(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オフセット回折格子は、前記スケールから、前記受光ユニットへ光を出射する前記インデックス格子の部位までの光路に位置することを特徴とする請求項5に記載の光学式エンコーダ。
前記オフセット回折格子は、前記光源からの光が入射する前記インデックス格子の部位から前記スケールまでの光路に位置することを特徴とする請求項5に記載の光学式エンコーダ。
【背景技術】
【0002】
現在、移動量を測定する装置の一つとして、光学式リニアエンコーダがある。光学式リニアエンコーダは、スケールとスケールに沿って移動する検出ヘッドとを有し、検出ヘッドがスケールに沿って移動するときにメイン信号用干渉縞の輝度の増減を読み取ることにより、測定開始位置からメイン信号用干渉縞何本分移動したかを測定し、移動量を測定することができる。
【0003】
この光学式リニアエンコーダでは、さらなる高精度の測定のために、高分解能化が検討されている。例えば、光学式リニアエンコーダは、スケールに1μm以下の微細なピッチの目盛りを回折格子として形成し、相対変位を高精度に検出することが検討されている。このような光学式リニアエンコーダは、大別して以下の4通りの技術に分類される。
【0004】
(1)偏光ビームスプリッタ及び無偏光ビームスプリッタを用いる光学系
方式(1)として、特許文献1〜3が開示されている。この方式の例を、
図9を用いて説明する。
【0005】
図9の格子干渉型変位検出装置50において、レーザ光源51から出射されたレーザビームは、偏光ビームスプリッタ52の偏光方向に従って二波に分割される。そして、分割光束A,Bは、測位方向に沿って透過型の回折格子53が形成されたスケール54上の異なる二つの回折点P1,P2に入射される。そして、回折点P1,P2で各分割光束A,Bの1次回折光A1,B1が生成され、無偏光ビームスプリッタ55に入射する。これらの各1次回折光A1,B1は、無偏光ビームスプリッタ55上の一点に集められて混合され、混合波MA,MBとなる。
【0006】
混合波MAは、偏光板57Aにおいて、偏光方向を一致させて干渉光となる。そして干渉光は、受光素子58Aにおいて電気信号に変換される。また、混合波MBは、1/4波長板59において、一偏光成分のみの位相を90度遅らせた後に、偏光板57Bにおいて、偏光方向を一致させて干渉光となる。そして干渉光は、受光素子58Bにおいて電気信号に変換される。
【0007】
方式(1)では、光の分波または混合に用いるビームスプリッタ、及び干渉信号間に位相差を生じさせるための波長板または偏光板など、多くの高価な光学部品を必要とするため、コストが高くなる。
【0008】
(2)回折格子を用いる光学系
方式(2)として、特許文献4〜6が開示されている。この方式の例を、
図10を用いて説明する。
【0009】
図10において、光源より入射した光束は、インデックス格子61において、直進(0次回折)する光束と、1次回折した光束に分けられる。この1次回折した光束は、直進する光束に対して位相Ψを有する、
【0010】
そして、直進する光束は、スケール格子62において回折して、位相Ωを有する光束となり、回折した光束は、スケール格子62において回折して、位相Ψ+Ωを有する光束となる。
【0011】
インデックス格子63において、位相Ωを有する光束と位相Ψ+Ωを有する光束とが、一方の光束が回折して更に位相Ψを加え、他方の光束が直進し、両者の光束が混合される。
【0012】
このように、方式(2)では、所定の位相差を有する複数の干渉信号を作成するために、インデックス格子に位相格子を用いるが、この位相格子は、格子溝の深さ及び格子のデューティ比を特別に設計する必要がある。
【0013】
したがって、方式(2)において、スケールの格子ピッチを微細化する場合、インデックス格子のピッチも合わせて微細化する必要がある。しかしながら、インデックス格子のデューティ比も相対的に保ちながら微細化する必要があるため、インデックス格子の製作が困難である。
【0014】
(3)測位方向に物理的なオフセットのある回折格子を用いる光学系
方式(3)として、特許文献7〜9が開示されている。この方式の例を、
図11を用いて説明する。
【0015】
図11において、発光素子71から射出した発散光束は、ミラー72で進路を曲げられて、レンズ73によって平行光束にされ、第1回折格子74に入射し、第1回折格子74にて透過回折されて、スケール上の回折格子75上にて反射回折され、第3回折格子76にて互いに光路を重ね合わされ混合された回折光束は、干渉光となって受光素子77A、77B、77C、及び77Dに入射する。
【0016】
このように方式(3)では、光波の分割・混合の構成については、前述の方式(2)とほぼ同じ構成を用い、所定の位相差を有する複数の干渉信号を生成する構成として、測位方向に物理的なオフセットのある回折格子を用いる。
【0017】
したがって方式(3)では、方式(2)と異なり、格子の形式(振幅格子/位相格子)にも制約がなく、干渉信号に所定の位相差を与えるために格子パラメータ設計(格子溝深さや格子デューティ比)する必要がない。この点で、方式(3)は格子干渉型エンコーダに比較的適用しやすい。
【0018】
一方、方式(3)は、所定の位相差を有する複数の干渉信号を、それぞれスケール上の異なる位置から得ている構成であるため、
図12のようにスケール上の回折格子75に78で示す局所的な欠陥があった場合、受光素子77Cで受光する干渉信号のみ変化が生じてしまう。その結果、干渉信号間の強度のバランスが崩れ、検出位置精度が悪化しやすい。
【0019】
(4)干渉縞を受光素子アレイで検出する光学系
方式(4)では、光学素子とスケールを用いて2つの光束の干渉縞を発生させ、この干渉縞を受光素子アレイで検出する。方式(4)として、特許文献10、11が開示されている。この方式の例を、
図13を用いて説明する。
【0020】
図13において、レーザーダイオード81及びレンズ82により視準されたコヒーレント光が発せられる。そして、波面補正構造83において、格子により回折された2つの光束84及び85が格子86に入射される。
【0021】
そして、2つの光束が格子86により回折し、得られた干渉縞を検出器87にて検出する。
【0022】
方式(4)における構成はシンプルであり、格子の形式への制約や、干渉信号に所定の位相差を与えるために、格子のパラメータを設計する必要もない。さらに、方式(4)は、受光素子のアレイ構造により、受光した光の強度を平均化する効果があるので、仮にスケールの格子の一部に欠陥があっても、特定の干渉信号だけに大きな変化が生じにくい。
【0023】
しかしながら、方式(4)において、適切な信号を検出するためには、干渉縞のピッチと受光素子アレイのピッチの間に強い相関が必要である。この相関のため、何らかの原因で干渉縞に乱れが生じると測定精度が悪化する。例えば、光学素子の形状誤差(
図12の場合、波面補正構造79)や、スケールに存在する平面うねりなどが干渉縞乱れの原因に相当する。
【0024】
しかも、スケールピッチが微細になるほど、これらの許容が厳しくなるため、本構成は格子干渉型光学式エンコーダには適用しにくい。また検出器87のアレイピッチを短くする必要があるが、アレイピッチの短い検出器は製造が困難であるという問題もある。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1に係る光学式エンコーダについて説明する。
図1は、実施の形態1に係る光学式エンコーダの光学部分の概略を示す上面図である。
【0040】
図1において、光学式エンコーダ10は、光源11と、無偏光ビームスプリッタ12と、スケール13と、オフセット回折格子14と、無偏光ビームスプリッタ15と、受光ユニット16−1及び16−2とを備える。この光学式エンコーダ10は、検出ヘッド17を、光源11と、無偏光ビームスプリッタ12と、オフセット回折格子14と、無偏光ビームスプリッタ15と、受光ユニット16−1及び16−2で構成し、スケール13に沿ってX軸方向に相対移動する検出ヘッド17の変位量を測定する。
【0041】
光源11は、無偏光ビームスプリッタ12の方向に光を発する構成である。具体的には、光源11は、光束を発する構成、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、半導体レーザ、SLED(Self-Scanning Light Emitting Device:自己走査型発光素子)、OLED(Organic light-emitting diode:有機発光ダイオード)などを用いることができる。
【0042】
無偏光ビームスプリッタ12は、光源11から発せられた光束を、2つの光束に分割する分割手段である。一般には、無偏光ビームスプリッタ12は、2つの光束が同じ位相でスケール13に到達するようにする。例えば、無偏光ビームスプリッタ12は、スケール13に対して垂直な面に配置され、光源11からの光束が無偏光ビームスプリッタ12の主面に対して斜め方向に入射するように、光源11が配置されることにより、2つの光束が等距離でスケール13に到達する。
【0043】
スケール13は、主面に1または複数の回折格子を並列に配置している。そして、スケール13は、測位方向に対して平行移動が可能である。スケール13の回折格子のパターンは、直線状の凹凸がマイクロメートルサイズの周期で平行に並んで構成されたものが好適である。また、スケール13は、光を透過する格子状の光透過部分と、光を透過しない不透過部分を構成できる材料であればいずれも適用することができる。
【0044】
オフセット回折格子14は、複数の回折格子パターンが、スケール13の主面に平行な一面に配置されたものであり、分割した光を複数の回折格子パターンでそれぞれ回折する。オフセット回折格子14は、複数の回折格子パターンを同一平面上に配置し、回折格子パターン間で、測位方向に直交する方向にオフセットを有するので、それぞれの回折格子パターンにおいて回折した光束同士は、異なる位相を有することになる。
【0045】
無偏光ビームスプリッタ15は、オフセット回折格子14において回折した光同士を混合して、受光ユニット16−1及び16−2に出射する。例えば、無偏光ビームスプリッタ15は、
図2に示すように格子エリア14−1にて回折した回折光と、格子エリア14−2にて回折した回折光とが、面対称となる対称面に配置される。
【0046】
図3に示すように受光ユニット16−1は、オフセット方向に複数の受光素子16−11、16−12及び16−13を配置した構成である。また受光ユニット16−2は、受光ユニット16−1と同様にオフセット方向に複数の受光素子16−21、16−22及び16−23を配置した構成である。
【0047】
すなわち、受光ユニット16−1及び16−2は、オフセット回折格子14の個々の回折格子により回折して異なる位相を有する光束同士を混合した光の強度を電気信号に変換することにより、位相差を有する複数の干渉信号を電気信号として得ることができる。
【0048】
なお、受光ユニット16−1及び16−2は、フォトダイオード・アレーで構成されることが好適である。また、各受光素子は、受光して電気信号に変換することができる素子であれば、フォトトランジスタ、フォトレジスタ等いずれも適用することができる。
【0049】
次に、本実施の形態の特徴であるオフセット回折格子について説明する。
図2は、実施の形態1に係るオフセット回折格子の構成を示す図である。
図2において、オフセット回折格子14は、格子エリア14−1と格子エリア14−2を有する。
【0050】
格子エリア14−1と格子エリア14−2は、スケール13の回折格子に対して直交する方向に形成された回折格子を有している。そして、格子エリア14−1の格子パターンと格子エリア14−2の格子パターンとは、測位方向に直交する方向、すなわち
図2のY軸方向にオフセットしている。オフセット量は、各格子エリアで回折する光束の間に位相差が生じるものであればよい。
【0051】
例えば、格子間隔をpとすると、オフセット量Δyをp/4とすることにより、光束間の位相差が90°となる。なお、光束間の位相差は0°でなければ良いので、オフセット量が格子間隔の整数倍以外であれば、光束間の位相差は発生することになる。
【0052】
本実施の形態では、オフセット回折格子で光束間の位相差を発生させ、更に立体的な光路を用いて複数の干渉信号を生成することを特徴としている。次に、この干渉信号の生成について説明する。
【0053】
図3は、実施の形態1に係る光学式エンコーダの一部分の概略を示す斜視図であり、
図1と同一の構成は、同一の番号を付して説明を省略する。
【0054】
図3では、
図1の光学式エンコーダ10の、オフセット回折格子14より後段の部分を示している。光源11の光束は、無偏光ビームスプリッタ12において、2つの光束に分割される。
【0055】
そして、2つの光束は、スケール13において、それぞれ+1次回折または−1次回折されてオフセット回折格子14に入射する。具体的には、+1次回折光がオフセット回折格子14の格子エリア14−1に入射され、−1次回折光がオフセット回折格子14の格子エリア14−2に入射される。
【0056】
ここで、スケール13での回折後の+1次回折光を以下の式(1)、−1次回折光を以下の式(2)とする。
【0057】
gはスケール13の格子ピッチ、xはスケールの位置を示す。また、Uの添え字は回折を示す。例えばUx+1は、
図1〜3のX軸(測位)方向の+1次回折光を意味し、Ux−1は、
図1〜3のX軸(測位)方向の−1次回折光を意味する。
【0058】
+1次回折光は、格子エリア14−1の格子パターンにより、0次、+1次、及び−1次の回折光を得る。同様に−1次回折光は、格子エリア14−2の格子パターンにより、0次、+1次、及び−1次の回折光を得る。
【0059】
得られた回折光は式(3)〜(8)で表現される。
【0060】
gはスケールの格子ピッチ、pはオフセット回折格子の格子ピッチ、yはオフセット回折格子の位置を示す。また、Uの添え字は回折を示す。例えばUy+1は、
図1〜3のY軸方向の+1次回折光を意味し、Uy−1は、
図1〜3のY軸方向の−1次回折光を意味する。
【0061】
例えば、Ux+1,y+1は、スケール13において、+1次回折し、オフセット回折格子14において、+1次回折した光を意味する。
【0062】
また、Δyは前述したようにオフセット回折格子14における格子エリア間のY軸方向のオフセット量を示す。すなわち、格子エリア14−2を基準として格子エリア14−1がY軸方向にΔyのオフセットを有する場合、式(3)、(7)に示すように、格子エリア14−1において、+1次回折および−1次回折した光にオフセット量Δyによる位相シフトが発生する。なお、格子エリア14−1の0次回折光は、直進であって回折ではないので、式(5)に示すように、オフセット量Δyによる位相シフトは発生しない。
【0063】
そして、式(4)、(6)、(8)に示すように、格子エリア14−2において、+1次回折、−1次回折、及び0次回折光は、いずれもオフセット量Δyによる位相シフトは発生しない。
【0064】
このように本実施の形態のエンコーダでは、測位方向に直交する方向にオフセットを有する格子エリア間で、回折光にオフセット量Δyによる位相シフトが発生するので、波長板や偏光板を用いる必要がない。
【0065】
また、オフセット回折格子にとって原理上重要なのはオフセット量Δyのみであり、格子の形式への制約や、干渉信号に所定の位相差を与えるための格子パラメータ設計は必要ない。
【0066】
さらに本構成では、UX+1とUX−1の混合波という同一の光波を、オフセット回折格子14で分割した干渉波から、位相差を有する複数の干渉信号を得ている。そのため、スケール欠陥の影響はすべての信号に共通に発生し、特定の干渉信号だけに変化が生じることはない。
【0067】
次に、オフセット格子で回折した後に、無偏光ビームスプリッタにより混合する干渉光について説明する。
【0068】
格子エリア14−1にて回折した各回折光と、格子エリア14−2にて回折した各回折光とは、無偏光ビームスプリッタ15において混合して干渉光となる。具体的には、格子エリア14−1において+1次回折した光と、格子エリア14−2において+1次回折した光とが混合する。そして、格子エリア14−1において0次回折した光と、格子エリア14−2において0次回折した光とが混合する。また格子エリア14−1において−1次回折した光と、格子エリア14−2において−1次回折した光とが混合する。
【0069】
それぞれ混合した光の強度は、受光ユニット16−1及び16−2の各受光素子において電気信号に変換される。具体的には、
図3では、受光素子16−11及び16−21は格子エリア14−1及び格子エリア14−2において+1次回折した光の混合した干渉光を受光する。そして、受光素子16−12及び16−22は格子エリア14−1及び格子エリア14−2において0次回折した光の混合した干渉光を受光する。また、受光素子16−13及び16−23は格子エリア14−1及び格子エリア14−2において−1次回折した光の混合した干渉光を受光する。
【0070】
ここで、受光素子16−11が受光した干渉光の強度をI
A1、受光素子16−12が受光した干渉光の強度をI
A2、受光素子16−13が受光した干渉光の強度をI
A3とし、同様に受光素子16−21が受光した干渉光の強度をI
B1、受光素子16−22が受光した干渉光の強度をI
B2、受光素子16−23が受光した干渉光の強度をI
B3とすると、各干渉光の強度は、以下の式(9)、(10)、(11)で示される。
【0071】
式(10)に示すように、0次回折光同士の干渉光は、オフセット回折格子のオフセット量Δyによる位相シフトがない。一方、式(9)、(11)に示すように1次回折光同士の干渉光は、オフセット回折格子のオフセット量Δyによる位相シフトがある。
【0072】
このように、本実施の形態の光学式エンコーダは、位相シフトのない干渉光と、位相シフトのある干渉光とを得ることができる。
【0073】
この位相シフトの大きさは、オフセット回折格子における回折格子間のオフセット量Δyで決定することができる。
【0074】
例えば、Δy=p/8とすれば、I
A1とI
A3の間に90°の差が生じるので、従来技術と同じようなA相・B相が出力できる。この場合、I
A2は必要ない。また、Δy=p/4とすれば、I
A1とI
A2の間に90°の差が生じるので、従来技術と同じようなA相・B相が出力できる。この場合、I
A3は必要ない。
【0075】
また、好適な信号処理方法としては、Δy=p/3にすることにより、I
A1、I
A2、I
A3の干渉信号間に120度ずつの位相差を生じさせ、公知の方法により90°位相差の差動信号に変換してもよい。
【0076】
そして、これらの干渉信号からスケール13の移動に伴う変位xの変化量を求める。これらの干渉信号の処理は、アナログまたはデジタルの電気信号の演算処理により実現することができる。
【0077】
電気信号に変換した後の演算処理は、エンコーダの内部または外部にCPU(Central Processing Unit)やASIC(application specific integrated circuit)を設け、所定の演算処理を実行させることにより実現することができる。また外部にコンピュータを接続して、ソフトウェアとして演算処理を実現しても良い。
【0078】
このように、実施の形態1の光学式エンコーダは、複数の回折格子を、測位方向に直交する方向に、互いにオフセットさせ、オフセット方向で個々に測光することにより、波長板や偏光板を用いずに、位相差を有する複数の干渉信号を得ることができる。
【0079】
また、実施の形態1の光学式エンコーダは、回折格子が測位方向に直交する方向にオフセットを設定する以外の制約がないので、微細化も容易にできる。また実施の形態1の光学式エンコーダは、スケールの欠陥は複数の干渉信号すべてに同じく影響するので、スケール欠陥の影響によって干渉信号間にばらつきが発生することはない。
【0080】
なお、オフセット回折格子を配置する位置は、分割した各光束の光路上であればどの位置であっても良い。本実施の形態の場合、無偏光ビームスプリッタ12から無偏光ビームスプリッタ15までの間の光路がオフセット回折格子を配置する位置に該当する。
【0081】
図1の光学式エンコーダでは、スケール13と無偏光ビームスプリッタ15との間の光路上にオフセット回折格子14を配置しているが、
図4に示すように、無偏光ビームスプリッタ12とスケール13との間の光路上にオフセット回折格子14を配置しても良い。
【0082】
(実施の形態2)
実施の形態2では、光の分割にインデックス格子を用いる例について説明する。
図5は、実施の形態2に係る光学式エンコーダの光学部分の概略を示す上面図である。
図5において、
図1と同一の構成については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0083】
図5において、光学式エンコーダ20は、光源11と、インデックス格子21と、スケール13と、オフセット回折格子14と、インデックス格子22と、受光ユニット16−1及び16−2とを備える。
【0084】
インデックス格子21は、光源11から発せられた光束を2つに分割する。一般には、インデックス格子21は、分割した2つの光束が同じ位相でスケール13に到達するようにする。例えば、インデックス格子21の主面が、スケール13の主面に対して平行に配置され、光源11からの光束がインデックス格子21の主面に対して斜め方向に入射するように、光源11が配置されることにより、分割した2つの光束が等距離でスケール13に到達する。
【0085】
インデックス格子22は、オフセット回折格子14において回折した光同士を混合して、受光ユニット16−1及び16−2に出射する。例えば、インデックス格子22の主面が、スケール13の主面に対して平行に配置される。
【0086】
光及び電気信号の処理は、実施の形態1の無偏光ビームスプリッタ12がインデックス格子21に置き換わり、無偏光ビームスプリッタ15がインデックス格子22に置き換わっている点を除いて、実施の形態1と同様の処理を行う。
【0087】
図5に記載された光学式エンコーダ20は、実施の形態1の光学式エンコーダと同様に受光ユニット16−1及び16−2に複数の受光素子を備える。
図6は、実施の形態2に係る光学式エンコーダの一部分の概略を示す斜視図である。
【0088】
受光ユニット16−1は、オフセット方向に複数の受光素子16−11、16−12、16−13を配置した構成である。また受光ユニット16−2は、受光ユニット16−1と同様にオフセット方向に複数の受光素子16−21、16−22、16−23を配置した構成である
【0089】
図6に示すように、受光素子16−11及び16−21は、インデックス格子22において、+1次回折した光同士を混合した干渉光を受光する。同様に、受光素子16−12及び16−22は、インデックス格子22において、0次回折した光同士を混合した干渉光を受光する。受光素子16−13及び16−23は、インデックス格子22において、−1次回折した光同士を混合した干渉光を受光する。
【0090】
そして、受光素子16−11〜16−23は、それぞれ光の強度を電気信号に変換する。干渉光の位相については実施の形態1と同様に、0次回折光同士の干渉光は、オフセット回折格子のオフセット量Δyによる位相シフトがない。一方、1次回折光同士の干渉光は、オフセット回折格子のオフセット量Δyによる位相シフトがある。
【0091】
このように、実施の形態2の光学式エンコーダによれば、測位方向に直交する方向にオフセットを有する格子エリア間で、回折光にオフセット量Δyによる位相シフトが発生するので、インデックス格子を位相格子に限定する必要がなく、また干渉信号に所定の位相差を与えるための格子パラメータを設計する必要もなく、回折格子の設計上の制約がない。
【0092】
なお、インデックス格子21及び22は、光を分割できる構成であればいずれも適用可能であり、スリットを形成した格子等の振幅格子も適用可能である。
【0093】
また、オフセット回折格子を配置する位置は、分割した光の光路上であればどの位置であっても良い。本実施の形態の場合、インデックス格子21からインデックス格子22までの間の光路がオフセット回折格子14を配置する位置に該当する。
図5の光学式エンコーダでは、スケール13とインデックス格子22との間の光路上にオフセット回折格子14を配置しているが、
図7に示すように、インデックス格子21とスケール13との間の光路上にオフセット回折格子14を配置してもよい。
【0094】
(実施の形態3)
また、実施の形態2の光学式エンコーダ20は、インデックス格子21とインデックス格子22とを共通の構成とすることもできる。
図8は、実施の形態3に係る反射型の光学式エンコーダの光学部分の概略を示す斜視図である。
図8において、光学式エンコーダ30は、光源11と、ガラス基板31と、インデックス格子32と、スケール33と、オフセット回折格子14−1、14−2と、受光ユニット16−11〜16−23とを備える。
【0095】
ガラス基板31は、平行な2つの表面を有するガラス基板であり、一面にインデックス格子32を形成し、他の一面にオフセット回折格子14−1、14−2を形成する。またガラス基板31は、光源11から入射した光を透過する材料で構成されている。
【0096】
インデックス格子32は、
図5のインデックス格子21とインデックス格子22とに対応する構成であり、光源11から発せられた光束を2つに分割し、また格子エリア14−1、14−2からなるオフセット回折格子において回折した光同士を混合して、受光ユニット16−1及び16−2に出射する。
【0097】
スケール33は、反射タイプのスケールであり、スチール等の光を反射する素材の表面に格子パターンを形成したものである。スケール33はX軸方向に変位し、光学式エンコーダ30は、X軸方向の変位量を測定する。
【0098】
オフセット回折格子14−1、14−2は、
図1または
図5のオフセット回折格子14に対応する構成である。
【0099】
この光学式エンコーダ30では、光源11から入射した光はインデックス格子32において2つの光束に分割され、ガラス基板31を透過してスケール33にて反射する。そして、反射した光は、オフセット回折格子14−1、14−2にて回折し、再びガラス基板31を透過してインデックス格子32に到達する。そしてインデックス格子32において、回折した光同士が混合され、受光ユニット16−11〜16−23において干渉光が測定される。
【0100】
このように、実施の形態3の光学式エンコーダによれば、ガラス基板の一表面にインデックス格子を形成し、測位方向に直交する方向にオフセットを有する回折格子をガラス基板の裏面に形成することにより、更に少ない部品点数でシンプルな検出部位を実現できる。
【0101】
なお、上記実施の形態では、オフセット回折格子において、2つの格子間でオフセットする構成を説明しているが、3つ以上の格子間でオフセットする構成としても良い。この場合、オフセット回折格子の主面に位置し、且つ測位方向に対して直交する方向にオフセットする構成であればいずれでも良い。例えば、3つの格子間において、2π/3ずつ位相をずらして3相の光学系を形成してもよい。すなわち、格子間で、格子幅の1/3だけ測位方向に対して直交する方向にオフセットする。
【0102】
また、各格子及びスケールは、不透明部と光透過部を構成する素材の組み合わせであればいずれも適用できる。すなわち、不透明ガラスに格子形状の孔を形成して光透過部としても良いし、透明ガラスの一部を遮蔽して不透明部を形成しても良い。またガラス以外の材料についても同様に適用できる。
【0103】
また、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明の光学式エンコーダは、リニアエンコーダに限定されるものではなく、ロータリーエンコーダにも適用することができる。