
X線放射部4の形成方法としては、円盤状金属部材2の成形体の所定の位置にRe−W合金粉末層を設けて、焼結工程を行う方法が挙げられる。円盤状金属部材2となる焼結体を調製した後、Re−W合金粉末層を形成して焼成してもよい。Re−W合金層の形成法として、溶射法、CVD法等を用いてもよい。
【0055】
円筒状金属部材3の製造方法について説明する。円筒状金属部材3を構成する材料からなる焼結体インゴットまたは溶解品インゴットを用意する。これらインゴットに圧延加工、鍛造加工を施して板状部材に加工する。1800℃以上2500℃以下の焼結温度で焼結体インゴットを調製することが好ましい。焼結工程の雰囲気は、真空雰囲気(10−3Pa以下)や不活性ガス雰囲気である。
【0056】
板状部材を管形状に加工することにより円筒状金属部材3を作製する。このとき、円筒状金属部材3の長さ方向の加工率は10%以上90%以下であることが好ましい。加工率を10%以上にすることにより、円筒状金属部材3の第2の結晶粒子の平均アスペクト比を2以上に調整しやすくなる。円筒状金属部材3の長さ方向の加工率を10%以上とすることにより、第2の結晶粒子の長径を円筒状金属部材3の長さ方向に揃えやすい。加工率が90%を超える場合、板状部材を均一な厚さに加工することが困難である。円筒状金属部材3の長さ方向の加工率は15%以上70%以下であることが好ましい。板状部材を管形状に加工する場合、板状部材の結晶粒子のアスペクト比を考慮して加工率を決定することが好ましい。円筒状金属部材3の先端部と底辺部に蓋部材を取り付けてもよい。
【0057】
円筒状金属部材3の原料粉末は、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および鉄の少なくとも一つの金属、または上記金属を主成分とする合金を含むことが好ましい。原料粉末の平均粒径は、例えば0.5μm以上20μm以下、さらには1μm以上10μm以下であることが好ましい。この範囲の原料粉末を用いることにより、第2の結晶粒子の平均粒径を20μm以上800μm以下の範囲に制御しやすくなる。また、歪取り熱処理を施してもよい。円筒状金属部材3において、円盤状金属部材2に接合する面は研磨加工等により平坦面であることが好ましい。
【0058】
円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との一体化工程(接合工程)について説明する。円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合方法としては、例えばろう材法、焼きばめ法、冷やしばめ法、圧入法、溶接法などが挙げられる。円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合方法は、ろう材法であることがより好ましい。
【0059】
ろう材法では、円盤状金属部材2および円筒状金属部材3の一方または両方の接合面にろう材を塗布する。ろう材を塗布した後、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とをはめ合わせる。その後、熱処理して一体化する。
【0060】
ろう材法では、熱処理によりろう材を溶かして円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との隙間を埋めるようにろう材層5を形成する。例えばペーストを用いることにより、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との隙間にろう材が入り込んでいく。このため、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とを強固に接合することができる。また、ろう材が隙間に入り込んでいくために、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との隙間にポアが形成されにくい。よって、円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との間の放熱性を向上させることができる。
【0061】
焼きばめ法は、熱処理を行いながら円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とをはめ合わせる方法である。焼きばめ法では、例えば第1の部材に凹部を形成し、第2の部材に凸部を形成し、凸部と凹部とをはめ合わせる。焼きばめ法を用いることにより、ろう材を使用する必要がなくなるため、工程を簡素化できる。
【0062】
冷やしばめ法は、熱処理を行わずに円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とをはめ合わせる方法である。円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とを冷やしながらはめ合わせてもよい。室温中または冷やしながら円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とをはめ合わせることにより、熱膨張による円盤状金属部材2と円筒状金属部材3との接合不良を抑制することができる。圧入法は、圧力をかけて円盤状金属部材2と円筒状金属部材3とをはめ合わせる方法である。
【実施例】
【0063】
(実施例1A〜6A、比較例1A)
円盤状金属部材を構成する原料粉末として、平均粒径5μmのモリブデン(Mo)粉末を用意した。Mo粉末を金型成形して、円筒状金属部材と接合するための穴を備える円盤状の成形体を調製した。次に、2000℃、真空中(10−3Pa以下)で焼結工程を行った。得られたMo焼結体に表1に示す加工率で鍛造加工を行った。上記加工率は、円盤状金属部材の厚み方向の加工率である。得られたMo鍛造体に表面研磨加工を施した。円盤状金属部材の上面にRe−W合金層からなるX線放射部を設けた。X線放射部を設けていない円盤状金属部材の上面にTiO−Al膜(膜厚40μm)を設けた。以上により、直径が140mmであり、厚さが50mmであり、円筒状金属部材を接合するための穴が直径50mmである円盤状金属部材を作製した。
【0064】
円筒状金属部材を構成する原料粉末として、平均粒径5μmのモリブデン(Mo)粉末を用意した。次に、2000℃、真空中(10−3Pa以下)で焼結工程を行った。得られたMo焼結体に表1に示す加工率で圧延加工、鍛造加工を行い板状部材を調製した。上記加工率は、円筒状金属部材3の長さ方向の加工率である。以上のように、直径(外径)が50mmであり、内径が30mm(板厚5mm)であり、長さが100mmである円筒状金属部材を作製した。
【0065】
【表1】
【0066】
次に、円盤状金属部材と円筒状金属部材との接合工程を行った。接合工程では、円盤状金属部材における円筒状金属部材に接合される面および円筒状金属部材における円盤状金属部材に接合される面に対して表面粗さRa3μm以下の表面研磨加工を施した。次に、Tiろう材(融点1600℃)を用意し、円盤状金属部材の接合面および円筒状金属部材の接合面にそれぞれ塗布した。円盤状金属部材と円筒状金属部材とをはめ合わせた後、1700℃に加熱して接合した。上記工程により実施例1Aないし実施例6Aおよび比較例1Aに係るX線管用回転陽極ターゲットを作製した。
【0067】
実施例1Aないし6Aおよび比較例1Aに係るX線管用回転陽極ターゲットの円盤状金属部材と円筒状金属部材との接合部から2mm以内の領域を含むX線管用回転陽極ターゲットの断面組織をSEMを用いて観察して2000倍の拡大写真を得た。拡大写真を用いて第1の結晶粒子および第2の結晶粒子において、平均粒径、平均アスペクト比を求めた。また、円筒状金属部材において、長径が長さ方向に揃っている第2の結晶粒子の割合を求めた。その結果を表2および表3に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表2から分かる通り、実施例1Aないし実施例6Aに係る円盤状金属部材の平均アスペクト比は、いずれも2未満であった。これは加工率を所定の範囲に調整しているためである。これに対し、比較例1に係る円盤状金属部材の平均アスペクト比は2以上であった。
【0071】
表3から分かる通り、実施例1Aないし実施例6Aのように加工率が高い円筒状金属部材では、平均アスペクト比が2以上であった。加工率が高くなるに従い長径が長さ方向に揃っている第2の結晶粒子の割合が高くなった。
【0072】
(実施例1B〜6B、比較例1B)
実施例1Aないし実施例6Aおよび比較例1Aに係るX線管用回転陽極ターゲットを用いて実施例1Bないし実施例6Bおよび比較例1Bに係るX線管を作製した。X線管を作製するにあたり、回転機構を動圧軸受構造とした。また、円筒状金属部材の内面と固定軸の間に液体金属潤滑剤を充填した。
【0073】
実施例1Bないし実施例6Bおよび比較例1Bに係るX線管に対し、X線放射部に電子ビームを衝突させる曝射試験を行った。10000サイクルの曝射試験を行った後、円筒状金属部材の内径寸法を測定し、試験前と試験後の変形量(μm)を測定した。その結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4から分かる通り、実施例1Bないし実施例6Bに係るX線管において、円筒状金属部材の変化量は小さかった。このことから、実施例1Bないし実施例6Bに係るX線管の長期信頼性が優れていることが分かる。これは放熱性がよく、熱変形が生じにくい構造となっているためである。この結果、実施形態に係るX線管を用いたX線検査装置は連続稼働が可能となる。
【0076】
(実施例7A〜10A)
円盤状金属部材を構成する原料粉末として、平均粒径3μmのモリブデン(Mo)粉末、平均粒径1μmのTiC粉末を用意した。0.8重量%のTiC粉末と残部のMo粉末とを含む混合原料粉末を調製した。
【0077】
混合原料粉末の金型成形を行い、円筒状金属部材と接合するための穴を備える円盤状の成形体を調製した。次に、2000℃以上2200℃以下、真空中(10−3Pa以下)で焼結工程を行った。得られたMo合金焼結体に表5に示す加工率で鍛造加工を行った。上記加工率は、円盤状金属部材の厚み方向の加工率である。
【0078】
得られたMo合金鍛造体に表面研磨加工を施した。円盤状金属部材の表面にRe−W合金層からなるX線放射部を設けた。X線放射部を設けていない円盤状金属部材の表面にTiO−Al膜(膜厚40μm)を設けた。
【0079】
円筒状金属部材を構成する原料粉末として、平均粒径5μmのモリブデン(Mo)粉末を用意した。次に、2000℃以上2200℃以下、真空中(10−3Pa以下)で焼結工程を行った。得られたMo焼結体に表5に示す加工率で圧延加工、鍛造加工を行い板状部材を調製した。上記加工率は、円筒状金属部材の長さ方向の加工率である。
【0080】
得られた円盤状金属部材および円筒状金属部材のサイズを表5および表6に示す。また、円盤状金属部材における円筒状金属部材に接合される面および円筒状金属部材における円盤状金属部材に接合される面に対して表面粗さRa3μm以下の表面研磨加工を施した。
【0081】
次に、表6に示すように、Tiろう材(融点1600℃)またはZrろう材(融点1550℃)を用いて円盤状金属部材と円筒状金属部材を接合した。以上の工程により実施例7Aないし実施例10Aに係るX線管用回転陽極ターゲットを製造した。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
実施例7Aないし実施例10Aに係るX線管用陽極ターゲットの円盤状金属部材と円筒状金属部材との接合部から2mm以内の領域を含むX線管用回転陽極ターゲットの断面組織をSEMを用いて観察して2000倍の拡大写真を得た。拡大写真を用いて第1の結晶粒子および第2の結晶粒子において、平均粒径、平均アスペクト比を求めた。また、円筒状金属部材において、長径が長さ方向に揃っている第2の結晶粒子の割合を求めた。その結果を表7および表8に示す。
【0085】
表7から分かる通り、実施例7Aないし実施例10Aに係る円盤状金属部材の平均アスペクト比は、いずれも2未満であった。これは加工率を所定の範囲に調整しているためである。
【0086】
表6、表8から分かる通り、実施例7Aないし実施例10Aのように加工率が高い円筒状金属部材では、平均アスペクト比が2以上であった。加工率を所定の範囲に調整することにより長径が長さ方向に揃っている第2の結晶粒子の割合が高くなった。
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
(実施例7B〜10B)
実施例7Aないし実施例10Aに係るX線管用回転陽極ターゲットを用いてX線管を作製した。X線管を作製するにあたり、回転機構を動圧軸受構造とした。円筒状金属部材の内面と固定軸の間に液体金属潤滑剤を充填した。実施例7Bないし実施例10Bに係るX線管に対し、X線放射部に電子ビームを衝突させる曝射試験を行った。10000サイクルの曝射試験を行った後、円筒状金属部材の内径寸法を測定し、試験前と試験後の変形量(μm)を測定した。その結果を表9に示す。
【0090】
【表9】
【0091】
表9からMo合金を用い、円盤状金属部材および円筒状金属部材のサイズを変更しても変化量が小さいことが分かる。このことからX線管用回転陽極ターゲットの放熱性が高く、X線管用回転陽極ターゲットは、熱変形が生じにくい構造を備えることが分かる。
【0092】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6