【実施例】
【0021】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、実施例
1、5、6及び8は参考例である。
【0022】
〔実施例1〜9〕
市販の縦型ミキサーに、用意した粉原料の一部と、食塩4質量部及び水37質量部(澱粉を併用する場合は水40質量部)を混合して調製した食塩水とを投入し、常温下(気温約25℃の環境下)にて低速で2分間、続いて高速で2分間混合して、流動性を有する常温の前生地を得、該前生地を湯煎機で加熱して、温度(品温)が常温よりも高温の状態になるよう温度調製した(前生地調製工程)。
次いで、市販のピンミキサーに、前生地と、用意した粉原料の残りとを投入し、高速で5分間、続いて低速で5分間混合して本生地(麺生地)を調製した(本生地調製工程)。
次いで、得られた麺生地を常法により複合・圧延して厚さ2.6mmの麺帯とした後、10番の角の切刃を用いて麺線とすることで、麺類の一種である生うどんを製造した。
粉原料(穀粉類)としては、小麦粉(日清製粉株式会社製、商品名「わらべ」)を用い、さらに適宜、澱粉(株式会社Jオイルミルズ製、商品名「A700」)を用いた。前生地調製工程で用いた粉原料と本生地調製工程で用いた粉原料とは組成的には同じとした。
【0023】
〔比較例1及び2〕
従来の一般的な麺生地調製法、即ち、用意した粉原料を分割せずにその全部に加水し、混合(混捏)することで麺生地を調製した。より具体的には、市販の縦型ミキサーに、用意した粉原料の全部と、食塩4質量部及び水37質量部を混合して調製した食塩水とを投入し、常温下にて高速で5分間、続いて低速で5分間混合して、常温の麺生地を調製した。調製した麺生地を前記実施例と同様の方法で麺帯、麺線に順次加工して、生うどんを製造した。
【0024】
〔比較例3及び4〕
前生地の温度(品温)を75℃未満とし且つその品温を維持しつつ該前生地と粉原料の残りとを混合した以外は、実施例2と同様にして生うどんを製造した。尚、比較例3では、前生地調製工程において常温下にて調製した前生地を加熱せず(即ち湯煎機は使用せず)、比較例4では、前生地調製工程において常温下にて調製した前生地を湯煎機で加熱したものの、その加熱温度を各実施例より低くした。
【0025】
〔比較例5及び6〕
製造直後に温度(品温)が75〜100℃(より具体的には95℃)であった高温状態の前生地を、品温が75℃未満となるように冷蔵庫を用いて冷却し、且つその冷却後の品温を維持しつつ該前生地と粉原料の残りとを混合した以外は、実施例2と同様にして生うどんを製造した。
【0026】
〔比較例7〕
前生地の水分含量を59質量%未満(より具体的には58質量%)とした以外は、実施例2と同様にして生うどんを製造した。
【0027】
〔評価試験〕
各実施例及び比較例において、生地を麺帯、麺線に順次加工する際の作業性を下記評価基準に基づき評価した。その評価結果を下記表1及び2に示す。
また、評価対象の生うどんを熱湯で7分間茹で、その茹で調理済みのうどんの食感をそれぞれ下記評価基準に基づいて10名のパネラーに評価してもらった。その評価結果(パネラー10名の平均点)を下記表1及び2に示す。
【0028】
<作業性の評価基準>
5点:生地はかなり締まりがあり扱いやすいため、加工が極めて容易で製造が安定。
4点:生地は締まりがあり扱いやすいため、加工が容易で製造が安定。
3点:生地は適度な硬さがあるため、安定した製造が可能。
2点:生地が軟らかいか又は生地の水和がやや足りず、安定した製造が困難。
1点:生地がかなり軟らかいか又は生地の水和が足りず、安定した製造が不可。
<食感(湯戻り)の評価基準>
5点:湯戻りしており、粘弾性に優れる。
4点:湯戻りしており、粘弾性も適度。
3点:湯戻りが足りず、やや粉っぽく粘弾性に欠けるが、喫食は可能。
2点:湯戻りが足りず、粉っぽく粘弾性に欠ける。
1点:湯戻りが足りず、かなり粉っぽく粘弾性に欠ける。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
従来の一般的な麺生地調製法である比較例1及び2で得られた生うどんは、これを熱湯で7分間茹でた場合の食感が、表2に示す通り評価点としては1点であり、湯戻りが足りずかなり粉っぽいものであった。これに対し、各実施例で得られた生うどんは、比較例1及び2と同条件で茹でたにもかかわらず、表1に示す通り評価点としては3点以上であり、概ね湯戻りしていた。このことから、各実施例の製造方法によれば、可食状態にするための湯戻しに要する時間が比較的短時間で済む麺類が得られることがわかる。
特に、実施例2と比較例3との対比及び実施例6と比較例4との対比から、前生地の温度75℃以上とすることが、食感(湯戻り)の向上に有効であることが明らかである。
また、実施例7と比較例5及び6との対比から、前生地の温度(品温)を75℃以上に維持した状態で粉原料の残りと混合することが、食感(湯戻り)の向上に有効であることが明らかである。
また、実施例3と比較例7との対比から、前生地の水分含量は58質量%よりも70質量%程度とした方が、食感(湯戻り)の向上に有効であることが明らかである。
【0032】
実施例5は、主として、本生地中の全粉原料に占める前生地中の全粉原料の割合が30質量%と比較的多いことに起因して、本生地がやや軟らかすぎてしまい、その結果他の実施例に比して作業性に劣る結果となった。
実施例8は、前生地と粉原料の残りとの混合を減圧下ではなく常圧下で行った以外は実施例3と同じであるところ、実施例3に比して作業性に劣る結果となったことから、両者の混合を減圧下で行うことの有効性が明らかである。また、実施例3と実施例9との対比から、減圧条件としては、実施例3のように−760mmHg程度が好ましいことが明らかであり、本発明者らの知見によれば−500〜−760mmHg程度が好ましい。