(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の蓄電池は、蓄電容量に対して大きな電力で充放電が可能な第1の蓄電池と、前記第1の蓄電池に比して、前記蓄電容量に対する充放電可能電力が小さい第2の蓄電池とを含み、
前記制御部は、前記算出した指標値に基づく閾値と、前記受信部により受信された充放電電力指令値とを比較し、前記充放電電力指令値の絶対値が前記閾値の絶対値よりも大きい場合に前記第1の蓄電池を充放電させ、前記充放電電力指令値の絶対値が前記閾値の絶対値よりも小さい場合に前記第2の蓄電池を充放電させる、
請求項1記載の電力補助システム。
前記制御部は、自システムの設置条件に応じた制御基準期間において前記受信部により受信された充放電電力指令値の履歴に基づいて、前記充放電電力指令値の分布の広がりの程度を示す指標値を算出する、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の電力補助システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態の電力補助システムについて説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る電力補助システム100の一例を示す概略図である。電力補助システム100は、例えば、電力系統への電力の供給能力が不安定な発電システムと共に設けられ、電力系統への電力供給の変動を緩和させるべく補助するシステムである。
【0009】
電力補助システム100は、発電システムにより発電された電力のうち、電力系統における需要電力に対して過多となる余剰電力を充電するための複数の蓄電池を備える。電力補助システム100は、複数の蓄電池のうち、稼働させるべき蓄電池を切替えて制御するにあたり、例えば、上位EMS(Energy Management System)等の上位サーバから送信される充放電電力指令値を受信する。充放電電力指令値とは、外部から供給される所定の電力を蓄電池内部に充電させる、または蓄電池内部から所定の電力を外部に放電させる指令値である。
【0010】
本実施形態では、一例として、風力発電システム500を補助する電力補助システム100として説明する。風力発電システム500は、例えば、電線路ELを介して電力補助システム100と接続されている。風力発電システム500は、例えば、回転軸を有する風車WTと、その回転軸と連結される発電部510と、電力変換部520とを備えている。風車WTは、例えば、複数枚の矩形板状や帯板状等に形成されたブレードが、図示しない回転軸と連結し、さらに周方向に均等な相対角度をもって配置されている。風車WTは、ブレードに風を受けることで回転し、連結している回転軸を回転させる。回転軸と連結される発電部510は、回転軸が回転することにより生じる回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、交流電力を発電する。電力変換部520は、発電部510が発電した電力を配電用の電力に変換し、電線路ELを介して外部に供給する。これによって、発電部510が発電した交流電力は、電力変換部520および電線路ELを介して電力補助システム100に供給される。また、風力発電システム500は、自発電システム内で発電した電力量を示すデータ(発電電力データ)を電力補助システム100に送信する。なお、発電電力データは、風力発電システム500内部に備えられている図示しない制御装置等によって算出されるものとする。
【0011】
なお、本実施形態では、発電システムとして風力発電システム500を例に挙げて説明するが、この限りではない。発電システムは、例えば、太陽光発電システムや地熱発電システム、バイオマス発電システム等の再生可能エネルギーを利用した発電システムであってもよい。太陽光発電システムは、例えば、電線路を介して電力補助システム100と接続されている。太陽光発電システムは、例えば、太陽電池と、電力変換部とを備えている。太陽電池は、例えば、結晶シリコン系やアモルファスシリコン系等の半導体である。太陽電池は、半導体に照射された太陽光が有する光エネルギーを電気エネルギーに変換し、直流電力を発電する。電力変換部は、太陽電池が発電した電力を配電用の電力に変換し、電線路を介して外部に供給する。これによって、太陽電池が発電した直流電力は、電力変換部および電線路を介して電力補助システム100に供給される。
【0012】
電力補助システム100は、制御装置110と、第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2とを備えている。第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2は、並列に接続されている。電力補助システム100は、例えば、風力発電システム500により供給された交流電力を、第1蓄電池ユニットUN1または第2蓄電池ユニットUN2に供給させる。以下、第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2を区別しない場合、単に「蓄電池ユニット」と記載する。また、電力補助システム100では、例えば、充放電レートが異なるといった、充放電特性が異なる複数の蓄電池を利用することができる。本実施の形態においては、第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2が、それぞれ異なる充放電特性を有する蓄電池を備える場合を例にとって説明する。
【0013】
第1蓄電池ユニットUN1は、例えば、遮断部SW1と、インバータIV1と、第1蓄電池B1とを備えている。第1蓄電池ユニットUN1は、第1蓄電池B1の蓄電容量(充電状態)を示すSOC(State Of Charge)値を制御装置110に送信する。
【0014】
遮断部SW1は、制御装置110の制御動作に応じて、第1蓄電池ユニットUN1側と風力発電システム500との間を導通状態、または遮断状態にする開閉器である。遮断部SW1は、例えば、図示しない電流計によって短絡事故等の事故電流が流れたこと検知した場合、後段のインバータIV1および第1蓄電池B1に事故電流が流れる前に、第1蓄電池ユニットUN1側と風力発電システム500との間を遮断状態にし、第1蓄電池ユニットUN1側に事故電流が流れるのを防止する。これによって、電力補助システム100を保護し、風力発電システム500側への事故電流の波及を防止する。また、遮断部SW1は、電力補助システム100のメンテナンス時に、第1蓄電池ユニットUN1側と風力発電システム500との間を遮断状態にして、電力補助システム100を発電システム側から切り離す。これによって、より安全にメンテナンスの作業を行うことができる。
【0015】
インバータIV1は、風力発電システム500から供給される交流電力を直流電力に変換する変換装置である。インバータIV1は、制御装置110の制御に基づいて、変換した直流電力を用いて第1蓄電池B1を充電する。また、インバータIV1は、制御装置110の制御に基づいて、第1蓄電池B1が蓄電している電力(直流電力)を放電させる。インバータIV1は、第1蓄電池B1から放電された直流電力を交流電力に変換する。
【0016】
第1蓄電池B1は、例えば、充放電特性を示す充放電レートが2[C]以上の大きな充放電ができる二次電池である。充放電レート(単位[C])とは、電池の公称容量に対する放電時の電流の相対比である。例えば、充放電レート2[C]および容量値5[Ah]を有する第1蓄電池B1では、10[A]の電流を、0.5時間放電(充電)することができる。第1蓄電池B1は、例えば、鉛蓄電池やナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池である。
【0017】
なお、第1蓄電池B1および後述する第2蓄電池B2は、制御装置110によって、最も劣化が小さい状態に近づくように制御される。ここで、最も劣化が小さい状態とは、例えば、SOC値が50%のときである。以下、最も劣化が小さい状態のSOC値を「目標値」と記載する。目標値は、50%に限らず、第1蓄電池B1および第2蓄電池B2の種類や形状に応じて任意に決めてよいし、電力補助システム100(第1蓄電池B1および第2蓄電池B2)の使用環境(例えば、温度や湿度)等に応じて決められてもよい。
【0018】
第2蓄電池ユニットUN2は、例えば、遮断部SW2と、インバータIV2と、第2蓄電池B2とを備えている。第2蓄電池ユニットUN2は、第2蓄電池B2のSOC値を制御装置110に送信する。
【0019】
遮断部SW2は、制御装置110の制御動作に応じて、第2蓄電池ユニットUN2側と風力発電システム500との間を導通状態、または遮断状態にする開閉器である。遮断部SW2は、例えば、図示しない電流計によって短絡事故等の事故電流が流れたこと検知した場合、後段のインバータIV2および第2蓄電池B2に事故電流が流れる前に、第2蓄電池ユニットUN2側と風力発電システム500との間を遮断状態にし、第2蓄電池ユニットUN2側に事故電流が流れるのを防止する。これによって、電力補助システム100を保護し、風力発電システム500側への事故電流の波及を防止する。また、遮断部SW2は、電力補助システム100のメンテナンス時に、第2蓄電池ユニットUN2側と風力発電システム500との間を遮断状態にして、電力補助システム100を発電システム側から切り離す。これによって、より安全にメンテナンスの作業を行うことができる。
【0020】
インバータIV2は、風力発電システム500から供給される交流電力を直流電力に変換する。インバータIV2は、変換した直流電力を、制御装置110の制御に基づいて、第2蓄電池B2に充電させる。また、インバータIV2は、制御装置110の制御に基づいて、第2蓄電池B2が蓄電している電力(直流電力)を放電させる。インバータIV2は、第2蓄電池B2から放電された直流電力を交流電力に変換する。
【0021】
第2蓄電池B2は、例えば、充放電特性を示す充放電レートがおよそ1[C]程度の、第1蓄電池B1と比較して小さな充放電しかできない二次電池である。例えば、充放電レート1[C]および容量値5[Ah]を有する第2蓄電池B2では、5[A]の電流を、1時間放電(充電)することができる。第2蓄電池B2は、例えば、鉛蓄電池やナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池である。
【0022】
次に、
図2を参照して、第1の実施形態に係る制御装置110の機能構成について詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態に係る制御装置110の機能構成の一例を示す図である。
【0023】
制御装置110は、第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2を制御するコンピュータである。制御装置110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、フラッシュメモリ等の記憶部130、他装置と通信を行うための通信インターフェース等を備えるコンピュータ装置である。
【0024】
制御装置110は、制御部120および記憶部130を備える。制御部120は、受信部122と、算出部124と、充放電制御部126とを備える。制御部120は、例えば、プロセッサが記憶部130に格納されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの制御部120の各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0025】
受信部122は、風力発電システム500から所定の送信周期で送信される発電電力データを受信する。ここで、風力発電システム500の送信周期、その他の条件を、電力補助システム100の設置条件と記載する。受信部122は、例えば、風力発電システム500から10秒毎に送信される発電電力データを、制御基準期間(例えば、1時間)の間受信する。受信部122は、受信した発電電力データと、受信した時刻とを対応付けて記憶部130に記憶させる。
【0026】
また、受信部122は、第1蓄電池ユニットUN1から送信される第1蓄電池のSOC値と、第2蓄電池ユニットUN2から送信される第2蓄電池のSOC値とを受信する。受信部122は、受信した第1蓄電池のSOC値および第2蓄電池のSOC値を記憶部130に記憶させる。
【0027】
記憶部130は、電力補助システム100の設置条件に応じた期間、充放電電力指令値や発電電力データ、および後述する目標充放電電力データや統計値、標準偏差σ、平均値μ等を記憶するように制御される。なお、記憶部130は、制御装置110に内蔵されるものに代えて、外付け型の記憶装置(例えばNAS(Network Attached Storage)装置)でもよい。
【0028】
算出部124は、記憶部130に記憶された発電電力データから、例えば移動平均などの統計値を算出する。算出部124は、例えば、受信部122が10秒ごとに受信した発電電力データを1回とした場合、計16回分(160秒間)の発電電力データから移動平均を算出する。算出部124は、算出した移動平均を、算出される度に再度計算して更新する。ここで、最新の発電電力データをDw(k)とし、n回前の発電電力データをDw(k−n)とすると、算出部124は、受信部122が発電電力データを受信する度に、移動平均Mw(k)を、下記に示す式(1)より算出する。なお、算出部124は、移動平均を16回分の平均値として算出したが、これに限られない。算出部124は、例えば、移動平均を32回分の平均値として算出してもよく、システムの処理速度等に応じて任意に母数を決めてよい。係る処理を行うための構成は、例えば、LPF(Low Pass Filter)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0030】
算出部124は、例えば、算出した移動平均と、最新の発電電力データDw(k)との差分に基づいて、制御基準期間内の目標充放電電力データを算出する。目標充放電電力データとは、電力補助システム100が充放電すべき電力を示すデータである。目標充放電電力データPd(k)は、下記に示す式(2)より算出することができる。なお、目標充放電電力データPd(k)の正の符号は、放電すべき電力量を表し、負の符号は、充電すべき電力量を表しているものとする。
【0032】
また、式(1)および(2)により算出される目標充放電電力データの一例を
図3に示す。
図3は、1時間分の目標充放電電力データの度数分布の一例を示す図である。
【0033】
算出部124は、算出した目標充放電電力データPd(k)から、分布の広がりの程度を示す指標値として標準偏差σを、更に目標充放電電力データPd(k)の平均値μを算出する。算出部124は、例えば、
図3に示す度数分布から、標準偏差51.0[kW]および平均値0[kW]といった値を算出することができる。なお、平均値μは、移動平均の算出(サンプリング)の方法によって、0以外の値となるように求めてもよい。
【0034】
算出部124は、算出した標準偏差σおよび平均値μをパラメータとする正規分布に基づいて、目標充放電電力データの確率密度を示した確率分布を算出する。
【0035】
図4は、算出部124により算出される確率分布の一例を示す図である。
図4の横軸は、充放電指令値(単位は[kW])を示す。また、
図4の縦軸は、確率密度を示す。
図4では、曲線LN1が正規分布の分布曲線を示す。なお、
図4に示す確率分布は、予め分布曲線で囲まれる領域(面積)が1になるように正規化(規格化)されている。
【0036】
算出部124は、算出した確率分布の確率変数(横軸)を示す偏差値と、算出した確率分布の曲線(縦軸)が示す発生頻度を乗算することにより、次の制御基準期間(1時間)の充放電を予想する充放電電力データの分布を算出する。以下、次の制御基準期間の充放電を予想する充放電電力データの分布を、「充放電電力データの予想分布」と記載する。
【0037】
図5は、充放電電力データの予想分布の一例を示した図である。
図5の横軸は、充放電指令値(単位は[kW])を示す。また、
図5の縦軸は、電力(単位は[kW])を示す。
図5中、曲線LN2が、充放電電力データの予想分布の分布曲線を示す。
図5に示すように、例えば、発生頻度の高い原点(0)付近の確率変数において、充放電電力データの電力値が微小値であることから、充放電電力データの予想分布の値は、0付近に集中する。原点付近からプラス側、マイナス側に移行したポイントでは、予想分布の絶対値は徐々に増加し、プラスマイナス1σ前後で最大値をとる。なお、充放電電力データの予想分布の分布曲線で囲まれる領域(面積)は、電力量に相当する。
【0038】
算出部124は、算出した充放電電力データの予想分布と、記憶部130に記憶された第1蓄電池のSOC値および第2蓄電池のSOC値とに基づいて、割当切替えしきい値TH1、TH4と、運転停止切替えしきい値TH2、TH3を算出して設定する。
【0039】
割当切替えしきい値TH1とは第1蓄電池ユニットUN1と第2蓄電池ユニットUN2との間で充電状態となる蓄電池ユニットと停止状態となる蓄電池ユニットとを切替えるために、運転停止切替えしきい値TH2とは第2蓄電池ユニットが充電状態もしくは停止状態を切替えるために、運転停止切替えしきい値TH3とは第2蓄電池ユニットが放電状態もしくは停止状態を切替えるために、割当切替えしきい値TH4とは第1蓄電池ユニットUN1と第2蓄電池ユニットUN2との間で放電状態となる蓄電池ユニットと停止状態となる蓄電池ユニットとを切替えるために、充放電電力データの予想分布に基づいて設定されるしきい値である。
【0040】
ここで、
図6を参照して、しきい値の設定方法について説明する。
図6は、第1の実施形態における充放電電力データの予想分布に対する蓄電池ユニットの制御の一例を示した図である。
算出部124は、次の制御基準区間において充放電電力(第1蓄電池ユニットUN1については区間IN1における積分値と区間IN5における積分値との合計、第2蓄電池ユニットUN2については区間IN2における積分値と区間IN4における積分値との合計)が、SOC値と目標値との差分に蓄電容量を乗じた値に一致するように、しきい値を設定する。
なお、第1蓄電池B1のSOC値と目標値との差、および第2蓄電池B2のSOC値と目標値との差に対するしきい値TH1〜TH4との対応関係は、予めシミュレーションや実験等によって算出され、マップや関数の形式で記憶部130に記憶されているものとする。
【0041】
また、算出部124は、算出したしきい値にヒステリシスを設けてもよい。
図7は、ヒステリシスを設けた場合のしきい値を示した一例の概略図である。
算出部124は、例えば、算出したしきい値THに対して、所定の補正量Δσに基づいて、変化する方向毎にしきい値を補正する。算出部124は、例えば、状態1から状態2に向けて蓄電池ユニットの運転の状態が変化した場合、THf(TH−Δσ)をしきい値として設定する。また、算出部124は、例えば、状態2から状態1に向けて蓄電池ユニットの運転の状態が変化した場合、THr(TH+Δσ)をしきい値として設定する。
【0042】
これによって、蓄電池ユニットの頻繁な運転(ON)または停止(OFF)を防止することができる。この結果、蓄電池の寿命を延ばすことができる。
【0043】
充放電制御部126は、次の制御基準期間、記憶部130に記憶された充放電電力指令値と、算出部124により算出された割当切替えしきい値TH1、TH4と、運転停止切替えしきい値TH2、TH3の4つのしきい値に基づいて、第1蓄電池ユニットUN1または第2蓄電池ユニットUN2を充電または放電させるように制御する。なお、充放電制御部126は、受信部122により充放電電力指令値が外部から受信された場合、目標充放電電力データとその移動平均との差を使用する代わりに、受信部122により受信された充放電指令値を使用してもよい。以下に、具体的な充電および放電の制御を示す。
【0044】
充放電制御部126は、しきい値TH1以下の区間(IN1)において、第1蓄電池ユニットUN1を充電させるように制御し、第2蓄電池ユニットUN2を停止させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH1を越えて、且つしきい値TH2以下の区間(IN2)において、第1蓄電池ユニットUN1を停止させるように制御し、第2蓄電池ユニットUN2を充電させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH2を越えて、区間且つしきい値TH3以下の区間(IN3)において、第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2を停止させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH3を越えて、且つしきい値TH4以下の区間(IN4)において、第1蓄電池ユニットUN1を停止させるように制御し、第2蓄電池ユニットUN2を放電させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH4を越える区間(IN5)において、第1蓄電池ユニットUN1を放電させるように制御し、第2蓄電池ユニットUN2を停止させるように制御する。
【0045】
これによって、各蓄電ユニットは、SOC値が目標値から大きく乖離しない状態で運転される。この結果、各蓄電池の寿命を延ばすことができる。
図6に示す例において、第1蓄電池ユニットUN1は、放電を行う確率(領域S1)よりも充電を行う確率(領域S2)が高くなるように制御される。すなわち、第1蓄電池ユニットUN1は、第1蓄電池B1のSOC値が目標値に近づくように制御される。この結果、第1蓄電池B1の寿命を延ばすことができる。
また、第2蓄電池ユニットUN2は、放電を行う確率(領域S3)よりも充電を行う確率(領域S4)が低くなるように制御される。すなわち、第2蓄電池ユニットUN2は、第2蓄電池B2のSOC値が目標値に近づくように制御される。この結果、第2蓄電池B2の寿命を延ばすことができる。
【0046】
また、区間(IN3)において、第2蓄電池ユニットUN2を停止状態にさせることにより、微小な電力に対して充放電を行う必要がなくなる。これによって、第2蓄電池B2の使用期間を減らすことができ、蓄電池の寿命を延ばすことができる。
【0047】
ここで、
図7を参照して、電力補助システム100の動作および処理の一例について説明する。
図7は、第1実施形態の電力補助システム100により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
まず、受信部122は、風力発電システム500から所定の送信周期で送信される発電電力データを、制御基準期間の間受信する。また、受信部122は、第1蓄電池ユニットUN1から送信される第1蓄電池のSOC値と、第2蓄電池ユニットUN2から送信される第2蓄電池のSOC値とを受信する(ステップS100)。受信部122は、受信した発電電力データと、充放電電力指令値と、各蓄電池のSOC値とを記憶部130に記憶させる。受信部122は、受信した発電電力データと、受信した時刻とを対応付けて記憶部130に記憶させる。また、受信部122は、受信した充放電電力指令値を記憶部130に記憶させる。また、受信部122は、受信した第1蓄電池のSOC値および第2蓄電池のSOC値とを記憶部130に記憶させる。
【0049】
次に、算出部124は、記憶部130に記憶された発電電力データから、例えば移動平均などの統計値を算出する(ステップS102)。次に、算出部124は、例えば、算出した移動平均と、記憶部130に記憶された発電電力データとの差分に基づいて、制御基準期間内の目標充放電電力データを算出する(ステップS104)。次に、算出部124は、算出した目標充放電電力データPd(k)から、分布の広がりの程度を示す指標値として標準偏差σを、更に目標充放電電力データPd(k)の平均値μを算出する(ステップS106)。次に、算出部124は、算出した標準偏差σおよび平均値μをパラメータとする正規分布に基づいて、目標充放電電力データの確率密度を示した確率分布を算出する(ステップS108)。次に、算出部124は、算出した確率分布の確率変数(横軸)を示す偏差値と、算出した確率分布の曲線(縦軸)が示す発生頻度を乗算することにより、充放電電力データの予想分布を算出する(ステップS110)。次に、算出部124は、算出した充放電電力データの予想分布と、記憶部130に記憶された第1蓄電池のSOC値および第2蓄電池のSOC値とに基づいて、割当切替えしきい値TH1、TH4と、運転停止切替えしきい値TH2、TH3を算出して設定する(ステップS112)。
【0050】
次に、充放電制御部126は、算出部124により算出された目標充放電電力データと、割当切替えしきい値TH1、TH4と、運転停止切替えしきい値TH2、TH3の4つのしきい値に基づいて、第1蓄電池ユニットUN1または第2蓄電池ユニットUN2を充電または放電させるように制御する(ステップS114)。これによって、本フローチャートの処理が終了する。
【0051】
以上説明した第1実施形態の電力補助システム100によれば、充放電特性の異なる複数の蓄電池を充放電させるための充放電電力指令値を受信し、受信した充放電指令値の履歴に基づいて、充放電指令値の分布の広がりの程度を示す指標値を算出し、算出した指標値に基づいて複数の蓄電池のうち充放電させる蓄電池を切り替えることにより、蓄電池の劣化を少なくすることができる。この結果、発電システムの発電電力の変動をより緩和しつつ、蓄電池の寿命を延ばすことができる。
【0052】
また、第1実施形態の電力補助システム100によれば、しきい値TH2を越えて、且つしきい値TH3以下の区間(IN3)において、第2蓄電池ユニットUN2を停止状態にさせることにより、微小な電力に対して充放電を行う必要がなくなる。この結果、第2蓄電池B2の使用回数を減らすことができ、蓄電池の寿命を延ばすことができる。
【0053】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態の電力補助システム100について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点として、算出部224が他の確率分布を算出する場合について説明する。なお、上述した実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
図9は、第2の実施形態に係る制御装置210の機能構成の一例を示す図である。
【0054】
制御装置210は、制御部220と、記憶部230とを備える。制御部220は、例えば、受信部222と、算出部224と、確率分布判定部226と、充放電制御部228とを備える。
【0055】
算出部224は、例えば、
図3に示す度数分布に示すデータが正規分布に近似しているかどうかを判定するために、分布の特徴を示す尖度および歪度を算出する。尖度とは、分布の左右対称性の違いを表した指標値であり、歪度とは、分布の形が鋭いか偏平かを表した指標値である。確率分布判定部226は、算出部224により算出された尖度および歪度に基づいて、
図3に示す度数分布のデータが正規分布に近似するか否かを判定する。なお、確率分布判定部226は、算出部224により算出された尖度および歪度に基づき判定を行う構成としたが、これに限らない。確率分布判定部226は、例えば、公知な検定技術であるシャーピロ・ウィルク検定やコルモゴロフ・スミルノフ検定等を用いて、度数分布に示すデータが正規分布に近似するか否かを判定してもよい。
【0056】
確率分布判定部226により、
図3に示す度数分布に示すデータが正規分布に近似していると判定された場合、充放電制御部228は、蓄電池ユニットのいずれか1つを充放電させるように制御する。また、確率分布判定部226により、
図3に示す度数分布に示すデータが正規分布に近似していないと判定された場合、算出部224は、他の確率分布を算出する。算出部224は、例えば、対数正規分布を算出する。以下、算出部224および他の機能部等は、第1の実施形態と同様な処理を行うものとする。なお、算出部224により算出される確率分布は、実際の発電システムのモデルに合った適切な確率分布であれば、どのようなものでもよい。また、算出部224は、確率分布判定部226の判定処理の前に、正規分布を算出せずに、対数正規分布を直接算出してもよい。
【0057】
これによって、電力補助システム100は、実際の発電システムのモデルに、より適合した充放電を行うことができる。この結果、発電システムの発電電力の変動をより緩和することができる。
【0058】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態の電力補助システム100について説明する。ここでは、第1、第2の実施形態との相違点として、電力補助システム100が備える蓄電池ユニットの数が2つ以上の場合について説明し、上述した実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
図10は、第3の実施形態に係る電力補助システム100の構成の一例を示す図である。
【0059】
電力補助システム100は、制御装置110と、第1蓄電池ユニットUN1〜第k蓄電池ユニットUNkを備えている。第1蓄電池ユニットUN1〜第k蓄電池ユニットUNkは、並列に接続されている。ここでアルファベットkは、蓄電池(蓄電池ユニット)の個数を示す。ここでは、一例として、k=3の場合について説明するが、これに限られない。
【0060】
第1蓄電池B1は、例えば、第1蓄電池B1〜第3蓄電池B3の中で、最も充放電レートが大きい二次電池である。第2蓄電池B2は、例えば、第1蓄電池B1〜第3蓄電池B3の中で、第1蓄電池B1が有する放電レートよりも小さい充放電レートである二次電池である。第1蓄電池B1は、例えば、第1蓄電池B1〜第3蓄電池B3の中で、最も充放電レートが小さい二次電池である。
【0061】
受信部122は、第1蓄電池ユニットUN1から送信される第1蓄電池のSOC値と、第2蓄電池ユニットUN2から送信される第2蓄電池のSOC値と、第3蓄電池ユニットUN3から送信される第3蓄電池のSOC値とを受信する。
【0062】
算出部124は、算出した充放電電力データの予想分布と、記憶部130に記憶された第1蓄電池B1〜第3蓄電池B3のSOC値に基づいて、割当切替えしきい値TH1、TH2、TH5、TH6および運転停止切替えしきい値TH3、TH4を算出して設定する。なお、しきい値TH1〜TH6の大小関係は、TH6>TH5>TH4>TH3>TH2>TH1とする。
【0063】
充放電制御部126は、次の制御基準期間、記憶部130に記憶された充放電電力指令値と、算出部124により算出された割当切替えしきい値TH1、TH2、TH5、TH6および運転停止切替えしきい値TH3、TH4とに基づいて、第1蓄電池ユニットUN1、第2蓄電池ユニットUN2および第3蓄電池ユニットUN3のうちいずれか1つの蓄電池ユニットを充電または放電させるように制御する。ここで、
図11を参照して、具体的な充電および放電の制御を説明する。
図11は、第3の実施形態における充放電電力データの予想分布に対する蓄電池ユニットの制御の一例を示した図である。以下に、具体的な充電および放電の一例の制御を示す。
【0064】
充放電制御部126は、しきい値TH1以下の区間において、第1蓄電池ユニットUN1を充電させるように制御し、第2蓄電池ユニットUN2および第3蓄電池ユニットUN3を停止させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH1を越えて、且つしきい値TH2以下の区間において、第3蓄電池ユニットUN3を充電させるように制御し、第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2を停止させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH2を越えて、且つしきい値TH3以下の区間において、第2蓄電池ユニットUN2を充電させるように制御し、第1蓄電池ユニットUN1および第3蓄電池ユニットUN3を停止させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH3を越えて、且つしきい値TH4以下の区間において、全ての蓄電池ユニットを停止させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH4を越えて、且つしきい値TH5以下の区間において、第2蓄電池ユニットUN2を放電させるように制御し、第1蓄電池ユニットUN1および第3蓄電池ユニットUN3を停止させるように制御する。
また、充放電制御部126は、しきい値TH5を越えて、且つしきい値TH6以下の区間において、第3蓄電池ユニットUN3を放電させるように制御し、第1蓄電池ユニットUN1および第2蓄電池ユニットUN2を停止させるように制御する。
充放電制御部126は、しきい値TH6を超える区間において、第1蓄電池ユニットUN1を放電させるように制御し、第2蓄電池ユニットUN2および第3蓄電池ユニットUN3を停止させるように制御する。
【0065】
これによって、電力補助システム100は、3種類の蓄電池(B1〜B3)に応じて、より柔軟に電力の充放電を行うことができる。この結果、発電システムの発電電力の変動をより緩和しつつ、蓄電池の寿命を延ばすことができる。
【0066】
なお、本実施形態では、第3蓄電池B3の充放電特性を示す放電レートを、第1蓄電池B1の放電レートと第2蓄電池B2の放電レートとの間としたが、これに限らない。第3蓄電池B3は、例えば、第2蓄電池B2と同じ放電レートおよび蓄電容量であってもよいし、第1蓄電池B1と同じ放電レートおよび蓄電容量であってもよい。この場合、充放電制御部126は、蓄電池の充放電特性に応じて、各蓄電池ユニットの蓄電池の蓄電容量を目標値に近づけるように適宜制御する。
【0067】
[第4実施形態]
以下、第4実施形態の電力補助システム100について説明する。ここでは、第1、第2、および第3実施形態との相違点として、電力補助システム100が電力系統EPSに接続される構成について説明し、上述した実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
図12は、第4の実施形態に係る電力補助システム100の一例を示す概略図である。
【0068】
図12に示すように、電力系統EPSには、変圧部TF1を介して風力発電システム500が接続され、変圧部TF2を介して電力補助システム100が接続され、変圧部TF3を介して需要者の受電設備CS1が接続され、変圧部TF4を介して需要者の受電設備CS2が接続されている。電力系統EPSは、発電システムが発電した電力を需要者の受電設備に供給するための、発電、変電、送電および配電を統合したシステムである。変圧部TF1〜TF4は、交流電力の電圧の高さを電磁誘導によって変換(昇圧)する電力機器である。風力発電システム500や電力補助システム100から送電される電力は、例えば、変圧部TF1およびTF2によって、超超高圧(500kV)や超高圧(220〜275kV)等に変換され、電力系統EPSに送電される。また、電力系統EPSから配電される電力は、例えば、変圧部TF3およびTF4によって、高圧(66〜154kV)等に変換され、需要者の受電設備CS1およびCS2等に配電される。なお、変圧部TF3およびTF4や、需要者の受電設備CS1およびCS2等の数には、特段の制約がない。また、電力系統EPSには、風力発電システム500の他に、他の風力発電システムや太陽光発電システム等が複数接続されていてもよい。
【0069】
算出部124は、記憶部130に記憶された発電電力データから移動平均を算出する。ここで、算出部124は、算出する移動平均に対して、需要者側の受電設備(CS1、CS2)で消費される電力量である需要電力データ等の数値データを加味して算出する。これによって、電力補助システム100は、より効率良く電力を充放電することができる。
【0070】
上述した実施形態における電力補助システム100の一部機能を、コンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。