(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386307
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】リンス槽および該リンス槽を用いた基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
H01L21/304 642A
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-177438(P2014-177438)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-51858(P2016-51858A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関本 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 賢一
【審査官】
小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−123874(JP,A)
【文献】
特開平11−121424(JP,A)
【文献】
特開2008−211038(JP,A)
【文献】
特開2009−152291(JP,A)
【文献】
特開2000−266465(JP,A)
【文献】
特開2012−178512(JP,A)
【文献】
特開2007−266253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンス液を貯留するための内槽と、
前記内槽を取り囲むように配置され、かつ前記内槽を越流したリンス液を受けるオーバーフロー槽と、
前記内槽の底部に設けられたドレイン孔を直接塞ぎ、かつ前記内槽の内部に配置された栓と、
前記栓が前記ドレイン孔を塞ぐ閉塞位置と、前記栓が前記ドレイン孔から離れた開放位置との間で前記栓を移動させるアクチュエータと、
前記内槽にリンス液を供給するリンス液供給管と、
前記オーバーフロー槽の底部に接続されたドレイン管と、
前記内槽の上方で前記アクチュエータに連結され、前記内槽の内部で前記栓に固定され、かつ前記内槽の内部を延びる棒部材とを備え、
前記ドレイン孔は、前記内槽の内部と前記オーバーフロー槽の内部とを連通することを特徴とするリンス槽。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記内槽の上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリンス槽。
【請求項3】
前記リンス液供給管を流れるリンス液の流量を変える流量制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のリンス槽。
【請求項4】
前記内槽内のリンス液の液面高さを検出する液面検出器をさらに備え、
前記流量制御装置は、リンス液の液面が所定の高さに達するまで、リンス液を第1の流量で前記リンス液供給管を流通させ、リンス液の液面が前記所定の高さに達した後、前記リンス液供給管を流れるリンス液の流量を前記第1の流量よりも低い第2の流量に制限することを特徴とする請求項3に記載のリンス槽。
【請求項5】
前記流量制御装置は、前記リンス液供給管に取り付けられた開閉弁と、該開閉弁をバイパスするバイパス管とを備えることを特徴とする請求項3に記載のリンス槽。
【請求項6】
前記内槽の底部内には、前記リンス液供給管と前記内槽の内部とを連通する液体流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリンス槽。
【請求項7】
内槽と、該内槽を囲むオーバーフロー槽とを有するリンス槽を用いて基板を洗浄する方法であって、
前記内槽の内部に配置された栓に固定され、かつ前記内槽の内部を延びる棒部材を下方に移動させて、前記内槽の底部に設けられたドレイン孔を前記栓で直接塞ぎ、
前記内槽内のリンス液の液面が所定の高さに達するまで、リンス液を第1の流量で前記内槽に供給し、
前記内槽内のリンス液の液面が前記所定の高さに達した後、リンス液を前記第1の流量よりも低い第2の流量で前記内槽内に供給し、
リンス液を前記第2の流量よりも高い流量で前記内槽内に供給しつつ、リンス液を前記内槽から前記オーバーフロー槽に越流させながら、基板を前記内槽内のリンス液に浸漬させて該基板をリンス液で洗浄し、
前記基板を前記リンス液から引き上げ、
前記内槽へのリンス液の供給を停止し、そして、
前記棒部材を上方に移動させて、前記栓を前記ドレイン孔から引き抜いて、前記内槽からリンス液を排出することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記内槽からリンス液を排出する工程は、前記栓を前記ドレイン孔から引き抜いて前記内槽内のリンス液を前記ドレイン孔を通じて前記オーバーフロー槽に流入させつつ、前記オーバーフロー槽の底部に接続されたドレイン管を通じてリンス液を前記オーバーフロー槽から排出する工程であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内槽の底部内に形成され、かつ前記リンス液供給管と前記内槽の内部とを連通する液体流路を通じて、リンス液を前記リンス液供給管から前記内槽内に流入させることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハなどの基板を洗浄するためのリンス槽および該リンス槽を用いた基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハなどの基板を処理する装置として、湿式処理装置が知られている。湿式処理装置の例としては、電解めっき装置、無電解めっき装置、ウェットエッチング装置が挙げられる。このような湿式処理装置は、一般に、基板を処理するための処理液を貯留する処理槽と、処理された基板を洗浄するためのリンス液を貯留するリンス槽とを備えている。基板は処理槽内の処理液に浸漬されて処理され、その後、基板はリンス槽に搬送され、リンス槽内のリンス液に浸漬されて洗浄(濯ぎ洗い)される。以下、リンス槽について
図8を参照して説明する。
【0003】
図8は一般的なリンス槽を示す図である。
図8に示すように、リンス槽は、リンス液を貯留する内槽101と、内槽101を取り囲むオーバーフロー槽102とを備えている。オーバーフロー槽102の底部にはドレイン管103が接続されており、ドレイン管103には排出バルブ104が取り付けられている。内槽101の底部には、ドレイン管105の一端が接続されており、他端はドレイン管103に接続されている。ドレイン管105には排出バルブ106が取り付けられている。ドレイン管105はオーバーフロー槽102の底部を貫通して延びている。オーバーフロー槽102からのリンス液の漏出を防止するために、オーバーフロー槽102の底部とドレイン管105との間の隙間を封じるパッキング112が設けられている。
【0004】
内槽101の底部にはリンス液を供給するためのリンス液供給管110が接続されており、このリンス液供給管110には開閉弁111が取り付けられている。開閉弁111が開かれると、リンス液はリンス液供給管110を通じて内槽101内に供給される。排出バルブ106が閉じられた状態では、リンス液は内槽101内に徐々に溜まる。内槽101内に溜まったリンス液は、やがて内槽101を越流してオーバーフロー槽102内に流入する。
【0005】
処理槽(図示しない)で処理された基板Wは内槽101の上方の所定位置まで搬送される。開閉弁111が開かれた状態で、つまり、リンス液が内槽101に供給されながら、基板Wは内槽101内のリンス液に浸漬されて洗浄(濯ぎ洗い)される。基板Wの洗浄中、リンス液は内槽101を越流してオーバーフロー槽102内に流入する。さらに、オーバーフロー槽102内のリンス液はドレイン管103を通じて外部に排出される。基板Wの洗浄後、排出バルブ106が開かれ、内槽101内に溜まったリンス液はドレイン管105およびドレイン管103を通じて外部に排出される。
特許文献1には、クイックダンプ機能を備えた水洗槽を電解めっき装置内に設けることが記載されている。また、特許文献2には、内槽とオーバーフロー槽からなる水洗槽が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/070128号パンフレット
【特許文献2】特開昭61−61425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示すリンス槽では、内槽101からリンス液を排出するためのドレイン管105と、オーバーフロー槽102からリンス液を排出するためのドレイン管103の2本のドレイン管を設ける必要がある。さらに、これらのドレイン管103,105にドレイン弁104,106をそれぞれ取り付ける必要がある。このため、リンス液排出構造が複雑となり、ドレイン管103,105およびドレイン弁104,106を設置するための大きなスペースが必要となる。
【0008】
さらに、リンス液が内槽101を満たした時点から基板Wが内槽101に導入される時点まで、基板洗浄に寄与しない多量のリンス液がドレイン管103を通じて排出され、リンス液の全体の使用量が増加してしまう。さらに、内槽101の貯留量として内槽101自体の容量のみならず、内槽101の底部からドレイン弁106までの貯留量も含まれるため、必要以上のリンス液が必要となってしまう。リンス液の使用量を低減するために、基板Wがリンス液に浸漬されるまで、開閉弁111を閉じて、リンス液の供給を停止することも考えられる。しかしながら、リンス液の流れが停滞すると、リンス液の流路内にバクテリアが発生し、リンス液が汚染されることがある。
【0009】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、リンス液の排出構造を簡素化することができ、および/またはリンス液の流れを止めずにリンス液の使用量を減らすことができるリンス槽および該リンス槽を用いた基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、リンス液を貯留するための内槽と、
前記内槽を取り囲むように配置され、かつ前記内槽を越流したリンス液を受けるオーバーフロー槽と、前記内槽の底部に設けられたドレイン孔を
直接塞
ぎ、かつ前記内槽の内部に配置された栓と、前記栓が前記ドレイン孔を塞ぐ閉塞位置と、前記栓が前記ドレイン孔から離れた開放位置との間で前記栓を移動させるアクチュエータと、前記内槽にリンス液を供給するリンス液供給管と、前記オーバーフロー槽の底部に接続されたドレイン管と
、前記内槽の上方で前記アクチュエータに連結され、前記内槽の内部で前記栓に固定され、かつ前記内槽の内部を延びる棒部材とを備え、前記ドレイン孔は、前記内槽の内部と前記オーバーフロー槽の内部とを連通することを特徴とするリンス槽である。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記アクチュエータは、前記内槽の上方に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記リンス液供給管を流れるリンス液の流量を変える流量制御装置をさらに備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記内槽内のリンス液の液面高さを検出する液面検出器をさらに備え、前記流量制御装置は、リンス液の液面が所定の高さに達するまで、リンス液を第1の流量で前記リンス液供給管を流通させ、リンス液の液面が前記所定の高さに達した後、前記リンス液供給管を流れるリンス液の流量を前記第1の流量よりも低い第2の流量に制限することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記流量制御装置は、前記リンス液供給管に取り付けられた開閉弁と、該開閉弁をバイパスするバイパス管とを備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記内槽の底部内には、前記リンス液供給管と前記内槽の内部とを連通する液体流路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様は、内槽と、該内槽を囲むオーバーフロー槽とを有するリンス槽を用いて基板を洗浄する方法であって、
前記内槽の内部に配置された栓に固定され、かつ前記内槽の内部を延びる棒部材を下方に移動させて、前記内槽の底部に設けられたドレイン孔を前記栓で直接塞ぎ、前記内槽内のリンス液の液面が所定の高さに達するまで、リンス液を第1の流量で前記内槽に供給し、前記内槽内のリンス液の液面が前記所定の高さに達した後、リンス液を前記第1の流量よりも低い第2の流量で前記内槽内に供給し、リンス液を前記第2の流量よりも高い流量で前記内槽内に供給しつつ、リンス液を前記内槽から前記オーバーフロー槽に越流させながら、基板を前記内槽内のリンス液に浸漬させて該基板をリンス液で洗浄し、前記基板を前記リンス液から引き上げ、前記内槽へのリンス液の供給を停止し、そして、
前記棒部材を上方に移動させて、前記栓を前記ドレイン孔から引き抜いて、前記内槽からリンス液を排出することを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は
、前記内槽からリンス液を排出する工程は、前記栓をドレイン孔から引き抜いて前記内槽内のリンス液を前記ドレイン孔を通じて前記オーバーフロー槽に流入させつつ、前記オーバーフロー槽の底部に接続されたドレイン管を通じてリンス液を前記オーバーフロー槽から排出する工程であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記内槽の底部内に形成され、かつ前記リンス液供給管と前記内槽の内部とを連通する液体流路を通じて、リンス液を前記リンス液供給管から前記内槽内に流入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内槽にドレイン管を接続する必要がないので、リンス液の排出構造を簡素化することができる。しかも、
図8に示すパッキング112も不要とすることができる。
さらに、本発明によれば、流量制御装置により、基板がリンス液に浸漬される直前まで、リンス液供給管を流れるリンス液の流量を低くすることができる。したがって、リンス液の使用量を低減することができ、かつリンス液の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】栓がドレイン孔から離間した状態のリンス槽を示す図である。
【
図3】クイックダンプリンスを行う場合のリンス液の供給排出工程を示すフローチャートである。
【
図4】リンス液の液面が第1の高さH1に達したときのリンス槽を示す図である。
【
図5】リンス液が内槽を越流してオーバーフロー槽内に流入したときのリンス槽を示す図である。
【
図6】栓を上昇させたときのリンス槽を示す図である。
【
図7】クイックダンプリンスを行わない場合のリンス液の供給排出工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1乃至
図7において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、一実施形態に係るリンス槽を示す図である。
図1に示すように、リンス槽は、内部にリンス液を貯留するための内槽1と、内槽1を取り囲むように配置されたオーバーフロー槽2とを備えている。内槽1の全体は、オーバーフロー槽2内に位置しており、オーバーフロー槽2は内槽1を越流したリンス液を受けるように構成されている。
【0017】
オーバーフロー槽2の底部にはドレイン管3が接続されている。内槽1はオーバーフロー槽2の底部から離間して配置されている。内槽1には、内槽1内のリンス液をオーバーフロー槽2に流入させるためのドレイン孔1bが設けられている。このドレイン孔1bは内槽1の底部1aに形成されており、内槽1の内部とオーバーフロー槽2の内部とを連通している。
【0018】
リンス槽は、内槽1にリンス液を供給するリンス液供給管10と、リンス液供給管10を流れるリンス液の流量を変える流量制御装置11とを備えている。リンス液供給管10には内槽1へのリンス液の供給を開始および停止するためのメインバルブ12が取り付けられている。リンス液供給管10は内槽1の底部1aに接続されている。内槽1の底部1a内には、リンス液供給管10と内槽1の内部とを連通する液体流路16が形成されており、リンス液供給管10から供給されたリンス液は、液体流路16を通じて内槽10内に流入する。リンス液としては、例えば純水が使用される。
【0019】
メインバルブ12の下流側には流量制御装置11が設けられている。この流量制御装置11は、リンス液供給管10に取り付けられた開閉弁20と、開閉弁20をバイパスするバイパス管21とを備えている。バイパス管21の一端は、メインバルブ12と開閉弁20との間の位置においてリンス液供給管10に接続され、他端は、開閉弁20の下流側の位置においてリンス液供給管10に接続されている。開閉弁20はメインバルブ12の下流側に配置されている。バイパス管21は、バイパス管21を通過するリンス液の流量を制限するオリフィス22を有している。
【0020】
メインバルブ12が開かれると、リンス液はリンス液供給管10および流量制御装置11を通って内槽1内に供給される。開閉弁20が開かれた状態におけるリンス液の流量は第1の流量である。開閉弁20が閉じられると、リンス液はバイパス管21およびリンス液供給管10を通って内槽1内に供給される。開閉弁20が閉じられた状態におけるリンス液の流量は、第1の流量よりも低い第2の流量である。このように、流量制御装置11は、開閉弁20の開閉により、リンス液供給管10を流れるリンス液の流量を変えることができる。流量制御装置11として、流量調整弁を使用することも可能である。
【0021】
リンス槽は、内槽1の底部1aに設けられたドレイン孔1bを塞ぐための栓25と、栓25を移動させるアクチュエータとしてのエアシリンダ26とを備えている。エアシリンダ26は、栓25がドレイン孔1bを塞ぐ閉塞位置と、栓25がドレイン孔1bから離れた開放位置との間で栓25を移動させるように構成されている。エアシリンダ26は、内槽1の上方に配置されており、鉛直方向に延びる棒部材27を介して栓25に連結されている。
【0022】
エアシリンダ26は、ピストン29と、このピストン29に固定されたピストンロッド28とを備えている。エアシリンダ26の内部空間は、ピストン29により第1圧力室29aと第2圧力室29bとに分けられている。棒部材27の上端はエアシリンダ26のピストンロッド28に接続されており、棒部材27の下端には栓25が固定されている。
【0023】
エアシリンダ26には2本の気体移送管30,31が接続されている。気体移送管30,31は図示しない気体供給源に接続されている。気体移送管30を通じてエアシリンダ26の第1圧力室29a内に気体を供給すると、ピストン29およびピストンロッド28が下方に移動し、栓25はドレイン孔1bを塞ぐ閉塞位置まで移動される。栓25のサイズはドレイン孔1bよりも大きいため、栓25はドレイン孔1bを閉じることができる。
【0024】
図2は開放位置に移動された栓25を示す図である。
図2に示すように、気体移送管31を通じてエアシリンダ26の第2圧力室29b内に気体を供給すると、ピストン29およびピストンロッド28が上方に移動し、栓25はドレイン孔1bから離れた開放位置まで移動される。この栓25の上方への移動により、ドレイン孔1bが開かれる。栓25を移動させるアクチュエータとして、エアシリンダに代えて、サーボモータとボールねじとの組み合わせなどの他の装置を用いてもよい。
【0025】
内槽1内のリンス液は、ドレイン孔1bを通ってオーバーフロー槽2内に流入し、さらにドレイン管3を通ってオーバーフロー槽2から排出される。このような構成によれば、内槽1にドレイン管を接続する必要がないので、リンス液の排出構造を簡素化することができ、リンス液の排出構造の設置に必要なスペースを小さくすることができる。また、メンテナンスのために内槽1を容易にオーバーフロー槽2から取り外すことができる。しかも、
図8に示すパッキング112も不要とすることができる。
【0026】
リンス槽は、内槽1内に溜まったリンス液の液面高さを検出する第1の液面検出器35と、オーバーフロー槽2内に溜まったリンス液の液面高さを検出する第2の液面検出器36とを備えている。第1の液面検出器35は、例えば、複数の液面高さを検出することができる液面センサであり、第2の液面検出器36はフロート式液面検出器である。
【0027】
図1および
図2に示すように、第1の液面検出器35は3つの液面高さ、すなわち下限高さLL、第1の高さH1、および第2の高さH2を検出するように構成されている。下限高さLLは内槽1の底部1aよりもやや高く、第1の高さH1は内槽1の上端よりもやや低く、第2の高さH2は内槽1の上端よりもやや高い位置である。
【0028】
リンス槽は、流量制御装置11の動作を制御する動作制御部37をさらに備えている。より具体的には、動作制御部37は、内槽1およびオーバーフロー槽2内のリンス液の液面高さに基づいて、メインバルブ12および開閉弁20の動作を制御するように構成されている。第1の液面検出器35は動作制御部37に接続されており、動作制御部37はメインバルブ12および開閉弁20に接続されている。第1の液面検出器35が上記3つの液面高さのいずれかを検出したときに、動作制御部37はメインバルブ12および/または開閉弁20を開閉させる。
【0029】
第2の高さH2は、内槽1の上端よりもやや高い位置に設定されているので、リンス槽が正常に動作している場合は、リンス液の液面は第2の高さH2に達することはない。第1の液面検出器35が第2の高さH2を検出した場合は、オーバーフロー槽2の排水に異常があること、つまり、リンス液がオーバーフロー槽2から正常に排出されず、リンス液の液面が第2の高さH2に達したことを示している。基板の処理中に、第1の液面検出器35が第2の高さH2を検出した場合には、処理中の基板の処理は継続され、その後、警報が発せられるとともに次の基板処理は行われない。さらに、第2の液面検出器36は上限高さHHを検出するように構成されており、動作制御部37に接続されている。上限高さHHはオーバーフロー槽2の上端と同じ高さである。第2の液面検出器36が上限高さHHを検出すると、動作制御部37はメインバルブ12を閉じる。その結果、リンス液がオーバーフロー槽2から溢れることが防止される。
【0030】
次に、基板Wの洗浄方法について、
図3を参照して説明する。洗浄される基板Wの例としては、めっきされたウェハ、ウェットエッチング処理されたウェハが挙げられる。
図3は基板Wの洗浄方法を示すフローチャートである。内槽1のドレイン孔1bが栓25で塞がれた状態で、メインバルブ12が開かれ(ステップ1)、次いで開閉弁20が開かれる(ステップ2)。これにより、リンス液は第1の流量でリンス液供給管10を通じて内槽1内に供給される。内槽1内のリンス液の液面は下限高さLLに達し、やがて第1の高さH1に達する。
図4は、リンス液の液面が第1の高さH1に達したときのリンス槽を示す図である。
【0031】
第1の液面検出器35が第1の高さH1を検出すると(ステップ3)、第1の液面検出器35から動作制御部37に検出信号が送られる。第1の液面検出器35からの検出信号を受けると、動作制御部37は開閉弁20を閉じる(ステップ4)。
【0032】
開閉弁20が閉じられると、リンス液はバイパス管21を通って内槽1内に供給される。つまり、内槽1に供給されるリンス液の流量は第1の流量から第2の流量に切り換えられる(第1の流量>第2の流量)。リンス液は内槽1を越流してオーバーフロー槽2内に流入する(
図5参照)。オーバーフロー槽2内に流入したリンス液はドレイン管3を通じて外部に排出される。
図5において、動作制御部37は省略されている。
【0033】
上述したように、ウェハなどの基板Wは処理槽で処理され、その後、リンス槽に搬送される。もし、基板Wがリンス槽の上方の所定位置に搬送されるまで、リンス液が第1の流量で供給され続けると、基板洗浄に寄与しない大量のリンス液がドレイン管3を通じて外部に排出されてしまう。本実施形態によれば、リンス液の液面が内槽1の上端に近い第1の高さH1に達した後、リンス液は第1の流量よりも少ない第2の流量で供給される。つまり、内槽1に供給されるリンス液の流れを止めることなく、より少ない量のリンス液がドレイン管3を通じて排出される。よって、バクテリアの発生を防止しつつ、リンス液の使用量を低減することができる。
【0034】
基板Wが内槽1の上方の所定位置(基板下降可能位置)まで搬送されると(ステップ5)、基板Wの下降が開始される(ステップ6)。その後、開閉弁20が開かれ(ステップ7)、リンス液は第2の流量から第1の流量に切り換えられる。リンス液を第2の流量よりも高い第1の流量で内槽1内に供給しつつ、リンス液を内槽1からオーバーフロー槽2に越流させながら、基板Wを内槽1内のリンス液に浸漬させて、基板Wを洗浄(濯ぎ洗い)する。基板Wの洗浄が開始されてから所定の洗浄時間が経過すると(ステップ8)、開閉弁20が閉じられ(ステップ9)、基板Wの洗浄が終了する。基板Wの洗浄中に内槽1に供給されるリンス液の流量は第1の流量でなくてもよく、第2の流量よりも高い流量であれば特に限定されない。
【0035】
基板Wの洗浄方法として、クイックダンプリンス(QDR)と呼ばれる洗浄方法がある。この洗浄方法は、基板Wをリンス液に浸漬させた後、内槽1内のリンス液を、処理液などの不純物とともに急速に排出する方法である。本実施形態では、クイックダンプリンスは、選択的に実行される。
【0036】
図3に示すフローチャートは、クイックダンプリンスが行われる場合の動作フローを示している。所定の洗浄時間が経過して開閉弁20が閉じられた後(ステップ9)、メインバルブ12が閉じられ(ステップ10)、内槽1内へのリンス液の供給が停止される。その後、栓25はエアシリンダ26により開放位置まで上方に移動され(ステップ11)、ドレイン孔1bが開かれる。内槽1内のリンス液はドレイン孔1bを通じてオーバーフロー槽2に流入し、さらにドレイン管3を通じて外部に排出される。リンス液の液面が低下して下限高さLLに達すると、第1の液面検出器35が下限高さLLを検出する(ステップ12)。その後、
図6に示すように、基板Wは内槽1から引き上げられる(ステップ13)。
【0037】
動作制御部37は、下限高さLLが検出された時点から予め設定された遅延時間が経過したか否かを判断する。遅延時間が経過すると(ステップ14)、再び栓25は閉塞位置まで下降され(ステップ15)、栓25によってドレイン孔1bが塞がれる。この遅延時間は次の理由により設けられている。第1の液面検出器35が下限高さLLを検出した時点では、
図6に示すように、リンス液は内槽1内にわずかに残っている。この状態で内槽1のドレイン孔1bが塞がれると、内槽1内のリンス液は完全に排出されない。そこで、下限高さLLが検出された時点から予め設定された遅延時間が経過したときに、栓25によってドレイン孔1bが閉じられる。遅延時間が経過するまでに内槽1内に残留しているリンス液は完全に排出される。
【0038】
図7は、クイックダンプリンスを行わない場合のリンス液の供給排出工程を示すフローチャートである。ステップ1からステップ9までの動作は
図3のフローチャートに示される動作と同じである。クイックダンプリンスを行わない場合、基板Wが洗浄され、開閉弁20が閉じられた後(ステップ9)、内槽1から基板Wが引き上げられ、内槽1の上方位置まで上昇される(ステップ10)。そして、基板Wが内槽1から引き上げられた後、メインバルブ12が閉じられ(ステップ11)、内槽1内へのリンス液の供給が停止される。その後、エアシリンダ26によって栓25が開放位置まで上昇され(ステップ12)、内槽1内のリンス液が排出される。第1の液面検出器35が下限高さLLを検出してから(ステップ13)予め設定された遅延時間が経過したとき(ステップ14)、栓25は閉塞位置まで下降され(ステップ15)、内槽1のドレイン孔1bが塞がれる。
【0039】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよい。
【符号の説明】
【0040】
1 内槽
1a 底部
1b ドレイン孔
2 オーバーフロー槽
3 ドレイン管
10 リンス液供給管
11 流量制御装置
12 メインバルブ
16 液体流路
20 開閉弁
21 バイパス管
22 オリフィス
25 栓
26 エアシリンダ
27 棒部材
28 ピストンロッド
29 ピストン
29a,29b 圧力室
30,31 気体移送管
35 第1の液面検出器
36 第2の液面検出器
37 動作制御部
W 基板(ウェハ)